説明

テーブル収納装置

【課題】本発明は、収納部に収納可能なテーブルの収納装置に関し、特に、天板の収納時において、天板の下降速度を緩やかにし、振動や騒音を発することなくスムースに収納可能なテーブルを提供することを課題とする。さらには、天板の下降速度を緩和するのみならず、天板の引き上げ時にも、軽い力で天板を持ち上げることが可能なテーブル収納装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決すべく、本発明の請求項1に記載の発明は、略水平な使用状態から略垂直に起立されて上面開口した収納部に収納されるテーブル収納装置において、前記テーブルが備える昇降機構を、前記収納部内の左右両側に対向して形成される縦方向のスライドレールに案内されて昇降する縦部材を連結する横部材と、前記横部材に設けられたピニオンとを有するものとするとともに、前記ピニオンに噛み合って案内することで、前記昇降機構の昇降を減速させるラックを収納部内に設けたことを特徴とする、テーブル収納装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、講義椅子や劇場椅子等の椅子の背面テーブルに関し、特に、テーブルの収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、講義椅子や劇場椅子等に用いられる椅子の背凭れの背面に設けられたテーブルが知られている。このようなテーブルは、椅子の背面に一体に取付けられた箱状の収納部に、テーブルの天板を上下昇降自在に収納し、テーブル使用時には、天板を上方に持ち上げた後、天板を使用者方に回動し略水平状態で使用する構成である。(例えば、特許文献1)
【0003】
しかしながら、上記テーブルは、前席の背面に一体に形成されていることから、テーブル使用時に生じる振動が前席に伝わりやすいといった問題がある。特に、テーブル収納時において、テーブルが勢い良く収納されてしまうと、前席に大きな振動が生じてしまう恐れがある。また、天板の重量が重いテーブルの場合、収納時の振動のみならず、天板の引き上げ時に大きな力がいるため、テーブルを引き出しづらいといった問題があった。
【0004】
【特許文献1】特許第3459219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、収納部に収納可能なテーブルの収納装置に関し、特に、天板の収納時において、天板の下降速度を緩やかにし、振動や騒音を発することなくスムースに収納可能なテーブルを提供することを課題とする。さらには、天板の下降速度を緩和するのみならず、天板の引き上げ時にも、軽い力で天板を持ち上げることが可能なテーブル収納装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の請求項1に記載の発明は、略水平な使用状態から略垂直に起立されて上面開口した収納部に収納されるテーブル収納装置において、前記テーブルが備える昇降機構を、前記収納部内の左右両側に対向して形成される縦方向のスライドレールに案内されて昇降する縦部材を連結する横部材と、前記横部材に設けられたピニオンとを有するものとするとともに、前記ピニオンに噛み合って案内することで、前記昇降機構の昇降を減速させるラックを収納部内に設けたことを特徴とする、テーブル収納装置である。
【0007】
当該構成によれば、テーブルの昇降部材に設けられたピニオンを、天板の下降に伴い収納部に設けられたラックに沿って走行するように構成することで、ラックとピニオンとの摩擦抵抗や回動抵抗等によりテーブルの下降速度を徐々に緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブルを収納することが可能である。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記ピニオンが、一方方向の回転を他方方向よりブレーキ抵抗を受けて減速回転させることを特徴とする、請求項1記載のテーブル収納装置である。
【0009】
当該構成によれば、テーブルの昇降部材に設けられた少なくとも一方向に回動抵抗を有するピニオンを、天板の下降に伴い収納部に設けられたラックに沿って走行しつつ回動抵抗を付与するように構成することで、テーブルの下降速度を徐々に緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブルを収納することが可能である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記ピニオンを横部材に沿って何れか一方に移動させるのに伴い、横部材に設けた付勢部材の付勢力を漸次増大させるようにするとともに、前記ラックが、前記付勢力を増大させる方向に移動しながら下降する前記ピニオンを案内するように傾斜させて設けられている請求項1又は2に記載のテーブル収納装置である。
【0011】
当該構成によれば、テーブルの昇降部材に設けられたピニオンを、天板の下降に伴い収納部に設けられたラックに沿って走行するように構成し、かつ、ピニオンを横部材の方向に付勢力をもって形成することにより、斜めのラックを横方向に押圧することにより生じる上方向の補助力と、ピニオンの回動抵抗とが合成され、テーブルの下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブルを収納することが可能である。さらには、天板の持ち上げ時に、斜めのラックに対するピニオンの横方向への付勢力により生じる上方向の補助力により、軽い力で天板を持ち上げることが可能である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記ピニオンを複数有するものとして、横部材に沿って互いに近接方向に移動させるのに伴い、横部材に設けた付勢部材の付勢力を漸次増大させるようにするとともに、前記ラックが、ハの字状に傾斜させて設けられている請求項1乃至3に記載のテーブル収納装置である。
【0013】
当該構成によれば、昇降部材の横部材に、付勢力をもって互いに近接するように設けられた複数のピニオンを、収納部に設けられた略ハの字状のラックに対して、前記ピニオンの付勢力が前記テーブルの下降に伴い漸次増大するように連係させることにより、ピニオンの回動抵抗のみならず、テーブルの下降に伴いピニオンがラックを押圧することによる上向きの補助力が生じ、テーブルの下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブルを収納することが可能である。さらには、テーブルの収納状態から引き出す際に、テーブルに上向きの補助力が生じているため、軽い力で天板を持ち上げることが可能である。
【0014】
例えば、横部材に移動自在に2のピニオンを形成し、かつ収縮力を有するバネの両端にピニオンをそれぞれ連結し、ハの字状のラックのそれぞれ外方に、左右のピニオンを挟み込むように連係させることで、天板の下降に伴い、ピニオンの回動抵抗を付与するとともに、左右のピニオンが離間しつつバネが伸びることでラックに対するピニオンの押圧力が増大し、テーブルの下降速度を確実に緩和することが可能である。特に、左右一対のラックを用いることで、左右均一に押圧力を生じさせることが可能であり、安定してテーブルの下降速度を緩和する効果があるとともに、天板の持ち上げ時に、より軽い力で天板を持ち上げることが可能である。
【0015】
また、延伸力を有するダンパの一端にピニオンを形成し、横部材の左右にピニオンを配置するとともに、各ピニオンと縦部材とを延伸力を有するダンパで連結することで、左右のピニオンが互いに近接する方向に付勢力を奏する構成であってもよく、ハの字状のラックのそれぞれ外方に、左右のピニオンを連係させることで、ラックに対してピニオンが押圧力を付与し、テーブルに上向きの補助力が生じる効果がある。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、前記ピニオンを複数有するものとして、横部材に沿って互いに離間方向に移動させるのに伴い、横部材に設けた付勢部材の付勢力を漸次増大させるようにするとともに、前記ラックが、逆ハの字状に傾斜させて設けられている請求項1乃至3に記載のテーブル収納装置である。
【0017】
当該構成によれば、昇降部材の横部材に、付勢力をもって互いに離間するように設けられた複数のピニオンを、収納部に設けられた略逆ハの字状のラックに対して、前記ピニオンの付勢力が前記テーブルの下降に伴い漸次増大するように連係させることにより、ピニオンの回動抵抗のみならず、テーブルの下降に伴いピニオンがラックを押圧することによる上向きの補助力が生じ、テーブルの下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブルを収納することが可能である。さらには、テーブルの収納状態から引き出す際に、テーブルに上向きの補助力が生じているため、軽い力で天板を持ち上げることが可能である。
【0018】
例えば、横部材を移動自在な2のピニオンを形成し、収縮力を有するバネの一端をそれぞれ縦部材に連結するとともに、バネの他端にそれぞれピニオンを連結して、左右のピニオンを互いに離間するように付勢し、逆ハの字状のラックのそれぞれ内方に、左右のピニオンを連係させることで、天板の下降に伴い、ピニオンの回動抵抗を付与するとともに、左右のピニオンが近接しつつバネが伸びることでラックに対するピニオンの押圧力が増大し、上向きの補助力が生じるとともにテーブルの下降速度を確実に緩和することが可能である。特に、左右一対のラックを用いることで、左右均一に押圧力を生じさせることが可能であり、安定してテーブルの下降速度を緩和する効果があるとともに、天板の持ち上げ時に、より軽い力で天板を持ち上げることが可能である。
【0019】
また、延伸力を有するダンパの両端にピニオンをそれぞれ連結して、左右のピニオンが互いに離間する方向に付勢力を奏する構成であってもよく、逆ハの字状のラックのそれぞれ内方に、左右のピニオンを連係させることで、ラックに対してピニオンが押圧力を付与し、テーブルに上向きの補助力が生じる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のテーブル収納装置1が用いられる好適な一例としては、図1に示すように、劇場や会議場などで好適に使用される椅子2の背凭れ2aの背面に設けられたテーブル収納装置1が挙げられる。このような椅子2は、横方向に連結された複数の椅子2が、前後方向へと複数列にわたって配置されており、座面2bを上下に回動可能なそれぞれの椅子の背凭れ2aの背面には、内部にテーブル3を有するテーブル収納装置1が形成されている。そして、該テーブル収納装置1のテーブル3を使用する際には、前方の椅子2のテーブル収納装置1のテーブル3を引き出して使用する構成である。
【0021】
すなわち、個々の椅子2は、図2に示すように、背凭れ2aの背面部分に箱状の収納部5を有し、該収納部5の内部に収納されたテーブル3の天板3(図中点線部分)を、該テーブル3の使用時において、天板の把手部Tを持ち天板3を上方に引き出した後、略水平方向に回動させることにより水平状態でテーブル3を使用する構成である。
【0022】
一般にこのようなテーブル収納装置1は、前席の背凭れ2aの背面に形成されていることから、テーブル使用時に生じる振動等が、前席に伝わりやすいといった欠点がある。特に、テーブル3の収納時において、天板3が収納部内2に勢い良く下降してしまうと、前席に大きな振動が生じてしまう恐れがある。これに対して、本発明のテーブル収納装置1は、後述する、テーブル3の収納時において、収納部内で天板3の下降速度を緩やかにすることで、天板収納時の振動や騒音を軽減する効果がある。
【0023】
(実施例1)
以下に、本発明のテーブル収納装置1の構成について詳述する。
まず、本発明のテーブル3は、図3に示すように、テーブル使用時において、天板3を水平方向へと回動して使用する構成であり(図中点線部分)、他方、テーブル収納時において、天板3を垂直方向に起立させた状態で、図示しない収納部5の上方開口から収納部5の内部へと下降させて収納する構成である。
【0024】
前記天板3は、天板3の下方に形成された左右の回動軸33を支点に回動自在となっており、さらに、前記回動軸33には、後述する収納部内を天板3とともに上下昇降する昇降機構としての昇降部材4が連結されている。
【0025】
該昇降部材4は、前記左右の回動軸33にそれぞれ軸支される長板状の縦部材31と、該左右の縦部材31を連結する断面コ字状のスライドレールからなる横部材32とからなる。前記縦部材31は、上下にそれぞれ昇降ローラ34を有し、該昇降ローラ34は、後述する収納部内に設けられたスライドレール22に沿って上下方向に昇降自在である。
【0026】
前記横部材32の略中央には、側面視コ字状のガイド37が横部材32の前方に突出して形成されており、該ガイド37の表面には、一方向に回動抵抗を奏するピニオンBが軸支されている。当該ピニオンBは、後述する、収納部5に形成されたラック21上を走行する構成であり、特に、天板の下降時において、ピニオンBの回動抵抗によりピニオンBの走行速度を緩和する効果がある。特に、ピニオンBの表面には、凹凸歯が形成されており、当該凹凸歯が後述するラック21の表面に形成された凹凸歯に連係しつつラック21に沿って回動走行する構成である。
【0027】
すなわち、テーブル3を収納する際には、まず、図4に示すように、水平状態のテーブルの天板3を、回動軸33を支点に上方へと回動し、天板3を略垂直に起立させる。天板3の起立状態では、天板3と昇降部材4の前記縦部材31とが略一直線に起立となり、収納部5の上部開口から天板3が下降を開始することとなる。
【0028】
このとき、前記収納部5の内部における左右側面には、断面コ字状のスライドレール22がそれぞれ形成されており、昇降部材の前記縦部材31に設けられた上下の昇降ローラ34,34が、収納部5の前記スライドレール22に沿って上下に昇降自在である。
【0029】
他方、収納部5の前面パネルの裏面(図中点線部分)には、上方から下方にかけて、ラック21が形成されている。このラック21は、収納部5の内部において、テーブル3の天板面と平行に形成されており、収納部5の図示しない前面パネルに止め具25を介して固定されている。
特に、前記ラック21の1の側面部分には、前記ピニオンBの表面に形成された凹凸歯が連係しつつ回動走行を自在とする凹凸歯が形成されており、天板3の下降に伴い、ピニオンBがラック21に沿って回動しつつ走行する構成である。
【0030】
この状態で、天板3が下降を開始すると、図5に示すように、天板3とともに昇降部材4が下降し、昇降部材4の横部材32に形成されたピニオンBが、収納部5のラック21に沿って回動走行することとなる。このとき、前記ピニオンBは、一方向(天板が下降する際にピニオンが走行する方向)に回動抵抗F1を有しており、すなわち、天板3の下降に伴うピニオンBの走行方向である右方向の回転方向に対して、左回転の回動抵抗F1を奏するものである。よって、天板3の下降が、ピニオンBの回動抵抗により緩やかとなり、天板3の下降速度が徐々に緩和しつつ、図6に示すように、天板3が収納される構成である。
【0031】
他方、天板3の収納状態から、天板3を引き出すときは、天板3の上昇に伴い、ピニオンBがラック21に沿って回動走行しつつ、昇降部材4とともに上昇する構成であるが、このときピニオンBの回転方向は、天板3の下降時におけるピニオンBの回転方向とは逆回転となり、ピニオンBの回動抵抗が生じることなく、スムースに天板3を上昇させることが可能である。
【0032】
このように、本発明のテーブル収納装置1は、すなわち、テーブル3の昇降部材4に設けられた少なくとも一方向に回動抵抗を有するピニオンBを、天板3の下降に伴い収納部5に設けられたラック21に沿って回動抵抗を付与するように走行させることで、テーブル3の下降速度を徐々に緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブル3を収納することが可能である。
【0033】
(実施例2)
さらに、本発明のテーブル収納装置1は、天板3の下降時における、天板3の下降速度を緩和するとともに、天板3の収納状態から再び天板3を持ち上げる際にも、軽い力で天板3を持ち上げ始めることが可能である。
この場合の一例としては、図7に示すように、前記昇降部材4の横部材32に、ピニオンBが横部材32に沿って移動自在に形成し、当該ピニオンBをバネ等の付勢部材Aにより一方向(図中、左方向)へと付勢させる構成が挙げられる。
【0034】
すなわち、横部材32のスライドレール32に連係され、当該横部材32に沿って移動自在な2のガイドローラ35を形成し、これら2のガイドローラ35を1の走行板36の裏面に軸支し、他方、走行板36の表面に前記ピニオンBを軸支する。さらには、走行板36の一端と、前記縦部材31とを、収縮力を有するバネAにより連結する。
【0035】
そして、図8に示すように、収納部5に斜めに傾斜するラック21を設けるとともに、ラック21の外方にピニオンBの凹凸歯を連係させることにより、図9に示すように、天板3の下降に伴い、ピニオンBがラック21に沿って走行しつつ、ピニオンBの回動抵抗により、天板3の下降速度を緩和することが可能である。特に、天板3の収納状態から天板3を引き出すときに、図10に示すように、ピニオンBが斜めのラック21を押圧しており、斜めのラック21に対してピニオンBが横方向の押圧力を付勢しているため、昇降部材4に上方向の補助力が生じている。よって、天板3を持ち上げる際に、天板3の自重を上向きの補助力が相殺するため、天板3の見かけ上の自重が軽くなり、軽い力で天板3を引き出すことが可能である。
【0036】
このように、テーブル3の昇降部材4に設けられた少なくとも一方向に回動抵抗を有するピニオンBを、天板3の下降に伴い収納部5に設けられたラック21に沿って走行しつつ回動抵抗を付与するように構成し、かつ、ピニオンBを横部材32の方向に付勢力をもって形成することにより、斜めのラック21を横方向に押圧することにより生じる上方向の補助力と、ピニオンBの回動抵抗とが合成され、テーブル3の下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブル3を収納することが可能である。さらには、天板3の持ち上げ時に、斜めのラック21に対するピニオンBの横方向への付勢力により生じる上方向の補助力により、軽い力で天板3を持ち上げることが可能である。
【0037】
(実施例3)
また、本発明のテーブル収納装置1は、特に、天板3が重いときに、天板3の下降速度を安全かつ確実に緩和しつつ、天板3の引き出し時にも、重い天板3を軽い力で持ち上げることが可能な大きな補助力を付与することが可能な構成であってもよい。
【0038】
この場合の一例としては、図11に示すように、昇降部材4の横部材32に、左右一対のピニオンBを左右方向に移動自在に形成するとともに、左右のピニオンBをそれぞれ軸支する走行板36を、収縮力を有するバネ等の付勢部材Aで連結する構成が挙げられる。
【0039】
例えば、図12に示すように、収納部5に斜め方向に傾斜したラック21を略ハの字状に配置し、左右のラック21を挟み込むように、左右のピニオンBをそれぞれ連係させることにより、図13に示すように、天板3の下降に伴い、左右のピニオンBがそれぞれ連係するラック21に回動抵抗をもって回動しつつ、天板3の下降速度を緩和するとともに、さらには、左右のピニオンBを連結する付勢部材Aが、左右のピニオンを互いに近接する方向に付勢力を奏するため、ピニオンBが斜めのラック21を水平方向に押圧して、上向きの補助力を生じることとなる。よって、ピニオンBの回動抵抗と、ラック21に対するピニオンBの押圧力により生じる上向きの補助力とがそれぞれ合成されることとなり、天板3の下降速度をより確実に緩和することが可能である。
【0040】
また、天板3の収納状態では、図14に示すように、ピニオンBの離間が最大であり、ピニオンB間を連結するバネ力が最大である。よって、天板3に働く上方向への補助力が最大の状態であり、天板3を持ち上げる際に上向きの補助力が作用しているため、天板3を軽い力で持ち上げることが可能である。
【0041】
すなわち、図15に示すように、左右のピニオンBがバネ等の付勢部材Aによる付勢力F2により、ラック21の傾斜面を水平方向に押圧するため、上方向の補助力F3が生じることとなる。この補助力F3は、バネAの伸びに比例して増大するため、天板3の下降に伴い、上向きの補助力F3が漸次増大することとなる。よって、天板3の下降に伴い、ラック21に対するピニオンBの押圧力が増すとともに、上方向への補助力F3が増大すため、天板3の下降速度を徐々に緩和することが可能であり、他方、天板3の持ち上げ時には、天板を軽い力で持ち上げることが可能である。
【0042】
このように、昇降部材4の横部材32に、付勢力をもって互いに近接するように設けられた少なくとも2のピニオンBを、収納部5に設けられた略ハの字状のラック21に対して、前記ピニオンBの付勢力が前記テーブル3の下降に伴い漸次増大するように連係させることにより、ピニオンBの回動抵抗のみならず、テーブル3の下降に伴いピニオンBがラック21を押圧することによる上向きの補助力F3が生じ、テーブル3の下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブル3を収納することが可能である。さらには、テーブル3の収納状態から引き出す際にも、テーブル3に上向きの補助力F3が生じているため、軽い力で天板3を持ち上げることが可能である。
【0043】
また、上記例以外にも、例えば、横部材32の左右にそれぞれ移動自在なピニオンBを配置するとともに、各ピニオンBと縦部材31とを延伸力を有するダンパAで連結することで、左右のピニオンBが互いに近接する方向に付勢力を奏する構成であってもよく、ハの字状のラック21のそれぞれ外方に、左右のピニオンBを連係させることで、ラック21に対してピニオンBが押圧力を付与し、テーブル3に上向きの補助力が生じる効果がある。
【0044】
(実施例4)
上記例では、バネAの両端にそれぞれピニオンBを形成し、ハの字状のラック21に連係させる例を示したが、これに限らず、逆ハの字状のラック21のそれぞれ内方に、左右のピニオンBを連係させる構成であってもよく、上記同様、天板3の下降に伴い、左右のピニオンBが近接するとともにバネAが伸びて、逆ハの字状のラック21に対するピニオンBの押圧力によりテーブル3の下降速度を確実に緩和することが可能である。
【0045】
例えば、図16に示すように、横部材32に沿って移動する左右のピニオンBをそれぞれ設け、ピニオンを軸支する走行板の一端と、縦部材とを、収縮力を有するバネA(付勢部材A)により連結する。これにより、左右のピニオンBがそれぞれ横部材31の方向(横方向)、かつ左右のピニオンが離間する方向に付勢力を生じている。
【0046】
そして、左右のピニオンBを、図17に示すように、収納部5の逆ハの字状に設けられたラック21の内側面にそれぞれ連係させることで、上記同様の効果を奏することが可能である。
【0047】
すなわち、天板3の下降に伴い、図18に示すように、左右のピニオンBが、ラック21を内方から外方へと押圧し、かつ、ラック21が、ピニオンBの下降に伴いバネAが伸びる方向へと傾斜しているため、天板3の下降に伴い、ピニオンBがラック21に沿って横部材32の中央方へと移動するとともに、縦部材31と走行板36との間に連結されるバネAがそれぞれ伸びるため、ピニオンBのラック21に対する押圧力が漸次増大することとなる。よって、上記例と同様に天板3の自重を打ち消す上方向に補助力が生じることとなるため、天板3の下降速度が緩和される効果がある。
【0048】
また、天板3の収納状態から天板3を引き出すときにも、図19に示すように、ピニオンBが斜めのラック21を押圧しており、斜めのラック21に対してピニオンBが横方向の押圧力を付勢するため、昇降部材4に上方向の補助力が生じている。よって、天板3を持ち上げる際に、天板3の自重を付勢部材Aによる上向きの補助力が相殺するため、天板3の見かけ上の自重が軽くなり、軽い力で天板3を引き出すことが可能である。
【0049】
このように、昇降部材4の横部材32に、付勢力をもって互いに離間するように設けられた少なくとも2のピニオンBを、収納部5に設けられた逆ハの字状のラック21に対して、前記ピニオンBの付勢力が前記テーブル3の下降に伴い漸次増大するように連係させることにより、ピニオンBの回動抵抗のみならず、テーブル3の下降に伴いピニオンBがラック21を押圧することによる上向きの補助力が生じ、テーブル3の下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブル3を収納することが可能である。さらには、テーブル3の収納状態から引き出す際にも、テーブル3に上向きの補助力が生じているため、軽い力で天板3を持ち上げることが可能である。
【0050】
また、上記例のみならず、例えば、延伸力を有するダンパAの両端にピニオンBをそれぞれ連結して、左右のピニオンBが互いに離間する方向に付勢力を奏する構成であってもよく、逆ハの字状のラック21のそれぞれ内方に、左右のピニオンBを連係させることで、ラック21に対してピニオンBが押圧力を付与し、テーブル3に上向きの補助力が生じる効果がある。
【0051】
以上のように、本発明のテーブル収納装置1は、テーブル3の昇降部材4に設けられた少なくとも一方向に回動抵抗を有するピニオンBを、天板3の下降に伴い収納部5に設けられたラック21に沿って回動抵抗を付与するように走行させることで、テーブル3の下降速度を徐々に緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブル3を収納することが可能である。
【0052】
さらには、回動抵抗を有するピニオンBを、天板3の下降に伴い収納部5に設けられたラック21に沿って走行しつつ回動抵抗を付与するように構成し、かつ、ピニオンBを横部材32の方向に付勢力をもって移動自在に形成することにより、斜めのラック21を横方向に押圧することにより生じる上方向の補助力と、ピニオンBの回動抵抗とが合成され、テーブル3の下降速度を大きく緩和することが可能である。よって、天板収納時の振動や騒音を抑え、安全かつスムースにテーブル3を収納することが可能である。さらには、天板3の持ち上げ時に、斜めのラック21に対するピニオンBの横方向への付勢力により生じる上方向の補助力により、軽い力で天板3を持ち上げることが可能である。
【0053】
何れにせよ、本発明のテーブル収納装置1は、ピニオンBがラック21を走行するとともに、ピニオンBの回動抵抗により天板3の下降速度を緩和する構成であればよい。また、上記例では、ラック21が直線の場合を示したが、これに限らず、ラック21に曲線部を設けてもよく、ピニオンBがラック21を押圧する力を、天板3の下降高さによって調整することが可能である。何れにせよ、ピニオンBがラック21に回動抵抗を付与する構成、かつ、上方向に補助力を生じさせる構成であれば、ピニオンBやラック21の位置および形状は限定されるものではない。特に、ガイドレール21の傾斜角度を変更させることにより、ピニオンBの下降変移に対して、付勢部材の付勢力が調整可能であり、昇降機構4の減速速度を調整することが可能である。
【0054】
上記例では、前記ガイドレール21が長尺状の部材を用いているが、これに限らず、収納部5の内壁に、溝条や凸条などを直接設けても良い。さらに、上記例では、収納部5の前方パネルの裏面に前記ガイドレール等を設けているが、これに限らず、収納部5の裏面パネルにこれらを設ける構成であってもよい。
【0055】
また、本発明のテーブル収納装置1は上述した椅子2に限らず、壁面やパネルに形成してもよく、例えば、最前列の席の場合、図20に示すように、最前席の正面にパネル6を形成し、該パネル6に本発明のテーブル収納装置1を取付ける構成であってもよい。さらには、椅子2の肘掛けに設けることも可能であり、通常の使用形態において形成し得るいかなる方法をも採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のテーブル収納装置の使用状態の一例を示す略正面斜視図である。
【図2】本発明のテーブル収納装置の使用状態の一例を示す略背面斜視図である。
【図3】テーブルと昇降機構とを示す説明図である。
【図4】テーブルの収納開始時を示す説明図である。
【図5】テーブルの収納時を示す説明図である。
【図6】テーブルの収納状態を示す説明図である。
【図7】テーブルと昇降機構とを示す説明図である。
【図8】テーブルの収納開始時を示す説明図である。
【図9】テーブルの収納時を示す説明図である。
【図10】テーブルの収納状態を示す説明図である。
【図11】テーブルと昇降機構とを示す説明図である。
【図12】テーブルの収納開始時を示す説明図である。
【図13】テーブルの収納時を示す説明図である。
【図14】テーブルの収納状態を示す説明図である。
【図15】テーブルの収納時を示す説明図である。
【図16】テーブルと昇降機構とを示す説明図である。
【図17】テーブルの収納開始時を示す説明図である。
【図18】テーブルの収納時を示す説明図である。
【図19】テーブルの収納状態を示す説明図である。
【図20】本発明のテーブル収納装置の使用状態の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 テーブル収納装置
2 椅子
3 天板(テーブル)
4 昇降機構
5 収納部
6 パネル
A 付勢部材(バネ、ダンパ)
B ピニオン
21 ラック
22 スライドレール
31 縦部材
32 横部材(スライドレール)
34 昇降ローラ
35 ガイドローラ
36 走行板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平な使用状態から略垂直に起立されて上面開口した収納部に収納されるテーブル収納装置において、前記テーブルが備える昇降機構を、前記収納部内の左右両側に対向して形成される縦方向のスライドレールに案内されて昇降する縦部材を連結する横部材と、前記横部材に設けられたピニオンとを有するものとするとともに、前記ピニオンに噛み合って案内することで、前記昇降機構の昇降を減速させるラックを収納部内に設けたことを特徴とする、テーブル収納装置。
【請求項2】
前記ピニオンが、一方方向の回転を他方方向よりブレーキ抵抗を受けて減速回転させることを特徴とする、請求項1記載のテーブル収納装置。
【請求項3】
前記ピニオンを横部材に沿って何れか一方に移動させるのに伴い、横部材に設けた付勢部材の付勢力を漸次増大させるようにするとともに、前記ラックが、前記付勢力を増大させる方向に移動しながら下降する前記ピニオンを案内するように傾斜させて設けられている請求項1又は2に記載のテーブル収納装置。
【請求項4】
前記ピニオンを複数有するものとして、横部材に沿って互いに近接方向に移動させるのに伴い、横部材に設けた付勢部材の付勢力を漸次増大させるようにするとともに、前記ラックが、ハの字状に傾斜させて設けられている請求項1乃至3に記載のテーブル収納装置。
【請求項5】
前記ピニオンを複数有するものとして、横部材に沿って互いに離間方向に移動させるのに伴い、横部材に設けた付勢部材の付勢力を漸次増大させるようにするとともに、前記ラックが、逆ハの字状に傾斜させて設けられている請求項1乃至3に記載のテーブル収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−24225(P2012−24225A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164605(P2010−164605)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】