説明

チタン合金およびその製造方法

【課題】銅を固溶限まで添加したチタン合金を効率よく製造する方法およびこれを用いたチタン合金を提供する。
【解決手段】銅を1〜10mass%含有しているα+β型またはβ型チタン合金の製造方法であって、(1)α+β型またはβ型チタン合金原料を水素化、脱水素化し、チタン合金粉末を得る工程、(2)前記チタン合金粉に銅粉末を混合して、チタン合金と銅の複合粉末を得る工程、(3)前記チタン合金複合粉末をHIP処理する工程、(4)前記HIP処理材を熱間塑性加工する工程を実施することを特徴とするα+β型またはβ型チタン合金の製造方法。また、この方法で製造されたα+β型またはβ型チタン合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度を要求されるチタン合金に係り、特に、粉末冶金により、チタン合金を製造する技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
軽くて高強度であるチタン合金は、航空機の部材として、あるいは、自動車の部品として、さらには一般の機械部品等で広く使用されている。材料強度の改善により材料の断面積を薄くすることが可能となるために、使用材料の重量削減につながることから、特に、重量削減を課題としている航空機部材、自動車部品の用途では材料強度の改善への要求が高い。
【0003】
高強度チタン合金としては、Ti−6Al−4V合金が代表的で、さらに強度を高めた材料として、Ti−10V−2Fe−3Al合金(10−2−3合金)、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金(15−3−3−3合金)が広く知られている。また、バナジウムの添加量を減らし、鉄、クロム、モリブデン等を添加することで同等もしくは同等以上の強度を有するTi−5Al−5V−5Mo−3Cr合金(5−5−5−3合金)、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金(523AFM合金)も報告されている。さらには、Ti−6Al−4V合金の加工性を改善したTi−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金(SP700合金)、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金(Timetal54M合金)等も報告されている。
【0004】
また、銅を添加することで、室温での強度改善だけではなく、高温特性の改善にも有効であることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、鉄、クロム、銅はいずれもインゴット溶製時に偏析しやすい元素であり、インゴット製造に当たっては、これらの元素の最大添加量は制限されている。特に銅は、チタン合金インゴットが凝固するときの偏析が大きいために、実用合金での添加量が最大2.5%と制限されているようである。
【0005】
すなわち、インゴット溶解製造法では、強度アップや高温特性改善に寄与の大きい銅を固溶限一杯まで添加したチタン合金は製造されていない。
【0006】
このような制限は、粉末冶金法を用いることによって撤廃することができる。すなわち、粉末冶金では、溶融・凝固のプロセスがないために、凝固に伴う偏析が発生しないので、固溶限一杯まで配合しても偏析は生じない。しかしながら、現在のところ、粉末冶金法による銅を固溶限一杯まで添加したチタン合金は製造されていない。これは次の2つの理由によると思われる。
【0007】
第一の理由はコストの問題である。高品質な焼結体の製造技術は、原料としてそれぞれの単体粉末を混合する素粉末混合法として確立されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
しかしながら、素粉末混合法の応用例は限定されているのが現状で、これは素粉末混合法で必要となる原料粉末が高価なことが一因である。すなわち、純チタン粉末、合金元素粉末または合金元素の母合金粉末ともに高価で、インゴット溶製法で作製したチタン合金よりも製造コストが高くなってしまうためである。
【0009】
第二の理由は粉末冶金で製造したチタン合金の品質の問題である。HIPや真空ホットプレスを用いることによって、材料の密度を上げる技術は確立しているものの、疲労特性や高い引張り特性を要求される用途には使用されていない。これは、プロセスに起因する理由である。すなわち、粉末冶金材料には、インゴット溶解製造法で作られた材料のような塑性流動工程がないために、材料の信頼性の点で不十分と思われてしまうことが原因である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】H. Otsuka, H. Fujii, K. Takahashi and M. Ishii: Ti-2007 Science and Technology (Kyoto, 2007), pp1391-1394.
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−009630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、粉末冶金法によれば、偏析の問題は避けることができるものの、コストの問題、品質の問題で、銅を固溶限一杯まで添加したチタン合金は製造されていない。
【0013】
本発明は、銅を固溶限まで添加したチタン合金を効率よく製造する方法およびこれを用いたチタン合金を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる実情に鑑みて、偏析の起こらない粉末冶金法でのチタン合金製造を種々検討してきたところ、α+β型またはβ型チタン合金原料を水素化、脱水素化し、チタン合金粉末を得、このチタン合金粉末に、銅粉末を混合して、チタン合金粉末とこれら粉末の複合粉末を得て、この粉末をHIPし、さらに熱間圧延することによって、銅を固溶限一杯まで添加したチタン合金焼結体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、銅を1〜10mass%含有しているα+β型またはβ型チタン合金の製造方法であって、
次の(1)〜(4)の工程
(1)α+β型またはβ型チタン合金原料を水素化、脱水素化し、チタン合金粉末を得る工程
(2)前記チタン合金粉に銅粉末を混合して、チタン合金と銅の複合粉末を得る工程
(3)前記チタン合金複合粉末をHIP処理する工程
(4)前記HIP処理材を熱間塑性加工する工程
を実施することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明に係るα+β型またはβ型チタン合金の製造方法は、前記熱間塑性加工が、熱間押出、熱間圧延、熱間鍛造のいずれかであることを好ましい態様とするものである。
【0017】
また、本発明に係るα+β型またはβ型チタン合金の製造方法は、前記チタン合金原料がTi−6Al−4V合金、Ti−10V−2Fe−3Al合金、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金、Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金、Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金であることを好ましい態様とするものである。
【0018】
また、本発明に係るα+β型またはβ型チタン合金の製造方法は、前記熱間塑性加工を、(β変態点−200℃)〜(β変態点+100℃)の温度範囲で行うことを好ましい態様とするものである。
【0019】
更に、本発明に係るα+β型またはβ型チタン合金は、前記いずれかの方法で製造されたことを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明に係るα+β型またはβ型チタン合金は、引っ張り強さが1000MPa〜1500MPa、伸びが9%〜15%であることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従えば、前記チタン合金中に銅を1〜10mass%という、従来にはない高濃度域まで偏析なく含有させることができるという効果を奏するものである。
【0022】
その結果、チタン合金材料の機械的特性を効果的に向上できるという効果を奏するものであり、引張り強さでは、銅無添加合金と比べて10%〜25%大きな値を維持することができる。
【0023】
更には、引張り強さが極めて大きい材料も可能であるし、強さと伸びのバランスのとれた材料も可能である。強さと伸びのバランスのとれた材料の一例としては、伸びは10%以上と殆ど低下がないままに、引張り強さが銅無添加材と比べて20%増しの材料が可能であるという効果を奏するものである。
【0024】
また、本発明においては原料としてチタン合金スクラップを使うことができ、銅以外の合金元素の粉末を準備する必要がないために、原料代の大幅低減が可能になる、という効果を有する。素粉末混合法で原料粉末を準備する場合と比較して、本発明に従えば原料コストは最大で70%まで低減可能であると、いう効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のチタン合金の製造工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の最良の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明に係るチタン合金焼結体の製造に係る好ましい態様を表している。本発明に係るチタン合金原料は、コスト削減の観点から、チタン合金切粉、チタン合金鍛造片、あるいは、チタン合金棒の端材等の、当初より所望の成分を有する合金スクラップを原料として用いることが好ましい。
【0027】
これらのチタン合金スクラップ(以降、単に「チタン合金原料」と略称する場合がある。)は、事前に所定の長さ、あるいは、大きさにサイジングしておくことが好ましい。例えば、合金切粉の場合には、100mm以下の長さに、事前に切断しておくことが好ましい。前記のような長さに切断しておくことにより、次工程の水素化工程を効率よく進めることができるという効果を奏するものである。また、鍛造片のようなブロック状の合金スクラップでは、水素化炉に入る程度の大きさであれば、特に事前処理の大きさであれば支障がない。
【0028】
前記のように処理して調整されたチタン合金原料は、水素雰囲気下での水素化処理工程に供される。水素化処理は、500〜650℃の温度域で行なうことが好ましい。合金原料の水素化処理反応は、発熱反応であるため、水素化反応の進行に伴い、加熱炉による昇温操作は不要であり自発的に水素化反応を進めることができる。
【0029】
水素化処理された合金原料(以降、単に「水素化チタン合金」と略称する場合がある。)は、室温まで冷却後、アルゴンガス等の不活性雰囲気で所定の粒度になるまで粉砕・篩別することが好ましい。
【0030】
続いて、粉末状に粉砕・篩別された水素化チタン合金粉は、減圧雰囲気に保持された雰囲気中で、高温域まで加熱処理することにより脱水素処理することが好ましい。脱水素処理温度は、500℃〜800℃の温度域で行うことが好ましい。
【0031】
脱水素反応は、前記の水素化処理反応と異なり吸熱反応であるために、水素化合金粉からの水素の発生がなくなるまで、加熱操作が必要とされる。
【0032】
前記脱水素処理が完了した水素化チタン合金粉は、相互に焼結している場合があり、この場合には、軽い粉砕(解砕と呼ぶ場合がある)および篩別処理を行なうことが好ましい。解砕、篩別処理により、チタン合金粉の粒度を、1μm〜150μmの範囲に整粒しておくことが好ましい。
【0033】
脱水素処理後、解砕および篩別されたチタン合金粉に、本発明に用いる銅粉を配合することにより、本発明に係るチタン合金複合粉を得ることができる。
【0034】
本発明で使用する銅粉は、3N5〜4N5程度の純度を有しているものが好ましく、市販されている粉末状の試料を用いることができる。
【0035】
本発明では、チタン合金粉に対して、第三成分として銅粉を配合することが好ましい。 その配合比率は、チタン合金粉の質量に対して、1〜10mass%の範囲に配合することが好ましい。
【0036】
ここで、銅粉の添加量をこのようにするのは、固溶度を考慮してのことである。すなわち、ベータチタン中への銅の最大個溶度は、17.1mass%である。最大固溶度を超えた量の添加は金属間化合物の析出を起こし、材料の脆化につながるので避けなければならない。
【0037】
実際の加工温度は最大固溶度を示す温度より低いために、溶解度の減少も考え、最大10mass%とするものである。
【0038】
チタン合金が例えばTi−1Cu−0.5Nb合金のように、Cuを含有している場合は、合金が含んでいる量と添加した量の合計が上記の濃度範囲になるように設計することが好ましい。
【0039】
チタン合金粉末は焼結性が悪いために、粉末冶金では高密度な焼結体を得るのが困難である。この問題を解決するためにHIP処理を行う。適切な条件でHIP処理を行えば、材料の緻密化が可能である。さらにHIP処理した材料を熱間塑性加工することによって、焼結体を所定の寸法に成形加工できるのみならず、材料に塑性流動を与えることになり、引っ張り強さと伸びのバランスが良い材料が得られ、材料の信頼性が格段に向上する。
【0040】
本発明では、上述の方法で得られたチタン合金複合粉を軟鋼カプセルに充填して脱気後真空封入して(β変態点−100℃)〜(β変態点+100℃)の温度において50〜200MPaの圧力で1〜5Hr、HIP処理する。
【0041】
もしくは、チタン合金複合粉をCIPラバーに充填して、100〜200MPaで処理した後、前記CIP処理で形成されたチタン合金材を、HIPカプセルに充填して、HIP処理することが好ましい。
【0042】
このような処理を行なうことにより緻密化されたチタン合金材料を得ることができる。HIP処理の温度と圧力は、カプセル材と、Cuを含有したチタン合金材のその温度における変形抵抗を考慮して選定することができる。
【0043】
HIP前にCIP処理を行うことによって、カプセルに充填するチタン合金の充填密度を高くすることができるので、HIP工程での収縮が少なくて緻密化が完了するために、HIPによる材料の変形が小さくなるメリットがある。
【0044】
次に、HIP処理により緻密化したCuを含有したチタン合金材を熱間塑性加工して所定の寸法の棒材に加工する。ここで、熱間塑性加工にあたっては、(β変態点−200℃)〜(β変態点+100℃)の温度に1〜2Hr加熱保持してから熱間塑性加工処理を開始することが好ましい。
【0045】
前記熱間塑性加工開始温度が、(β変態点−200℃)よりも低温側にある場合には、 材料の変形抵抗が大きく、材料を加工しきれないことがあり好ましくない。 一方、熱間塑性加工開始温度が、(β変態点+100℃)以上である場合には、熱間塑性加工材の結晶粒が粗大になる傾向を示して好ましくない。
【0046】
よって、本発明に係る熱間塑性加工開始温度は、(β変態点−200℃)〜(β変態点+100℃)の範囲とすることが好ましい。
【0047】
ここで、熱間塑性加工とは、熱間押出、熱間圧延、熱間鍛造等の加工を含んでいる。熱間押出ならば、加工度(押出による断面の面積減少率)80%〜95%と非常に大きい加工度での加工が可能で、塑性変形による材料の特性改善を実現することができる。
【0048】
熱間圧延ならば、1パスの加工度(圧延による断面厚み減少率)を15%〜50%とコントロールしながら圧延することが好ましい。1パスの加工率が15%以下の場合は、圧延のパス回数が増えてしまい、作業時間が長くなり、圧延中の材料温度低下が無視できないレベルになってくる。また、加工率が小さい場合は、材料内部まで十分な塑性変形がされず、材料の外周部と中心部との組織の不均一が問題となるので好ましくない。1パスの加工率が50%を超える場合は、材料の塑性変形は十分となるものの、材料にクラックが生じることがあるので、好ましくない。
【0049】
熱間鍛造の場合は、プレス鍛造、ハンマー鍛造等一般的な鍛造で加工できる。一回の加熱で加工度(鍛造による断面厚み減少率)を30%〜60%とすることが可能である。また、断面形状をHIP上がりの丸型から途中形状を八角、四角ととり、最終的に丸型にすることで、効果的に材料に塑性変形を与えることができる。
【0050】
HIP処理、熱間塑性加工処理により材料製造コストは高くなることが課題であるが、最終的に得られる銅を固溶限一杯まで添加したチタン合金の特性が、現有のインゴット溶解製造法で作られるα+β型およびβ型チタン合金と比べて格段に向上しているので、製造コスト高も解消されるものである。
【実施例】
【0051】
以下、実施例および比較例により本発明をより詳細かつ具体的に説明する。
[実施例1](64合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−6Al−4V合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した64合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−6Al−4V合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−6Al−4V合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この混合粉末3.2kgを内径100mmの軟鋼カプセルに充填し、960℃、100MPa、1Hrの条件でHIP処理した。Ti−6Al−4V合金にCuを6%添加した合金のβ変態点は約910℃であり、HIP温度960℃はβ変態点より50℃高い温度となる。HIP処理後カプセルを除去し、表面を平滑になるまで切削したところ、密度は真密度比100%であることが確認された。この材料をφ150mmx90mmに切削加工し、熱間押出用のビレットとした。熱間押出は、材料を870℃に1Hr加熱してφ35mmのダイスを用いて実施した。870℃はβ変態点より40℃低い温度である。なお、熱間押出に当ってはビレットを直接押出しても良いし、軟鋼カプセルに充填してから押出しても良いが、ここではカプセルに充填しないで直接押出を行った。押出材から引張り試験片を切り出し、引張り試験を行ったところ、引っ張り強さ1,170MPa、伸び14%の結果が得られた。1,170MPaの引っ張り強さは、インゴット溶解製造法で得られている64合金の値(980MPa)と比べて約20%高い値であった。
【0052】
[実施例2](64合金に銅を9%添加、HIP材を熱間押出)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末に対して、銅粉末を9mass%添加混合した混合粉末を、実施例1と同じ手順でHIP、熱間押出を実施した。HIP温度、熱間押出温度は合金組成によって変えたが、HIP圧力、HIP時間、熱間押出の加工度は実施例2から実施例8、比較例1〜比較例8で全く同じとした。得られた押出棒で引張り試験をおこなった。HIP条件、熱間押出温度、得られた押出材の引張り試験結果は表1に示すとおりであった。
【0053】
[比較例1](64合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例1−1で得られたTi−6Al−4V合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例1と同じ手順で、HIP、熱間押出を実施、φ35mmの押出棒を得、引張り試験をおこなった。HIP条件、熱間押出温度、引張り試験結果は表1に示す。引張り強さ、伸びはインゴット溶解製造法で得られている64合金の値とほぼ同じであった。
【0054】
[実施例3](Ti−10V−2Fe−3Al合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−10V−2Fe−3Al合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−10V−2Fe−3Al合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−10V−2Fe−3Al合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間押出処理し、φ35mmの押出棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0055】
[比較例2](Ti−10V−2Fe−3Al合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例3で得られたTi−10V−2Fe−3Al合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例3と同じ手順で、HIP処理、熱間押出処理し、得られた押出棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0056】
[実施例4](Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間押出処理し、φ35mmの押出棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0057】
[比較例3](Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例4で得られたTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例4と同じ手順で、HIP処理、熱間押出処理し、得られた押出棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0058】
[実施例5](Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間押出処理し、φ35mmの押出棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0059】
[比較例4](Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例5で得られたTi−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例5と同じ手順で、HIP処理、熱間押出処理し、得られた押出棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0060】
[実施例6](Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間押出処理し、φ35mmの押出棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0061】
[比較例5](Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例6で得られたTi−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例6と同じ手順で、HIP処理、熱間押出処理し、得られた押出棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0062】
[実施例7](Ti−5Al−2Fe−3Mo合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−5Al−2Fe−3Mo合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間押出処理し、φ12mmの押出棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0063】
[比較例6](Ti−5Al−2Fe−3Mo合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例7で得られたTi−5Al−2Fe−3Mo合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例7と同じ手順で、HIP処理、熱間押出処理し、得られた押出棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0064】
[実施例8](Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金に銅を6%添加、HIP材を熱間押出)
Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金切粉を真空で加熱し、炉内温度が600℃になった時点で加熱を停止し、水素ガスを導入して切粉を水素化した。冷却後合金水素化物を取り出し、ACM粉砕装置で粉砕、分級装置で−150μmに篩別した。次に、合金水素化物を650℃まで真空加熱し、脱水素処理した。脱水素した合金粉末は軽く凝集しており、解砕装置で解砕し、−150μmに篩別し、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末を得た。この粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間押出処理し、φ35mmの押出棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0065】
[比較例7](Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金、銅無添加、HIP材を熱間押出)
実施例8で得られたTi−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例8と同じ手順で、HIP処理、熱間押出処理し、得られた押出棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間押出条件、引張り試験結果は表1に示したとおりである。
【0066】
[比較例8](64合金+6%CuをHIPで製品化)(圧延しない場合)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金に銅を6%添加した合金のHIP材をそのまま製品化しようと試み、引張り試験で特性を確認した。引張り強さは1060MPaと高い値が得られたが、伸びが3%と低い結果であった。
【0067】
【表1】

【0068】
[実施例9](64合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−6Al−4V合金粉末とCu粉末の混合粉末を得た。この混合粉末3.2kgを内径100mmの軟鋼カプセルに充填し、960℃、100MPa、1Hrの条件でHIP処理した。Ti−6Al−4V合金にCuを6%添加した合金のβ変態点は約910℃であり、HIP温度960℃はβ変態点より50℃高い温度となる。HIP処理後カプセルを除去し、表面を平滑になるまで切削したところ、密度は真密度比100%であることが確認された。この材料をφ76mmに切削加工し熱間圧延用元材とした。φ76mmの材料を870℃に1Hr加熱して圧延を開始し、φ12mmまで合計9パス圧延した。圧延のパススケジュールはφ67mm、φ56mm、φ45mm、φ36mm、φ29mm、φ23mm、φ18mm、φ15mm、φ12mmとした。圧延材から引張り試験片を切り出し、引張り試験を行ったところ、引っ張り強さ1,170MPa、伸び14%の結果が得られた。1,170MPaの引っ張り強さは、インゴット溶解製造法で得られている64合金の値(980MPa)と比べて約20%高い値であった。
【0069】
[実施例10](64合金に銅を9%添加、HIP材を圧延)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末に対して、銅粉末を9mass%添加混合した混合粉末を、実施例9と同じ手順でHIP、熱間圧延を実施した。HIP温度、熱間圧延温度は合金組成によって変えたが、HIP圧力、HIP時間、熱間圧延のパススケジュールは実施例10から実施例16、比較例9〜比較例15ですべて実施例9と全く同じとした。得られたφ12mmの圧延棒から引張り試験片を切り出し、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延開始温度、引張り試験結果は表2に記載したとおりである。
【0070】
[比較例9](64合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例9と同じ手順で、HIP、熱間圧延を実施、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を行った。HIP条件、熱間圧延開始温度、引張り試験結果は表2に記載したとおりである。引張り試験結果は、引っ張り強さ980MPa、伸び14%であり、インゴット溶解製造法でえられている64合金の値とほぼ同じであった。
【0071】
[実施例11](Ti−10V−2Fe−3Al合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例3で得られたTi−10V−2Fe−3Al合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−10V−2Fe−3Al合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間圧延処理し、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0072】
[比較例10](Ti−10V−2Fe−3Al合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例3で得られたTi−10V−2Fe−3Al合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例11と同じ手順で、HIP処理、熱間圧延処理し、得られた圧延棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0073】
[実施例12](Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例4で得られたTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間圧延処理し、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0074】
[比較例11](Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例4で得られたTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例12と同じ手順で、HIP処理、熱間圧延処理し、得られた圧延棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0075】
[実施例13](Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例5で得られたTi−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間圧延処理し、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0076】
[比較例12](TI−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例4で得られたTi−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例13と同じ手順で、HIP処理、熱間圧延処理し、得られた圧延棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0077】
[実施例14](Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例6で得られたTi−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間圧延処理し、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0078】
[比較例13](Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例6で得られたTi−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例14と同じ手順で、HIP処理、熱間圧延処理し、得られた圧延棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0079】
[実施例15](Ti−5Al−2Fe−3Mo合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例7で得られたTi−5Al−2Fe−3Mo合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間圧延処理し、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0080】
[比較例14](Ti−5Al−2Fe−3Mo合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例7で得られたTi−5Al−2Fe−3Mo合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例15と同じ手順で、HIP処理、熱間圧延処理し、得られた圧延棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0081】
[実施例16](Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金に銅を6%添加、HIP材を圧延)
実施例8で得られたTi−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間圧延処理し、φ12mmの圧延棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0082】
[比較例15](Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金、銅無添加、HIP材を圧延)
実施例8で得られたTi−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例16と同じ手順で、HIP処理、熱間圧延処理し、得られた圧延棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間圧延条件、引張り試験結果は表2に示したとおりである。
【0083】
【表2】

【0084】
[実施例17](64合金に銅を6%添加、HIP材を段造)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−6Al−4V合金粉末とCu粉末の混合粉末を得た。この混合粉末3.2kgを内径100mmの軟鋼カプセルに充填し、960℃、100MPa、1Hrの条件でHIP処理した。Ti−6Al−4V合金にCuを6%添加した合金のβ変態点は約910℃であり、HIP温度960℃はβ変態点より50℃高い温度となる。HIP処理後カプセルを除去し、表面を平滑になるまで切削したところ、密度は真密度比100%であることが確認された。この材料をφ76mmに切削加工し熱間鍛造用元材とした。φ76mmの材料を870℃に1Hr加熱してハンマー鍛造を開始し、φ25mmまで鍛造した。鍛造材から引張り試験片を切り出し、引張り試験を行ったところ、引っ張り強さ1,160MPa、伸び13%の結果が得られた。1,160MPaの引っ張り強さは、インゴット溶解製造法でえられている64合金の値(980MPa)と比べて約18%高い値であった。
【0085】
[実施例18](64合金に銅を9%添加、HIP材を段造)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末に対して、銅粉末を9mass%添加混合した混合粉末を、実施例17と同じ手順でHIP、熱間鍛造を実施した。HIP温度、熱間鍛造温度は合金組成によって変えたが、HIP圧力、HIP時間、熱間鍛造の加工法は実施例18から実施例24、比較例16から比較例22ですべて実施例17と全く同じとした。得られたφ25mmの段造棒から引張り試験片を切り出し、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造温度、引張り試験結果は表3に記載したとおりである。
【0086】
[比較例16](64合金、銅無添加、HIP材を段造)
実施例1で得られたTi−6Al−4V合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例17と同じ手順で、HIP、熱間鍛造を実施、φ25mmの段造棒を得、引張り試験を行った。HIP条件、熱間鍛造温度、引張り試験結果は表3に記載したとおりである。引張り試験結果は、引っ張り強さ980MPa、伸び14%であり、インゴット溶解製造法でえられている64合金の値とほぼ同じであった。
【0087】
[実施例19](Ti−10V−2Fe−3Al合金に銅を6%添加、HIP材を鍛造)
実施例3で得られたTi−10V−2Fe−3Al合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−10V−2Fe−3Al合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間鍛造処理し、φ25mmの鍛造棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0088】
[比較例17](Ti−10V−2Fe−3Al合金、銅無添加、HIP材を鍛造)
実施例3で得られたTi−10V−2Fe−3Al合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例19と同じ手順で、HIP処理、熱間鍛造処理し、得られた鍛造棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0089】
[実施例20](Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金に銅を6%添加、HIP材を鍛造)
実施例4で得られたTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間鍛造処理し、φ25mmの鍛造棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0090】
[比較例18](Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金、銅無添加、HIP材を鍛造)
実施例4で得られたTi−15V−3Al−3Cr−3Sn合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例20と同じ手順で、HIP処理、熱間鍛造処理し、得られた鍛造棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0091】
[実施例21](Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金に銅を6%添加、HIP材を鍛造)
実施例5で得られたTi−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間鍛造処理し、φ25mmの鍛造棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0092】
[比較例19](Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金、銅無添加、HIP材を鍛造)
実施例4で得られたTi−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例21と同じ手順で、HIP処理、熱間鍛造処理し、得られた鍛造棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0093】
[実施例22](Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金に銅を6%添加、HIP材を鍛造)
実施例6で得られたTi−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間鍛造処理し、φ25mmの鍛造棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0094】
[比較例20](Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金、銅無添加、HIP材を鍛造)
実施例6で得られたTi−5Al−5V−5Mo−3Cr合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例22と同じ手順で、HIP処理、熱間鍛造処理し、得られた鍛造棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0095】
[実施例23](Ti−5Al−2Fe−3Mo合金に銅を6%添加、HIP材を鍛造)
実施例7で得られたTi−5Al−2Fe−3Mo合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間鍛造処理し、φ25mmの鍛造棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0096】
[比較例21](Ti−5Al−2Fe−3Mo合金、銅無添加、HIP材を鍛造)
実施例7で得られたTi−5Al−2Fe−3Mo合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例23と同じ手順で、HIP処理、熱間鍛造処理し、得られた鍛造棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0097】
[実施例24](Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金に銅を6%添加、HIP材を鍛造)
実施例8で得られたTi−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末10kgに、JX日鉱日石金属株式会社製の電解銅粉(#51−R)0.6kg(6mass%)をV型混合器で混合し、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末と銅粉末の混合粉末を得た。この粉末をHIP処理、熱間鍛造処理し、φ25mmの鍛造棒を得、引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0098】
[比較例22](Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金、銅無添加、HIP材を鍛造)
実施例8で得られたTi−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金粉末に、銅粉を添加することなく、実施例24と同じ手順で、HIP処理、熱間鍛造処理し、得られた鍛造棒の引張り試験を実施した。HIP条件、熱間鍛造条件、引張り試験結果は表3に示したとおりである。
【0099】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、伸びの低下が殆どなく、引張り強さが従来の合金より10%〜25%高い銅を高濃度に含有する高強度チタン合金の製造法を提供する。高強度チタン合金を必要とする分野での利用が期待される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を1〜10mass%含有しているα+β型またはβ型チタン合金の製造方法であって、
次の(1)〜(4)の工程
(1)α+β型またはβ型チタン合金原料を水素化、脱水素化し、チタン合金粉末を得る工程
(2)前記チタン合金粉に銅粉末を混合して、チタン合金と銅の複合粉末を得る工程
(3)前記チタン合金複合粉末をHIP処理する工程
(4)前記HIP処理材を熱間塑性加工する工程
を実施することを特徴とするα+β型またはβ型チタン合金の製造方法。
【請求項2】
前記熱間塑性加工が、熱間押出、熱間圧延、熱間鍛造のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のα+β型またはβ型チタン合金の製造方法。
【請求項3】
前記チタン合金原料がTi−6Al−4V合金、Ti−10V−2Fe−3Al合金、Ti−15V−3Al−3Cr−3Sn合金、Ti−4.5Al−3V−2Fe−2Mo合金、Ti−5Al−5V−5Mo−3Cr合金、Ti−5Al−2Fe−3Mo合金、Ti−5Al−4V−0.6Mo−0.4Fe合金であることを特徴とする請求項1または2に記載のα+β型またはβ型チタン合金の製造方法。
【請求項4】
前記熱間塑性加工を、(β変態点−200℃)〜(β変態点+100℃)の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のα+β型またはβ型チタン合金の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とするα+β型またはβ型チタン合金。
【請求項6】
引っ張り強さが1000MPa〜1500MPa、伸びが9%〜15%であることを特徴とする請求項5に記載のα+β型またはβ型チタン合金。




【図1】
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【公開番号】特開2013−112860(P2013−112860A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260671(P2011−260671)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り The Nonferrous Metals Society of China発行、刊行物名「Program & Abstracts Ti−2011 The 12th World Conference on Titanium」、2011年6月19日発行
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】