説明

デジタルカメラ

【課題】1回のシャッタ動作で露光時間の異なる複数の画像を得る際に、各画像毎に、画像全領域で露光時間を均一にする。
【解決手段】二次元配置された単位セルの蓄積電荷を選択的に読出可能な固体撮像素子と、シャッタ先幕とシャッタ後幕を移動可能に保持するシャッタユニットと、異なる第1の露光時間と第2の露光時間を順に計測するタイマ手段と、このタイマ手段の計測開始時にシャッタ先幕を走行させ、計測完了時にシャッタ後幕を走行させるシャッタ制御手段と、先幕走行開始から第1の露光時間が経過したときに、固体撮像素子の電荷読出タイミングをシャッタ先幕の走行速度に同期させ、シャッタ走行方向に沿って順番に、該第1の露光時間で蓄積された各単位セルの第1の電荷を読み出す露光中電荷読出制御手段と、後幕走行完了後に、第2の露光時間で蓄積された各単位セルの第2の電荷を読み出す露光後電荷読出制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカルプレーンシャッタを用いたデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置では、例えば特許文献1、2に記載されているように、露出量の異なる複数の画像を合成してダイナミックレンジを改善することが知られている。具体的に、特許文献1では、全画素の信号電荷を一斉に読み出すいわゆる全画素読み出し方式のCCD撮像素子を用い、メカシャッタを開いてCCD撮像素子の電荷蓄積を開始させ、蓄積途中でCCD撮像素子の蓄積電荷を読み出すことにより、蓄積開始から電荷読出まで蓄積された第1の信号電荷と電荷読出からメカニカルシャッタが閉じるまで蓄積された第2の信号電荷を取得し、この第1の信号電荷による画像と第2の信号電荷による画像を合成している。また、特許文献2では、全画素を読み出すのに奇数のnフィールドに分けて読み出すCCD撮像センサを用い、電子シャッタとメカシャッタを制御して全フィールドを同時に露光開始し、露光途中に第1のフィールドの蓄積電荷をCCD撮像センサの垂直転送部に移動させることで第1のフィールドとそれ以外のフィールドの露光時間(露光量)を異ならせ、第1のフィールドで蓄積した信号電荷による画像とそれ以外のフィールドで蓄積した信号電荷による画像を合成している。
【特許文献1】特開平11−234572号公報
【特許文献2】特開2005−348301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1、2では、CCD撮像素子の受光面全面を同時に遮光するレンズシャッタをメカシャッタとして用いることが前提となっているが、近年では、シャッタ先幕とシャッタ後幕が順に走行してシャッタ開閉動作するフォーカルプレーンシャッタを備えた撮像装置においても、ダイナミックレンジを改善したいという要望がある。しかしながら、フォーカルプレーンシャッタによる露光途中にCCD撮像素子の蓄積電荷を読み出そうとすると、CCD撮像素子からは全画素の蓄積電荷が一斉に読み出されるので、図13に示されるようにCCD撮像素子の画素位置に応じて露光時間が異なり(1a≠1b≠1c、2a≠2b≠2c)、適正露出が得られない。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フォーカルプレーンシャッタによる1回のシャッタ動作で露光時間の異なる複数の画像を得る際に、各画像毎に、画像全領域で露光時間が均一になるデジタルカメラを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、CMOSイメージセンサを用いれば各単位セルの蓄積電荷を選択的に読出可能であること、及び、各単位セルの蓄積電荷を読み出すタイミングをシャッタ先幕の走行に同期させれば全単位セルでの露光時間を均一にできること、に着目して完成されたものである。
【0006】
すなわち、本発明は、光電変換素子と増幅器を備えた単位セルが第1方向及び第2方向に列状に二次元配置されてなり、各単位セルの蓄積電荷を選択的に読出可能な固体撮像素子と、この固体撮像素子への入射光を遮断するシャッタ先幕とシャッタ後幕を、該固体撮像素子の第1方向または第2方向に移動可能に保持するシャッタユニットと、少なくとも異なる第1の露光時間と第2の露光時間を順に計測するタイマ手段と、このタイマ手段の計測開始時にシャッタ先幕を走行させ、計測完了時にシャッタ後幕を走行させるシャッタ制御手段と、シャッタ先幕の走行開始から第1の露光時間が経過したときに、固体撮像素子の電荷読出タイミングをシャッタ先幕の走行速度に同期させ、シャッタ走行方向に沿って順番に、該第1の露光時間で蓄積された各単位セルの第1の電荷を読み出す露光中電荷読出制御手段と、シャッタ後幕の走行完了後に、第2の露光時間で蓄積された各単位セルの第2の電荷を読み出す露光後電荷読出制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0007】
露光中電荷読出制御手段は、固体撮像素子の電荷読出方向をシャッタ走行方向と同方向に設定し、該固体撮像素子の各単位セルの蓄積電荷を、シャッタ走行方向に直交する方向の列毎に、シャッタ先幕の走行速度に同期させて順に読み出すことが好ましい。より具体的には、シャッタ先幕の位置情報を取得する位置検出手段と、シャッタ先幕の走行速度と固体撮像素子の電荷読出タイミングを関連させた電荷読出タイミングテーブルを有しており、シャッタ走行方向に直交する方向の列毎に、シャッタ先幕の位置情報から算出した走行速度に対応する電荷読出タイミングテーブルで第1の電荷を読み出す。
【0008】
第1の露光時間と第2の露光時間は、第1の露光時間が第2の露光時間より長く設定されていることが実際的である。
【0009】
異なる露光時間で蓄積された第1の電荷と第2の電荷に基づく第1の画像と第2の画像を合成する画像合成手段を備えることが好ましい。第1の画像と第2の画像を合成することで、ダイナミックレンジを改善可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フォーカルプレーンシャッタによる1回のシャッタ動作で露光時間の異なる複数の画像を得る際に、各画像毎に、画像全領域で露光時間が均一になるデジタルカメラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態によるデジタルカメラの制御系を示すブロック図である。CPU11及びDPU12は、バスラインを介して相互に接続されており、露光制御を含むカメラシステム全体を総括的に制御する制御手段である。
【0012】
DPU12には、バッテリー20、電源回路21、外付フラッシュ22、絞り制御回路23、TTL調光素子24、電子ブザー25、測距スーパーインポーズ26、モードダイアル27、DPU側スイッチ群28、撮影レンズに搭載されたレンズCPU31、AFIC32及び内蔵フラッシュ33がそれぞれ接続されている。DPU12は、CPU11との相互通信を行ない、CPU11からの制御指令を受信して動作すると共に、該DPU12に接続された周辺回路や素子に関する動作情報及び設定情報をCPU11に送信する。
【0013】
バッテリー20は、デジタルカメラ全体の駆動電源である。電源回路21は、バッテリー20からの電力をCPU11及びDPU12に常時供給し、さらにDPU12からの電源制御指令に基づいて内蔵フラッシュ33、ミラーモータドライバ35、AFモータドライバ38及びDSP13への電力供給を制御する。
【0014】
外付フラッシュ22は、デジタルカメラのカメラボディに装着されており、DPU12との間で通信を行ない、DPU12の制御下でフラッシュを発光させる。絞り制御回路23は、DPU12からの制御信号に基づき、撮影レンズの絞りを絞り込む絞込機構(図示せず)の絞り込み動作を開始させ、この絞り込み動作に連動してEEパルスをDPU12に出力する。DPU12は、EEパルスを検知してカウントし、該カウント値がAE演算で求めたEEパルス数に達したときに制御信号を出力する。この制御信号に基づき絞り制御回路23は、絞り込み機構の絞り込み動作を停止させ、撮影レンズの絞り値を適正絞り値Avに保つ。TTL調光素子24は、被写体からのストロボ反射光を直接受光し、その受光信号をDPU12に出力する。電子ブザー25は、DPU12からの制御信号に基づき鳴動し、使用者に警告音を発する。測距スーパーインポーズ26は、LEDを備え、DPU12からの制御信号に基づいてLEDを点灯して複数の測距点を表示する。モードダイアル27は、撮影に必要な各種モードを設定するための操作部材であり、露出モード、ISO、記録サイズ、WB情報、リモコンモードなどの情報をDPU12に出力する。DPU側スイッチ群28には、AFボタンスイッチ、測光モードレバースイッチやドライブモードスイッチなどの複数のスイッチが設けられており、各スイッチのスイッチ情報はDPU12に出力される。
【0015】
レンズCPU31は、図示されていない撮影レンズに搭載されていて、DPU12を介して電源供給を受け、撮影レンズのマウント面に設けられた電気接点群を介してDPU12及びCPU11との間でそれぞれ通信を行なう。レンズCPU31には、焦点距離情報、開放絞り値及び最小絞り値情報など撮影レンズ固有のレンズ情報が格納されていて、これらレンズ情報が通信によりDPU12及びCPU11に読み込まれる。AFIC32は、CPU11及びDPU12の制御信号に基づいて各測距エリア又は選択された特定の測距エリア内に含まれる被写体の焦点状態を検出し、受光した被写体光束を電気的なビデオ信号に変換してCPU11に出力する。CPU11は、AFIC32から入力したビデオ信号に基づいて測距演算を行なう。内蔵フラッシュ33は、DPU12によって充電制御及び発光制御され、充電中にフラッシュ電圧が所定の充電完了レベルに達したら充電完了信号をDPU12に出力する。
【0016】
CPU11は、デジタルカメラの機能に関するプログラム等が書き込まれたROM11a及び各種パラメータ、レンズ情報などを一時的に記憶するRAM11bを内蔵している。CPU11には、上記レンズCPU31やAFIC32のほかに、16分割測光IC34、ミラーモータドライバ35、ミラースイッチ(ミラーアップスイッチ、ミラーダウンスイッチ)37、AFモータドライバ38、AF制御フォトインタラプタ40、リモコン受光IC41、EEPROM42、シャッタ先幕マグネット43、シャッタ後幕マグネット44、外部表示器45、ファインダ内表示器46、リモコン・セルフLED47、Avダイアル48、Tvダイアル49、CPU側スイッチ50、シャッタボタン51及びDSP13がそれぞれ接続されている。
【0017】
16分割測光IC34は、撮影範囲を16の測光エリアに分割して各測光エリア毎に測光可能であり、CPU11からのセンサー選択信号によって選択された各測光エリアについて、該測光エリアの受光量に応じた電気信号を被写体輝度情報BvとしてCPU11に出力する。CPU11は、被写体輝度情報Bv及びISO感度情報Sv等を用いて露出演算を行ない、適正露出値Ev、適正シャッタ速度Tv及び絞り値Avを求める。さらにCPU11は、不図示の絞り込み機構の絞り込み動作に連動して絞り制御回路23から出力される、適正絞り値Avに相当するEEパルス数を算出する。
【0018】
ミラーモータドライバ35は、CPU11からのミラー駆動信号に基づきミラーモータ36を駆動制御し、不図示のミラーをアップ又はダウンさせる。CPU11は、ミラーがアップ位置にあるか否か又はダウン位置にあるか否かをミラースイッチ37のスイッチ状態(ミラー位置信号)を介して検出する。AFモータドライバ38は、CPU11からのAF駆動信号に基づいてAFモータ39を駆動制御し、AFモータ39により撮影レンズの焦点調節レンズ系を合焦位置に移動させる。AF制御フォトインタラプタ40はAFモータ39の回転に連動してAFパルスをCPU11に出力し、CPU11は、AF制御フォトインタラプタ40から出力されたAFパルス数が、測距演算で設定したAFパルス数に達したら、AFモータドライバ38を介してAFモータ39の駆動を停止させる。リモコン受光IC41は、デジタルカメラに付属されたリモコン装置からのレリーズ指令を受信するものであり、待機時間中にリモコン装置からレリーズ指令を受信したらCPU11へ出力する。EEPROM42は、撮影やカメラ個体の調整に関する各種データが格納されるメモリ手段であり、格納データは適時にCPU11により読み出される。
【0019】
シャッタ先幕マグネット(ESMg1)43及びシャッタ後幕マグネット(ESMg2)44は、通電時はシャッタユニット(フォーカルプレーンシャッタ)70のシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74をそれぞれ電磁力により係止し、通電が断たれたときにシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74の磁力係止を解除して走行させる。CPU11は、シャッタ先幕マグネット43及びシャッタ後幕マグネット44の通電/非通電により、シャッタ走行を制御する。
【0020】
外部表示器45及びファインダ内表示器46は、撮影に関する各種情報を表示するLCDであり、CPU11からの表示信号に基づいて情報を表示する表示用LCDとCPU11からの点灯信号に基づいて点灯し、表示用LCDを背面側から照明する照明用LEDとをそれぞれ備えている。リモコン・セルフLED47は、リモコン装置からレリーズ指令を受信したとき、又はセルフタイマ撮影モードにおいてセルフタイマが作動中にCPU11により点灯され、使用者にレリーズタイミングを報知する。
【0021】
Avダイアル48は主に撮影レンズの絞り値を手動設定するための操作部材、Tvダイアル49はシャッタ速度を手動設定するための操作部材であり、設定された各種情報はそれぞれCPU11に出力される。CPU側スイッチ50には、デジタルカメラの主電源をオンするメインスイッチSWM、画像記憶手段64の着脱口の蓋の開閉状態を検知する蓋スイッチなどの各種スイッチが備えられている。シャッタボタン51は、2段階スイッチボタンであり、半押し状態で測光スイッチSWSがオンし、全押し状態でレリーズスイッチSWRがオンする。
【0022】
DSP(Digital Signal Processer)13は、DPU12及び電源回路21により電源制御され、電力供給を受けている状態では、CPU11との間で通信を行ない、CPU11からの制御信号や各種情報に基づいて画像処理する。DSP13には、制御用プログラム等が書き込まれたROM13a、各種情報を一時的に記憶するRAM13b、制御用の内部タイミングを発生するタイミングジェネレータ13cが内蔵されている。
【0023】
DSP13には、フラッシュメモリ61、CMOSイメージセンサ62、画像モニタ63、画像記憶手段64及び電荷読出制御フォトインタラプタ75がそれぞれ接続されている。フラッシュメモリ61には、DSP13の制御プログラム(ファームウエア)等が書き込まれている。DSP13は、CMOSイメージセンサ62から読み出した画像信号に各種の画像処理を施し、画像モニタ63に表示可能な撮影画像を生成する。生成された撮影画像は、DSP13によって、画像モニタ63のイメージLCD上に表示されるとともに、画像記憶手段64にメモリされる。またDSP13は、画像記憶手段64に記憶されている画像データを読み込んで画像モニタ63に表示する。画像モニタ63は、画像データを表示するイメージLCDとLCDバックライトである照明用LEDからなり、デジタルカメラの例えば背面に設けられている。画像記憶手段64はデジタルカメラに対して着脱自在である。この画像記憶手段64にはフラッシュメモリや小型ハードディスク装置などを使用することができる。
【0024】
電荷読出制御フォトインタラプタ75は、シャッタ先幕73の走行に連動してパルスを出力し、DSP13は、電荷読出制御フォトインタラプタ75から出力されたパルスに基づいてシャッタ先幕73の位置及び走行速度を検知する。本実施形態では、図12に示されるように、シャッタ先幕73及びシャッタ後幕74を走行可能に支持するシャッタ支持枠71に、シャッタ走行開始位置からシャッタ走行完了位置までの間に位置検出用センサ穴を五箇所形成し、この位置検出用センサ穴の位置を、シャッタ走行方向(図示上から下方向)に沿って順にシャッタ位置P1、P2、P3、P4、P5と設定してある。このシャッタ位置P1〜P5をシャッタ先幕73が通過する毎に、電荷読出制御フォトインタラプタ75からパルスが出力される構成となっている。DSP13は、電荷読出制御フォトインタラプタ75からパルスを入力する毎にシャッタ位置フラグを更新し、このシャッタ位置フラグによりシャッタ先幕73の現在位置を検出する。シャッタ位置フラグは、シャッタ先幕73が走行開始位置−シャッタ位置P1間に位置するときはクリアされ、シャッタ位置P1−P2間、P2−P3間、P3−P4間及びP4−P5間に位置するときはそれぞれP1、P2、P3、P4がセットされ、シャッタ位置P5(走行完了位置)に位置するときはP5がセットされる。
【0025】
上記全体構成を有するデジタルカメラにおいて、DSP13は、シャッタユニット70の1回のシャッタ動作(シャッタ先幕73が走行開始してからシャッタ後幕74が走行完了するまで)で露光時間の異なる2つの画像(各単位セル毎の蓄積電荷)をCMOSイメージセンサ62から読み出し、該2つの画像を合成することにより、ダイナミックレンジの改善された撮影画像を生成する。本発明は、上記露光時間の異なる2つの画像を得るためのシャッタ制御及びCMOSイメージセンサ62の電荷読出制御に特徴を有するものであり、以下では、図2〜図4を参照し、このシャッタ制御及び電荷読出制御について詳細に説明する。
【0026】
図2はCMOSイメージセンサ62の構成の一例を示し、図3はCMOSイメージセンサ62とシャッタユニット70の配置例を示している。
【0027】
CMOSイメージセンサ62は、図3に示されるようにシャッタユニット70の後方に配置され、該シャッタユニット70のシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74により形成されるスリットを介して、撮影レンズからの光(被写体像)を受光する。このCMOSイメージセンサ62は、高速読出可能なXYアドレス方式の固体撮像素子であり、具体的には図2に示されるように、センサ受光面αの水平方向H(図示左右方向;第1方向)と垂直方向V(図示上下方向;第2方向)に列状に配置された多数の単位セル62Xと、水平方向Hに単位セル62Xを選択する水平走査回路62Hと、垂直方向Vに単位セル62Xを選択する垂直走査回路62Vと、垂直方向Vの各列に設けられたノイズ除去用の列回路62Rと、水平走査回路62H及び垂直走査回路62Vにより選択的に読み出された単位セル62Xの蓄積電荷をDSP13へ順次出力する出力部62Oとを備えている。各単位セル62Xは、入射光を蓄積電荷に変換して蓄積する光電変換素子62X1と、この光電変換素子62X1が蓄積した蓄積電荷を増幅する増幅器62X2とから構成される。増幅器62X2で増幅された蓄積電荷は、水平走査回路62H及び垂直走査回路62Vにより当該単位セル62Xが選択されたときに出力され、列回路62Rを介して出力部62Oに送られる。DSP13は、制御信号(電荷読出用のタイミングパルス)により水平走査回路62H及び垂直走査回路62Vを動作させてCMOSイメージセンサ62の電荷読出制御を実行する。図示都合上、図3には水平方向4列、垂直方向4列に配置した計16個の単位セル62Xしか示されていないが、実際には、より多数の単位セル62Xが備えられている。
【0028】
シャッタユニット70のシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74は、上述したように、シャッタ先幕マグネット43及びシャッタ後幕マグネット44の電磁力により、それぞれの初期位置(走行開始位置)で保持される。初期位置において、シャッタ先幕73はCMOSイメージセンサ62のセンサ受光面αを全面的に覆い、シャッタ後幕74はシャッタ先幕73よりも上方に位置する。そしてシャッタ先幕マグネット43及びシャッタ後幕マグネット44の磁力係止が解除されたとき、図3の下方向、すなわち、CMOSイメージセンサ62のセンサ受光面αの垂直方向に向かって走行する。走行完了位置において、シャッタ先幕73はセンサ受光面αよりも下方に位置して該センサ受光面αを覆うことがなく、シャッタ後幕74はセンサ受光面α上に位置して該センサ受光面αを全面的に覆う。CMOSイメージセンサ62の露光は、シャッタ先幕73の走行開始により開始され、シャッタ後幕74の走行開始により完了する。
【0029】
図4は、シャッタ先幕73及びシャッタ後幕74の走行軌跡とCMOSイメージセンサ62の電荷読出タイミングとの関係を説明する模式図である。図4の実線はシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74の走行軌跡を、破線はCMOSイメージセンサ62の電荷読出タイミングをそれぞれ示している。図4において、縦軸はシャッタ先幕73、シャッタ後幕74の位置及びCMOSイメージセンサ62の電荷読出位置を、横軸は時間をそれぞれ示している。
【0030】
DSP13は、異なる第1の露光時間t1と第2の露光時間t2を設定してCMOSイメージセンサ62の電荷読出タイミングを制御し、CMOSイメージセンサ62が第1の露光時間t1で蓄積した第1の蓄積電荷と第2の露光時間t2で蓄積した第2の蓄積電荷を取得する。本実施形態では、1回のシャッタ動作により第1の露光時間t1で蓄積した第1の蓄積電荷と第2の露光時間t2で蓄積した第2の蓄積電荷を取得する露光モードを、「2回露光モード」という。第1の露光時間t1と第2の露光時間t2の合計時間は、シャッタ先幕73が走行開始してからシャッタ後幕74が走行開始するまでの時間に等しい。
【0031】
CMOSイメージセンサ62の露光は、シャッタ先幕73の走行開始により、開始される。ここで、シャッタ先幕73はCMOSイメージセンサ62のセンサ受光面αを上から下方向(垂直方向)に走行するから、図4からも明らかなように、水平方向の列毎に、CMOSイメージセンサ62の単位セル62Xの露光開始時刻にタイムラグが生じる。したがって、シャッタ先幕73の走行開始から第1の露光時間t1が経過したときに、単純にCMOSイメージセンサ62から蓄積電荷を読み出してしまうと、各単位セル62Xでの露光時間が異なってしまい、適正な画像信号を得ることができない。
【0032】
これを回避するため、DSP13は、全ての単位セル62Xで露光時間(シャッタ先幕73が当該単位セル62Xを通過してからの経過時間)が一定となるように、シャッタ先幕73の走行に関連させて、CMOSイメージセンサ62の電荷読出タイミングを制御する。具体的には、シャッタ先幕73の走行開始から第1の露光時間t1(t1<T)が経過したときに、CMOSイメージセンサ62からの電荷読出を開始し、各単位セルの蓄積電荷を、シャッタ走行方向と同じ方向(図3の上から下方向)に沿って水平方向の列毎に順番に読み出す。各単位セルの蓄積電荷を読み出すタイミングは、水平方向の列毎に、シャッタ先幕73の走行速度に同期させる。水平方向の列においては、出力部62Oに近い側の単位セルから順に、蓄積電荷を読み出す。
【0033】
図2を用いて電荷読出順の一例を説明すると、先ず、最上列(水平方向の1列目)の左端の単位セル62X11から順に右端の単位セル62X14まで蓄積電荷が読み出され、次に、上から2列目(水平方向の2列目)の左端の単位セル62X21から順に右端の単位セル62X24まで蓄積電荷が読み出され、続いて、同様にして3列目、4列目の各単位セルの蓄積電荷が読み出される。
【0034】
このようにCMOSイメージセンサ62の電荷読出タイミングをシャッタ先幕73の走行速度に同期させると、シャッタ先幕73の走行軌跡とCMOSイメージセンサ62の電荷読出タイミングは図4から明らかなように平行線となり、露光開始時刻から電荷読出時刻までの時間が全ての単位セル62Xで一定(上記第1の露光時間t1)になる。これにより、DSP13は、第1の露光時間t1で各単位セル62Xの光電変換素子62X1が蓄積した第1の蓄積電荷を取得する。
【0035】
各単位セル62Xでは、上記第1の蓄積電荷の読出により、第1の露光時間t1による1回目の露光が終了すると同時に、2回目の露光が開始される。シャッタ後幕74は、第1の露光時間t1に達した時点から第2の露光時間t2が経過したときに走行開始され、これによりCMOSイメージセンサ62の露光は終了される。シャッタ後幕74はCMOSイメージセンサ62のセンサ受光面αを上から下方向(垂直方向)に走行するから、図4からも明らかなように、水平方向の列毎に、CMOSイメージセンサ62の単位セル62Xの露光終了時刻にもタイムラグが生じる。図4の第1回目の電荷読出タイミングは、CMOSイメージセンサ62の各単位セル62Xの1回目の露光完了と2回目の露光開始の両方を示しており、シャッタ後幕74の走行軌跡に対しても平行である。よって、2回目の露光開始時刻から露光終了時刻までの時間も、全ての単位セル62Xで一定(上記第2の露光時間t2)となる。DSP13は、シャッタ後幕74の走行完了後に各単位セル62Xの蓄積電荷を順次読み出し、第2の露光時間t2で各単位セル62Xの光電変換素子62X1が蓄積した第2の蓄積電荷を得る。このように第2の蓄積電荷はシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74の走行速度に関係なく順番に読み出しているから、図4にも明らかなように、第2回目の電荷読出タイミングは第1回目の電荷読出タイミング及びシャッタ先幕73及びシャッタ後幕74の走行軌跡とは非平行となっている。
【0036】
上記第1の露光時間t1と第2の露光時間t2の比率は適宜設定可能である。第1の露光時間t1と第2の露光時間t2を例えば10対1の比率に設定すれば、露光レベルの10倍異なる二つの画像が得られ、該二つの画像を合成することによりダイナミックレンジを大きく改善することができる。本実施形態では、第1の露光時間t1よりも第2の露光時間t2を短く設定している。第1の露光信号を読み出し中にも第2の露光のためにセンサーに光が当たっていて僅かに信号に影響を受けるが、第2の露光信号読み出し時にはシャッタ幕で遮光されているためその影響は無い。このため、僅かに影響を受ける第1の露光信号の信号レベルを露光時間を長くして上げ、かつ第2の露光時間を短くすることで、影響を最小に抑えることができる。
【0037】
次に、図5〜図12を参照し、本デジタルカメラの全体処理について詳細に説明する。図5〜図7はCPU11がROM11aに書き込まれているプログラムに基づいて制御する各種処理に関するフローチャートであり、図8〜図10はDSP13がROM13aに書き込まれているプログラムに基づいて制御する各種処理に関するフローチャートである。図11は、デジタルカメラのレリーズ動作に関するタイミングチャートである。図12は、シャッタ先幕73の検出位置を示す模式平面図である。
【0038】
図5は、測光SW処理に関するフローチャートである。測光SW処理は、CPU11がROM11aに書き込まれているプログラムに基づいて制御し、デジタルカメラの主電源がオンしているとき(メインスイッチSWMがオンしているとき)に実行される。
【0039】
この処理に入ると、先ず、測光スイッチSWSがオンしているか否かをチェックする(S1)。測光スイッチSWSがオンしていなければ(S1;N)、SWS終了処理を実行する(S3)。SWS終了処理では、外部表示器45及びファインダ内表示器46にスリープタイマースタートを表示し、CPUスリープ状態へ移行する。測光スイッチSWSがオフしている間は、S1〜S3の処理を繰り返す。
【0040】
測光スイッチSWSがオンしていれば(S1;Y)、EE処理(S5)、AF検出演算処理(S7)及びAFレンズ駆動処理(S9)を実行してS1へ戻る。S5のEE処理では、16分割測光IC34から被写体輝度情報Bvを入力し、この被写体輝度情報Bvを用いた露出演算により適正露出値Ev、適正シャッタ速度Tv及び適正絞り値Avを算出し、さらに、適正絞り値Avに相当するEEパルス数を算出する。EEパルスは、絞りの絞り込み動作に連動して絞り制御回路23から出力されるパルスである。S7のAF検出演算処理では、AFIC32から入力したビデオ信号に基づいて測距演算を行い、撮影レンズの焦点調節レンズ系を合焦位置に移動させるためのレンズ駆動量及び該レンズ駆動量に相当するAFパルス数を算出する。S9のAFレンズ駆動処理では、AFモータドライバ38を介してAFモータ39を駆動させ、AFモータ39の回転に連動してAF制御フォトインタラプタから出力されるAFパルス数がS7で算出したパルス数に達した時点で、AFモータ39の駆動を停止させる。これにより、撮影レンズの焦点調節レンズ系を合焦位置へ移動させる。
【0041】
図6は、レリーズスイッチSWRがオンしたとき(図5の測光SW処理のS1、S5〜S9のループ中)に実行されるレリーズ割込処理に関するフローチャートである。
【0042】
レリーズスイッチSWRがオンしたら、先ずDSP13との間でミラーアップ前通信を行い、ミラーモータドライバ35及びミラーモータ36によるミラーアップ動作を開始させる(S11、S13、図11;時間x1)。ミラーアップ前通信では、2回露光モードで露光制御する旨及び第1の露光時間t1情報を含む露光制御情報をDSP13へ伝える。2回露光モードは、上述したように、1回のシャッタ動作により第1の露光時間t1で蓄積した第1の蓄積電荷と第2の露光時間t2で蓄積した第2の蓄積電荷を取得する露光モードである。
【0043】
続いて、DPU12及び絞り制御回路23を介して撮影レンズの絞りを適性Av値まで絞り込む(S15)。撮影レンズの絞り込み動作を開始すると、絞り込み動作に連動して絞り制御回路23からEEパルスが出力される(図11;時間x2)。DPU12は、出力されたEEパルス数をカウントし、そのカウント値が適正絞り値Avに相当するEEパルス数に達したときにCPU11に制御信を出力する。
【0044】
そして、S13のミラーアップ動作及びS15の絞り込み動作が完了しているか否かをチェックし(S17)、ミラーアップ動作及び絞り込み動作の一方でも完了していなければ両方ともに完了するまで待機する(S17;N)。CPU11は、ミラースイッチ(ミラーアップスイッチ)37のスイッチ状態によりミラーアップ動作が完了したか否かを検知し、DPU12から上記制御信号を入力したか否かにより絞り込み動作が完了したか否かを検知する。図11に示す実施形態では、時間x3で絞り込み動作が完了し、時間x4でミラーアップ動作が完了しているから、CPU11は時間x4まで待機することになる。
【0045】
ミラーアップ動作及び絞り込み動作の両方が完了したら(S17;Y)、DSP13の露光モードが開始されているか否かをチェックする(S19)。露光モードが開始されているか否かは、DSP13から露光モード開始信号を受信したか否かにより検知する。DSP13の露光モードが開始されていなければ該露光モードが開始されるまで待機し(S19;N)、開始されていればシャッタ制御処理を実行する(S19;Y、S21)。シャッタ制御処理では、シャッタ先幕73を走行開始させ(図11;時間x5)、該走行開始から第1露光時間t1と第2露光時間t2が経過したときにシャッタ後幕74を走行させる(図11;時間x12)。このシャッタ先幕73の走行開始からシャッタ後幕74の走行開始までの間(図11;時間x5〜x12)に、DSP13は、CMOSイメージセンサ62から露光時間の異なる2つの蓄積電荷(第1の露光時間t1による第1の蓄積電荷と第2の露光時間t2による第2の蓄積電荷)を取得する。
【0046】
シャッタ制御処理を実行したら、DSP13の露光モードが終了したか否かをチェックし(S23)、該露光モードが終了していなければ終了するまで待機する(S23;N)。露光モードが終了したか否かは、DSP13から露光モード終了信号を受信したか否かにより検知する。DSP13の露光モードが終了したら(S23;Y)、ミラーモータドライバ35及びミラーモータ36を介してのミラーダウン動作、DPU12及び絞り制御回路23を介しての絞り戻り制御動作、及び、シャッタチャージ動作を実行する(S25、図11;時間x16)。以上により、レリーズ割込処理は終了する。
【0047】
図7は、レリーズ割込処理のS21で実行されるシャッタ制御処理に関するフローチャートである。先ず、CMOSイメージセンサ62の第1回目の露光時間(第1の露光時間t1)と第2回目の露光時間(第2の露光時間t2)を露光時間Tとして設定し(S31)、シャッタ先幕マグネット43への通電をオフしてシャッタ先幕73を走行させるとともに露光タイマーをスタートさせ、シャッタ先幕73の走行開始情報をDSP13へ送信する(S33、図11;時間x5)。そして、露光タイマーが全体の露光時間Tに達するまで待機する(S35;N)。この待機時間中(露光時間中)に、DSP13は、CMOSイメージセンサ62の第1の露光時間t1による第1の蓄積電荷を読み出す。そして、露光タイマーが全体の露光時間Tに達したら(S35;Y、図11;時間x12)、シャッタ後幕マグネット44への通電をオフしてシャッタ後幕74を走行させ(S37、図11;時間x12)、シャッタ後幕74が走行完了位置に達するまで待機し(S39;N)、シャッタ後幕74の走行が完了したら、シャッタ後幕74の走行完了情報をDSP13へ送信し、レリーズ割込処理のS23へ進む(S39;Y、図11;時間x14)。
【0048】
図8は、DSP13により実行される画像処理に関するフローチャートである。この画像処理は、CPU11との間のミラーアップ前通信(図6に示すレリーズ割込処理のS11)が実行されるまで待機状態となっていて(S41;N)、該ミラーアップ前通信により露光制御情報を受信したときにS43へ進み、S43〜S55の処理を開始する(S41;Y)。ミラーアップ前通信により受信する露光制御情報には、2回露光モードで露光制御する旨及び第1の露光時間t1情報が含まれている。DSP13は、CPU11から指定された2回露光モード且つ第1の露光時間t1で露光制御を実行する。
【0049】
S43では、CMOSイメージセンサ62の電源をオンし、すべての単位セル62Xを露光可能状態とする。続いて、DSP13に内蔵されたタイミングジェネレータ13cにより発生される内部タイミングを設定し(S45)、露光モードを開始する旨をCPU11に送信する(S47)。
【0050】
露光モードを開始したら、2回露光モードでCMOSイメージセンサ62の露光を制御する2回露光制御処理を実行する(S49)。2回露光制御処理では、CMOSイメージセンサ62の各単位セルでの露光時間が一定となるようにCPU11のシャッタ制御に連動させてCMOSイメージセンサ62の電荷読出制御を行い、第1の露光時間t1で蓄積した第1の蓄積電荷と第2の露光時間t2で蓄積した第2の蓄積電荷とを取得する。
【0051】
2回露光制御処理を実行したら、露光モードが終了した旨をCPU11に送信し、CMOSイメージセンサ62の電源をオフする(S51)。続いて、2回露光制御処理で取得した露光時間の異なる2つの画像(第1の蓄積電荷による画像と第2の蓄積電荷による画像)を合成して、ダイナミックレンジの改善された撮像画像を生成する(S53)。そして、生成した撮像画像を画像記憶手段64に書き出すと共に、画像モニタ63に表示する(S55)。
【0052】
以上により、DSP13の画像処理は終了する。
【0053】
図9は、画像処理のS49で実行される2回露光制御処理に関するフローチャートである。この処理に入ると先ず、シャッタ先幕73が走行開始したか否かをチェックし(S61)、シャッタ先幕73が走行開始するまで待機する(S61;N)。シャッタ先幕73が走行開始したか否かは、DSP13がCPU11からシャッタ先幕73の走行開始情報を受信したか否かにより判断する。
【0054】
シャッタ先幕73の走行が開始されたら(S61;Y、図11;時間x5)、シャッタ位置フラグをクリアするとともにシャッタ位置検出割り込みを許可する(S63)。シャッタ位置検出割り込みが許可されると、DSP13は、電荷読出制御フォトインタラプタ75からパルスを入力する毎に、シャッタ位置検出割込処理(図10、図11;時間x6〜x10)を実行する。
【0055】
シャッタ位置検出割込処理は、シャッタ位置フラグを更新し、シャッタ先幕73の走行速度に応じた電荷読出タイミングテーブルを設定する。電荷読出タイミングテーブルは、CMOSイメージセンサ62の各単位セル62Xの電荷読出タイミング(電荷読出までの待機時間)を、シャッタ先幕73の走行速度に応じてテーブル化したものである。
【0056】
続いて、シャッタ先幕73がシャッタ位置P1に達したか否かをチェックする(S64)。シャッタ先幕73の位置は、上記シャッタ位置検出割込処理で設定されたシャッタ位置フラグにより検知する。シャッタ位置P1に達していなければ待機し(S64;N)、シャッタ位置P1に達したらCMOSイメージセンサ62の電荷読出用タイマーをスタートさせる(S64;Y、S65)。
【0057】
続いて、S65でスタートさせた電荷読出用タイマーが第1の露光時間t1に達したか否かをチェックし(S67)、第1の露光時間t1に達するまで待機する(S67;N)。
【0058】
そして電荷読出用タイマーが第1の露光時間t1に達したら(S67;Y、図11;時間x11)、第1回目の電荷読出を実行する(S69〜S73)。先ず、設定されている電荷読出テーブルに基づき、電荷読出タイマーと比較しながらCMOSイメージセンサ62の水平方向n列目の単位セル62Xの蓄積電荷を出力部62Oに近い側から順番に読み出す(S69)。ここで、CMOSイメージセンサ62の水平方向の列番号を示すnは、自然数であり、初期値として1が設定されている。続いて、全単位セル62Xについて電荷読出が完了したか否かをチェックし(S71)、完了していなければnに1加算してS69に戻る(S71;N、S73)。全単位セル62Xについて電荷読出が完了したか否かは、水平方向の列番号nが列総数に達したか否かにより判断する。DSP13は、全単位セル62Xの電荷読出が完了するまでS69〜S73の処理を繰り返すことにより、第1の露光時間t1で蓄積した第1の蓄積電荷を取得する。各単位セル62Xは、第1の蓄積電荷が読み出されると同時に、第2回目の露光(蓄積電荷の蓄積)を開始する。
【0059】
全部の単位セル62Xについて電荷読出が完了したら(S71;Y、図11;時間x13)、シャッタ位置検出割込みを禁止し(S75)、シャッタ後幕74が走行完了したか否かをチェックする(S77)。シャッタ後幕74が走行完了したか否かは、シャッタ後幕74の走行完了情報をCPU11から受信したか否かにより判断する。シャッタ後幕74の走行が完了していなければ完了するまで待機し(S77;N)、シャッタ後幕74の走行が完了したら(S77;Y、図11;時間x14)第2回目の電荷読出を実行する(S79、図11;時間x15)。CMOSイメージセンサ62の第2回目の露光はシャッタ後幕74が各単位セル62Xを覆った時点で完了しているので、第2回目の電荷読出では、CMOSイメージセンサ62の各単位セル62Xの蓄積電荷を一斉に読み出す。電荷読出順は、第1回目の電荷読出と同一である。これにより、DSP13は、第2の露光時間t2で蓄積した第2の蓄積電荷を取得する。第2回目の電荷読出後は、画像処理のS51へ進む。
【0060】
図10は、シャッタ位置検出割込処理に関するフローチャートである。シャッタ先幕73の走行が開始されると、図12に示されるシャッタ位置P1〜P5をシャッタ先幕73が通過する毎に、電荷読出制御フォトインタラプタ75からパルスが出力される。本処理は、DSP13が、電荷読出制御フォトインタラプタ75からパルスを入力したときに開始される。
【0061】
先ず、シャッタ位置フラグがクリアされているか否かをチェックする(S81)。ここで、シャッタ位置フラグがクリアされているのは、シャッタ先幕73の走行開始から1回目のシャッタ位置検出割込処理を実行する場合、すなわち、最初のパルスを電荷読出制御フォトインタラプタ75から入力したとき(図11;時間x6)である。シャッタ位置フラグがクリアされていれば、シャッタ位置フラグにP1をセットし、シャッタ先幕73が走行開始位置からシャッタ位置P1に達するまでの経過時間、すなわちシャッタ先幕73の走行速度により、P1−P2間電荷読出タイミングテーブルを仮セットし(S81;N、S83)、1回目のシャッタ位置検出割込処理を終了して元に戻る。
【0062】
シャッタ位置フラグがクリアされていなければ、シャッタ位置フラグにP1がセットされているか否かをチェックする(S81;N、S85)。シャッタ位置フラグにP1がセットされているのは、シャッタ先幕73がシャッタ位置P2に達して2回目のシャッタ位置検出割込処理を実行する場合、すなわち、2回目のパルスを電荷読出制御フォトインタラプタ75から入力したとき(図11;時間x7)である。シャッタ位置フラグにP1がセットされていれば、シャッタ位置フラグにP2をセットし、シャッタ先幕73がシャッタ位置P1からシャッタ位置P2に達するまでの経過時間、すなわちシャッタ先幕73の走行速度により、P1−P2間電荷読出タイミングテーブルをセットし、さらに、P2−P3間電荷読出タイミングテーブルを仮セットして(S85;Y、S87)、2回目のシャッタ位置検出割込処理を終了して元に戻る。
【0063】
シャッタ位置フラグにP1がセットされていなければ、シャッタ位置フラグにP2がセットされているか否かをチェックする(S85;N、S89)。シャッタ位置フラグにP2がセットされているのは、シャッタ先幕73がシャッタ位置P3に達して3回目のシャッタ位置検出割込み処理を実行する場合、すなわち、3回目のパルスを電荷読出制御フォトインタラプタ75から入力したとき(図11;時間x8)である。シャッタ位置フラグにP2がセットされていれば、シャッタ位置フラグにP3をセットし、シャッタ先幕73がシャッタ位置P2からシャッタ位置P3に達するまでの経過時間、すなわちシャッタ先幕73の走行速度により、P2−P3間電荷読出タイミングテーブルをセットし、さらに、P3−P4間電荷読出タイミングテーブルを仮セットして(S89;Y、S91)、3回目のシャッタ位置検出割込処理を終了して元に戻る。
【0064】
シャッタ位置フラグにP2がセットされていなければ、シャッタ位置フラグにP3がセットされているか否かをチェックする(S89;N、S93)。シャッタ位置フラグにP3がセットされているのは、シャッタ先幕73がシャッタ位置P4に達して4回目のシャッタ位置検出割込み処理を実行する場合、4回目のパルスを電荷読出制御フォトインタラプタ75から入力したとき(図11;時間x9)である。シャッタ位置フラグにP3がセットされていれば、シャッタ位置フラグにP4をセットし、シャッタ先幕73がシャッタ位置P3からシャッタ位置P4に達するまでの経過時間、すなわちシャッタ先幕73の走行速度により、P3―P4間電荷読出タイミングテーブルをセットし、P4−P5間電荷読出タイミングテーブルを仮セットして(S93;Y、S95)、4回目のシャッタ位置検出割込処理を終了して元に戻る。
【0065】
シャッタ位置フラグにP3がセットされていない場合は、シャッタ先幕73がシャッタ位置P5に達して5回目のシャッタ位置検出割込み処理を実行する場合、すなわち、5回目のパルスを電荷読出制御フォトインタラプタ75から入力したとき(図11;時間x10)である。この場合には(S93;N)、シャッタ先幕73がシャッタ位置P4からシャッタ位置P5に達するまでの経過時間、すなわちシャッタ先幕73の走行速度により、P4−P5間電荷読出タイミングテーブルをセットし(S97)、5回目のシャッタ位置検出割込処理を終了して元に戻る。
【0066】
このシャッタ位置検出パルス割込処理では、直前の走行速度に基づいて電荷読出タイミングテーブルを仮セットしておき、後に各シャッタ位置間の実際の走行速度に基づいて電荷読出タイミングテーブルを本セットしている。よって、シャッタ先幕73が各シャッタ位置P1〜P5を通過するまでの時間を取得できた場合は、仮タイミングテーブルよりも正確な本タイミングテーブルで電荷読出を実行することができ、該各シャッタ位置P1〜P5を通過するまでの時間を取得する前に第1の露光時間t1が経過してしまった場合には、仮セットした電荷読出タイミングテーブルで電荷読出を実行することができる。これにより、電荷読出動作を高精度に制御可能である。
【0067】
以上のように本実施形態では、シャッタ先幕73の走行開始から第1の露光時間が経過したときに、CMOSイメージセンサ62の蓄積電荷読出タイミングをシャッタ先幕73の走行速度に同期させ、シャッタ走行方向に沿って順番に、各単位セル62Xの光電変換素子62X1が該第1の露光時間で蓄積した第1の蓄積電荷を読み出し、シャッタ後幕74の走行完了後に、各単位セル62Xの光電変換素子62X1が第2の露光時間で蓄積した第2の蓄積電荷を読み出すので、全ての単位セル62Xにおける露光時間を第1の露光時間または第2の露光時間で一定とすることができる。これにより、フォーカルプレーンシャッタを用いたデジタルカメラにおいても、1回のシャッタ動作で露光時間の異なる2枚の画像が得られ、ダイナミックレンジを改善できる。
【0068】
本実施形態では、露光中にCMOSイメージセンサ62の電荷読出を1回行って露光時間の異なる2枚の画像を取得しているが、露光中にCMOSイメージセンサ62の電荷読出を2回以上行い、露光時間の異なる3枚以上の画像を取得してもよい。
【0069】
また本実施形態では、シャッタ走行方向をCMOSイメージセンサ62のセンサ受光面αの垂直方向(図3の上から下方向)とし、CMOSイメージセンサ62の電荷読出方向も該センサ受光面αの垂直方向としているが、シャッタ走行方向は垂直方向に限らず、水平方向(図3の左右方向)としてもよい。電荷読出方向はシャッタ走行方向に一致させる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施形態によるデジタルカメラの制御系を示すブロック図である。
【図2】図1のCMOSイメージセンサの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】CMOSイメージセンサとシャッタユニットの配置例を示す模式図である。
【図4】シャッタ先幕、後幕の走行軌跡と、同期読出方式によるCMOSイメージセンサの電荷読出軌跡との関係を説明する模式図である。
【図5】本デジタルカメラの測光SW処理に関するフローチャートである。
【図6】レリーズ割込処理に関するフローチャートである。
【図7】シャッタ制御処理に関するフローチャートである。
【図8】画像処理に関するフローチャートである。
【図9】2回露光制御処理に関するフローチャートである。
【図10】シャッタ位置検出割込処理に関するフローチャートである。
【図11】デジタルカメラのレリーズ動作に関するタイミングチャートである。
【図12】シャッタ先幕の検出位置を示す模式平面図である。
【図13】シャッタ先幕、後幕の走行軌跡と、一斉読出方式(従来制御)によるCCDイメージセンサの電荷読出軌跡との関係を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0071】
11 CPU
12 DPU
13 DSP
13a ROM
13c タイミングジェネレータ
43 シャッタ先幕マグネット
44 シャッタ後幕マグネット
62 CMOSイメージセンサ
62H 水平走査回路
62V 垂直走査回路
62O 出力部
62R 列回路
62X 単位セル
62X1 光電変換素子
62X2 増幅器
63 画像モニタ
64 画像記憶手段
70 シャッタユニット
73 シャッタ先幕
74 シャッタ後幕
75 電荷読出制御フォトインタラプタ
H 水平方向
V 垂直方向
α センサ受光面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子と増幅器を備えた単位セルが第1方向及び第2方向に列状に2次元配置されてなり、各単位セルの蓄積電荷を選択的に読出可能な固体撮像素子と、
この固体撮像素子への入射光を遮断するシャッタ先幕とシャッタ後幕を、該固体撮像素子の前記第1方向または前記第2方向に沿って移動可能に保持するシャッタユニットと、
少なくとも異なる第1の露光時間と第2の露光時間を順に計測するタイマ手段と、
このタイマ手段の計測開始時に前記シャッタ先幕を走行させ、計測完了時に前記シャッタ後幕を走行させるシャッタ制御手段と、
前記シャッタ先幕の走行開始から前記第1の露光時間が経過したときに、前記固体撮像素子の電荷読出タイミングを前記シャッタ先幕の走行速度に同期させ、シャッタ走行方向に沿って順番に、該第1の露光時間で蓄積された各単位セルの第1の電荷を読み出す露光中電荷読出制御手段と、
前記シャッタ後幕の走行完了後に、前記第2の露光時間で蓄積された各単位セルの第2の電荷を読み出す露光後電荷読出制御手段と、
を備えたことを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
請求項1記載のデジタルカメラにおいて、前記露光中電荷読出制御手段は、前記固体撮像素子の電荷読出方向をシャッタ走行方向と同方向に設定し、該固体撮像素子の各単位セルの蓄積電荷を、シャッタ走行方向に直交する方向の列毎に、前記シャッタ先幕の走行速度に同期させて順に読み出すデジタルカメラ。
【請求項3】
請求項2記載のデジタルカメラにおいて、前記露光中電荷読出制御手段は、前記シャッタ先幕の位置情報を取得する位置検出手段と、前記シャッタ先幕の走行速度と前記固体撮像素子の電荷読出タイミングを関連させた電荷読出タイミングテーブルを有しており、シャッタ走行方向に直交する方向の列毎に、前記シャッタ先幕の位置情報から算出した走行速度に対応する電荷読出タイミングテーブルで前記第1の電荷を読み出すデジタルカメラ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のデジタルカメラにおいて、前記第1の露光時間が前記第2の露光時間より長く設定されているデジタルカメラ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のデジタルカメラにおいて、異なる露光時間で蓄積された前記第1の電荷と前記第2の電荷に基づく第1の画像と第2の画像を合成する画像合成手段を備えたデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−92251(P2008−92251A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270378(P2006−270378)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】