説明

トラフ及びトラフ蓋

【課題】雨水等が入り難く、トラフ内外の空気を入れ替えることができる通気孔付きトラフを提供する。
【解決手段】トラフ本体1と、このトラフ本体1に被せる蓋3とを備えたトラフにおいて、トラフ本体1の側壁7の上部に、トラフ本体1の内側と外側を連通する通気孔21を形成する。蓋3はトラフ本体1の側壁7より外側へ張り出す張出し部23を有しており、この張出し部23に蓋3の下側と上側を連通する通気孔25を形成する。トラフ内の空気が通気孔21、25を通ってトラフ外に流出したり、反対にトラフ外の空気がトラフ内に流入したりするので、トラフ内の温度上昇を抑制できると共に、トラフ内外の気圧差を小さくして蓋3が浮き上がるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル等の布設に用いられるトラフと、トラフ用の蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラフは、断面ほぼ凹形のトラフ本体と、このトラフ本体に被せるトラフ蓋とから構成される。従来のトラフは、コンクリート製であったが、コンクリート製のトラフは重いため、布設工事の際の作業者の負担が大きい。このため、最近ではプラスチック製(特にプラスチック製品の廃材を再生した再生プラスチック製)のトラフが使用されるようになってきている(特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−284544号公報
【特許文献2】特開2008−17573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のトラフは、トラフ本体にトラフ蓋を被せて布設した状態では、トラフ内の空気が外部に排出されにくい。このため、トラフ内に電力ケーブル等の発熱性ケーブルを布設すると、トラフ内の温度が上昇し、送電容量を低下させたり、他のケーブルに悪影響を及ぼしたりすることが問題となる。また、新幹線等の高速鉄道の線路脇にトラフを布設した場合には、列車通過時の気流により、トラフ外部の気圧が内部の気圧より低くなり、トラフ蓋がめくれ上がるおそれがある。特にプラスチック製のトラフは、寸法精度が高く、隙間ができ難いため、上記のような問題が発生しやすい。
【0005】
本発明の目的は、トラフ内の温度上昇やトラフ内外の気圧差を低減できるトラフ及びトラフ蓋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、トラフ本体と、このトラフ本体に被せるトラフ蓋とを備えたトラフにおいて、前記トラフ本体の側壁の上部にトラフ本体の内側と外側を連通する通気孔を形成したことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係るトラフにおいて、前記トラフ蓋は前記トラフ本体の側壁より外側へ張り出す張出し部を有しており、この張出し部にトラフ蓋の下側と上側を連通する通気孔が形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係るトラフにおいては、前記トラフ本体の通気孔と前記トラフ蓋の通気孔とがトラフ長手方向に互い違いに形成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るトラフ蓋は、トラフ本体に被せたときにトラフ本体の両側又は片側に相当する位置に、トラフ本体内に通じる通気孔を形成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係るトラフ蓋における通気孔は、トラフ蓋のトラフ本体の側壁より外側へ張り出す張出し部と、下端にトラフ本体への位置決め用のガイド片を有する補強リブとに形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トラフ本体の側壁の上部に通気孔が形成されているので、トラフ蓋を被せた状態でも、トラフ内の空気をトラフ外に排出し、かつトラフ外の空気をトラフ内に吸い込むことができる。したがって、トラフ内の温度上昇やトラフ内外の気圧差を低減することができる。
【0012】
また、トラフ蓋の、トラフ本体の側壁より外側へ張り出した部分に通気孔を形成しておけば、トラフを構築物等の壁に接して布設した場合でも、トラフ本体の通気孔がトラフ蓋の通気孔を通して外部とつながるので、通気性を確保することができる。また、トラフ蓋の通気孔がトラフ本体の側壁より外側へ張り出した部分に形成されていれば、トラフ内に雨水等が流れ込むおそれが少ない。また、トラフ蓋の通気孔がトラフ蓋の片側又は両側に位置することになるため、鉄道線路などでトラフ蓋の上を避難通路として利用する場合に、ハイヒールの踵などがトラフ蓋の通気孔に嵌まり込むおそれを少なくできる。
【0013】
さらに、トラフ本体の通気孔とトラフ蓋の通気孔をトラフ長手方向に互い違いに形成しておけば、トラフ内への雨水等の流入をより少なくすることができる。
【0014】
また、本発明に係るトラフ蓋は、トラフ本体に被せたときにトラフ本体の両側又は片側に相当する部分に、トラフ本体内に通じる通気孔が形成されているので、トラフ本体に被せれば、トラフ内の空気をトラフ外に排出し、かつトラフ外の空気をトラフ内に吸い込むことができ、トラフ内の温度上昇やトラフ内外の気圧差を低減できると共に、鉄道線路などでトラフ蓋の上を避難通路として利用する場合に、ハイヒールの踵などがトラフ蓋の通気孔に嵌まり込むおそれを少なくできる。
【0015】
また、本発明に係るトラフ蓋において、通気孔を、上記のように張出し部と、下端に位置決め用ガイド片を有する補強リブとに形成すれば、トラフ本体内への雨水等が流れ込むおそれが少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<実施形態1> 図1及び図2は本発明の一実施形態を示す。このトラフは、プラスチック製のトラフ本体1と、これに被せるプラスチック製のトラフ蓋3とから構成されている。
【0017】
トラフ本体1は、底板5の両側に側壁7を一体に形成した断面ほぼ凹形の形態である。底板5の下面及び両側壁7の外面には補強リブ9、11が形成されている。またトラフ本体1の長手方向の一方の端部には雄型連結部13が突設され、他方の端部の内面には雌型連結部(図示省略)が形成されている。トラフ本体1は定尺物であるため、これを線路脇などに布設するときは、長手方向に隣り合うトラフ本体1を、雄型連結部13と雌型連結部を嵌合させて連結して行く。
【0018】
一方、トラフ蓋3の下面には、補強リブ15とガイド片17が形成されている。ガイド片17は、トラフ蓋3をトラフ本体1に被せたときにトラフ本体1の両側壁7の内側に入ってトラフ蓋3の位置決めをする部分である。また、トラフ蓋1の長手方向の一方の端部には下側重なり部19が、他方の端部には上側重なり部(図示省略)が形成されている。布設されたトラフ本体1にトラフ蓋3を被せるときは、長手方向に隣り合うトラフ蓋3の下側重なり部19と上側重なり部が重なるように被せて行く。
【0019】
以上の構成は従来のトラフと同様である。このトラフの特徴は、トラフ本体1の側壁7の上部に、トラフ本体1の内側と外側を連通する通気孔21を形成したことと、トラフ蓋3がトラフ本体1の側壁7より外側へ張り出す張出し部23を有していて、この張出し部23にトラフ蓋3の下側と上側を連通する通気孔25を形成したことである。トラフ本体1の通気孔21は、補強リブ11の間に形成されている。
【0020】
上記のような通気孔21、25を形成しておくと、トラフ内の空気が図2の矢印のようにトラフ外に流出したり、反対にトラフ外の空気がトラフ内に流入したりするので、トラフ内の温度上昇を抑制できると共に、トラフ内外の気圧差を小さくしてトラフ蓋3が浮き上がるのを防止することができる。また、トラフ蓋3の通気孔25は、トラフ蓋3の張出し部23に形成されているため、トラフ蓋3に雨水等がかかった場合、雨水等は通気孔25を通って側壁7の外側に滴下するので、トラフ本体1の通気孔21からトラフ本体1内に入り込むおそれは少ない。また、トラフ蓋3の通気孔25は、トラフ蓋3の両側(片側だけでも可)に形成されているので、トラフ蓋3の上を避難通路として利用するとき、ハイヒールの踵などが通気孔21に落ち込むおそれが少ない。
【0021】
なお、この実施形態では、トラフ蓋3に通気孔25を形成した場合を示したが、トラフ蓋3に張出し部23が形成されていれば、トラフ蓋3の通気孔25は無くてもよい。ただし、トラフ蓋3に通気孔25が形成されていれば、図2に示すように、トラフが構築物等の壁27に接して布設された場合でも、トラフ内外の通気性を確保することができる。
【0022】
<実施形態2> 図3は本発明の他の実施形態を示す。実施形態1では、トラフ本体1の通気孔21とトラフ蓋3の通気孔25をトラフ長手方向の同じ位置に形成した場合を示したが、このトラフは、トラフ本体1の通気孔21とトラフ蓋3の通気孔25をトラフ長手方向に互い違いに形成したものである。このようにすると、トラフ蓋3にかかった雨水等は、トラフ蓋3の通気孔25を通って、トラフ本体1の通気孔21のない位置で滴下するので、トラフ内への雨水等の流入をさらに少なくすることができる。上記以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
<実施形態3> 図4は本発明のさらに他の実施形態を示す。実施形態1では、トラフ本体1の通気孔21が、側壁7に上端に達する略U字形に形成されている場合を示したが、このトラフは、トラフ本体1の通気孔21を、側壁7に上端に達しない長穴(丸穴、矩形穴等でも可)にした場合である。このような構成でも、実施形態1と同様な効果を得ることができる。上記以外の構成は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
<実施形態4> 図5は本発明に係るトラフ蓋の一実施形態を示す。このトラフ蓋3は、幅方向の両側(トラフ本体1に被せたときにトラフ本体1の両側)に相当する位置に、トラフ本体1内に通じる通気孔25を形成したものである。通気孔25は、トラフ蓋3のトラフ本体1の側壁7より外側へ張り出した張出し部23と、下端にトラフ本体への位置決め用のガイド片17を有する補強リブ15a(トラフ本体1の両側壁7の上に乗る補強リブ)とに形成されている。なお図5において、図1及び図2と同一部分には同一符号が付してあるので、重複する説明は省略する。
【0025】
このようなトラフ蓋3を用いれば、トラフ本体1に通気孔を設けなくても、またトラフ本体1が既設のものであっても、トラフ内外の通気性を確保することができ、トラフ内の温度上昇やトラフ内外の気圧差を低減することができる。また、トラフ蓋3の上面の通気孔25は、トラフ本体1の側壁7より外側へ張り出した張出し部23に形成されているので、トラフ本体1内に雨水等が流れ込むおそれも少ない。さらに、トラフ蓋3の通気孔25は、トラフ蓋3の両側(片側だけでも可)に形成されているので、トラフ蓋3の上を避難通路として利用するとき、ハイヒールの踵などが通気孔25に落ち込むおそれが少ない。
【0026】
なお、張出し部23に形成する通気孔25と、補強リブ15aに形成する通気孔25は、トラフ長手方向に互い違いに形成することが好ましい。このようにすると、トラフ本体1内に雨水等が流入するおそれをさらに少なくすることができる。
【0027】
また、補強リブ15aに形成する通気孔25は、ガイド片17の下端に達する略逆U字形に形成されていてもよい。このようにすると、トラフ蓋3を成型する金型を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るトラフの一実施形態を示す、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は正面図、(D)は(B)のD−D線断面図。
【図2】図1(D)のEの部分の拡大断面図。
【図3】本発明に係るトラフの他の実施形態を示す、(A)は平面図、(B)は側面図。
【図4】本発明に係るトラフのさらに他の実施形態を示す、(A)は平面図、(B)は側面図。
【図5】本発明に係るトラフ蓋の一実施形態をトラフ本体に被せた状態で示す、(A)は断面図、(B)は(A)のBの部分の拡大断面図。
【符号の説明】
【0029】
1:トラフ本体
3:トラフ蓋
5:底板
7:側壁
9、11:補強リブ
13:雄型連結部
15:補強リブ
17:ガイド片
19:下側重なり部
21:トラフ本体1の通気孔
23:張出し部
25:トラフ蓋3の通気孔
27:壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフ本体と、このトラフ本体に被せるトラフ蓋とを備えたトラフにおいて、前記トラフ本体の側壁の上部にトラフ本体の内側と外側を連通する通気孔を形成したことを特徴とする通気孔付きトラフ。
【請求項2】
前記トラフ蓋は前記トラフ本体の側壁より外側へ張り出す張出し部を有しており、この張出し部にトラフ蓋の下側と上側を連通する通気孔が形成されていることを特徴とする請求項1記載の通気孔付きトラフ。
【請求項3】
前記トラフ本体の通気孔と前記トラフ蓋の通気孔とがトラフ長手方向に互い違いに形成されていることを特徴とする請求項2記載の通気孔付きトラフ。
【請求項4】
トラフ本体に被せたときにトラフ本体の両側又は片側に相当する位置に、トラフ本体内に通じる通気孔を形成したことを特徴とするトラフ蓋。
【請求項5】
通気孔は、トラフ本体の側壁より外側へ張り出す張出し部と、下端にトラフ本体への位置決め用のガイド片を有する補強リブとに形成されていることを特徴とする請求項4記載のトラフ蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−232534(P2009−232534A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73158(P2008−73158)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】