トラクタのPTO変速装置

【課題】本発明は、座席に座ったオペレータがPTO軸の変速操作を行い易くすることを課題とする。
【解決手段】エンジン出力軸20の回転駆動力を受けてPTO出力軸111の回転を1速から4速の正回転と逆回転1速に変速するPTO変速機構をミッションケース8内に設けたトラクタのPTO変速装置において、ミッションケース8に立設したシフト軸160にPTO変速操作レバー12を屈折連結し、該シフト軸160の左右回動で正転1−3速への中立位置、又は正転2−4速への中立位置、又は逆転1速への中立位置を選択し、前後傾倒で前記正転1−3速のうちのいずれか1速、又は正転2−4速のうちのいずれか1速、又は逆転1速の各変速位置を決定するようにしたことを特徴とするトラクタのPTO変速装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタのPTO変速装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタのPTO変速装置として、例えば、特許文献1に記載のトラクタでは、正転3速、逆転1速の歯車式変速機構を有するトラクタのPTO変速装置において、前記正転3段、逆転1段の変速位置を変速レバーの案内板に一直線上に並設する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−88569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のトラクタのPTO変速装置では、PTO変速レバーを前後方向に大きく移動操作してPTO軸の変速操作を行うことになり、座席に座ったオペレータが変速し難いことが有る。
【0005】
本発明は、座席に座ったオペレータがPTO軸の変速操作を行い易くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、エンジン出力軸20の回転駆動力を受けてPTO出力軸111の回転を1速から4速の正回転と逆回転1速に変速するPTO変速機構をミッションケース8内に設けたトラクタのPTO変速装置において、ミッションケース8に立設したシフト軸160にPTO変速操作レバー12を屈折連結し、該シフト軸160の左右回動で正転1−3速への中立位置、又は正転2−4速への中立位置、又は逆転1速への中立位置を選択し、前後傾倒で前記正転1−3速のうちのいずれか1速、又は正転2−4速のうちのいずれか1速、又は逆転1速の各変速位置を決定するようにしたことを特徴とするトラクタのPTO変速装置とする。
【0007】
この構成で、PTO変速レバー12を左右に振ってシフト軸160を回動することで1−3速の中立位置、又は2−4速の中立位置、又は逆転1速の中立位置のどれかへの中立位置を選択する。そして、PTO変速レバー12を前後に振ることで、正転1−3速のうちのいずれか1速、又は正転2−4速のうちのいずれか1速、又は逆転1速の各変速位置を決定する。このように、1速から4速或いは逆1速のどれかに決めるので、シフト軸160の移動範囲が狭くそれに伴ってPTO変速レバー12の移動切換範囲も狭く出来る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記PTO変速レバー12をステアリングハンドル7の下部に配置したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタのPTO変速装置とする。
この構成で、操縦席に座ったオペレータがステアリングハンドル7を握りながら両膝の間でPTO変速レバー12を変速操作出来て、オペレータの操縦姿勢を変えることなくPTO出力軸111の変速が容易である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記ミッションケース8のPTO変速部上方に開口部を形成したステップフロア13を設け、該開口部を覆うべく各ミッション型式に合わせたPTO取出口を形成した補助フロアをステップフロア13に取り付け、PTO取出口の内周縁を嵌め込む断面コ字状の取り付け部を設けたブーツでPTO変速レバー12の軸部を包んだことを特徴とする請求項1或いは請求項2のどちらか1項に記載のトラクタのPTO変速装置とする。
【0010】
この構成で、トラクタの型式が違っていても大きなステップフロア13を共通化出来て、補助フロアとブーツによる取り付けが容易になる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明で、シフト軸160の移動範囲が狭くそれに伴ってPTO変速レバー12の移動切換範囲も狭く出来る。
請求項2に記載の発明で、操縦席に座ったオペレータがステアリングハンドル7を握りながら両膝の間でPTO変速レバー12を変速操作出来て、オペレータの操縦姿勢を変えることなくシフト軸160の変速が容易である。
【0012】
請求項3に記載の発明で、トラクタの型式が違っていても大きなステップフロア13を共通化出来て、補助フロアとブーツによる取り付けが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両として、トラクタの全体側面図である。
【図2】エンジンから前後輪及びPTO軸への動力伝動線図である。
【図3】トランスミッションケースの断面展開図である。
【図4】PTO変速部の背断面図である。
【図5】PTO変速部の平断面図である。
【図6】一部の平断面図である。
【図7】第二実施例PTO変速部の側断面図である。
【図8】第二実施例PTO変速部の平面図である。
【図9】PTO変速部の背面図である。
【図10】第三別実施例PTO変速部の側断面図である。
【図11】第四別実施例PTO変速部の分解斜視図である。
【図12】第四別実施例PTO変速部の側断面図である。
【図13】第四別実施例PTO変速部の正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
以下の説明で、トラクタの前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0015】
トラクタ1は、図1に示す如く、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体の前部に搭載したエンジン5のエンジン出力軸20の回転をミッションケース8内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0016】
機体中央でのハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が設けられ、その後方にはシート9が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側にシフトすると機体は前進し、後側へシフトすると後進する構成である。
【0017】
また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル18と、左右の後輪3,3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル19R,19Lが設けられている。
【0018】
ステアリングハンドル7の下部で左右中央に、ステップフロア13に広い開口部を形成し、この開口部に各ミッション型式に合わせたPTO取出口を形成した補助フロアを重ね、ミッションケース8から上方へ突出するPTO変速レバー12のレバー軸を包むゴム製のブーツを前記PTO取出口に取り付けて、後方へ屈曲したPTO変速レバー12を設けている。ブーツの外周縁を断面コ字状にしてPTO取出口の内周端縁に嵌め込んで取り付ける。このPTO変速レバー12は、PTO出力軸111を正転4速と逆転1速に変速するものである。
【0019】
ハンドルポスト6上部のステアリングハンドル7の前側にメータパネル16が設けられて、走行速度等の機体状況が表示される。
また、一速から八速まで変速する主変速レバー14はシート9の左前側部にあり、超低速、低速、中速、高速の四段及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー15はその後方に設けている。
【0020】
トラクタ1の機体後部には、ロータリ作業機17を装着して、ミッションケース8から後方へ突出するPTO出力軸111で駆動するようにしている。
図2は、変速装置を組み込んだミッションケース8内の動力伝動機構を示す伝動線図で、エンジン5から前輪2と後輪3及びロータリ作業機17へのPTO出力軸111への変速伝動を説明する。
【0021】
エンジン5のエンジン出力軸20の回転がメインクラッチ112を介して入力軸21に伝動され、この入力軸21に固着の第一入力ギヤ22と第二入力ギヤ23の回転がそれぞれ第一高・低クラッチ24の第一低速ギヤ26と第二高・低クラッチ25の第二低速ギヤ27及び第一高・低クラッチ24の第一高速ギヤ30と第二高・低クラッチ25の第二高速ギヤ31に噛み合っている。
【0022】
そして、第一高・低クラッチ24を第一低速ギヤ26側に繋ぐと第一低速ギヤ26から第一クラッチ軸28に伝動され、第一高速ギヤ30側に繋ぐと第一高速ギヤ30から第一クラッチ軸28に伝動され、第二高・低クラッチ25を第二低速ギヤ27側に繋ぐと第二低速ギヤ27から第二クラッチ軸29に伝動され、第二高速ギヤ31側に繋ぐと第二高速ギヤ31から第二クラッチ軸29に伝動される。
【0023】
第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は同一の油圧多板クラッチで、それぞれ入力軸21の回転を同一減速比で高・低の二段に減速して第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29に伝動することになる。
【0024】
第一クラッチ軸28に固着の第一ギヤ113が低速伝動軸34に固着の第二ギヤ35と噛み合って減速して伝動され、第二クラッチ軸29に固着の第三ギヤ149が高速伝動軸32に固着の第四ギヤ33と噛み合って増速して伝動される。
【0025】
ここまでの変速伝動で、低速伝動軸34が低速で二段に、高速伝動軸32が高速で二段にそれぞれ変速されることで、計四段に変速されることになる。
低速伝動軸34と高速伝動軸32の回転がそれぞれ第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36に伝動され、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37が第一伝動軸39の第五ギヤ40と噛み合い、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロギヤ大44と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ大ギヤ38が第一伝動軸39の第六ギヤ41と噛み合って伝動する。
【0026】
第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第一シンクロギヤ大44及び第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37と第二シンクロ大ギヤ38は、全く同一のギヤで、低速伝動軸34が低速回転し高速伝動軸32が高速回転しているので、第一シンクロチェンジ42を切換えると低速でさらに二段に変速され、第二シンクロチェンジ36を切換えると高速でさらに二段に変速される。すなわち、第一入力軸21の回転が第一伝動軸39で低速四段と高速四段に変速されることになる。
【0027】
この第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36はシフタステーとシフタをサブ組付けしてミッションケース8内に収められ、その変速操作部のケース開口部がケースの左右側面に設けられ、ミッションケース8の潤滑オイルの液面OLよりも上側に設けられる。
【0028】
ここまでの主変速部150で、オペレータが操作する主変速レバー14の変速位置を読み取って、走行系ECUで自動的に高・低油圧多板クラッチ24,25と第一・第二シンクロチェンジ36,42を制御して低速四段と高速四段まで変速される。
【0029】
また、ミッションケース8内で、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25が左右に配置され、その下側に第一シンクロチェンジ42を装着する低速伝動軸34と第二シンクロチェンジ36を装着する高速伝動軸32が左右に配置されることで、ミッションケース8の左右幅が狭く高さの低いコンパクトな構成になっている。
【0030】
第一伝動軸39は第二伝動軸45に軸連結で連結されている。この第二伝動軸45には、第七ギヤ46と第八ギヤ47が固着され、油圧多板の正逆クラッチ48の正転クラッチギヤ49と逆転軸52の逆転ギヤ51に噛み合わされ、逆転ギヤ51が正逆クラッチ48の逆転クラッチギヤ50と噛み合っている。
【0031】
従って、正逆クラッチ48を正転クラッチギヤ49に繋ぐと、正転状態で正逆クラッチ48に連結の副変速軸53に伝動され、正逆クラッチ48を逆転クラッチギヤ50に繋ぐと、逆転状態で副変速軸53に伝動される。正転と逆転では減速比が異なり、逆転の方が低速になる。
【0032】
次に、副変速部154を説明する。
副変速軸53には第九ギヤ54と第十ギヤ55が固着され、それぞれ第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ大ギヤ56と第三シンクロ小ギヤ59に噛み合っている。従って、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側に繋ぐと第九ギヤ54から第三シンクロ大ギヤ56に伝動した回転で第5伝動軸60が増速して高速で駆動され、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐと第十ギヤ55から第三シンクロ小ギヤ59に伝動した回転で第5伝動軸60が減速して中速で駆動される。
【0033】
さらに、第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ小ギヤ59側には第十一ギヤ57を固着して、第四シンクロチェンジ71の第四シンクロ小ギヤ69と噛み合っている。そして、第四シンクロ小ギヤ69側には第十五ギヤ70を固着し、この第十五ギヤ70が第二筒軸114の第十七ギヤ75と噛み合って第二筒軸114に固着の第十八ギヤ76から第四シンクロ大ギヤ72に伝動している。第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73には、第十六ギヤ74を固着している。
【0034】
従って、第三シンクロチェンジ58を中立にすると、第十ギヤ55の回転が第三シンクロ小ギヤ59に伝動され、第三シンクロ小ギヤ59側に固着の第十一ギヤ57から第四シンクロ小ギヤ69に伝動される。
【0035】
この状態で、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ小ギヤ69側に繋ぐと、第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十六ギヤ74の回転となって低速となり、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ大ギヤ72側に繋ぐと第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十五ギヤ70から第十七ギヤ75と第十八ギヤ76と第四シンクロ大ギヤ72に伝動されて第十六ギヤ74が極低速となる。
【0036】
なお、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側或いは第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐ場合には、第四シンクロチェンジ71を中立にしておく。
従って、主変速部150変速された副変速軸53の低速四段と高速四段が、副変速部154で四段に変速されることで、低速十六段と高速十六段に変速されることになる。
【0037】
第十六ギヤ74は前記第5伝動軸60に固着の第十二ギヤ61と噛み合って第5伝動軸60を駆動する。この第5伝動軸60の軸端に固着の第一ベベルギヤ62がリアベベルケース64の第二ベベルギヤ63と噛み合っていて、リアベベルケース64のベベル出力軸65から第十三ギヤ66と第十四ギヤ67を介して後輪出力軸68を回転して後輪3を駆動する。
【0038】
また、第5伝動軸60には第二十一ギヤ117が固着され、副変速軸53に軸支された第二筒軸119に固着の第二十二ギヤ118と第二十二ギヤ148を介して第一前輪駆動軸78の第十九ギヤ77に伝動して、前記第十六ギヤ74の低速十六段と高速十六段の回転が第一前輪駆動軸78に伝動されている。
【0039】
この第一前輪駆動軸78から前輪増速クラッチ79を介して第二前輪駆動軸84に伝動し、第三前輪駆動軸85と第四前輪駆動軸86と前輪駆動ベベル軸87に引き継いで伝動し、前輪駆動ベベル軸87の軸端に固着の第一前ベベルギヤ88が前ベベルケース89の第二前ベベルギヤ115と噛み合っていて、前ベベルケース89の前ベベル出力軸90から第一前ベベルギヤ組91と前縦軸116と第二前ベベルギヤ組92を介して前輪出力軸93を回転して前輪2を駆動する。
【0040】
なお、前輪増速クラッチ79の第一増速クラッチギヤ82と第二増速クラッチギヤ80はそれぞれ第一増速ギヤ83と第二増速ギヤ81に噛み合って前輪増速クラッチ79の切換によって増速率を変更する。
【0041】
ここまでの副変速部154が副変速レバー15の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に第三シンクロチェンジ58と第四シンクロチェンジ71を制御して変速される。
【0042】
また、第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73は、第三シンクロチェンジ58を装着した第5伝動軸60の下側に配置され、ミッションケース8の長さを短く出来る。
【0043】
次に、PTO出力軸111の伝動経路を説明する。
前記第二入力ギヤ23にPTOメインクラッチ97のメインクラッチギヤ96を噛み合わせて、PTOメインクラッチ97で動力の断続を行うようにしている。
【0044】
PTOメインクラッチ97を装着した第一PTO軸95には、次の如く、PTO変速部157が設けられている。
第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151の第五シンクロ小ギヤ100と第五シンクロ大ギヤ101を装着し、第二PTO軸104に第二十ギヤ102と第二十三ギヤ152と第二十一ギヤ103と第二十四ギヤ153を固着し、カウンタ軸106にPTO逆転ギヤ105を軸支している。
【0045】
第一PTOギヤ98をスライドして第二十ギヤ102に噛み合わせると第三PTO軸107が二速になり、第一PTOギヤ98をスライドして第二PTOギヤ99に係合すると第一PTO軸95の回転が第二PTOギヤ99と第二十三ギヤ152を介して第三PTO軸107に伝わって四速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ小ギヤ100に繋ぐと第五シンクロ小ギヤ100から第二十一ギヤ103に伝動して一速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ大ギヤ101に繋ぐと第五シンクロ大ギヤ101から第二十四ギヤ153に伝動して三速となり、PTO逆転ギヤ105を第一PTOギヤ98と第二十ギヤ102に噛み合わせると第一PTO軸95の回転が第一PTOギヤ98からPTO逆転ギヤ105を経て第二十ギヤ102に伝動されて第三PTO軸107に伝わって逆回転となる。
【0046】
第三PTO軸107の回転は、第四PTO軸156を介して第五PTO軸108に伝動し、第一PTO出力ギヤ109と第二PTO出力ギヤ110さらに減速してPTO出力軸111を駆動する。
【0047】
図4から図6に示すPTO変速機構の第一実施例で、PTO変速レバー12と、PTO出力軸111の回転を正転2速と4速に切り換える第一PTOギヤ98との連動と、PTO出力軸111の回転を正転1速と3速に切り換える第五シンクロチェンジ151との連動と、PTO出力軸111の回転を逆転1速に切り換えるPTO逆転ギヤ105との連動関係を示している。
【0048】
ミッションケース8に取り付けるPTO変速ブラケット121に横スライド軸133を左右方向に軸支し、この横スライド軸133を中心に前後へ傾動可能で左右回動可能に上端にPTO変速レバー12を固着した第一変速軸120を該横スライド軸133の前側に立設する。横スライド軸133には三つの係合溝124a,124b,124cを形成した第一シフタ124を回動しないようにスプライン嵌合し、各係合溝124a,124b,124cの一つにPTO変速ブラケット121のコイルバネで押圧したボール125を嵌入してシフト位置を各位置で保持すべくすると共に、第一変速軸120の下端に固着した変速アーム122を係合溝124a,124b,124cの一つに係合して、第一変速軸120の左右回動で第一シフタ124を左右にスライドするようにしている。
【0049】
第一シフタ124には下方へ向けてシフトアーム124dを設けて、三つのシフト位置で第二シフタ127と第三シフタ128と第四シフタ134に係合するようにしている。また、PTO変速ブラケット121の底部に、シフトアーム124dの前後移動及び中立での左右移動をガイドするガイド溝を形成したシフトガイド158をボルト141で取り付けている。
【0050】
第二シフタ127と第三シフタ128は正転シフト軸126aのシフタで、第四シフタ134は逆転シフト軸126bのシフタで、第二シフタ127を前後に回動すると第五シンクロチェンジ151をスライドして正転1速と正転3速に変速し、第三シフタ128を前後に回動すると第一PTOギヤ98をスライドして正転速と正転4速に変速し、第四シフタ134を前に回動すると逆転ギヤ105をスライドして逆転に変速する。第四シフタ134のアーム部134aは下方へ長く延びるので、アーム部134aの中間にガイド軸を通して倒れないようにする。
【0051】
図7と図8は、PTO変速機構の第二実施例で、第一変速軸120を左右回動と上下にスライド可能にPTO変速ブラケット121へ垂直支持し、PTO変速ブラケット121の上部に取り付けた支持アーム129にPTO変速レバー12のPTO変速レバー基部132を第一ピン130で枢支し、第一変速軸120の上端部にPTO変速レバー基部132を第二ピン131で係合しているので、PTO変速レバー基部132に取り付けるPTO変速レバー12を上下に動かすと第一変速軸120が上下にスライドし、左右に動かすと第一変速軸120が左右に回動する。
【0052】
第一変速軸120の下端部には、変速アーム122を固着し、この変速アーム122を、PTO変速ブラケット121に支持した横スライド軸133で枢支した第一シフタ124の上係合部124eと横係合部124dに係合している。
【0053】
さらに、第一シフタ124には下係合部124fを設けて、正転シフト軸126aで枢支した第二シフタ127と第三シフタ128及び逆転シフト軸126bで枢支した第四シフタ134とに択一的に係合する。
【0054】
下係合部124fが係合した第二シフタ127が前後にスライドすると第五シンクロチェンジ151が正転1速と正転3速に切り換わり、第三シフタ128が前後にスライドすると第一PTOギヤ98が正転2速と正転4速に切り換わり、第四シフタ134が前にスライドするとPTO逆転ギヤ105が逆転1速に切り換わる。
【0055】
従って、第一実施例と第二実施例で、PTO変速レバー12を突出させたシフトカバー135のシフト溝135aは、図9の如く、左右方向と上下方向の溝で、PTO変速レバー12を左溝で上下に回動すると正転3速と正転1速、中央溝で上下に回動すると正転4速と正転2速、右溝で下方へ回動すると逆転1速に切り換わるようになる。
【0056】
即ち、PTO変速レバー12を左右に振ってシフト軸160を回動することで1−3速の中立位置、又は2−4速の中立位置、又は逆転1速の中立位置のどれかへの中立位置を選択する。そして、PTO変速レバー12を前後に振ることで、正転1−3速のうちのいずれか1速を選択する。正転2−4速のうちのいずれか1速を選択する。逆転1速を選択する。このように各変速位置を決定する。したがって、1速から4速或いは逆1速のどれかに決めるので、シフト軸160の移動範囲が狭くそれに伴ってPTO変速レバー12の移動切換範囲も狭く出来る。
【0057】
また、PTO変速レバー12を左右に振る場合においては、レバーが不用意に前後方向に移動しないように、レバーガイドを設けるように構成してもよい。
図10は、PTO変速機構の第三実施例で、PTO変速レバー12の下端をレバー取付ブロック137に固着し、このレバー取付ブロック137の後側を第一変速軸120の上端に横ピン138で枢支して、PTO変速レバー12を前後に回動可能に取り付けている。レバー取付ブロック137の後側は第一シフタ124にロッド139,140で連結している。ロッド140と第一シフタ124の連結をボールジョイントとすると動きが滑らかになる。
【0058】
図示の如く、正転シフト軸126aと逆転シフト軸126bの端部は軸受け孔に嵌合したシフタ受142に形成した挿入穴142aに嵌合して支持している。
この構成で、PTO変速レバー12を左右に回動して第一シフタ124を第二シフタ127と第三シフタ128及び逆転シフト軸126bのどれかに係合して、PTO変速レバー12を前後に回動することで、PTO出力軸111の回転を正転1速から正転4速と逆転1速に切り換える。
【0059】
図11から図13は、PTO変速機構の第四実施例で、ミッションケース8に板金で断面形状をコ字状に折り曲げたチェンジブラケット159を立設し、このチェンジブラケット159の上端に係合溝133aを設けた横スライド軸133横架支持する。
【0060】
そして、横スライド軸133にPTO変速レバー12の取付ボス160を外嵌する。PTO変速レバー12の軸先端にコイル穴162を形成し、取付ボス160のボール穴161と合わせてPTO変速レバー12を取付ボス160に溶接している。ボール穴161とコイル穴162には前記横スライド軸133の係合溝133aに嵌り込んで位置決めするボールとコイルを嵌め込む。
【0061】
さらに、チェンジブラケット159に囲まれたPTO変速レバー12の下部に、ミッションケース8に取り付けたPTO変速ブラケット121で球面受けした第一変速軸120を立設し、前記PTO変速レバー12の取付ボス160から下方に設けた連結部160aに第一変速軸120の上端球上部120aを嵌合する。第一変速軸120の下端球状部120bは前記第一シフタ124に係合する。
【0062】
チェンジブラケット159は、ミッションケース8に固定しているので、ステップフロア13が振動してもPTO変速レバー12がステップフロア13と共に揺れることが無い。
【0063】
なお、上記の構成で、第一変速軸120を左右に傾けてPTO変速レバー12を横方向3か所に位置決めし、その各位置で前後に傾倒する変速動作が行える。
第一変速軸120は、PTO変速ブラケット121から上端球上部120aの長さと取付ボス160の連結部160a長さを変更することで、PTO変速レバー12の左右前後のストロークが同じで下端球状部120bつまり第一シフタ124の動きを変更出来る。
【0064】
また、第一変速軸120の左右位置が異なるミッションケースであっても、PTO変速レバー12の取付ボス160に対する溶接位置を変更して操作の最適位置にすることが出来る。
【符号の説明】
【0065】
7 ステアリングハンドル
8 ミッションケース
12 PTO変速操作レバー
13 ステップフロア
20 エンジン出力軸
111 PTO出力軸
160 シフト軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン出力軸(20)の回転駆動力を受けてPTO出力軸(111)の回転を1速から4速の正回転と逆回転1速に変速するPTO変速機構をミッションケース(8)内に設けたトラクタのPTO変速装置において、ミッションケース(8)に立設したシフト軸(160)にPTO変速操作レバー(12)を屈折連結し、該シフト軸(160)の左右回動で正転1−3速への中立位置、又は正転2−4速への中立位置、又は逆転1速への中立位置を選択し、前後傾倒で前記正転1−3速のうちのいずれか1速、又は正転2−4速のうちのいずれか1速、又は逆転1速の各変速位置を決定するようにしたことを特徴とするトラクタのPTO変速装置。
【請求項2】
前記PTO変速レバー(12)をステアリングハンドル(7)の下部に配置したことを特徴とする請求項1に記載のトラクタのPTO変速装置。
【請求項3】
前記ミッションケース(8)のPTO変速部上方に開口部を形成したステップフロア(13)を設け、該開口部を覆うべく各ミッション型式に合わせたPTO取出口を形成した補助フロアをステップフロア(13)に取り付け、PTO取出口の内周縁を嵌め込む断面コ字状の取り付け部を設けたブーツでPTO変速レバー(12)の軸部を包んだことを特徴とする請求項1或いは請求項2のどちらか1項に記載のトラクタのPTO変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−112116(P2013−112116A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259199(P2011−259199)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】