説明

デマンドコントロール装置

【課題】 従来のデマンドコントロール装置は、負荷の投入遮断の制御しかできないため、蓄電池設備を有する電力設備に対して、蓄電池の充放電電力を制御しながら目標デマンドを超過しないように需要電力を抑制して電力の平準化を行うということができなかった。
【解決手段】 制御対象負荷の投入可能な負荷容量と遮断可能な負荷容量および調整電力値の各計算値を蓄電池設備に通知するための情報出力手段を設けた。
また、外部から切り替えることができる複数のモードを設け、モード毎に充放電電力を求める前記計算値を含む演算式を定義し、モードによって演算式を切り替えて充放電電力を算出し、この値を情報出力手段で蓄電池設備に通知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商用電力系統から電力の供給を受けて需要家内の複数の電力負荷設備に電力を供給する受変電設備に使用され、需要電力量を計測してデマンド監視の単位時間終了時の需要電力量を予測して目標需要電力量を超過しないように需要電力を制御することを目的とするデマンドコントロール装置に係り、需要家内に設置される電力貯蔵が可能な蓄電池設備の充放電電力を適切に制御することによって前記目的を達成し、かつ需要電力の平準化を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のデマンドコントロール装置は例えば、特許文献1に示すように図1のような構成になる。受変電設備2は商用電力系統1から電力供給を受けて負荷設備4に電力を供給する。商用電力系統1から供給される需要電力量は、発信装置付電力量計3によって計測されてデマンドコントロール装置9に入力される。デマンドコントロール装置9は、一定のデマンド時限と呼ばれる期間(通常30分)で需要電力量が目標需要電力量(目標デマンド値という)を超えないように次のような制御を行う。
目標デマンド値は目標デマンド記憶部10に記憶されている。時限信号発生部11はデマンド時限を計時するものである。現在デマンド演算部12はデマンド時限開始から現時点までの需要電力量(現在デマンド値という)を演算する。予測デマンド演算部13は現在デマンド値と経過時間をもとにデマンド時限終了時における需要電力量の予測値(予測デマンド値という)を演算する。
【0003】
調整電力演算部14は、デマンド時限終了時に予測デマンド値と目標デマンド値が一致するように現時点で遮断または投入すべき電力(調整電力という)を演算する。この調整電力は下式によって演算する。
調整電力=(予測デマンド値−目標デマンド値)×30/残り時間
ここで、30及び残り時間の単位は「分」である。
調整電力は、正の値のときは遮断すべき電力を示し、負のときは投入すべき電力を示す。
【0004】
警報発生部15はデマンド時限開始以降の各時点で、予測デマンド値が目標デマンド値を超過する場合に警報を出力する。
【0005】
一般的に負荷設備4はデマンド制御の対象ではない負荷7と制御対象負荷8(図1,2の8a,8b,8c等の総称,以下同じ)に分類される。それぞれの負荷には電力供給を遮断または投入するための負荷開閉器5,6(図1,2の6a,6b,6c等の総称,以下同じ)が接続されるが、制御対象負荷8に接続される負荷開閉器6は制御信号によって遮断または投入の切替操作が可能である。制御負荷情報記憶部16は制御対象負荷8の制御順位と負荷容量の情報が記憶されている。負荷制御部17は警報が発生されたときに次の制御順位の負荷容量と調整電力値を比較し、調整電力値が正でその値が負荷容量以上のときに当該負荷8に対して遮断信号を出力する。遮断信号は負荷開閉器6に与えられ、当該負荷8への電力供給が遮断される。このようにしてデマンドコントロール装置9は、30分のデマンド時限内で需要電力量が目標デマンド値を超過しないように制御する。
また、調整電力値が負でその絶対値が負荷容量以上の場合には当該負荷8に対して投入信号を出力して需要電力量が目標デマンド値を下回らないように制御することが可能である。
【0006】
特許文献2では、商用電源の停電時に電力を供給する無停電電源設備を有してなる装置のデマンド監視方法において、需要電力超過予測時に蓄電池設備を利用することによって負荷遮断を防止することができる蓄電池設備を利用したデマンド監視装置およびその方法が提案されている。これによると、負荷設備の使用電力を監視し、電力使用超過予測時に設備の電力余裕分を計算するとともにデマンド警報を発するデマンド監視装置と、前記デマンド警報が発せられたときに蓄電池設備又は無停電電源設備の余裕分を負荷に供給させる制御を行うデマンド制御装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−198530
【特許文献2】特開平8−289470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
蓄電池設備は太陽光発電等の余剰電力を蓄積し、必要なときに蓄積した電力が利用できるため、電力の平準化対策に極めて有効な設備である。また、一定期間のデマンド時限内で需要電力量が目標デマンドを超過しないように電力抑制を行うデマンド制御にも効果がある。
特許文献1に示した従来のデマンドコントロール装置では、負荷の投入遮断の制御しかできないため、蓄電池設備の充放電電力を調整することによって生じる需要電力の増減をデマンド制御に利用できないという課題があった。
特許文献2の蓄電池設備を利用したデマンド監視装置およびその方法では蓄電池設備又は無停電電源設備の余剰容量分の電力を供給することにより需要電力の抑制を行うが、その余剰容量は必ずしも需要電力量が目標値を超過しないために現在遮断すべき電力値であるとはいえない。したがって、正確に需要電力量を目標需要電力量に一致させるような制御はできない。また、需要電力量が目標需要電力量を超過しないように蓄電池へ充電する方法については言及されていない。
【0009】
本発明は、充電電力または放電電力の制御が可能な蓄電池設備を有する需要家内の電力設備に対して、従来の負荷の遮断と投入の制御に加えて、蓄電池設備が目標デマンドを超過しないように適切に充放電電力を制御して需要電力を平準化できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、商用電力系統から電力の供給を受け、需要家内の電力貯蔵が可能な蓄電池設備と複数の負荷設備からなる電力設備に電力を供給する受変電設備に使用され、需要電力量を計測してデマンド監視の単位時間終了時の需要電力量を予測し、前記予測値が目標需要電力量と一致するように遮断または投入すべき調整電力を計算し、前記調整電力値を参照しながら制御対象負荷の遮断と投入の判断を行うデマンドコントロール装置において、制御対象負荷の投入可能な負荷容量および遮断可能な負荷容量を算出する制御負荷容量演算手段と、前記制御負荷容量演算手段による算出値および調整電力値を前記蓄電池設備に通知するための情報出力手段を設けた。
【0011】
第2の発明は第1の発明において、外部からモードを切替えるための指令を入力するモード切替入力手段と、前記制御負荷容量演算手段の算出値と調整電力値を参照して充放電電力を求める演算式をモード毎に定義し、モードによって演算式を切り替えて計算する充放電電力演算手段を設け、前記充放電電力演算手段による計算値を前記情報出力手段で通知するようにした。
【0012】
第3の発明は第2の発明において、前記充放電電力演算手段は、1のモードでは制御対象負荷の状態に無関係に調整電力値と同値を、2のモードでは投入可能な負荷容量と調整電力値を加算した値を、3のモードでは調整電力値から遮断可能な負荷容量を減算した値を算出するようにした。
【発明の効果】
【0013】
デマンド時限終了時の需要電力量を制御変数とすると、これが目標デマンドに一致するように投入または遮断すべき電力を示す調整電力はこの制御対象の操作変数である。一方、従来のデマンド制御の対象負荷における遮断可能な負荷容量と投入可能な負荷容量も需要電力量を制御できる操作変数である。この3個の操作変数を参照しながら適切に蓄電池設備の充電電力または放電電力を設定することによって、従来のデマンド制御より精度が高くて調整範囲が広い電力抑制制御が可能になる。また、蓄電池設備からの放電を利用することにより負荷を遮断することなく需要電力の抑制が可能になる。また、蓄電池設備が電力貯蔵能力を利用して電力平準化の充放電を実施する際にも前述のデマンド制御による電力抑制が可能になる。
【0014】
第1の発明によれば、制御対象負荷の中で投入可能な負荷容量と遮断可能な負荷容量および調整電力値を蓄電池設備に通知することができる。これにより蓄電池設備は、制御対象負荷の投入と遮断による電力の増減を相殺または補完しながら、需要電力量が目標需要電力量を超過しないように抑制するための放電電力と、目標需要電力量が許す範囲で最大となる充電電力を決定することができる。
【0015】
第2の発明によれば、需要家のエネルギー利用計画に基づいて負荷の投入遮断と蓄電池の充放電のどちらを優先するか等の各種条件を含む充放電電力の演算方法を複数のモード毎で定め、外部からの指令でそのモードを切り替えることが可能になる。これにより蓄電池設備はモードを指定して当該モードの充放電電力値をデマンドコントロール装置から取得することができるため、需要家のエネルギー利用計画に適した充放電によるデマンド制御が可能になる。
【0016】
第3の発明によれば、1のモードでは制御対象負荷の制御によらずに蓄電池設備の充放電だけで需要電力量を目標デマンドに一致させるようなデマンド制御が可能になる。本モードは、たとえば需要家施設の運転計画により負荷設備の投入ができない、あるいは遮断ができない場合等に有効である。
2のモードでは負荷投入制御が実施されることを前提にして蓄電池設備の充放電電力を決定するため負荷投入制御を促すように働く充放電によるデマンド制御が可能になる。本モードは、たとえば施設の運転計画により負荷の運転が最優先される場合等に有効である。
3のモードでは負荷遮断制御が実施されることを前提にして蓄電池設備の充放電電力を決定するため負荷遮断制御を促すように働く充放電によるデマンド制御が可能になる。本モードは、たとえば蓄電池の充電電力を大きくして急速充電したい場合や蓄電池の放電電力をできるだけ少なくしたい場合に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来技術の構成を説明する機能ブロック図
【図2】本発明の構成を説明する機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本発明は、例えば図2に示すように構成されたデマンドコントロール装置に適用される。図2における1から17の符号で示される構成要素は図1に示した従来技術による構成要素と同一の形態である。
第1の発明の形態について以下に説明する。制御負荷容量演算手段18は、従来技術のデマンドコントロール装置9の負荷制御部17から制御対象負荷8の制御状態の情報と、制御負荷情報記憶部16から制御対象負荷8の負荷容量を参照して、投入可能な負荷と遮断可能な負荷のそれぞれの容量を算出して最新の値を求める。情報出力手段19は、制御負荷容量演算手段18が計算する投入可能な負荷容量と遮断可能な負荷容量、および調整電力演算部14が計算する調整電力の最新の値を参照して蓄電池設備20に通知する。
【0019】
第2の発明の形態について以下に説明する。モード切替入力手段21は装置の外部からモードを切替えるための指令を入力する。充放電電力演算手段22は複数のモードを管理し、モード切替の指令に応じてモード遷移を行う。また、充放電電力演算手段22は制御負荷容量演算手段18の計算結果と調整電力演算部14の計算結果を含む充放電電力を求める演算式をモード毎に用意して記憶し、指示されたモードによって演算式を選択し、投入可能な負荷容量と遮断可能な負荷容量と調整電力値の最新の値をこれに代入して充放電電力の値を算出する。情報出力手段19は得られた充放電電力値を蓄電池設備20に通知する。
【0020】
第3の発明の形態について以下に説明する。本発明は第2の発明におけるモードとして3つを用意し、充放電電力演算手段22は3つのモードのそれぞれに以下の演算式を記憶する。
1のモード:充放電電力=調整電力値
2のモード:充放電電力=調整電力値+投入可能な負荷電力容量
3のモード:充放電電力=調整電力値−遮断可能な負荷電力容量
上式において、調整電力が正の値のときは遮断すべき電力を示し、負のときは投入すべき電力を示す。同様に充放電電力の値が正のときは放電電力を示し、負のときは充電電力を示す。
【0021】
1のモードでは調整電力の値がそのまま充放電電力として与えられる。調整電力が正の値のときは遮断すべき電力値を示すが、負荷遮断によって需要電力を減少させる代わりに蓄電池設備から同値の電力を放電によって供給しても結果的には同様の効果が得られる。また、調整電力が負のときは投入すべき電力値を示すが、負荷投入によって需要電力を増加させる代わりに蓄電池設備に同値の電力を充電しても結果的に同様の効果が得られる。このため、本モードは制御対象の負荷の投入または遮断を実施しないで蓄電池設備の充放電電力の制御だけで需要電力量を目標デマンドに一致させるように制御するデマンド制御を提供する。
【0022】
2のモードでは従来のデマンド制御の負荷投入によって増加する電力値を調整電力値に加算した値が充放電電力として与えられる。この意味を以下に説明する。調整電力が正の値のときは遮断すべき電力値を示すが、そのときに投入可能な負荷がすべて投入されると遮断すべき電力値は投入負荷容量だけ増加されることになる。これを蓄電池設備からの放電電力で賄うならば前記の2のモードで示す式で与えられる放電電力が必要になる。また、調整電力が負の値のとき、その絶対値は投入すべき電力値を示すが、そのときに投入可能な負荷がすべて投入されると投入すべき電力値は投入負荷容量だけ差し引かれることになる。これを蓄電池設備への充電電力で賄うならば値の正負を意識して表現すると前記の2のモードで示す式で与えられる充電電力が必要になる。
【0023】
すなわち、投入可能な負荷の電力増加を予め見込んで負荷投入後の需要電力量が目標デマンドに一致するように蓄電池設備の充放電を行うことができる。このような特徴を有する本モードは負荷投入制御を促すように働く充放電によるデマンド制御を提供する。
【0024】
3のモードでは従来のデマンド制御の負荷遮断によって減少する電力値を調整電力値から減算した電力値が充放電電力として与えられる。この意味を以下に説明する。調整電力が正の値のときは遮断すべき電力値を示すが、そのときに遮断可能な負荷がすべて遮断されると遮断すべき電力値は遮断負荷容量だけ差し引かれることになる。これを蓄電池設備からの放電電力で賄うならば前記の3のモードで示す式で与えられる放電電力が必要になる。また、調整電力が負の値のとき、その絶対値は投入すべき電力値を示すが、そのときに遮断可能な負荷がすべて遮断されると投入すべき電力値は投入負荷容量だけ増加されることになる。これを蓄電池設備への充電電力で賄うならば値の正負を意識して表現すると前記の2のモードで示す式で与えられる充電電力が必要になる。
【0025】
すなわち、遮断可能な負荷の電力減少を予め見込んで負荷遮断後の需要電力量が目標デマンドに一致するように蓄電池設備の充放電を行うことができる。このような特徴を有する本モードは負荷遮断制御を促すように働く充放電によるデマンド制御を提供する。
【符号の説明】
【0026】
1 商用電力系統
2 受変電設備
3 発信装置付電力量計
4 負荷設備
5 負荷開閉器(操作なし)
6 負荷開閉器(操作可能)
7 負荷(制御未対象)
8 負荷(制御対象)
9 デマンドコントロール装置
10 目標デマンド記憶部
11 時限信号発生部
12 現在デマンド演算部
13 予測デマンド演算部
14 調整電力演算部
15 警報発生部
16 制御負荷情報記憶部
17 負荷制御部
18 制御負荷容量演算手段
19 情報出力手段
20 蓄電池設備
21 モード切替入力手段
22 充放電電力演算手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から電力の供給を受け、需要家内の電力貯蔵が可能な蓄電池設備と複数の負荷設備からなる電力設備に電力を供給する受変電設備に使用され、需要電力量を計測して単位時間終了時の需要電力量を予測し、前記予測値が目標需要電力量と一致するように遮断または投入すべき調整電力を計算し、前記調整電力値を参照しながら制御対象負荷の遮断と投入の判断を行うデマンドコントロール装置において、制御対象負荷の投入可能な負荷容量および遮断可能な負荷容量を算出する制御負荷容量演算手段と、前記制御負荷容量演算手段による算出値および調整電力値を前記蓄電池設備に通知するための情報出力手段を設けたことを特徴とするデマンドコントロール装置。
【請求項2】
外部からモードを切替えるための指令を入力するモード切替入力手段と、前記制御負荷容量演算手段の算出値と調整電力値を参照して充放電電力を求める演算式をモード毎に定義し、モードによって演算式を切り替えて計算する充放電電力演算手段を設け、前記充放電電力演算手段による計算値を前記情報出力手段で通知するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のデマンドコントロール装置。
【請求項3】
前記充放電電力演算手段は、1のモードでは制御対象負荷の状態に無関係で調整電力値と同値を、2のモードでは遮断中かつ投入可能な負荷電力容量と調整電力値を加算した値を、3のモードでは調整電力値から投入中かつ遮断可能な負荷電力容量を減算した値を算出するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のデマンドコントロール装置。


【図1】
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【図2】
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