説明

テール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造

【課題】 テール・パイプ・フィニッシャーが車止めに当たった状態で車両発進した場合にテール・パイプから抜け落ちるのを防止することができるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造を提供する。
【解決手段】
テール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、テール・パイプ・フィニッシャー3がテール・パイプ2の外径より大きな内径を有し、内周面からテール・パイプ2の外周面に圧接するように延びる複数の圧接部分30が形成されている。テール・パイプ2とテール・パイプ・フィニッシャー3とに、テール・パイプ・フィニッシャー3の内周面側とテール・パイプ2の外周面側との間で互いに係合する係合部分31、21を設け、係合部分31,21におけるテール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2からのこれらの軸方向排気下流側への抜け抵抗力を、圧接部分30による抜け抵抗力より大きくなるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に搭載した内燃機関に接続された排気系の最後端部分側に設けられたテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テール・パイプ・フィニッシャーは、高級車などに用いられ、排気系のテール・パイプの最後端端の見栄えをよくするなどの目的で取り付けられている。このようなテール・パイプ・フィニッシャーは、特許文献1に記載されているように、テール・パイプの外径より少し大径に形成されて、テール・パイプの外周に圧接する軸方向に沿った内向き複数のビードが交互に周方向等間隔のもとに2つの整数倍である4本形成されるとともに、テール・パイプ・フィニッシャーにおける圧入側端部分から内向きビード先端までの距離が、互いに対向する内向きビードごとに異なるように形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−257892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のテール・パイプ・フィニッシャーにあっては、この外径がテール・パイプの外径より大きく形成されてテール・パイプより下方位置まで広がっているため、以下に説明するような問題がある。
【0005】
すなわち、自動車を駐車場等へ駐車させる場合、後輪が路面から上方へ突出した車止めに当たるまで、あるいは車止め近くに位置するまで自動車を後退させて駐車することが多い。
この状態で、買い物等をして荷物を自動車に積載したり人員が自動車に乗車したりすると、これらの重みで自動車の車体は降下する。
この降下量が大きく、かつテール・パイプ・フィニッシャーが車止めより後方位置にある状態で駐車していた場合、テール・パイプ・フィニッシャーの圧入側端部分(排気上流側端部分)が車止めより下方位置となっていることがある。この状態で自動車を前進させると、テール・パイプ・フィニッシャーの圧入側端部分の下端部分が車止めに引っかかってテール・パイプから抜け落ちてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、上記のような場合にあっても、テール・パイプ・フィニッシャーがテール・パイプから抜け落ちるのを防止することができるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明の請求項1によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、
テール・パイプと、
テール・パイプの外径より大きな内径を有し、内周面からテール・パイプの外周面に圧接するように延びる複数の圧接部分が形成されたテール・パイプ・フィニッシャーと、
を備えたテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
テール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーとに、テール・パイプ・フィニッシャーの内周面側とテール・パイプの外周面側との間で互いに係合する係合部分を設け、
テール・パイプ・フィニッシャーのテール・パイプからのこれらの軸方向排気下流側への抜け抵抗力を、係合部分における抜け抵抗力が圧接部分による抜け抵抗力より大きくなるように設定した、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、
請求項1に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
圧接部分を、テール・パイプ・フィニッシャーの内周面の周方向に互いに離れた位置に形成するとともに、
係合部分を圧接部分間に配置した、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、
請求項1または請求項2に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
係合部分は、テール・パイプの外周面に形成した凹み部分と、
テール・パイプ・フィニッシャーの内周面から内方向へ延びてテール・パイプの凹み部分に係合する係合片と、
から構成した、
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
係合部分は、テール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーの排気上流側に設けた、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
テール・パイプ・フィニッシャーとテール・パイプとの間に、これらの軸方向および回転方向変位を規制する嵌合部を設けた、
ことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
所定以上の荷重がテール・パイプ・フィニッシャーにこの軸方向に作用したとき、変形あるいは破損してテール・パイプ・フィニッシャー側の係合部分からテール・パイプ側の係合部分に伝わる力を低減可能な脆弱部をテール・パイプ・フィニッシャー側に設けた、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、テール・パイプ・フィニッシャーが車止めを越えた位置で駐車または停車し、荷物を積み込んだり人員が乗車したりして車体後部が下がり、この状態で前進してテール・パイプ・フィニッシャーの排気上流側端部が車止めに当たって後方へ引っ張られても、テール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーとの係合部分が係合してこれらの圧接部分より強い抜け抵抗力を発揮するので、テール・パイプ・フィニッシャーがテール・パイプから抜け落ちるのを防止することができる。
【0014】
本発明の請求項2によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、圧接部分を、テール・パイプ・フィニッシャーの内周面の周方向に互いに離れた位置に形成するとともに、係合部分を圧接部分間に配置したので、テール・パイプ・フィニッシャーとテール・パイプとをこれらの全周方向に沿って隔たった位置でバランスよく圧接、係合させることができ、安定した結合が可能となる。
【0015】
本発明の請求項3によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、係合部分を、テール・パイプの外周面に形成した凹み部分と、テール・パイプ・フィニッシャーの内周面から内方向へ延びてテール・パイプの凹み部分に係合する係合片と、から構成したので、簡単な構成でテール・パイプ・フィニッシャーとテール・パイプとの結合を確実に行うことができる。
【0016】
本発明の請求項4によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、係合部分を、テール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーの排気上流側に設けたので、テール・パイプ・フィニッシャーが車止めに当たっても、係合部分がこれらの当接部分近くに形成されている結果、排気下流側に比べている場合に比べ、テール・パイプ・フィニッシャーのテール・パイプに対するトルクを小さく抑えることができ、テール・パイプ・フィニッシャーの抜け防止をより確実に行うことができる。
【0017】
本発明の請求項5によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、テール・パイプ・フィニッシャーとテール・パイプとの間に、これらの軸方向および回転方向変位を規制する嵌合部を設けたので、係合部分の係合力不足時にあっても、テール・パイプ・フィニッシャーがテール・パイプに対する正規位置から軸方向あるいは回転方向にずれて見栄えが悪くなるのを防ぐことが可能となる。
【0018】
本発明の請求項6によるテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、所定以上の荷重がテール・パイプ・フィニッシャーにこの軸方向に作用したとき、変形あるいは破損してテール・パイプ・フィニッシャー側の係合部分からテール・パイプ側の係合部分に伝わる力を低減可能な脆弱部をテール・パイプ・フィニッシャー側に設けたので、車両を動かした時などにテール・パイプより外周が大きいテール・パイプ・フィニッシャーが外部の固定物などに当たってテール・パイプ・フィニッシャーをテール・パイプから車両後方側へ引き抜くような所定以上に荷重が生じた場合であっても、脆弱部が変形あるいは破損することでテール・パイプ・フィニッシャー側の係合部分からテール・パイプ側の係合部分に伝わる力を低減する結果、テール・パイプ・フィニッシャーがテール・パイプに対してずれたりテール・パイプから外れたりし、テール・パイプやこれに接続された部品まで損傷するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造を備えた自動車の後方部分の側面図である。
【図2】実施例1のテール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーとの拡大断面側面図である。
【図3】実施例1のテール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーとの拡大横断面図である。
【図4】実施例1のテール・パイプとテール・パイプ・フィニッシャーとの係合部の部分を示す拡大断面側面図である。
【図5】本発明の実施例2のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造のテール・パイプ・フィニッシャーの横断面図である。
【図6】図5のテール・パイプ・フィニッシャーの一部拡大横断面図である。
【図7】本発明の実施例3のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造のテール・パイプ・フィニッシャーの側面図である。
【図8】図7のテール・パイプ・フィニッシャーの横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。なお、以下の実施例にあって実質的に同じ部分については、同じ番号を付し、それらの説明を省略する。
【実施例1】
【0021】
まず、実施例1のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造の全体構成を説明する。
この実施例1のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造は、図1に示すように、自動車1の後部車体1aの下方に設けられる。
【0022】
すなわち、自動車1の前方に積載されたガソリン・エンジンやディーゼル・エンジン等の図示しない内燃機関から排出された排気を車両外部へ排出する排気系が設けられている。排気系は、図示しない触媒コンバータや図示しないマフラーや排気パイプを介して車両後部側のテール・パイプ2まで車両前方から後方へと設置されている。
【0023】
テール・パイプ2には、テール・パイプ・フィニッシャー3が取り付けられている。なお、図1では、自動車1は、地面やコンクリートなどの路面G上に設けられた車止めBに後輪Tが当たった状態で駐車している。車止めBは、それ以上自動車1が進めないようにするためのもので、ブロック状に適当な位置で上方へ突出している。
【0024】
次に、上記テール・パイプ2とテール・パイプ・フィニッシャー3の構造につき、説明する。
図2に示すように、テール・パイプ2は、排気上流側の小径パイプ2aと、この小径パイプ2aの後端に溶接により接続されて下流側に向けて拡径した拡径部2bと、この拡径部2bに連続しての後端から下流側へ同径で延びる大径部2cと、を有する。
小径パイプ2aは円形断面としており、拡径部2bおよび大径部2cは、図3に示すように、横長の楕円断面に形成されている。
【0025】
テール・パイプ2の大径部2cの外周面の一部分は、周方向の4箇所で、後述するようにテール・パイプ・フィニッシャー3の圧接部分30が圧接される被圧接部分20を構成する。
【0026】
図2〜4に示すように、テール・パイプ2の拡径部2bの後端側から大径部2c前端側の間には、この周方向で90度の等間隔離れた位置、すなわち、0度、90度、180度、270度の上下左右位置に内側へ凹まされた凹み部分21が合計4個形成されている。
この凹み部分21は、フラットな底部21aを有し、後端側の壁21bがほぼ垂直(半径方向外側)に立ち上がるような形状とされている。なお、これらの凹み部分21は、本発明の係合部分の一部を構成する。
【0027】
一方、テール・パイプ・フィニッシャー3は、図2および図3に示すように、テール・パイプ2の大径部2cの外径より大きな径の、同じく横長の楕円断面に形成されている。
【0028】
テール・パイプ・フィニッシャー3の内周面には、周方向で90度の等間隔離れた位置、すなわち、45度、135度、225度、315度の位置に、テール・パイプ2の大径部2cの外周面に向かって伸ばされた圧接部分30が合計4個形成されている。これらの圧接部分30は、テール・パイプ2の大径部2bの軸方向長さより若干短くされ断面がU字状をしている。圧接部分30の内側最先端は、テール・パイプ2の大径部2cの外周面よりわずかに内側に位置する高さに設定され、テール・パイプ・フィニッシャー3をテール・パイプ2に圧入する際、大径部2cの4箇所の外周面の被圧接部分20にそれぞれ当接してわずかに変形し、これら間の圧接力でテール・パイプ2とテール・パイプ・フィニッシャー3を、これらが走行中の振動等を受けても、外れたり移動したりすることのない大きさで固定する。
【0029】
また、テール・パイプ・フィニッシャー3の内周面には、図2〜4に示すように、テール・パイプ2の4つの凹み部分21に対向する位置でこれらの凹み部分21にそれぞれ向かって内側後方へ延ばされた4個の係合片31が設けられる。
係合片31は、図4に示すように、これらの内側先端が凹み部分の底部21aより内側になる長さに設定されているので、これらが係合された状態では、係合片3が凹み部分21の底部21aに圧接されることになる。
また、係合片31の先端は、テール・パイプ2の凹み部分21の垂直な壁21bに対面する位置にあるので、テール・パイプ・フィニッシャー3がテール・パイプ2に対しこれらの軸方向後方へ移動しようとすると、係合片31の先端と凹み部分21の壁21bとが係合する結果、大きな力でこれらの離脱を阻止することになる
【0030】
なお、テール・パイプ・フィニッシャー3の後端面は、テール・パイプ2の後端面よりもさらに後ろ側に延ばされるとともに、上方に向かうにしたがってさらに後ろ側に延びるように斜めにカットされている。
【0031】
上記のように構成されたテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造につき、説明する。
【0032】
実施例1のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、通常の使用時にあっては、テール・パイプ・フィニッシャー3がテール・パイプ2の後端側部分全体を覆っているので、それらの見栄えを向上する。また、テール・パイプ・フィニッシャー3によっては、排気音の調整や合成樹脂製のリア・バンパの熱損傷の防止等を行うようにすることも可能である。
【0033】
また、通常の走行時等にあっては、テール・パイプ・フィニッシャー3の4個の圧接部分30がテール・パイプ2の大径部2cの外周面の被圧接部分20にこの周方向4箇所から圧接・圧入しているので、テール・パイプ・フィニッシャー3がテール・パイプ2から外れたり、これら間でびびって騒音を発生したりするようなことはない。
【0034】
一方、図1に示すように、自動車1が駐車場などで所定駐車位置へ後退でバックし、駐車する場合、後輪Tが車止めBに当たるまで、あるいは近接するまで自動車1をバックさせて駐車することが多い。この場合、テール・パイプ・フィニッシャー3が車止めBより後方に位置することになる。
【0035】
この状態で、買い物などをして荷物を車内に積み込んだり多くの乗員が乗り込んだりすると、これらの重量で自動車1の車体は沈み込み、テール・パイプ・フィニッシャー3の下端側が車止めBの上面より下方位置に来てしまうことがある。
このような状態に気づかず、ドライバーが自動車1を前進させると、テール・パイプ・フィニッシャー3の前方側下端部が車止めBの背面に当たり、テール・パイプ・フィニッシャー3をテール・パイプ2からこれらの軸方向後方へ引き抜こうとする。この引き抜き力は、上記圧入力より大きい。
【0036】
しかしながら、テール・パイプ・フィニッシャー3の係合片31がテール・パイプ2の凹み部分21の垂直な壁21bに当接する結果、上記圧入力より遙かに大きな力で上記引き抜き力に対抗する。したがって、テール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2からの抜け落ちは防止されることになる。テール・パイプ2は、後部車体1aに懸架されているので、テール・パイプ・フィニッシャー3は車止めBの上方に逃げ、これらの当接が解除される。
【0037】
なお、この場合、係止片31と凹み部分21の垂直な壁21bとの係合箇所は、テール・パイプ・フィニッシャー3とテール・パイプ2の周囲4箇所にあって、かつテール・パイプ・フィニッシャー3の前方下部と車止めBとが当接する位置の近くに設定されているので、テール・パイプ・フィニッシャー3をテール・パイプ2の周りに回そうとするトルクは小さくなり、より小さな係合片31と凹み部分21とでより確実に抜け落ち防止を行うことができる。
【0038】
次に、実施例1のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造の効果を説明する。
【0039】
実施例1のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、テール・パイプ・フィニッシャー3とテール・パイプ2との間に係合部分(係合片31と凹み部分21)とを設け、これらの軸方向後ろ側への抜け抵抗力が、テール・パイプ・フィニッシャー3とテール・パイプ2との圧接部分20での抜け抵抗力より大きくなるようにしたので、駐車時などに荷物の搬入や乗員の乗車などにより後部車体側が下がった状態で自動車1を前進させるとき、テール・パイプ・フィニッシャー3が車止めBに当たってテール・パイプ2から抜け落ちるのを防止することができる。
【0040】
また、圧接部分30をテール・パイプ・フィニッシャー3の内周面の周方向に互いに離れた位置に形成するとともに、係合部分31、21を圧接部分30間に配置したので、テール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2への保持や抜け落ち防止を安定して行うことができる。
【0041】
また、係合部分は、テール・パイプ2の外周面に形成した凹み部分21と、テール・パイプ・フィニッシャー3の内周面から内方向へ延びてテール・パイプ2の凹み部分21に係合する係合片13とから構成したので、簡単かつ安価な構成で、テール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2からの抜け落ちを防止することができる。
【0042】
また、係合部分31、21は、テール・パイプ2とテール・パイプ・フィニッシャー3の車両前方側(排気上流側)に設けたので、車止めBとテール・パイプ・フィニッシャー3との衝突により発生するテール・パイプ・フィニッシャー3の係合部分31、21へのトルクを小さく抑えることが可能となる。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明の実施例2に係るテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造について、図5およびこの一部拡大図である図6に基づいて説明する。
実施例2にあっては、同図に示すように、テール・パイプ・フィニッシャー3の圧接部分30の内周側先端部に嵌合孔30aを形成する一方、テール・パイプ2の被圧接部分20の中央部分を半径方向外側へ突出させてエンボス20aを形成する。
嵌合孔30aとエンボス20aは、テール・パイプ2の軸方向に延びた長方形状をしており、テール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2への装着時に嵌合孔30aとエンボス20aとが上記軸方向、軸周りの回転方向に嵌合し、テール・パイプ・フィニッシャー3とテール・パイプ2との位置をこれらの軸方向および回転方向に規制して正規位置に保持するように構成してある。
なお、嵌合孔30aとエンボス20aは、本発明の嵌合部に相当する。
その他の構成は、実施例1と同様である。
【0044】
ここで、実施例1のテール・パイプ・フィニッシャー3の抜け落ち防止構造にあっては、テール・パイプ・フィニッシャー3の係合片31の両側壁31aとテール・パイプ2の凹み部分21の両側壁21dとの間に製造誤差を吸収するためなどから隙間を設けてあるため、係合片31と凹み部分21との係合力が弱い場合には、わずかな外力が作用しても、テール・パイプ・フィニッシャー3がテール・パイプ2に対し回転方向に回転する場合があり得る。
また、同様に、テール・パイプ・フィニッシャー3の係合片31は、図2から分かるように、係合片31と凹み部分21との係合力が弱い場合には、わずかな外力が作用しても、テール・パイプ・フィニッシャー3がテール・パイプ2に対し軸方向にずれる場合があり得る。
【0045】
これに対し、実施例2のテール・パイプ・フィニッシャー3の抜け落ち防止構造では、テール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2への装着時に嵌合孔30aとエンボス20aとが上記軸方向、軸周りの回転方向に嵌合してテール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2に対する位置決めと保持を確実に行うので、通常の力ではテール・パイプ・フィニッシャー3とテール・パイプ2との位置が軸方向および回転方向へずれることはなく、正規位置に保たれる。
【0046】
したがって、実施例2のテール・パイプ・フィニッシャー3の抜け落ち防止構造にあっては、実施例1の効果に加え、テール・パイプ・フィニッシャー3のテール・パイプ2に対する位置決め・保持が確実になされ、係合片31と凹み部分21との係合力が弱い場合でも、正規位置に保つことができるといった効果がある。
【実施例3】
【0047】
次に、本発明の実施例3に係るテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造について、図7および図8に基づいて説明する。なお、図7にあっては、見やすくするため、凹み部分21は図示を省略してある。
【0048】
実施例3のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造にあっては、テール・パイプ・フィニッシャー3の係合片31の根元部分、すなわちテール・パイプ・フィニッシャー3の円筒状部分に連続し内周側へ折り曲げられる箇所の部分に、係合片31の幅方向両端側に切り欠き部分32が形成される。すなわち、切り欠き部分32は、係合片31の幅方向両側端からその中央部分に向けてその途中までそれぞれ切り込みが入れられてその中央部分側が切り込み幅より大きい円形の孔とされている。
なお、切り欠き部分32は、本発明の脆弱部に相当する。
【0049】
この切り欠き部分32は、通常の弱い外力では、両切り欠き部分32の間の部分が変形したり破損したりしないが、車両を動かした時などにテール・パイプより外周が大きいテール・パイプ・フィニッシャーが外部の固定物などに当たってテール・パイプ・フィニッシャーをテール・パイプから車両後方へ引き抜くような所定以上に荷重が生じた場合には、その間部分が変形あるいは破損してテール・パイプ・フィニッシャーからテール・パイプに大きな力が作用しないように、その間部分の寸法を設定してある。
【0050】
したがって、実施例3のテール・パイプ・フィニッシャー3の抜け落ち防止構造にあっては、実施例1の効果に加え、テール・パイプ・フィニッシャー3に所定以上の軸方向外力が作用した場合であっても、係合片31の切り欠き部分32近辺の部分が変形あるいは破損して、その外力がテール・パイプ2に伝わる力を低減するので、テール・パイプ2およびこれに取り付けた他部品等が変形・破損するのを防止することができるといった効果がある。
【0051】
以上、本発明を上記各実施例に基づき説明してきたが、本発明はこれらの実施例に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更等があった場合でも、本発明に含まれる。
【0052】
たとえば、圧接部分30、被圧接部分20、係合部分31、21の個数、形状、形成位置等は、使用条件等に応じて適宜変更することが可能である。
また、テール・パイプ2の凹み部分21を軸方向に長く伸ばし、テール・パイプ・フィニッシャー3の係合片31の先端側部分を凹み部分21の壁21bに係合可能とした状態で、この先端部分をさらに後方へ延ばしてテール・パイプ2の外周に圧接させるようにして、圧接部分と係合部分とを一体に形成するようにしてもよい。
【0053】
さらに、テール・パイプ・フィニッシャー3の下方前方端を車両前方に向かうにしたがって上方へ向いてテール・パイプ2の前方側他端面に近づいていく傾斜部を設けてもよい。このようにすれば、自動車1が前進するとき、車止めBにまず傾斜部が当たり、テール・パイプ2とテール・パイプ・フィニッシャー3を上方へ持ち上げようとする力が発生するので、テール・パイプ・フィニッシャー3と車止めBとのひっかかりを抑止することが可能となる。
【0054】
嵌合部の形状、数、位置は、実施例のものに限られず、適宜設定することができる。
また、脆弱部の形状、数、位置は、実施例のものに限られず、適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0055】
B 車止め
G 路面
T 後輪
1 自動車
1a 後部車体
2 テール・パイプ
2a 小径パイプ
2b 拡径部
2c 大径部
20 被圧接部分
20a エンボス(嵌合部)
21 凹み部分(係合部分)
21a 底部
21b 壁部
3 テール・パイプ・フィニッシャー3
30 圧接部分
30a 嵌合孔(嵌合部)
31 係合片(係合部分)
32 切り欠き部(脆弱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テール・パイプと、
該テール・パイプの外径より大きな内径を有し、内周面からテール・パイプの外周面に圧接するように延びる複数の圧接部分が形成されたテール・パイプ・フィニッシャーと、
を備えたテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
前記テール・パイプと前記テール・パイプ・フィニッシャーとに、前記テール・パイプ・フィニッシャーの内周面側と前記テール・パイプの外周面側との間で互いに係合する係合部分を設け、
前記テール・パイプ・フィニッシャーの前記テール・パイプからのこれらの軸方向排気下流側への抜け抵抗力を、前記係合部分における抜け抵抗力が前記圧接部分による抜け抵抗力より大きくなるように設定した、
ことを特徴とするテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造。
【請求項2】
請求項1に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
前記圧接部分を、前記テール・パイプ・フィニッシャーの内周面の周方向に互いに離れた位置に形成するとともに、
前記係合部分を前記圧接部分間に配置した、
ことを特徴とするテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
前記係合部分は、前記テール・パイプの外周面に形成した凹み部分と、
前記テール・パイプ・フィニッシャーの内周面から内方向へ延びて前記テール・パイプの凹み部分に係合する係合片と、
から構成した、
ことを特徴とするテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
前記係合部分は、前記テール・パイプと前記テール・パイプ・フィニッシャーの排気上流側に設けた、
ことを特徴とするテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
前記テール・パイプ・フィニッシャーと前記テール・パイプとの間に、これらの軸方向および回転方向変位を規制する嵌合部を設けた、
ことを特徴とするテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造において、
所定以上の荷重が前記テール・パイプ・フィニッシャーにこの軸方向に作用したとき、変形あるいは破損して該テール・パイプ・フィニッシャー側の前記係合部分から前記テール・パイプ側の前記係合部分に伝わる力を低減可能な脆弱部を前記テール・パイプ・フィニッシャー側に設けた、
ことを特徴とするテール・パイプ・フィニッシャーの抜け落ち防止構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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