説明

デジタルカメラ

【課題】パララックス補正のために、特別の部材を必要とすることなく小型に構成することができ、電力の消費を少なくすることができるデジタルカメラを提供する。
【解決手段】撮影レンズ2aと撮像素子4とを含む撮像手段4と、前記撮影レンズ2aに対してパララックスを有する光学ファインダ21、22と、主被写体までの距離を測定する測距手段30、47、437とを備えるデジタルカメラにおいて、測距手段30、47、437により測定された距離情報及び撮影レンズ2aの焦点距離の情報に基づいてパララックス補正量を決定し、パララックス補正量に基づいて前記撮像素子4cの読出し領域402,403を変更することによってパララックスを補正する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学ファインダと撮影光学系との間のパララックスを補正するデジタルカメラに関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタルカメラでは、撮影動作時の構図確認において、撮影レンズ系により結像された被写体像を撮像素子により光電変換し、カメラ本体に設けられているディスプレイに表示させるライブビュー表示を用いることにより行うことが多い。
【0003】
一方、ディスプレイ表示は、電力を消費するため、省電力のためにライブビュー表示を行うことなく光学ファインダにより構図確認を行う場合もある。この場合には、撮影レンズ系とファインダ系とが独立して設けられている場合は、撮影レンズの光軸とファインダの光軸とが離れていることからパララックス(視差)が生じる。そして、このパララックスの量は、被写体距離や撮影光学系の焦点距離によって変化する。
【0004】
図7を参照してパララックスが発生する原理について説明する。撮影レンズ系2とファインダ21,22との距離がdだけ離れている場合は、その光軸L1、L2はずれることとなる。そして、線201xと202xとの間の範囲が撮影レンズ系2の画角となり、線210xと211xとの間の範囲が光学ファインダ21,22の画角となる。この場合に、被写体距離lだけ離れている場合は、撮影レンズ系2の撮影範囲は、S1に示す範囲となり、光学ファインダにより確認される範囲は、S2となり、両者にずれが生じることとなる。そして、図から明かなように、このずれは、被写体距離が近づくほど大きくなる。
【0005】
このパララックスを補正するための技術については、種々提案されている。例えば、特開2002−365699号公報(特許文献1)などに例示されるように、撮影距離や焦点距離に応じてファインダ内表示を変化させるようにしたものがある。また、特開平9−230440号公報(特許文献2)では、ファインダに入射する光線を屈折させて、撮影レンズの光軸とのずれをなくすようにしたものがある。
【0006】
また、特開平11−275427号公報(特許文献3)では、電子的撮像手段と銀塩撮像手段を有し、銀塩撮像手段において撮像する場合でも電子的撮像手段においてパララックスを補正するようにした技術が開示されている。この技術は、銀塩撮像手段により得られる光画像と、銀塩撮像手段とは独立して設けられた電子的撮像手段により得られる光画像との間にずれが生じた場合、両者が一致するように電子的撮像手段により得られた光画像のビューファインダの範囲をずらして表示することによりパララックス補正を行うものである。
【0007】
さらに、光学ファインダを用いるためにライブビュー表示を行わないように設定されている場合であっても、マクロ撮影時にはライブビュー表示によって構図確認を行うために、ディスプレイを表示させるように制御されたデジタルカメラが提案されている。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−365699号公報
【特許文献2】
特開平9−230440号公報
【特許文献3】
特開平11−275427号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1に開示のファインダ内にパララックス補正枠を設け被写体距離に応じてその表示を変化させるようにする技術は、撮像手段を基準として、ファインダの視野枠をファインダのパララックスを減殺する位置に移動させ、補正枠として表示することによって構図を確認するため、パララックスが大きい場合は補正枠が、ファインダの全体枠の端のほうに位置する場合もあり、撮影者に違和感を覚えさせる場合がある。また、パララックスが大きい場合に完全に補正しきれない場合があり、例えば、近接撮影までは対応できないという問題もあった。また、特許文献2に開示の技術においては、ファインダに入射する光線を屈折させてパララックスを補正するためには、屈折のためのプリズムなどを移動させるための部材を必要とし、カメラの大型化を招くという問題があった。
【0010】
また、特許文献3に開示の技術では、パララックス補正のために、電子的撮像手段により得られた電子画像をディスプレイにどのように表示するかによってパララックス補正を行うものであり、ディスプレイの表示を伴うため、電力消費が大きく省電力の問題を依然として解決することができない。また、マクロ撮影時においてのみディスプレイの表示を行うように制御されたデジタルカメラにおいても同様に消費電力の問題がある。特に、カメラを小型化するほどバッテリ容量も小さくなるという傾向があるため、消費電力の問題は顕在化することとなる。
【0011】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、パララックス補正のために、特別の部材を必要とすることなく小型に構成することができ、電力の消費を少なくすることができるデジタルカメラを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成のデジタルカメラを提供する。
【0013】
本発明の第1態様によれば、撮影レンズと撮像素子とを含む撮像手段と、前記撮影レンズに対してパララックスを有する光学ファインダと、主被写体までの距離を測定する測距手段と、前記光学ファインダと撮像手段とのパララックスとを補正するパララックス補正手段とを備えたデジタルカメラであって、前記パララックス補正手段は、前記測距手段により測定された距離情報に基づいてパララックス補正量を決定する補正量演算手段と、前記補正量演算手段により決定されたパララックス補正量に基づいて前記撮像素子の読出し領域を変更する読出し領域変更手段とを備えるデジタルカメラを提供する。
【0014】
上記構成において、パララックス補正手段は、光学ファインダを基準として撮像手段のパララックスを補正するものである。パララックス補正手段は、光学ファインダを基準として、被写体との距離などの情報に基づいて撮像手段のパララックスの程度を導き、これを補正することができる補正量を決定する。読出し領域変更手段は、撮像素子の有効画素からの切り出し領域を変更したり、画像メモリの記録用切り出し部位を変更するなどの制御処理を行うことにより、読出し領域を変更してパララックスを補正する。
【0015】
本発明の第2態様によれば、撮影レンズと撮像素子とを含む撮像手段と、前記撮影レンズに対してパララックスを有する光学ファインダと、主被写体までの距離を測定する測距手段と、手振れを吸収するように光軸に対して垂直な平面上で前記撮像素子を基準位置から移動させて手振れ補正を行う手振れ補正手段と、前記光学ファインダと撮像手段とのパララックスとを補正するパララックス補正手段とを備えたデジタルカメラであって、前記パララックス補正手段は、前記測距手段により測定された距離情報に基づいてパララックス補正量を決定する補正量演算手段と、前記補正量演算手段により決定されたパララックス補正量に基づいて前記手振れ補正手段により撮像素子の基準位置を変化させる撮像素子位置変更手段とを備えるデジタルカメラを提供する。
【0016】
上記構成において、手振れ補正手段は、カメラのブレが生じたときに、そのブレを打ち消すように撮像素子の位置を変更することにより、手振れ補正を行うための手段であり、主に、光軸に対して垂直な平面上で撮像素子を駆動させるための手段を備える。すなわち、この手振れ補正手段は、通常時に撮像素子が配置されている基準位置に対してブレに応じて撮像素子の位置を変更して、ブレを減殺するものである。上記構成においては、パララックス補正手段は、被写体との距離の情報などから導かれたパララックスを減殺する方向に撮像素子の基準位置を移動してパララックスを補正する。
【0017】
本発明の第3態様によれば、前記撮影レンズは、焦点距離を調整可能なズームレンズで構成されており、前記補正量演算手段は、前記撮影レンズの焦点距離に基づいてパララックス補正量を決定するデジタルカメラを提供する。
【0018】
上記構成において、パララックスは、被写体距離のほか、撮影レンズの焦点距離によっても変動するものであるため、焦点距離が変動するズームレンズを用いた場合は、その焦点距離の情報を用いることによりパララックス補正量を演算する。
【0019】
本発明の第4態様によれば、前記光学ファインダーに、パララックス補正枠を表示するパララックス表示手段を有し、前記パララックス補正手段は、前記ファインダのパララックス補正枠の表示によりパララックス補正を修正しきれない場合に作動するデジタルカメラを提供する。
【0020】
上記構成において、上記各態様に基づくパララックス補正手段は、従来からの光学ファインダの表示を変更することによる補正とは無関係であるため、両者を併用することができる。したがって、例えば、ファインダのパララックス補正枠を表示することによりパララックス補正を行うと共に、これによって補正しきれないような場合は、読出し位置を変更する補正を行うようにしてもよい。
【0021】
本発明の第5態様によれば、さらに、前記パララックス補正量と撮影状況に応じてシェーディング補正を行うシェーディング補正手段を有するデジタルカメラを提供する。
【0022】
上記パララックス補正手段によりパララックス補正を行った場合は、レンズの光軸の中心位置が撮像素子の中心位置からずれることとなり、撮影レンズに固有の周辺光量落ちが原因となって画像の中心部から画像周縁部に向かうに従って同心円状に光量(輝度レベル)が低下するという現象が生じることがある。このとき、上記補正を行うと、画像中心と輝度レベル中心にずれが生じるため、不自然な絵となる。この現象を低減するため、画像の輝度レベルの低下と輝度レベル中心のずれを補正するためのシェーディング補正を行うことにより、この問題を解消することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係るデジタルカメラについて、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの外観構成図である。デジタルカメラは、箱型のボディ3の前面4に繰り出し型の撮影レンズ鏡胴2を備えるタイプのデジタルカメラである。デジタルカメラ1は、全面4にフラッシュ発光部10、AFセンサ受光窓30a、光学ファインダの対物側窓21とが設けられている。
【0025】
AFセンサは、その受光窓30aから受光した被写体反射光に基づいて被写体との距離を測定するために用いられる。被写体距離の演算は、後述するように、カメラに内蔵されているカメラ制御CPUが行う。
【0026】
光学ファインダは、その対物側窓21を通して被写体光を受光し、撮影時の構図を確認するために用いられるものである。図1(a)に示すように、光学ファインダはその対物側窓21が、撮影レンズ鏡胴2とは異なる位置に設けられているため、両者の光軸は一致することがなく、パララックスを有することとなる。
【0027】
カメラ1の上面5には、レリーズボタン11、撮影モード切替スイッチ12、手振れ補正スイッチ13、モニタ拡大スイッチ14、表示パネル17が設けられている。
【0028】
レリーズボタン11は、シャッターのレリーズ動作を開始するためのスイッチであり、半押しと全押しとの2段階にわたって押下するように構成されている。撮影モード切替スイッチは、2極スイッチで構成され、撮影を行う撮影モードと撮影された画像を再生する再生モードとを切りかえるものである。手振れ補正スイッチ13は、手振れ補正モードのオン/オフの切り替えを行うためのモードである。後述するように、このデジタルカメラ1には、CCDスイング方式の手振れ補正機能が搭載されており、手振れ補正スイッチ13を操作することにより、手振れ補正機能を動作させるか否かを切り替えることができる。モニタ拡大スイッチ14は、再生モードにおいて、液晶ディスプレイ18(図1(d)参照)に再生表示される写真画像を拡大表示させるためのスイッチである。表示パネル17は、撮影モードなどの撮影に関する情報を表示するための液晶パネルである。
【0029】
カメラ1の左側面7には、電源用端子19が設けられており、この端子19に電源プラグから電力を供給することにより、図示しない内蔵電池の充電及びカメラの駆動電源として用いられる。
【0030】
カメラ1の背面8には、光学ファインダの接眼側窓22、液晶ディスプレイ18、液晶ディスプレイオン/オフ切り替えスイッチ16、操作キー15などが配設されている。
【0031】
光学ファインダの接眼側窓22は、カメラの全面に設けられている対物側窓21から入射した被写体光が到達し、カメラの使用者が接眼側窓を覗くことにより、撮影画角の確認をすることができる。液晶ディスプレイは、撮影モード時においては、撮影レンズ鏡胴に入射した被写体光をCCDにより光電変換して得られた写真画像をリアルタイムで表示するライブビュー表示がなされると共に、再生モード時においては、撮影された写真画像を再生表示する。液晶ディスプレイのライブビュー表示により、撮影レンズにより撮影される写真画像を確認することができる。
【0032】
操作キー15は、再生モード時においては、再生される写真画像の送り、戻しなどを行い、撮影モード時においては、露出の調整や撮影レンズ鏡胴のズーム調整などを行う。また、各種設定変更に用いられ、例えば、撮影時における写真画像の画像サイズの変更などを行う。液晶ディスプレイオン/オフ切り替えスイッチ16は、撮影モード時において、液晶ディスプレイの表示をするかどうかを切りかえるためのスイッチである。
【0033】
液晶ディスプレイの表示の有無によって、撮影時において画角の確認の作業が異なることとなる。すなわち、液晶ディスプレイの表示を行う場合は、ライブビューを確認することで撮影画角の確認を行うことができ、一方、液晶ディスプレイの表示を行わない場合は、光学ファインダを用いて撮影画核の確認を行うことができる。上述のように、撮影レンズ鏡胴と光学ファインダとの間には、パララックスが発生しているため、本実施形態にかかるデジタルカメラは、後述するような方法により、これを補正することとしている。
【0034】
図2は、図1のデジタルカメラの内部構成を示すブロック図である。なお図2において太い矢印は画像信号の流れを示し、細い矢印は、制御信号またはクロック信号の流れを示す。
【0035】
図2に示されるように、カメラ1の内部には、クロック信号を発生するためのクロック発生回路(図示なし)からのクロック信号を受けて動作するタイミングジェネレータセンサードライブ46が設けられている。
【0036】
タイミングジェネレータセンサードライブ46は、CCD4cの駆動を制御するための各種のタイミングパルスを生成する。タイミングジェネレータセンサードライブ46は、例えば、積分開始/終了(露光開始/終了)のタイミング信号、各画素の受光信号の読出制御信号(水平同期信号、垂直同期信号、転送信号など)などのクロック信号を生成し、CCD4cに出力する。また、A/DクロックをA/D変換回路42に送信するとともに、水平・垂直同期信号(HD,VD)などの画像を取り込むタイミングを取るのに必要な信号を画像処理CPU43へも送信する。
【0037】
カメラ操作スイッチ48は、カメラのボディ3に設けられた種々のスイッチ類などであり、具体的には、レリーズボタン11、モード切替スイッチ12、手振れ補正スイッチ13、操作キー15、液晶ディスプレイオン/オフ切り替えスイッチ16などが該当する。カメラ操作スイッチ48の操作により、画像サイズの変更すなわち、記録する有効画素数の変更が行われた場合やレリーズモードの選択が行われた場合は、カメラ制御CPU47により設定が変更される。
【0038】
撮影レンズ鏡胴2に用いられている撮影レンズは、ズームレンズであり、カメラ操作スイッチ48の操作によって図示しないズームモータが駆動することによりズーム駆動を行う。
【0039】
露出制御は、カメラ制御CPU47からの制御信号により、絞りドライバを駆動させることにより行われる。また、露出制御は、CCD4cの露光量、すなわち、シャッタースピードに相当するCCD4cの電荷蓄積時間を調節しても行うことができる。被写体輝度が低輝度時に適切なシャッタースピードが設定できない場合は、CCD4cから出力される画素信号のレベル調整を行うことにより露光不足による不適正露出が補正される。すなわち、低輝度時は、シャッタースピードとゲイン調整とを組み合わせて露光制御が行われる。画素信号のレベル調整は、AGC回路41のゲイン調整において行われる。
【0040】
カメラ1には、カメラのブレを2方向に検出するジャイロ50が設けられている。ジャイロ50によって2方向のブレを検出した場合は、手振れ駆動制御回路49からの制御を受けて、当該ブレを打ち消す方向に撮像素子ユニットが移動する。
【0041】
フォーカスモータドライバ44は、フォーカスモータ(図示なし)を制御するためドライバであり、AFセンサ30または、撮影レンズ鏡胴2の撮像素子ユニット4からのビデオAFにより検知された情報に基づいて演算をされる被写体の距離に応じて、被写体光が撮像面上で合焦するようにフォーカスレンズを駆動させる。オートフォーカスに関する制御は、後述するように、カメラ制御CPU47及び画像処理CPU43からの制御信号により行われる。
【0042】
ズームモータ及びフォーカスモータ(図示なし)は、ステッピングモータで構成され、カメラ制御CPU47が発生した駆動パルスによりオートフォーカスモータドライバ44を通じて制御される。
【0043】
CCDユニット4は、図6に示すように、CCDスイング方式による手振れ補正機能のためのXYテーブル4a,4b上に設けられたCCD4cを備える。CCD4cは、R(赤)、G(緑)、B(青)の原色透過フィルタがピクセル単位に貼られたエリア撮像センサであり、インターラインプログレッシブタイプのものが用いられている。撮影レンズにより結像された被写体の光像は、R(赤)、G(緑)、B(青)の色成分の画像信号(各画素で受光された画素信号の信号列からなる信号)に光電変換して出力される。CCD4cは、記録可能画素総数と記録画素数との間に差を有しており、また、撮像面の周辺部には記録しない画素が存在する。CCD4cは、カメラ制御CPU47からの制御により、取込み可能な有効画素数を変更したり、画像信号を垂直方向に間引いて出力する。
【0044】
CCDユニット4から出力される画像信号(アナログ信号)は、CDS(相関二重サンプリング)回路40及びAGC(オートゲインコントロール)回路41によって、所定の信号処理が施される。CDS回路40は、画像信号のノイズの低減を行い、AGC回路41は、そのゲインを調整することにより画像信号の感度レベルの補正を行う。
【0045】
A/D変換回路42は、AGC回路41で増幅されたアナログ信号を、12ビットのデジタル信号に変換するものである。A/D変換回路42は、タイミングジェネレータセンサードライブ46から入力されるA/D変換用のクロックに基づいて、各画素信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。デジタル化された画像信号は、画像処理CPU43に送られる。
【0046】
画像処理CPU43には、画像処理を実行する回路が内蔵されており、A/D変換回路42でA/D変換された画像信号について、以下に示す処理を行う。
【0047】
シェーディング補正回路431は、一般にCCD4cで得られた画像の輝度むらを補正するための処理を行うものである。デジタルカメラ1では撮影レンズの周辺光量落ちのために、均一輝度の被写体を撮影した場合であってもCCD4cから得られる画素値は同心円状に出力レベルが低下していく。このレベル低下をシェーディング補正機能によって補正する。撮影レンズによる周辺光量落ちはレンズ固有の特性であるので、事前に使用する撮影レンズに応じて補正テーブルを準備しておき、CCD4cから得られる画像データに対し、その補正テーブルを参照して補正すればよい。
【0048】
なお、シェーディング補正回路431は、このような撮影レンズによる周辺光量落ちを補正するだけでなく、CCD4cの画素ごとの輝度レベルむら等のようなその他の要因による輝度むらも補正するように補正テーブルを準備しておくことが好ましい。また、後述するように、パララックス補正を行うことにより、光軸中心の位置が変わるため、これにより変化するシェーディングを補正する。
【0049】
画像信号は、画素補間回路432によって、RGB各画素をそれぞれのフィルターパターンでマスキングした後、高帯域まで画素を持つGについては、メディアン(中間値)フィルタで周辺4画素の中間2値の平均値に置換する。R、Bに関しては、平均補間を行う。
【0050】
画素補間を行った画像信号は、解像度変換回路433によって水平垂直の縮小、又は間引きが行われ、設定された記録画素数へ解像度変換が行われる。また、液晶ディスプレイ18に表示する場合にも解像度変換回路433によって水平画素の間引きを行い、液晶ディスプレイモニタ用の低解像度画像を作成する。
【0051】
解像度変換された画像信号は、カラーバランス制御回路434によって、黒レベル補正及びホワイトバランスの調整がなされる。黒レベル補正は、A/D変換された画像信号の黒レベルを基準の黒レベルに補正するものである。また、ホワイトバランス(WB)調整は、黒レベル補正後にホワイトバランスが調整されるように、R,G,Bの各色成分の画素データのレベル変換を行うものである。WB調整では、撮影被写体から本来白色と思われる部分を輝度、彩度データなどから推測し、その部分のR、G、Bそれぞれの平均G/R,G/B比を求め、RBの補正ゲインとして補正制御している。
【0052】
カラーバランス制御がなされたのち、γ補正回路435によって画素信号のγ特性が補正される。画像メモリ51は、シェーディング補正後のデータ(もしくは補正前のデータ)をいったん記録してから、各処理ごとにデータを記録しておくメモリである。また、メモリ51は、液晶ディスプレイモニタ18に再生表示される画像データのバッファメモリ領域も有しており、液晶ディスプレイモニタ18の画素数に対応した画像データの記憶容量を有している。
【0053】
撮影モードにおいて、撮影待機状態においては、CCD4cより所定間隔ごとに撮像された画像の各画素データが所定の信号処理を施された後、画像メモリ51に記憶されるとともに、ビデオエンコーダ439に転送され、640×240画素の低解像度画像をNTSC/PALにエンコードし、これをフィールド画像として液晶ディスプレイモニタ18に表示する(ライブビュー表示)。これにより撮影者は、液晶ディスプレイモニタに表示された画像により被写体像を視認することができる。また、再生モードにおいては、メモリカード60から読み出された画像が、画像処理CPUで所定の信号処理が施された後、画像メモリ51の表示用RAM領域に転送され、液晶ディスプレイモニタ18に再生表示される。
【0054】
AFセンサ30はパッシブタイプの外光式AFセンサである。レリーズボタン11は、半押し状態と押しこんだ状態とが検出可能な2段階スイッチになっており、待機状態でレリーズボタン11を半押しすると、AFセンサ30からの情報をカメラ制御CPU47へ入力する。カメラ制御CPU47は、この情報から主被写体までの距離を演算し、上述のように、AFモータを駆動させて合焦位置へフォーカスレンズを移動させる。
【0055】
カメラのレリーズボタン11を操作すると、その情報がカメラ制御CPU47に送信されて撮影キャプチャが実行される。露出関連の制御パラメータ(シャッタースピード、アナログゲイン量)はカメラ制御CPU310へ転送された後、タイミングジェネレータセンサードライブ46やAGC回路41にセットされる。
【0056】
また、AFセンサ30を用いた測距ができない場合もしくはAFセンサを搭載していないデジタルカメラなどの場合は、オートフォーカスの演算は、カメラの画像処理CPU43の測距演算回路23にて、画像の一部分のデータをサンプリングし、その高周波成分をデジタルフィルタなどを用いて求めることもできる。フォーカスレンズを少しずつAFモータを使って一定方向に移動させ、移動中の画像それぞれの高周波成分をモニターした結果、高周波成分がピークになったときのフォーカスレンズ位置を合焦位置と判断してフォーカスレンズをピーク値を露光した位置まで移動させる。
【0057】
メモリカードドライバ440は、メモリカード60への画像データの書きこみ及び読出しを行うためのドライバである。
【0058】
画像信号のメモリカード60への記録に際しては、画像メモリ51から、全画素データを読出し、画像圧縮回路436によって設定された圧縮率で、これらの画素データに2次元DCT変換後、ハフマン符号化などのJPEG方式による所定の圧縮処理を施す。デジタルカメラによって記録された画像の各コマは、各タグの部分のJPEG形式で圧縮された高解像度の画像データとサムネイル表示用の画像データ(80×60画素)が記録される。カメラ制御CPU47は、画像のサムネイル画像と圧縮画像とを生成すると、再生画像に関するタグ情報(コマ番号、露出値、シャッタースピード、圧縮率、撮影日時、フラッシュのオンオフのデータ、シーン情報、画像の判定結果などの情報)とともにメモリカード60に記憶する。
【0059】
モード切替スイッチ12を再生モードに設定したときには、メモリカード60のもっとも大きいコマ番号のタグ情報を有する画像データ、すなわち、もっとも直近に撮影された画像が読み出され、データ伸張されて画像メモリ51の表示RAM領域に転送され、LCD表示部12に表示される。
【0060】
液晶ディスプレイオン/オフ切り替えスイッチ16の操作により液晶ディスプレイ18のライブビュー表示が行われないモード設定がなされている場合には、液晶ディスプレイモニタに表示された画像により被写体像を視認することができないため、撮影者は、光学ファインダを用いて画角の確認を行うこととなる。上述のように、光学ファインダは、撮影レンズ鏡胴2と異なる光軸を持ちパララックスを有するため、カメラ制御CPU47は、次の制御を行うことによりこれを補正する。
【0061】
カメラ制御CPU47は、パララックス補正のため、AFセンサ30又は測距演算回路437により求められた被写体距離と撮影レンズ鏡胴2の焦点距離から、ファインダ21、22を基準とした撮影レンズ鏡胴2のパララックスの程度を求め、これを補正するタイミングジェネレータセンサードライブ46にCCD4cの切り出しエリアを所定量だけ移動するように制御する。
【0062】
図3は、CCDの切り出しエリアの変更を説明する図である。CCD4cは、その撮像面401上の一部のみを有効画素(切り出しエリア)として使用しており、本実施形態においては、撮像面401の中央部分にこれが配置されている。カメラ制御CPU47は、タイミングタイミングジェネレータセンサードライブ46に対して、切り出しエリアを403で示す位置に変更するように制御する。すなわち、例えば、手振れ補正のためにイメージサークルの余裕をとるためや記録サイズの指定により画素数が少ない場合などCCD4cの撮影可能画素401よりも記録画素が少ない場合(例えば、デジタルズーム使用時など)において、記録側の撮像素子の切り出しエリアを変更することによりパララックスを補正するものである。
【0063】
この原理について図4を用いて説明する。本実施形態では、撮影レンズ鏡胴2の光軸L1に対して、ファインダ21,22の光軸L2は距離dだけ情報に設けられており、ファインダにより確認することができる範囲は、線210、212によって囲まれた範囲となり、所定距離だけ離れた被写体について確認することができる範囲はSとなる。この状態において、CCD4cの切り出しエリアをファインダの光軸L2と反対側の方向、すなわち下方に演算された所定量だけ移動することによって、撮影レンズ鏡胴2の撮影範囲は、線201、202によって囲まれた範囲となり、所定距離だけ離れた被写体についてはファインダ21、22の視野と一致する。したがって、パララックスを補正することができる。また、一般に被写体距離が短くなるほどイメージサークルは大きくなるため、切り出し位置を移動させる幅を大きくすることができ、パララックスの程度に応じた補正を行うことができる。
【0064】
なお、通常時の切り出し位置をCCD4cの撮像面の中央部分からずらしておくことにより、読出し位置の移動量を大きくすることができる。すなわち、ファインダと撮影レンズ鏡胴の配置位置は固定されているため、パララックスを補正するために切り出し位置を移動させる方向はおもに決まった方向となる。したがって、元の読出し位置を移動方向に対して上流側に設定おくことにより、より大きなパララックスについての補正をすることができる。
【0065】
なお、切り出し位置を変更することにより、レンズの焦点距離や絞りなどによって発生するシェーディングで画像中心以外がシェーディング中心となるため、レンズの焦点距離や絞りの情報からシェーディング補正を行う。シェーディング補正は、画像処理CPU43のシェーディング補正回路431によって行われる。
【0066】
また、本実施形態にかかるデジタルカメラは、上記のCCDの切り出し位置の変更によるパララックス補正と併用して、図5(a)に示すようなファインダの全視野22a内に表示されているパララックス補正枠221を、パララックスが生じないような位置222に移動させることにより補正することもできる。ファインダ表示によるパララックス補正は、CCDの切り出し位置の変更によるパララックス補正よりも優先して用いられる。すなわち、切り出し位置の変更による補正は、ファインダ表示によるパララックス補正ではパララックスを補正しきれない場合に行われ、切り出し位置の変更による補正がなされていることを撮影者に知らせるためにファインダ視野22a内に警告灯22bが点灯する(図5(b)参照)。
【0067】
また、本実施形態にかかるデジタルカメラ1は、パララックスを補正する手段として、CCDユニット4の手振れ補正の機構を併用する。CCDユニット4は、図6に示すように2つのテーブル(Aテーブル4a、Bテーブル4b)を備えている。CCD4cは、Aテーブル4aの上に配置されており、アクチュエータ405aを介してBテーブルに配置されている。Bテーブル4bは、不図示の本体にアクチュエータを介して配置されている。
【0068】
Aテーブル4aは、アクチュエータ405aが駆動することにより、Bテーブルに対して矢印71に示す方向に駆動し、Bテーブルは、アクチュエータ405bが駆動することにより、本体に対して矢印72に示す方向に駆動する。したがって、アクチュエータ405a,405bを適宜駆動させることにより、CCD4cは、光軸L1に垂直な平面上において、本体に対してXYの2方向に自由に移動することができる。
【0069】
CCDユニット4において、通常時のCCD4cの基準位置は、中央部分に位置するように設けられており、ジャイロ50からカメラのブレの状態から適切にアクチュエータを駆動して手振れ補正を行う。パララックス補正を行う場合は、図6(b)に示すように、アクチュエータ405a,405bを駆動させて、CCD4cの基準位置を変更することによりこれを行う。
【0070】
なお、上記のいずれのパララックス補正手段を併用したとしても、パララックスを補正しきれないような場合は、ファインダ視野内22aの表示手段22bを点滅させてその旨を撮影者に通知する。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1態様によれば、撮像素子の有効画素からの切り出し領域を変更したり、画像メモリの記録用切り出し部位を変更するなどの制御処理を行うことにより、読出し領域を変更してパララックスを補正することができるため、パララックス補正のための部材を必要とすることがなく、カメラを小型に構成することができる。また、ファインダ表示を変更させることによるファインダ視野の違和感などを生じさせることがない。また、ディスプレイ表示を行うことなくパララックスを補正することができるため、消費電力の増大を招くことがない。
【0072】
本発明の第2態様によれば、被写体との距離の情報などから導かれたパララックスを減殺する方向に撮像素子の基準位置を移動してパララックスを補正することができるため、手振れ補正を行うための機構をそのまま利用することができる。また、基準位置を補正するための処理は、例えば、CPUなどの演算手段によって、導かれた所定量だけ、撮像素子を駆動させればよく、パララックス補正のための特別な部材を必要とすることがない。
【0073】
本発明の第3態様によれば、焦点距離が変動するズームレンズの位置から導かれる撮影レンズの焦点距離に基づいてパララックス補正量を導くため、より精度の高い補正を行うことができる。
【0074】
本発明の第4態様によれば、まったく機構が独立した2つのパララックス補正の機構を併用することができるため、補正幅を大きくすることができる。
【0075】
本発明の第5態様によれば、レンズの光軸の中心位置が撮像素子の中心位置からずれることによるシェーディングの変化を補正することができ、より鮮明な画像を得ることができる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0077】
例えば、メカニカルシャッターを搭載して、CCDにインターラインインターレースタイプのものを使用してもよい。
【0078】
例えば、上記実施形態では、CCDの切り出しエリアを移動させることにより、パララックス補正を行うようにしているが、例えば、画像メモリ51の記録用切り出し部位を変更するようにしてもよい。
【0079】
また、手振れ補正機構を用いたパララックスの補正において、CCDを駆動させる代わりにレンズの基準位置を駆動させて行うようにすることもできる。
【0080】
なお、本発明の実施形態には、以下に示す発明も含まれる。
【0081】
撮影レンズと撮像素子とを含む撮像手段と、オンオフの切り替えができるように構成された電子ファインダと、主被写体までの距離を測定する測距手段と、前記光学ファインダと撮像手段とのパララックスとを補正するパララックス補正手段とを備えたデジタルカメラであって、
前記パララックス補正手段は、前記測距手段により測定された距離情報に基づいてパララックス補正量を決定する補正量演算手段と、前記補正量演算手段により決定されたパララックス補正量に基づいて前記撮像素子の読出し領域を変更する読出し領域変更手段とを備え、前記電子ファインダの不使用時のみ作動することを特徴とする、デジタルカメラ。
【0082】
撮影レンズと撮像素子とを含む撮像手段と、前記撮影レンズに対してパララックスを有する光学ファインダと、主被写体までの距離を測定する測距手段と、手振れを吸収するように光軸に対して垂直な平面上で前記撮影レンズを基準位置から移動させて手振れ補正を行う手振れ補正手段と、前記光学ファインダと撮像手段とのパララックスとを補正するパララックス補正手段とを備えたデジタルカメラであって、
前記パララックス補正手段は、前記測距手段により測定された距離情報に基づいてパララックス補正量を決定する補正量演算手段と、前記補正量演算手段により決定されたパララックス補正量に基づいて前記手振れ補正手段により移動される撮影レンズの基準位置を変化させるレンズ位置変更手段とを備えることを特徴とする、デジタルカメラ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかるデジタルカメラの外観構成図である。
【図2】図1のデジタルカメラの内部構成を示すブロック図である。
【図3】CCDの切り出しエリアの変更を説明する図である。
【図4】切り出しエリアを変更することによってパララックスを補正することができる原理の説明図である。
【図5】ファインダ表示を変更することによってパララックス補正をした場合の説明図である。
【図6】手振れ補正機能を備えた撮像素子ユニットの構成の説明図であり、(a)は通常時のCCD基準位置、(b)はパララックス補正時のCCD基準位置を示す図である。
【図7】パララックスが生じる原理を説明する図である。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
2 撮影レンズ鏡胴
3 ボディ
4 CCDユニット
4c CCD
11 レリーズボタン
13 手振れ補正スイッチ
16 液晶ディスプレイオン/オフ切り替えスイッチ
18 液晶ディスプレイ
21 光学ファインダの対物側窓
22 光学ファインダの接眼側窓
30 AFセンサ
30a AFセンサ受光窓
43 画像処理CPU
46 タイミングジェネレータセンサードライブ
47 カメラ制御CPU
50 ジャイロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズと撮像素子とを含む撮像手段と、前記撮影レンズに対してパララックスを有する光学ファインダと、主被写体までの距離を測定する測距手段と、前記光学ファインダと撮像手段とのパララックスとを補正するパララックス補正手段とを備えたデジタルカメラであって、
前記パララックス補正手段は、前記測距手段により測定された距離情報に基づいてパララックス補正量を決定する補正量演算手段と、前記補正量演算手段により決定されたパララックス補正量に基づいて前記撮像素子の読出し領域を変更する読出し領域変更手段とを備えることを特徴とする、デジタルカメラ。
【請求項2】
撮影レンズと撮像素子とを含む撮像手段と、前記撮影レンズに対してパララックスを有する光学ファインダと、主被写体までの距離を測定する測距手段と、手振れを吸収するように光軸に対して垂直な平面上で前記撮像素子を基準位置から移動させて手振れ補正を行う手振れ補正手段と、前記光学ファインダと撮像手段とのパララックスとを補正するパララックス補正手段とを備えたデジタルカメラであって、
前記パララックス補正手段は、前記測距手段により測定された距離情報に基づいてパララックス補正量を決定する補正量演算手段と、前記補正量演算手段により決定されたパララックス補正量に基づいて前記手振れ補正手段により撮像素子の基準位置を変化させる撮像素子位置変更手段とを備えることを特徴とする、デジタルカメラ。
【請求項3】
前記撮影レンズは、焦点距離を調整可能なズームレンズで構成されており、前記補正量演算手段は、前記撮影レンズの焦点距離に基づいてパララックス補正量を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
前記光学ファインダーに、パララックス補正枠を表示するパララックス表示手段を有し、前記パララックス補正手段は、前記ファインダのパララックス補正枠の表示によりパララックス補正を修正しきれない場合に作動することを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載のデジタルカメラ。
【請求項5】
さらに、前記パララックス補正量と撮影状況に応じてシェーディング補正を行うシェーディング補正手段を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−354439(P2004−354439A)
【公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−148748(P2003−148748)
【出願日】平成15年5月27日(2003.5.27)
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【Fターム(参考)】