説明

チアゾリジンジオン化合物を含有する糖尿病治療薬

【課題】
チアゾリジンジオン化合物を含有する、薬物の吸収性に優れた医薬組成物を提供すること。
【解決手段】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩に、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール誘導体混合物又はそれらの混合物を配合した医薬組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チアゾリジンジオン化合物を含有する溶解性に優れた医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インスリン抵抗性改善剤は、インスリン抵抗性を改善し、血糖値を低下する作用があることから、糖尿病等に対する有効な薬剤として使用されている。現在市販されているインスリン抵抗性改善剤としては、ピオグリタゾン(武田薬品工業)やロジグリタゾン(グラクソ・スミス・クライン)などが挙げられる。
【0003】
また、インスリン抵抗性改善剤である、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩を含有する医薬組成物について、特許文献1及び特許文献2に開示されているが、添加剤による効果については何ら記載されていない。
【0004】
先行出願として、PCT/JP2006/31354号が挙げられるが、該出願は、製剤に関する出願である。一方、本出願は、PCT/JP2006/31354号に記載の製剤の糖尿病用途に関する出願であり、本出願とPCT/JP2006/31354号とは、対象が異なる。
【特許文献1】国際公開第00/71540号パンフレット
【特許文献2】国際出願番号PCT/JP2006/301058号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インスリン抵抗性改善剤は、その作用メカニズムから体内への高い吸収性が求められ、そのため、経時的に安定した高い溶解性が要求される。しかしながら、高純度の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(以下、化合物Aとする)が、含水溶媒中において時間経過とともに水和物化することがわかり、その水和物の溶解性が極めて低いことから、化合物Aが投与後体内において水和物化することにより、有効成分の体内への吸収性が低くなることが懸念された。 そこで、発明者らは、高純度の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩を含有する医薬組成物の安定性に関して鋭意研究を行なった結果、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩に、添加剤として、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール誘導体混合物又はそれらの混合物を配合した医薬組成物が、優れた溶解性及び溶解度の経時安定性を有し、温血動物用(特に、ヒト用)の医薬品製剤として有用であることを見出して、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(1)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の含有量が水を除いて98重量%以上の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の精製組成物と、添加物として薬理上許容されるセルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール誘導体混合物から選ばれる1種又は2種以上を含有する糖尿病の治療薬、
(2)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の含有量が水を除いて99重量%以上である上記(1)に記載の糖尿病治療薬、
(3)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度の低下が防止されたことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(4)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の水和物化が防止されたことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(5)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度の低下を防止することにより、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の優れた体内吸収率を保つことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(6)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の水和物化が、含水溶液中で防止されることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(7)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩が、含水溶液中において、溶解度及び溶解性の経時安定性に優れていることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(8)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度低下が、含水溶液中で防止されることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(9)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度低下が、動物の消化管内において防止されることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の糖尿病治療薬、
(10)経口投与用製剤である、上記(1)又は(9)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(11)経口投与用製剤が錠剤である、上記(10)に記載の糖尿病治療薬、
(12)添加物が、薬理上許容されるセルロース又はセルロース誘導体である、上記(1)乃至(11)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(13)薬理上許容されるセルロース又はセルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2910及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる1種以上である上記(12)に記載の糖尿病治療薬、
(14)添加物が、薬理上許容されるポリビニルアルコール誘導体である、上記(1)乃至(13)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(15)薬理上許容されるポリビニルアルコール誘導体が、ポリビニルアルコール部分けん化物である上記(14)に記載の糖尿病治療薬、
(16)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩が、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩である、上記(1)乃至(15)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(17)乾式造粒法により製造される、請求項1乃至16のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(18)湿式造粒法により製造される、上記(1)乃至(16)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(19)糖尿病の治療用である、上記(1)乃至(18)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬、
(20)上記(1)乃至(19)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬の製造のための、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩と、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール誘導体混合物から選択される1種又は2種以上の添加物の使用、
(21)上記(1)乃至(20)のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬の製造のための、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩及び薬理上許容されるセルロース又はセルロース誘導体の使用、
(22)5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩を投与する方法であって、前記5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩を必要とする患者に(i) 5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の含有量が水を除いて98重量%以上である精製組成物及び(ii)薬理上許容されるセルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール誘導体混合物から選択される1種又は2種以上の添加物を共同投与することを含む方法、
(23)高純度の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度を保持し、体内吸収率を向上するための上記(22)に記載の方法、
(24)糖尿病を治療又は予防するためにヒトを処置する方法であって、前記ヒトを、(i) 高純度の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩及び(ii)薬理上許容されるセルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール誘導体混合物から選択される1種又は2種以上の添加物を含む医薬組成物で処置することを含む方法、
(25)(i) 高純度の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩及び(ii)薬理上許容されるセルロース又はその誘導体を含む医薬組成物で処置することを含む、上記(24)に記載の方法である。
【0007】
本発明の医薬組成物の有効成分である5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩は、以下の構造で表される化合物又はその薬理上許容される塩であり、前記特許文献1及び2に記載されている。
【0008】
【化1】

【0009】
好適には、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩である。
【0010】
本発明の医薬組成物の添加剤であるセルロース及びその誘導体は、例えば、結晶セルロース(アビセル:旭化成等)、結晶セルロース・カルメロースナトリウム(アビセルRC:旭化成等)、メチルセルロース(メトローズSM:信越化学等)、エチルセルロース(エトセル:Dow Chemical等)、ヒドロキシプロピルセルロース(日曹HPC:日本曹達等)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC:信越化学等)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2208(メトローズ90SH:信越化学等)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2906(メトローズ65SH:信越化学等)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2910(メトローズ60SH:信越化学等)、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート 200731(HPMCP:信越化学等)、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート 220824(HPMCP:信越化学等)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(信越AQOAT:信越化学等)、カルメロース(NS−300:五徳薬品等)、カルメロースカルシウム(ECG−505:五徳薬品等)、カルメロースナトリウム(セロゲン:第一工業製薬等)、クロスカルメロースナトリウム(Ac−Di−Sol:旭化成等)、カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC:フロイント産業等)、酢酸フタル酸セルロース(CAP:和光純薬等)、ヒドロキシエチルセルロース(NATROSOL:Aqualon等)又はこれらの混合物であり、より好適にはメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2910、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム又はこれらの混合物である。
【0011】
「ポリビニルアルコール誘導体」及び「ポリビニルアルコール誘導体混合物」としては、例えば、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物又はこれらを含む混合物を挙げることができる。より好適には、ポリビニルアルコール部分けん化物(GOHSENOL GL-05、日本合成化学工業株式会社等)である。


本発明において高純度の物質とは、主成分の含有量が97重量%の物質をいう。
【0012】
本発明において「含有量」とは、定量分析(好適には、参考例2に記載の定量分析法)により測定される定量値(重量%)である。定量値は、例えば、HPLCで対象物質を測定することにより、その面籍比から求めることができる。
【0013】
本発明の添加剤として使用されるセルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール誘導体混合物又はそれらの混合物は、通常、0.1乃至30重量部であり、好適には、0.5乃至25重量部である。 本発明の医薬品組成物は、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤又は細粒等の経口投与が可能な製剤で使用することができるが、好適には、錠剤である。
【0014】
本発明の医薬組成物は、適宜、製薬学的に許容される添加物を含有してもよい。そのような添加物は、例えば、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α化デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプンナトリウムのようなデンプン誘導体;予めゼラチン化したデンプン;結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロース、クロスカルメロースナトリウムのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、珪酸水和物、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムのようなケイ酸塩誘導体;リン酸二カルシウムのようなリン酸塩誘導体;塩化ナトリウムのような塩化塩誘導体;炭酸カルシウムのような炭酸塩誘導体;硫酸カルシウムのような硫酸塩誘導体;又はこれらの混合物、好適には、糖誘導体、セルロース誘導体又はこれらの混合物、更に好適には、乳糖、マンニトール、結晶セルロース又はこれらの混合物)、結合剤(例えば、上記の賦形剤で例示した化合物;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール;又はこれらの混合物、好適には、セルロース誘導体又はこれらの混合物、更に好適には、ヒドロキシプロピルセルロース)、崩壊剤(例えば、上記の賦形剤で例示した化合物;架橋ポリビニルピロリドン;又はこれらの混合物、好適には、セルロース誘導体又はこれらの混合物、更に好適には、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム又はこれらの混合物)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;安息香酸ナトリウムのような安息香酸金属塩;ビーガム、ゲイロウのようなワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸のようなカルボン酸類;硫酸ナトリウムのような硫酸金属塩;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸金属塩;上記の賦形剤で例示したケイ酸塩誘導体;上記の賦形剤で例示したデンプン誘導体;水素化植物油;カルナバロウ;蔗糖脂肪酸エステル;又はこれらの混合物、好適には、ステアリン酸金属塩、ケイ酸塩誘導体又はこれらの混合物、更に好適には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、無水珪酸又はこれらの混合物)、安定剤(例えば、安息香酸;安息香酸ナトリウムのような安息香酸金属塩;メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソルビン酸;又はこれらの混合物、好適には、安息香酸金属塩、パラオキシ安息香酸エステル類又はこれらの混合物、更に好適には、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン又はこれらの混合物)、流動化剤(例えば、上記の賦形剤で例示したケイ酸塩誘導体;タルク;又はこれらの混合物、好適には、軽質無水ケイ酸、タルク又はこれらの混合物)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート80のようなポリソルベート類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60のようなポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類;ソルビタン脂肪酸エステル類;蔗糖脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類;ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル類;ステアリン酸ポリオキシル類;又はこれらの混合物、好適には、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60又はこれらの混合物)、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黒酸化鉄)、抗酸化剤、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等)又は希釈剤であり得、使用される添加剤の種類及び量は、錠剤、カプセル剤又は他の投与形態薬剤により異なるが、製剤の分野の周知の技術に選択される。
【0015】
例えば、錠剤の場合には、全薬剤組成物中、結合剤の含量は、通常、1乃至10重量部(好適には、2乃至5重量部)であり、崩壊剤の含量は、通常、1乃至40重量部(好適には、5乃至30重量部)であり、滑沢剤の含量は、通常、0.1乃至10重量部(好適には、0.5乃至3重量部)であり、流動化剤の含量は、0.1乃至10重量部(好適には、0.5乃至5重量部)である。
【0016】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される添加物を用いて周知の方法(例えば、乾式製法、水を用いる混練方法、湿式造粒方法等)により容易に製造される。

本発明における「湿式造粒法」とは、水又は水とアルコール等の混合液を造粒用結合剤として粉体を造粒し製剤化する方法であり、The Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Third Edition)(Leon Lachman 他:LEA & FEBIGER 1986)や、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets volume 1(Second Edition)(Herbert A.Lieberman他:MARCEL DEKKER INC. 1989)のような刊行物に記載されている。ここで造粒とは、粉状、塊状、溶液或いは溶融液状などの原料からほぼ均一な形状と大きさを持つ粒を造る操作をいい、顆粒剤、散剤、細粒剤などの最終製品を作る造粒や、錠剤やカプセル剤などの製造用中間製品を作る造粒がある。 そのような製造の例として、例えば、有効成分、安定化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤及び必要に応じて他の種類の助剤等を添加し、高速撹拌造粒機により混合し、得られた混合物に結合剤の水溶液を加えて練合し、造粒物を得る。その得られた造粒物を、流動層乾燥器を用いて乾燥し、乾燥した造粒物を、破砕造粒整粒機を用いて、スクリーンを強制的に通過させ、滑沢剤、崩壊剤及び必要に応じて他の種類の助剤等を加えてV型混合機で混合させ、得られた混合物を打錠し、又はカプセルに詰めることにより、それぞれ、錠剤又カプセル剤を製造することができる。

本発明における乾式製法には直接打錠法と乾式造粒法がある。「直接打錠法」とは、原料粉末を直接圧縮成形することにより製剤化する方法である。「乾式造粒法」とは、原料粉体をスラッグ又はシート状に圧縮成形し、適当な方法で破砕して製造した顆粒を用いて製剤化する方法である。これらの製法はThe Theory and Practice of Industrial Pharmacy (Third Edition)(Leon Lachman 他: LEA & FEBIGER 1986)や、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets volume 1(Second Edition)(Herbert A.Lieberman他: MARCEL DEKKER INC. 1989)のような刊行物に記載されている。 得られた錠剤は、必要に応じて、糖衣又はコーティング(好適には、コーティング)を施すことができる。例えば、得られた錠剤に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、タルク、酸化チタン、乳糖、トリアセチン又はポリエチレングリコール、黄色三二酸化鉄若しくは三二酸化鉄、及び水からなるコーティング液を、パンコーティング機中で噴霧することにより、フィルムコーティングを施すことができる。
【0017】
又、上記の高速撹拌造粒機により混合し、結合剤の水溶液を加えて練合して得られた練合物を、押し出し造粒機を用いて、顆粒とした後、柵式乾燥機により乾燥し、乾燥した顆粒物を、破砕造粒整粒機を用いて、スクリーンを強制的に通過させることにより、顆粒剤を製造することができる。
【0018】
本発明の医薬組成物は、温血動物(特にヒト)に投与することができ、有効成分である5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の投与量は、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により変化し得るが、例えば経口投与の場合、1回当たり0.001mg/kg〜1mg/kg(好適には0.005mg/kg〜0.05mg/kg)を成人に対して、1日当たり1乃至3回症状に応じて投与することができる。
【発明の効果】
【0019】

本発明によれば、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の水和物の生成を防止することにより、経時溶解安定性に優れ、かつ薬物の吸収性に優れた医薬組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】

次に実施例、製剤例、参考例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 本発明で使用される、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(以下、化合物Aとする)は、参考例1の方法に従って製造することができる。化合物Aの1水和物は、参考例3の方法に従って製造することができる。化合物Aの含有量は、参考例2の方法に従って確認することができる。
【0021】
本発明で使用される製剤添加物は、市販品である。オパドライII 85F48993(OPADRY II 85F48993:Colorcon, Inc.製。以下、オパドライIIとする)は、ポリビニルアルコール、隠蔽剤、可塑剤等を含むプレミックス品であり、オパグロス2(OPAGLOS 2:Colorcon, Inc.製)は、カルメロースナトリウム、隠蔽剤、付着防止剤等含むプレミックス品であり、オパドライWHITE YS-1-18202A(OPADRY YS-1-18202A:Colorcon, Inc.製。以下、オパドライWHITEとする)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、隠蔽剤、可塑剤を含むプレミックス品である。
【実施例】
【0022】
(試験例1)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩(化合物A)の溶解速度試験1
日局第1液(塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0ml及び水を加えて溶かし100mlとしたもの。胃内での薬剤の崩壊,溶出をモデル化した試験液として、通常用いられる。)200mlに、化合物A又は化合物Aの1水和物を約40mgと製剤添加剤[以下の添加剤に中から1つを選択:乳糖(乳糖、BORCULO DOMO INGREDIENTS) 377.6 mg、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC International株式会社) 78.0 mg、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達株式会社) 15.6 mg、ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム、日本油脂株式会社) 5.2 mg、黄色三二酸化鉄(黄色三二酸化鉄、癸己化成株式会社) 0.112 mg]を加え、300mlのコニカルビーカー中、37℃でスターラー攪拌した。30分、1時間、3時間、6時間後毎に、10mlをサンプリングし、アクロディスクLC13(PVDF、ゲルマンサイエンス社製)を用い、ろ過を行なった。初期の3mlを捨て、次の7mlを試験管に取った。そのうち5mlをホールピペットで採り、あらかじめメタノール2mlを入れた試験管に移し混合した。
【0023】
定量は、HPLCを用い、以下に記載の方法に従い作成した検量線から、溶解度を決定した。
【0024】
検量線は、化合物Aのメタノール標準溶液を、400μg/ml、100μg/ml、20μg/mlの濃度で作製し、各標準溶液2mlに日局第1液5mlを加え、混合し、HPLCで定量することにより作製した。
【0025】
HPLC条件
分析カラム:L-column ODS (4.6 mmID×15 cm、(財)化学物質評価研究機構製)
移動相:0.01 mol/l 酢酸緩衝液(pH 5.0)/アセトニトリル 混液 (13:7)
流量:毎分1.0 ml
カラム温度:40 ℃
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:290 nm)
図1に化合物Aの溶解度を測定した結果を示した。
【0026】
図1に示したように、化合物Aのみの場合((I))、時間経過とともに溶解度の低下が見られる。この溶解度低下の原因としては、化合物Aが日局第1液中で水和物に経時的に変化し、その1水和物の溶解度が極めて低いため((VIII))、結果的に化合物Aの溶解度が経時的に低下する結果になったと考えられる。
【0027】
そこで、化合物Aの溶解度の低下防止を目的として各種添加剤の効果を検討し、その結果を表1に示した。表1において、セルロース及び/又はその誘導体を含有する添加剤を含む被験混合物群が、(II)及び(IV)(以下、まとめて「セルロース含有群」とする)であり、セルロース及び/又はその誘導体を含有する添加剤を含まない被験混合物群が、(V)、(VI)及び(VII)(以下、まとめて「セルロース非含有群」とする)である。
【0028】
溶解度試験開始1時間後までは、セルロース含有群とセルロース非含有群の間の溶解度には、あまり差は見られなかった。しかし、それ以降、化合物A及びセルロース非含有群の溶解度は、急速に低下した。一方、セルロース含有群の溶解度は、高い溶解度を維持し続けた。

(試験例2)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩(化合物A)の溶解速度試験2
日局第1液(塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0ml及び水を加えて溶かし100mlとしたもの。胃内での薬剤の崩壊,溶出をモデル化した試験液として、通常用いられる。)200mlに、化合物A又は化合物Aの1水和物を約40mgと製剤添加剤[以下の添加剤に中から1つを選択:オパドライ II 23.9 mg、ポリビニルアルコール(GOHSENOL GL-05、日本合成化学工業株式会社等) 17.2 mg、オパグロス2 23.9 mg]を加え、300mlのコニカルビーカー中、37℃でスターラー攪拌した。30分、1時間、3時間、6時間後毎に、10mlをサンプリングし、アクロディスクLC13(PVDF、ゲルマンサイエンス社製)を用い、ろ過を行なった。初期の3mlを捨て、次の7mlを試験管に取った。そのうち5mlをホールピペットで採り、あらかじめメタノール2mlを入れた試験管に移し混合した。
【0029】
定量は、HPLCを用い、以下に記載の方法に従い作成した検量線から、溶解度を決定した。
【0030】
検量線は、化合物Aのメタノール標準溶液を、400μg/ml、100μg/ml、20μg/mlの濃度で作製し、各標準溶液2mlに日局第1液5mlを加え、混合し、HPLCで定量することにより作製した。
【0031】
HPLC条件
分析カラム:L-column ODS (4.6 mmID×15 cm、(財)化学物質評価研究機構製)
移動相:0.01 mol/l 酢酸緩衝液(pH 5.0)/アセトニトリル 混液 (13:7)
流量:毎分1.0 ml
カラム温度:40 ℃
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:290 nm)

図2に化合物Aの溶解度を測定した結果を示した。
【0032】
溶解度試験開始1時間後までは、化合物A単独と添加剤含有群の間の溶解度には、あまり差は見られなかった。しかし、それ以降、化合物A単独の溶解度は、急速に低下した。一方、セルロース誘導体又はポリビニルアルコールを含む添加剤含有群の溶解度は、高い溶解度を維持し続けた。
【0033】
以上の結果から、化合物Aにセルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール誘導体混合物又はそれらの混合物の添加物を加えることにより、高い溶解度を安定に保つことができることがわかる。このような効果が得られた理由としては、上記添加物が化合物Aの水和物化を阻止していること、さらに水和物化した化合物Aの溶解度を高めていることなどが考えられる。
【0034】
従って、化合物Aと添加剤としてセルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルアルコール誘導体混合物又はそれらの混合物を含有する医薬組成物は、高い溶解度を保つことにより、化合物Aの体内への吸収を高めることができることから、極めて優れた医薬組成物であるということができる。

(製剤例1)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩(化合物A)の錠剤の湿式造粒法による製造方法
表1に示す種類及び量の成分を用いて、以下の方法で化合物Aとセルロース又はその誘導体を含有する錠剤を得た。なお、有効成分の用量、各添加剤の含量、種類については、表1に限定されるものではない。
【0035】
化合物Aに、賦形剤(ラクトース)、崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)を添加し、高速撹拌造粒機により混合し、得られた混合物に結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース)水溶液を加えて練合し、造粒物を得た。その得られた造粒物を流動層乾燥機を用いて乾燥し、乾燥した造粒物を破砕造粒整粒機を用いてスクリーンを強制的に通過させ、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)を加えてV型混合機で混合させた。得られた混合物を直径7mmの杵を用いて成形し、色素(黄色三二酸化鉄)を分散させたコーティング(オパドライ WHITE)水溶液をコーティング機を用いスプレーし、所望の錠剤を得た。
(表1)
___________________________________
成分 1錠当たり量 (mg)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
化合物A 10.9
乳糖 94.4
Ac-Di-Sol 19.5
ヒドロキシプロピルセルロース 3.9
ステアリン酸マグネシウム 1.3
オパドライ WHITE 5.972
黄色三二酸化鉄 0.028
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
合計 136.0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

(製剤例2)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩(化合物A)の錠剤の乾式造粒法による製造方法
表2に示す種類及び量の成分を用いて、以下の方法で化合物Aとセルロース又はその誘導体を含有する錠剤を得た。なお、有効成分の用量、各添加剤の含量、種類については、表2に限定されるものではない。
【0036】
化合物Aに、賦形剤(ラクトース(ダイラクトースS))、崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース)を添加し、V型混合機により混合し、得られた混合物を30メッシュで篩過し、更にV型混合機により混合し混合物を得た。その得られた混合物に滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム)を加えてV型混合機で混合させた。得られた混合物を直径7mmの杵を用いて成形し、色素(黄色三二酸化鉄)を分散させたコーティング(オパドライ WHITE)水溶液をコーティング機を用いスプレーし、所望の錠剤を得た。
(表2)
___________________________________
成分 1錠当たり量 (mg)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
化合物A 10.9
乳糖 94.4
Ac-Di-Sol 19.5
ヒドロキシプロピルセルロース 3.9
ステアリン酸マグネシウム 1.3
オパドライ WHITE 5.972
黄色三二酸化鉄 0.028
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
合計 136.0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

(参考例1)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩の製造方法
(1−1)
特開2001-72671号公報に記載の方法に従って製造した4-[(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イル)メチル]フェノキシ酢酸(18.0kg, 64.0mol)にアセトニトリル(140.9kg)を加え、内温8℃に冷却した後、塩化チオニル(8.3kg, 69.8mol)を加えた。さらにジメチルホルムアミド(14.4L)を加え、同温度〜15℃で3.5時間撹拌した。ここへ、0から10℃に保持した、N-(2-アミノ-5-メトキシフェニル)-N-メチルカルバミン酸tert-ブチル(15.7kg, 62.2mol)及びトリエチルアミン(8.4kg, 83.0mol)のアセトニトリル(84.6kg)溶液を反応温度が0〜5℃に保たれるように冷却しながら1時間かけて滴下した後、同温度でさらに2時間撹拌した。次に水(144L)を22分かけて加え、内温0〜6℃を保ちながら30分間撹拌した後、12時間静置した。得られた結晶をろ別後、水=2:1溶液(54L)で洗浄し、N-{2-{4-[(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イル)メチル]フェノキシアセチルアミノ}-5-メトキシフェニル}-N-メチルカルバミン酸tert-ブチルの湿品結晶を得た。
【0037】
(1−2)
(1−1)で得られたN-{2-{4-[(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イル)メチル]フェノキシアセチルアミノ}-5-メトキシフェニル}-N-メチルカルバミン酸tert-ブチルの湿品結晶のメタノール(450L)に懸濁液を攪拌しながら25分間還流した。懸濁液を0〜5℃まで冷却し、同温度で1時間攪拌した後、析出した結晶を濾別した。得られた結晶をメタノール(54L)で洗浄し、N-{2-{4-[(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イル)メチル]フェノキシアセチルアミノ}-5-メトキシフェニル}-N-メチルカルバミン酸tert-ブチルの湿品精製結晶を得た。
【0038】
(1−3)
(1−2)で得られたN-{2-{4-[(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イル)メチル]フェノキシアセチルアミノ}-5-メトキシフェニル}-N-メチルカルバミン酸tert-ブチルの湿品精製結晶をメタノール(1080L)に懸濁後、還流し溶液とした。この溶液を50℃に冷却し、45分間かけてろ過した。残渣を50℃のメタノール(37L)で洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせ、48℃で38%塩酸(20.9kg)、ついで水(11.2L)を注ぎ、同温度で6時間攪拌した。反応液を0〜5℃まで冷却した後、同温度で30分間攪拌し、12時間静置した。得られた結晶をろ別し、メタノール(91L)で洗浄後、減圧下50℃で乾燥し、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(19.5kg、44.9mol)を得た(参考例1の通算収率70%)。

(参考例2)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(化合物A)の定量分析法
以下に、化合物Aの定量分析法を示す。(2−1)と(2−2)の違いは、化合物Aの精製組成物に含まれる水分含量に関する補正の部分である。
(2−1) 5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(化合物A)の定量分析法1
試料溶解液:アセトニトリル‐0.5%リン酸水溶液(7:13)
内標準溶液:サリチル酸メチル約1mlを試料溶解液に溶解し、200mlとする。
【0039】
標準溶液は以下のように調製した。
【0040】
化合物Aの標準品約0.04gを200mlのメスフラスコに正確に量り取り、試料溶解液を約160ml加えて溶解させた後、内標準溶液10ml及び試料溶液を加え、200mlにした。この液10mlを正確に25mlのメスフラスコに入れた後、試料溶解液を加え、25mlとした。
【0041】
測定試料溶液は以下のように調製した。
【0042】
試料約0.04gを200mlのメスフラスコに量り取り、試料溶解液を約160ml加え溶解させた後、内標準溶液10ml及び試料溶液を加え、200mlにした。この液10mlを正確に25mlのメスフラスコに入れた後、試料溶解液を加え、25mlとした。
【0043】
HPLC条件は、以下の通り。
【0044】
検出波長:290nm
カラム:L-column ODS 4.6 x 150 mm(財団法人 化学物質評価研究機構)
移動層:0.01M酢酸ナトリウム緩衝液(pH = 5)/ アセトニトリル混合液(13:7)
流速:1ml/min(内標準の保持時間が約17分となるように調整する)
カラム温度:40℃
クロマトグラムから各々ピーク面積を求め、下記式に従って、化合物Aの含有量を計算した。
【0045】
化合物Aの含量(%) = W1 × F1 × (QT / QS) × [1 / {W2 × (100 - F2) / 100}] × 100
W1:化合物A標準品の秤取量(g)
W2:試料の秤取量(g)
F1:化合物A標準品の純度係数
F2:カールフィッシャー水分計で測定した試料中の水分
QT:試料と内標準物質とのピーク面積比
QS:化合物A標準品と内標準物質とのピーク面積比
上記に従って分析した結果、試験例1で用いた化合物Aの定量分析値は、99.1重量%であった。参考例1の結晶の定量分析値は、99.4重量%であった。
(2−2) 5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(化合物A)の定量分析法2
試料溶解液:アセトニトリル‐0.5%リン酸水溶液(7:13)
内標準溶液:サリチル酸メチル約1gを試料溶解液(アセトニトリル‐水混液7:13)に溶解し、200mlとする。
【0046】
標準溶液は以下のように調製した。
【0047】
化合物Aの標準品約0.02gを50mlのメスフラスコに正確に量り取り、試料溶解液を約40ml加えて溶解させた後、内標準溶液5ml及び試料溶解液を加え、50mlにした。この液10mlを正確に50mlのメスフラスコに入れた後、試料溶解液を加え、50mlとした。
【0048】
測定試料溶液は以下のように調製した。
【0049】
試料約0.02gを50mlのメスフラスコに量り取り、試料溶解液を約40ml加え溶解させた後、内標準溶液5ml及び試料溶液を加え、50mlにした。この液10mlを正確に50mlのメスフラスコに入れた後、試料溶解液を加え、50mlとした。
【0050】
HPLC条件は、以下の通り。
【0051】
検出波長:290nm
カラム:L-column ODS 4.6 x 150 mm(財団法人 化学物質評価研究機構)
移動層:0.01M酢酸ナトリウム緩衝液(pH = 5)/ アセトニトリル混合液(13:7)
流速:1ml/min(化合物Aの保持時間が約10分となるように調整する)
カラム温度:40℃
クロマトグラムから各々ピーク面積を求め、下記式に従って、化合物Aの含有量を計算した。
【0052】
化合物Aの含量(%) = W1 × F1 ×{ (100 - F2) / 100} ×(QT / QS) × (1 / W2)× 100
W1:化合物A標準品の秤取量(g)
W2:試料の秤取量(g)
F1:化合物A標準品の純度係数
F2:化合物A標準品の水分(%)
QT:試料と内標準物質とのピーク面積比
QS:化合物A標準品と内標準物質とのピーク面積比
上記に従って分析した結果、試験例2で用いた化合物Aの定量分析値は、98.2重量%であった。

(参考例3)
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩(化合物A) 1水和物の製造方法
特開2001-72671号公報に記載の方法に従って製造したN-{2-{4-[(2,4-ジオキソチアゾリジン-5-イル)メチル]フェノキシアセチルアミノ}-5-メトキシフェニル}-N-メチルカルバミン酸tert-ブチル(28.0g, 54.31mmol)のアセトン(700ml)懸濁液を55℃まで加熱し、得られた溶液に水(234ml)を加えた。この溶液に同温度で36%塩酸(46.2ml)を加え、反応混合液を55〜58℃で5.5時間攪拌した。反応懸濁液を25℃まで冷却した後、析出した結晶をろ別し、アセトン(58.8ml)−水(25.2ml)混合溶媒で洗浄した。得られた結晶を減圧下、55℃で乾燥し、目的化合物を得た(22.87g、50.61mmol)。収率93%。
示差熱分析:約77℃および約99℃(脱水に相当する吸熱)、約203℃(吸熱)、約243℃(吸熱)、約281℃(吸熱)。
1H-NMR(500MHz、DMSO-d6)δ(ppm):3.15(1H, dd, J = 9.2 Hz, J = 14.1 Hz), 3.39(1H, dd, J = 4.5 Hz, J = 14.1 Hz), 3.94(3H, s), 4.03(3H, s), 4.95(1H, dd, J = 4.5 Hz, J = 9.2 Hz), 5.67(2H, s), 7.18(2H, d, J = 8.7 Hz), 7.19(1H, brm), 7.30(2H, d, J = 8.7 Hz), 7.54(1H, d, J = 2.0 Hz), 7.74(1H, d, J = 8.9 Hz), 12.09(1H, s).
容量カールフィッシャー法による水分分析:4.27%(一水和物の理論値:3.99%)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩(化合物A)と製剤添加剤[以下の添加剤に中から1つを選択:ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、黄色三二酸化鉄、乳糖、ステアリン酸マグネシウム]を加えた場合の化合物Aの溶解度の維持に与える効果を示した図である。(試験例1)
【図2】5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン塩酸塩(化合物A)と製剤添加剤[以下の添加剤に中から1つを選択:オパドライII、ポリビニルアルコール、オパグロス2]を加えた場合の化合物Aの溶解度の維持に与える効果を示した図である。(試験例2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の含有量が水を除いて98重量%以上の5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の精製組成物と、添加物として薬理上許容されるセルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール誘導体混合物から選ばれる1種又は2種以上を含有する糖尿病の治療薬。
【請求項2】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の含有量が水を除いて99重量%以上である請求項1に記載の糖尿病治療薬。
【請求項3】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度の低下が防止されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項4】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の水和物化が防止されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項5】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度の低下を防止することにより、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の優れた体内吸収率を保つことを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項6】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の水和物化が、含水溶液中で防止されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項7】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩が、含水溶液中において、溶解度及び溶解性の経時安定性に優れていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項8】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度低下が、含水溶液中で防止されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項9】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩の溶解度低下が、動物の消化管内において防止されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の糖尿病治療薬。
【請求項10】
経口投与用製剤である、請求項1乃至9のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項11】
経口投与用製剤が錠剤である、請求項10に記載の糖尿病治療薬。
【請求項12】
添加物が、薬理上許容されるセルロース又はセルロース誘導体である、請求項1乃至11のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項13】
薬理上許容されるセルロース又はセルロース誘導体が、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2910及びクロスカルメロースナトリウムから選ばれる1種以上である請求項12に記載の糖尿病治療薬。
【請求項14】
添加物が、薬理上許容されるポリビニルアルコール誘導体である、請求項1乃至13のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項15】
薬理上許容されるポリビニルアルコール誘導体が、ポリビニルアルコール部分けん化物である請求項14に記載の糖尿病治療薬。
【請求項16】
5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩が、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン 塩酸塩である、請求項1乃至15のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項17】
乾式造粒法により製造される、請求項1乃至16のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項18】
湿式造粒法により製造される、請求項1乃至16のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項19】
糖尿病の治療用である、請求項1乃至18のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれかひとつに記載の糖尿病治療薬の製造のための、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩と、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体及びポリビニルアルコール誘導体混合物から選択される1種又は2種以上の添加物の使用。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一つに記載の糖尿病治療薬の製造のための、5-{4-[(6-メトキシ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)メトキシ]ベンジル}チアゾリジン-2,4-ジオン又はその薬理上許容される塩及び薬理上許容されるセルロース又はセルロース誘導体の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−162949(P2008−162949A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354591(P2006−354591)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001856)三共株式会社 (98)
【Fターム(参考)】