説明

テレビインターホンシステム

【課題】放射能測定が設定値以上になると、警報を発するとともにゲートを電気錠にて制御して除染行為を促すメッセージを表示し、管理室からの指示を早く正確に伝えるテレビインターホンシステムを提供する。
【解決手段】電気錠を備えたテレビインターホンシステムの子機側に放射能測定機構と、警報発報機構とを具備し、親機側にはゲートとそれらを制御する電気錠を具備し、線量計値が設定値以上になると、警報を発するとともにゲートを電気錠にて制御して除染行為を促すメッセージを表示したり、管理室からの指示を音声で確認することにより、低コストでかつ正確なコミュニケーションを確立させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等の放射線管理区域(以下では管理区域と略称する)内で作業する業務従事者に対する管理区域への入退域を管理する電気錠付テレビインターホンシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
管理区域内で作業する業務従事者は、入域から退域までの間に、幾つかの確認やモニタリングを受け、状況によっては警報が発せられ、以後の行動を指示限定される。確認やモニタリングに使用される装置に異常が発生し、正常な確認やモニタリングに人手と時間を要する場合もある。また、確認やモニタリングの際の警報・異常発生時には、確認やモニタリングに使用される装置内の表示部に状況説明等のメッセージが表示され、同時に、その装置の警報・異常発生が中央監視員室の表示装置に表示され、係員が呼び出される。業務従事者はその係員の指示に従って行動する。
【0003】
このため、これらの煩雑な作業を改善し、主要施設から離れた飛地などに設置される施設においても遠隔操作にてこの業務従事者を入退域させることができる管理システムが、特開2004−85458号公報などで提案されてきている。
【特許文献1】特開2004−85458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、2010年3月11日に発生した東日本大震災以降は、原子力発電所管内はもちろん、その周辺の地区でも、継続して管理し続ける必要がある。このため従来例で示すような個別の装置をLANにて接続しただけのシステムでは大規模大型化してしまい、また専門的な知識を持った一部の人しか使用できない恐れがある。このため、トータルコストを下げることが困難となるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記難点を解決するためになされたものであって、管理区域で作業を行う業務従事者が安心して作業できるように、簡単な操作方法で管理室と会話ができるとともに、放射能測定が設定値以上になると、警報を発するとともにゲートを電気錠にて制御して除染行為を促すメッセージを表示するなどして、管理室からの指示を早く正確に伝えることを特徴とするテレビインターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題を解決するため、本発明は、テレビインターホンシステムにおいて、業務従事者が管理者を呼び出して通話するための子機と、子機からの呼び出しに応じて業務従事者と通話するための親機と、親機からの操作により開閉する電気錠から構成されるテレビインターホンシステムであって、子機は業務従事者が管理者を呼び出すための呼出ボタンと、業務従事者が管理者と通話するための子機マイク及び子機スピーカと、業務従事者及びその作業内容を撮像するカメラを有し、親機は子機からの呼び出しに応じて業務従事者と通話するための親機マイク及び親機スピーカと、カメラで撮像された映像を出画するためのモニタを有し、電気錠は放射能管理を行なう必要のない非管理区域側ゲート及び放射能管理を行なう必要のある管理区域側ゲートを隔離するように設置され、子機には放射能の被曝値を測定する放射能測定部と、音声や画像などの出力手段で警報を発報する子機警報発報部とを有し、親機には電気錠の開閉を制御する電気錠解錠ボタンと、音声や画像などの出力手段で警報を発報する親機警報発報部を有し、放射能測定部の測定値が予め定められた設定値以上になると、親機警報発報部及び子機警報発報部の少なくとも1つから警報を発するとともに、電気錠解錠ボタンの操作を抑止する親機CPUを有することを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明は、テレビインターホンシステムにおいて、業務従事者が携帯し、放射線の線量計測値を積算する機能を備える携帯型端末を備えるとともに、子機は、積算した線量計測値を記録し個人情報を読み込むカードリーダ等の入力部を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、管理区域で作業を行う業務従事者が、低コストかつ簡単な操作方法で管理室と会話ができるとともに、作業後における体表面や小物物品の放射能が設定値以上になると、警報を発するとともに電気錠を制御してゲートを閉じ除染行為を促すメッセージを表示するので、管理室からの指示を早く正確に伝えることが可能となる。
【0009】
請求項2の発明によれば、更に、作業環境における刻々と変化する放射線の強度を知ることができ、管理区域内での滞在残余時間が予測できるので放射能汚染管理区域で作業を行う業務従事者にとって安心して業務にあたることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のテレビインターホンシステムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明のテレビインターホンシステムの構成を示すシステム構成図である。
本発明のテレビインターホンシステムは、子機1と管理室親機2とから構成されている。
【0012】
図2は、図1のテレビインターホンシステムのブロック図である。
図2において、子機1は、管理区域に設置され、作業を行う業務従事者が、管理者を呼び出すための呼出ボタン11、業務従事者が管理者と通話するための子機マイク12、子機スピーカ13、呼出ボタン11の操作により駆動するカメラ14、放射性物質による汚染状態をモニタリングする放射能測定部15、測定した放射線量が設定値を超えたときに警報を発報する警報発報部16と、カメラ14で撮像した映像を変調するための変調回路17、子機マイク12及び子機スピーカ13を用いて管理室親機2と通話をおこなうための通話回路20、管理室親機2と通信をおこなうための子機IF18、子機1の各回路を制御するための子機CPU19とを備えている。なお、子機スピーカ13は、警報発報部16の機能を兼ねている。
【0013】
さらに管理室親機2は、子機1のカメラ14で撮像した映像を出画するためのモニタ51、子機1の子機マイク12、子機スピーカ13と通話するための親機マイク52、親機スピーカ53、通話回路54、子機1の変調回路17で変調された映像を復調してモニタ51に出画するための復調回路55、さらに、放射線量が許容値を超えた場合には警報信号処理部56からモニタ51に警報を発生し、除染するなど必要なメッセージを表示させるとともに、電気錠制御部58を経由して、管理区域内のゲート7を閉じ込める一方、強制的に電気錠を解除するための電気錠解除ボタン57、業務従事者からの呼び出しに応答するための通話ボタン59、子機1と通信するための親機IF60、管理室親機2の各回路を制御するための親機CPU61から構成されている。
【0014】
このように構成されたインターホンシステムについて、以下、放射能測定部15の値が設定値未満の場合の動作を説明する。
管理区域にて作業するため入域する場合、管理室親機2から電気錠解錠ボタン57を操作すると、電気錠解錠ボタン57の操作を検出した親機CPU61の制御により電気錠制御部58からゲート7が開錠される。
そして、作業が終了し管理区域から退域する際には、呼出ボタン11を押下すると、呼出信号とともに放射能測定部15での測定値が管理室親機2に送出される。呼出信号と放射能測定部15での測定値を受信した親機CPU61は、測定値が設定値未満であれば管理室親機2の電気錠制御部58を制御することによりゲート7が開錠される。このようにして管理区域からの汚染の拡大を防止できる。
【0015】
次に、放射能測定部15の値が設定値以上の場合について説明する。
作業が終了し管理区域から退域する際には、呼出ボタン11を押下すると、呼出信号とともに放射能測定部15での測定値が管理室親機2に送出される。呼出信号と放射能測定部15での測定値を受信した親機CPU61は、測定値が設定値以上の値であれば、子機1の警報発報部16から警報を鳴動するとともに、管理室親機2の警報信号処理部56からモニタ51に警報表示と放射線量値を表示する。
【0016】
このとき、設定値以上の放射能が検出されてとり残された人がいる場合、管理室親機2の親機マイク52から通話回路54を経由して親機I/F60から子機I/F18に伝送され、子機CPU19から通話回路20を介して子機スピーカ13へ音声信号が伝わり通話が可能となる。これにより的確な指示を出すほか、救助が来るまでの間、励ますことも可能となる。
【0017】
また、携帯していた小物物品についても表面汚染モニタ(G.M.管)にて放射能を測定し、設定値を超えていれば、除染の後再度モニタリングして携帯して退域できるか確認することになる。
【0018】
なお、誤った測定値により管理区域でゲート7が施錠されてしまった場合にも、管理室親機2の電気錠解除ボタン57にて電気錠を開錠して業務従事者を解放することができる。
【0019】
次に、本発明のテレビインターホンシステムを適用した第2の実施の形態例について、図面を参照して説明する。なお、同一の製品には、同じ番号を付与している。
【0020】
図3は、本発明のテレビインターホンシステムの構成を示すシステム構成図である。本発明のテレビインターホンシステムは、固定設置型子機3と管理室親機2と携帯型子機4から構成されている。
【0021】
図4、図5は、図3のテレビインターホンシステムのブロック図で、図4は固定設置型子機3と管理室親機2とが有線で通信する場合であり、図5は携帯型子機4と管理室親機2とが無線で通信する場合である。
なお、管理室親機2は、第1の実施例と略同一の構成であるが、第1の実施例に加えて、携帯型子機4と無線通信をおこなうための受信/発信回路62を追加で備えている。
【0022】
図4において、固定設置型子機3は、管理区域と非管理区域との間に設置され、作業を行う業務従事者が、管理者を呼び出すための呼出ボタン311、業務従事者が管理者と通話するための子機マイク312、子機スピーカ313、呼出ボタン311の操作により駆動するカメラ314、放射性物質による汚染状態をモニタリングする放射能測定部315、測定した放射線量が設定値を超えたときに警報を発報する警報発報部316を備えている。この放射能測定部315には、空間線量・累積線量の測定に適したシンチレータと表面汚染モニタ用のG.M.管の両方を具備している。なお、子機スピーカ313は、警報発報部316の機能を兼ねている。
また、業務従事者のIDカードを読み取るカードリーダ321、カメラ314で撮像した映像を変調するための変調回路317、子機マイク312及び子機スピーカ313を用いて管理室親機2と通話をおこなうための通話回路320、管理室親機2と有線通信をおこなうための子機IF318、固定設置型子機3の各回路を制御するための子機CPU319にて構成されている。
【0023】
また、図5における携帯型子機4は作業を行う業務従事者の体表面に固定されるものであり、作業を行う業務従事者が、管理者を呼び出すための呼出ボタン411、業務従事者が管理者と通話するための子機マイク412、子機スピーカ413、呼出ボタン411の操作により駆動するカメラ414、放射性物質による累積の汚染状態をモニタリングする個人警報線量計422、測定した放射線量が設定値を超えたときに警報を発報する警報発報部416を備えている。なお、子機スピーカ413は、警報発報部416の機能を兼ねている。
また、業務従事者のIDカードを読み取るカードリーダ421、カメラ414で撮像した映像を変調するための変調回路417、子機マイク412及び子機スピーカ413を用いて管理室親機2と通話をおこなうための通話回路420、管理室親機2とのインターフェースである子機IF418、管理室親機2と無線通信をおこなうための発信/受信回路423、固定設置型子機3の各回路を制御するための子機CPU419にて構成されている。
【0024】
個人警報線量計422は空間線量・累積線量の測定に適したシンチレータを具備しており、業務従事者のIDカードを挿入すると、カードリーダ421にて累積線量を既被曝量に追加積算して記録する構成となっている。
【0025】
このように構成されたインターホンシステムについて、以下、動作を説明する。管理区域内で作業する業務従事者が管理区域内へ入域する際に、この業務従事者体表面に固定された携帯型子機4に格納されているIDカードには個人警報線量計22のデータが書き込まれる。これによりこの業務従事者が管理区域内に入域する際、ゲート7の近傍に設置される固定設置型子機3のカードリーダ321により、IDカードの情報を読み込む。子機CPU319は、読み込んだカードのIDを親機CPU61に送信する。親機CPU61は、当該IDカードの所有者が正規に入域を許可された人物で、かつ累積線量を超えていないかを確認して電気錠制御部58を制御してゲート7を開錠し、許可されていない人物や累積線量値が基準値を超えた業務従事者には親機CPU61はゲート7を施錠し、入域を制限する。
【0026】
次に、作業中に被曝量が限界値に達した場合について説明する。個人警報線量計422の測定した被曝量が限界値に達すると、個人警報線量計422が警報を子機CPU419に送出する。子機CPU419は、警報発報部416から警報を発生するとともに、管理室親機2に通信するための発信/受信回路423を介して無線で警報が送られ、限界値に達した個人ID情報を無線通信により送信する。個人IDを受信した管理室親機2は、警報信号処理部56からモニタ51に警報表示と被曝量値を表示する。
【0027】
また、親機マイク52から通話回路54を経由して親機I/F60から受信/発信回路62、発信/受信回路423を介して子機I/F18に伝送され、子機CPU19から通話回路20を介して子機スピーカ13へ音声信号が伝わり通話が可能となる。これにより的確な退避指示を出すことも可能となる。
【0028】
一方、管理区域内で作業した業務従事者が管理区域内から退域する際に、呼出ボタン311を押下すると、第1の実施例と同様に親機CPU61が業務従事者の放射能測定部15での測定値を判定し、電気錠制御部58を制御する。
その後の動作についても第1の実施例と同様な動作をするので省略する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
なお、上記実施例では子機1台乃至2台、管理室親機1台にて構成されているが、複数の機器について管理室親機2を中心に管理することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明第1の実施形態のシステム構成図
【図2】本発明第1の実施形態のブロック図
【図3】本発明第2の実施形態のシステム構成図
【図4】本発明第2の有線通信の実施形態のブロック図
【図5】本発明第2の無線通信の実施形態のブロック図
【符号の説明】
【0031】
11、311、411 呼出ボタン
12、312、412 子機マイク
13、313、413 子機スピーカ
14、314、414 カメラ
15、315 放射能測定部
16、316、416 警報発報部
17、317、417 変調回路
18、318、418 子機I/F
19、319、419 子機CPU
20、320、420 通話回路
321、421 カードリーダ
422 個人警報線量計
423 発信/受信回路
51 モニタ
52 親機マイク
53 親機スピーカ
54 通話回路
55 復調回路
56 警報信号処理部
57 電気錠解除ボタン
58 電気錠制御部
59 通話ボタン
60 親機I/F
61 親機CPU
62 受信/発信回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
業務従事者が管理者を呼び出して通話するための子機と、前記子機からの呼び出しに応じて前記業務従事者と通話するための親機と、前記親機からの操作により開閉する電気錠から構成されるテレビインターホンシステムであって、
前記子機は業務従事者が管理者を呼び出すための呼出ボタンと、前記業務従事者が前記管理者と通話するための子機マイク及び子機スピーカと、前記業務従事者及びその作業内容を撮像するカメラを有し、
前記親機は前記子機からの呼び出しに応じて前記業務従事者と通話するための親機マイク及び親機スピーカと、前記カメラで撮像された映像を出画するためのモニタを有し、
前記電気錠は放射能管理を行なう必要のない非管理区域側ゲート及び放射能管理を行なう必要のある管理区域側ゲートを隔離するように設置され、
前記子機には放射能の被曝値を測定する放射能測定部と、音声や画像などの出力手段で警報を発報する子機警報発報部とを有し、
前記親機には電気錠の開閉を制御する電気錠解錠ボタンと、音声や画像などの出力手段で警報を発報する親機警報発報部を有し、
前記放射能測定部の測定値が予め定められた設定値以上になると、前記親機警報発報部及び前記子機警報発報部の少なくとも1つから警報を発するとともに、電気錠解錠ボタンの操作を抑止する親機CPUを有することを特徴とするテレビインターホンシステム。
【請求項2】
前記業務従事者が携帯し、放射線の線量計測値を積算する機能を備える携帯型端末を備えるとともに、
前記子機は、積算した前記線量計測値を記録し個人情報を読み込むカードリーダ等の入力部を有することを特徴とする請求項1記載のテレビインターホンシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77867(P2013−77867A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214852(P2011−214852)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】