説明

タワー型パソコン載置台及びこれを用いたパソコンラック

【課題】 タワー型パソコンをよりコンパクトに載置又は収納できる載置台を提供する。
【解決手段】 タワー型パソコン3を載置する台であって、位置固定する支持板4とタワー型パソコン3を載せる旋回板2とから構成し、支持板4には左右方向にわずかに斜行した前後摺接溝と前後方向にわずかに斜行した左右摺接溝とを略直角位置関係に設け、旋回板2には前記各摺接溝に嵌め込む前後及び左右スライダを取り付けてなり、各摺接溝における各スライダの位置関係から一義的に定まる旋回角度に従って旋回板2を旋回可能に支持板4に連結している。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、タワー型パソコンを旋回可能に載置、収納するタワー型パソコン載置台と、この載置台を利用した奥行きの短いパソコンラックに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、急激にパソコンが普及し始めている。従来多くのパソコンが、デスクトップ型と呼ばれるの横長で扁平な匡体であったが、機能追加やカスタマイズが容易なことから、縦長で横幅が狭いタワー型パソコンへと移行しつつある。このタワー型パソコンは、前面にFDドライブやCD-ROMドライブ等の挿入口又は取出口が覗き、各種コネクタ類が背面に設けられていることから、従来はこの前面を正面に向けて置くのが通例であった。パソコンラックを使用しない場合、前述のような向きで、机の足元又は机上にタワー型パソコンを直置きしていたのである。
【0003】
パソコンラックにタワー型パソコンを収納する場合でも、基本的には上述の置き方と変わらない。すなわち、(1)スライド式のキーボードの棚上段にディスプレー及びパソコンを載置する棚を配し、ディスプレイとタワー型パソコンとを並べて置く形態、又は(2)キーボードの棚上段にディスプレイを載置する棚、同下段にパソコンを載置する棚を配し、ディスプレイとタワー型パソコンとを分けて置く形態を採る。いずれにしても、FDドライブやCD-ROMドライブ等の挿入口又は取出口へのアクセスを考えて、タワー型パソコンは前面を正面に向けて載置していた。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
CPUの高速化に伴う冷却に必要な空間と拡張性の高さとを確保する目的から、タワー型パソコンの匡体はいよいよ大きくなり、特に奥行きは馬鹿にならないものがある。このため、ディスプレイの奥行きが短くなり、特に薄型を謳っている液晶ディスプレイが普及し始めてきても、タワー型パソコンの載置のために奥行き方向のスペースを大きく確保しなければならなかった。机の足元に収納する場合であっても、タワー型パソコンは前方向へ大きく張り出すこととなり、邪魔であることは否めなかった。
【0005】
パソコンの高性能化とネットワーク(とりわけインターネット、イントラネット)の普及は、それまでのパソコンの利用形態を変貌させ、最近ではFDの使用頻度は減少している。また、CD-ROMもインストールメディアとして普及してはいるが、繁雑に交換することは少ない。そこで、タワー型パソコンを載置又は収納しながら奥行き方向における必要なスペースを短くし、FDドライブ又はCD-ROMドライブ等へのアクセスが必要な時には改めてタワー型パソコン前面を正面に向けることができることとして、タワー型パソコンをよりコンパクトに載置又は収納できる載置台及びパソコンラックを目標に検討した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
検討の結果開発したものが、タワー型パソコンを載置する台であって、位置固定する支持板とこのパソコンを載せる旋回板とから構成し、支持板には左右方向にわずかに斜行した前後摺接溝と前後方向にわずかに斜行した左右摺接溝とを略直角位置関係に設け、旋回板には前記各摺接溝に嵌め込む前後及び左右スライダを取り付けてなり、各摺接溝における各スライダの位置関係から一義的に定まる旋回角度に従ってこの旋回板を旋回可能に支持板に連結したタワー型パソコン載置台である。支持板及び旋回板は金属板又は厚手の木材板で形成し、スライダは金属又は合成樹脂製とするのがよい。
【0007】
支持板には、固定位置に合わせて机の柱、壁面又は梁に固定するためのブラケットを取り付け、支持板自身の安定性を確保するための脚を設けるとよい。この場合には、支持板は上面と平行に旋回板を連結することになるから、支持板側縁から延設、折り曲げてフランジ面を形成し、このフランジ面にブラケットを取り付けるとよい。旋回板には、載置したタワー型パソコンに宛がう支持ガイドを設けたり、前記支持ガイドからタワー型パソコンに架け回す固定バンドを取り付けて、旋回板の旋回時におけるタワー型パソコンのズレを防止するとよい。また、旋回板にキャスタ等を取り付けると旋回時における旋回板の安定性を確保でき、更に旋回板に取手を設けると操作しやすい。
【0008】
このタワー型パソコン載置台を用いたパソコンラックは、載置台の支持板をラック本体に固定し、通常旋回板を横向きにしてタワー型パソコン側面が正面を向くように収納し、必要に応じて旋回板を旋回させてタワー型パソコン前面が正面を向くようにして、ラック本体の奥行きをタワー型パソコンの横幅に合わせて短くしたタワー型パソコン専用ラックとすることができる。
【0009】
本考案のタワー型パソコン載置台は、通常はタワー型パソコン側面を正面を向けているが、必要に応じて前面を正面に向けることができるように、タワー型パソコンを旋回可能に載置、収納する。例えば、支持板を机の壁面下縁にブラケットを介して固定し、机の足元に載置台を設置した場合、タワー型パソコン側面を正面に向けて机の足元に収納することになるから、机下方の空間を広く利用することができるようになる。また、この載置台をパソコンラックを適用した場合、ラック本体の奥行きを短くすることができる。この場合、キーボードを載置する棚(キーボード棚と呼ぶ)をスライド式で大きく手前に引き出すことから、ラック本体の姿勢安定性を確保する意味で、ラック本体の支持脚は手前に張り出すことができる伸縮自在な構造にすることが好ましい。
【0010】
タワー型パソコンはかなりの重量物であり、1軸の旋回軸では旋回板の旋回が不安定となる虞がある。そこで、本考案では、旋回板に取り付けた各スライダを支持板に設けた2条の前後及び左右摺接溝にそれぞれ摺接させ、各摺接溝における前後及び左右スライダの位置関係から一義的に定まる旋回角度で旋回板を規制し、安定した旋回を実現するのである。また、このように旋回板の旋回角度を各スライダの位置関係で拘束する構造は、予想しない方向から旋回板に力が加わった場合に、旋回板の不用意な旋回を防止する働きも有する。
【0011】
各摺接溝の配置及び位置関係は、旋回板に要求される旋回の形態によって異なる。一例を挙げれば次のような配置及び位置関係がある。まず、旋回板の仮想的な旋回中心から、前方向へ延びる前後摺接溝と、右方向(又は左方向)へ延びる左右摺接溝を略直角位置関係で設ける。例えば、支持板を机の左壁面に対して設置する場合は左右摺接溝を左方向へ延ばし、右壁面に対して設置する場合は左右摺接溝は左方向へ延ばすことになる。いずれの場合も、前後摺接溝は左右摺接溝の延在方向へ斜行させ、左右摺接溝は前方向へ斜行させる。この場合、前後摺接溝の前端及び左右摺接溝の左端(又は右端)を結ぶ軸線と、前後摺接溝の後端及び左右摺接溝の右端(又は左端)を結ぶ軸線とが、直交関係にあると、旋回板は正確に90度の旋回範囲を有するようになる。この前後摺接溝と左右摺接溝との位置関係は相対的なものであり、支持板の設置向きによって、両者が入れ換わることもある。
【0012】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施形態について、図を参照しながら説明する。図1及び図2は本考案の具体的構造の一例を示したタワー型パソコン載置台を机1の足元に設置して使用している状態を表した斜視図であり、図1は旋回板2を横向きにした収納状態、図2は旋回板2を旋回させてタワー型パソコン3前面を正面に向けた状態を表している。また、図3〜図5は本例の載置台単体で旋回板2の旋回の状態を表した斜視図(タワー型パソコン省略)であり、図3は旋回開始(収納状態)、図4は旋回途中、図5は旋回終了(使用状態)をそれぞれ表している。
【0013】
本例の載置台は、例えば机1の足元に設置して使用する。通常は、図1に見られるように、旋回板2を収納状態にして、タワー型パソコン3側面を正面に向ける。これにより、机1前面が広く開き、デスクワーク時の足元に解放感を与えることができる。作業中、FD又はCD-ROMを使用する場合、図2に見られるように、旋回板2を旋回させてタワー型パソコン3前面を正面に向ければよい。後述するように、支持板4には脚5を設け、旋回板2には自在キャスタ6を、タワー型パソコン3前面にあたる側縁に取手7を取り付けている。これにより、作業者は取手7を引きながら容易に旋回板2を旋回させて、タワー型パソコン3前面を正面に向けることができる。机1上面にはキーボード8、マウス9のほか、ディスプレイだけ置けばよい。ディスプレイを図1又は図2のように液晶ディスプレイ10とすれば、机の上下に広く、快適な作業空間を提供できるようになる。
【0014】
次に、図3を挙げて、載置台の構造について説明する。本例の載置台は、略五角形の支持板4に前後及び左右摺接溝11,12を設け、旋回板2の裏面に固定間隔で取り付けた円形の前後及び左右スライダ13,14を前記各摺接溝11,12へ個別に嵌め込んだ構成である。支持板4は、一側縁を延設、折り曲げてフランジ面15を形成し、このフランジ面15に取り付けたブラケット16を介して机1の壁面17下縁に固定する。支持板4は3本の脚5を固着して、床面から一定の高さに設置する。
前記高さは、旋回板2に自在キャスタ6を取り付けるための高さ代となる。ブラケット16は、机1の壁面17下縁に宛がうようにフランジ面15の調節溝18に任意の位置でネジ止めし、前記壁面17にネジで締着することにより、異なる壁面17下縁の高さ及び厚みに対応して、安定した支持板4の設置を可能としている。本考案の特徴である前後摺接溝11は正面左奧から前方向に向かって右方向へ斜行し、左右摺接溝12は同左奧から右方向に向かって前方向へ斜行している。
【0015】
旋回板2は、載置するタワー型パソコン(図1又は図2参照)の底面に相似な平面長方形の板状で、正面左側に前後及び左右スライダ13,14、同右側に自在キャスタ6,6を取り付けている。これにより、旋回板2は支持板4に対して各スライダ13,14、床面に対して自在キャスタ6,6の計4点支持される。このほか、旋回板2には載置したタワー型パソコン側面に宛がう支持ガイド19を正面側縁から立設し、側方側縁には旋回時に作業者が持つ取手7を取り付けている。支持ガイド19からは、従来より見られるパソコン固定手段として、タワー型パソコンに懸け回す固定バンド20(図1又は図2参照)を取り付けている。載置したタワー型パソコンは、支持ガイド19に側面を宛がい、固定バンド20で旋回板2に対して締め付けることで、安定した載置を実現するのである。
【0016】
続いて、図3〜図5の一連の図により、旋回板2の旋回について説明する。旋回開始となる収納状態では、図3に見られるように、前後スライダ13を前後摺接溝11前端、左右スライダ14を左右摺接溝12左端に寄せた位置で、旋回板2が支持板4と連結している。この状態から取手7を持って旋回板2を手前へ引き出すように旋回させ始めると、図4に見られるように、まず左右スライダ14が前方向へ小さく、右方向へ大きく変位するのに対し、前後スライダ13は後方向及び左方向へ小さく変位する。すなわち、近似的に、旋回板2は前後スライダ13を軸とした旋回をするのである。更に取手7を引っ張り旋回板2の旋回を続けると、図5に見られるように、今度は前後スライダ13が左方向へ小さく、後方向へ大きく変位し、左右スライダ14が前方向及び右方向へ小さく変位して、タワー型パソコン(図示略)前面を正面に向けたところで旋回を終了する。図6は、一連の旋回板2の軌跡を表した平面図である。
【0017】
上述の旋回板2の旋回態様が、本考案の特徴となる。これは、各摺接溝11,12がわずかに斜行することによって、前後スライダ13(左右スライダ14)の前後(左右)方向の変位に対し、左右(前後)方向の変位を小さくしていることに基づく。
これにより、各摺接溝11,12それぞれに沿って変位する前後及び左右スライダ13,14は常に等量変位するのではなく、一方が大きく変位するとき、他方は略直交方向に小さく変位し、互いに相手を拘束しながら旋回板2の旋回を規制できることとなる。このように、本考案における摺接溝11,12の斜行は、不用意な旋回板2の旋回を抑制し、スライダ13,14の位置関係で一義的に定まる旋回角度で旋回板2が安定して旋回できるようにするのである。
【0018】
個人使用ではパソコンラックに周辺機器と併せてタワー型パソコンを収納する例が少なくない。本考案の載置台は、単体での設置を基本とするが、パソコンラックに組み込んだ形態での利用も可能である。図7及び図8は本考案を適用したパソコンラック21の一例を示した斜視図であり、図7は旋回板2を横向きにした収納状態、図2は旋回板2を旋回させてタワー型パソコン3前面を正面に向けた状態を表している。パソコンラック21では、予め支持板4を一体に組み付けているので、フランジ面やブラケットは必要なく、本例でも省略している。
【0019】
本例のパソコンラック21の構成を説明する。ラック本体22は、図7に見られるように、4本の支柱23に囲まれた複数段の棚構造を呈し、中段に引き出し可能なスライド機構を有するキーボード棚24を配し、直ぐ上段にはディスプレイを載置するディスプレイ棚25を、下段には複層の備品棚26をそれぞれ配している。旋回板2はタワー型パソコン3を載置するパソコン棚として最下段にあり、載置したタワー型パソコン3は手前に見える支持ガイド19に宛がいながら固定バンド20で締めて転倒防止を図る。ラック本体22の支持脚27は収納可能になっており、必要に応じて前方向に引き出し(図8参照)、奥行きに対してキーボード棚24が大きく前方向へと張り出すラック本体22の転倒防止を図るようになっている。
【0020】
タワー型パソコン3の使用時には、図8に見られるようにキーボード棚24を手前に引き出すと共に、必要に応じて旋回板2を手前へ引き出すように旋回させ、適宜FDやCD-ROMを使用する。図8からも明らかなように、旋回板2を旋回させた状態では、タワー型パソコン3はラック本体22から前方向に突出しており、タワー型パソコン3前面を正面に向けた状態が従来のパソコンラックの奥行きであったとすれば、本考案を適用したパソコンラック21の奥行きがいかに短いものであるかが理解できる。
【0021】
【考案の効果】
本考案のタワー型パソコン載置台により、これまで奥行き方向にスペースを必要としていたタワー型パソコンを、よりスマートに収納かつ利用できるようになる。収納時では横向きにあるタワー型パソコンも、必要時には容易に前面を正面に向けることができるので、使い勝手が悪くなることはない。むしろ、収納時にはタワー型パソコン背面へ側方からアクセスできるようになり、各種インターフェースの結線が容易になる利点が生まれている。また、近年、USBやIEEE1394といった新世代インターフェースがパソコンにも採用されるようになり、パソコンに接続するケーブルも整理され始めている。こうした新世代インターフェースと本考案の載置台とを併用すると、よりタワー型パソコンの収納をスッキリさせることができる。
【0022】
更に、本考案を適用したパソコンラックは、従来にない短い奥行きのパソコンラックの提供を可能にする。パソコンラック自体が大きなスペースを占有していたので、奥行き方向に短くなることは、とりわけ住環境が決して恵まれていない我が国には大きな利点となる。特に、このようなパソコンラックは、液晶ディスプレイを用いる場合に無駄なスペースを発生させない。技術の革新に伴い、薄型化するディスプレイと、より大きくなるパソコンとをうまく調和させながらコンパクトに収納するものが本考案適用のパソコンラックなのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】収納状態のタワー型パソコン載置台を表した斜視図である。
【図2】タワー型パソコン前面を正面に向けた状態のタワー型パソコン載置台を表した斜視図である。
【図3】旋回開始(収納状態)を表した斜視図(タワー型パソコン省略)である。
【図4】旋回途中を表した斜視図(タワー型パソコン省略)である。
【図5】旋回終了(使用状態)をを表した斜視図(タワー型パソコン省略)である。
【図6】一連の旋回板の軌跡を表した平面図である。
【図7】収納状態のパソコンラックを示した斜視図である。
【図8】タワー型パソコン前面を正面に向けた状態のパソコンラックを示した斜視図である。
【符号の説明】
2 旋回板
4 支持板
11 前後摺接溝
12 左右摺接溝
13 前後スライダ
14 左右スライダ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 タワー型パソコンを載置する台であって、位置固定する支持板と該パソコンを載せる旋回板とから構成し、支持板には左右方向にわずかに斜行した前後摺接溝と前後方向にわずかに斜行した左右摺接溝とを略直角位置関係に設け、旋回板には前記各摺接溝に嵌め込む前後及び左右スライダを取り付けてなり、各摺接溝における各スライダの位置関係から一義的に定まる旋回角度に従って該旋回板を旋回可能に支持板に連結したことを特徴とするタワー型パソコン載置台。
【請求項2】 請求項1記載のタワー型パソコン載置台の支持板をラック本体に固定し、通常旋回板を横向きにしてタワー型パソコン側面が正面を向くように収納し、必要に応じて旋回板を旋回させてタワー型パソコン前面が正面を向くようにして、ラック本体の奥行きをタワー型パソコンの横幅に合わせて短くしたことを特徴とするパソコンラック。

【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【登録番号】第3057246号
【登録日】平成10年(1998)12月24日
【発行日】平成11年(1999)4月9日
【考案の名称】タワー型パソコン載置台及びこれを用いたパソコンラック
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−6835
【出願日】平成10年(1998)9月3日
【出願人】(000106612)サンワサプライ株式会社 (8)