説明

デジタルカメラ

【課題】被写体に関係なく忠実な色再現を実現する。
【解決手段】マトリクス選択回路23とマトリクス回路25を設け、CCD16から読み出された一連の色信号のうち2つの色要素に応じた色信号Rin,Binとの比に基づき、被写体の分光分布特性を検出する。そして、第1〜第3のカラーマトリクスの中から、検出された被写体の色合いに適したカラーマトリクスを選択し、選択されたマトリクスによってマトリクス演算を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子から読み出される画像信号に基いてカラー画像を生成する撮像装置に関し、特に色再現性に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置では、撮像素子の受光面に対して原色カラーフィルタあるいは補色カラーフィルタが配置されており、各画素位置に対応するようにR,G,Bなどの色要素がモザイク状に配列されている。被写体からの反射光がカラーフィルタを通ると、各色要素に応じた色信号から構成される画像信号が発生し、撮像素子から読み出される。読み出された画像信号は、測色学に基づいて規格化された色空間に従う画像信号を生成するため、マトリクス演算などによって色変換処理される。そして、NTSC信号、R,G,Bコンポーネント信号など所定の映像信号としてモニタ等の外部装置へ出力される。
【0003】
デジタルカメラにおいては、より忠実な色再現性を図るため、様々なカラーフィルタの配列方法、および色変換処理方法が適用されている。例えば、等色関数の中で赤色(R)の分光感度曲線が負になるスペクトル領域の情報を得るため、緑色(G)に近い分光感度特性をもつ色要素(G’)を配列させたフィルタが使用され、補正された赤色(R’)の信号が生成される(特許文献1参照)。色要素(G’)に基いて新たな赤色(R’)の信号へ変換することにより、色域の広い範囲が再現される。また、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のほかに、異なる分光透過特性をもつ色要素を加えた4色フィルタが使用され、4×3のマトリクス演算によって三刺激値に応じたR,G,Bの原色信号が生成される(特許文献2参照)。4色フィルタを使用することによって、ノイズを低減しながら色が再現される。
【特許文献1】特許第2872759号公報(第6頁〜第7頁、第2図)
【特許文献2】特開2003−284084号公報(第5頁右欄第2行〜第11行、図18)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2の撮像装置においても、カラーフィルタの分光透過特性は理想的な視感度分布特性に完全に一致しないため、色再現性に問題がある。特許文献1では、緑色、青色の中間色の再現性を向上させるフィルタの色要素が用意されているが、それ以外の中間色については十分な色再現をすることが難しい。また、特許文献2では、あらかじめ定められたマトリクス係数に基づいてR,G,Bの原色信号が生成されるため、ある特定の分光分布特性をもつ被写体(例えば青味を帯びた被写体)に対しては色を適切に再現できるが、他の分光分布特性をもつ被写体(例えば赤味を帯びた被写体)に対して適切な色再現を実現することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の撮像装置は、デジタルカメラ等に適用可能であって、どのような被写体であっても色再現性の優れた画像を提供可能な撮像装置であり、少なくとも4色以上の色要素を配列したフィルタを使用し、色再現性の優れたR,G,Bの原色信号を生成する。
【0006】
撮像装置は、撮像素子と、それぞれ異なった分光透過特性を有する少なくとも4種類の色要素を有し、撮像素子の受光面と向かい合うように配置されるカラーフィルタと、撮像素子から少なくとも4種類の色要素に応じた一連の色信号を読み出す信号読み出し手段とを備える。カラーフィルタの色要素の分光透過特性はそれぞれ異なっており、所定の波長をピークとする連続的な分光分布曲線によって表される。また、色要素の分光透過特性は、等色関数を考慮して波長ピーク、スペクトル分布が定められており、この分光透過特性は、撮像素子、赤外線カットフィルタを含めて撮像系(入力系)の分光感度特性を特徴づける。撮像方式としては、単板式や3板式などが適用可能であり、単板同時式の場合、色要素が市松状に配置された1枚のカラーフィルタ(オンチップカラーフィルタ)が適用される。カラーフィルタは少なくとも4種類の色要素から構成すればよく、等色関数に応じたR,G,Bを含む色フィルタ、あるいはY、Cy、Mg、Gなどの補色フィルタいずれによって構成してもよい。
【0007】
本発明では、撮像装置は、一連の色信号に含まれる被写体の分光分布特性を検出し、それぞれ分光分布特性の異なる被写体に応じて用意される複数のカラーマトリクスの中から、検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択するマトリクス選択手段を備える。カラーマトリクスでは、色要素の分光透過特性の分布曲線を色空間に基づいた標準的分光感度分布曲線へ変換させるようにマトリクス係数が定められている。適用される色空間としては、側色学的に規格化された色空間、例えばXYZ系、L空間、L空間、sRGB色空間などが適用される。被写体の分光分布特性(分光反射率)の特徴、すなわち色情報に従い、複数のカラーマトリクスが用意され、例えば、青色光を含む短波長領域において相対的にパワーが大きい分光分布特性をもつ被写体に応じたカラーマトリクス、あるいは、赤色光を含む長波長領域において相対的にパワーが大きい分光分布特性をもつ被写体に応じたカラーマトリクスが含まれる。そして、撮像装置は、一連の色信号から、選択されたカラーマトリクスによるマトリクス演算によってR,G,B原色信号を生成する信号処理手段を備える。
【0008】
撮像素子において生成される一連の色信号は、色要素の分光透過特性と被写体の分光分布特性とに影響を受けており、色信号には、被写体の分光分布特性の情報が含まれている。例えば、青味を帯びた被写体を撮影する場合、青色光を含む短波長領域のパワーが相対的に大きい分光分布特性となり、一方、赤味を帯びた被写体を撮影する場合、赤色光を含む波長領域のパワーが相対的に大きい分光分布特性になる。色要素の透過する光の波長領域が、その被写体の分光分布特性において相対的にパワーの大きい波長領域と共通する場合、その色要素から得られる色信号は被写体の色情報を十分含む。
【0009】
本発明においては、マトリクス選択手段が、一連の色信号に基づいて被写体の分光分布特性、すなわち被写体の色合いを検出する。そして、複数のカラーマトリクスの中から検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択する。すなわち、その被写体を撮影したときに分光透過特性の分布曲線を色空間に基づいた標準的分光感度曲線へより一致させる、近づけるようなマトリクス係数で構成されるカラーマトリクスを選択する。被写体の色情報を判断するため、例えば、赤色(R)、青色(B)に応じた色信号の値が所定値(閾値)より大きい、あるいは小さいことによって判断し、あるいは、赤色(R),青色(B)に応じた色信号の比によって判断してもよい。
【0010】
マトリクス選択の構成としては、例えば、マトリクス選択手段が、一連の色信号の中で、色空間に基づいた標準的分光感度分布曲線のうち所定の分光感度曲線に応じた色信号から被写体の分光分布特性を検出し、一連の色信号全体をマトリクス変換する複数のカラーマトリクスから1つのカラーマトリクスを選択する。あるいは、信号処理手段が、一連の色信号を、R,G,B原色信号の中で所定の色信号を生成するあらかじめ定められたカラーマトリクスによってマトリクス演算し、マトリクス選択手段が、生成された所定の色信号に基づいて被写体の分光分布特性を検出し、一連の色信号からR,G,B原色信号のうち残りの色信号を生成する複数のカラーマトリクスから、1つのカラーマトリクスを選択する。
【0011】
カラーフィルタの構成としては、例えば、R,G,B原色信号のうちいずれか2つに応じた分光透過特性を有する2種類の検出用色要素と、残りの1つに相関する少なくとも2種類の色要素とから構成さればよい。この場合、マトリクス選択手段が、一連の色信号の中で2種類の検出用色要素に基づいた色信号から被写体の分光分布特性を検出すればよい。例えば、カラーフィルタが、R,G,B原色信号のうちR,Bに応じた分光透過特性を有する2種類の検出用色要素と、Gに相関する2種類の色要素とから構成された場合、マトリクス選択手段は、一連の色信号の中で検出用色要素に応じた色信号から被写体の分光分布特性を検出すればよい。あるいは、信号処理手段が、一連の色信号からR,G,B原色信号のR,B色信号を生成し、マトリクス選択手段が、R,B色信号から被写体の分光分布特性を検出し、一連の色信号からR,G,B原色信号のG信号を生成する複数のカラーマトリクスから1つのカラーマトリクスを選択してもよい。
【0012】
本発明の色変換処理装置は、それぞれ異なった分光透過特性を有する少なくとも4種類の色要素を有するカラーフィルタが設けられた撮像素子から読み出される少なくとも4種類の色要素に応じた一連の色信号に含まれた被写体の分光分布特性を検出し、それぞれ分光分布特性の異なる被写体に応じて用意される複数のカラーマトリクスの中から検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択するマトリクス選択手段と、一連の色信号から、選択されたカラーマトリクスによるマトリクス演算によってR,G,B原色信号を生成する信号処理手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の色変換処理方法は、それぞれ異なった分光透過特性を有する少なくとも4種類の色要素を有するカラーフィルタが設けられた撮像素子から少なくとも4種類の色要素に応じた一連の色信号を読み出し、一連の色信号に含まれる被写体の分光分布特性を検出し、それぞれ分光分布特性の異なる被写体に応じて用意される複数のカラーマトリクスの中から検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択し、一連の色信号から、選択されたカラーマトリクスによるマトリクス演算によってR,G,B原色信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被写体に関係なく忠実な色再現を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態であるデジタルスチルカメラについて説明する。
【0016】
図1は、デジタルカメラのブロック図である。
【0017】
デジタルカメラ10は、撮影光学系12およびCCD16を備え、被写体において反射した光が撮影光学系を通り、CCD16の受光面に到達する。これにより、被写体像がCCD16の受光面に形成される。ここでは撮像方式として単板同時式が適用されており、CCD16の受光面には、4つの色要素が市松状に配列された色フィルタ14が設けられている。被写体からの光がCCD16の受光面に到達すると、色フィルタ14の各色要素に応じた画素信号が発生し、画素信号はCCD駆動回路(図示せず)からのクロックパルス信号に従ってCCD16から一連の色信号として読み出される。読み出された画素信号の一部は、マトリクス選択回路23へ送られる。
【0018】
マトリクス選択回路23では、入力された画素信号に基づき、被写体の分光分布特性(分光反射率)が検出される。マトリクス選択回路23に入力された画素信号はそのまま出力されてマトリクス回路25に入力される。また、CCD16から読み出された画素信号のうち残りの画素信号はそのままマトリクス回路25に入力される。
【0019】
マトリクス回路25では、入力された画素信号に対して4×3のマトリクス変換処理が実行される。このとき、あらかじめ用意された複数のカラーマトリクスから被写体の分光分布特性に適したカラーマトリクスが選択され、選択されたカラーマトリクスによって色変換処理が実行される。これにより、三刺激値に応じたR,G,Bの原色信号が生成され、画像信号処理回路22へ送信される。
【0020】
画像信号処理回路22では、ホワイトバランス調整、ガンマ補正などの処理がR,G,Bの原色信号に対して施され、sRGB色空間に従った映像信号が生成される。ここでは、標準モニタと標準視環境において規定される色を測色的に正しく再現するように色変換処理されている。映像信号がLCDドライバ24へ送られると、LCDドライバ24は映像信号に基いてLCD26を駆動する。これにより、撮影画像が動画像としてLCD26に表示される。
【0021】
レリーズボタン(図示せず)が半押しされて半押しスイッチ42がON状態になると、測距センサ30によって被写体までの距離が測定されるとともに、測光センサ32によって被写体の明るさが検出される。そして、システムコントロール回路34では、測定された被写体情報に基いてシャッタスピード、絞り値が演算される。また、計測された被写体までの距離に従い、レンズ駆動回路28によって撮影光学系12が焦点調整のため駆動される。
【0022】
レリーズボタンが全押しされて全押しスイッチ44がON状態になると、図示しないシャッタ、絞りが駆動され、1フレーム分の画素信号が生成される。CCD16から読み出された1フレーム分の画素信号は、マトリクス回路25、画像信号処理回路22において処理される。そして、システムコントロール回路34において圧縮処理された後、メモリカード36に記録される。送信ボタン(図示せず)が操作されて送信スイッチ46がON状態になると、メモリカード36に記録された画像データがインターフェイス回路(I/F)38を介して外部のコンピュータ40へ出力される。
【0023】
CPU、ROM、RAMを含むシステムコントロール回路34は、デジタルカメラ10の動作を制御し、画像信号処理回路22など各回路へ制御信号を出力する。システムコントロール回路34のROMには、複数のカラーマトリクスのデータがあらかじめ記憶されており、カメラの電源ONによってマトリクス回路25のレジスタに記憶される。マトリクス選択回路23は、マトリクス回路25へ選択すべきマトリクスに応じた制御信号をマトリクス回路25に出力し、マトリクス回路25は、その制御信号、すなわち被写体の分光分布特性の情報に基づき、1つのマトリクスを用いたマトリクス変換処理を実行する。
【0024】
図2は、色フィルタ14の一部を示した図である。図3は、デジタルカメラにおける入力系の分光感度特性を示した図である。図2、図3を用いて、フィルタの色配列について説明する。
【0025】
図2に示すように、色フィルタ14は、4種類の色要素から成るブロックを規則的に配列させたベイヤ−配列型フィルタである。また、4種類の色要素は、青色光を含む短波長領域の色要素(以下、B0とする)、青色(B)の波長領域から緑色(G)の波長領域に範囲に渡って光を透過する色要素(以下、Xと表す)、緑色(G)の波長領域から赤色(R)の波長領域に渡って光を透過する色要素(以下、Zと表す)、赤色光を含む長波長領域の光を透過する色要素(以下、R0と表す)によって構成されている。4つの色要素(B0、X、Z、R0)は市松状に並べられ、各色要素がCCD16における受光面の各画素に対向するように配置されている。
【0026】
図3では、色フィルタ14の分光透過特性、撮影光学系12あるいは赤外線カットフィルタの分光感度特性、CCD16の分光感度特性を総合したデジタルカメラ10の入力系における分光感度特性を示している。色要素B0、X、Z、R0の分光透過特性によって特徴付けられる入力系の分光感度特性は、いずれも略ガウス分布に近い曲線で表され、それぞれ「L1」、「L2」、「L3」、「L4」とする。分光感度曲線L1、L2、L3、L4は、それぞれピーク波長λ1(450nm)、λ2(500nm)、λ3(550nm)、λ4(590nm)をもつスペクトル分布で表される。
【0027】
分光感度曲線L1は、主に青色(B)の光に対応する分光感度曲線であり、スペクトル分布(分光感度)領域は360nm〜540nmの範囲になる。分光感度曲線L4は主に赤色(R)の光に対応する分光感度曲線であり、スペクトル分布領域は約520nm〜680nmの範囲になる。分光感度曲線L2、分光感度曲線L3は、分光感度曲線L1と分光感度曲線L4との間においてほぼ均等間隔になるようなラインを描き、ピーク波長λ1、λ2、λ3、λ4が略等間隔になるように分光感度曲線L1、L2、L3、L4が定められている。
【0028】
図4は、理想的な撮像システム、すなわち入力系の分光感度特性を示した図である。図5は、所定のカラーマトリクスを用いたマトリクス演算により得られる色信号の分光感度特性を示した図である。図4、5を用いて、分光感度特性について説明する。
【0029】
図4に示す分光感度特性は、測色学的に適正に色再現を実現できる分光感度特性であり、等色関数によって表され、人間の視感度に合わせて測色学的に規定された分光感度特性に対応する。ここでは、等色関数に相当する分光感度曲線を、標準分光感度曲線としてRs、Gs、Bsと表す。ただし、Rs、Gs、Bsは、色空間としてsRGB色空間に基づいた分光感度曲線を示す。
【0030】
図3に示す入力系の分光感度特性に基いて得られた4色の色信号(以下では、それぞれBin、Xin、Zin、Rinとする)は、図4に示したsRGB色空間による分光感度曲線に基いた測色値(機器独立色)を得るため、以下の式に従い、マトリクス回路25においてマトリクス演算される。マトリクス演算されると、R,G,Bの原色信号として3つの色信号Rout、Gout、Boutが生成される。色信号Rout、Gout、Boutは、等色関数から得られる三刺激値X,Y,ZのX,Y,Zにそれぞれ対応する。ここでは、被写体の分光分布特性を考慮して3つのカラーマトリクスが用意されており、(1)、(2)、(3)式に用いられるマトリクスを、それぞれ第1のマトリクスM1,第2のマトリクスM2,第3のマトリクスM3とする。マトリクスの各係数は、ルータ条件をできるだけ満たすように定められている。
【0031】
【数1】



【0032】
【数2】



【0033】
【数3】




【0034】
第1のマトリクスM1は、分光分布特性の短波長領域においてパワーが相対的に大きい、すなわち青味がある被写体に適用されるマトリクスであり、一方、第2のマトリクスM2は、分光分布特性の長波長領域においてパワーが相対的に大きい、すなわち赤味のある被写体に適用されるマトリクスである。式(1)、(2)からわかるように、第1のマトリクスM1の第2行第1列のマトリクス係数の値は、第2のマトリクスM2の第2行第1列のマトリクス係数の値より小さい。第3のマトリクスM3は、そのどちらでもない中間的な分光分布特性をもつ被写体に適用されるマトリクスである。
【0035】
図5には、第1のマトリクスM1を使用してマトリクス演算を実行した場合の分光感度曲線が表されている。図5に示すように、短波長領域(450〜550nm)においては、マトリクス演算による分光感度曲線R’s、G’s、B’sは、sRGB空間に従う標準的分光感度曲線Rs,Gs,Bsと概して一致する。すなわち、忠実に色が再現される。一方、第2のマトリクスM2を使用した場合、長波長領域においてマトリクス演算による分光感度曲線が標準的分光感度曲線Rs,Gs,Bsと概ね一致する(ここでは図示せず)。本実施形態では、CCD16から出力される色信号Rin、Binに基づいて被写体の分光分布特性が検出され、3つのマトリクスM1、M2、M3の中から被写体の分光分布特性に適したマトリクスが選択される。
【0036】
図6は、カラーマトリクス選択処理の過程を示したフローチャートである。
【0037】
ステップS101では、色信号BinとRinとの比の値が境界値T0より大きいか否かが判断される。青色に応じた短波長領域のスペクトル成分が相対的に大きい分光分布特性をもつ被写体の場合、色信号Binの値が色信号Rinの値に比べて相対的に大きくなる。ここでは、境界値T0の値は1.1に定められている。
【0038】
ステップS101において、色信号BinとRinとの比の値が境界値T0より大きいと判断されると、ステップS105へ進む。ステップS105では、第1のマトリクスM1がマトリクス回路25において選択され、マトリクス演算が実行される。一方、色信号BinとRinとの値が境界値T0より大きくないと判断された場合、ステップS102へ進む。
【0039】
ステップS102では、色信号Binと色信号Rinとの比の値が境界値T1より小さいか否かが判断される。赤色に応じた長波長領域のスペクトル成分が相対的に大きい分光分布特性をもつ被写体の場合、色信号Rの値Rinが色信号Binに比べて相対的に大きい。ここでは、境界値T1は、0.59に定められている。
【0040】
ステップS102において、色信号Binと色信号Rinとの比の値が境界値T1より小さいと判断されると、ステップS103へ進む。ステップS103では、第2のマトリクスM2がマトリクス回路25において選択され、マトリクス演算が実行される。
【0041】
一方、ステップS102において、色信号Binと色信号Rinとの比の値が境界値T1より小さくないと判断された場合、ステップS104へ進む。ステップS104では、第3のマトリクスM3がマトリクス回路25において選択され、マトリクス演算が実行される。なお、境界値T0、T1は、分光感度曲線Rs、Bs、マトリクス係数等に基づいて定められる。
【0042】
このように本実施形態によれば、マトリクス選択回路23とマトリクス回路25が設けられ、CCD16から読み出された色要素B0、R0に応じた画素信号(色信号)Rin,Binとの比に基づき、被写体の分光分布特性、すなわち色合いが検出される。そして、第1〜第3のカラーマトリクスM1〜M3の中から検出された被写体の色合いに適したカラーマトリクスが選択され、マトリクス演算が実行される。
【0043】
次に、図7,図8を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、始めに4つの色信号のうち、R,G,B原色信号のうちR,Bに応じた2つの色信号をマトリクス演算によって求め、その後、カラーマトリクスを選択してGに応じた色信号を求める。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
【0044】
図7は、第2の実施形態であるデジタルカメラのブロック図である。第1の実施形態のデジタルカメラと共通する構成については同一符号で表す。
【0045】
デジタルカメラ10’は、第1マトリクス回路27、第2マトリクス回路29、マトリクス選択回路31を備える。第1マトリクス回路27は、CCD16から読み出される一連の色信号Bin,Rin,Xin,Zinに対し、以下に示す4×2のカラーマトリクスを用いてマトリクス変換を実行し、R,G,B原色信号のR,B色信号となる色信号Rout,Boutを出力し、マトリクス選択回路31へ送る。
【0046】
【数4】

【0047】
マトリクス選択回路31では、入力された色信号Bout,Routに基づき、被写体の分光分布特性が検出され、第2マトリクス回路29へ制御信号を出力する。第2マトリクス回路29では、CCD16から読み出される色信号Bin,Rin,Xin,Zinに対し、被写体の分光分布特性に適したカラーマトリクスを用いて4×1のマトリクス変換が実行される。マトリクス変換処理により、R,G,B原色信号のG信号となる色信号Goutが生成される。
【0048】
図8は、第2の実施形態におけるカラーマトリクス選択処理の過程を示したフローチャートである。
【0049】
ステップS201では、色信号BoutとRoutとの比の値が境界値S0より大きいか否かが判断される。青色に応じた短波長領域のスペクトル成分が相対的に大きい分光分布特性をもつ被写体の場合、色信号Boutの値が色信号Routの値に比べて相対的に大きくなる。
【0050】
ステップS201において、色信号BinとRinとの比の値が境界値S0より大きいと判断されると、ステップS205へ進む。ステップS205では、以下に示す第1のマトリクスK1が第2マトリクス回路29において選択され、マトリクス演算が実行される。一方、色信号BinとRinとの比の値が境界値S0より大きくないと判断された場合、ステップS202へ進む。
【0051】
【数5】

【0052】
ステップS202では、色信号Boutと色信号Routとの比の値が境界値S1より小さいか否かが判断される。赤色に応じた長波長領域のスペクトル成分が相対的に大きい分光分布特性をもつ被写体の場合、色信号Rの値Routが色信号Bの値Boutに比べて相対的に大きい。
【0053】
ステップS202において、色信号Boutと色信号Routとの比の値が境界値S1より小さいと判断されると、ステップS203へ進む。ステップS203では、以下に示す第2のマトリクスK2が第2マトリクス回路29において選択され、マトリクス演算が実行される。
【0054】
【数6】

【0055】
一方、ステップS202において、色信号Boutと色信号Routとの比の値が境界値S1より小さくないと判断された場合、ステップS204へ進む。ステップS204では、以下に示す第3のマトリクスK3が第2マトリクス回路29において選択され、マトリクス演算が実行される。なお、境界値S0、S1は、分光感度曲線Rs,Bs、マトリクス係数等に基づいて定められる。
【0056】
【数7】

【0057】
なお、ソフトウェアの制御によって色変換処理を実行してもよい。また、カメラ以外の撮影機能を備えた携帯電話、電子機器などに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】デジタルカメラのブロック図である。
【図2】色フィルタの一部を示した図である。
【図3】デジタルカメラにおける入力系の分光感度特性を示した図である。
【図4】撮像系に関する理想的な入力系の分光感度特性を示した図である。
【図5】所定のカラーマトリクスを用いたマトリクス演算により得られる色信号の分光感度特性を示した図である。
【図6】カラーマトリクス選択処理の過程を示したフローチャートである。
【図7】第2の実施形態であるデジタルカメラのブロック図である。
【図8】第2の実施形態におけるカラーマトリクス選択処理の過程を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
10、10’ デジタルカメラ
14 カラーフィルタ
16 CCD(撮像素子)
23 マトリクス選択回路
25 マトリクス回路
27 第1マトリクス回路
29 第2マトリクス回路
31 マトリクス選択回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
それぞれ異なった分光透過特性を有する少なくとも4種類の色要素を有し、前記撮像素子の受光面と向かい合うように配置されるカラーフィルタと、
前記撮像素子から前記少なくとも4種類の色要素に応じた一連の色信号を読み出す信号読み出し手段と、
前記一連の色信号に含まれる被写体の分光分布特性を検出し、それぞれ分光分布特性の異なる被写体に応じて用意される複数のカラーマトリクスの中から検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択するマトリクス選択手段と、
前記一連の色信号から、選択されたカラーマトリクスによるマトリクス演算によってR,G,B原色信号を生成する信号処理手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記マトリクス選択手段が、前記一連の色信号の中で、色空間に基づいた標準的分光感度分布曲線のうち所定の分光感度曲線に応じた色信号から被写体の分光分布特性を検出し、前記一連の色信号全体をマトリクス変換する複数のカラーマトリクスから1つのカラーマトリクスを選択することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記信号処理手段が、前記一連の色信号を、前記R,G,B原色信号の中で所定の色信号を生成するあらかじめ定められたカラーマトリクスによってマトリクス演算し、
前記マトリクス選択手段が、生成された所定の色信号に基づいて被写体の分光分布特性を検出し、前記一連の色信号から前記R,G,B原色信号のうち残りの色信号を生成する複数のカラーマトリクスから、1つのカラーマトリクスを選択することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記少なくとも4種類の色要素に応じた分光透過特性が、可視光の波長領域において略等間隔でピーク値をもつスペクトル分布となるように定められていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記カラーフィルタが、4種類の色要素から成ることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記カラーフィルタが、前記R,G,B原色信号のうちいずれか2つに応じた分光透過特性を有する2種類の検出用色要素と、残りの1つに相関する少なくとも2種類の色要素とから成り、
前記マトリクス選択手段が、前記一連の色信号の中で前記2種類の検出用色要素に基づいた色信号から被写体の分光分布特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記カラーフィルタが、前記R,G,B原色信号のうちR,Bに応じた分光透過特性を有する2種類の検出用色要素と、Gに相関する2種類の色要素とから成り、
前記マトリクス選択手段が、前記一連の色信号の中で前記検出用色要素に応じた色信号から被写体の分光分布特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記カラーフィルタが、前記R,G,B原色信号のうちR,Bに応じた分光透過特性を有する2種類の色要素と、Gに相関する2種類の色要素とから成り、
前記信号処理手段が、前記一連の色信号から前記R,G,B原色信号のR,B色信号を生成し、
前記マトリクス選択手段が、前記R,B色信号から被写体の分光分布特性を検出し、前記一連の色信号から前記R,G,B原色信号のG信号を生成する複数のカラーマトリクスから1つのカラーマトリクスを選択することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数のカラーマトリクスが、青色光を含む短波長領域において相対的にパワーが大きい分光透過特性をもつ被写体に応じた青色系カラーマトリクスと、赤色光を含む長波長領域において相対的にパワーが大きい分光透過特性をもつ被写体に応じた赤色系カラーマトリクスを含むことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
それぞれ異なった分光透過特性を有する少なくとも4種類の色要素を有するカラーフィルタが設けられた撮像素子から読み出される前記少なくとも4種類の色要素に応じた一連の色信号に含まれた被写体の分光分布特性を検出し、それぞれ分光分布特性の異なる被写体に応じて用意される複数のカラーマトリクスの中から検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択するマトリクス選択手段と、
前記一連の色信号から、選択されたカラーマトリクスによるマトリクス演算によってR,G,B原色信号を生成する信号処理手段と
を備えたことを特徴とする色変換処理装置。
【請求項11】
それぞれ異なった分光透過特性を有する少なくとも4種類の色要素を有するカラーフィルタが設けられた撮像素子から前記少なくとも4種類の色要素に応じた一連の色信号を読み出し、
前記一連の色信号に含まれる被写体の分光分布特性を検出し、
それぞれ分光分布特性の異なる被写体に応じて用意される複数のカラーマトリクスの中から検出された分光分布特性に応じたカラーマトリクスを選択し、
前記一連の色信号から、選択されたカラーマトリクスによるマトリクス演算によってR,G,B原色信号を生成する
ことを特徴とする色変換処理方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate