説明

チェンソー

【課題】
作業場所や、切断作業を行なう作業者が異なる場合においても、作業効率を低下させることなく樹木等の切断作業を行なえるチェンソーを提供する。
【解決手段】
本体部2にフロントハンドル3とトップハンドル7が設けられるチェンソー1において、トップハンドル7を支持するに取付部12に、長穴部15を形成してボルトとナット等の締付固定部材14を用いてトップハンドル7を固定することにより、トップハンドル7の上下への回転角度方向および前後へのスライド方向の位置が設定可能とした。トップハンド7と取付部12との連結部分には、切断作業を行なう際における本体部2で生じた振動がトップハンドル7に伝わりにくくするための振動吸収部材11が介在される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源を搭載してなる本体部と、本体部の前方に延びるガイドバーと、ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、ソーチェンの回転を停止させる非常用のブレーキレバーを備え、作業機本体を支持するハンドルが前端部と上端部に配設されたトップハンドル型のチェンソーにおけるトップハンドルの取付構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
丸太や木材の切断から頭上の枝の伐採など様々な場面での作業で、特許文献1のようなエンジンを動力源としたチェンソーが用いられている。通常、チェンソーには作業機本体の前端部と後端部に操縦ハンドルが設けられているリアハンドルタイプと、作業機本体の前端部と上端部に操縦ハンドルが設けられているトップハンドルタイプと、大きく分けて2種類の作業機があり、作業者は用途や切断作業場所に合わせてこれらの作業機を選択する。チェンソーはおもに丸太や木材の切断、樹木の枝打ちやメンテナンス作業、公道や公園の植木の剪定や整備などで使用されており、特に、トップハンドルタイプのチェンソーは、頭上の枝などを伐採するためにも使用されることがあるため、片手でも安易に持ち上げることができるように、小型で軽量なものが多く普及している。また、作業機本体の前端部に設けられたハンドルと上端部に設けられたハンドルは係合され一体となった構造が主流となっている。そのため、ハンドルは所定の位置で固定されており、作業者は、前記2つのハンドルを両手で把持し操縦することで切断作業を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−130930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のようなトップハンドルタイプのチェンソーは、小型や軽量であることから幅広い年齢層に使用される。また、丸太や木材の切断から頭上の枝の伐採など様々な場面での作業で扱われることから、作業者や作業場所に応じた操縦ハンドルの位置を設定できることが望ましい。
【0005】
しかしながら、従来のトップハンドルタイプのチェンソーは、作業機本体の前端部に設けられたハンドルと上端部に設けられたハンドルが係合し一体となった構造が多くあり、ハンドルが上下への角度方向や前後方向が所定の位置で固定されているものがほとんどである。そのため、作業場所や切断する対象物の高さ位置によっては、ハンドルを把持している手や、手首、腕などの適切な角度位置を得ることが難しくなる。また、チェンソーを操作する作業者の体格や骨格はそれぞれ異なるために、作業者によっては切断する対象物に狙いを定めるのが難しく、作業効率を著しく低下させることがある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、様々な作業場所や作業者に応じたトップハンドルタイプのチェンソーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの特徴によれば、動力源を搭載する本体部と、本体部の前方に延びるガイドバーと、前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンと、前記ソーチェンの回転を停止させる非常用のブレーキレバーを備え、前記本体部を支持する操縦ハンドルが、本体部の前端部と上端部に設けられているトップハンドル型チェンソーにおいて、上端部に設けられているトップハンドルの前記本体部との連結部分を上下及び/又は前後に可動式に構成したと共に、切断作業を行なう際における前記本体部で生じた振動がハンドルに伝わりにくくするための振動吸収部材を介在させて前記本体部と前記トップハンドルを固定するように構成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な作業場所や、作業機を扱う作業者の体格や骨格が異なる場合であっても、本体とトップハンドルとの連結部に設けた構成により、トップハンドルの上下への回転角度方向や左右へのスライド方向の位置設定が可能となり、作業効率を向上させることができる。また、トップハンドルをスライドさせるために、スライドさせた際にトップハンドルの取り付け角度が変化せずに作業性を損なわないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】トップハンドル型チェンソーの全体構成を示す側面図である。
【図2】トップハンドル7と本体部2との連結部付近の形状を示す部分拡大図である。
【図3】図2のA−A部の断面図である。
【図4】連結部付近の組み立て構造を示す部品展開図である。
【図5】トップハンドル7の上下方向の取付角度変更方法を示す側面図である
【図6】トップハンドル7の前後方向の取付位置調整方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
以下に本発明の実施例について図を用いて説明する。本明細書においては、前後、上下の方向は図1に示す方向であるとして説明する。
【0011】
図1ではいわゆるトップハンドルタイプのチェンソー1の側面図であり、チェンソー1の本体部2の前端部にはフロントハンドル3を備えている。フロントハンドル3は、本体部2の外周に配設される第一の把持部であり、円柱状の部材を略コの字形状に折り曲げて形成されている。フロントハンドル3は本体部2を支持しており、角度方向、前後方向ともに所定の位置にて固定されている。
【0012】
前記本体部2の前方方向には、板状部材であるガイドバー4が設けられており、その外周部には環状のソーチェン5が巻回されている。本体部2の前方上部には、前記本体部2に傾動自在に取り付けられたブレーキレバー6を備えている。前記ブレーキレバー6は、ソーチェン5のブレーキ機構を作動させるものであり、切断作業中にチェンソーが作業者側に跳ね上がるキックバックが生じたときに、作業者の手に押されてブレーキレバー6が前方に傾動すると、慣性力により自動的にソーチェン5の回転が停止するように構成されている。
【0013】
本体部2の上端部にはトップハンドル7を備えており、これが第二の把持部となる。本体部2には2サイクルエンジン等の動力源(図示せず)が搭載されており、動力源を介して図中の矢印10で示す方向にソーチェン5が回転する。また、トップハンドル7には動力源のON(可動状態)とOFF(停止状態)を切り返すスイッチが設けられている。
【0014】
作業者は、一方の手でフロントハンドル3を把持するとともに、他方の手でトップハンドル7を把持することにより、作業機本体を携帯する。そして、トリガー8を操作して、エンジンの回転数を上昇させてガイドバー4の外周に沿うソーチェン5の回転数を上昇させることにより、ソーチェン5によって樹木等を切断することができる。トップハンドル7に設けられたトリガー8は、動力源の出力を調整して、ソーチェン5の回転数を0〜100%に調節する機能を有し、矢印9方向に回動すると、ソーチェン5の回転数が上昇するようになっている。
【0015】
本体部2の後端上部付近には本体部2から上側に突出し、トップハンドル7を保持するための取付部12が設けられ、取付部12とトップハンドル7との連結部分には。少なくとも1つ以上の長穴部15が形成された部材13を備えている。締付固定部材14は、トップハンドル7と振動吸収部材11、長穴部15を嵌通するように配設されており、前記締付固定部材14を締め付け、振動吸収部材11が長穴部15を形成している部材13を両側から挟持することで、トップハンドル7の回動方向は任意の位置で固定される。チェンソーの操縦ハンドルを上記構成としたため、締付固定部材14を緩めることで、トップハンドル7の上下への回転角度方向の変更が可能となるばかりでなく、トップハンドル7との連結部に設けられた長穴部15がレールの役割を果たすことにより、前後へのスライド方向にも位置設定が可能となっている。
【0016】
振動吸収部材11は、切断作業を行なう際における本体部2で生じた振動が前記トップハンドル7に伝わりにくくするために設けられるものであって、たとえばゴム材などの弾性部材にて構成すると好ましい。尚、部材13は長円状の貫通穴を有する金属板で形成できるが、長穴部15が形成されているのであれば、たとえば取付部12との一体成形によりその形状を製造し、別部材を取付部12に介在させなくてもよい。
【0017】
図5は、トップハンドル7の上下方向の角度変更方向を示す側面図である。トップハンドル7は締付固定部材14によってトップハンドル7の一端側の端部が固定される、いわゆる片持ち式のハンドルであって、締付固定部材14を緩めることによってトップハンドル7は矢印51のように上下方向にその位置が変わるように回動させることができる。このようにトップハンドル7を回動させることによって作業者が把持する把持部分やトリガー8の位置を上下方向に移動させることができる。
【0018】
図6は、トップハンドル7の前後方向の角度変更方向を示す側面図である。締付固定部材14を緩めることによってトップハンドル7を矢印61のように前後方向にスライドさせることができる。このようにトップハンドル7をスライドさせることによって作業者が把持する把持部分やトリガー8の位置を前後方向に変更することができる。尚、図5で示す矢印51の方向への移動と、図6で示す矢印61への方向への移動は共通の締付固定部材14を緩めることによって行うので、矢印51及び61への移動を組み合わせることによって、トップハンドル7を様々な位置に固定することができる。
【0019】
図2はトップハンドル7と本体部2との連結部付近の形状を示す部分拡大図である。図2の状態では締付固定部材14によってトップハンドル7が最前方の位置にあって、最下方に位置するように固定された状態を示している。本実施例では締付固定部材14はボルトとナットで構成できるが、作業者が六角レンチ等の工具を用いずにトップハンドル7の位置を変更できるように、ボルトと蝶ナットを用いて固定するようにしても良いし、その他の公知の固定部材によってトップハンドル7と取付部12を固定するように構成しても良い。
【0020】
図3は図2のA−A部の断面図である。トップハンドル7の筐体の一部には貫通穴が形成され、その内部にボルト14a等の締付固定部材14を貫通させる振動吸収部材11が設けられる。振動吸収部材11はカップ状のゴム製部材であり、底面部にボルトを通すための貫通穴11bが設けられ、開口11aはボルト14a又はナット14bとの間に介在されるワッシャ16によって保持される。
【0021】
図4は、連結部付近の部品展開図である。トップハンドル7の一部(左右両側)には円形の貫通穴7aが設けられ、貫通穴7aにはそれぞれカップ状の振動吸収部材11が、底面側が内側になるように挿入される。振動吸収部材11の外周面の一部には円周方向に連続した円周溝11cが設けられ、円周溝11cが貫通穴7aに嵌合することにより振動吸収部材11がボルト14aの長手方向(軸方向)に外れないように保持される。振動吸収部材11の開口11aは、開口11aの直径よりも径の大きいワッシャ16を介在させてボルト14aとナット14bをねじ締めする。その締め付けを行った後、即ち組立後の状態を示すのが図4の下側の図である。この図から理解できるように、振動吸収部材11の底面の貫通穴11bはボルト14aの直径よりも十分大きい。従って、トップハンドル7は振動吸収部材11を完全に介在させた状態で取付部12に保持されることになる。尚、ワッシャ16は、ボルト14aの座面とナット14bにそれぞれ一体に構成することもでき、いわゆる座金付きのナットやボルトを用いるようにしても良い。また、ナット14bは、蝶ネジを用いるようにしても良い。
【0022】
本実施例によれば、様々な作業場所や、作業機を扱う作業者の体格や骨格が異なる場合であっても、本体とトップハンドルとの連結部に設けた構成により、トップハンドルの上下への回転角度方向や前後へのスライド方向の位置設定が可能となり、作業効率を向上させることができる。また、振動吸収部材11を設けたことによってエンジンの振動がトップハンドル7に伝達することを大幅に抑制することができる。
【0023】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例ではチェンソーを用いて説明したがチェンソーだけに限られず、トップハンドルを有するその他のエンジン作業機、電動作業機であっても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 チェンソー
2 本体部
3 フロントハンドル
4 ガイドバー
5 ソーチェン
6 ブレーキレバー
7 トップハンドル
7a 貫通穴
8 トリガー
9 矢印(トリガー回動方向)
10 矢印(ソーチェン回転方向)
11 振動吸収部材
11a 開口
11b 貫通穴
11c 円周溝
12 取付部
13 長穴部を形成する部材
14 締付固定部材
14a ボルト
14b ナット
15 長穴部
16 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源を搭載する本体部と、本体部の前方に延びるガイドバーと、前記ガイドバーの外周に沿って回転するソーチェンを備え、前記本体部を支持する操縦用のハンドルが、本体部の前端部と上端部に設けられているチェンソーであって、
上端部に設けられるトップハンドルは前後方向にスライドスライドして位置調整可能であり、
前記トップハンドルの前記本体部との連結部分には、切断作業を行なう際における前記本体部で生じた振動がハンドルに伝わりにくくするための振動吸収部材を介在させたことを特徴とするチェンソー。
【請求項2】
前記トップハンドルの上下への回転角度方向や前後へのスライド方向の位置が調節可能となるように、前記本体部には少なくとも1つ以上の長穴部が形成され、
前記長穴部と前記振動吸収部材を貫通する締結部材にて前記トップハンドルを前記本体部に固定したことを特徴とする請求項1に記載のチェンソー。
【請求項3】
前記長穴部は前記本体部との一体成形により構成されることを特徴とする請求項2に記載のチェンソー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111856(P2013−111856A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260153(P2011−260153)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)