説明

ダブルナット締付工具

【課題】特許文献1には緩み防止ボルトについて提案されているものの、緩み防止ボルトに対して締め付けナット及び緩み止めナットを締め付ける方法や、工具について何等記載されていない。これらのナットを緩み防止ボルトに締め付ける場合には、締め付けナットを緩み防止ボルトに締め付けた後、緩み止めナットを締め付けなくてはならない。
【解決手段】本発明のダブルナット締付工具10は、締付用ナットN1を保持する略筒状のクラッチ部11と、このクラッチ部11上に軸芯を共有して配置され且つ緩み止め用ナットN2を保持する略筒状のソケット部12と、クラッチ部11とソケット部12が相対回転可能に収納されたハウジング13とを備え、ソケット部12をクラッチ部11とは独立回転可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルナット締付工具に関し、更に詳しくは、二重ネジ構造の緩み止めボルトに、ピッチの異なる二種類のナットを締め付けるダブルナットタイプ用の締付工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二つのワークを被締結材として締め付ける場合にはボルト、ナットが広く用いられている。特に振動の激しい部分に用いられるボルト、ナットは、振動によるナットの緩みが避けがたいものであった。そこで、従来から一本のボルトに締結用ナット及び緩み止め用ナットとして二つのナットを締め付けるダブルナット構造を採用し、緩み止め用ナットによって締結用ナットの緩み防止していた。しかし、ダブルナット構造でも、二つのナットは同一のピッチを有するため、振動や衝撃などによってナットが一旦緩んでしまうと、二つのナットはそれぞれボルトにおいて自由に回転できるため、緩み防止としては必ずしも万全ではなかった。
【0003】
そこで、特許文献1では上述の問題を解決した緩み防止ボルトが提案されている。この緩み防止ボルトは、一本のボルトにピッチの異なる二種類の雄ネジが形成された二重ネジ構造を有している。そして、二重ネジ構造のボルトに二種類の雄ネジに対応する締め付けナットと緩み止めナットを順次締め付け、振動、衝撃などによるナットの共回りを確実に防止するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−184848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には緩み防止ボルトについて提案されているものの、緩み防止ボルトに対して締め付けナット及び緩み止めナットを締め付ける工具について何等記載されていない。従って、これらのナットを緩み防止ボルトに締め付ける場合には、それまでのダブルナット構造と同様に、締め付けナットを緩み防止ボルトに締め付けた後、緩み止めナットを締め付けて緩み防止を行わなくてはならず、二度に渡るナットの締め付け作業が必要であり、締め付け工程が煩雑で作業効率が悪いという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、二重ネジ構造のボルトにピッチの異なる二種類のナットを一度の操作で締め付けることができ、締め付け作業の効率を格段に高めることができるダブルナット締付工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載のダブルナット締付工具は、ピッチの粗い第1のナットとピッチの細かい第2のナットそれぞれを二重ネジ構造のボルトに締付けるダブルナット締付工具であって、第1のナットを保持する略筒状のクラッチ部と、このクラッチ部上に軸芯を共有して配置され且つ第2のナットを保持する略筒状のソケット部と、上記クラッチ部と上記ソケット部が相対回転可能に収納されたハウジングとを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項2に記載のダブルナット締付工具は、請求項1に記載の発明において、上記クラッチ部と上記ソケット部との間に、これら両者を連結し、解除するクラッチ機構を設け、且つ、上記クラッチ機機構は、上記クラッチ部との連結を解除し、上記ソケット部を上記クラッチ部とは独立回転可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項3に記載のダブルナット締付工具は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記クラッチ機構は、上記クラッチ部と上記ソケット部のいずれか一方に、周方向に所定間隔を空けて形成された複数の凹部と、これらの凹部内にそれぞれ弾力的に収納されたボールと、上記クラッチ部と上記ソケット部のいずれか他方に周方向に所定間隔を空けて形成され且つ上記ボールがそれぞれ弾力的に嵌まり込む複数の溝部を有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項4に記載のダブルナット締付工具は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、上記第1のナットを保持する保持部は、上記クラッチ部の内周面の周方向に等間隔を空けて上記内周面から突出して配設された複数のボールを有し、上記第2のナットを保持する保持部は、上記ソケット部の内周面の周方向に等間隔を空けて上記内周面から突出して配設された複数のボールを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、二重ネジ構造のボルトにピッチの異なる二種類のナットを一度の操作で締め付けることができ、締め付け作業の効率を格段に高めることができるダブルナット締付工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜図5に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。尚、図1は本発明の一実施形態のダブルナット締付工具と二重ネジ構造のボルトとの関係を示す断面図、図2は図1に示すダブルナット締付工具を用いて二重ネジ構造のボルトにダブルナットを締め付けた状態を示す断面図、図3は図1に示すダブルナット締付工具のクラッチ部を示す断面図で、(a)は上部から見た平面図、(b)は断面図、図4は図1に示すダブルナット締付工具のソケット部を示す断面図で、(a)は上部から見た平面図、(b)は断面図、(c)は貫通孔を通る断面図である。
【0013】
本実施形態のダブルナット締付工具10は、例えば図1に示すように、ワークW1、W2に挿入された二重ネジ構造の緩み防止ボルトBにピッチの粗い第1のナット(以下、「締結用ナット」と称す。)N1とピッチの細かい第2のナット(以下、「緩み止め用ナット」と称す。)N2と螺合し、これら両者N1、N2を一回の操作で締付けるための工具である。
【0014】
即ち、本実施形態のダブルナット締付工具10は、図1に示すように、締結用ナットN1を保持する略筒状のクラッチ部11と、このクラッチ部11上に軸芯を共有して配置され且つ緩み止め用ナットN2を保持する略筒状のソケット部12と、クラッチ部11とソケット部12が相対回転可能に収納されたハウジング13と、を備えている。そして、クラッチ部11とソケット部12との間には、これら両者11、12を連結し、この連結を解除するクラッチ機構14が設けられ、このクラッチ機構14は後述のようにソケット部12とクラッチ部11とを連結した時にソケット部12の回転力を伝達し、これら両者11、12の連結を解除した時にソケット部12のみが回転するようにしてある。
【0015】
クラッチ部11は、図1、図3の(a)、(b)に示すように、筒状小径部11Aと、筒状小径部11Aに上方に軸芯を共有して連設された筒状大径部11Bと、これら両者11A、11Bの境界として内周面に沿って形成された水平段部11Cとを有し、筒状小径部11Aで締結用ナットN1を掴み、筒状大径部11B内でソケット部12を保持するようにしてある。つまり、筒状小径部11Aは締結用ナットN1の保持部として形成され、その内径は締結用ナットN1の平面の最大寸法より僅かに大きく形成され、筒状大径部11Bの内径はソケット部12の下部を収納できる大きさに形成されている。そこで、以下では、必要に応じてクラッチ部11の筒状小径部11Aを保持部11Aと称する。
【0016】
また、筒状小径部11Aには例えば周方向に120°ずつ空けた三箇所に貫通孔11Dが形成され、これらの貫通孔11D内にはそれぞれ締結用ナットN1を掴むためのボール11Eが収納されている。これらの貫通孔11Dはそれぞれ筒状小径部11Aの下端から同一高さに形成され、それぞれの内端に形成された縮径部によってボール11Eが貫通孔11Dから筒状小径部11Aの内側へ飛び出さないようになっている。そして、これらのボール11Eは、その一部が筒状小径部11Aの内周面から突出し、クラッチ部11Aの回転時に筒状小径部11A内にある締結用ナットN1の三面の端部にそれぞれ接触して締結用ナットN1を掴んで回転させるようにしてあり、しかもハウジング13によって貫通孔11D内に拘束されている。三箇所のボール11Eによって挟持された締結用ナットN1は、三箇所の側面の端部が筒状小径部11A内で3箇所のボール11Eに接触して僅かの角度しか回転できないようになっている。
【0017】
また、筒状大径部11B内にはソケット部12の下部が収納され、水平段部11Cでソケット部12の下端を支承し、筒状大径部11Bによってソケット部12を回転可能に保持している。
【0018】
ソケット部12は、図1、図4(a)〜(c)に示すように、筒状大径部12Aと、筒状大径部12Aの上方に軸芯を共有して連設された筒状小径部12Bと、筒状大径部12Aの上部にこれより大径に形成され且つクラッチ機構14の作動部を内蔵するフランジ部12Cとを有し、筒状大径部12Aで緩み止め用ナットN2を掴むと共にクラッチ機構14を介してクラッチ部11と連結し、あるいはクラッチ部11との連結を解除するようにしてある。筒状大径部12Aの下部には緩み止め用ナットN2の保持部12Dがクラッチ部11の筒状小径部11Aと同様に構成され、この保持部12Dの内径は緩み止め用ナットN2の最大寸法より僅かに大きく形成されている。また、筒状大径部12Aの外径はクラッチ部11の筒状大径部11Bの内径より僅かに小径に形成され、筒状大径部12A内に筒状大径部11Aが嵌合するようになっている。更に、筒状大径部12Bの保持部12Dの上端は縮径した水平段部が全周に渡って形成され、この水平段部が緩み止め用ナットN2の係止部12Eとして形成されている。
【0019】
また、図1に示すように、筒状大径部12Aの保持部12Dとクラッチ部11の保持部11Aは、それぞれ実質的に同一内径に形成され、緩み止め用ナットN2が保持部12Dから保持部11Aを経由して抜けるように形成されている。そして、これらの保持部11A、12Dは、締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2とを緩み防止ボルトBに対して一緒に締め付ける時に、締結用ナットN1が緩み防止ボルトBに沿って速く進んで緩み止め用ナットN2から所定の距離だけ離間すると締結用ナットN1が保持部11Aのボール11Eから外れて保持部11Aから開放されると、後述のようにクラッチ機構14の働きでクラッチ部11が締結用ナットN1を締め付けることなく、ソケット部12と一緒に回転して緩み止め用ナットN2のみを締め付け、ソケット部11が緩み防止ボルトBに沿って進むと、再びクラッチ部11のボール11Eで締結用ナットN1を掴んで両ナットN1、N2を一時的に同時に締め付け、以降この動作を繰り返すようにしてある。
【0020】
図1、図4の(a)〜(c)に示すように、筒状大径部12Aの保持部12Dにはクラッチ部11の保持部11Aと同様に周方向に120°ずつ空けた三箇所に貫通孔12Fが形成され、それぞれの貫通孔12F内に緩み止め用ナットN2を掴むためのボール12Gが収納されている。これらのボール12Gは、貫通孔12F内端の縮径部とクラッチ部11の筒状大径部11Bによって貫通孔12F内に封じ込まれている。三箇所のボール12Gによって挟持された緩み止め用ナットN2は、ソケット部12の回転時に、三箇所の側面の端部が保持部12D内で3箇所のボール12Gに接触して僅かの角度しか回転できないようになっている。これらのボール12Gは、クラッチ部11のボール12Eとは周方向に60°ずらして配置されている。
【0021】
フランジ部12Cの外径はクラッチ部11の筒状大径部11Bの外径と実質的に同一寸法に形成され、これら両者でハウジング13の内径より僅かに小径の外周面が形成されている。また、ハウジング13は、図1に示すように、ハウジング本体13Aと、ハウジング本体13Aの下端に連設された縮径部13Bとからなり、ハウジング本体13A内にクラッチ部11及びソケット部12が収納され、ハウジング本体13Aと縮径部13Bの境界に形成された水平段部13Cでクラッチ部11の筒状大径部11B外側の下面が支承されていると共に、クラッチ部11の筒状小径部11Aが縮径部13Bと接触した状態で突出している。従って、クラッチ部11及びソケット部12はハウジング13内にガタツクことなく収納されている。
【0022】
また、フランジ部12Cには、図1、図4の(a)〜(c)に示すように、例えば周方向に120°ずつ空けた三箇所に上下方向に貫通するネジ孔12Hが形成され、このネジ孔12H内にクラッチ機構14が内蔵されている。
【0023】
即ち、クラッチ機構14は、三箇所のネジ孔12Hとその上部で螺合する調整ネジ14Aと、これらの調整ネジ14Aによって下方に形成された凹部内にそれぞれ収納されたコイルスプリング14Bと、これらのコイルスプリング14Bによってそれぞれ下方に付勢されたクラッチ用ボール14Cと、これらのボール14Cがそれぞれ弾力的に嵌入しソケット部12とクラッチ部11とを連結するようにクラッチ部11の筒状大径部11Bの上端面に形成された12箇所のクラッチ用溝14Dと、を有し、締結用ナットN1及び緩み止め用ナットN2の種類に応じて調整ネジ14Aによってコイルスプリング14Bの弾力を調整し、クラッチ用ボール14Cの付勢力を調整できるようになっている。これらのクラッチ用溝14Dは、クラッチ用ボール14Cの数よりも多く形成されている。
【0024】
緩み防止ボルトBに対して締結用ナットN1及び緩み止め用ナットN2を一緒に締め付ける時に、クラッチ機構14のクラッチ用ボール14Cがソケット部12側からクラッチ用溝14Dに嵌入してソケット部12とクラッチ部11とが連結したクラッチオンの状態であり、この状態でソケット部12の回転トルクをクラッチ部11に伝達する。また、クラッチ部11による締結用ナットN1の締結を終了し、ソケット部12による緩み止め用ナットN2の締結を終了していない時には、クラッチ機構14がクラッチオンとクラッチオフを繰り返しながらクラッチ部11によって緩み止め用ナットN2の締結のみを行う。
【0025】
即ち、緩み止め用ナットN2から離間した状態で締結用ナットN1の締め付けを終了すると、クラッチ部11は締結用ナットN1を掴み、それ以上回転しないため、ソケット部12の回転力がクラッチ機構14のコイルスプリング14Bの付勢力に打ち勝ってクラッチ用ボール14Cがクラッチ用溝14Dからクラッチ部11の筒状大径部11Bの上端面へ乗り上げ、クラッチオフの状態になり、ソケット部12のみが回転して緩み止め用ナットN2のみを締め付ける。クラッチ用ボール14Cが再びクラッチ用溝14Dに嵌入しクラッチオンになってもソケット部12の回転力がコイルスプリング14Bの付勢力に勝るため、クラッチ機構14がクラッチオフになって緩み止め用ナットN2を締め付ける。緩み止め用ナットN2の締め付け終了まで、クラッチ機構14はオン、オフを繰り返す。緩み止め用ナットN2が締結用ナットN1と接触し、緩み止め用ナットN2の締め付けが終了すると、ソケット部12はそれ以上回転せず、締結用ナットN1及び緩み止め用ナットN2双方の締め付けが終了したことになる。
【0026】
また、フランジ部12Cの上面にはカラー部材15が装着され、カラー部材15によってフランジ部12Cの上面を被覆している。カラー部材15の内径は筒状小径部12Bの外径よりも僅かに大径に形成され、その外径はハウジング13の内径より僅かに小径に形成されている。更に、ハウジング13の上端部内周面にはカラー部材15との間に僅かの隙間を空けて溝が全周に渡って形成され、この溝内にストップリング16が装着されている。このストップリング16は、ハウジング13内に装着されたクラッチ部11及びソケット部12をハウジング13から抜け出さないようにしている。
【0027】
更に、ソケット部12の上部にはダブルナット締付工具10を操作するための操作具(図示せず)を連結するための連結孔12Iが形成されている。この連結孔12Iは平面形状が略正方形に形成され、操作具を連結することによってダブルナット締結具10を回転できるようになっている。操作具は手動方式であっても電動方式であっても良い。従って、ダブルナット締付工具10を操作する場合には、操作具の連結部をソケット部12の連結孔12Iに差し込み、操作具とダブルナット締付具10とを連結し、操作具を介してダブルナット締付具10を回転操作し、一度の操作で締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2を緩み防止ボルトBにそれぞれ締め付けるようにしてある。
【0028】
次いで、本実施形態のダブルナット締付工具10の一使用態様について説明する。まず、例えば図1に示すワークW1、W2に装着された緩み防止ボルトBに締結用ナットN1を装着した後、緩み止め用ナットN2を装着する。次いで、ダブルナット締付工具10の保持部11A、12Dを上下のナットN2、N1に嵌合させる。
【0029】
然る後、ダブルナット締付工具10の連結孔12Iを介して操作具を連結した後、操作具を用いてダブルナット締付工具10を回転させると、締結用ナットN1及び緩み防止ボルトBが緩み防止ボルトBに沿って同時に螺進する。この際、締結用ナットN1は、緩み止め用ナットN2よりピッチが粗いため、緩み止め用ナットN2より速く進み、緩み止め用ナットN2から徐々に離間し、締結用ナットN1がクラッチ部11の保持部11Aから外れる。すると、クラッチ部11はソケット部12と一緒に回転し、緩み止め用ナットN2のみを締め付ける。
【0030】
ソケット12によって緩み止め用ナットN2の締結が進むと、再度クラッチ部11が締結用ナットN1に噛み込んで締結用ナットN1を掴み、締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2を一緒に締結する。このように緩み止め用ナットN2を連続的に締め付ける間に締結用ナットN1のみの締め付けを間欠的に停止ながら、締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2の締め付けが進行すると、遂には締結用ナットN1の締め付けが図2に示すように終了する。締結用ナットN1の締め付けが終了すると、クラッチ部11はそれ以上回転せず、クラッチ機構14のオン、オフを繰り返しながらソケット部12のみで緩み止め用ナットN2を締め付ける。緩み止め用ナットN2の締め付けを終了すると両ナットN1、N2の締め付けが完了する。締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2の締め付けが終了すると、これら両ナットN1、N2間の端面同士が揃っていなくても、ダブルナット締付工具10を両ナットN1、N2から簡単に取り外すことができる。
【0031】
以上説明したように本実施形態によれば、ピッチの粗い締結用ナットN1を保持する略筒状のクラッチ部11と、このクラッチ部11上に軸芯を共有して配置され且つピッチの細かい緩み止め用ナットN2を保持する略筒状のソケット部12と、クラッチ部11とソケット部12が相対回転可能に収納されたハウジング13とを備えているため、締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2を緩み防止ボルトBに対して一回の操作で一緒に締め付けることができ、従来のように締結用ナットと緩み止め用ナットを2回に分けて締め付けるという煩雑な締結操作が不要で、ダブルナットの締め付け作業効率を格段に高めることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、クラッチ部11とソケット部12との間に、これら両者11、12を連結し、解除するクラッチ機構14を設け、且つ、クラッチ機機構14は、クラッチ部11との連結を解除し、ソケット部12をクラッチ部11とは独立回転可能に構成されているため、締結用ナットN1を締め付けた後、クラッチ機構14がオン、オフを繰り返すことによって緩み止め用ナットN2のみを締め付け、これら両ナットN1、N2を緩み防止ボルトBに対して確実に締め付けることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、クラッチ機構14は、ソケット部12のフランジ部12Cに、周方向に所定間隔を空けて形成された三箇所の凹部と、これらの凹部内に収納されたコイルスプリング14Bと、これらのコイルスプリング14Bによって弾力的に付勢されるクラッチ用ボール14Cと、クラッチ部11の筒状大径部11Bの上端面に周方向に所定間隔を空けて形成され且つクラッチ用ボール14Cがそれぞれ弾力的に嵌まり込む12箇所のクラッチ用溝部14Dを有するため、締結用ナットN1を緩み防止ボルトBに締め付け後であっても、緩み止め用ナットN2のみを緩み防止ボルトBに締め付けることができ、両ナットN1、N2を確実に緩み防止ボルトBに締め付けることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、締結用ナットN1を保持する保持部は、クラッチ部11の保持部11A内周面の周方向に等間隔を空けて内周面から突出して配設された3個のボール11Eを有し、緩み止め用ナットN2を保持する保持部は、ソケット部12の保持部12D内周面の周方向に等間隔を空けて内周面から突出して配設された3個のボール12Gを有するため、クラッチ部11及びソケット部12で締結用ボルトN1及び緩み止め用ナットN2をそれぞれ保持して確実に締め付けることができる。
【0035】
尚、本発明は上記実施形態に何等制限されるものではなく、例えば、クラッチ機構14をクラッチ部11側に設けても良く、また、クラッチ用ボール14Cを弾力的に付勢するコイルスプリング14Bに代えて他のゴム等の弾性部材を用いても良い。また、クラッチ部11の保持部11Aとソケット部12の保持部12Dで形成される空間を締結用ナットN1と緩み止め用ナットN2とを重ねた高さと実質的に同一にしても良い。要は、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の構成要素を適宜設計変更したものであれば全て本発明に包含される。また、ダブルナット締付工具10の使用態様は上記実施形態に何等制限されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、二重ネジ構造からなる緩み止めボルトにピッチの粗い締結用ナットとピッチの細かい緩み止め用ナットを一緒に締め付ける際に使用するダブルナット締付工具として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態のダブルナット締付工具と二重ネジ構造のボルトとの関係を示す断面図である。
【図2】図1に示すダブルナット締付工具を用いて二重ネジ構造のボルトにダブルナットを締め付けた状態を示す断面図である。
【図3】図1に示すダブルナット締付工具のクラッチ部を示す断面図で、(a)は上部から見た平面図、(b)は断面図である。
【図4】は図1に示すダブルナット締付工具のソケット部を示す断面図で、(a)は上部から見た平面図、(b)は断面図、(c)は貫通孔の中心を通る断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ダブルナット締付工具
11 クラッチ部
11A 筒状大径部、保持部
12 ソケット部
12D 保持部
13 ハウジング
13A ストップリング
13B カラー
14 クラッチ機構
14B コイルスプリング(弾性部材)
14C クラッチ用ボール(ボール)
14D クラッチ用溝(溝部)
B 緩み防止ボルト(二重ネジ構造のボルト)
N1 締結用ボルト(第1のナット)
N2 緩み止め用ナット(第2のナット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチの粗い第1のナットとピッチの細かい第2のナットそれぞれを二重ネジ構造のボルトに締付けるダブルナット締付工具であって、第1のナットを保持する略筒状のクラッチ部と、このクラッチ部上に軸芯を共有して配置され且つ第2のナットを保持する略筒状のソケット部と、上記クラッチ部と上記ソケット部が相対回転可能に収納されたハウジングとを備えたことを特徴とするダブルナット締付工具。
【請求項2】
上記クラッチ部と上記ソケット部との間に、これら両者を連結し、解除するクラッチ機構を設け、且つ、上記クラッチ機機構は、上記クラッチ部との連結を解除し、上記ソケット部を上記クラッチ部とは独立回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のダブルナット締付工具。
【請求項3】
上記クラッチ機構は、上記クラッチ部と上記ソケット部のいずれか一方に、周方向に所定間隔を空けて形成された複数の凹部と、これらの凹部内にそれぞれ弾力的に収納されたボールと、上記クラッチ部と上記ソケット部のいずれか他方に周方向に所定間隔を空けて形成され且つ上記ボールがそれぞれ弾力的に嵌まり込む複数の溝部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダブルナット締付工具。
【請求項4】
上記第1のナットを保持する保持部は、上記クラッチ部の内周面の周方向に等間隔を空けて上記内周面から突出して配設された複数のボールを有し、上記第2のナットを保持する保持部は、上記ソケット部の内周面の周方向に等間隔を空けて上記内周面から突出して配設された複数のボールを有することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のダブルナット締付工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−167894(P2006−167894A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367151(P2004−367151)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(302006599)有限会社エコツール (2)
【出願人】(504466764)有限会社アイテック (1)