説明

トウトランスポートジェット

【課題】導入する加圧空気の圧力(空気流量)を増加させることなく吸引圧力を高めることができるTTジェットの提供。
【解決手段】TTジェット100は第1筒状部と第2筒状部120を有している。第1筒状部の内側チューブ部113の中心軸Xと、傾斜面部123の内周面123aの接線から形成される角度αが30°以下で、第2筒状部120の外側チューブ部122の出口125における内径d1が8〜26mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たばこフィルターの製造工程の1つである巻き上げ工程で使用するトウトランスポートジェット(以下「TTジェット」と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアセテートのフィルタートウは、たばこフィルターの加工材料として使用されている。フィルタートウは、トウバンド(セルロースアセテートの単繊維が数千本から数万本より集まった包帯状の物)の連続繊維を集積して、これを元のトウバンド集積体の約1/6程度の体積まで圧縮した300kgから700kg程度のトウベールの形態で提供される。
【0003】
トウベールからフィルター付きたばこを製造するとき、トウベールからトウバンド巻き出し、このトウバンドの捲縮を開繊し、トリアセチンなどの可塑剤を添加して、必要に応じてチャコールなどを散布してから円筒状の形状に成形され巻紙と称される紙を巻いて円筒状のたばこフィルターの形状(この形状をプラグと称される)に成形される。
プラグは数個に切断分割され、この分割されたプラグがたばこ葉と共に巻紙で一体化されて、最終的なフィルター付きたばことなる。
【0004】
トウベールからトウバンドを繰り出してプラグを成形する工程は、巻上げ工程と称せられている。
巻上げ工程は、
(1)トウベールからトウバンドを繰り出す工程、
(2)トウバンドに張力を掛けることで捲縮を開繊して、かさ高い脱脂綿状の連続体とする工程、
(3)上記の連続体にトリアセチンを添加する工程、
(4)漏斗状の口金を通すことで所望の直径の円筒状に成形する工程、
(5)巻紙で巻く、工程を経る。
上記の(4)の工程においては、TTジェットと呼ばれるものが使用されている。
【0005】
このTTジェットを使用するフィルタートウの巻上げ工程を含むたばこフィルターの製造方法を図4(特許文献2の図1に相当する図面)により説明する。
セルロースアセテートトウTは、トウベール1より一旦上方に引き出され、第1のバンディングジェット2aを通されたのち、プラグ巻上機のブームの上端2を介して第2のバンディングジェット3を通ってプラグ巻上機のロール4へと供給される。
【0006】
ロール4へ供給されたセルロースアセテートトウTは、真円断面の円筒形状に成形するトング側に配された第1ロール5とこの第1ロール5よりも周速度が速くなるよう設定した更にトング側に近い第2ロール6との間で引き伸ばされて、単繊維同士が分離した(即ち開繊された)嵩高な状態に処理される。
分離処理されたセルロースアセテートトウTは、第3のバンディングジェット7を通ったのち、可塑剤アプリケーター8内で可塑剤が添着され、その後、トウ供給ロール9から第1エアージェット10a、第2エアージェット10b、トランペットガイド11を経てトング12へと供給される。図4では、第1エアージェット10aと第2エアージェット10bの両方がTTジェットに相当する。
【0007】
トング12へと供給されたセルロースアセテートトウTは、ガニチャー部13に送り込まれ、同ガニチャー部13で下方に配された巻取紙ロール15から供給される巻き紙14により所定の径に集束されると同時に、その外周に巻き紙14が巻かれて円棒状の物品に成形される。
これをカッター部16で所定の長さに切断することにより、たばこ煙用フィルタープラグ(以下、プラグという)が得られ、更にこのプラグをカッター部(図示せず)にて所定の長さに切断してたばこフィルターが製造される。
【0008】
TTジェットは、開繊されたフィルタートウを巻管部に送り込む装置であり、漏斗状の口金に開繊したトウバンドを空気流により送り込んでいる。この送り込み量が変動するとフィルターの重量(フィルターの通気性能)がバラツクことになる。従って、TTジェットに入れる圧縮空気の量とTTジェットがフィルタートウを吸込む量は、巻上時の運転に大きく影響を与えている。
【0009】
近年、プラグ製造速度の高速化が進み、高速化に対応するため、TTジェットに導入する加圧空気の圧力(流量)を従来よりも高く設定する必要が生じてきており、それに伴ってトウ供給ロールからトングに至るまでのトウの移送を円滑に行うことが難しくなりつつある。
また、低タール化の市場要求に対しては、フィルターの密度を高くする(フィルター量を多くするので同じ直径、長さを保つためにはフィルター密度が高くなる)必要がある。フィルターの密度が高くなると、当然プラグ製造時に詰め込まれるトウフィルター量が多くなりプラグの製造においてプラグ中へのトウの充填量を増加する必要があるが、使用するトウが同じであればトングへのトウの供給速度をトング以降でトウの巻取紙ロールを巻き円棒状の物品へと成形する速度に対して速く設定する必要が生じる。
これは、単にTTジェット内に導入する加圧空気の圧力(流量)を高く設定する必要が生じるだけではなく、プラグ製造時にトランペットガイドに存在するトウの量が多くなると共にトウバンドが進行方向に対して垂直な方向により大きく膨張するようになることを示す。その結果、加圧空気を排出する際にトウ繊維が部分的に引き込まれたり、トランペットガイド内でトウが詰まり気味の状態にて移送されやすくなったりする。
【0010】
この課題に対応するための手段の一つとして、例えば特許文献1(実公平1−44079号公報)では、プラグ製造の高速化に対応してトウの移送速度を増加させた場合でも、所定量のトウを安定した状態でプラグ巻上工程に移送するとともに製品プラグの品質の均一化を図っている。
特許文献1では、トウ導入管と、その後端出口外周に圧縮空気吹出孔を設けた圧縮空気導入部と、該トウ導入管の後端に連投するとともに後部に網目構造の空気排出管を達成したトウ導出管とから成る一対のトウ移送ジェットを一体に連結し、前段に配設された該トウ移送ジェットは比較的低圧の圧縮空気で作動する構造に形成し、後段に配設される該トウ移送ジェットは比較的高圧の圧縮空気で作動する構造に形成したことを特徴とするたばこフィルター[実用新案登録請求の範囲]が開示されている。
【0011】
特許文献2では、トングとトウ供給ロール間に第1及び第2のエアージェットを有しており、トウ供給ロール側の第1エアージェットの出口部先端とトング側の第2エアージェットの加圧空気噴出し口との間の距離を25mm〜110mmとし、第1エアージェットのトウ出口部の先端部内径が12mm〜15mmとしている。
このような性能の異なるエアージェットを2基直列に設置し、特許文献1の第1トウ移送ジェットと第2トウ移送ジェットの間で空気が排出される構造に改善されている。
この方法により、TTジェットによるトウの走行性をコントロールし、高速でのプラグ製造、トウ充填量が大きいプラグの製造における通気性能(フィルターの片側を減圧し空気を通した時の圧力損失を通気性能〔PD〕として通気性能の指標としている)の変動を低い水準に維持させている。
【0012】
特許文献1に開示された方法では、特に高速でトウ充填量の大きいプラグを製造する場合に、TTジェットに供給する空気量を増加させる必要があるが、この場合空気量の増加に伴い、空気排出管の網目部分から排出される空気量が増大することになる。この結果、トウの一部が空気排出管の網目部分に部分的に引き込まれたりすることが生じる。そして、充分に加圧空気を排出した状態にてトングへと円滑に移送することが難しくなる。その結果プラグ中に充填されるトウ充填量の変動を低い水準に維持することが困難である。
【0013】
特許文献2で開示された方法では、2つのエアージェットの間に距離をおく事で、第一のエアージェットの後端出口周辺に圧縮空気噴出孔を設けることなく二段ジェットを用いることができるが、この場合には、空気量が多くなり、トウ品種、重量、巻上速度などの条件によるが、例えば1つのエアージェットにつき0.05〜0.25MPaの圧縮空気圧で400NL/min以上の空気量が必要である。
吸引圧を大きくするために空気量を多くした場合には、これらの空気がTTジェットの後段にある巻紙の工程で空気により巻紙とフィルタートウとの接着が甘くなるという問題(巻紙接着不良が生じるという問題)がある。
【0014】
さらに特許文献3、特許文献4で開示された方法は、TTジェット出口から出てくる空気を嘴状部で効果的に排出する方法ではあるが、多過ぎる空気量を排出するための根本的な解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実公平1−44079号公報
【特許文献2】WO02005/009151号公報
【特許文献3】実公昭61−35039号公報
【特許文献4】実公昭60−796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、内部に導入する加圧空気の圧力(空気流量)を増加させることなく吸引圧力を高めることができ、巻紙接着不良が生じることを防止できるTTジェットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、課題の解決手段として、下記の発明を提供する。
たばこフィルターの製造工程の1つである巻き上げ工程で使用する、第1筒状部(110)と第2筒状部(120)を有するトウトランスポートジェット(100)であって、
第1筒状部(110)が、円錐形状のトウ導入部(111)と、トウ導入部(111)から延ばされた内側チューブ部(113)を有するものであり、
第2筒状部(120)が、外部の空気供給源と接続される空気注入口(126)を備えた円筒本体部(121)と、円筒本体部(121)から延ばされた外側チューブ部(122)と、円筒本体部(121)と外側チューブ部(122)との境界部に形成された円錐状の傾斜面部(123)を有するものであり、
第1筒状部(110)と第2筒状部(120)が、
少なくとも第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の先端開口部(114)が第2筒状部(120)の傾斜面部(123)内に位置し、かつ第1筒状部(110)と第2筒状部(120)の中心軸が一致するようにして組み合わされ、
第1筒状部(110)の先端開口部(114)と第2筒状部(120)の傾斜面部(123)の内周面(123a)との間に環状空間からなる加圧空気噴出口(131)が形成されており、
第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の中心軸(X)と、傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αが30°以下であり、
第2筒状部(120)の外側チューブ部(122)の出口(125)における内径(d)が8〜26mmである、トウトランスポートジェット(100)。
【0018】
本発明のTTジェットは、
(A)第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の中心軸(X)と、傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αが30°以下であること、
(B)第2筒状部(120)の外側チューブ部(122)の出口(125)における内径(d1)が8〜26mmであること、
という2つの構成要件(A)、(B)を具備していることで従来技術の課題を解決するものである。
【0019】
次に、本発明のTTジェットが要件(A)、(B)を具備していることによる作用を図5(グラフ)により説明する。
図5のグラフ中、I、IIは、エアー流路の開口面積の大小関係を示しており、I>IIの関係になっている。このようにエアー流路の開口部面積を調整することで、同一のエアー流量であっても、異なる吸引圧を生じることができるようになる。
しかし、エアー流量を増やした場合、TTジェットの出口付近で出てくるエアー量も増えるということになり、上記した巻紙接着不良を引き起こす要因になる。
これに対して本発明のTTジェットは、要件(A)、(B)を具備していることによって、I、IIと同等レベルの開口隙間(内径を小さくしているため面積は半分以下になる)を調整した際、吸引圧とエアー量の関係がIII、IVに示す通りになる。つまり、従来のTTジェットに比べ、少ないエアー量でより大きな吸引圧を発生させていることができるようになる。
【0020】
本発明のTTジェットは、上記の課題を解決するため、
第1筒状部(110)の内側チューブ(113)の中心軸(X)と、円錐状の傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αが25°以下であり、
第2筒状部(120)の外側チューブ部(122)の出口(125)における内径(d1)が10〜20mmであるものにすることができる。
【0021】
本発明のTTジェットは、上記の課題を解決するため、第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の出口における内径(d2)が8〜20mmであるものにすることができる。
【0022】
本発明のTTジェットは、上記の課題を解決するため、第1筒状部(110)の内側チューブ(113)の先端角度が、円錐状の傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αと同等あるいはそれ以下の角度であるものにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のTTジェットは、要件(A)を具備していることにより同量の空気を使用した場合において、吸引圧をより大きくすることができる。
さらに本発明のTTジェットは、要件(B)を具備していることによりTTジェット入口からの吸込み空気量を減らし、その結果、TTジェット出口からの噴出し空気量を減らすことができる。
このため、本発明のTTジェットは、要件(A)、(B)を具備していない従来のTTジェットを使用したときの消費空気量より少ない空気量で、従来並みの吸引圧、あるいはそれ以上の吸引圧を得ることができるようになる。
そして、本発明のTTジェットを使用することにより高速でのプラグ製造、トウ充填量が大きいプラグを製造する際のPDバラツキを安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は、本発明のTTジェットを(b)の平面(上面)から見たときの軸方向(X軸方向)断面図、(b)は軸方向の一方側から見たときの正面図、(c)は、(b)の側面から見たときの軸方向(X軸方向)断面図である。
【図2】図1に示すTTジェットの組立説明図。
【図3】図1(c)の部分拡大図。
【図4】本発明のTTジェットを使用するフィルタートウの巻上げ工程を含むたばこフィルターの製造工程の説明図(製造装置の概略図)。
【図5】本発明と従来技術との作用の違いを説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図3により本発明のTTジェットを説明する。
本発明のTTジェット100は、第1筒状部110と第2筒状部120を有しているものであり、図4に示すトランペットガイド11と接続される第1エアージェット10aと第2エアージェット10bの両方に代えて1つ又は2つを使用することができるものである。
【0026】
図1に示すように、第1筒状部110は、円錐形状(ラッパ状)のトウ導入部111と、トウ導入部111から延ばされた内側チューブ部113を有している。トウ導入部111と内側チューブ部113の間には、第2筒状部120と一体化させるための筒状の接合部112が形成されている。
【0027】
第2筒状部120は、外部の空気供給源と接続される空気注入口126を備えた円筒本体部121と、円筒本体部121から延ばされた外側チューブ部122と、円筒本体部121と外側チューブ部122との境界部に形成された円錐状の傾斜面部123を有している。
TTジェット100を図4に示す装置(製造工程)に使用したとき、外側チューブ部122の出口125がトランペットガイド11に接続される。
【0028】
第1筒状部110と第2筒状部120は、第1筒状部110の内側チューブ部113の先端開口部114が第2筒状部120の傾斜面部123内に位置し、かつ第1筒状部110と第2筒状部120の中心軸が一致するようにして組み合わされている(図2参照)。
【0029】
第1筒状部110の外周面と第2筒状部120の円筒本体部121及び傾斜面部123の内周面との間に筒状空間からなる加圧空気導入室130が形成されている。加圧空気導入室130は空気注入口126と繋がっており、空気注入口126は図示していない外部の空気供給源とパイプ等により接続される。
【0030】
第1筒状部110の先端開口部114と第2筒状部120の傾斜面部123の内周面123aとの間に環状間隙からなる加圧空気噴出口131が形成されている。
加圧空気噴出口131の幅は0.5〜3mmの範囲から選択することができ、1〜2mmの範囲が好ましい。加圧空気噴出口131の幅は前記範囲内において調整することができるが、TTジェット100の使用中は一定の幅に固定される。
【0031】
第1筒状部110と第2筒状部120は、図2に示すようにして、第2筒状部120内に第1筒状部110を挿入する。このとき、第1筒状部110の接合部112の外周面112aと第2筒状部120の本体部121の内周面121aが接触した状態で互いに固定される。
第1筒状部110の接合部112の外周面112aに形成されたネジ部と、第2筒状部120の本体部121の内周面121aに形成されたネジ部とをネジ合わせることで、第1筒状部110のチューブ部113の先端と第2筒状部120の傾斜面部123の内周面123aとの間に形成される環状間隙131の隙間(面積)の調整を容易にすることができる。なお、微調整ができるようにするため、ネジのピッチ間隔を1mm程度にすることが好ましい。
第1筒状部110と第2筒状部120をネジ合わせて固定する方法は制限されるものではないが、第1筒状部110と第2筒状部120を組み合わせる前に、第1筒状部110のネジ部にネジ部を有するロックリング140を入れて、第1筒状部110と第2筒状部120をネジ合わせて固定するようにすることができる。
【0032】
本発明のTTジェット100は、図3に示すとおり、
要件(A):第1筒状部110の内側チューブ部113の中心軸(X)と、傾斜面部123の内周面123aの接線から形成される角度αが30°以下であり、かつ
要件(B):第2筒状部120の外側チューブ部122の出口125における内径(d1)が8〜26mmである。なお、内側チューブ部113の内径が均一であるときは、出口125における内径と内側チューブ部113の内径は同じになる。
さらにTTジェット100は、第1筒状部110の内側チューブ部113の出口114における内径(d2)が8〜20mmであるものが好ましい。
【0033】
本発明のTTジェット100は、本発明の課題を解決するため、要件(A)の角度αが25°以下であり、かつ要件(B)の出口125における内径(d1)が10〜20mmであるものが好ましい。
さらにTTジェット100は、第1筒状部110の内側チューブ部113の出口114における内径(d2)が8〜20mmであるものがより好ましい。
【0034】
本発明のTTジェット100は、第1筒状部110の内側チューブ113の長さが20〜60mmであるものが好ましい。内側チューブ113の長さは、図2中のL1で示す長さ(出口114から、出口114の近傍を除くと外径が均一である範囲までの長さ)である。
【0035】
本発明のTTジェット100は、第1筒状部110の内側チューブ113の出口114に接する先端部外周面(傾斜面)116の角度が、円錐状の傾斜面部123の内周面123aの接線から形成される角度αと同等であるか、又はそれ以下であるものが好ましい。
【0036】
次に、図4において、第1エアージェット10aと第2エアージェット10bの両方を1つのTTジェット100に代えたときの動作を説明する。トランペットガイド11は、外側チューブ122の出口125に接続される。
【0037】
セルロースアセテートトウTは、トウベール1より一旦上方に引き出され、第1のバンディングジェット2aを通されたのち、プラグ巻上機のブームの上端2を介して第2のバンディングジェット3を通ってプラグ巻上機のロール4へと供給される。
【0038】
ロール4へ供給されたセルロースアセテートトウTは、真円断面の円筒形状に成形するトング側に配された第1ロール5とこの第1ロール5よりも周速度が速くなるよう設定した更にトング側に近い第2ロール6との間で引き伸ばされて、単繊維同士が分離した(即ち開繊された)嵩高な状態に処理される。
【0039】
分離処理されたセルロースアセテートトウTは、第3のバンディングジェット7を通ったのち、可塑剤アプリケーター8内で可塑剤が添着され、その後、トウ供給ロール9からTTジェット100及びトランペットガイド11を経てトング12へと供給される。
【0040】
トング12へと供給されたセルロースアセテートトウTは、ガニチャー部13に送り込まれ、同ガニチャー部13で下方に配された巻取紙ロール15から供給される巻き紙14により所定の径に集束されると同時に、その外周に巻き紙14が巻かれて円棒状の物品に成形される。
これをカッター部16で所定の長さに切断することにより、たばこ煙用フィルタープラグ(以下、プラグという)が得られ、更にこのプラグをカッター部(図示せず)にて所定の長さに切断してたばこフィルターが製造される。
【0041】
本発明のTTジェット100を使用した製造工程(製造装置)では、プラグ製造速度の高速化、フィルターの高密度化等に対応できるようにする場合であっても、要件(A)を具備していることにより同量の空気を使用した場合において、吸引圧をより大きくすることができ、さらに要件(B)を具備していることによりTTジェット入口からの吸込み空気量を減らし、その結果、TTジェット出口からの噴出し空気量を減らすことができる。
このため、従来技術(要件(A)、(B)を具備していない)のTTジェットを使用したときの消費空気量より少ない空気量で、従来並みの吸引圧、あるいはそれ以上の吸引圧を得ることができるようになる。
よって、巻紙接着不良が生じるという問題が防止できる。また、1つのエアージェットで運転することができるため、スペースも大幅に小さくすることができる。
【実施例】
【0042】
実施例1、2及び比較例1、2
表1に示すTTジェットを備えた巻き上げ機を使用して、円筒状のたばこフィルター(プラグ)を製造した。
巻上機:KDF-3/AF-3(ドイツ、ハウニ社製)
巻上速度:600m/min
プラグ長:120mm、プラグ円周:24.5mm
単繊維繊度:3.3(dtex)
総繊度:38885(dtex)
【0043】
【表1】

【0044】
表1の実施例1、2に示した結果から、本発明のTTジェットを使用したプラグ製造方法を採用することにより、プラグの製造速度が高速でかつフィルタートウの重点量が大きいプラグを製造する場合においても、プラグ重量、即ちプラグ内へのトウの充填量の変動を小さく抑えることが可能となり、その結果プラグの通気抵抗の変動が小さく均一な品質のプラグを製造できることが確認された。
また、本発明のTTジェットを使用したプラグ製造方法では、低風量で吸引圧が高いため、チャコールフィルターの製造にも有効に使用することができる。
【0045】
比較例3
比較例2ではTTジェットの入口でフィルタートウがスムーズに走行しないため、走行性がスムーズになるようTTジェットへの供給エアー量を700NL/minに増やした。しかし、TTジェットの出口空気量が増え、巻紙接着不良が起こり、巻上が困難になった。
【0046】
実施例3、4及び比較例4、5
表2に示すTTジェットを備えた巻き上げ機を使用して、円筒状のたばこフィルター(プラグ)を製造した。
巻上機:KDF-2/AF-2(ドイツ、ハウニ社製)
巻上速度:400m/min
プラグ長:120mm、プラグ円周:16.7mm
単繊維繊度:6.7(dtex)
総繊度:18890(dtex)
【0047】
【表2】

【0048】
実施例3、4に示した結果から、本発明のTTジェットを使用したプラグ製造方法を採用することにより、近年広がっているスーパースリムタバコ用フィルターの巻上げにおいても、エアージェットの条件設定が容易であることが確認できた。
【0049】
比較例6
内径の大きいTTジェットを使用した比較例4では出口風量が多いため、TTジェット出口でフィルタートウが激しく揺れた。
このため、比較例4のTTジェットの供給エアー量を300NL/minまで減らした実施したが、TTジェットの吸引圧が3kPa以下となり、フィルタートウがデリバリーロールに巻付き、巻上が困難になった。
【0050】
比較例7
比較例5ではTTジェットの入口でフィルタートウがスムーズに走行しないため、走行性がスムーズになるようTTジェットの供給エアー量をを500NL/minまで増やすとTTジェットの出口空気量が増え、巻紙接着不良が起こり、巻上が困難になった。
【符号の説明】
【0051】
100 TTジェット
110 第1筒状部
111 トウ導入部
112 接合部
113 内側チューブ部
114 出口
115 Oリング
120 第2筒状部
121 円筒本体部
122 外側チューブ部
123 傾斜面部
125 出口
126 空気注入口
131 加圧空気噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこフィルターの製造工程の1つである巻き上げ工程で使用する、第1筒状部(110)と第2筒状部(120)を有するトウトランスポートジェット(100)であって、
第1筒状部(110)が、円錐形状のトウ導入部(111)と、トウ導入部(111)から延ばされた内側チューブ部(113)を有するものであり、
第2筒状部(120)が、外部の空気供給源と接続される空気注入口(126)を備えた円筒本体部(121)と、円筒本体部(121)から延ばされた外側チューブ部(122)と、円筒本体部(121)と外側チューブ部(122)との境界部に形成された円錐状の傾斜面部(123)を有するものであり、
第1筒状部(110)と第2筒状部(120)が、
少なくとも第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の先端開口部(114)が第2筒状部(120)の傾斜面部(123)内に位置し、かつ第1筒状部(110)と第2筒状部(120)の中心軸が一致するようにして組み合わされ、
第1筒状部(110)の先端開口部(114)と第2筒状部(120)の傾斜面部(123)の内周面(123a)との間に環状空間からなる加圧空気噴出口(131)が形成されており、
第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の中心軸(X)と、傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αが30°以下であり、
第2筒状部(120)の外側チューブ部(122)の出口(125)における内径(d1)が8〜26mmである、トウトランスポートジェット(100)。
【請求項2】
第1筒状部(110)の内側チューブ(113)の中心軸(X)と、円錐状の傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αが25°以下であり、
第2筒状部(120)の外側チューブ部(122)の出口(125)における内径(d1)が10〜20mmである、請求項1記載のトウトランスポートジェット(100)。
【請求項3】
第1筒状部(110)の内側チューブ部(113)の出口における内径(d2)が8〜20mmである請求項1又は2に記載のトウトランスポートジェット(100)。
【請求項4】
第1筒状部(110)の内側チューブ(113)の先端角度が、円錐状の傾斜面部(123)の内周面(123a)の接線から形成される角度αと同等あるいはそれ以下の角度である請求項1〜3のいずれか1項に記載のトウトランスポートジェット(100)。
【請求項5】
環状空間からなる加圧空気噴出口(131)の幅が0.5〜3mmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のトウトランスポートジェット(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−239437(P2012−239437A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113872(P2011−113872)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】