説明

テープ巻付方法、該方法を用いた電線張替工法及びテープ巻付装置

【課題】作業コストを低減すると共に、腐食物等の落下、飛散を防止し、加えて作業性の低下を防止することができるテープ巻付装置を提供する。
【解決手段】テープ巻付装置1は、巻付処理が施される電線100に着脱可能に装着され、電線100の軸Aを中心として回転しながら電線100の軸方向に移動する装置本体10と、装置本体10に固定され、粘着テープ20を前記電線の軸に対して傾斜して支持するテープ支持部材30と、テープ支持部材30に回転可能に取り付けられ、電線100に装置本体10の移動に応じて電線100に粘着テープ20を供給する粘着テープ供給部材40と、テープ支持部材30を装置本体10に固定すると共に、粘着テープ20の電線100に対する傾斜角度を調整する角度調整機構50と、装置本体10を電線100に支持する支持構造を有し、且つ粘着テープ20の巻付ピッチを変更する巻付ピッチ変更機構60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ巻付方法、該方法を用いた電線張替工法及びテープ巻付装置に関し、特に、架設されている旧架空送電線を撤去して新架空送電線に張り替える際に使用されるテープ巻付方法、該方法を用いた電線張替工法及びテープ巻付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔や電柱間に架設されている架空送電線では、経年変化や地域環境の影響により、電線に腐食が生じる。
【0003】
経年劣化した電線の張替え工事を行う方法としては、一般に、既設の古い電線に新しい電線を接続して、電線を引き換える方法が採用されている。このとき、既設電線の腐食物等が空中から電線下やその周辺に落下するという問題があった。
【0004】
この問題を解消するべく、電線から錆が落下するのを防止する方法や、錆が発生した電線の補強方法として、電線に上下方向からカバー材を縦添えして電線をラッピングする方法がある。
【0005】
図7は、従来の電線のラッピング方法を説明するための図であり、(a)は架渉線ラッピング装置の構成を示す側面図、(b)はカバー材で被覆された架渉線の構成を示す概略斜視図である。
【0006】
図7(a)に示すように、架渉線ラッピング装置の装置本体601は、リール602と、第1ローラ603及び第2ローラ604,605からなるローラユニット606と、連結部材607とで構成されている。リール602、第1ローラ603及び第2ローラ604,605は、それぞれ架渉線608を挟んで対向する位置に一対ずつ設けられる。リール602は上側リール602aと下側リール602bからなり、第1ローラ603は上側第1ローラ603aと下側第1ローラ603bからなり、第2ローラ604,605は夫々上側第2ローラ604a,605aと下側第2ローラ604b,605bからなる。第1ローラ603及び第2ローラ604,605は、架渉線608に当接しながら回転し、装置本体601が架渉線608に沿って移動する。このとき、上下のリール602a,602bから繰り出される粘着テープからなる上下のカバー材612a,612bは、上下の第1ローラ603a,603b及び第2ローラ604a,604b,605a,605bにより、架渉線608を挟持しながら互いに合わせ面で貼着(接着)し、架渉線608を密封して覆う。これによれば、柱に既設された架渉線608の張替えの際に、事前に架渉線608をカバー材612a,612bで覆うことができ、架渉線608に発生している錆の落下を防止する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−3236969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のラッピング方法では、上下2方向からカバー材を電線に押し付けるため、電線が平たく変形し、電線内部から腐食物等が押し出され易く、腐食物等の落下を防止することができないという問題がある。また、カバー材が互いに合わせ面で貼着されるため、カバー材が少なくとも電線の半周以上の幅を有していなければならず、作業コストが増大するという問題がある。さらに、上記方法によりラッピングされた電線は、ラッピング前の丸電線と異なり、左右両側に合わせ面を有しているため、ラッピングされた電線をドラム等に巻取って回収する際に巻取りの作業性が低下するという問題がある。また、ドラムへの巻取り直前にカバー材を電線から分離して回収する方式の場合、カバー材を電線から剥がす際に電線内部の腐食物等が周囲に飛散し、作業者に悪影響を与える可能性がある。
【0009】
本発明の目的は、作業コストを低減すると共に、腐食物等の落下、飛散を防止し、加えて作業性の低下を防止することができるテープ巻付方法、該方法を用いた電線張替工法及びテープ巻付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るテープ巻付方法は、鉄塔間に架設された電線に粘着テープを巻き付けるテープ巻付方法であって、装置本体に設けられた粘着テープを前記電線の軸に対して傾斜して支持し、前記装置本体を前記電線に支持すると共に、前記粘着テープの巻付ピッチを変更し、前記装置本体を前記電線の軸を中心として回転させながら前記電線の軸方向に移動させて、前記装置本体の移動に応じて前記電線表面に前記粘着テープを巻付供給することを特徴とする。
【0011】
また、粘着テープは、前記電線の軸方向に関して隙間無く且つ重なり無く巻き付けられるか、又は前記電線の軸方向に関して隙間無く且つ一部が重なって巻き付けられる。
【0012】
本発明に係る電線張替工法は、上記テープ巻付方法を用いて、前記電線表面に前記粘着テープを巻付けた旧線を撤去して新線に張り替えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るテープ巻付装置は、上記テープ巻付方法又は上記電線張替工法を実行するために用いられるテープ巻付装置であって、前記電線に着脱可能に装着され、前記電線の軸を中心として回転しながら前記電線の軸方向に移動する前記装置本体と、前記装置本体に固定され、粘着テープを前記電線の軸に対して傾斜して支持するテープ支持部材と、前記テープ支持部材に取り付けられ、前記装置本体の移動に応じて前記電線に粘着テープを供給する粘着テープ供給部材と、前記装置本体を前記電線に支持する支持構造を有し、且つ前記粘着テープの巻付ピッチを変更する巻付ピッチ変更機構とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、前記粘着テープ供給部材は、前記粘着テープが取り付けられる軸部材と、前記軸部材に同心で取り付けられ、前記粘着テープを介装するべく互いに対向して設けられた一対のスペーサとを有する。
【0015】
また、前記粘着テープは、ブチルゴムを主成分とする自己融着層を有する自己融着性テープである。
【0016】
また、巻付ピッチ変更機構は、前記電線の外周面を半径方向に押圧する少なくとも2つの挟持部材を含む。
【0017】
また、前記挟持部材は、前記電線の外周面と当接するローラ部材と、前記ローラ部材を前記電線と近接する方向に付勢する付勢部材と、前記電線の軸に対する前記ローラ部材の軸角度を変更する角度変更部材とを有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、粘着テープが電線の軸に対して傾斜した状態で支持され、粘着テープの巻付ピッチが変更される。そして、装置本体が電線の軸を中心として回転しながら電線の軸方向に移動し、装置本体の移動に応じて電線表面に粘着テープが巻付供給される。これによれば、電線を変形させることなく、粘着テープを電線に隙間無く巻付けることが可能となり、電線の張替え時に腐食物等の落下、飛散を防止することができる。また、粘着テープが電線に螺旋状に巻付けられるため、粘着テープを上下から貼着する方法と比較してテープの合わせ面を必要とせず、粘着テープの表面積を無駄なく使用することができ、作業コストを低減することができる。さらに、粘着テープが巻付けられた電線は巻付け前の丸電線と同様の形状となるため、粘着テープ巻付け後の電線をドラム等に巻取って回収する際に、巻取りの作業性が低下するのを防止することができる。したがって、作業コストを低減すると共に、腐食物等の飛散、落下を防止し、加えて作業性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るテープ巻付装置の模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
【図2】テープが装着されていない状態におけるテープ巻付装置の構成を概略的に示す図であり、(a)は背面図、(b)は側面図である。
【図3】図2のテープ巻付装置の構成を概略的に示す正面図である。
【図4】図1における角度調整機構の構成を示す平面図である。
【図5】図1のテープ巻付装置により粘着テープが巻付けられた電線を示す図であり、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【図6】図1のテープ巻付装置を用いて、鉄塔間に架設された電線に粘着テープを巻付けるテープ巻付方法を説明するための図である。
【図7】従来の電線のラッピング方法を説明するための図であり、(a)は架渉線ラッピング装置の構成を示す側面図、(b)はカバー材で被覆された架渉線の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態に係るテープ巻付装置方法で使用されるテープ巻付装置の模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。図2は、テープが装着されていない状態におけるテープ巻付装置の構成を概略的に示す図であり、(a)は背面図、(b)は側面図を示す。図3は、図2のテープ巻付装置の構成を概略的に示す正面図である。
【0022】
図1(a),(b)、図2(a),(b)及び図3に示すように、テープ巻付装置1は、巻付処理が施される電線100に着脱可能に装着され、電線100の軸Aを中心として回転しながら電線100の軸方向に移動する装置本体10と、装置本体10に固定され、粘着テープ20を前記電線の軸に対して傾斜して支持するテープ支持部材30と、テープ支持部材30に回転可能に取り付けられ、電線100に装置本体10の移動に応じて電線100に粘着テープ20を供給する粘着テープ供給部材40と、テープ支持部材30を装置本体10に固定すると共に、粘着テープ20の電線100の軸Aに対する傾斜角度を調整する角度調整機構50と、装置本体10を電線100に支持する支持構造を有し、且つ粘着テープ20の巻付ピッチを変更する巻付ピッチ変更機構60とを備える。テープ巻付装置1は、回転しながら電線100の軸Aに沿って図中の矢印方向に移動することにより、電線100に粘着テープを螺旋状に巻き付ける。
【0023】
装置本体10は、電線100の軸Aと略平行に配された複数のスペーサロッド11と、各スペーサロッドと略直角に配され、複数のスペーサロッド11の端部にナット12により固定される略矩形の板状体13とを有する(図2)。板状体13の中央には直径60mmの丸孔14が設けられており、丸孔14に処理対象となる電線100が挿通される。また、板状体13は、丸孔14に電線100を挿通する際に、軸部材15を支点として上部及び下部に二分割されるように構成されている。
【0024】
粘着テープ20は、テープ本体の一方の面に自己融着層を有する自己融着性テープであり、例えばブチルゴムを主成分とする材料からなる。尚、自己融着層は、ブチルゴム以外を主成分とする自己融着材料からなるものであってもよい。
【0025】
テープ支持部材30は、角度調整機構50に取り付けられるL字型のブラケット31と、ブラケット31を角度調整機構50に固定する固定ネジ32a,32bとを有する。ブラケット31は、角度調整機構50における後述するベース部材上で、固定ネジ32aを中心として回動可能に固定される。ブラケット31には、粘着テープ20が取り付けられる後述する軸部材が、電線100の軸Aに対して傾斜するように固定されている。
【0026】
粘着テープ供給部材40は、ブラケット31から略垂直に延出し且つその一端がブラケット31に固着される軸部材41と、軸部材41に同心で取り付けられ、粘着テープ20を軸部材41に介装するべく互いに対向して設けられたスペーサ42,43と、軸部材41のスペーサ43側端部に着脱可能に取り付けられた鍔部44と、鍔部44を装置本体10に連結するチェーン45とを有する。軸部材41には巻回された粘着テープ20が略同心で取り付けられる。スペーサ42は、軸部材41の軸方向且つスペーサ43に近接する方向に移動可能に取り付けられている。また、スペーサ43は軸部材41に着脱可能に取り付けられており、粘着テープ20を軸部材41に装着する際に軸部材41から脱着される。
【0027】
図4は、図1における角度調整機構50の構成を示す平面図である。
【0028】
図4において、角度調整機構50は、スペーサロッド11及び板状体13に固定される板状のベース部材51を有している。ベース部材51には、固定ネジ32aを中心点とする円弧状のスリット孔52が形成されており、固定ネジ32bが嵌挿されている。テープ支持部材30が固定ネジ32aを中心として回動し、且つ固定ネジ32bがスリット孔52内で移動することにより、テープ支持部材30に固着された軸部材41の電線100に対する傾斜角度が調整される。これにより、粘着テープ20が電線100にたるみなく巻き付けられる。また、粘着テープ20の巻付ピッチを変更することにより、同一のテープを用いて、異なる外径の電線に粘着テープを巻付けることができる。
【0029】
巻付ピッチ変更機構60は、板状体13の外面に固定されており、電線100の外周面を半径方向内側に押圧する3つの挟持部材61で構成されている(図2)。挟持部材61は、電線100の外周面に圧接されるローラ部材62と、ローラ部材62を電線100に近接する方向に付勢する付勢部材63と、該付勢部材を板状体13に固定する固定ボルト64と、電線100の軸Aに対するローラ部材62の軸角度を変更して固定するローラ角固定ボルト(角度変更部材)65とを有する。
【0030】
ローラ部材62は、粘着テープ20が所定の巻付ピッチとなるように、電線100の軸Aに対して傾斜して固定される。ローラ部材62の傾斜角度を変更することにより、装置本体10が1回転当たりに電線100の軸方向に移動する移動量が変更される。具体的には、粘着テープ20は、電線100の軸方向に関して隙間無く且つ重なり無く巻き付けられるか、又は電線100の軸方向に関して隙間無く且つ一部が重なって巻き付けられる。これにより、粘着テープ20を電線100の全長に亘って隙間無く巻き付けることができる。また、同一のテープを用いて異なる外径の電線に粘着テープを巻付けることができる。
【0031】
板状体の13の外面には、電線100を電気的に接地する接地ローラ66と、接地ローラ66を装置本体10に固定すると共に、接地ローラ66を電線100に付勢する板ばね67とを有している。
【0032】
巻付ピッチ変更機構60は、装置本体10の移動方向に関して前側及び後側に2つ設けられており、2つの巻付ピッチ変更機構60により、装置本体10が電線100に安定的に支持される。
【0033】
また、装置本体10は、スペーサ42を粘着テープ20に押圧して該粘着テープの回転を制動するブレーキ機構70を有している。粘着テープ20の回転が制動されると、粘着テープの張力によって装置本体10の回転が制動される。ブレーキ機構70は、粘着テープ20の制動量を変更することにより該粘着テープの回転量を調整する調整ネジ71を有しており、調整ネジ71を回動することにより、粘着テープ20のブレーキ力が所望の値に調整される。
【0034】
また、装置本体10には、電線100の軸Aを中心として粘着テープ供給部材40の略点対称の位置にバランサ80が配置されている。バランサ80により装置本体10の重心位置が電線100の軸A上に位置し、これにより装置本体10が安定的に回転する。
【0035】
図5は、図1のテープ巻付装置1により粘着テープ20が巻付けられた電線100を示す図であり、(a)は断面図、(b)は側面図である。
【0036】
図5(a)及び(b)に示すように、粘着テープ20は電線100の外周面(電線表面)101上に螺旋状に隙間無く巻付けられている。装置本体10は、粘着テープ20の張力がほぼ一定に保たれた状態で電線100の周りを回転するため、粘着テープ20と電線100の外周面101の間に隙間を生じることがない。また、巻付ピッチ変更機構60により所定の巻付ピッチとなるようにローラ部材62の角度が変更されるため、電線100の軸方向に関して粘着テープ間に隙間を生じることがない。さらに、角度調整機構50により粘着テープ20の傾斜角度が調整されるため、粘着テープ20のたるみ、しわを生じることがない。これにより、電線100の外周面やその内部に腐食物が形成されている場合に、巻付けられた粘着テープの内側に腐食物を内包させることができる。また、巻付処理後の電線の断面形状は、処理前と同様にほぼ円形となるため、巻付処理後の電線をドラム等に巻取って回収する際に巻取りの作業性が向上する。
【0037】
次に、上記のように構成されるテープ巻付装置1を用いて実行されるテープ巻付方法を説明する。
【0038】
先ず、粘着テープ供給部材40の軸部材41から鍔部44及びスペーサ43を取り外し、軸部材41に粘着テープ20を取り付け、さらにスペーサ43及び鍔部44を取り付ける。次に、電線501(図6参照)の軸Aに対するローラ部材62の軸角度を変更して、粘着テープ20が電線501に螺旋状に隙間無く巻付けられるように巻付ピッチを変更する。さらに、角度調整機構50により粘着テープ20の電線501に対する傾斜角度を調整する。またこのとき、調整ネジ71を回動して粘着テープ20の回転量を予め調整する。
【0039】
次に、鉄塔500間に架設された電線501に、作業者Bを乗せて走行移動可能な宙乗機502を設置し、さらに宙乗機502の前方にて電線501に装置本体10を装着する(図6)。このとき、粘着テープ20は、テープ支持部材30により、電線501の軸に対して傾斜して支持されている状態となる。
【0040】
そして、作業者Bは、宙乗機502に搭乗した状態にて装置本体10を電線501の軸方向に押し、装置本体10を電線501の軸を中心として回転させながら電線501の軸方向に移動させる。装置本体10の回転及び電線501の軸方向への移動により、粘着テープが電線501に巻付供給される。このとき、粘着テープはほぼ一定の張力を保った状態で電線501に隙間無く巻付けられる。これにより、電線501の腐食物は巻付けられた粘着テープの内側に内包され、腐食物の落下や飛散が防止される。
【0041】
その後、電線501からテープ巻付装置1及び宙乗機502を取り外し、さらに電線501を鉄塔500から降ろす。そして、粘着テープが巻付けられた電線501を不図示のドラム等に巻取って回収する。このとき、粘着テープが巻付けられた電線501の断面形状はほぼ円形であるため、ドラムへの巻取りの作業性が向上する。
【0042】
上述したように、本実施の形態によれば、粘着テープ20が電線100の軸Aに対して傾斜した状態でテープ支持部材30に支持され、また、電線100の軸Aに対するローラ部材62の軸角度が変更されることにより、粘着テープ20の巻付ピッチが変更される。そして、装置本体10が電線100の軸Aを中心として回転しながら電線100の軸方向に移動し、装置本体10の回転及び電線100の軸方向への移動により電線100の外表面101に粘着テープが巻付供給される。これによれば、電線100を変形させることなく、粘着テープを電線100に隙間無く巻付けることが可能となり、電線100の張替え時に腐食物等の落下、飛散を防止することができる。また、粘着テープが電線100に螺旋状に巻付けられるため、粘着テープを上下から貼着する方法と比較してテープの合わせ面を必要とせず、粘着テープの表面積を無駄なく使用することができ、作業コストを低減することができる。さらに、粘着テープが巻付けられた電線100は巻付け前の丸電線と同様の形状となるため、粘着テープ巻付け後の電線100をドラム等に巻取って回収する際に、巻取りの作業性が低下するのを防止することができる。したがって、作業コストを低減すると共に、腐食物等の飛散、落下を防止し、加えて作業性の低下を防止することができる。
【0043】
本実施の形態では、テープ支持部材30は略L字型のブラケット31で構成されるが、これに限るものではなく、他の形状を有する支持部材であってもよい。また、テープ支持部材30はスペーサロッド11に支持されるが、これに限るものではなく、板状体13に支持されてもよい。さらに、テープ支持部材30は、粘着テープ20を装置本体10に安定的に支持する構成であれば、如何なる構成を有していてもよい。
【0044】
また、本実施の形態において、粘着テープ供給部材40は、軸部材43に同心で取り付けられ、スペーサ42,43に介装されるボビンを有していてもよい。
【0045】
本実施の形態では、粘着テープ供給部材40は、軸部材41、スペーサ42,43、鍔部44及びチェーン45を有しているが、これに限るものではなく、巻回された粘着テープ20を着脱可能に軸支する構成であれば如何なる構成を有してもよい。また、粘着テープ供給部材40は、テープ支持部材30に取り付けられ、装置本体10の移動に応じて電線100に粘着テープを供給する構成であってもよい。
【0046】
また、本実施の形態では、巻付ピッチ変更機構60は、3つの挟持部材61で構成されるが、これに限るものではなく、電線100の外周面を半径方向に押圧する少なくとも2つの挟持部材を含んでいてもよい。
【0047】
本実施の形態では、粘着テープを電線100に隙間無く巻付けることにより、電線100の腐食物等の落下、飛散を防止するが、これに限るものではない。アスベスト等の有害物質を含有する電線に本テープ巻付方法を実行することにより、有害物質の落下、飛散を防止することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 テープ巻付装置
10 装置本体
20 粘着テープ
30 テープ支持部材
40 粘着テープ供給部材
50 角度調整機構
60 巻付ピッチ変更機構
100 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔間に架設された電線に粘着テープを巻き付けるテープ巻付方法であって、
装置本体に設けられた粘着テープを前記電線の軸に対して傾斜して支持し、
前記装置本体を前記電線に支持すると共に、前記粘着テープの巻付ピッチを変更し、
前記装置本体を前記電線の軸を中心として回転させながら前記電線の軸方向に移動させて、前記装置本体の移動に応じて前記電線表面に前記粘着テープを巻付供給することを特徴とするテープ巻付方法。
【請求項2】
前記粘着テープは、前記電線の軸方向に関して隙間無く且つ重なり無く巻き付けられるか、又は前記電線の軸方向に関して隙間無く且つ一部が重なって巻き付けられることを特徴とする請求項1記載のテープ巻付方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のテープ巻付方法を用いて、前記電線表面に前記粘着テープを巻付けた旧線を撤去して新線に張り替えることを特徴とする電線張替工法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のテープ巻付方法、又は請求項3記載の電線張替工法を実行するために用いられるテープ巻付装置であって、
前記電線に着脱可能に装着され、前記電線の軸を中心として回転しながら前記電線の軸方向に移動する前記装置本体と、
前記装置本体に固定され、粘着テープを前記電線の軸に対して傾斜して支持するテープ支持部材と、
前記テープ支持部材に取り付けられ、前記装置本体の移動に応じて前記電線に粘着テープを供給する粘着テープ供給部材と、
前記装置本体を前記電線に支持する支持構造を有し、且つ前記粘着テープの巻付ピッチを変更する巻付ピッチ変更機構とを備えることを特徴とするテープ巻付装置。
【請求項5】
前記粘着テープ供給部材は、前記粘着テープが取り付けられる軸部材と、前記軸部材に同心で取り付けられ、前記粘着テープを介装するべく互いに対向して設けられた一対のスペーサとを有することを特徴とする請求項4記載のテープ巻付装置。
【請求項6】
前記粘着テープは、ブチルゴムを主成分とする自己融着層を有する自己融着性テープであることを特徴とする請求項4又は5記載のテープ巻付装置。
【請求項7】
前記巻付ピッチ変更機構は、前記電線の外周面を半径方向に押圧する少なくとも2つの挟持部材を含むことを特徴とする請求項4記載のテープ巻付装置。
【請求項8】
前記挟持部材は、前記電線の外周面と当接するローラ部材と、前記ローラ部材を前記電線と近接する方向に付勢する付勢部材と、前記電線の軸に対する前記ローラ部材の軸角度を変更する角度変更部材とを有することを特徴とする請求項7記載のテープ巻付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−188688(P2011−188688A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53441(P2010−53441)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)