説明

デスクシステム

【課題】椅子の後方に通路を確保するとともに、着座していない状態からから着座する状態となるまでに座の前部の位置を大きく変化させることなく、安定的に着座可能とするデスクシステム提供する。
【解決手段】デスクシステム1は、椅子2の座部22が、前部から後端部に向かうに従って上方へ向かうように傾斜した待機位置に位置するとともに、利用者が着座することで待機位置から下方へと回動させて利用者を支持可能な着座位置まで、第一軸31回りに回動可能とされ、背板部23が、座部22が待機位置に位置した状態で定置物11との間に通路Pを確保した退避位置に位置するとともに、利用者が着座することで退避位置から後方へと回動させて利用者を支持可能な支持位置まで、床に沿う軸32回りに回動可能とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスクシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大学等の教室や会議室等で使用される机と椅子としては、床面に固着された机と、該机の後方であって床面に固着された椅子とを備えるものが広く用いられている。
【0003】
上記の構成の椅子としては、例えば、床面から立設された脚体と、該脚体をリンク機構により支持するとともに着座していない状態で背もたれ側に上向きに傾斜した座と、座の後端に回動可能に設けられた背もたれとを備えるものがある(特許文献1参照)。
このような椅子では、使用者が座に腰掛ければリンク機構により、座の前方側が上がり後方側が下がって座が略水平状態となるとともに、背もたれが回動して後傾することにより、使用者は着座可能となる。
【0004】
また、床面上に固定された基部と、該基部から回動可能に立設された脚部と、該脚部に一体的に支持されて着座していない状態で前方に傾斜した座及び背もたれとを有する椅子も知られている(下記特許文献2参照)。
このような椅子では、使用者が座に腰掛ければ脚部が後方に回動されて、座が略水平状態となるまで座及び背もたれが後方に傾斜し、使用者が着座可能となる。
【0005】
上記の特許文献1及び2に記載の椅子では、着座した状態で背もたれが後傾するように構成されているため、着座していない時には背もたれの後方空間を大きく確保することができる。よって、椅子の後方に机が配設された場合でも、椅子の後方の通路幅を確保することができるという長所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−273768号公報
【特許文献2】特許3751802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献1及び2に記載の椅子の構成では、着座する際には座が回動し、利用者の膝裏が位置する座の前部が大きく移動するため、着座時に机と当該椅子の距離感を認識することが困難であり、安心して着座することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、椅子の後方に通路を確保するとともに、着座していない状態からから着座する状態となるまでに座の前部の位置を大きく変化させることなく、安定的に着座可能とするデスクシステム提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るデスクシステムは、床に固定された定置物と離間して設けられた机と、該机と前記定置物との間で前記床に固定され、前記定置物との間に利用者の通路を確保可能とする椅子とを備えたデスクシステムにおいて、前記椅子が、前記床に固定された支持部と、前部で前記支持部に前記床に沿う第一軸回りに回動可能に支持され、着座した利用者を下方から支持可能な座面を具備した座部と、前記座部の前記前部と反対側の後端部に支持され、着座した利用者を後方から支持可能な背面を具備した背板部とを有し、前記座部が、前記前部から前記後端部に向かうに従って上方へ向かうように傾斜した待機位置に位置するとともに、利用者が着座することで前記待機位置から下方へと回動させて利用者を支持可能な着座位置まで、前記第一軸回りに回動可能とされ、前記背板部が、前記座部が前記待機位置に位置した状態で前記定置物との間に前記通路を確保した退避位置に位置するとともに、利用者が着座することで前記退避位置から後方へと回動させて利用者を支持可能な支持位置まで、前記床に沿う軸回りに回動可能とされていることを特徴とする。
【0010】
このようなデスクシステムでは、背板部が退避位置に位置することにより、椅子と定置物との間に利用者の通路を確保することができる。
また、このような背板部が退避位置に位置するとともに座部が待機位置に位置する着座していない状態から、利用者が着座して座部が着座位置に位置する状態までに、座部の前部は第一軸回りに回動するだけであるため、その位置は大きく変化しない。よって、利用者を安定的に着座可能とすることができる。
【0011】
また、本発明に係るデスクシステムでは、前記背板部は、前記座部の前記後端部に、前記床に沿う第二軸回りに回動可能に支持され、該第二軸回りに回動することで、前記支持位置まで回動とされていてもよい。
【0012】
この構成では、背板部が第二軸回りに回動し支持位置まで後方に回動するため、利用者を後傾姿勢で安定的に支持して着座可能とすることができる。
【0013】
さらに、本発明に係るデスクシステムは、前記支持部は、前記座部を鉛直軸回りに回動可能に支持していることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、座部を鉛直軸回りに回動させれば、椅子の横方向又は後方から着座することができるため、使い勝手を良好とすることができる。
【0015】
また、本発明に係るデスクシステムは、前記支持部は、前記背板部を前記机側に向ける正面位置に付勢する付勢部を備えることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、付勢部により背板部は正面位置に付勢されており、着座時には利用者は正面位置を向くことができるため、安定的に着座可能とし、使い勝手を良好とすることができる。
【0017】
また、本発明に係るデスクシステムでは、前記背板部は、前記退避位置で、前記背面が、前記机と前記椅子とが並ぶ前後方向に直交する鉛直面と平行、または、前記鉛直面よりも後方に傾斜していることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、背板部の背面が鉛直面と平行、または、該鉛直面よりも後方に傾斜しているため、利用者にとって楽な姿勢で支持することができる。よって、利用者の使い勝手を良好とすることができる。
【0019】
また、本発明に係るデスクシステムでは、前記机と前記椅子とが、該机と該椅子とが並ぶ前後方向に連続して複数組設けられ、前記机の前方に配置される前記椅子は、当該机を前記定置物として、当該机との間に前記通路を確保可能に設けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、机と前方に配置される椅子との間に、利用者の通路を確実に確保することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るデスクシステムによれば、椅子の後方に通路を確保するとともに、着座していない状態からから着座する状態となるまでに座の前部の位置を大きく変化させることなく、安定的に着座可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るデスクシステムの概略全体図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の座部が待機位置に位置している場合の椅子の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の(a)座部が待機位置に位置している場合、(b)座部が着座位置に位置している場合、(c)背板部が支持位置に位置している場合のデスクシステムの側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の座部が着座位置に位置している場合の椅子の側面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の背板部が支持位置に位置している場合の椅子の側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の背板部が退避位置にある場合の要部の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の要部の斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子の背板部が支持位置にある場合の要部の断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るデスクシステムを構成する椅子が回転する構成を説明する図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るデスクシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るデスクシステムについて説明する。
図1に示すように、デスクシステム1は、床Fに固定され、所定の間隔に離間して配された複数の机11と、該それぞれの机11の後方に配され床Fに固定された椅子2とを備えており、利用者が該椅子2に着座して執務を可能としている。ここで、椅子2と該椅子2の後方に配される机11(定着物)との間には、利用者の通行を可能とする通路Pが確保されている。
なお、椅子2に利用者が着座して正面を向く側(図1に示す右手間側)を前方とし、反対側(図1に示す左奥側)を後方とし、椅子2が隣接して配設される方向(図1に示す右奥から左手前に沿う方向)を左右方向とする。
【0024】
机11は、左右方向に離間して配された一対の脚部12と、該脚部12の上部に載置された天板13と、脚部12の前部に配された前パネル14とを備えている。
脚部12は、床Fに沿って配された基台15と、該基台15から立設し天板13を支持する支持脚16とを有している。
天板13は、平面視して略矩形であった、左右方向に幅広に形成されている。
前板パネルは、一対の脚部12の前部にわたって配されている。
【0025】
図2に示すように、椅子2は、床Fに固定された支持部21と、支持構造40を介してその前部が支持部21に支持された座部22と、座部22の後端部から立設された背板部23と、支持部21の内部に配されたオートリターン機構50とを備えている。
ここで、椅子2は、詳細については後述する支持構造40により、図3(a)に示す利用者が座部22に着座していない第一状態から、図3(b)示す利用者が座部22に着座した第二状態、図3(c)に示す利用者が座部22に着座し背板部23を後傾させた第三状態まで変形可能とされている。
【0026】
図2に示すように、支持部21は、床Fに固定され平面視して略円形状のベース部26と、該ベース部26から立設された立設部27と、該立設部27の上端に設けられ平面視して前方に拡開した一対の支持本体28とを有している。
一対の支持本体28は、立設部27の上端に設けられ、前方に向かうにしたがって上方に向かうように延在し、その先端は座部22の裏面に取り付けられている。
【0027】
座部22は、着座した利用者を下方から支持可能な座面22Aを有しており、支持本体28の前部に設けられ、床Fに沿って左右方向を軸線方向とする第一軸31回りに回動可能に支持されている。
すなわち、座部22は、利用者が着座することで、図2に示す前部から後端部に向かうに従って上方へ向かうように傾斜した待機位置から、図4に示す第一軸31回りに回動して利用者を支持可能な着座位置まで移動する。本実施形態では、着座位置では、座面22Aは略水平状態とされている。
【0028】
図2に示すように、背板部23は、着座した利用者を後方から支持可能な背面23Aを有しており、座部22の後端部に設けられ、床Fに沿って左右方向を軸線方向とする第二軸32回りに回動可能に支持されている。
すなわち、背板部23は、利用者が着座することで、図3(a)に示す下部から上部に向かうに従って後方へ向かうように傾斜した(後方の机11との間に通路Pを確保した)退避位置の位置から、図3(c)及び図5に示す第二軸32回りに回動してさらに後傾し、利用者を支持可能な支持位置まで移動する。
また、背面23Aは、退避位置において、前後方向と直交する鉛直面よりも後方に傾斜している。
【0029】
図6に示すように、支持構造40は、座部22を上向きに付勢する付勢手段41と、背板部23を回動可能に支持するリンク機構71と、座部22を待機位置よりも下方に移動することを規制する座部規制手段91とを備えている。
【0030】
付勢手段41は、支持本体28と座部22とを連結するガススプリング42と、左右一対の板ばね部材43とを有している。
【0031】
ガススプリング42は、その一端が左右方向を軸線方向とする第三軸33を介して支持本体28に連結され、他端が左右方向を軸線方向とする第四軸34を介して座部22の裏面に連結されている。また、ガススプリング42は伸張する方向に付勢しており、これにより座部22は、利用者が着座していない状態で常時退避位置に位置するように付勢されている。
なお、ガススプリング42の他に圧縮コイルばね、オイルダンパ、エアダンパ等適宜採用可能である。
【0032】
図7に示すように、板ばね部材43は、側面視して前方に向かって開口するように形成され、後方が湾曲したU字状の部材である。また、板ばね部材43は、座部22(図6参照。以下同じ。)の裏面に固着された上側ばね部46と、第三軸33を介して支持本体28(図6参照。以下同じ。)に止着された下側ばね部47と、上側ばね部46と下側ばね部47とを連結する湾曲した湾曲部48とを有している。
【0033】
リンク機構71は、第三軸33を介して支持本体28に連結されたケース部材72と、該ケース部材72に設けられた左右方向を軸線方向とする後述する第五軸35及び第六軸36を介して該ケース部材72に配設された一対の圧縮ばね部材81とを有している。
【0034】
ケース部材72は、上側が開口した箱状部材であって、底部73と、該底部73から立設された一対の側壁部74及び後壁部75とを有しており、内部にガススプリング42を配設している。また、ケース部材72の後方の上面は、座部22の裏面に近接又は当接している。
側壁部74の前部には挿通孔76が穿設され、該挿通孔76に第三軸33が挿通されるとともに、該第三軸33に連結されたガススプリング42を該一対の側壁部74間に挿入配置している。
【0035】
圧縮ばね部材81は、ケース部材72の内部に配設され、前方から後方に向かって配設されたばね保持板82と、該ばね保持板82の外周に巻回された第一コイルバネ83と、該ばね保持板82の前部に設けられた第五軸35と、該ばね保持板82の後部に設けられた第六軸36とを有している。
ばね保持板82には、前部に第五軸挿通孔84が形成され、該第五軸挿通孔84に第五軸35が挿通されている。また、ばね保持板82には、後部に第六軸挿通孔85が形成され、該第六軸挿通孔85に第六軸36が挿通されている。
第一コイルバネ83は、伸縮可能に設けられ伸張方向に付勢している。
第五軸35は、左右方向を軸線方向として、その両端部がケース部材72の側壁部74に前方且つ下方から後方且つ上方に沿って所定範囲内を移動可能に設けられている。座部22が待機位置に位置している場合には、該第五軸35は前方且つ下方に位置している。
第六軸36は、左右方向を軸線方向として、ケース部材72の側壁部74に前方且つ下方から後方且つ上方に沿って所定範囲内を移動可能に設けられるとともに、その両端は背板部23の下部に回動可能に支持されている。座部22が待機位置に位置している場合には、該第六軸36は後方且つ上方に位置している。
また、第一コイルバネ83が伸張する方向に付勢していることにより、背板部23は、利用者が着座していない状態で退避位置に位置するように付勢されている。
【0036】
図6に示すように、座部規制手段91は、ケース部材72の前方側の底部の下面に形成された第一傾斜部92と、支持本体28の該第一傾斜部92と対向する面に形成された第二傾斜部93とを有している。
第一傾斜部92は、ケース部材72の底部73の下面において、前方から後方に向かうにしたがって上方に向かうように形成された斜面を有している。
第二傾斜部93は、支持本体28における第一傾斜部92と対向する部分において、前方から後方に向かうにしたがって上方に向かうように形成された斜面を有している。
第一傾斜部92と第二傾斜部93とは、利用者が着座していない状態で離間して配設されている。
【0037】
図9(a)及び(b)に示すように、オートリターン機構50は、支持部21の立設部27に配設され、上部に設けられた環状体51と、該環状体51を貫通して鉛直軸Q回りに回動可能な主軸52と、該主軸52の外周に設けられた固定カム53と、主軸52の外周であって固定カム53の下部に設けられた回転カム54と、主軸52に巻回された第二コイルバネ55(付勢部)とを有している。
環状体51は、平面視環状の部材であり、下部には突起部56が形成されている。
固定カム53の上部には、突起部56と対応する形状の溝部57が形成され、該溝部57が突起部56と係合している。また、固定カム53の下部には、半周毎に巻方向を異ならせた螺旋面からなる第一カム面61が形成されている。
回転カム54は、主軸52の軸線方向に摺動可能に設けられ、その上部には周毎に巻方向を異ならせた螺旋面からなる第二カム面62が形成されている。
第二コイルバネ55は、回転カム54の下部を上向きに付勢している。
【0038】
次に、椅子2が第一状態から第三状態まで移動する動作について説明する。
まず、図2に示すように、第一状態では、座部22は待機位置に位置し、背板部23は退避位置に位置している。
この状態で利用者が座部22に着座すると、座部22に作用した利用者の重力により、板ばね部材43は、図4に示すように上側ばね部46と下側ばね部47との間隔が狭まり、これにより下側ばね部47の後方側は後上方に押し上げられ、湾曲部48は座部22の裏面に沿って漸次後方に移行するように弾性変形する。
また、座部22は利用者の重力により第一軸31を中心として下向きに回動し、着座位置となる第二状態まで移動する。
ここで、リンク機構71が下方に移動するにともない、第一傾斜部92の下面が第二傾斜部93の上面と当接し、ケース部材72は該当接した位置よりも下方に移動することが規制される(不図示。)。
また、リンク機構71は下方に移動するのみで第一コイルバネ83に圧縮力は作用しないため、背板部23は第一コイルバネ83の初期の付勢力により図3(b)に示すように床Fに対する傾斜角度は第一状態と略同一である。
【0039】
次に、図4に示す第二状態から利用者が背板部23に後傾すると、図8に示すように、背板部23に支持させている第六軸36が前方且つ下方に移動するとともに、第一コイルバネ83が圧縮される。このようにして、背板部23は第二軸32を中心として回動して支持位置まで後傾した図8に示す第三状態となる。ここで、第六軸36の移動範囲が制限されているため、背板部23は支持位置よりも後方に後傾することはない。
第三状態では、座部22は着座位置に位置し、背板部23は支持位置に位置している。
【0040】
また、第三状態から利用者が背板部23から前傾すると、第一コイルバネ83の付勢力により伸張し、背板部23は第二軸32を中心として回動して前傾し第二状態となる。
【0041】
次に、第二状態から利用者が起立すると、ガススプリング42と板ばね部材43との付勢力により、座部22は第一軸31を中心として回動して図2に示す第一状態となる。
【0042】
次に、椅子2の水平方向の回動について説明する。
利用者が着座していない状態では、第二コイルバネ55の付勢力により図6(a)に示すように、固定カム53の第一カム面61の曲面部分と回転カム54の第二カム面62の曲面部分とが圧接している状態である。このとき、椅子2は図7において実線で示す背板部23の背面23Aを前方の机11側に向けた正面位置に位置している。
【0043】
この状態から利用者が椅子2を水平方向に回動させる方向に力を加えると、図6(b)に示すように、支持部21の主軸52が鉛直軸Q回りに回動し、これにともない回転カム54が回転する。このとき、第二カム面62は第一カム面61から反力を受け、第一カム面61の曲面部分と第二カム面62の曲面部分とが離間した状態、すなわち回転カム54が下方に移動した状態となり、第二コイルバネ55は圧縮される。これにより、椅子2は図10の二点鎖線で示すように、背面23Aを左右方向に向けた左右位置に回転する。
【0044】
この状態から利用者が椅子2に加えた回動方向の力を解除すると、第二コイルバネ55の付勢力により、回転カム54は主軸52とともに回転して第一カム面61と第二カム面62とが圧接した図6(a)に示す正面位置に戻る。
【0045】
このように構成されたデスクシステム1では、利用者が着座していない第一状態では、図3(a)に示すように、背板部23は退避位置にあるため、後方の机11との間で通路Pを確保することができる。
また、利用者が着座すれば、座部22は略水平状態の着座位置に位置する第二状態となり、後傾すれば背板部23は第二軸32を中心として回動し後傾して第三状態となり、利用者は背板部23で背中を支持される。よって、背板部23に重心をかけて安定的に着座して、前方の机11を使用して執務を行うことができる。
【0046】
ここで、第一状態から第二状態に移動する際に、座部22が第一軸31回りに回動することにともない背板部23は下方に移動するのみであるため、退避位置から最小限の可動範囲で着座可能とすることができる。
また、第一状態から第二状態に移動する際に、座部22の前部は第一軸31回りに回動するだけであり、その位置の移動量を抑えることができる。よって、利用者は、着座する際に下肢を配置するべき座部22の前部よりも前方の位置に下肢を配置した後、座面22Aに腰を落とすだけで確実に座面22Aに支持されることとなり、狭いスペースでも安心して着座することができる。
さらに、座部22は第一状態で前部から後端部に向かうに従って上方に向かうように傾斜して設けられているため、利用者が起立位置から着座位置まで移動する動作のうち早い段階で座面22Aと接触することができ、接触後は座部22の移動に従って降下していくだけである。よって、この点においても狭いスペースでも安心して着座することができる。
【0047】
また、背面23Aは、第一状態で鉛直面よりも後方に傾斜しており、第二状態においても下方に移動するのみであるためその角度は変わらない。よって、第二状態においても、利用者の背中を後傾姿勢として支持することができるため、利用者にとって楽な姿勢であり安定的に支持することができる。
【0048】
また、利用者は、第二状態から背板部23に重心をかければ、該背板部23は第二軸32回りに回動して支持位置まで後傾する。よって、利用者にとって楽な姿勢で支持することができるため使い勝手を良好とすることができる。
【0049】
また、利用者は、椅子2の左右方向の位置に起立して該椅子2を水平方向に回動させれば、該当該位置から着座可能となる。よって、例えば椅子2と前方の机11との空間部分が狭い場合でも、左右方向の位置からアクセスできるため利便性が高い。
【0050】
さらに、着座した後には、第二コイルバネ55により椅子2は正面位置に位置するため、利用者は前方の机11に向かって着座及び執務可能となり、使い勝手を良好とすることができる。
【0051】
また、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、背板部23の背面23Aは鉛直面と平行であってもよい。この状態では、椅子2と定置物との間の通路Pを確実に確保することができるとともに、背板部が利用者を支持して安定的に着座することができる。
【0053】
また、利用者が座部22に着座することにより、座部22及び背板部23が一体として第一軸31回りに回動し、その後背板部23に重心をかけることにより背板部23が第二軸32回りに回動する構成であってもよい。
さらには、利用者が座部22に着座する動作から背板部23に荷重をかける動作に至るまで、座部22と背板部23とが一体として第一軸31回りに回動する構成であってもよい。
これらの場合でも、椅子2と定置物との間に通路Pを確保することができるとともに、座部22の前部の位置が大きく変化させることなく、安定的に着座可能とすることができる。
【0054】
なお、上述の支持構造40及びオートリターン機構50は一例であり、同様に動作するものであれば他の周知の構造、機構を採用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…デスクシステム
2…椅子
11…机(定置物)
21…支持部
22…座部
22A…座面
23…背板部
23A…背面
31…第一軸
32…第二軸(軸)
55…第二コイルバネ(付勢部)
F…床
P…通路
Q…鉛直軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に固定された定置物と離間して設けられた机と、該机と前記定置物との間で前記床に固定され、前記定置物との間に利用者の通路を確保可能とする椅子とを備えたデスクシステムにおいて、
前記椅子が、
前記床に固定された支持部と、
前部で前記支持部に前記床に沿う第一軸回りに回動可能に支持され、着座した利用者を下方から支持可能な座面を具備した座部と、
前記座部の前記前部と反対側の後端部に支持され、着座した利用者を後方から支持可能な背面を具備した背板部とを有し、
前記座部が、前記前部から前記後端部に向かうに従って上方へ向かうように傾斜した待機位置に位置するとともに、利用者が着座することで前記待機位置から下方へと回動させて利用者を支持可能な着座位置まで、前記第一軸回りに回動可能とされ、
前記背板部が、前記座部が前記待機位置に位置した状態で前記定置物との間に前記通路を確保した退避位置に位置するとともに、利用者が着座することで前記退避位置から後方へと回動させて利用者を支持可能な支持位置まで、前記床に沿う軸回りに回動可能とされていることを特徴とするデスクシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のデスクシステムにおいて、
前記背板部は、前記座部の前記後端部に、前記床に沿う第二軸回りに回動可能に支持され、該第二軸回りに回動することで、前記支持位置まで回動とされていることを特徴とするデスクシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のデスクシステムにおいて、
前記支持部は、前記座部を鉛直軸回りに回動可能に支持していることを特徴とするデスクシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のデスクシステムにおいて、
前記支持部は、前記背板部を前記机側に向ける正面位置に付勢する付勢部を備えることを特徴とするデスクシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデスクシステムにおいて、
前記背板部は、前記退避位置で、前記背面が、前記机と前記椅子とが並ぶ前後方向に直交する鉛直面と平行、または、前記鉛直面よりも後方に傾斜していることを特徴とするデスクシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデスクシステムにおいて、
前記机と前記椅子とが、該机と該椅子とが並ぶ前後方向に連続して複数組設けられ、前記机の前方に配置される前記椅子は、当該机を前記定置物として、当該机との間に前記通路を確保可能に設けられていることを特徴とするデスクシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−94529(P2013−94529A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242163(P2011−242163)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】