説明

テニスラケットのフィッティング方法、フィッティングプログラム、及び分析装置

【課題】実際のボールの打撃を反映したスイングを分析することで、プレーヤーに適したテニスラケットを選択することが可能なテニスラケットのフィッティング方法、フィッティングプログラム、及び分析装置を提供する。
【解決手段】ユーザにより、テニスボールを打撃するために基準テニスラケットを少なくとも一回スイングさせ、このスイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間における前記基準テニスラケットの加速度及び角速度の少なくとも一方の推移を計測して基準計測値を取得し、テニスボールを打撃するために少なくとも1つのテスト用テニスラケットを少なくとも一回スイングさせ、このスイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間における前記テスト用テニスラケットの加速度及び角速度の少なくとも一方の推移を計測してテスト計測値を取得し、前記基準計測値及び前記テスト計測値に基づいて、テニスラケットを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テニスラケットのフィッティング方法、フィッティングプログラム、及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テニスラケットのスイングは、プレーヤーごとに異なるほか、テニスラケットのスペックにも影響を受ける。例えば、反発係数の小さなラケットで高速の打球を得ようとすれば、プレーヤーに力みが生じる一方、反発係数が大きすぎるラケットで打球速度をコントロールしようとすると、プレーヤーの手に緩みが生じる。したがって、プレーヤーとラケットとのマッチングは、重要である。そのためには、適切なスイングの分析が必要となり、適切なスイング分析は、プレーヤーの技量の向上に寄与しうる。また、スイング分析は、テニスラケットの研究開発にも寄与し、これによって、ラケットの販売促進にも寄与しうる。
【0003】
このようなスイングの分析については、種々の検討がなされており、例えば、特許文献1には、3台の高速カメラでスイングが撮影され、得られた画像に基づいてラケットの挙動が分析される装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、スイングスピード計測方法が開示されており、この方法では、ラケットの先端にマグネットが装着される。そして、マグネットの通過をセンサが検知することで、スイングスピードが算出されうる。
【0005】
さらに、特許文献3には、三軸加速度センサ及び三軸ジャイロセンサが用いられてスイングが分析される方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−126147公報
【特許文献2】特開2006−263340公報
【特許文献3】特開2009−125499公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、3は、スイングの分析については開示しているものの、テニスラケットフィッティングについては記載されていない。また、特許文献2は、ラケットのスイングを分析することで、適切なラケットを選択するようにしているが、ボールを打撃せず、スイングのみを分析しているため、実打に適したラケットを適切に選択することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、実際のボールの打撃を反映したスイングを分析することで、プレーヤーに適したテニスラケットを選択することが可能なテニスラケットのフィッティング方法、フィッティングプログラム、及び分析装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明に係るテニスラケットのフィッティング方法は、ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性がそれぞれ規定された複数のテスト用テニスラケットを準備する第1ステップと、ユーザに、テニスボールを打撃するために基準テニスラケットを少なくとも一回スイングさせ、このスイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間における前記基準テニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を計測し、計測値を取得する第2ステップと、前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第3ステップと、前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第4ステップと、を備えている。
【0010】
上記フィッティング方法においては、前記第4ステップの後、ユーザに、テニスボールを打撃するために前記選択されたテニスラケットを少なくとも一回スイングさせ、このスイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間における前記選択されたテニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を計測し、計測値を取得する第5ステップと、前記計測値に基づいて、前記選択されたテニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第6ステップと、前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第7ステップと、を少なくとも一回繰り返すことができる。
【0011】
上記フィッティング方法において、前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つとすることができる。
【0012】
上記フィッティング方法において、前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つを用いて規定された数値とすることができる。
【0013】
上記フィッティング方法において、前記ラケット特性の1つは、ボールの飛距離を反映するように、少なくとも前記フェース面積を用いて数値化された飛び特性とすることができる。
【0014】
上記フィッティング方法において、前記ラケット特性の1つは、ボールの球離れのタイミングの適正を反映するように、少なくとも前記フレックスを用いて数値化された球もち特性とすることができる。
【0015】
上記フィッティング方法においては、前記ラケット特性の1つは、打撃時の衝撃感の適正を反映するように、少なくとも前記最大厚みを用いて数値化された手応え特性とすることができる。
【0016】
上記フィッティング方法において、前記第2ステップにおいては、前記テスト用テニスラケットの前記スイングを複数回行って、複数の計測値をそれぞれ取得し、前記第3ステップにおいては、前記複数の計測値から算出された評価指標をそれぞれ平均することで、前記評価指標を算出することができる。
【0017】
本発明に係るテニスラケットのフィッティングプログラムは、コンピュータに、ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性がそれぞれ規定された複数のテスト用テニスラケットに関する情報を記憶する第1ステップと、ユーザが、テニスボールを打撃するために選択されたテニスラケットを用いて少なくとも一回スイングした際に、当該スイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間において計測された前記選択されたテニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を、計測値として受け付ける第2ステップと、前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第3ステップと、前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第4ステップと、を備えている。
【0018】
上記フィッティングプログラムにおいては、前記第4ステップの後、ユーザが、テニスボールを打撃するために前記選択されたテニスラケットを用いて少なくとも一回スイングした際に、当該スイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間において計測された前記基準テニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を、計測値として受け付ける第5ステップと、前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第6ステップと、前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第7ステップと、を少なくとも一回繰り返すことができる。
【0019】
上記フィッティングプログラムにおいて、前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つとすることができる。
【0020】
上記フィッティングプログラムにおいて、前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つを用いて規定された数値とすることができる。
【0021】
上記フィッティングプログラムにおいて、前記ラケット特性の1つは、ボールの飛距離を反映するように、少なくとも前記フェース面積を用いて数値化された飛び特性とすることができる。
【0022】
上記フィッティングプログラムにおいて、前記ラケット特性の1つは、ボールの球離れのタイミングの適正を反映するように、少なくとも前記フレックスを用いて数値化された球もち特性とすることができる。
【0023】
上記フィッティングプログラムにおいて、前記ラケット特性の1つは、打撃時の衝撃感の適正を反映するように、少なくとも前記最大厚みを用いて数値化された手応え特性とすることができる。
【0024】
上記フィッティングプログラムにおいて、前記第2ステップにおいては、前記テスト用テニスラケットによる複数回の前記スイングから得られる、複数の計測値を受け付け、前記第3ステップにおいては、前記複数の計測値から算出された評価指標をそれぞれ平均することで、前記評価指標を算出することができる。
【0025】
本発明に係るテニスラケットのフィッティングの分析装置は、ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性がそれぞれ規定された複数のテスト用テニスラケットに関する情報が記憶された第1記憶部と、ユーザが、テニスボールを打撃するために基準テニスラケットを用いて少なくとも一回スイングした際に、当該スイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間において計測された前記基準テニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を、計測値として記憶する第2記憶部と、前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する演算部と、前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットから選択するラケット選択部と、を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数のテスト用テニスラケットに対し、ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性をそれぞれ規定している。また、ラケットを試打したときに計測される計測値から、スイングの評価となる評価指標を算出し、当該ラケットの評価を行っている。そして、この評価指標が向上させ得るラケットを、複数のテスト用テニスラケットの中から、ラケット特性に基づいて選択するようにしている。したがって、ラケットのフィッティングにあたって、次に試打するラケットをラケット特性に基づいて選択しているため、単に複数のラケットを試す場合に比べ、より少ない試打でユーザに適したラケットに行き着くことができる。したがって、効率的なフィッティングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るフィッティングシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】計測デバイスの概略構成を示す図である。
【図3】テニスコートが示された斜視図である。
【図4】計測工程を示すフローチャートである。
【図5】ラケット角速度の測定に供されるテニスラケットがテニスボールとともに示された正面図である。
【図6】フィッティングの手順を示すフローチャートである。
【図7】ラケット特性と実打との関係を示す相関図である。
【図8】出力部に示されるグラフである。
【図9】フィッティングの一例を示すグラフである。
【図10】フィッティングの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係るテニスラケットのフィッティングシステムについて、図面を参照しつつ説明する。図1はフィッティングシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0029】
<1.フィッティングシステムの概要>
図1に示すように、本実施形態に係るテニスラケットのフィッティングシステムは、ユーザがスイングしたテニスラケットの評価を行い、ユーザに適するテニスラケットの選択を行う、つまりテニスラケットのフィッティングを行うものであり、スイングの計測を行う計測デバイス1と、この計測デバイス1から送られる計測値を分析する分析装置2とを備えている。以下、これらを詳細に説明する。
【0030】
<1−1.計測デバイス>
まず、計測デバイス1について、図2も参照しつつ説明する。図2に示すように、この計測デバイス1は、テニスラケット10に取り付けられるセンサ部11と、このセンサ部11で計測された計測データを分析装置2に送信するための通信部12とを備えている。ここで用いられるテニスラケット10は、一般的なものではあるが、縦横にガット101が張り渡されてフェース102が形成されたヘッド103を有しており、このヘッド103の一端から左右一対のスロート104が延びて一本のシャフト105に連結されている。また、シャフト105には、プレーヤー(ユーザ)が把持するグリップ106が連結されている。
【0031】
そして、計測デバイス1のセンサ部11は、スイングの妨げにならないようにグリップ106の端部に取り付けられ、通信部12はグリップ106を把持する手501の上腕502に取り付けられる(図2の例では右手)。センサ部11には、三軸加速度センサ111及び三軸ジャイロセンサ112が内蔵されており、それぞれラケット10を基準とした相対座標(x、y、z)における加速度及び角速度が測定される。ここで、相対座標について説明すると、ラケット10のシャフト105の長手方向が、y軸の方向と一致している。y軸の方向は、フェース102と平行でもある。そして、ヘッド103からグリップ106に向かう方向が、y軸の正の方向である。z軸の方向も、フェース102に平行であるが、z軸は、y軸と直交している。すなわち、図2に示されたフェース102が時計の文字盤とみなされたとき、3時の位置から9時の位置へ向かう方向が、z軸の正の方向である。また、図2には示されていないが、x軸の方向は、y軸及びz軸とも直交し、フェース102に対して垂直である。すなわち、ヘッド103の厚み方向における、裏側から表側に向かう方向が、x軸の正の方向である。表側は、フォアハンドのストロークのときにテニスボールと接触する側である。このように規定されたx軸、y軸及びz軸は、ラケット10が基準とされた軸であり、その座標(x,y、z)は、ラケット10が基準とされた座標である。そのため、x軸、y軸及びz軸の方向は、ラケット10の姿勢に応じて変動する。
【0032】
ところで、相手陣にボールを送るためのテニスラケット10のスイングを分析するためには、ラケット10の移動速度等は、テニスコート等の固定された地面及び空間を基準としたものである必要がある。すなわち、ラケットの移動速度等は、変位するこのラケット10自身を基準とした上記相対座標ではなく、固定された地面及び空間を基準とした絶対座標に基づくべきである。そのため、本実施形態では、テニスコートを基準とした絶対座標も規定されている。図3は、図1のシステムが用いられるテニスコート70が示された斜視図である。図3には、スイングを行うプレーヤー50が示されている。このプレーヤー50は、右利きであり、右手501でラケット10を握っている。
【0033】
図3に示されるように、テニスコート70のサイドライン71の方向は、X軸の方向と一致している。プレーヤー50にとっての自陣72から相手陣73に向かう方向が、X軸の正の方向である。テニスコート70のエンドライン74の方向は、Y軸の方向と一致しており、相手陣73を向いたプレーヤー50にとっての右から左に向かう方向が、Y軸の正の方向である。また、Z軸の方向は、鉛直方向であり、上向きの方向が、Z軸の正の方向である。このX軸、Y軸及びZ軸は、テニスコート70が基準とされた軸である。換言すれば、このX軸、Y軸及びZ軸は、地面が基準とされた軸であり、絶対座標軸となる。そして、この軸によって規定される(X,Y、Z)座標は、絶対座標となる。
【0034】
図1及び図2に戻って、計測デバイス1の説明を続ける。図2に示されるように、通信部12は、プレーヤーのスイングの妨げとならないように、バンド13によって上腕502に固定されている。センサ部11と通信部12とは、ケーブル14によって接続されており、これにより、通信部12は、三軸加速度センサ111及び三軸ジャイロセンサ112で測定されたデータを、ケーブル14を通じてセンサ部11から受け取る。通信部12は、このデータを、分析装置2に向けて無線送信するが、その通信方式は、種々のものを適用可能である。例えば、いわゆるブルートゥース(BlueTooth:登録商標)方式、UWB(Ultra Wide Band)方式、無線LAN(Local Area Network)などによる近距離無線通信などを利用することができる。なお、センサ部11及び通信部12を駆動させるためのバッテリー(図示されず)も、バンド13によって上腕502に固定されている。
【0035】
<1−2.分析装置>
続いて、分析装置2について説明する。分析装置2は、出力部21、入力部22、記憶部23、制御部24、及び通信部25を有している。そして、これらは、互いにバス線26で接続されており、相互に通信可能である。本実施形態では、出力部21を、液晶ディスプレイで構成することができ、後述する画面等をプレーヤーや分析装置の操作者に対し表示する。また、入力部22は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成することができ、分析装置2に対するユーザからの操作を受け付ける。
【0036】
記憶部23は、ハードディスク等の記憶装置から構成され、フィッティングプログラム231が格納されているほか、ソフトウェア管理領域232が確保されている。ソフトウェア管理領域232は、フィッティングプログラム231が使用する領域である。ソフトウェア管理領域232内には、生データ領域2321、演算結果領域2322、評価領域2323、テスト用ラケット領域2324など確保されている。各領域2321〜2324の役割については、後述する。なお、フィッティングプログラムは、記憶部23に予め格納しておくほか、光磁気ディスク、CD−ROM,DVD−ROM,ブルーレイディスク、USBメモリなどのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体20に記憶されたものを、インストールすることで、制御部24によって実行することもできる。
【0037】
また、制御部24は、CPU、ROMおよびRAM等から構成することができる。制御部24は、記憶部23内に格納されているフィッティングプログラム231を読み出して実行することにより、図1に示すように、仮想的に演算部241、指標比較部242、ラケット選択部243として動作する。各部241〜243の動作については、後述する。
【0038】
また、通信部25は、計測デバイス1の通信部12からデータを受信するほか、USBメモリなどの外部記憶装置からのデータを受け取るインターフェースとしても機能する。その他、必要に応じて、プリンタ、プロッタ等を接続することができる。
【0039】
<2.テニスラケットのフィッティング>
続いて、上述した計測デバイス1及び分析装置2を用いたテニスラケットのフィッティングについて説明する。本実施形態に係るフィッティングは、3つの工程から構成されている。すなわち、上記計測デバイス1によりラケット10の加速度及び角速度を計測するスイングの計測工程、計測された加速度及び角速度に基づいて分析装置2によってスイングの評価指標を算出する演算工程、及び算出された評価指標に基づいて、フィッティングの判定を行う判定工程、の3つの工程である。以下、これらの工程を順に説明する。
【0040】
<2−1.スイングの計測工程>
図4は、スイングの計測工程の一例が示されたフローチャートである。まず、分析装置2の入力部22より開始ボタン等を押下し、プレーヤー50がラケット10のスイングを開始する(ステップS1)。このスイングは、いわゆる素振りではなく、スイングによってテニスボールを打撃する。例えば、ボール供給装置により一定方向及び一定速度のテニスボールがプレーヤー50の自陣72に供給されると、プレーヤー50は、これを打撃して相手陣73に打ち返すように心がける。このときのスイングは、右手でのフォアハンドによるグラウンドストロークとする。グラウンドストロークとは、一度テニスコートの地面でバウンドしたテニスボールを打撃することをいう。もし打撃したテニスボールが相手陣73に入らないときは、そのスイングはその後の分析の対象とされない。また、打撃したテニスボールが相手陣73に入ったときでも、明らかなミスショットであれば、そのスイングはその後の分析の対象とされない。
【0041】
そして、スイングが行われている間、三軸加速度センサ111及び三軸ジャイロセンサ112は、時刻ごとに加速度及び角速度の測定をそれぞれ行う(ステップS2)。より詳細には、三軸加速度センサ111は、所定のサンプリング間隔で、相対的なx軸方向、相対的なy軸方向及び相対的なz軸方向のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)を測定する。また、三軸ジャイロセンサ112は、時刻毎に、相対的なx軸の回り、相対的なy軸の回り及び相対的なz軸の回りのグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)を測定する。所定のサンプリング間隔は、特には限定されないが、例えば、1/1000〜1/500秒毎に、データを得ることができる。そして、スイングが終了すると(ステップS3のYES)、測定を終了する。スイングは、何度でも行うことができるが、スイングが安定するまでの回数を考慮して、例えば、3〜10回程度のスイングを測定することが好ましい。こうして測定されたグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びにグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータは、通信部12から、分析装置2の通信部25へと、送信される(ステップS4)。そして、送信されたデータは、制御部24により、記憶部23の生データ領域2321に記憶させる(ステップS5)。測定の終了は、例えば、分析装置2から入力部22により操作することができる。このとき、測定と同時にリアルタイムで測定データを送信することもできる。
【0042】
<2−2.評価指標の演算工程>
【0043】
続いて、制御部24の演算部241は、記憶部23の生データ領域2321に記憶されたグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びにグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータの全て又は一部を用いて、スイングの評価指標を算出する(ステップS21)。評価指標としては、グリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道及びラケット角速度が例示される。
【0044】
これら評価指標を算出するに当たっては、スイングの開始から終了までの間のいずれの時刻のデータを使用すべきかが問題となる。すなわち、グリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)並びにグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータは、時刻毎に得られるが、これらのデータの中から、プレーヤー50とラケット10とのマッチングを判定するのに適した時刻が選定される。ここで、マッチングを判定するのに適した時刻の一例として、ヘッド速度を用いる場合には、これが最大となる時刻が挙げられる。スイングの開始以降、ヘッド速度は徐々に上昇するが、テニスボールとのインパクトによって、ヘッド103は急激に減速する。この減速が発生する直前の時刻が、ヘッド速度が最大となる時刻である。以下、ヘッド速度を含め、各評価指標について説明する。
【0045】
[ヘッド速度]
ヘッド速度は、相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ加速度A(gx)、A(gy)及びA(gz)のデータ;相対座標軸x、y及びzの時刻毎のグリップ角速度ω(gx)、ω(gy)及びω(gz)のデータ;並びにラケット長に基づいて算出される。まず、前述の数式により、演算部241がXYZ絶対座標系における時刻毎のグリップ速度V(gX)、V(gY)及びV(gZ)を算出する。一方、前述のクォータニオンから、演算部241が回転行列RMを算出する。演算部241はさらに、XYZ絶対座標系における時刻毎の回転による速度ベクトルVrを、下記数式に基づいて算出する。
Vr=cross(ω,tV)*RM
この数式において、cross(ω,tV)は、xyz相対座標系における時刻毎の角速度ベクトルωとラケット長ベクトルtVとの外積である。
【0046】
絶対座標軸x、y及びzの時刻毎のヘッド速度V(hx)、V(hy)及びV(hz)が、演算部241により、下記数式によって算出される。
V(hX)=V(gX)+Vr(X)
V(hY)=V(gY)+Vr(Y)
V(hZ)=V(gZ)+Vr(Z)
【0047】
続いて、演算部241により、XYZ絶対座標系における時刻毎のヘッド速度V(hX),V(hY)及びV(hZ)から、XYZ絶対座標系における時刻毎のヘッド速度の大きさV(h)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
V(h)=SQRT(V(hX)2+V(hY)2+V(hZ)2
時刻毎のヘッド速度V(h)は、演算結果領域2322に記憶される。
【0048】
そして、演算部241は、この時刻毎のヘッド速度の大きさV(h)の中からインパクト直前(減速する直前)のものを、最大ヘッド速度VV(h)として選択する。そして、演算部241は、時刻毎のヘッド速度V(hX)、V(hY)及びV(hZ)、時刻毎のヘッド速度の大きさV(h)、及び最大ヘッド速度VV(h)を評価指標として評価領域2322に記憶する。なお、スイング動作の開始以降、ヘッド速度は徐々に上昇するが、テニスラケット10とテニスボールとのインパクトによって急激に減速する。従って、最大ヘッド速度V(h)が得られる時刻は、インパクトの直前の時刻であり、プレーヤー50とラケット10との相性を判定するのに適した時刻と考えられる。なお、絶対座標系におけるヘッド速度は、相対座標系におけるグリップ速度及びグリップ角速度の計測値に基づいて算出されるが、センサ部11をヘッド103の先端に取り付けて相対座標系におけるヘッド加速度を計測し、このヘッド加速度を絶対座標系に変換した値から絶対座標系におけるヘッド速度を求めることもできる。
【0049】
[ヘッド加速度]
XYZ絶対座標系におけるヘッド加速度は、XYZ絶対座標系におけるヘッド速度V(hX),V(hY)及びV(hZ)に基づいて算出される。より具体的には、演算部241は、時刻毎のヘッド速度のX軸、Y軸及びZ軸成分であるV(hX),V(hY)及びV(hZ)をそれぞれ時間で微分することにより、時刻毎のヘッド加速度のX軸、Y軸及びZ軸成分であるA(hX)、A(hY)及びA(hZ)を算出する。
【0050】
続いて、演算部241により、XYZ絶対座標系における時刻毎のヘッド加速度A(hX)、A(hY)及びA(hZ)から、XYZ絶対座標系における時刻毎のヘッド加速度の大きさA(h)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
A(h)=SQRT(A(h(hX)2+A(hY)2+A(hZ)2
【0051】
そして、演算部241は、この時刻毎のヘッド加速度の大きさA(h)の中からインパクト直前(減速する直前)のものを、最大ヘッド加速度AA(h)として選択する。そして、演算部241は、時刻毎のヘッド加速度A(hX)、A(hY)及びA(hZ)、時刻毎のヘッド加速度の大きさA(h)、及び最大ヘッド加速度AA(h)を評価指標として評価領域2322に記憶する。なお、絶対座標系におけるヘッド加速度は、相対座標系におけるグリップ速度及びグリップ角速度の計測値に基づいて算出されるが、センサ部11をヘッド103の先端に取り付けて相対座標系におけるヘッド加速度を計測し、このヘッド加速度を絶対座標系に変換することもできる。
【0052】
[ヘッド速度成分比]
XYZ絶対座標系におけるヘッド速度成分比Iは、xyz相対座標系におけるグリップ加速度A(gx),A(gy)及びA(gz)、xyz相対座標軸系におけるグリップ角速度ω(gx),ω(gy)及びω(gz)、並びにラケット長のデータに基づいて算出される。具体的には、まず、演算部241が、前述の数式により、XYZ絶対座標系における時刻毎のヘッド速度のX軸及びZ軸成分であるV(hX)及びV(hZ)を算出する。続いて、演算部241は、XYZ絶対座標系における時刻毎のヘッド速度成分比Iを下記数式に基づいて算出する。
I=V(hZ)/V(hX)
【0053】
そして、演算部241は、この時刻毎のヘッド速度成分比Iの中からインパクト直前(減速する直前)のものを、最大ヘッド速度成分比IIとして選択する。そして、演算部241は、時刻毎のヘッド速度成分比I、及び最大ヘッド加速度IIを評価指標として評価領域2322に記憶する。なお、ヘッド速度成分比は、相対座標系におけるグリップ速度及びグリップ角速度の計測値に基づいて算出されるが、センサ部11をヘッド103の先端に取り付けて相対座標系におけるヘッド加速度を計測し、このヘッド加速度を絶対座標系に変換した値からヘッド速度成分比Iを求めることもできる。
【0054】
[グリップ速度]
XYZ絶対座標系におけるグリップ速度は、XYZ絶対座標系におけるグリップ加速度A(gX),A(gY)及びA(gZ)のデータに基づいて算出される。より具体的には、演算部241により、時刻毎のグリップ速度のX軸、Y軸及びZ軸成分であるV(gX)、V(gY)及びV(gZ)が、下記数式に基づいて算出される。
ΔV(gX)=A(gX)*ΔT
ΔV(gY)=A(gY)*ΔT
ΔV(gZ)=A(gZ)*ΔT
上記数式において、ΔTは、微小時間(上述のサンプリング間隔)であり、ΔV(gX)、ΔV(gY)及びΔV(gZ)は、微小時間ΔTにおけるV(gX)、V(gY)及びV(gZ)の増分である。ΔTの値は、オペレータにより分析装置2に適宜入力される。
【0055】
続いて、演算部241により、XYZ絶対座標系における時刻毎のグリップ速度V(gX)、V(gY)及びV(gZ)から、XYZ絶対座標系における時刻毎のグリップ速度V(g)の大きさが算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
V(g)=SQRT(V(gX)2+V(gY)2+V(gZ)2
【0056】
そして、演算部241は、この時刻毎のグリップ速度の大きさV(g)の中からインパクト直前(減速する直前)のものを、最大グリップ速度VV(g)として選択する。そして、演算部241は、時刻毎のグリップ速度V(gX)、V(gY)及びV(gZ)、時刻毎のグリップ速度の大きさV(g)、及び最大グリップ速度VV(g)を評価指標として評価領域2322に記憶する。最大グリップ速度VV(g)が大きいことは、プレーヤー50の腕の力みや手の緩みが少ないことを意味する。また、最大グリップ速度VV(g)が大きいことは、当該ラケット12がこのプレーヤー50にマッチしていることも意味する。
【0057】
[グリップ加速度]
XYZ絶対座標系におけるグリップ加速度は、xyz相対座標系におけるグリップ加速度A(gx),A(gy)及びA(gz)、並びにxyz相対座標系におけるグリップ角速度ω(gx),ω(gy)及びω(gz)のデータに基づいて算出される。より具体的には、演算部241により、時刻毎のグリップ加速度A(gx),A(gy)及びA(gz)が、時刻毎のグリップ角速度ω(gx),ω(gy)及びω(gz)に基づいて、時刻毎のグリップ加速度のX軸、Y軸及びZ軸成分であるA(gX),A(gY)及びA(gZ)に変換される。変換に用いられるクォータニオンは、下記数式によって表される。
Q=[cos(θ);ω(gx)/θ*sin(θ/2),ω(gy)/θ*sin(θ/2),ω(gz)/θ*sin(θ/2)]
R=[cos(θ);-ω(gx)/θ*sin(θ/2),-ω(gy)/θ*sin(θ/2),-ω(gz)/θ*sin(θ/2)]
上記数式におけるθは、下記数式によって求められる。
θ=SQRT(ω(gx)2+ω(gy)2+ω(gz)2
【0058】
続いて、演算部241により、XYZ絶対座標系における時刻毎のグリップ加速度A(gX),A(gY)及びA(gZ)から、XYZ絶対座標系における時刻毎のグリップ加速度の大きさA(g)が算出される。算出は、下記数式に基づいてなされる。
A(g)=SQRT(A(gx)2+A(gy)2+A(gz)2
【0059】
そして、演算部241は、この時刻毎のグリップ加速度の大きさA(g)の中からインパクト直前(減速する直前)のものを、最大グリップ加速度AA(g)として選択する。そして、演算部241は、時刻毎のグリップ加速度A(gX),A(gY)及びA(gZ)、時刻毎のグリップ加速度の大きさA(g)、及び最大グリップ加速度AA(g)を評価指標として評価領域2322に記憶する。最大グリップ加速度AA(g)が大きいことは、プレーヤー48の腕の力みや手の緩みが少なく、しかも、テニスボールに強い打撃を与えうることを意味する。また、最大グリップ加速度AA(g)が大きいことは、当該ラケット10がこのプレーヤー50にマッチしていることも意味する。
【0060】
[スイング軌道]
XYZ絶対座標系におけるスイング軌道は、xyz相対座標系におけるグリップ加速度A(gx),A(gy)及びA(gz)、xyz相対座標軸系におけるグリップ角速度ω(gx),ω(gy)及びω(gz)、並びにラケット長のデータに基づいて算出される。具体的には、まず、演算部241が、前述の数式により、XYZ絶対座標系における時刻毎のグリップ速度V(gX),V(gY)及びV(gZ)を算出する。続いて、演算部241は、このグリップ速度V(gX),V(gY)及びV(gZ)から、下記数式に基づいて、時刻毎のグリップ11の位置のX軸、Y軸及びZ軸成分であるP(gX),P(gY)及びP(gZ)を算出する。
ΔP(gX)=V(gX)*ΔT
ΔP(gY)=V(gY)*ΔT
ΔP(gZ)=V(gZ)*ΔT
上記数式において、ΔTは、微小時間(上述のサンプリング間隔)であり、ΔP(gX),ΔP(gY)及びΔP(gZ)は、微小時間ΔTにおけるP(gX),P(gY)及びP(gZ)の増分である。
【0061】
また、演算部241は、グリップ106に対する時刻毎のヘッド103のトップの相対位置P(h)を、下記数式によって算出する。
P(h)=tV*RM
上記数式において、tVは前述のラケット長ベクトルであり、RMは前述の回転行列である。演算部241は、下記数式により、時刻毎のヘッド103のトップの絶対座標(Xt,Yt,Zt)を算出し、評価指標として評価領域2322に記憶する。時刻毎の絶対座標(Xt,Yt,Zt)は、ラケット10の軌道を意味している。
(Xt,Yt,Zt)=P(g)+P(h)
【0062】
演算部241は、時刻toからtまでの絶対座標軸X方向のヘッド103の移動距離JXを、下記数式によって算出する。
X=(Xt−Xto)
演算部241は、時刻toからtまでの絶対座標軸Y方向のヘッド103の移動距離JYを、下記数式によって算出する。
Y=(Yt−Yto)
移動距離JX及びJYは、評価指標として評価領域2322に記憶される。
【0063】
様々な時間帯における移動距離JX及びJYが算出され得る。例えば、インパクトのt秒前と、インパクトとの間の移動距離JX及びJYが算出され得る。また、インパクトと、インパクトからt秒後との間の移動距離JX及びJYが算出され得る。
【0064】
移動距離Jx及びJyにより、ラケット12の軌道が判明する。この軌道に基づき、当該ラケット10がこのプレーヤー50に適しているか否かが、判定されうる。例えば、理想的な軌道を設定しておき、この軌跡に近いラケットが、当該プレーヤー50にマッチしたラケット10と判定することができる。理想的な軌跡としては、例えば、プレーヤーとのマッチングがよいラケットをスイングすると、大きく前に振れたり、振り上げ角度か小さくなるなどする。
【0065】
このスイング軌跡は、グリップ速度に基づいて算出されうるため、三軸加速度センサ111及び三軸ジャイロセンサ112がヘッド103に取り付けられる必要はない。
【0066】
[ラケット角速度]
xyz相対座標系におけるラケット角速度は、三軸ジャイロセンサ112の計測値である、y軸の回りのグリップ角速度ω(gy)である。
図5には、サンプリング工程におけるテニスラケット10が示されている。図5には、相対座標軸yの方向に沿って見たヘッド103が示されている。図5には、ラケット10とインパクトする直前のテニスボール90も示されている。この図において矢印Aで示されているのは、ヘッド103の回転方向である。この回転の角速度が、前述のグリップ角速度ω(gy)である。時刻毎のグリップ角速度ω(gy)は、評価指標である時刻毎のラケット角速度として評価領域2322に記憶される。また、算出部241は、この時刻毎のグリップ角速度ω(gy)の中からインパクト直前(減速する直前)のものを、最大グリップ角速度ωωとして選択し、評価指標として評価領域2322に記憶する。
【0067】
グリップ角速度ω(gy)が正の値であることは、フェース102を閉じつつテニスボール90を打撃するスイングタイプであることを意味する。グリップ角速度ω(gy)が負の値であることは、フェース102を開きつつテニスボール90を打撃するスイングタイプであることを意味する。例えば、グリップ角速度が相対的に大きいと、面の操作が多いので合わないラケットと判定することができる。もしくは複数回スイングしたときのグリップ角速度のバラツキが大きいと、面の操作が一定でないので合わないラケットと判定することができる。こうして、プレーヤー50は、自らのスイングタイプに適したラケット10を選択しうる。
【0068】
なお、上述した各評価指標は、1つの計測値に基づいて算出することもできるが、例えば、スイングを複数行い、各スイングにおける計測値から複数の評価指標を算出し、さらにこれを平均したものを評価指標として用いることもできる。この場合、これらの平均値が、演算部241により算出される。
【0069】
<2−3.フィッティングの判定工程>
続いて、ラケットの選定に至る判定工程について、ここまでの2つの工程を含め、図6を参照しつつ説明する。図6はフィッティングの判定の手順を示すフローチャートである。まず、評価の基準となる基準テニスラケットを準備する。このテニスラケットは、例えば、プレーヤー自身のテニスラケットとすることができる。次に、このテニスラットを用いて、上述した2つの工程の通り、加速度及び角加速度の計測を行い(ステップS10)、ここから演算部241が上述した評価指標を算出する(ステップS11)。評価指標は上述したどれを用いてもよく、すべての評価指標を用いてもよいし、そのうちのいくつかを用いることもできる。こうして算出された基準テニスラケットの評価指標を基準評価指標と称することとする。続いて、フィッティングのためのテスト用テニスラケットを準備し、これを用いて、計測を行い(ステップS12)、その計測値に基づいて評価指標を算出する(ステップS13)。これをテスト評価指標と称することとする。これら基準評価指標及びテスト評価指標は、記憶部の評価領域2323に記憶されている。続いて、指標比較部2323により、評価領域2323に記憶されている基準評価指標とテスト評価指標とが比較され、テスト評価指標の方が大きければ(ステップS14のYES)、そのテスト用テニスラケットを推奨テニスラケットと判断し、出力部21に出力する(ステップS15)。出力の方法は特には限定されないが、例えば、ディスプレイへの表示、プリンタによる出力などが行われる。上述したように、速度及び加速度にかかる各評価指標は、大きければ大きいほど、プレーヤーにマッチしたものといえるため、プレーヤー自身のラケットよりも評価指標が大きいラケットが、よりプレーヤーにマッチしたラケットと判断することができる。その他の評価指標の場合は、上述したとおりである。
【0070】
一方、基準評価指標の方が大きければ(ステップS14のNO)、他のテスト用テニスラケットを選択し、上述したテスト用ラケットによるスイングの計測と評価指標の算出を繰り返し、基準評価指標よりも高くなるまで繰り返す。但し、基準評価指標の方が小さい場合であっても、そこで、フィッティングを終了するのではなく、他のテスト用テニスラケットを試し、よりよいテスト用テニスラケットを探すこともできる。
【0071】
<3.ラケットの選定>
ところで、上記フィッティング判定工程においては、テスト用のテニスラケットの選定を行っているが、この選定は種々の方法で行うことができる。例えば、準備したラケットを順番に試してもよいが、効率的に問題がある。そこで、各テスト用テニスラケットのラケット特性を設定し、このラケット特性に基づき、評価指標を参酌しながら、ラケットの選定を行うことかできる。以下、この手法について説明する。
【0072】
<3−1.ラケット特性>
スイングに影響を与えるラケット特性は種々のものを挙げることができるが、例えば、「飛び」、「球もち」、及び「手応え」を挙げることができる。但し、これ以外のラケット特性を検討することもできる。「飛び」とは、反発力や飛距離の適正を示すラケット特性であり、「球もち」とは球離れのタイミングの適正を示すラケット特性である。また、「手応え」とは、打感の重さ、衝撃感の適正を示すラケット特性である。そして、これらラケット特性を大きくしたり、あるいは小さくすることで、プレーヤーには、以下のような影響を与えることが分かっている。
【0073】
【表1】

【0074】
そこで、これらのラケット特性を数値化すれば、そのラケットの性質を容易に表すことができるため、ラケットの選定を効率的に行うことができるようになると考えられる。ここでは、各ラケット特性の性質を考慮し、以下のようにラケット特性を数値化した3つのインデックス値を設定する。これらインデックス値は、ラケットのスペックを用いて設定される。
(1)飛びインデックス値
【数1】

飛びインデックス値は、反発力や飛距離の適正を示すラケット特性を数値化したものであり、ラケットのスペックの中から、飛びに正の影響を与えるものを分子にし、飛びに負の影響を与えるものを分母にしている。また、特に飛びに影響を与える「フェース面積」については、二乗することで、その影響が大きくなるようにしている。
(2)球もちインデックス値
【数2】

球もちインデックス値は、球離れのタイミングの適正を示すラケット特性を数値化したものであり、ラケットのスペックの中から、球もちに正の影響を与えるものを分子にし、負の影響を与えるものを分母にしている。また、特に球もちに負の影響を与えるフレックスについては、二乗することで、その影響が大きくなるようにしている。
(3)手応えインデックス値
【数3】

手応えインデックス値は、打感の重さ、衝撃感の適正を示すラケット特性を数値化したものであり、ラケットのスペックの中から、手応えに正の影響を与えるものを分子にし、負の影響を与えるものを分母にしている。また、特に手応えに負の影響を与える最大厚みについては、二乗することで、その影響が大きくなるようにしている。
【0075】
以上のインデックス値は、上記の式に基づいて算出された数値を用いることもできるが、そのまま用いると数値が大きくなりすぎて判断の材料として用いにくいため、例えば、各式から算出された数値に補正係数を乗じ、さらに、あるラケットの数値を基準とした相対的な数値とすることもできる。また、上記インデックス値の設定は一例であり、これ以外の数式でインデックス値を設定できるのはいうまでもない。
【0076】
続いて、これらインデックス値と実打との相関性を検討し、ここで設定した3つのラケット特性の有効性について検討する。まず、以下の9種のテニスラケットを準備する。なお、インデックス値は、REVOX4.0を基準とし、これを10点としたときの相対的な値である。
【0077】
【表2】

そして、これらのラケットを用いて、20人のプレーヤーが実打することで、実際の飛び、球もち、及び手応えを官能評価した。20人のプレーヤーは、ストロークによるスイングでラリーを行い、各ラケット特性を5段階で評価し(5点が最良値)、これらを平均することで、実打の特定を算出した。結果は、以下の表3及び図7に示すとおりである。
【0078】
【表3】

【0079】
図7のグラフによれば、いずれのラケット特性もインデックス値と実打点数とで相関係数が0.8以上となっており、ラケット特性のインデックス値が有効であることが分かった。なお、表2に示すラケット特性のインデックス値は、分析装置2の記憶部23のテスト用ラケット領域2324に記憶されている。
【0080】
<3−2.ラケット特性を用いたフィッティング>
次に、上記ラケット特性を用いてラケットのフィッティングを行う。ここでは、ヘッド速度を評価指標としてフィッティングを行う。より詳細には、評価指標を図8のようなグラフに出力して評価を行う。このグラフにおいて、横軸は、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるX軸方向のヘッド速度V(hx)、つまりフラット速度成分である。縦軸は、ヘッド速度V(h)が最大である時刻におけるZ軸方向のヘッド速度V(hZ)、つまりスピン速度成分である。このグラフ上の点(V(hX),V(hZ))の、原点(0,0)からの距離Lは、下記数式によって算出される。
L=SQRT(V(hx)2+V(hz)2
この距離Lは、y軸方向のヘッド速度V(hy)がゼロであると仮定されたときのヘッド速度V’(h)である。図8には、多数の円弧が画かれているが、それぞれの円弧の中心は、原点(0,0)である。この円弧の半径は、ヘッド速度V’(h)を示している。
【0081】
図8には、第一点56、第二点58及び第三点60が示されている。第一点56は、塗りつぶされた正方形で示されている。第二点58は、塗りつぶされた円で示されている。第三点60は、塗りつぶされた三角形で示されている。第一点56は、第一ラケットがスイングされたときの点(V(hX),V(hZ))を示している。第二点58は、第二ラケットがスイングされたときの点(V(hX),V(hZ))を示している。第三点60は、第三ラケットがスイングされたときの点(V(hX),V(hZ))を示している。以下、このグラフを用い、2つのフィッティングの例について説明する。なお、ここでは各ラケットを5回ずつスイングしたときの平均を評価指標として算出している。
【0082】
図9にフィッティング1の例を示す。まず、プレーヤー本人のラケットをスイングし、基準評価指標を算出する。このプレーヤーは、男性でありテニスの上級者である。このとき算出された基準評価指標は、図9の(i)に示す直線である。続いて、テスト用テニスラケットとして、REVOX4.0を使用し、スイングを行った後、テスト評価指標を算出する。その結果は、図9の(ii)に示す直線である。これらの指標を比較すると、(ii)のラケットは、(i)に比べ、フラット速度成分及びスピン速度成分がともに低下している。すなわち、「飛び」が良すぎるため、ラケットのスイング速度が低下したと考えられる。そこで、ラケット特性の「飛び」のインデックス値が小さいラケットを試してもらうように検討する。
【0083】
ここで、分析装置2の制御部24では、演算部241が評価指標を算出した後、指標比較部242が2つの評価指標を比較する。そして、その結果に基づいて、ラケット選択部243が、表2を参照してREVOX4.0よりも飛びのインデックス値が小さいREVOX2.0を選択し、出力部21に表示等を行う。こうして、プレーヤーは、REVOX2.0によって実打を行うと、その結果がグラフに表示される。結果は、図9の(iii)に示す直線である。この結果によれば、フラット速度成分及びスピン速度成分のいずれも増加しているが、その増加はわずかであり、基準評価指標を超えるものではない。ここで、REVOX4.0と、REVOX2.0とを比較すると、「球もち」及び「手応え」が大きいので、指標比較部242の結果に基づいてラケット選択部243は、これを低下させたインデックス値を有するラケットを選択する。つまり、REVOV3.0を選択する。
【0084】
続いて、プレーヤーが、REVOV3.0によって実打を行うと、その結果がグラフに表示される。結果は、図9の(iv)に示す直線である。この結果によれば、フラット速度成分及びスピン速度成分のいずれも大きく増加し、基準評価指標を超えている。したがって、最終的に、REVOV3.0を推奨する。
【0085】
次に、図10にフィッティング2の例を示す。まず、プレーヤー本人のラケットをスイングし、基準評価指標を算出する。このプレーヤーは、女性でありテニスの中級者である。このとき算出された基準評価指標は、図10の(i)に示す直線である。続いて、テスト用テニスラケットとして、REVOX4.0を使用し、スイングを行った後、テスト評価指標を算出する。その結果は、図9の(ii)に示す直線である。これらの指標を比較すると、(ii)のラケットは、(i)に比べ、スピン速度成分が向上しているが、スイング速度は低下している。スピン速度成分の向上から、振り上げが大きくなっていることが分かるため、振り上げを抑える必要がある。そこで、ラケット選択部243が、表2を参照し、「飛び」を抑え、「球もち」を上げたNEOMAX2000を選択する。こうして、プレーヤーは、NEOMAX2000によって実打を行うと、その結果がグラフに表示される。結果は、図10の(iii)に示す直線である。この直線から、スイングの振り上げは小さくなったが、スイング速度は上がっていない。したがって、「手応え」(衝撃力)に押されている可能性があるので、ラケット選択部243は、「手応え」を低下させたREVOV5.0を選択する。そして、プレーヤーが、NREVOV5.0によって実打を行うと、その結果がグラフに表示される。結果は、図10の(iv)に示す直線である。このグラフによると、スイング速度が、本人のラケットよりも向上していることが分かる。したがって、最終的に、REVOV5.0を推奨する。
【0086】
ラケット選択部243による選択の基準は、種々の設定方法があるが、例えば、以下のように設定することができる。
【表4】

【0087】
<4.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、複数のテスト用テニスラケットに対し、ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性をそれぞれ規定している。また、ラケットを試打したときに計測される計測値から、スイングの評価となる評価指標を算出し、当該ラケットの評価を行っている。そして、この評価指標が向上させ得るラケットを、複数のテスト用テニスラケットの中から、ラケット特性に基づいて選択するようにしている。したがって、ラケットのフィッティングにあたって、次に試打するラケットをラケット特性に基づいて選択しているため、単に複数のラケットを試す場合に比べ、より少ない試打でユーザに適したラケットに行き着くことができる。したがって、効率的なフィッティングが可能となる。
【0088】
<5.変形例>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0089】
<5−1>
上記実施形態では、ラケット特性として、「飛び」、「球もち」、「手応え」を採用したが、これ以外のラケット特性を用いることもできる。
このほか、ラケットのスペックを直接用いることもできる。例えば、ラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数などを用いることができる。以下、これら特徴を簡単に説明する。
(i) 重量:軽くなるとスイング速度が向上し、重くなるとスイング速度が低下する。軽くなると飛びすぎるので抑制し、逆にスイング速度が遅くなることもある。
(ii) フェース面積:大きくなると飛び、球もちが上がり、手応えが低下する
(iii) 最大フレーム厚:フレーム厚とまとめると↓
(iv) 最小フレーム厚:厚くすると飛びが上がり、球もち、手応えは低下する
(v) フレックス:上げる(硬くする)と飛びが上がり、球もちと手応えが低下する
(vi) 全長、:長くすると、飛びが、上がる、
(vii) メインストリング数:ストリング数とまとめると↓
(viii) クロススリング数:本数が多いと、飛びと球もちが、低下し、手応えが上がる
以上のように、ラケット特性は種々のパラメータを用いることができ、これを参照することで、効率的なラケットの選択が可能となる。
【0090】
<5−2>
上記実施形態では、ヘッド速度が最大となる時刻における各評価指標を用いてフィッティングを行っているが、これはあくまでも一例である。したがって、ヘッド速度が最大となる時刻以外のものを用いることができるし、ヘッド速度以外の評価指標を用いることもできる。以下、他の評価指標の例を挙げる。
【0091】
(1)インパクト前後の速度でのフィッティング
スイングの開始以降、ヘッド速度は徐々に上昇し、テニスボールとのインパクトによって、ヘッド103は急激に減速するが、その後ラケットのフォローによりヘッド速度は再び上昇した後、減速する。したがって、スイングにおいては、テニスボールとのインパクトの直前と、その後のフォロー時にピークが生じる。ここで、インパクト直前の最大ヘッド速度と、フォロー時の最大ヘッド速度との差が小さいほど、ラケットを振り抜けており、プレーヤーに合うラケットといえる。したがって、この差を評価指標とすることができ、この差が小さくなるようなラケットが推奨ラケットとなる。
【0092】
(2)インパクト時の加速度によるフィッティング
プレイヤーに合うラケットは、インパクト時の加速度が大きい。したがって、インパクド時の加速度を評価指標とすることができる。
【0093】
(3)スイング開始からインパクトまでの時間でのフィッティング
プレイヤーに合うラケットは、スイング開始時のグリップを振りだしてからインパクトまでの時間が短く、タイミングが安定する。したがって、この時間を評価指標とすることができる。すなわち、この時間が短くなるようなラケットが推奨ラケットとなる。
【0094】
<5−3>
上記実施形態では、グラウンドストロークによるスイングを計測したが、ボレー時及びサーブ時のスイングとすることもできる。ボレーとは、相手プレーヤーが打撃したテニスボールを、テニスコートの地面に落ちる前に直接打撃することをいう。サーブとは、打撃するプレーヤー自身が放り上げたテニスボールを、テニスコートの地面に落ちる前に、相手陣73に向けて直接打撃することをいう。
【0095】
また、ボレー時のスイング及びサーブ時のスイングのいずれにおいても、三軸加速度センサ111及び三軸ジャイロセンサ112による計測値から、指標としてのグリップ加速度、グリップ速度、ヘッド速度、ヘッド加速度、ヘッド速度成分比、スイング軌道、ラケット角速度等を得ることができる。ボレーやサーブについてのラケットフィッティング時の判断基準についても、グラウンドストロークについての判断基準と同様の基準が採用されうる。
【0096】
<5−4>
上記の説明では、ラケットの加速度及び角速度を計測しているが、ラケットの位置や速度を計測し、これらから上記評価指標を算出することもできる。また、計測したすべての計測値を使用する必要はなく、その中から必要なものを用いて評価指標を算出すればよい。
【0097】
<5−5>
上記の説明では、計測デバイス1に、三軸加速度センサ111及び三軸ジャイロセンサ112を用いていたが、ラケットの位置、速度、加速度、及び角速度が計測できるのであれば、これ以外のセンサを用いることもできる。
【0098】
<5−6>
上記実施形態では、無線通信によって、計測デバイス1で計測されたデータを分析装置2に送信しているが、計測デバイス1で測定されたデータをUSBメモリなどの外部記憶装置に記録し、この外部記憶装置から、分析装置2の通信部25を介して、データを記憶部23に記憶させることもできる。
【0099】
<5−7>
また、ラケットの加速度と角速度の計測は、上述した計測デバイス以外でも行うことができる。例えば、プレーヤーがスイングしている様子を撮影し、撮影された動画を画像処理することで、ラケットの位置、速度、加速度、及び角速度を計測することもできる。
【符号の説明】
【0100】
1 計測デバイス
2 分析装置
23 記憶部
2321 生データ領域(第2記憶部)
2324 テスト用ラケット領域(第1記憶部)
241 演算部
243 ラケット選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性がそれぞれ規定された複数のテスト用テニスラケットを準備する第1ステップと、
ユーザに、テニスボールを打撃するために基準テニスラケットを少なくとも一回スイングさせ、このスイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間における前記基準テニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を計測し、計測値を取得する第2ステップと、
前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第3ステップと、
前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第4ステップと、
を備えている、テニスラケットのフィッティング方法。
【請求項2】
前記第4ステップの後、
ユーザに、テニスボールを打撃するために前記選択されたテニスラケットを少なくとも一回スイングさせ、このスイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間における前記選択されたテニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を計測し、計測値を取得する第5ステップと、
前記計測値に基づいて、前記選択されたテニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第6ステップと、
前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第7ステップと、
を少なくとも一回繰り返す、請求項1に記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項3】
前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つである、請求項1または2に記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項4】
前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つを用いて規定された数値である、請求項1または2に記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項5】
前記ラケット特性の1つは、ボールの飛距離を反映するように、少なくとも前記フェース面積を用いて数値化された飛び特性である、請求項4に記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項6】
前記ラケット特性の1つは、ボールの球離れのタイミングの適正を反映するように、少なくとも前記フレックスを用いて数値化された球もち特性である、請求項4に記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項7】
前記ラケット特性の1つは、打撃時の衝撃感の適正を反映するように、少なくとも前記最大厚みを用いて数値化された手応え特性である、請求項4に記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項8】
前記第2ステップにおいては、前記テスト用テニスラケットの前記スイングを複数回行って、複数の計測値をそれぞれ取得し、
前記第3ステップにおいては、前記複数の計測値から算出された評価指標をそれぞれ平均することで、前記評価指標を算出する、請求項1から7のいずれかに記載のテニスラケットのフィッティング方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性がそれぞれ規定された複数のテスト用テニスラケットに関する情報を記憶する第1ステップと、
ユーザが、テニスボールを打撃するために基準テニスラケットを用いて少なくとも一回スイングした際に、当該スイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間において計測された前記基準テニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を、計測値として受け付ける第2ステップと、
前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第3ステップと、
前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第4ステップと、
を備えている、テニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項10】
前記第4ステップの後、
ユーザが、テニスボールを打撃するために前記選択されたテニスラケットを用いて少なくとも一回スイングした際に、当該スイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間において計測された前記選択されたテニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を、計測値として受け付ける第5ステップと、
前記計測値に基づいて、前記選択されたテニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する第6ステップと、
前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットの中から選択する第7ステップと、
を少なくとも一回繰り返す、請求項9に記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項11】
前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つである、請求項9または10に記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項12】
前記ラケット特性は、前記各テスト用テニスラケットの重量、フェース面積、最大フレーム厚、最小フレーム厚、フレックス、全長、メインストリング数、及びクロススリング数の少なくとも1つを用いて規定された数値である、請求項9または10に記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項13】
前記ラケット特性の1つは、ボールの飛距離を反映するように、少なくとも前記フェース面積を用いて数値化された飛び特性である、請求項12に記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項14】
前記ラケット特性の1つは、ボールの球離れのタイミングの適正を反映するように、少なくとも前記フレックスを用いて数値化された球もち特性である、請求項12に記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項15】
前記ラケット特性の1つは、打撃時の衝撃感の適正を反映するように、少なくとも前記最大厚みを用いて数値化された手応え特性である、請求項12に記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項16】
前記第2ステップにおいては、前記テスト用テニスラケットによる複数回の前記スイングから得られる、複数の計測値を受け付け、
前記第3ステップにおいては、前記複数の計測値から算出された評価指標をそれぞれ平均することで、前記評価指標を算出する、請求項9から15のいずれかに記載のテニスラケットのフィッティングプログラム。
【請求項17】
ボールを打撃したときのスイングに影響を与える少なくとも1種類のラケット特性がそれぞれ規定された複数のテスト用テニスラケットに関する情報が記憶された第1記憶部と、
ユーザが、テニスボールを打撃するために基準テニスラケットを用いて少なくとも一回スイングした際に、当該スイングの開始時から終了時までの少なくとも一部の区間において計測された前記基準テニスラケットの位置、速度、加速度及び角速度の少なくとも1つの推移を、計測値として記憶する第2記憶部と、
前記計測値に基づいて、前記基準テニスラケットにおけるスイングの評価となる少なくとも1つの評価指標を算出する演算部と、
前記評価指標の少なくとも1つを向上させ得るテニスラケットを、前記ラケット特性に基づいて、前記複数のテスト用テニスラケットから選択するラケット選択部と、
を備えている、テニスラケットのフィッティングの分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−99527(P2013−99527A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227520(P2012−227520)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(504017809)ダンロップスポーツ株式会社 (701)