説明

トイレットペーパーホルダー

【課題】 ポータブルトイレ(椅子型簡易便器)等の使用において、使用者に過大な負担を与えずに、片手でも容易にかつ楽にトイレットペーパーを使用できるトイレットペーパーホルダーの提供。
【解決手段】 ロール状ペーパーを支持する略L字形のホルダー本体と、ホルダー本体に傾動可能に枢着されたロール状ペーパー支持アームと、ロール状ペーパー支持アームに支持されたロール状ペーパーから引き出されたペーパーを切断するカッター部と、ロール状ペーパーの先端部をカッター部へと導くペーパーガイド部とを有し、前記カッター部が、前記ホルダー本体に相互に相反する方向に水平に回動自在に軸着されかつバネにて常時内方へ付勢された相対する一対の切断刃で構成され、かつペーパーガイド部においてペーパーと切断刃とを指で挟んだ状態で、ペーパーを引き出すと同時に、切断刃を開放して元の位置に復帰させペーパーを適当量引出す構造となすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に介護分野で使用されているポータブルトイレ(椅子型簡易便器)に好適なトイレットペーパーホルダーに係り、より詳しくは片手でロール状ペーパーの引き出し、切断が可能なトイレットペーパーホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人が、介護者の手助けを借りずに自力で安全にかつ容易に、しかも清潔に使用できる椅子型の簡易便器(ポータブルトイレ)として、例えば図7に示すものが知られている。この椅子型簡易便器は、椅子型の便器本体11の座面部に後端部を回動可能に取着された開閉式の便座12の下にバケツ形便器(図面省略)が取付けられ、かつ便座12の上側に後端部を回動可能に取着された開閉式の座りパット13が取り付けられたもので、便器使用時には座りパット13を立てて背もたれにして用を足し、一方、椅子として使用する場合は、座りパット13を倒して便座12の上に相重ねるようになっている。
【0003】
この種の椅子型簡易便器に備えつけられるトイレットぺーパー等のロール状ペーパーは、同図に示すようにロール状ペーパー4の内部に嵌挿した棒状のホルダー4−2の両端にひも15を掛け、椅子型簡易便器の肘掛け14に吊して使用されるのが一般的であった。
しかしながら、このようなトイレットぺーパーの使用の仕方では、適量のペーパーをロール状ペーパー4から引き出して千切る際には、両手を使用して行わなくてはならないため、使用者にとっては不便であり、又、片手しか使用できない場合には介護者の助けを借りなければならなかった。
【0004】
このような状況において、片手で操作が可能なロール状ペーパーを用いるトイレットペーパーホルダーが各種提案されている(特許文献1〜4等参照)。
特許文献1には、蓋部先端にカッター部と重り部を備え、蓋部のほぼ中央に長穴を有するトイレットペーパーホルダーが提案され、長穴に指を挿入して、必要に応じた長さのトイレットペーパーを引き出し、上方に引き上げてカッター部でペーパーを切断するものが提案されている。
【0005】
特許文献2には、上蓋と下蓋の2枚からなるカバーを有し、その上蓋と下蓋の間からペーパーを引出し、下へ向けて引く力によってロールペーパーを押さえて、同時に引き出したペーパーをカットするトイレットペーパーホルダーが提案されている。
【0006】
特許文献3には、前端縁に、切り取られるべきペーパーやシートを絞って狭窄保持し、かつカットするための前方に開口したV字形スリットを備えるカバー板を、そのカバー板の支軸方向に摺動可能に取りつけ、支軸の一端に縮設されたコイルスプリングにより他端に押し付けると共に、カバー板の上方への回動を抑制した、ペーパーの切取り操作が片手で可能なロールペーパーホルダーが提案されている。
【0007】
特許文献4には、ロール状ペーパーの引き出し方向にペーパーを引くと、ロール状ペーパーから引き出されたペーパーが通過し、切断方向に引くと、そのペーパーの通過を阻止する動作を与える挟持装置を有するトイレットペーパーホルダーが提案され、上方もしくは下方への動作によりペーパーを片手で切断できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−120849号公報
【特許文献2】特開2004−329798号公報
【特許文献3】特開2006−25908号公報
【特許文献4】特開2009−6104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来の各種トイレットペーパーホルダーは、いずれも片手でロール状ペーパーをペーパーホルダーから引き出す動作や引き出された適量のペーパーを切断する動作は、上方、下方、あるいは斜め上方等の向きへの動作であり、そのため使用者の動作は腕を上下に動かすことが必要であるが、腕を上下させる動作は、筋肉に大きな労力が要求される動作であるために、高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人、介護者の手助けを必要とする人等にとっては、苦痛であり、時間もかかる等の欠点を有する。
【0010】
又、図7に例示したように腰より高い位置で身体の脇に接した状態で従来の各種トイレットペーパーホルダーを使用する場合、ペーパーホルダーの位置と腕の長さの関係からペーパーを引き出す動作や引き出されたペーパーをカットする動作が非常に窮屈な動作となり、使用者にかかる負担を大きくすることから実用性に欠ける。
【0011】
本発明は、上記した従来の各種トイレットペーパーホルダーの欠点に鑑み、特に椅子型の簡易便器(ポータブルトイレ)の使用において、使用者に過大な負担を与えずに、片手でも容易にかつ楽にトイレットペーパーを使用できるトイレットペーパーホルダーの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るトイレットペーパーホルダーは、ロール状ペーパーを支持する断面形状が略L字形のホルダー本体と、前記ホルダー本体に傾動可能に枢着された左右一対のロール状ペーパー支持アームと、前記ロール状ペーパー支持アームに両端部を凹凸嵌合方式により着脱可能に支持されたロール状ペーパーから引き出されたペーパーを切断するカッター部と、前記ロール状ペーパーの先端部をカッター部へと導くペーパーガイド部とを有し、前記カッター部は、前記ホルダー本体に相互に相反する方向に水平に回動自在に軸着されかつバネにて常時内方へ付勢された相対する一対の切断刃で構成され、かつ前記ペーパーガイド部には前記一対の切断刃の直下に切欠凹部が設けられ、ペーパー使用時には前記切欠凹部に引き出されたペーパーの先端部を前記切断刃と相重ねて当該ペーパーと切断刃とを指で挟んだ状態で、前記切断刃をバネに抗してペーパー引き出し方向に回動させてペーパーを引き出すと同時に、前記切断刃を開放して元の位置に復帰させた後、前記切断刃のペーパー引き出し方向前方に延びたペーパーの先端部を掴んで当該ペーパーを適当量引出す構造となしていることを特徴とするものである。
【0013】
又、本発明は、上記構成のトイレットペーパーホルダーにおいて、左右一対のロール状ペーパー支持アームに、当該支持アームの間隔を調整するための間隔調整用キャップを凹凸嵌合方式により着脱可能に設けることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトイレットペーパーホルダーは、ペーパー使用時にはペーパーガイド部の切欠凹部に引き出されたペーパーの先端部を切断刃と相重ねて当該ペーパーと切断刃とを片手で挟んだ状態で該切断刃をバネに抗して前方に回動させてペーパーを引き出すと同時に、前記切断刃を開放して元の位置に復帰させると、その引き出されたペーパーの先端部が切断刃の前方に残ることにより、その切断刃の前方に残ったペーパーの先端部を掴んで当該ペーパーを適当量引出して切断することができるので、片手で腕の上下動を押さえた状態でペーパーの引き出し、切断等の一連の動作が可能となり、使用者に過大な負担を与えずに片手でも容易にかつ楽に使用できるという効果が得られる。従って、特に椅子型簡易便器(ポータブルトイレ)用に使用する場合には、椅子型簡易便器の側面に取付けて用いることにより、高齢者や足腰の弱い人、身体の不自由な人であっても、介護者の手助けを必要とすることなく片手で容易にかつ楽に使用することが可能となり、極めて実用性に富むものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るトイレットペーパーホルダーの一実施例を示す側面図である。
【図2】同上トイレットペーパーホルダーの平面図である。
【図3】同上トイレットペーパーホルダーの正面図である。
【図4】同上トイレットペーパーホルダーに支持されたロール状ペーパーのペーパー引き出し動作及び切断動作を示す説明図で、(a)はペーパー引き出し動作開始前の状態、(b)はペーパー引き出し動作中の状態、(c)は切断刃が元に戻った状態、(d)は適当長さのペーパーを引き出している状態、をそれぞれ示す。
【図5】同上トイレットペーパーホルダーの左右一対のロール状ペーパー支持アームの間隔調整用キャップの一例を示す断面図である。
【図6】同上トイレットペーパーホルダーを装備した椅子型簡易便器(ポータブルトイレ)を示す斜視図である。
【図7】従来のペーパーホルダーを装備した椅子型簡易便器(ポータブルトイレ)の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示す本発明のトイレットペーパーホルダーは、ロール状ペーパー4を支持する断面形状が略L字形のホルダー本体1、前記ホルダー本体1に傾動可能に枢着された左右一対のロール状ペーパー支持アーム2、前記ロール状ペーパー支持アーム2に両端部を凹凸嵌合方式により着脱可能に支持されたロール状ペーパー4から引き出されたペーパー4−1を切断するカッター部3とから構成されている。
【0017】
断面形状が略L字形のホルダー本体1は、左右一対の略L字形部材1−1、該略L字形部材1−1の左右の短辺部側間に垂直に配設した背面板1−2と、同長辺部側間に配設した水平板からなるペーパーガイド部1−3とから構成され、背面板1−2は当該ホルダー本体1を相手部材(図面省略)に装着するための取付け面となる部分であり、ペーパーガイド部1−3は前記ロール状ペーパー4の先端部をカッター部3へと導く部分であり、かつペーパーガイド部1−3の先端部には、ペーパー4−1を引き出す動作を行う際に後述する切断刃3−1とペーパー4−1とを相重ねて指で挟持してペーパー4−1を引き出すための引き出し空間部となる切欠凹部1−4が形成されている。なお、1−5はホルダー本体1を相手部材(図面省略)に取着する場合に使用する背面板1−2に設けたねじ孔である(図3参照)。
【0018】
前記左右一対のロール状ペーパー支持アーム2は、先端部にロール状ペーパー4の両端部の開口部に凹凸嵌合し得るペーパー支持キャップ2−1を有し、そのアーム付け根部2−2が前記ホルダー本体1の短辺部と長辺部の接続部に軸ピン2−3を介して傾動可能に枢着されており、この左右一対のロール状ペーパー支持アーム2のペーパー支持キャップ2−1にロール状ペーパー4の両端開口を回動自在に凹凸嵌合させて当該ペーパーを支持する構造となっている。
【0019】
ロール状ペーパー4から引き出されたペーパー4−1を切断するカッター部3は、前記ホルダー本体1のペーパーガイド部1−3の先端部上面に切欠凹部1−4の直上に相重なるようにピン3−3にて相互に相反する方向に水平に回動自在に取着され、かつ該ペーパーガイド部1−3の裏面にピン3−3と突起3−4との間に掛けたバネ3−2にて常時内方(ペーパー引き出し方向と反対方向)へ付勢された相対する一対の切断刃3−1で構成されている。この左右一対の切断刃3−1は、図2に示すようにそれぞれ先端側に例えば鋸歯状刃3−5が形成され、通常は該鋸歯状刃3−5がペーパーガイド部1−3の先端部と略面一になるように取付けられ、かつそれぞれピン3−3を支点に相互に相反する方向(矢印イ、ロ方向)に水平に回動自在となしている。なお、刃先の形状・形態は鋸歯状に限定されないことはいうまでもない。
【0020】
次に、上記のように構成されたトイレットペーパーホルダーに支持されたロール状ペーパー4の引き出し及び切断動作を図4に基づいて説明する。
まず、ペーパー引き出し動作開始前の状態を示す図(a)は、左右一対のロール状ペーパー支持アーム2のペーパー支持キャップ2−1に両端開口を凹凸嵌合させて取付けたロール状ペーパー4から引き出されて、ペーパーガイド部1−3及び切断刃3−1の上に置かれるペーパー切断後の状態を示したもので、ロール状ペーパー4から引き出されたペーパー4−1は、切断刃3−1の上に相重なった状態でその先端部(破断部)が切断刃3−1の鋸歯状刃3−5と面一にある。
この状態において、図(b)に示すように切欠凹部1−4の位置で切断刃3−1とペーパー4−1とを指で挟持した状態で切断刃3−1をバネ3−2に抗してペーパー引き出し方向に回動させながらペーパーを引き出す。次いで、切断刃3−1を開放すると、バネ3−2の付勢力により当該切断刃3−1は図(c)に示すように元の位置に戻り、切断刃3−1の前方には当該切断刃3−1とともに引き出されたペーパー4−1の先端部が残った状態となるので、最後は図(d)に示すようにこの残った部分を掴んで当該ペーパーを適当量引出し、元の位置に戻っている切断刃3−1で切断する。ペーパーの切断動作はペーパーを掴んだまま下方又は上方に当該ペーパーを動かすことによって簡単にできる。この切断動作が終了すると、再び図(a)に示す状態となるので、以後は上記図(b)〜(d)の動作を繰り返して行えばよい。
このように本発明のトイレットペーパーホルダーの場合は、ロール状ペーパー4の引き出し及び切断動作を片手でかつ上下動の少ない動作で簡単にかつ楽に行うことができる。
【0021】
又、本発明にかかるトイレットペーパーホルダーは、幅の異なる(短い)ロール状ペーパーにも対応できるように、図5に示すようにトイレットペーパーホルダーの左右一対のロール状ペーパー支持アーム2に当該支持アームの間隔を調整するための間隔調整用キャップ6を有している。この間隔調整用キャップ6は、左右一対のロール状ペーパー支持アーム2のペーパー支持キャップ2−1に凹凸嵌合方式により着脱可能となしたもので、幅の短いロール状ペーパー(図面省略)を使用する場合に、左右一対のロール状ペーパー支持アーム2のペーパー支持キャップ2−1に取付けて使用する。なお、この間隔調整用キャップ6の厚さは、幅の異なる(短い)ロール状ペーパーに応じて設定することはいうまでもない。
【0022】
上記構成のトイレットペーパーホルダーを椅子型簡易便器(ポータブルトイレ)に取付けて使用する場合は、図6に示すように椅子型簡易便器の便器本体11の側面に当該トイレットペーパーホルダーの背面板1−2の部分をねじ5で固着して用いることができる。この場合は、椅子型簡易便器の便座12の上に座ったままで、前記したロール状ペーパー4の引き出し及び切断動作をこの側の手のみで行うことができる。即ち、前記したようにペーパーガイド部1−3の切欠凹部1−4に引き出されたペーパーの先端部を切断刃3−1と相重ねた状態で片方の指で挟んで当該切断刃3−1をバネに抗して前方に回動させてペーパー4−1を引き出すと同時に、前記切断刃3−1を開放して元の位置に復帰させ、その切断刃3−1の前方に残ったペーパー4−1の先端部を掴んで当該ペーパーを適当量引出して切断する。従って、本発明のトイレットペーパーホルダーを椅子型簡易便器(ポータブルトイレ)に取付けて使用した場合でも、ロール状ペーパー4の引き出し及び切断動作を片手でかつ上下動の少ない動作で簡単にかつ楽に行うことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 ホルダー本体
1−1 略L字形部材
1−2 背面板
1−3 ペーパーガイド部
1−4 切欠凹部
1−5 ねじ孔
2 ロール状ペーパー支持アーム
2−1 ペーパー支持キャップ
2−2 アーム付け根部
2−3 軸ピン
3 カッター部
3−1 切断刃
3−2 バネ
3−3 ピン
3−4 突起
3−5 鋸歯状刃
4 ロール状ペーパー
4−1 ペーパー
5 ねじ
6 間隔調整用キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状ペーパーを支持する断面形状が略L字形のホルダー本体と、前記ホルダー本体に傾動可能に枢着された左右一対のロール状ペーパー支持アームと、前記ロール状ペーパー支持アームに両端部を凹凸嵌合方式により着脱可能に支持されたロール状ペーパーから引き出されたペーパーを切断するカッター部と、前記ロール状ペーパーの先端部をカッター部へと導くペーパーガイド部とを有し、前記カッター部は、前記ホルダー本体に相互に相反する方向に水平に回動自在に軸着されかつバネにて常時内方へ付勢された相対する一対の切断刃で構成され、かつ前記ペーパーガイド部には前記一対の切断刃の直下に切欠凹部が設けられ、ペーパー使用時には前記切欠凹部に引き出されたペーパーの先端部を前記切断刃と相重ねて当該ペーパーと切断刃とを指で挟んだ状態で、前記切断刃をバネに抗してペーパー引き出し方向に回動させてペーパーを引き出すと同時に、前記切断刃を開放して元の位置に復帰させた後、前記切断刃のペーパー引き出し方向前方に延びたペーパーの先端部を掴んで当該ペーパーを適当量引出す構造となしていることを特徴とするトイレットペーパーホルダー。
【請求項2】
前記左右一対のロール状ペーパー支持アームに、当該支持アームの間隔を調整するための間隔調整用キャップを凹凸嵌合方式により着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載のトイレットペーパーホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−111224(P2013−111224A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259870(P2011−259870)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000102234)ウチヱ株式会社 (6)