説明

テープ心線製造装置

【課題】 少量多品種のテープ心線の製造にも対応し易く、かつ幅広で均等な被覆にも容易に対応できるテープ心線製造装置を提供する。
【解決手段】 各光ファイバー心線2に被覆材料7を塗布する塗布装置が、塗布治具上に並列に配置された前記各光ファイバー心線2に対してその長手方向で相対移動する塗布ヘッド32を有し、該塗布ヘッド32が、その塗布部39近傍に前記テープ状をなす各光ファイバー心線2の厚さ方向での位置合わせ面37aを有してこれを前記各光ファイバー心線2に押し当てると共に、前記長手方向で傾動可能に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数本の単心線をテープ化してなるテープ心線の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の単心線(光ファイバー心線等)を並列に配置すると共に一体的に被覆してなるテープ心線が知られている。このようなテープ心線の製造装置においては、まず各単心線をドラムから巻き出しつつ連続的に搬送し、これら各単心線を並列に配置すると共にその全周(両面及び両側)に被覆を施すことで、長尺のテープ心線の製造を可能としている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0003】
一方、上記並列に配置された各単心線の片面のみに被覆を施すようにしたテープ心線もある。これは、上述のような両面被覆のテープ心線に対し、可撓性及び引き裂き加工性の面で優れており、特に機械特性面での要求が高い光ファイバー心線を用いたテープ心線に好適である。このような片面被覆のテープ心線の製造装置においては、各単心線のみを搬送しながら被覆を施すのではなく、並列に配置された各単心線を塗布治具上に仮固定し、この各単心線に対して被覆材料塗布用のノズルを相対移動させることで被覆を行うようにしている(例えば、特許文献3参照。)。これは、短尺のテープ心線の製造や所定の部品から引き出された単心線への被覆等にも容易に対応可能であり、少量多品種のテープ心線の製造にも適したものである。
【特許文献1】特開平5−119243号公報
【特許文献2】特開平6−123826号公報
【特許文献3】特開2004−163634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記後者の装置においては、塗布治具上の各単心線に対してノズルが相対移動する際に、各単心線に対するノズルの相対位置にズレが生じることがある。これは、上記相対移動時におけるノズルや塗布治具の振れ、あるいは塗布治具の歪み等による平滑性の乱れに起因するもので、被覆材料の塗布厚がばらつく等、各単心線に対する被覆不良を生じさせることがある。
【0005】
また、近年ではより多数の単心線のテープ心線化が要望されているが、これに伴いテープ心線幅が広がると、上記後者の装置においてはノズルの大型化等が必要となり、ノズルからの被覆材料の均等な吐出を困難にして上記同様に単心線に対する被覆不良を生じさせることがある。
そこでこの発明は、少量多品種のテープ心線の製造にも対応し易く、かつ幅広で均等な被覆にも容易に対応できるテープ心線製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、複数本の単心線をテープ状とするべく並列に配置すると共にこれらを一体的に被覆するテープ心線製造装置において、前記各単心線に被覆材料を塗布する塗布装置を備え、該塗布装置が、塗布治具上に並列に配置された前記各単心線に対してその長手方向で相対移動する塗布ヘッドを有し、該塗布ヘッドが、その塗布部近傍に前記テープ状をなす各単心線の厚さ方向での位置合わせ面を有してこれを前記各単心線に押し当てると共に、前記長手方向で傾動可能に設けられることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、各単心線を塗布治具上に並列に配置してこれらに被覆材料の塗布を行うことで、短尺のテープ心線の製造や所定の部品から引き出された単心線への被覆等にも容易に対応することが可能となる。
また、塗布治具上の各単心線に対して塗布ヘッドが相対移動する際に、上記相対移動時における塗布ヘッド又は塗布治具の振れ、あるいは塗布治具の歪み等による平滑性の乱れがあったとしても、塗布ヘッドの前記厚さ方向での位置決めが塗布部近傍にて各単心線に対して直接行われると共に、塗布治具の前記長手方向での歪みも塗布ヘッドが前記長手方向で傾動することで吸収されるため、高精度な塗布治具を用いなくとも各単心線に対して均等な塗布を行うことができる。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記塗布部には、前記位置合わせ面を前記各単心線に押し当てた状態で該各単心線との間に塗布厚分の間隙を形成する塗布層形成部と、前記被覆材料を吐出する吐出部と、吐出された前記被覆材料を前記吐出部と前記間隙との間にて前記テープ状をなす各単心線の幅方向に広げる塗布層拡幅部とが設けられる。
【0009】
この構成によれば、前記被覆材料は、吐出部から吐出された後に、塗布層拡幅部により所定幅に広げられ、かつ塗布層形成部により所定厚にならされることで、前記所定幅かつ所定厚の塗布層を形成する。すなわち、吐出部を大型化する必要がなく、したがって吐出部からの被覆材料の吐出量の調整を困難にすることもなく、その吐出量と塗布ヘッドの相対移動速度とのバランスにより均等な塗布厚のまま比較的容易に塗布幅を広げることができる。
【0010】
請求項3に記載した発明は、前記塗布部が、前記塗布ヘッドの前記相対移動方向両側に設けられることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、所定部品の両側から単心線が引き出されるようなモジュール部品において、その両単心線に被覆を施すような場合にも、まず一方の単心線に塗布ヘッドを一方向に相対移動させつつその一方の塗布部を用いて被覆を施した後、他方の単心線には塗布ヘッドを他方向に相対移動させつつ他方の塗布部を用いて被覆を施すことが可能となるため、該両単心線に対して前記所定部品の直近位置から被覆を施すことができ、様々なモジュール部品への適用性を向上させることが可能となる。
【0012】
請求項4に記載した発明は、前記各単心線を工程シート上に整列固定する配線装置を備え、該配線装置が、複数のドラムから前記各単心線を巻き出す心線巻き出し手段と、前記各単心線に所定の張力を与えつつこれらを集合させる心線集合手段と、前記各単心線を貼り付ける前記工程シートを巻き出すシート巻き出し手段と、前記各単心線に対して相対移動しながらこれらを整列させつつ前記工程シート上に貼り付ける整列固定手段と、前記各単心線が貼り付けられた前記工程シートを巻き取るシート巻き取り手段とを有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載した発明は、前記各単心線が貼り付けられた前記工程シートを巻き取るシート巻き取り手段を備えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、まず心線巻き出し手段により複数の単心線を巻き出すと共に、心線集合手段により各単心線の弛みを無くしつつこれらを集合させる一方、シート巻き出し手段により工程シートを巻き出し、整列固定手段により工程シート上に各単心線を整列固定することが可能となる。すなわち、複数の単心線を同時かつ自動的に精度良く工程シート上に配線することが可能となり、各単心線に被覆を施す際の精度を高めて歩留りを向上させることが可能となる。
【0015】
また、シート巻き取り手段により各単心線が整列固定された工程シートを巻き取ることで、各単心線を配線した状態で作り置きすることが可能となる。すなわち、各単心線を配線する配線工程はこれらに被覆材料を塗布する塗布工程よりも通常は工程時間が短いため、これらを連続させずに別工程として各単心線を配線した状態で作り置きすることで、配線された各単心線をさらに組み合わせて少量多品種のテープ心線を製造するような場合にも、段取りや調整に要する工数を削減して装置全体のスループットを上げることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載した発明によれば、少量多品種のテープ心線の製造にも対応し易く、かつ設備コストを抑えた上で均等な被覆を容易に行うことができる。
請求項2に記載した発明によれば、幅広で均等な被覆にも容易に対応することができる。
請求項3に記載した発明によれば、少量多品種のテープ心線に対する適用性を向上させることができる。
請求項4,5に記載した発明によれば、テープ心線の歩留りを向上させると共にスループットを上げることで、少量多品種のテープ心線を製造する際にもこれらを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施例について図面を参照して説明する。なお、図中矢印FRは前方を、矢印LHは左方を、矢印UPは上方をそれぞれ示すものとして説明する。
図1、図5に示すように、この実施例におけるテープ心線製造装置1は、複数本の光ファイバー心線(単心線)2を並列に配置すると共にこれらを一体的に被覆してなるテープ心線を製造するためのもので、図1に示す配線装置10と、図5に示す塗布装置30とを主としてなる。この実施例においては、配線装置10による配線工程と塗布装置30による塗布工程とは別工程としており、これらを連続的に行う大型の装置に対して各装置の簡略化を図っている。
【0018】
図1に示すように、配線装置10は、複数本の光ファイバー心線2を工程シート4上に整列固定するためのもので、複数のドラム2aから各光ファイバー心線2を巻き出す心線巻き出し装置(心線巻き出し手段)11と、各光ファイバー心線2を弛ませた状態から所定の張力を与えつつこれらを集合させる心線集合装置(心線集合手段)12と、各光ファイバー心線2を貼り付ける工程シート4を巻き出すシート巻き出し装置(シート巻き出し手段)13と、相対移動する各光ファイバー心線2を整列させながら工程シート4上に貼り付ける配線ヘッド(整列固定手段)14と、配線ヘッド14に対して各光ファイバー心線2を相対移動させるべく各光ファイバー心線2及び工程シート4を引き出す移動装置15と、各光ファイバー心線2が貼り付けられた工程シート4を巻き取るシート巻き取り装置(シート巻き取り手段)16とを有してなる。
【0019】
各ドラム2aから巻き出された各光ファイバー心線2は、心線集合装置12及び配線ヘッド14を経由しつつ前方に延びた後に移動装置15の台車15aに保持される。そして、台車15aが前方に移動することで、各光ファイバー心線2が各ドラム2aから巻き出された直後の弛んだ状態から心線集合装置12及び配線ヘッド14を経由して前方に引き出され、その弛みが除去されると共に互いに密接するように整列させられる。
【0020】
図2を参照して説明すると、心線巻き出し装置11は、例えば十個のドラム2aを不図示の駆動手段により駆動させて該各ドラム2aに巻き取られた各光ファイバー心線2を所定速度で巻き出す。各ドラム2aから巻き出された各光ファイバー心線2は、弛み形成バー5により弛まされた状態を維持し、この状態から例えば五本のガイドバー12aを有する心線集合装置12に送られて各ガイドバー12a間を蛇行するように通過する。
【0021】
このとき、各光ファイバー心線2には、所定のテンションが与えられつつこれらが徐々にかつ均等に左右方向略中央部に集合する。このように集合した各光ファイバー心線2は、配線ヘッド14用の昇降装置17を支持するフレーム18の上部貫通孔18aを通過した後、その前方の配線ヘッド14を通過しつつ該配線ヘッド14の下方に位置する配線治具19上にて工程シート4上に貼り付けられる。
【0022】
一方、例えば心線集合装置12の下方に位置するシート巻き出し装置13は、不図示の駆動手段を用いてシートロール4aを駆動させて工程シート4を所定速度で巻き出す。この工程シート4の巻き出し速度は、前記心線巻き出し装置11の巻き出し速度と概ね同一とされる。シートロール4aから巻き出された工程シート4は、前記フレーム18の下部貫通孔18bを通過した後に配線治具19上に送られる。工程シート4は例えば既存の紙製のクラフトテープであり、一側面に粘着性を有し、他側面には離型性を有する。この工程シート4が、その接着面を上にして配線治具19上に配置されると共に、該配線治具19上においてその接着面上に各光ファイバー心線2が貼り付けられる。
【0023】
図3,4を併せて参照して説明すると、配線ヘッド14は、略水平な板状のベース部21と、該ベース部21の下面前側から下方に突出するヘッド本体22と、ベース部21の上面後側から上方に突出する補助ヘッド23とを有してなる。ヘッド本体22及び補助ヘッド23は、下方又は上方に凸の断面半円状をなして左右方向に延在する半割り円柱状のもので、かつ補助ヘッド23はヘッド本体22に対して小径とされる。
【0024】
心線集合装置12を通過して集合した各光ファイバー心線2は、心線集合装置12から略前方に向けて延びた状態から、まず補助ヘッド23に上方から巻き付いて斜め下前方に向けて屈曲し、次いでヘッド本体22に下方から巻き付いて前方に向けて屈曲するように配線ヘッド14に巻回される。ヘッド本体22の左右方向中央部には、その円周方向に沿うようにガイド溝24が刻設されており、このガイド溝24内を各光ファイバー心線2が摺動しつつ通過することで、これらが互いに密接した状態に整列する。すなわち、ガイド溝24の幅は、各光ファイバー心線2を並列に配置した際の全幅とほぼ同一とされる。
【0025】
ここで、ヘッド本体22は、昇降装置17により配線ヘッド14が上方に移動した際には配線治具19から離間し、配線ヘッド14が下方に移動した際には配線治具19側に押し当てられる。すなわち、配線ヘッド14は下方からの荷重に対して弾性的に支持されており、昇降装置17により下方に移動した際には、ヘッド本体22を配線治具19側に弾性的に押し当てると共に下方に向けて付勢された状態となる。
【0026】
ヘッド本体22のガイド溝24の深さは各光ファイバー心線2の半径程度であり、このヘッド本体22を配線治具19側に押し当てた状態において、配線治具19上に配置された各光ファイバー心線2をその下の工程シート4の接着面に前記整列した状態で押し当てて貼り付けつつも、ヘッド本体22は工程シート4の接着面に接することがなく、配線治具19上から工程シート4及びこれに貼付された各光ファイバー心線2を引き出すことが可能である。
【0027】
各光ファイバー心線2は、配線ヘッド14を通過した後に配線治具19前方の移動装置15の台車15a上に工程シート4と共に保持されており、該台車15aの移動により前方に引き出されることで、配線治具19上にてガイド溝24を通過しつつ整列させられ、同じく台車15aにより引き出される工程シート4上に互いに密接しかつ直進性を維持した状態で順次整列固定される。
このとき、ヘッド本体22の直ぐ手前に補助ヘッド23を設けてこれらに各光ファイバー心線2を側面視S字状に巻回させることで、比較的浅いガイド溝24の直前で所定の張力が与えられて該ガイド溝24から外れ難くなっている。
【0028】
台車15aが前端位置まで移動した後には、一旦各光ファイバー心線2及び工程シート4の保持を解除して台車15aのみを配線治具19直前の初期位置まで戻してから、再度各光ファイバー心線2及び工程シート4を台車15aに保持させた後に、上記配線工程を繰り返せばよい。
このように工程シート4上に各光ファイバー心線2を連続的に整列固定した後に、これらをシート巻き取り装置16により順次ドラム6に巻き取るようになっている。
【0029】
上記配線装置10により工程シート4上に整列固定された各光ファイバー心線2は、工程シート4と共にドラム6に巻き取られた状態で前記塗布装置30に搬送され、該塗布装置30おいて例えばシリコーン系ゴム等の被覆材料7を用いた被覆工程が行われる。
【0030】
図5に示すように、塗布装置30は、前後方向に長い塗布治具31を有し、該塗布治具31上に各光ファイバー心線2が互いの長手方向を同じくして配置された後、該各光ファイバー心線2に対して前記長手方向で塗布ヘッド32を相対移動させつつ、該塗布ヘッド32によりテープ状をなす各光ファイバー心線2の上面側に被覆材料7(図6参照)を塗布するものである。
【0031】
ここで、上記被覆材料7にシリコーン系ゴム等のゴム系樹脂材料を用いることで、各光ファイバー心線2を保護しつつ片面被覆のメリットである可撓性及び引き裂き作業性を良好に確保でき、テープ心線をファンアウト構造(分配構造)にもし易くなる。また、被覆材料7を常温硬化性のものとすれば、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を用いる場合と比べて硬化工程を大幅に簡略化できる。なお、被覆材料7としてゴム系樹脂材料以外の可撓性を有する被覆材料7を採用することも考えられるが、硬化後に剥離し易くかつ成形の容易なシリコーン系ゴムやブチルゴム等のゴム系樹脂材料がより好ましい。
【0032】
塗布治具31の後端部には、各光ファイバー心線2が整列固定された工程シート4を巻き取ったドラム6から該工程シート4を巻き出すシート巻き出し装置33が設けられ、このシート巻き出し装置33から巻き出された前記工程シート4が、不図示の保持装置により塗布治具31上に引き伸ばされた状態で仮固定される。
【0033】
図6,7を併せて参照して説明すると、塗布ヘッド32は、昇降装置34のヘッド支持部35にテープ状をなす各光ファイバー心線2の幅方向と略平行な軸35aを介して支持されるもので、上面視では工程シート4よりも幅広な長方形状をなし、前記長手方向すなわち自身の移動方向で傾動可能に設けられ、かつ前記長手方向両側に被覆材料7塗布用の塗布部39を有している。また、塗布ヘッド32は、昇降装置34と共に前記長手方向での移動を可能とするべく移動装置36に支持されており、塗布治具31の前後端部間に渡って移動可能でかつ該移動範囲内の任意の位置で昇降可能とされる。
【0034】
塗布ヘッド32におけるヘッド本体22の前記長手方向中央側の下面は、該塗布ヘッド32の前記厚さ方向(上下方向)での位置及び前記長手方向での傾きを規定するための略水平な位置合わせ面37aとされる。この位置合わせ面37aは、昇降装置34により塗布ヘッド32が上方に移動した際には塗布治具31上に配置された各光ファイバー心線2から離間し、塗布ヘッド32が下方に移動した際には各光ファイバー心線2に押し当てられる。すなわち、塗布ヘッド32は下方からの荷重に対して弾性的に支持されており、昇降装置34により下方に移動した際には、その位置合わせ面37aを各光ファイバー心線2に弾性的に押し当てると共に下方に向けて付勢された状態となる。
【0035】
図8を併せて参照して説明すると、ヘッド本体22の前記長手方向両側部は、その下面が位置合わせ面37aよりも上方に変位してなるフランジ部38とされ、該両フランジ部38の下面側には、前記幅方向に長い板状のブレード(塗布層形成部)41が取り付けられる。これら各ブレード41は、その下面が位置合わせ面37aと平行をなし、該下面と塗布治具31上に配置された各光ファイバー心線2との間に、位置合わせ面37aを各光ファイバー心線2に押し当てた状態において被覆材料7の塗布厚分の間隙K(30〜500μm程度)を形成する。
【0036】
また、各ブレード41と、ヘッド本体22における位置合わせ面37aを形成する部位(以下、位置合わせ部37という)との間には、所定の前後幅を有する材料流通溝(塗布層拡幅部)42が形成される。なお、各ブレード41は、その上面とフランジ部38下面との間のシムにより前記間隙Kを調整可能である。
各材料流通溝42は、例えばヘッド本体22の左右全幅に渡って設けられ、かつその左右方向略中央部には、ヘッド支持部35に設置された一対のディスペンサーバレル43から延びるノズル(吐出部)44の先端がそれぞれ開口している。
【0037】
各ノズル44から吐出される被覆材料7は所定の粘性を有しており、この被覆材料7が材料流通溝42内に吐出された場合には、その吐出量等に応じて比較的狭い前記間隙K内に浸入する前に材料流通溝42内でその長手方向(テープ状をなす各光ファイバー心線2の幅方向)に広がる。このように被覆材料7が広がった状態で塗布ヘッド32が前後方向に移動することで、被覆材料7がブレード41により前記間隙Kと同等の塗布厚にならされつつ各光ファイバー心線2に所定の塗布幅で塗布される。すなわち、ノズル44、材料流通溝42、及びブレード41により、前記塗布部39が構成されている。
【0038】
前記塗布幅は被覆材料7の吐出量や塗布ヘッド32の移動速度等で調整可能であり、最大で材料流通溝42の全長すなわち塗布ヘッド32の左右全幅に近い幅にできる。すなわち、前記ノズル44の径や開口形状によらず、各光ファイバー心線2に対して被覆材料7を幅広に塗布することができる。
【0039】
前記塗布幅は、通常はテープ状をなす各光ファイバー心線2の全幅よりも広めに設定されており、配線装置10から塗布装置30へ各光ファイバー心線2を再セットする際の前記幅方向での位置ずれを吸収可能であるが、この実施例においては、各光ファイバー心線2を工程シート4に整列固定した状態で塗布装置30に再セットすることで、塗布治具31上に各光ファイバー心線2を直接セットする場合と比べて前記位置ずれ自体が少なくされると共に、各光ファイバー心線2同士の密接性及び直進性も良好に確保される。なお、工程シート4の全幅は前記テープ状をなす各光ファイバー心線2の全幅よりも広く、該工程シート4が各光ファイバー心線2に被覆材料7を塗布する際の台紙としても機能する。
【0040】
各光ファイバー心線2への被覆材料7の塗布後には、該各光ファイバー心線2の塗布治具31上への仮固定を解除し、これらを不図示の硬化工程に移行させて塗布材料を硬化させる。
被覆材料7を硬化させた後には、該被覆材料7により一体的に片面被覆された各光ファイバー心線2(すなわちテープ心線)を工程シート4から剥離させて取り出せばよい。
【0041】
このとき、前記幅方向両側において光ファイバー心線2と工程シート4との間で被覆材料7が引き裂かれることで、各光ファイバー心線2の前記幅方向両側に被覆材料7のちぎれ片が残ることがある。このちぎれ片は、カッター等で切り取るか、あるいは最外側の光ファイバー心線2を一本ずつ裂き取ることで除去可能である。なお、前記最外側の光ファイバー心線2を裂き取る場合、該裂き取り用の光ファイバー心線2を追加した状態で被覆を施すか、あるいは同径のダミー線を加えた状態で被覆を施すようにすればよい。
【0042】
ここで、塗布ヘッド32における塗布治具31の後側から前側への移動(図5,6における左側から右側への移動)に着目して説明すると、塗布ヘッド32において、その位置合わせ部37の前記移動方向における下流側には一方の塗布部39が位置している。詳細には、位置合わせ部37の前記移動方向における下流側にはブレード41が位置し、該ブレード41の前記移動方向における上流側(前記ブレード41と位置合わせ部37との間)には一方のノズル44が位置し、該ノズル44とブレード41下方の間隙Kとの間にはテープ状をなす各光ファイバー心線2の幅方向に長い一方の材料流通溝42が位置している。
【0043】
上記塗布装置30においては、通常は塗布治具31上に配置される各光ファイバー心線2に対し、塗布ヘッド32を上述の如く前側から後側へ移動させつつ、該移動方向での下流側に位置する塗布部39(ブレード41、ノズル44、及び材料流通溝42)を用いて被覆材料7の塗布を行う(図6参照)。
【0044】
ところが、図9に示すように、特に光カプラや分合波器等の光部品8aの両側から光ファイバー心線2が引き出されるようなモジュール部品8に対してその両光ファイバー心線2に被覆を施すような場合には、前記移動方向での上流側に位置する他方の塗布部39をも用いて被覆材料7を塗布するようになっている。
【0045】
すなわち、両光ファイバー心線2を塗布治具31上に長手方向を同じくして(必要に応じて工程シート4上に貼り付けた状態で)仮固定した後、まず光部品8aの前記移動方向における下流側に位置する光ファイバー心線2に対して被覆材料7の塗布を行う際には、前記移動方向における上流側に位置する塗布部39のブレード41を光部品8aの直前に位置させた状態から、塗布ヘッド32を前記移動方向(図9中矢印Fで示す)へ移動させつつ、前記上流側の塗布部39を用いて被覆材料7の塗布を行うことで、光部品8aの直前から光ファイバー心線2に被覆を施すことができる。
【0046】
次いで、光部品8aの前記移動方向における上流側に位置する光ファイバー心線2に対して被覆材料7の塗布を行う際には、前記移動方向における下流側に位置する塗布部39のブレード41を光部品8aの直後に位置させた状態から、塗布ヘッド32を前記移動方向と逆の方向(図中矢印F’で示す)へ移動させつつ、前記下流側の塗布部39を用いて被覆材料7の塗布を行うことで、光部品8aの直後から光ファイバー心線2に被覆を施すことができる。
【0047】
以上説明したように、上記実施例におけるテープ心線製造装置1は、各光ファイバー心線2に被覆材料7を塗布する塗布装置30が、塗布治具31上に並列に配置された前記各光ファイバー心線2に対してその長手方向で相対移動する塗布ヘッド32を有し、該塗布ヘッド32が、その塗布部39近傍に前記テープ状をなす各光ファイバー心線2の厚さ方向での位置合わせ面37aを有してこれを前記各光ファイバー心線2に押し当てると共に、前記長手方向で傾動可能に設けられるものである。
【0048】
この構成によれば、各光ファイバー心線2を塗布治具31上に並列に配置してこれらに被覆材料7の塗布を行うことで、各光ファイバー心線2を搬送しながら塗布を行う場合と比べてこれらの巻き出しや巻き取りに必要な余長を削減できるため、短尺のテープ心線の製造にも歩留り良く対応することができる。また、光部品8aから引き出された光ファイバー心線2に被覆材料7を塗布する場合にも、これらを塗布治具31上に配置することで容易に対応することができる。
【0049】
また、塗布治具31上の各光ファイバー心線2に対して塗布ヘッド32が相対移動する際に、上記相対移動時における塗布ヘッド32又は塗布治具31の振れ、あるいは塗布治具31の歪み等による平滑性の乱れがあったとしても、塗布ヘッド32の前記厚さ方向での位置決めが塗布部39近傍にて各光ファイバー心線2に対して直接行われると共に、塗布治具31の前記長手方向での歪みも塗布ヘッド32が前記長手方向で傾動することで吸収されるため、高精度な塗布治具31を用いることなく設備コストを抑えた上で、各光ファイバー心線2とブレード41との間の微小な間隙Kを精度良く維持でき、各光ファイバー心線2に対して均等な塗布を行うことができる。
【0050】
また、上記テープ心線製造装置1は、前記塗布部39には、前記位置合わせ面37aを前記各光ファイバー心線2に押し当てた状態で該各光ファイバー心線2との間に塗布厚分の間隙Kを形成するブレード41と、前記被覆材料7を吐出するノズル44と、吐出された前記被覆材料7を前記ノズル44と前記間隙Kとの間にて前記テープ状をなす各光ファイバー心線2の幅方向に広げる材料流通溝42とが設けられるものである。
【0051】
この構成によれば、前記被覆材料7は、ノズル44から吐出された後に、材料流通溝42により所定幅に広げられ、かつブレード41により所定厚にならされることで、前記所定幅かつ所定厚の塗布層を形成する。すなわち、ノズル44を大型化する必要がなく、したがってノズル44からの被覆材料7の吐出量の調整を困難にすることもなく、その吐出量と塗布ヘッド32の相対移動速度とのバランスにより均等な塗布厚のまま比較的容易に塗布幅を広げることができる。
【0052】
さらに、上記テープ心線製造装置1においては、前記塗布部39が、前記塗布ヘッド32の前記相対移動方向両側に設けられることで、所定の光部品8aの両側から光ファイバー心線2が引き出されるようなモジュール部品8において、その両光ファイバー心線2に被覆を施すような場合にも、まず一方の光ファイバー心線2に塗布ヘッド32を一方向に相対移動させつつその一方の塗布部39を用いて被覆を施した後、他方の光ファイバー心線2には塗布ヘッド32を他方向に相対移動させつつ他方の塗布部39を用いて被覆を施すことが可能となるため、該両光ファイバー心線2に対して前記光部品8aの直近位置から被覆を施すことができ、様々なモジュール部品8への適用性を向上させることが可能となる。
【0053】
しかも、上記テープ心線製造装置1は、前記各光ファイバー心線2を工程シート4上に整列固定する配線装置10が、複数のドラムから前記各光ファイバー心線2を巻き出す心線巻き出し装置11と、前記各光ファイバー心線2に所定の張力を与えつつこれらを集合させる心線集合装置12と、前記各光ファイバー心線2を貼り付ける前記工程シート4を巻き出すシート巻き出し装置13と、前記各光ファイバー心線2に対して相対移動しながらこれらを整列させつつ前記工程シート4上に貼り付ける配線ヘッド14と、前記各光ファイバー心線2が貼り付けられた前記工程シート4を巻き取るシート巻き取り装置16とを有するものである。
【0054】
この構成によれば、まず心線巻き出し装置11により複数の光ファイバー心線2を巻き出すと共に、心線集合装置12により各光ファイバー心線2の弛みを無くしつつこれらを集合させる一方、シート巻き出し装置13により工程シート4を巻き出し、配線ヘッド14により工程シート4上に各光ファイバー心線2を整列固定することが可能となる。すなわち、複数の光ファイバー心線2を同時かつ自動的に精度良く工程シート4上に配線することが可能となり、各光ファイバー心線2に被覆を施す際の精度を高めて歩留りを向上させることが可能となる。
【0055】
また、シート巻き取り装置16により各光ファイバー心線2が整列固定された工程シート4を巻き取ることで、各光ファイバー心線2を配線した状態で作り置きすることが可能となる。すなわち、各光ファイバー心線2を配線する配線工程はこれらに被覆材料7を塗布する塗布工程よりも通常は工程時間が短いため、これらを連続させずに別工程として各光ファイバー心線2を配線した状態で作り置きすることで、配線された各光ファイバー心線2をさらに組み合わせて少量多品種のテープ心線を製造するような場合にも、段取りや調整に要する工数を削減して装置全体のスループットを上げることができる。
【0056】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、例えば、各光ファイバー心線2が整列固定された工程シート4を巻き取らずに塗布工程に搬送し、配線工程と塗布工程とを連続的に行うようにしてもよく、この場合、短尺のテープ心線の製造やモジュール部品への被覆のみならず、長尺のテープ心線の製造にも適した構成となる。
また、上記配線装置10においては、各光ファイバー心線2に対して配線ヘッド14が移動するようにしてもよく、同様に上記塗布装置30においては、塗布ヘッド32に対して各光ファイバー心線2が移動するようにしてもよい。
【0057】
さらに、上記塗布装置30において、幅広のテープ心線を形成した後、これを引き裂いて所望の心数のテープ心線に分けるようにすれば、前記スループットをさらに上げることができる。しかも、塗布ヘッド32の相対移動方向両側に塗布部39を設けて各光ファイバー心線2に対する両方向での塗布を可能としたが、例えば塗布ヘッド32又は塗布治具31を回転させて塗布ヘッド32に対する各光ファイバー心線2の向きを逆転可能とすることで、各光ファイバー心線2に対する両方向での塗布を可能としてもよい。
【0058】
ここで、上記テープ心線製造装置1の各可動部、すなわち図1の心線巻き出し装置11、シート巻き出し装置13、昇降装置17、移動装置15、シート巻き取り装置16等は、パソコン等により互いに同期をとりながら自動制御することもでき、この場合も本発明の範疇である。同様に、図5のシート巻き出し装置33、昇降装置34、移動装置36、ディスペンサ又はディスペンサーバレル43等も、それぞれ同期をとりながらパソコン等により自動制御することもでき、この場合も本発明の範疇である。
【0059】
そして、上記実施例における構成はこの発明の一例であり、例えばコンピュータ等に用いられる導電線(銅等の金属線)を並べたテープ心線にも適用可能であると共に、該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施例におけるテープ心線製造装置の配線装置の側面図である。
【図2】上記配線装置の心線巻き出し装置及び心線集合装置の斜視図である。
【図3】上記配線装置の配線ヘッド周辺の側面図である。
【図4】上記配線ヘッド周辺の前面図である。
【図5】上記テープ心線製造装置の塗布装置の側面図である。
【図6】上記塗布装置の塗布ヘッド周辺の側面図である。
【図7】上記塗布ヘッド周辺の上面図である。
【図8】上記塗布ヘッドを斜め下から見た斜視図である。
【図9】モジュール部品の心線への塗布工程を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 テープ心線製造装置
2 光ファイバー心線(単心線)
2a ドラム
4 工程シート
7 被覆材料
10 配線装置
11 心線巻き出し装置(心線巻き出し手段)
12 心線集合装置(心線集合手段)
13 シート巻き出し装置(シート巻き出し手段)
14 配線ヘッド(整列固定手段)
16 シート巻き取り装置(シート巻き取り手段)
30 塗布装置
31 塗布治具
32 塗布ヘッド
37a 位置合わせ面
39 塗布部
41 ブレード(塗布層形成部)
42 材料流通溝(塗布層拡幅部)
44 ノズル(吐出部)
K 間隙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の単心線をテープ状とするべく並列に配置すると共にこれらを一体的に被覆するテープ心線製造装置において、
前記各単心線に被覆材料を塗布する塗布装置を備え、該塗布装置が、塗布治具上に並列に配置された前記各単心線に対してその長手方向で相対移動する塗布ヘッドを有し、該塗布ヘッドが、その塗布部近傍に前記テープ状をなす各単心線の厚さ方向での位置合わせ面を有してこれを前記各単心線に押し当てると共に、前記長手方向で傾動可能に設けられることを特徴とするテープ心線製造装置。
【請求項2】
前記塗布部には、前記位置合わせ面を前記各単心線に押し当てた状態で該各単心線との間に塗布厚分の間隙を形成する塗布層形成部と、前記被覆材料を吐出する吐出部と、吐出された前記被覆材料を前記吐出部と前記間隙との間にて前記テープ状をなす各単心線の幅方向に広げる塗布層拡幅部とが設けられることを特徴とする請求項1に記載のテープ心線製造装置。
【請求項3】
前記塗布部が、前記塗布ヘッドの前記相対移動方向両側に設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ心線製造装置。
【請求項4】
前記各単心線を工程シート上に整列固定する配線装置を備え、該配線装置が、複数のドラムから前記各単心線を巻き出す心線巻き出し手段と、前記各単心線に所定の張力を与えつつこれらを集合させる心線集合手段と、前記各単心線を貼り付ける前記工程シートを巻き出すシート巻き出し手段と、前記各単心線に対して相対移動しながらこれらを整列させつつ前記工程シート上に貼り付ける整列固定手段とを有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のテープ心線製造装置。
【請求項5】
前記各単心線が貼り付けられた前記工程シートを巻き取るシート巻き取り手段を有することを特徴とする請求項4に記載のテープ心線用配線装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−349759(P2006−349759A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−172606(P2005−172606)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】