説明

テープ用切断刃

【課題】テープを捻るように切断する等のテクニックを必要とすることなく、安全で、利き手によらず容易に切断面が一直線状となるように切断することができるテープ用切断刃を提供すること。
【解決手段】ロール状に巻回されたテープ1を切断するための切断刃において、テープが繰り出される方向に沿って板面が延びる平面部材である鋼板11の一端縁に、該テープの下面を係止させて切り込みを入れる上端角部13と、該上端角部による切り込み線を切断しようとする方向へと導く直状のエッジ部14と、該エッジ部の終端から連続する陥没部16と、を一単位とする単位刃12を複数設け、夫々の単位刃のエッジ部が、鋼板の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して偏倚する偏倚線Y上に位置し、テープと、該テープが単位刃に接触した点を含む偏倚線との間に接触角度を設ける。これにより、テープ端により高い応力が懸かるため、捻ることなく、切断が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状のテープを所望の長さに切断するためのテープ用切断刃に関し、特に、捻らずにテープ切断面を直線状に切断することができるテープ用切断刃に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、接着テープや食品用ラップフィルムなどのロール状に巻回されたテープを繰り出して切断するためのテープカッターにあっては、カッター部に鋸刃状の切断刃(所謂、ギザ刃)が装着されたものが多い。
【0003】
このような鋸刃状の切断刃においては、テープの切断線が鋸刃状になってしまうので、切断されたテープを接合物に貼り付けた際の見た目が悪いという問題があった。
【0004】
このような不都合を解消するために、発明者は鋭意研究した結果、テープが繰り出される方向に沿って板面が延びる平面部材の一端縁に、一直線上に位置するように陥没部を複数設けた切断刃を提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載の技術は、テープが繰り出される方向に沿って板面が延びる鋼板の端縁に、テープを係止させて切り込みを入れる角部と、その切り込みを切断しようとする方向へと導くエッジ部と、その終端から連続する陥没部とを一単位とする単位刃を複数設け、夫々の単位刃のエッジ部が一直線上に位置するように構成されている。このように構成される切断刃によれば、テープを幅方向に向けて直線状に切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−30031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の切断刃は、テープを係止させて切り込みを入れる角部と、その切り込みを切断しようとする方向へと導くエッジ部と、その終端から連続する陥没部とを一単位とする複数の単位刃のエッジ部を一直線上に位置しているため、テープを幅方向に向けて直線状に切断するためには、捻るように、すなわち、まず、テープ端部に高い応力をかける必要があり、テープ繰り出し方向からみて下に真っ直ぐ引いて切断する場合は力を要し、切断動作を制限する懸念があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、テープを捻るように切断する等のテクニックを必要とすることなく、安全で、利き手によらず容易に切断面が一直線状となるように切断することができるテープ用切断刃を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のテープ用切断刃は、ロール状に巻回されたテープを切断するための切断刃であって、テープが繰り出される方向に沿って板面が延びる平面部材の一端縁に、該テープの下面を係止させて切り込みを入れる上端角部と、該上端角部による切り込み線を切断しようとする方向へと導く直状のエッジ部と、該エッジ部の終端から連続する陥没部と、を一単位とする単位刃を複数設け、夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して偏倚する偏倚線上に位置し、テープをテープの引き出し方向に対して直角に切断刃に押し当てた場合のテープと、該テープが上記単位刃に接触した点を含む上記偏倚線との間に接触角度を設けた、ことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
この場合、上記接触角度は、0°より大きく、90°未満の範囲であればよいが、好ましくは接触角度が4°以上15°以下、更に好ましくは接触角度が6°以上15°以下である方がよい(請求項2,3)。また、夫々の単位刃の上記エッジ部は平面視において、直線上に位置していれば、凸状又は凹状の直線上に位置していてもよいが、好ましくは、平面視において切断刃の先端両端を結ぶ一直線上に位置する方がよい(請求項4)。
【0011】
このように構成することにより、テープと、該テープが上記単位刃に接触した点を含む上記偏倚線との間に接触角度が設けられているので、テープ切断時にテープ繰り出し方向からみて下に真っ直ぐ引くと、テープの一部が平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して偏倚する偏倚線上に位置する上端角部に接触して切り込み線が生じ、上端角部に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃の上端角部によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープを幅方向に一直線状に切断することができる。この場合、接触角度を4°〜15°の範囲、好ましくは接触角度を6°〜15°にすることにより、更に裁断性と直線性の向上が図れる(請求項2,3)。ここで、接触角度を4°〜15°とした理由は、接触角度が4°より小さいと、テープの切断時(裁断時)に大きな力を要し、裁断性が悪くなり、接触角度を6°以上とすることにより、裁断強度が非常に軽い力で切断可能となる。また、接触角度が15°より大きくなると、裁断性はよくなるが、直線性が悪くなるからである。
【0012】
この発明において、夫々の単位刃の直状のエッジ部を平面視において切断刃の先端両端を結ぶ一直線上に位置することにより、更に直線性の向上が図れる(請求項4)。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ用切断刃において、夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して下方に凹状に偏倚する偏倚線上に位置する、ことを特徴とする。この場合、平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して下方に凹状に偏倚する偏倚線としては、例えば曲線状に偏倚する略U形状や直線状に偏倚する略V形状のいずれであってもよい。
【0014】
このように構成することにより、テープ切断時にテープ繰り出し方向からみて下に真っ直ぐ引くと、テープの一部が平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して下方に凹状に偏倚する偏倚線上における上部側に位置する上端角部に接触して切り込み線が生じ、上端角部に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃の上端角部によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープを幅方向に一直線状に切断することができる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ用切断刃において、夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上方に凸状に偏倚する偏倚線上に位置する、ことを特徴とする。この場合、平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上方に凸状に偏倚する偏倚線としては、例えば曲線状に偏倚する略逆U形状や直線状に偏倚する略逆V形状のいずれであってもよい。
【0016】
このように構成することにより、テープ切断時にテープ繰り出し方向からみて下に真っ直ぐ引くと、テープの一部が平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上方に凸状に偏倚する偏倚線上における上部側に位置する上端角部に接触して切り込み線が生じ、上端角部に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃の上端角部によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープを幅方向に一直線状に切断することができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ用切断刃において、夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上下方向に凹凸状に偏倚する偏倚線上に位置する、ことを特徴とする。この場合、平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上下方向に凹凸状に偏倚する偏倚線としては、例えば曲線状あるいは直線状に偏倚する略波形状のいずれであってもよい。
【0018】
このように構成することにより、テープ切断時にテープ繰り出し方向からみて下に真っ直ぐ引くと、テープの一部が平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上下方向に凹凸状に偏倚する偏倚線上における上部側に位置する上端角部に接触して切り込み線が生じ、上端角部に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃の上端角部によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープを幅方向に一直線状に切断することができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載のテープ用切断刃において、内側面に接着剤が塗布された接着テープを繰り出して切断するためのテープカッターに取り付けられ、上記平面部材の他端部に該平面部材の幅方向に渡って板面から上方に突出する突出部を設け、繰り出された上記接着テープが該突出部において仮止めされた後、上記一端縁に設けられた刃先に至るようにした、ことを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、接着テープ用のテープカッターに取り付けて使用されるので、テープの接着剤によって刃先にテープが固定された状態で、テープの切断を行うことができる。また、平面部材の他端部が上方に突出しているので、この突出部でテープを仮止めした後に、刃先へと至らしめことができる。また、突出部の次に接するのが刃先のエッジ部であるので、陥落部の凸凹形状に従ってテープが切断されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
(1)請求項1〜7に記載の発明によれば、テープ切断時にテープ繰り出し方向からみて下に真っ直ぐ引くと、テープの一部が平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して偏倚する偏倚線上に位置する上端角部に接触して切り込み線が生じ、上端角部に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃の上端角部によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープを幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープを捻るように切断する等のテクニックを必要とすることなく、容易に切断面が一直線状となるように切断することができる。
【0022】
(2)請求項8に記載の発明によれば、上記(1)に加えて更に、接着テープ用のテープカッターに取り付けて使用されるので、テープの接着剤によって刃先にテープが固定された状態で、テープの切断を行うことができる。また、平面部材の他端部に突出する突出部でテープを仮止めした後に、刃先へと至らしめことができる。また、突出部の次に接するのが刃先のエッジ部であるので、陥没部の凸凹形状に従ってテープが切断されるのを防止することができると共に、一部のエッジ部以外にテープは接着していないので、次の切断のために平面部材から引き剥がす際に、弱い力で引き剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図2】上記切断刃を備えたテープカッターを示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)及び(a)の正面端面図(b)である。
【図4】第1実施形態の曲率の異なる刃部を示す概略平面図(a)及び(a)の正面端面図(b)である。
【図5】第1実施形態の曲率の異なる別の刃部を示す概略平面図(a)及び(a)の正面端面図(b)である。
【図6】第1実施形態の切断刃の要部を拡大して示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図8】第2実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)、別の切断刃の刃部を示す概略平面図(c)及び(c)の正面端面図(d)である。
【図9】本発明の第3実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図10】第3実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図12】第4実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【図13】本発明の第5実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図14】第5実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【図15】本発明の第6実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図16】第6実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【図17】本発明の第7実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図18】第7実施形態の切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【図19】本発明に係る切断刃の製造工程の一例を示す概略斜視図である。
【図20】本発明に係るテープ用切断刃の使用状態を示す概略斜視図である。
【図21】本発明の第8実施形態に係るテープ用切断刃を示す概略斜視図である。
【図22】第8実施形態に係るテープ用切断刃を備えたテープカッターを示す斜視図である。
【図23】第8実施形態に係る切断刃の製造工程の一例を示す概略斜視図である。
【図24】この発明におけるテープと切断刃との接触角度を示す概略正面図(a)及びその拡大図(b)である。
【図25】本発明の第9実施形態に係るテープ用切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【図26】本発明の第10実施形態に係るテープ用切断刃の刃部を示す概略平面図(a)、(a)の正面端面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、本発明に係るテープ用切断刃をテープカッターに備えた場合について説明する。
【0025】
<第1実施形態>
本発明に係るテープ用切断刃10(以下に切断刃10という)は、図2に示すように、接着テープ1を繰り出して切断するためのテープカッター2に取り付けられている。
【0026】
テープカッター2は、接着テープ1が環装されるリール3と、このリール3から所定距離離れた位置に突設される切断部4とを含んで構成されるものであり、切断部4の先端に取り付けられた切断刃10によって、リール3から繰り出されたテープ1を切断するようになっている。
【0027】
このテープカッター2に装着されているテープ1は、例えば、セロファン,アルミ箔,紙,ポリ塩化ビニル,OPP(二軸延伸ポリプロピレン),アセテートなどのフィルム素材からなるシートの下面に接着剤を塗布し、ロール状に巻回して構成されている。
【0028】
テープ1を切断する際は、リール3に装着されたテープ1を引っ張って所望の長さに引き出し、切断部4の先端に取り付けられた本実施形態に係る切断刃10によって切断する。この切断刃10は、切断部4の上端部に、刃先を横方向(即ち、テープが繰り出される方向)に向けた状態で配設されている。
【0029】
以下に、本実施形態に係る切断刃10の構造を、図1,図3ないし図6を参照して詳細に説明する。
【0030】
第1実施形態に係る切断刃10は、テープ1が繰り出される方向に沿って板面が延びる平面部材である鋼板11の一端部に刃先を設け、他端部に、テープを仮止めするための仮止め部20を設けたものである。なお、図示の仮止め部20は、誇張して表現されたものである。
【0031】
鋼板11の一端部に設けられる刃先は、複数の単位刃12を等間隔に並べて構成されており、単位刃12は、テープ1の下面を係止させて切り込みを入れる上端角部13と、この上端角部13から連続し、上端角部13による切り込み線を切断しようとする方向へと導く直状のエッジ部14と、このエッジ部14の終端の角部15から連続する陥没部16と、を一単位とする複数の単位刃12とで構成されている。なお、図面では、構造を明確にするために、単位刃12を構成する上端角部13,エッジ部14及び陥没部16は誇張して表現されている。
【0032】
夫々の単位刃12のエッジ部14は、鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して偏倚する偏倚線、例えば水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する円弧状の偏倚線Y上に位置するが、平面視において切断刃の先端両端を結ぶ一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線Yは中央部が最下点になる円弧状に形成されている。
【0033】
上記のように構成することにより、図24に示すように、夫々の単位刃12のエッジ部14を、鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する円弧状の偏倚線Y上に位置させることで、テープ1と、該テープ1が単位刃12に接触した点Pを含む偏倚線Yとの間に接触角度θが設けられる。この場合、接触角度θは、4°〜15°、好ましくは6°〜15°である方がよい。接触角度θが4°より小さいと、テープの切断時(裁断時)に大きな力を要し、裁断性が悪くなり、接触角度を6°以上とすることにより、テープが非常に軽い力で切断可能となる。また、接触角度θが15°より大きくなると、裁断性はよくなるが、直線性が悪くなるからである。
【0034】
刃先とは反対側の端部は、鋼板11の幅方向に渡って板面から上方に突出する突出部17が設けられており、この突出部17が繰り出されたテープ1を仮止めするための仮止め部20を構成している。
【0035】
切断刃10の刃先は、例えば、後述する製造工程によって形成される。すなわち、図19に示すように、長尺状の鋼板11の上面に、複数の略矩形状の凹部18を幅方向に並べて形成し、それらの凹部18に沿って下面側から上面方向Aに向けて、この鋼板11を幅方向に切断して構成され、その後、鋼板11の上面を下方に向けて凹状に屈曲加工することにより、水平線Xに対して凹状に偏倚する偏倚線Y上に位置する。別の製造工程としては、下面側から上面方向Aに向けて幅方向に切断してから、鋼板11の端部切断面に沿って陥没部16を形成してもよい。その後、上記と同様に屈曲加工することにより、刃先は水平線Xに対して凹状に偏倚する偏倚線Y上に位置する。この場合、偏倚線Yの曲率(曲げ角度)を、図3ないし図5に示すように、任意の曲率(曲げ角度)“大”、“中”、“小”と変えることができる。このようにして切断刃10の刃先を形成することにより、切断された凹部18によって形成される陥没部16は刃先に対して平行に形成される(図3〜図6参照)。なお、図6に示すように、上記加工により陥没部16の下部は下方に膨隆するが、図1,図3〜図5では膨隆部は省略してある。
【0036】
一方の仮止め部20は、図1,図19(c)に示すように、刃先が形成されていない側の鋼板11の端部を、上方に向けて、逆V形状に屈曲することで形成されている。この場合、突出部17は、鋼板11の板面から略直交状に起立する起立片17aと、この起立片17aの上端から後端側に向かって略逆V字状に屈曲する山型仮止め片17bとで形成されている。このように形成することで、刃先が設けられている平面とは同一平面上にない位置に、テープ1を仮止めするための仮止め部20を設けることができる。
【0037】
以下に、第1実施形態に係る切断刃10の製造方法について図19を参照して説明する。この切断刃10の製造方法は、プレス工程と、切断工程と、曲げ工程の複数の工程からなり、まずプレス工程において、治具で型押しすることによって長尺状の鋼板11の上面に複数の略矩形状の凹部18を等間隔に並べて形成する。
【0038】
次に、切断工程において、鋼板11の上面に設けられた複数の凹部18に沿って下面側から上面方向Aに向けて幅方向に切断する。その後、曲げ工程において、鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して平面部を下方に凹状に屈曲する一方、切断された側とは反対側の端部を上方に突出するように逆V形状に折り曲げる。なお、平面部を下方に凹状に屈曲する曲げ加工と、他端部を上方に突出するように逆V形状に折り曲げる曲げ加工を同時に行ってもよく、あるいは別工程で行ってもよい。
【0039】
このようにして形成された切断刃10は、凹部18に沿って切断した際に、切断面の上縁に陥没部16が等間隔に形成される。この陥没部16と、陥没部16から連続する上端角部13と、上端角部13から連続するエッジ部14と、そのエッジ部の終端の終端角部15と、によって1つの単位刃12が形成される。なお、1つの単位刃12の長さは、0.2mm〜1.0mm程度である。
【0040】
このような単位刃12が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する凹状偏倚線Yに沿って複数形成されることとなるので、夫々のエッジ部14が、水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する円弧状の偏倚線Y上に位置するが、平面視において切断刃の先端両端を結ぶ一直線Z上に位置するように構成できる。また、この切断工程では、下面から上面方向Aに鋼板11を切断するので、エッジ部14などに、僅かな上向きのバリ19を生じさせることができ、単位刃12を一層鋭利なものにすることができる。
【0041】
なお、陥没部16の深さは、0.03〜0.5mm程度(望ましくは0.05〜0.15mm程度)が好ましい。陥没部16の深さが0.03mmより小さいと、刃先各部で切り込みを入れるのが難しくなるので、切れ易さ(裁断性)が低下する。また、逆に陥没部16の深さが0.5mmより大きいと、切断の直線(直線性)が低下するからである。
【0042】
また、仮止め部20は、テープ1を切断するとき、テープ1が刃先で滑らないようにする機能を果たす。そのため、仮止め部20の高さHは、0.5〜3.0mm程度(望ましくは0.8〜1.5mm)程度に設定されている。
【0043】
次に、上記切断刃10の使用状態について、図20を参照して説明する。まず、接着テープ1を切断刃10の前方へと引き出し、仮止め部20で固定した後、刃先にて係止させる(図20(a)参照)。そして、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向Bに真っ直ぐ引くと、テープ1の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する偏倚線Y上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる(図20(b)参照)。そして、更にテープ1を下方向Bに引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。
【0044】
このように、単位刃12の上端角部13で切り込まれ、エッジ部14で方向付けられた状態で、隣の上端角部13で切り込まれる、という繰り返しによって、直線状の切断状態が維持される。これによって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0045】
特に、リール3から繰り出されたテープ1は、上方に突出する仮止め部20において固定された後、所定の角度をもって刃先へと供給されるので、刃先のエッジ部14のみにテープ1の接着面を当接させることができる。このため、刃先の陥没部16の凸凹形状に従ってテープ1が切断されてしまうのを防止できる。
【0046】
また、切断始端部の単位刃12の上端角部13でテープ1に切り込みが設けられさえすれば、以降はエッジ部14による筋付けのみで、テープ1は切り込み線に沿って裂けてゆくので、長期間の使用によって単位刃12のエッジ部14が摩耗してしまった場合でも、幅方向に向けての直線切りが可能となる。
【0047】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る切断刃10Aは、図7及び図8に示すように、鋼板11の一端に形成される単位刃12を鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状であって、最下点が中央部よりずれた位置にある曲線(放物線,二次曲線)にて形成される偏倚線YA上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線YAは、図7及び図8(a),(b)に示すように、中央部より左側に最下点を有する曲線(放物線,二次曲線)でもよく、あるいは、図8(c),(d)に示すように、中央部より右側に最下点を有する曲線(放物線,二次曲線)でもよい。
【0048】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0049】
なお、第2実施形態の切断刃10Aにおいても、最下点が中央部よりずれた位置にある曲線(放物線,二次曲線)以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態の切断刃10と同様の製造工程によって切断刃10Aを製造することができる。
【0050】
第2実施形態の切断刃10Aによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する偏倚線YA上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0051】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る切断刃10Bは、図9及び図10に示すように、鋼板11の一端に形成される単位刃12を鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状であって、略V形状の偏倚線YB上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線YBは、必ずしも最下点が中央部である必要はなく、中央部よりずれた位置に最下点を有する偏倚線でもよい。
【0052】
なお、第3実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0053】
なお、第3実施形態の切断刃10Bにおいても、下方の凹状が略V形状以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態の切断刃10と同様の製造工程によって切断刃10Bを製造することができる。
【0054】
第3実施形態の切断刃10Bによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する偏倚線YB上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。また、この形状にすると、テープ幅によらず接触角度を一定することができるため、裁断強度等の効果も一定にすることができるため、好ましい。
【0055】
<第4実施形態>
第4実施形態の切断刃10Cは、図11及び図12に示すように、鋼板11の一端に形成される単位刃12を鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上方に凸状であって、円弧状の偏倚線YC上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線YCは中央部が最上点になる逆U字状に形成されている。偏倚線YCは、必ずしも最上点が中央部である必要はなく、中央部よりずれた位置に最上点を有する偏倚線でもよい。
【0056】
なお、第4実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0057】
なお、第4実施形態の切断刃10Cにおいても、上方に凸状に形成される以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態の切断刃10と同様の製造工程によって切断刃10Cを製造することができる。
【0058】
第4実施形態の切断刃10Cによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の中央側の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上方に凸状に偏倚する偏倚線YC上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0059】
<第5実施形態>
第5実施形態第の切断刃10Dは、図13及び図14に示すように、鋼板11の一端に形成される単位刃12を鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上方に凸状であって、略逆V字状の偏倚線YD上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線YDは中央部が最上点になる逆V字状に形成されている。偏倚線YDは、必ずしも最上点が中央部である必要はなく、中央部よりずれた位置に最上点を有する偏倚線でもよい。
【0060】
なお、第5実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0061】
なお、第5実施形態の切断刃10Dにおいても、上方に凸状であって、略逆V字状に形成される以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態の切断刃10と同様の製造工程によって切断刃10Dを製造することができる。
【0062】
第5実施形態の切断刃10Dによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の中央側の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上方に凸状に偏倚する偏倚線YD上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0063】
<第6実施形態>
第6実施形態第の切断刃10Eは、図15及び図16に示すように、鋼板11の一端に形成される単位刃12を鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上下方向に凹凸状の曲線波形状の偏倚線YE上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線YEは、水平線Xに対して下方に位置する凹状円弧線部YEaと、水平線Xに対して上方に位置する凸状円弧線部YEbとを連続した波形状に形成されている。なお、偏倚線YEと水平線Xの交点は必ずしも中央部である必要はない。
【0064】
なお、第6実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0065】
なお、第6実施形態の切断刃10Eにおいても、水平線Xに対して下方に位置する凹状円弧線部YEaと、水平線Xに対して上方に位置する凸状円弧線部YEbとを連続した波形状に形成される以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態の切断刃10と同様の製造工程によって切断刃10Eを製造することができる。
【0066】
第6実施形態の切断刃10Eによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上下方向に凹凸状の曲線波形状の偏倚線YE上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0067】
<第7実施形態>
第7実施形態第の切断刃10Fは、図17及び図18に示すように、鋼板11の一端に形成される単位刃12を鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上下方向に凹凸状の直線波形状(ジグザグ状)の偏倚線YF上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成されている。この場合、偏倚線YFは、水平線Xに対して下方に位置するV字状線部と、水平線Xに対して上方に位置する逆V字状線部とを連続した波形状に形成されている。
【0068】
なお、第7実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0069】
なお、第7実施形態の切断刃10Fにおいても、水平線Xに対して上下方向に凹凸状の直線波形状(ジグザグ状)に形成される以外は第1実施形態と同じであるので、第1実施形態の切断刃10と同様の製造工程によって切断刃10Fを製造することができる。
【0070】
第7実施形態の切断刃10Eによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して上下方向に凹凸状の直線波形状(ジグザグ状)の偏倚線YF上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0071】
<第8実施形態>
上記実施形態では、本発明に係る切断刃10,10A〜10Fの刃先側と反対側の他端部に仮止め部20を構成する突出部17を設ける場合について説明したが、図21に示すように、テープ1が繰り出される方向に沿って板面が伸びる鋼板11の端部縁に第1実施形態と同様に、鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して偏倚する偏倚線Y上に位置するが、平面視において一直線上に位置するように構成した切断刃10Gとしてもよい。
【0072】
第8実施形態の切断刃10Gは、特に、セロファンなどの裂け易い性質を有するテープに適するものであり、図22に示すテープカッター2の切断部4の上端部に谷部5を挟んで仮止め平坦面6と対峙して設けられた設置面に刃先を横方向に向けた状態で配設される。なお、第8実施形態の切断刃10Gにおいて、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0073】
第8実施形態の切断刃10Gを作製するには、図23に示すように、まず、プレス工程において、治具で型押しすることによって長尺状の鋼板11の上面に複数の略矩形状の凹部18を等間隔に並べて形成する(図23(a)参照)。次に、それらの凹部18に沿って下面側から上面方向Aに向けてこの鋼板3を切断する(図23(b)参照)。その後、曲げ工程において、鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して平面部を下方に凹状に屈曲する。
【0074】
このようにして形成された切断刃10Gは、第1実施形態の切断刃10と同様に形成され、単位刃12が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する凹状偏倚線Yに沿って複数形成されることとなるので、夫々のエッジ部14が、水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する円弧状の偏倚線Y上に位置するが、平面視において一直線Z上に位置するように構成できる。
【0075】
第8実施形態の切断刃10Gによれば、繰り出されたテープ1を捻ることなくテープ繰り出し方向からみて下方向に真っ直ぐ引くと、テープ1の一部が鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する偏倚線Y上における上部側に位置する上端角部13に接触して切り込み線が生じる。そして、更にテープ1を下方向に引くと、上端角部13に連なるエッジ部により切り込み線が切断されてゆき、隣の単位刃12の上端角部13によって更に切り込まれるという繰り返しによってテープ1を幅方向に一直線状に切断することができる。したがって、テープ1を捻ることなく、安全で、利き手によらず容易に幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【0076】
<その他の実施形態>
上記第8実施形態では、切断刃10Gを構成する単位刃12が第1実施形態と同様に、鋼板11の幅方向の両端を結ぶ水平線Xに対して下方に凹状に偏倚する円弧状の偏倚線Yに沿って設けられる場合について説明したが、第8実施形態の切断刃10Gの単位刃12を第2ないし第7実施形態と同様の偏倚線YA〜YFに沿って設けてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、切断刃10〜10Gを構成する夫々の単位刃12のエッジ部14が、平面視において、切断刃10〜10Gの先端両端を結ぶ一直線Z上に位置する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、夫々の単位刃12のエッジ部14が、平面視において、切断刃10〜10Gの先端両端を結ぶ一直線Zと偏倚する凸状又は凹状の直線上に位置していてもよい。例えば、第3実施形態の略V形状の切断刃10Bを変形させて、図25に示すように、夫々の単位刃12のエッジ部14を平面視において奥行き側に凹状の直線Z1上に位置する切断刃10B1、あるいは、図26に示すように、夫々の単位刃12のエッジ部14を平面視において手前側に凸状の直線Z2上に位置する切断刃10B2としてもよい。ここでは、第3実施形態の切断刃10Bを変形した切断刃10B1,10B2について説明したが、その他の実施形態の切断刃についても同様に切断刃の先端両端を結ぶ一直線Zと偏倚する凸状又は凹状の直線上に位置させてもよい。
【0078】
なお、上記実施形態では、本発明に係る切断刃10,10A〜10Gをテープカッター2に取り付けた場合について説明したが、本発明の切断刃10,10A〜10Gは、例えば食品用ラップフィルム、アルミ箔等、接着性を有しない幅広のテープ2であっても、幅方向に直線状に切断することが可能となる。
【実施例】
【0079】
次に、本発明に係る切断刃の切断性能を調べる試験について説明する。
【0080】
<試験1>
試料用テープ:ニチバン株式会社製の15mm幅のポリエステルテープ(553H)
共通条件:単位刃の長さが1.0mm(エッジ部が0.5mm、陥没部が0.5mm)のテープ用切断刃を使用
<裁断強度測定>
上記第1実施形態の凹状の切断刃を用いて、テープ繰り出し方向からみて下に引いて切断したときの初期裁断強度を、テープ繰り出し方向から見たテープと切断刃の接触角度θ(図24参照)を0°(特許文献1に該当する切断刃),3°(曲率半径R=143mm),4°(曲率半径R=100mm),6°(曲率半径R=65mm),8°(曲率半径R=45mm),10°(曲率半径R=40mm),15°(曲率半径R=30mm),20°(曲率半径R=20mm),30°(曲率半径R=15mm),45°(曲率半径R=10mm)に変えて、万能引張り試験機{A&D製「テンシロン」(商品名)を用いて測定した。ここで、初期裁断強度とは、テープを切断するのに要する力であり、テープ先端部に荷重を加え続け、テープが切れ始めた時の荷重値を測定したものである。
【0081】
この測定結果を表1に示す。
【表1】

【0082】
上記実験の結果、接触角度が0°では切断刃上でテープが滑ってしまうため、捻り切りしないと、切断が不可能であった。接触角度が0°より大きく4°未満では捻り切りしなくても切断可能であるが、大きな力を要する。これに対して、接触角度が4°以上6°未満では大きな力をかけなくても切断が可能であった。また、接触角度が6°以上では初期裁断強度が非常に軽い力で切断可能であった。
【0083】
<実用評価試験>
次に、第1実施形態の凹状切断刃を用いて、切断面の直線性に関する実用評価試験について説明する。
【0084】
実施例1:テープと切断刃の接触角度θ=6°、実施例2:テープと切断刃の接触角度θ=10°、実施例3:テープと切断刃の接触角度θ=15°の3種類と、比較例1:湾曲していない切断刃(特許文献1に該当する切断刃)、比較例2:テープと切断刃の接触角度θ=20°の2種類の切断刃を用意して、被験者30名に、テープ繰り出し方向からみて直交する方向に引いて切断したときの切断面の直線性を、満足{○}、やや不満足{△}、不満{×}の3段階で評価したところ、表2に示す結果が得られた。
【表2】

【0085】
上記実用試験結果において、実施例1〜3のいずれにおいても、切断面の直線性について満足と回答した被験者が過半数いたことが判った。
【0086】
これに対して、湾曲させていない切断刃の場合(比較例1)では切断刃上でテープが滑ってしまうため、捻り切りしないと、切断が不可能であった。また、テープと切断刃との接触角度が20°の場合は、過半数が直線性に不満を持っていることが明らかとなった。
【0087】
以上から、テープの接触角度が大きくなると初期裁断強度は軽くなるが、接触角度が15°を超えると直線性が得られないことが明らかとなった。
【0088】
上記裁断強度試験と実用評価試験の結果より、裁断性と直線性を満足できるものとして、切断刃の接触角θが4°〜15°の範囲、好ましくは接触角度θが6°〜15°の範囲であることが好適であることが判った。なお、直線性を考慮した場合、曲率は小さい方が好ましく、テープ端の接触点と最下点の高さの差がなるべく小さい方が好ましい。例えば15mm幅のテープで接触角15°(曲率半径R=30mm)のときのテープ端の接触点と最下点の高さは、0.95mmであるので、テープ端の接触点と最下点の高さの差が1.0mm未満である方が好ましい。
【0089】
なお、上記実施例では第1実施形態の凹状の切断刃を用いて試験を行ったが、最下点が中央部よりずれた位置にある凹状の切断刃10Aである第2実施形態や、略V形状の切断刃10Bである第3実施形態においても切断刃の接触角θが4°〜15°の範囲、好ましくは接触角度θが6°〜15°の範囲であれば、上記と同様に裁断性と直線性を満足できるものと推測できる。
【0090】
なお、第3実施形態の略V形状の切断刃10Bの直線性を考慮した場合においても、曲率は小さい方が好ましく、テープ端の接触点と最下点の高さの差がなるべく小さい方が好ましい。例えば15mm幅のテープで接触角15°のときのテープ端の接触点と最下点の高さは、計算上2.01mmであるので、略V形状の切断刃10Bの場合は、テープ端の接触点と最下点の高さの差が2.1mm未満である方が好ましい。
【符号の説明】
【0091】
1 テープ
2 テープカッター
3 リール
4 切断部
10,10A〜10G 切断刃(テープ用切断刃)
10B1,10B2 切断刃(テープ用切断刃)
11 鋼板(平面部材)
12 単位刃
13 上端角部
14 エッジ部
15 角部
16 陥没部
17 突出部
20 仮止め部
X 切断刃の幅方向両端部を結ぶ水平線
Y,YA〜YG 偏倚線
Z 平面視における一直線
θ 接触角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回されたテープを切断するための切断刃であって、
テープが繰り出される方向に沿って板面が延びる平面部材の一端縁に、該テープの下面を係止させて切り込みを入れる上端角部と、該上端角部による切り込み線を切断しようとする方向へと導く直状のエッジ部と、該エッジ部の終端から連続する陥没部と、を一単位とする単位刃を複数設け、
夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して偏倚する偏倚線上に位置し、テープをテープの引き出し方向に対して直角に切断刃に押し当てた場合のテープと、該テープが上記単位刃に接触した点を含む上記偏倚線との間に接触角度を設けた、
ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項2】
請求項1に記載のテープ用切断刃において、
上記接触角度が、4°〜15°である、ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項3】
請求項1に記載のテープ用切断刃において、
上記接触角度が、6°〜15°である、ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のテープ用切断刃において、
夫々の単位刃の上記エッジ部が、平面視において、切断刃の先端両端を結ぶ一直線上に位置する、ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ用切断刃において、
夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して下方に凹状に偏倚する偏倚線上に位置する、ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ用切断刃において、
夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上方に凸状に偏倚する偏倚線上に位置する、ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかに記載のテープ用切断刃において、
夫々の単位刃の上記エッジ部が、上記平面部材の幅方向の両端を結ぶ水平線に対して上下方向に凹凸状に偏倚する偏倚線上に位置する、ことを特徴とするテープ用切断刃。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載のテープ用切断刃において、
内側面に接着剤が塗布された接着テープを繰り出して切断するためのテープカッターに取り付けられ、上記平面部材の他端部に該平面部材の幅方向に渡って板面から上方に突出する突出部を設け、繰り出された上記接着テープが該突出部において仮止めされた後、上記一端縁に設けられた刃先に至るようにした、ことを特徴とするテープ用切断刃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−232349(P2012−232349A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100379(P2011−100379)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【出願人】(000104087)カール事務器株式会社 (63)
【Fターム(参考)】