説明

ダンプトラックのベッセル支持構造

【課題】ベッセルの庇部の取付け部の補強部分を可及的に軽量化し、結果的にベッセルの軽量化と積載重量の増大が図れるダンプトラックのベッセル支持構造を提供する。
【解決手段】車体1の前部にキャビン4およびデッキ5を備える。車体1の後部のヒンジピン7を中心としてホイストシリンダ8により起伏可能にベッセル6を設置する。ベッセル6の前部に、ベッセル6倒伏姿勢においてキャビン4およびデッキ5を覆う庇部6cを備える。デッキ5上に、ベッセル6の倒伏姿勢において庇部6cを支持する支持枠20を備える。支持枠20および庇部6cの相互の当接部の少なくともいずれか一方に緩衝材22を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックの車体に起伏可能に取付けられるベッセルの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山や土木建設工事に使用される大型ダンプトラックは、車体と、土砂や鉱物等の積載物を積み込むベッセルとを備えている。そして車体とベッセルとは、車体後部のホイストヒンジを中心にホイストシリンダにより起伏されるように取付けられる。また、ベッセルの底面にはゴムパッドが取付けられ、ベッセルがフレームに対して倒伏姿勢にある時には、ゴムパッドが車体上に着座するため、凹凸のある路面走行中の振動や積載物積み込み時の衝撃がこのゴムパッドに吸収される。
【0003】
さらにベッセルの前方下部には、下方に突出する形状のガイドが、正面視で左右に2つ設けられている。また、車体には、2つのガイド当てが2箇所設けられている。そして、ベッセルが車体上に着座する倒伏姿勢の時には、ベッセルに設けた左右のガイドが車体に設けたガイド当ての両側に位置した状態となる。このため、例えば旋回走行中においては、ベッセルが車体に対して左右方向に移動した場合には、ガイドがガイド当てに当接することによってベッセルの左右方向への移動が制限される。
【0004】
また、近年においては、特許文献1に示すように、不整地路面の凹凸等による走行中の上下方向の過度の振動を抑制するため、ハッチ型(特許文献1の図5参照)、ブレーキパッド型(同文献の図8参照)、ピン挿入型(同文献の図12参照)のベッセル浮き上がり防止装置が考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−268577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、従来のベッセル支持構造は、ベッセルの自重やそれに加わる積載物の重量によって、ベッセルの下面に設けたゴムパッドが車体上に接している。また、上述の特許文献1に記載したベッセル支持構造においても、ベッセルを車体に固定する構造となっている。しかし、ベッセルにはその前部にキャビンをデッキを積載物から保護する庇部を、ベッセル本体部から前方に延出させて設けている。この庇部は、ベッセル本体部のみで支持されている構造であり、上述のように凹凸のある路面を走行することにより、車体と共にベッセルが振動する際には、庇部のベッセル本体部に対する取付け部に過大な応力が発生する。そして、この応力によるベッセルの破損を防ぐために、この庇部の取付け部に補強を施す必要があり、その結果ベッセルの重量の増大ならびに積載可能な重量の減少を招くという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、ベッセルの庇部の取付け部の補強部分を可及的に軽量化し、結果的にベッセルの軽量化と積載重量の増大が図れるダンプトラックのベッセル支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のダンプトラックのベッセル支持構造は、
車体の前部に設けたキャビンおよびデッキと、前記車体の後部のヒンジピンを中心としてホイストシリンダにより起伏可能に設置したベッセルと、前記ベッセルの前部に設けられ、ベッセル倒伏姿勢において前記キャビンおよびデッキを覆う庇部とを備えたダンプトラックのベッセル支持構造において、
前記デッキ上に、前記ベッセルの倒伏姿勢において前記庇部を支持する支持枠を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2のダンプトラックのベッセル支持構造は、請求項1に記載のダンプトラックのベッセル支持構造において、
前記支持枠と前記庇部との相互の当接部の少なくともいずれか一方に緩衝材を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3のダンプトラックのベッセル支持構造は、請求項1または2に記載のダンプトラックのベッセル支持構造において、
前記支持枠は、金属製の角材、管材またはアングル材によってこれらの部材間に隙間を形成して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、走行時にベッセルに発生する振動による庇部の過度の上下振動を抑えることができる。このため、庇部の取付け部に加わる力を小さくすることができ、庇部の取付け部の破損を防止することが可能になると共に、庇部の取付け部に過度の補強を施す必要がなくなり、ベッセルの軽量化が達成できる。その結果、積載重量の増大が可能となる。
【0012】
請求項2の発明によれば、庇部と支持枠との間に緩衝材が介在するため、走行時に発生する庇部の振動の際の支持枠との衝突による衝撃や騒音の発生を防止することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、支持枠を構成する部材間に隙間を形成したので、この隙間を通してキャビンからダンプトラックの側方を目視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態を示すダンプトラックをベッセル倒伏姿勢で示す側面図である。
【図2】図1のダンプトラックの正面図である。
【図3】本実施の形態を示すダンプトラックをベッセル起立姿勢で示す側面図である。
【図4】図3のダンプトラックの正面図である。
【図5】本実施の形態の支持枠を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態の緩衝材の取付け構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明のダンプトラックのベッセル支持構造の一実施の形態をベッセル倒伏姿勢で示す側面図、図2はその正面図である。また、図3はこの実施の形態のダンプトラックをベッセル起立姿勢で示す側面図、図4はその正面図である。図1〜図4において、1は車体であり、この車体1は頑丈なフレーム構造をなし、前輪2および後輪3を有する。車体1の前部にはキャビン4と、オペレータや保守員の足場となるデッキ5が後述の構造で設置される。
【0016】
また、車体1上には荷台としてのベッセル6を設ける。ベッセル6は、例えば土砂、砕石物または石炭等鉱物等の重い荷物を多量に積載するため、全長が10〜13mにも及ぶ大型の容器として構成される。このベッセル6は、本体部6aの前部に取付け部6bを介して庇部6cが設けられている。この庇部6cはキャビン4やデッキ5等を上側から覆ってこれらを保護するものである。ベッセル6は車体1の後部のヒンジピン7を中心として左右一対のホイストシリンダ8により起伏される。ベッセル6の下面にはゴムパッド9が取付けられており、ベッセル6が倒伏姿勢にある時は、ベッセル6がゴムパッド9を介して車体1上に着座して走行中の振動や積載物積み込み時の衝撃を吸収する。
【0017】
10はベッセル6の前部の下方に設けた左右移動制限用のガイドであり、このガイド10は、左右2箇所に設けられる。一方、車体6には、ベッセル6を倒伏させて着座させたときに左右のガイド10間に位置するようにガイド当て(図示せず)が設けられている。このため、ベッセル6が倒伏姿勢にある時は、走行中におけるベッセル6の左右方向の移動が制限される。
【0018】
この車体1上におけるキャビン4の下側には原動機としてのエンジンとエンジンにより駆動される発電機や油圧ポンプが搭載され、エンジン等の前方にはラジエータ(いずれも図示せず)が搭載される。
【0019】
図2、図4に示すように、車体1のメインフレーム1a上の左右に縦フレーム12,13を固着し、左側縦フレーム12上に前記キャビン4を設置する。また、メインフレーム1aにおけるキャビン4の右側に前記制御盤14を設置する。この制御盤14は、発電機で発生させた電力により後輪3駆動用電動モータ等を作動させるものである。右側の縦フレーム13上には電気制動で発生する逆起電力を消費する抵抗器15を設置する。
【0020】
前記デッキ5は、縦フレーム12,13の上部および縦フレーム12,13の間に設けられる。16はその外側に立設した手摺である。これらのデッキ5や手摺16はキャビン4の周囲や制御盤14の前部等に左右の縦フレーム12,13に支持させて取付けられる。17はデッキ5上に昇降するために設けた梯子、18はエンジンに吸入する空気中の塵埃を除去するエアークリーナー(図示せず)の前面に設けた吸音ダクトである。
【0021】
次に本発明によるベッセル6の支持構造について説明する。20はベッセル6の倒伏姿勢において、庇部6cを支持するためにデッキ5上に設置した支持枠である。この支持枠20は、デッキ5の前部でかつ左右方向の中央部、すなわち制御盤14の前面に設置され、キャビン5と支持枠20との間、および制御盤14と支持枠20との間に通路が確保される。
【0022】
図5に示すように、この実施の形態の支持枠20は角材、管材またはアングル材からなる縦枠20aと横枠20bとを溶接やボルト付けによって櫓状に組むことにより構成される。この支持枠20の各縦枠20aの下端には平板状の取付け板20cを溶接し、これらの取付け板20cをボルト21によってデッキ5に固定することにより、支持枠20がデッキ5に取付けられる。
【0023】
この支持枠20は天板20dを有し、この天板20dに緩衝材22を取付ける。この実施の形態においては、緩衝材22は図6に示すように、鉄板22a上にゴムパッド22bを溶着して構成したものである。この実施の形態においては、この緩衝材22が天板20d上に複数枚左右に分散配置して設けられている。ベッセル6等の製造上の誤差を吸収するため、支持枠20の天板20dと鉄板22aとの間に必要に応じてシム23を介在させてボルト24、ナット25により緩衝材22を天板20dに取付ける。図4に示すように、緩衝材22に当接する庇部6cの接触部26は庇部6cの下面に溶接した平板等によって構成することにより、平面に形成する。
【0024】
この実施の形態においては、ベッセル6を倒伏姿勢とした状態においては、図1、図2に示すように、庇部6cが支持枠20によって支持されるので、走行時にベッセル6に発生する振動による庇部の過度の上下振動を抑えることができる。このため、庇部6cの取付け部6bに加わる力を小さくすることができ、庇部6cの取付け部6bの破損を防止することが可能になる。また、庇部6cの取付け部6bに過度の補強を施す必要がなくなり、ベッセルの軽量化が達成できる。その結果、積載重量の増大が可能となる。
【0025】
また、この実施の形態においては、庇部6cと支持枠20との間に緩衝材22が介在するため、走行時に発生する庇部6cの振動の際の支持枠20との衝突による衝撃や騒音の発生を防止することができる。
【0026】
また、この実施の形態においては、支持枠20を、縦枠20aと横枠20bとの間に隙間を形成するように櫓状に組んだので、この隙間を通してキャビンからダンプトラックの側方を目視することができる。
【0027】
この実施の形態においては、緩衝材22を支持枠20側に設けたが、この緩衝材22は庇部6c側に設けてもよく、また、支持枠20と庇部6cの両方に設けてもよい。その他、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:車体、1a:メインフレーム、2:前輪、3:後輪、4:キャビン、5:デッキ、6:ベッセル、6a:ベッセル本体部、6b:取付け部、6c:庇部、7:ヒンジピン、8:ホイストシリンダ、9:ゴムパッド、10:ガイド、12,13:縦フレーム、14:制御盤、15:抵抗器、16:手摺、17:梯子、18:吸音ダクト、20:支持枠、22:緩衝材、23:シム、26:接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に設けたキャビンおよびデッキと、前記車体の後部のヒンジピンを中心としてホイストシリンダにより起伏可能に設置したベッセルと、前記ベッセルの前部に設けられ、ベッセル倒伏姿勢において前記キャビンおよびデッキを覆う庇部とを備えたダンプトラックのベッセル支持構造において、
前記デッキ上に、前記ベッセルの倒伏姿勢において前記庇部を支持する支持枠を備えたことを特徴とするダンプトラックのベッセル支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックのベッセル支持構造において、
前記支持枠と前記庇部との相互の当接部の少なくともいずれか一方に緩衝材を設けたことを特徴とするダンプトラックのベッセル支持構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダンプトラックのベッセル支持構造において、
前記支持枠は、金属製の角材、管材またはアングル材によってこれらの部材間に隙間を形成して構成したことを特徴とするダンプトラックのベッセル支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−112250(P2013−112250A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261558(P2011−261558)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)