説明

データセットを可視化する方法及び装置

【課題】データセットを可視化する方法と装置を提供する。
【解決手段】時間的処理に支配される定義された数の要素を含むデータセットを可視化する方法及び装置が記載されている。データセットの空間的に隣接する要素の表示可能なクラスターの数(B)を決定した(10、11、12)後、データセットの要素の少なくとも一部は取得される(14)。データセットの取得された要素及びデータセットのまだ取得されていない要素は、クラスターの決定された数へクラスター化され(15)、ここで、データセットのまだ取得されていない要素はプレースホルダを使用して表される。各クラスターに値を割り当てた(17)後に、各クラスターの値がディスプレイ上に可視化される(18)。データセットの1つ以上の要素が変更されるたびに、及び/又は、データセットの1つ以上の更なる要素が取得されるたびに、ディスプレイ上のクラスターと割り当てられた値と可視化とが更新される(15、17、18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセットを可視化する方法及び装置に関し、より詳細には、時間的処理に支配され、すなわち部分的に完成していない及び/又は連続的に更新されるデータセットを可視化する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル画像シークエンスもと呼ばれるデジタル動画は、多くの場合、メタデータ情報とを伴ってくる。好ましくは、このメタデータ情報は、デジタル画像シークエンスのすべての単一のフレームのために利用可能である。メタデータは、典型的に、カメラ自体により、又は、より多く、リアルタイム又は非リアルタイムの事後処理アルゴリズムにより、生成される。メタデータは、例えば、ノイズレベル、画像のコントラスト等の複数の情報を含み、より高度なアルゴリズムの場合には、それぞれの枠内で検出された顔や車等のいくつかの対象物を含む。専門のポストプロダクション環境では、映画ごとに複数のデータセットを扱う又は複数の映画において複数のデータセットを扱う人間の検閲者は、一定の品質基準のための、例えば以前の自動検出処理で識別された欠陥を再検査するためのメタデータ情報を検査する必要がある。膨大な量の情報に起因するため、人間の検閲者は、メタデータを検査する必要な時間を最適化することに重大な関心を持っている。
【0003】
1つのプロット例えばグラフやバープロットで大変大規模なデータ量を表示する共通な技術は、ディスプレイユニットの使用可能な画素又はドットに表示すべき所望のデータの量を一致させるために、典型的には、ダウンサンプリングを使用している。用語の意味において、表示装置は、例えば、メタデータの表示に特に使用するモニター又は、グラフィカルユーザーインターフェース(通常はGUIと呼ばれる)、例えばその目的のために使用されるウィンドウである。利用可能な解像度は、モニター自体すなわちそれぞれのモニターのハードウェア解像度によって、又はメタデータの表示に使用されるGUIベースのウィンドウ内の画素数によって定義される。
【0004】
最近の欧州特許出願公開第EP11305111号において、使用可能なメタデータを複数のクラスターに分割して、それぞれのクラスターのメタデータ要素へ所定の関数を適用することによって、各クラスターの代表値を決定する事が提案されている。クラスターの数は表示部の解像度に依存する。各クラスターに対して単に代表値が表示される。所定の関数は、例えば、平均化により、メタデータ内の外れ値が省略又は減少されないが、保存され、検閲者によく見えるように選択される。
【0005】
上記のアプローチは既存のメタデータシークエンスを扱い、すなわち、それはメタデータの完全なシークエンスが利用可能であると想定される。しかし、特に映画の修復の過程でのメタデータの大きなシークエンスを再検査するために、再検査のプロセスと、そしてメタデータの完全なシークエンスがすでに利用可能である前にメタデータのクラスター化を開始することが望ましいであろう。もちろん、同じ問題が部分的に未完成及び/又は連続的に更新された大規模なデータセットの可視化に対して発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、時間的処理に支配された、すなわち部分的に完成していない及び/又は連続的に更新された、データセットを可視化するための解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、定義された数の要素を含むデータセットをディスプレイ上に可視化する方法は、
前記データセットの空間的に隣接する要素の表示可能なクラスターの数を決定するステップと、
前記データセットの要素の少なくとも一部を取得するステップと、
前記データセットの取得された要素及び前記データセットのまだ取得されていない要素を前記決定されたクラスターの数へクラスター化するステップであって、プレースホルダを使用して前記データセットのまだ取得されていない要素が表されるステップと、
各クラスターに値を割り当てるステップと、
ディスプレイ上に各クラスターの前記値を可視化するステップと、
前記データセットの1つまたは複数の要素が変更されるたびに、及び/又は、前記データセットの1つまたは複数の更なる要素が取得されるたびに、前記ディスプレイ上の前記クラスターと割り当てられた前記値と前記可視化とを更新するステップと、を含む。
【0008】
有利には、ディスプレイ上に設定されたデータを可視化する装置は、本発明によれば、上記の方法を実行するように適応されている。この目的のために、該装置は、データセットの要素を受信するための入力と、表示可能なクラスターの数を決定するための計算機と、データセットの要素を取得し、データセットのまだ取得されていない要素のためのプレースホルダを使用して取得した要素をクラスターの決定された数にクラスター化し、且つ各クラスターに値を割り当てるプロセッサと、プロセッサによって提供されたデータから表示信号を生成するグラフィックブロックと、ディスプレイに表示信号を供給するための出力と、を有する。
【0009】
本発明は、部分的に完成していない及び/又は連続的に更新され、すなわち時間的処理に支配された定義された大きさの大きいデータセットを、迅速に再検査する問題を解決する。本発明は、できるだけ早期に、すなわちデータセットが完成するのを待たず、データセットが検査されることを可能にする。データセットの要素が有限期間の時間的処理中で一度正確に生成され、その後変更されることはない場合、本発明は、推移情報を提供する。データセットの要素が部分的に更新され、すなわち、要素が連続的に変化する場合、本発明は、現在のデータセット上に連続表示を実現する。
【0010】
好ましくは、プレースホルダを含むクラスターは可視化のためにマークされている。このようなマークされたクラスターはそれらが可視化されるときに、例えば色、形、質感、又は記号で強調表示される。この方法では、オペレータは、特定のクラスターがまだ必ずしもそれらの最終的な値を有しておらず、慎重に考慮する必要があることがすぐに分かる。
【0011】
好ましくは、この値は、クラスターの各要素に関数を適用し、適用された関数の結果をクラスターに適用することにより、クラスターに割り当てられる。これは、データセットのあまりに多くの詳細情報を表示することなく、各クラスターの代表値を割り当てることを可能とする。
【0012】
有利には、表示可能なクラスターの数は、クラスターごとに必要な画素数とディスプレイの解像度とを比較することによって行われる。これは、クラスターあたりの画素数で解像度を割ることによって、簡単な方法で表示可能なクラスターの数を計算することができる。
【0013】
好ましくは、ディスプレイ上のクラスターの値の可視化は、データセットの要素の定義された最初の最小数が取得されたときにのみ開始される。これは、データセットの表示がそれらの最終的な値を有するクラスターの意味のある数字で始まるようにする。数に意味があると考えられているユーザーの認識によって、定義された最初の最小数はユーザーによって好ましく設定可能である。
【0014】
有利には、ディスプレイ上のクラスター、割り当てられた値及び可視化の更新は、データセットの要素の定義された第2の最小数が変更されているか、又は更なる要素の定義された第2の最小数が取得されているときにのみ開始される。好ましくは、定義されている第2の最小数は、ユーザーによって設定することが可能である。これは、ディスプレイのあまりに頻繁な変更を避けることができ、そうでなければ、オペレータが行う再検査処理を乱す可能性がある。
【0015】
より良い理解のために、本発明は、図面を参照しながら、以下の説明で詳細に説明される。なお、本発明は、この実施例に限定されないと理解され、特定された特徴も便宜上添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲から逸脱することなく結合及び/又は変更することができると理解される。図面において、
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、データセットを可視化する装置に結合された出力ユニットを示す。
【図2】図2は、データセットを可視化する方法を図式的に示す。
【図3】図3は、データセットを可視化するための本発明に係る方法を示す。
【図4】図4は、図3の方法に従って設定されたデータセットの可視化を示す。
【図5】図5は、データセットを可視化する装置をより詳細に図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明は、デジタルビデオに関連付けられたメタデータを参照しながら説明される。もちろん、本発明は、データセットの他のタイプにも同様に適用可能である。
【0018】
図1は出力ユニット2の模式図である。出力ユニット2は、例えば、TFTディスプレイの画面4が含まれる。もちろん、出力ユニット2は、同様に、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)のウィンドウであってもよい。出力ユニット2は、画面やGUIのウィンドウの使用可能な水平方向の画素によって定義されたXの水平方向の解像度を有する。出力ユニット2は、データセットを可視化するための出力信号OSを提供する装置6に接続されている。好ましくは、この装置6は、例えば、パーソナルコンピュータやワークステーションユニット又は同一のものなどのコンピュータである。出力信号OSは、好ましくは、装置6によって画面4に提供されるビデオ信号の一部である。
【0019】
メタデータ情報すなわち長さSのメタデータベクトルMは、装置6へ入力される。メタデータベクトルMは、デジタル画像シークエンス、例えばデジタルビデオに割り当てられている。メタデータベクトルMの長さSは、ベクトルが、Sのメタデータ要素のいくつか、例えばSのメタデータ要素のいくつかを含むメタデータの一組を意味する。1つのメタデータ要素は、単一の値、例えばフレームのコントラスト、又はデータの一組、例えばコントラストと明るさの値であってもよい。装置6は、出力ユニット2上の可視化のためのメタデータベクトルMを処理するように構成されている。メタデータベクトルMは複数のバー8として可視化され、各バー8は4つの水平方向の画素(2つの暗い画素と2つの明るい画素)を有する。
【0020】
図2は可視化のためのメタデータベクトルMを処理する方法を模式的に示す。最初のステップ10では、出力ユニット2の水平方向の解像度Xが決定される。続いて、バー8あたりの水平画素数Nは、例えばユーザー入力コマンドから、決定される(ステップ11)。あるいは、バー8あたりの水平画素数Nは所定の値である。更なるステップ12では、表示可能なバー8の数は、FLOORが負の無限大への丸め操作であるB=FLOOR(X/N)を計算することによって決定される。表示可能なバー8の数Bがわかっている場合は、単一のクラスターに割り当てられなければならないメタデータ要素の数は、C=CEIL(S/B)によって算出され(ステップ13)、ここで、CEILは正の無限大への丸め操作である。メタデータベクトルMの最初のメタデータ要素で開始して、各要素がそれぞれのクラスターに割り当てられる。S/B>O(REM(S、B)>0)の残りの部分が存在する場合、最後のクラスターはクラスターの残りの部分よりも小さい大きさを有する。実際のメタデータが、例えばポジトリ、ネットワーク、又はオペレータからから取得されたとき(ステップ14)、それらはクラスターの決定された数にクラスター化される(ステップ15)。オペレータの入力や一般的な仕様に応じて、所定の関数、例えばMAX関数が、それぞれのクラスターの各メタデータ要素に適用される(ステップ16)。関数の結果は、それぞれのクラスターに割り当てられる(ステップ17)。最後に、値がバーの高さで表示される(ステップ18)。
【0021】
図1に示したバー8は、メタデータベクトルM=[1220317011]に基づき、長さS=10を有する。ディスプレイの水平解像度はX=17、グラフィック要素の幅Nすなわち、バーの水平方向の画素幅はN=4である。適用された関数がクラスターごとにMAXであり、メタデータ要素の最大値が決定され、それぞれのクラスターに割り当てられる。バーの表示可能な数は、B=FLOOR(X/N)=4である。クラスターの大きさすなわち単一のクラスターに割り当てられているメタデータ要素の数は、C=CEIL(S/B)=3である。バーの高さの計算は、メタデータベクトルMの上で次の操作によって決定される。
G=(MAX([122]),MAX([031]),MAX([701]),MAX([1]))=[2371]
ここで、Gは表示結果のベクトルである。
【0022】
図2を参照して上述した方法は、メタデータベクトルMのすべての要素が既に設定されているという仮定に基づいている。しかしながら、メタデータベクトルMの長さSが事前にわかっているものの、実際には、これは必ずしもそうではない。この問題に対処するために、図2の方法はいくつかの態様において図3に示すように変更される。本発明によれば、関数が適用されたとき(ステップ16)、クラスター内ではまだ利用できない要素は無視される。しかしながら、不足している要素を検閲者に警告するために、未完成のクラスターが、例えば、色、質感、マーカーなどを通してマークされる(ステップ20)。メタデータベクトルMの要素が変化するとき、すなわち、不足している要素が利用可能になるとき又は要素が新しい値を取得するときはいつも、所望の関数は、対応するクラスターに再び適用され、表示が更新される。この目的のためにメタデータベクトルMの要素は監視されている(ステップ19)。図において表示は要素の変化の各回で更新される。もちろん、例えばあまりにも頻繁な更新を避けるために、要素の定義された最小の数が変更されている場合にのみ表示を更新することも同様に可能である。また、好ましくは、方法の残りのステップが実行される前に、要素の最小数は、最初に取得される。このようにして、意味のある表示がオペレータに利用可能とされることが保証される。好ましくは、変更されている必要がある要素の最小数及び/又は最初に取得する必要がある要素の数は、ユーザーによって設定可能である。
【0023】
図1に使用される典型的なメタデータベクトルMに戻ると、メタデータベクトルMのいくつかの要素が、例えば、まだ利用できないこと、例えば、'x'が不足している要素を指定するM=[122xxx70x1]を考慮してみる。この場合、メタデータベクトルMにおいて次の操作G=(MAX([122]),HAX([xxx]),MAX([70x]),MAX([1]))=[2x71]が実行される。結果の表示は図4に示されている。2つのクラスターにおいて、行方不明の要素があり、これは所望の方法で対応するバー9の画素を強調することによってマークされている。
【0024】
データセットを可視化するための本発明による装置6は、図5においていくつかのより多くの詳細が模式的に示されている。装置6は、メタデータベクトルMの要素を受信するための入力60を有している。計算機61は、表示可能なクラスターの数を決定し、プロセッサ62にこの数を提供する。もちろん、計算機61は、同様に、プロセッサ62に組み込まれてもよい。プロセッサはメタデータベクトルMの要素を取得し、メタデータベクトルMのまだ取得されていない要素のプレースホルダを使って、取得された要素をクラスターの決定された数へクラスター化し、各クラスターに値を割り当てる。次にグラフィックブロック63は、プロセッサ62によって提供されたデータからの表示信号OSを生成し、出力64を介してディスプレイに供給する。メタデータベクトルMの1つ以上の要素が変更されるたびに、及び/又は、データセットの1つ以上の更なる要素が取得されるたびに、プロセッサはそれに応じて、クラスターと割り当てられた値を更新する。次にグラフィックブロック63は、表示を更新する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定義された数(S)の要素を含むデータセットをディスプレイ(4)上に可視化する方法であって、
前記データセットの空間的に隣接する要素の表示可能なクラスターの数(B)を決定するステップ(10、11、12)と、
前記データセットの要素の少なくとも一部を取得するステップ(14)と、
前記データセットの取得された要素及び前記データセットのまだ取得されていない要素を前記決定されたクラスターの数へクラスター化するステップであって、プレースホルダを使用して前記データセットのまだ取得されていない要素が表されるステップ(15)と、
各クラスターに値を割り当てるステップ(17)と、
ディスプレイ上に各クラスターの前記値を可視化するステップ(18)と、
前記データセットの1つ以上の要素が変更されるたびに、及び/又は、前記データセットの1つ以上の更なる要素が取得されるたびに、前記ディスプレイ上の前記クラスターと割り当てられた前記値と前記可視化とを更新するステップ(15、17、18)と、
を含む、前記方法。
【請求項2】
プレースホルダを有するクラスターは可視化のためにマーク(20)されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マークされたクラスターは、色、形状、質感、又は記号で強調表示される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記クラスターに値を割り当てるステップ(17)は、関数をクラスターの各要素に適用し(16)、適用された関数の結果を前記クラスターに適用することによって行われる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記表示可能なクラスターの数(B)を決定するステップ(10、11、12)は、クラスターごとに必要な画素数(N)と前記ディスプレイ(4)の解像度(X)を比較することにより行われる、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ディスプレイ上に各クラスターの前記値を可視化するステップ(18)は、前記データセットの要素の定義された最初の最小数が取得されたときにのみ開始される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記定義された最初の最小数は、ユーザーによって設定できる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ディスプレイ上の前記クラスターと割り当てられた前記値と前記可視化とを更新するステップ(15、17、18)は、前記データセットの要素の定義された第2の最小数が変更されているか、又は更なる要素の定義された第2の最小数が取得されているときにのみ開始される、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記定義された第2の最小数は、ユーザーによって設定することが可能である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
定義された数(S)の要素を含むデータセットをディスプレイ(4)上に可視化する装置(6)であって、前記装置(6)は、前記データセットを可視化するために請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法を実行するように適合される、前記装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−115827(P2013−115827A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−262518(P2012−262518)
【出願日】平成24年11月30日(2012.11.30)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】