トランスジェニックニワトリにおける外因性タンパク質の組織特異的発現
【課題】外因性タンパク質を組織特異的に発現するトランスジェニックトリ、及び該タンパク質発現を可能にする導入遺伝子の提供。
【解決手段】外因性タンパク質を管状腺細胞において選択的に発現するトランスジェニックニワトリであって、該タンパク質が、該ニワトリのゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子によってコードされ、該導入遺伝子が、該外因性タンパク質をコードするDNAに作動可能に連結されている、卵白タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの少なくとも一部分を含む、トランスジェニックニワトリ。
【解決手段】外因性タンパク質を管状腺細胞において選択的に発現するトランスジェニックニワトリであって、該タンパク質が、該ニワトリのゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子によってコードされ、該導入遺伝子が、該外因性タンパク質をコードするDNAに作動可能に連結されている、卵白タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの少なくとも一部分を含む、トランスジェニックニワトリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、トランスジェニック動物およびキメラ動物におけるタンパク質発現の分野、ならびに胚性幹細胞の遺伝子操作、トランスジェニックおよび長期培養のような、可能にする技術に関する。胚性幹細胞は、外因性タンパク質の組織特異的発現を生じる導入遺伝子の挿入によることを含め、遺伝子改変をトリに導入するために特別に設計された遺伝子構築物を用いて操作される。本発明のトランスジェニックトリは、導入遺伝子によって駆動される外因性タンパク質を卵管中に発現し、そしてこのタンパク質は、卵中に多量に蓄積される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
遺伝子操作された動物は、このような動物の細胞からの有益な薬学的製品の産生における途方もなく大きな前進の可能性を提供する。しかし、遺伝子操作された動物の産生は、いくつかの種についてしか克服されていない有意な技術的ハードルを含む。ある種の永続的DNAに遺伝子改変を取り込む能力は、遺伝子操作される各々の種について開発されねばならない、いくつかの別個の技術を必要とする。動物の遺伝的特徴および物理的特徴を変更する1つのアプローチは、動物の胚形態に注入した場合に動物の表現型に寄与する胚性幹細胞を使用することである。胚性幹細胞は、レシピエント胚から生まれた動物の組織に寄与し、交配したキメラによって作製されたトランスジェニック生物のゲノムに寄与する能力を有する。
【0003】
時間および資源の多大な消費が、胚性幹細胞株、細胞のゲノムの操作、ならびにこのような操作された細胞を培養において維持することを可能にする細胞培養技術の研究および開発に捧げられた。多くの試みがなされたが、操作された胚性幹細胞の多能性を培養において維持する能力は、ほんのいくつかの種(特に、マウス)においてしか達成されていない。他の種については、タンパク質産生のためのトランスジェニックにおける遺伝子操作の見込みは、維持可能な長期の胚性幹細胞培養物がないことにより挫折した。
【0004】
胚性幹細胞の維持可能な培養物が容易に利用可能であって、多能性を維持しながらも遺伝子操作が可能な場合、新たな技術の広範な適用が利用可能である。胚性幹細胞は、動物の永続的なDNAに寄与するので、胚性幹細胞が由来する動物の生理学的特徴は、これらの細胞を胚状態のレシピエント動物中に組み込むことにより、レシピエント胚に移入され得る。このことは、以下の2つの主な利点を提供する:第1に、胚性幹細胞が由来する動物の表現型が、レシピエント胚に選択的に移入され得る。第2に、上記の通り、胚性幹細胞培養物が特に安定である場合、この細胞のゲノムは、これらの細胞が導入されるレシピエント胚中に遺伝的改変を導入するように遺伝的に改変され得る。
【0005】
特定の場合には、これらの胚性幹細胞は、外因性タンパク質をコードする導入遺伝子を用いて操作され得る。この導入遺伝子は、有益なタンパク質の産生についての青写真として作用するDNAを含み、そしてレシピエント胚へのこの幹細胞の挿入から作製される動物の組織中でのこのタンパク質の発現を可能にするに充分なコードエレメントおよび調節エレメントを含む、遺伝子構築物である。多くの場合、タンパク質の発現は、特に有益である。なぜなら、このタンパク質が、トランスジェニック動物から収集および単離され得るからである。しかし、動物の組織からの有益なタンパク質の収集は、代表的に、発現されたタンパク質の収集を容易にする特定の特異的組織に発現が制限されることを必要とする。例えば、ウシでは、乳汁中でのタンパク質の発現は、容易な収集を可能にする。乳汁中のタンパク質の発現は、ウシの乳汁を単純に収集して外因性タンパク質を分離することによる、このタンパク質の容易な収集を可能にする。ニワトリでは、卵の卵白におけるタンパク質の頑強な産生はまた、外因性タンパク質の発現のための魅力的なビヒクルを提供する。有益なタンパク質の発現がこのような様式で達成され得る場合、この動物は、他の産生方法よりも優れたタンパク質産生のためのビヒクルとして用いられ得る。従って、1つの特に魅力的な研究分野および魅力的な商業的開発分野は、選択された外因性タンパク質を、このタンパク質の単離および収集を促進する特定の組織において発現する、遺伝子操作された動物である。外因性タンパク質を、動物のうちの特に選択された細胞において産生する能力もまた、特に有益である。なぜなら、組織特異性が単に存在しないことは、この動物の全ての組織においてこのタンパク質が発現されることをもたらすからである。このような環境においては、意味ある量のこのタンパク質が、この動物から分離され得ることはありそうになく、さらに、外因性タンパク質の遍在発現は、通常、動物の全般的健康状態および健康を非常に損なうからである。
【0006】
胚性幹細胞培養物が、導入遺伝子が胚性幹細胞のゲノムに組み込まれるのを可能にするに充分に安定であるならば、タンパク質の組織特異的発現をコードする導入遺伝子は、導入遺伝子として用いられる特定の構築物に依存したいくつかの異なる技術によって、新たなキメラ生物またはトランスジェニック生物に受け継がれ得る。ゲノム全体は、細胞ハイブリダイゼーションによって、インタクトな染色体はマイクロセルによって、染色体未満のセグメントは染色体媒介遺伝子移入によって、そしてキロベースの範囲のDNAフラグメントはDNA媒介遺伝子移入によって、移入され得る(Klobutcher,L.A.およびF.H.Ruddle,Annu.Rev.Biochem.,50:533−554,1981)。インタクトな染色体は、マイクロセル媒介染色体移入(MMCT)(Fournier,R.E.およびF.H.Puddle,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74:319−323,1977)によって胚性幹細胞に移入され得る。導入遺伝子の特定の設計もまた、外因性タンパク質をコードするDNA配列の内容、発現が標的化される特定の組織、発現が生じる宿主生物、および発現されるべきタンパク質の性質を考慮しなければならないからである。インビボで通常発現されるタンパク質は、それらのサイズ、生化学的特徴、および機能が劇的に変化するので、組織特異的発現について設計された導入遺伝子は、胚性幹細胞のゲノムへの成功裏の組み込みを可能にして、宿主生物の選択された組織における成功裏の発現を確実にするいくつかのパラメーターを満たさねばならない。
【0007】
上記の通り、胚性幹細胞における遺伝的改変が、トランスジェニック動物を作製する性能は、非常にわずかな種についてのみ実証されている。マウスについては、キメラ子孫およびトランスジェニック子孫の作製に関する、相同組換えの別個の使用、続いて胚性幹(ES)細胞への染色体移入が周知である。部位特異的相同組換えまたは遺伝子標的化の強力な技術が開発されている(Thomas,K.R.およびM.R.Capecchi,Cell 51:503−512,1987を参照のこと;Waldman,A.S.,Crit.Rev.Oncol.Hematol.12:49−64,1992によって概説される)。クローニングされたDNAの挿入(Jakobovits,A.,Curr.Biol.4:761−763,1994)、およびCre−loxPシステム技術による染色体フラグメントの操作および選択(Smith,A.J.ら,Nat.Genet.9:376−385,1995;Ramirez−Solis,R.ら,Nature 378:720−724,1995;米国特許第4,959,317号;同第6,130,364号;同第6,091,001号;同第5,985,614号を参照のこと)は、安定な遺伝子キメラを作製するために、マウスES細胞内への遺伝子の操作および移入のために利用可能である。哺乳動物システムにおいて有用であると証明された多くのこのような技術は、必要な細胞培養物が入手可能であって、外因性タンパク質の単離および収集を促進する特定の組織での組織特異的発現を生じる導入遺伝子が設計され得るならば、非哺乳動物胚性幹細胞に適用されるべく利用可能である。
【0008】
組織特異的発現を可能にする導入遺伝子は複雑であり、そして導入遺伝子を胚性細胞株中に組み込むために必要な遺伝子操作は、胚性幹細胞の大規模の操作を必要とし、培養条件が遺伝子導入について最適化されなければ、幹細胞の多能性を脅かし得る。従って、導入遺伝子における使用に適切な胚性幹細胞株は、培養において安定でなければならず、かつ、多能性を維持しなければならない。ES細胞が、タンパク質発現に必要なエレメントの全てを含むに充分に大きくかつ複雑である遺伝子構築物でトランスフェクトされた場合に、さらに、この遺伝子構築物は、ES細胞中で発現されて、成功裏に形質転換された細胞の選択を可能にしなければならず、そしてES細胞は、潜在能力を維持しなければならず、そしてこの導入遺伝子は、レシピエント胚中への注入および得られる動物の形成の間、生存可能なままでなければならない。得られる動物では、この導入遺伝子は、導入遺伝子が発現されるように設計された特異的な個々の組織型において効果的に発現されなければならず、そして動物の生存率を損なうので、他の組織においては発現されるべきではない。例えば、免疫系のリンパ様エレメント由来のDNAをコードする導入遺伝子は、キメラ動物またはトランスジェニック動物のBリンパ球において発現されるように特異的に標的化され得る。特に、有益なタンパク質の発現については、この導入遺伝子は、卵管においてタンパク質を発現するように設計され得、その結果、得られるタンパク質は、卵白中に蓄積される。トリ種においては、卵管の細胞型における外因性タンパク質の組織特異的発現は、タンパク質産生のための有益な生物学的系をもたらす。
【0009】
外因性タンパク質の産生については、トリの生物学的系は、効率的な農場養殖、迅速な成長、および経済的生産を含め、多くの利点を提供する。全世界的に、ニワトリおよび七面鳥は、ヒトの食事における主なタンパク質供給源である。さらに、トリの卵は、いくつかのタンパク質の大量合成、ならびにタンパク質産物の単離および収集の容易さの両方について、理想的な生物学的設計を提供する。しかし、トリ種への哺乳動物全体のトランスジェニック技術の適用は、失敗した。最も顕著なことには、トリ胚性癌細胞中に導入されて組織特異性を伴って発現された外因性タンパク質をコードする遺伝的改変の成熟した生存動物への伝達が、実証されていない。
【0010】
多くの場合、胚性幹細胞に遺伝的改変を導入するために必要な技術、遺伝的構築物が導入された特定の細胞改変を選択するための改変された胚性幹細胞のスクリーニングは、胚内への注入のためにES細胞を操作してトランスジェニックニワトリを作製する能力は、これらの工程の全てを実施するために少なくとも数週間を必要とする。遺伝子導入において有用な胚性幹細胞については、胚内への注入までの期間全体について、多能性状態が保持されなければならず、そしてES細胞は、得られる動物において外因性タンパク質の有意義な量を発現するために必要な程度まで、レシピエント胚内に組み込まれなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、外因性タンパク質の非特異的発現および組織特異的発現を示す、トランスジェニックトリおよびキメラトリ、外因性タンパク質発現を可能にする導入遺伝子構築物、外因性タンパク質の単離された組成物、ならびに関連する方法を包含する。本発明は、長期胚性幹細胞培養物由来のキメラトリおよびトランスジェニックトリを作製するために、長期のトリES細胞培養物および特異的技術を用い、ここで、ES細胞のゲノムは、外因性タンパク質を発現する、安定に組み込まれた導入遺伝子を有し、その結果、このES細胞の子孫は、この導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、これらの遺伝子構築物は、ES細胞のDNAを改変して、外因性タンパク質の組織特異的発現を促進する。以下に記載の手順により、宿主トリ胚と組み合わされた場合、これらの改変されたES細胞は、この導入遺伝子を、得られる動物の特異的に選択された体細胞組織中に組み込んでいるキメラトリを産生する。これらのキメラトリまたはトランスジェニックトリは、ES細胞由来の表現型を示し、そして全ての組織にまたがって、または選択された組織において、外来タンパク質を発現する。好ましくは、特異的発現パターンは、他の組織を実質的に除いて、発現をある組織または組織型に焦点を合わせて、このタンパク質の濃縮および収集を容易にする。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
外因性タンパク質を管状腺細胞において選択的に発現するトランスジェニックニワトリであって、該タンパク質が、該ニワトリのゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子導入遺伝子によってコードされ、該導入遺伝子が、該外因性タンパク質をコードするDNAに作動可能に連結されている、卵白タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの少なくとも一部分を含む、トランスジェニックニワトリ。
(項目2)
前記外因性タンパク質をコードするDNAの3’末端に隣接する、卵白タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの少なくとも第2の部分をさらに含む、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目3)
前記外因性タンパク質が、モノクローナル抗体である、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目4)
前記モノクローナル抗体が、ヒト重鎖を含む、項目3に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目5)
前記モノクローナル抗体が、アイソタイプIgGである、項目4に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目6)
前記卵白タンパク質が、オボアルブミンである、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目7)
前記卵白タンパク質が、オボトランスフェリン、オボムコイド、リゾチーム、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、オボインヒビター、シスタチン、オボ糖タンパク質、オボフラボタンパク質、オボマクログロブリン、およびアビジンからなる群より選択される、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目8)
前記導入遺伝子のサイズが、15kbよりも大きい、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目9)
卵白中にヒトタンパク質を含むニワトリ卵であって、該ヒトタンパク質が、トランスジェニックニワトリのゲノムに安定に組み込まれた導入遺伝子によってコードされる、ニワトリ卵。
(項目10)
前記ヒトタンパク質が、モノクローナル抗体である、項目9に記載の卵。
本発明はまた、多量の外来DNAを組み込むように遺伝子改変されて、レシピエント胚の体細胞組織および生殖系列に寄与する、ニワトリ胚性幹細胞の長期培養物を含む組成物を包含する。本発明はまた、卵管組織中に外因性タンパク質を発現し、その結果、外因性タンパク質が、卵白中に濃縮される、トランスジェニックニワトリを包含する。1つの好ましい実施形態では、この外因性タンパク質は、胚性幹細胞および子孫のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子構築物によってコードされるモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体配列は、卵管における発現のために特異的に構築されて、組織特異的発現を促進する適切なプロモーターおよび調節配列を含む、導入遺伝子内に含まれる。外因性タンパク質を発現するトランスジェニックトリまたはキメラトリの実施形態では、本発明は、この動物およびタンパク質(例えば、卵白、外因性タンパク質を含むアルブミン)に特異的な組成物を含む。これらの実施形態の全てについて、本発明のこの構築物、動物および外因性タンパク質を用いる方法もまた含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ニワトリES細胞の特徴的な形態を示し、ここで、小さな細胞は、細胞質がほとんどなくおよび顕著な核小体を伴って、単層で増殖する。
【図2】図2は、ニワトリES細胞のインビトロでの特性、特に、抗体SSEA−1およびEMA−1との反応、ならびにアルカリホスファターゼの発現を示す。
【図3】図3は、189日間培養されたニワトリES細胞の核型である。これらの細胞は二倍体であり、38対の常染色体及び一対のZ染色体を保有する。
【図4】図4は、2つのBarred Rockヒヨコ、およびBarred Rock ES細胞を白色レグホンレシピエント胚に注入することによって形成された2つのキメラである。これらのキメラおよびBarred Rocksは区別ができず、このことは、メラノサイト系列へのES細胞の寄与が大規模であることを示す。
【図5】図5は、Barred Rock ES細胞を白色レグホンレシピエントへと注入することにより作製されたキメラである。左のパネルにおける一対のキメラは、メラノサイト系列に対する、より小さな寄与を示し、一方、左のパネルにおける対は、より大規模の寄与を示す。
【図6】図6は、ES細胞のトランスフェクションに用いられるpCX/GFP/Puro プラスミド構築物の図である。
【図7】図7は、pCX/GFP/Puro 構築物でトランスフェクトされ、ピューロマイシンの存在下で増殖させたニワトリES細胞を示す。上のパネルは、蛍光を示すために写真撮影される;下のパネルは、位相差顕微鏡法によって観察された同じ視野である。
【図8】図8は、トランスフェクトされていないニワトリES細胞(上のパネル)、およびpCX/GFP/Puro構築物でトランスフェクトされてピューロマイシンの存在下で増殖させたニワトリES細胞のFACS分析である。この分析は、トランスフェクトされた細胞の実質的に全てが、導入遺伝子を発現することを示す。
【図9】図9は、pCX/GFP/Puro構築物でトランスフェクトされたES細胞のサザン分析である。BamH1、EcoR1およびこの2つのエンドヌクレアーゼの組み合わせによって消化されたDNAの組み合わせにおけるプローブ位置の相違は、この導入遺伝子が、細胞株TB01およびTB09において異なる位置でゲノム中に組み込まれたことを示す。
【図10A】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Aは、Ov7.5MAbdnsと称される導入遺伝子の図である(上のパネル);(B)モノクローナル抗体についてのコードDNAと組み合わされた、宿主オボアルブミンプロモーター由来のDNA配列を含む、組織特異的発現の導入遺伝子の、図表による提示。
【図10B】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Bは、他の細胞型以外の管状腺細胞において選択的な、モノクローナル抗体の発現を示す、組織特異的発現の導入遺伝子を含むキメラニワトリの膨大部の切片である。
【図10C】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Cおよび図10Dは、キメラの脳組織、腸組織、膵臓組織および筋肉組織を除いて、卵管におけるモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の両方の発現を示す、RT−PCR分析である。
【図10D】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Cおよび図10Dは、キメラの脳組織、腸組織、膵臓組織および筋肉組織を除いて、卵管におけるモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の両方の発現を示す、RT−PCR分析である。
【図11】図11は、BAC−AでトランスフェクトされたcES細胞のゲノムPCR分析である。
【図12】図12は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラのサザン分析である。
【図13】図13は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(右パネル)である。緑色蛍光は、眼およびくちばしにおいて観察され得、このトランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図14】図14は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真である。口腔前庭、脚部および足における緑色蛍光は、トランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図15】図15は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。出現する始原翼羽毛の骨および羽毛髄質中の細胞における緑色蛍光が観察され得、トランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図16】図16は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、腸組織および胸部筋肉において観察され得、トランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図17】図17は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、脚部筋肉において観察され得、トランスフェクトされたES細胞がこれらの組織に寄与し得ることを確認する。
【図18】図18は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、膵臓において観察され得、ES細胞がこの組織に寄与したことを確認する。
【図19】図19は、皮膚およびとさかの組織における蛍光レベルをスコア付けすることにより導かれるキメラ現象の評価と、孵化時のヒヨコの黒色色素沈着の程度をスコア付けすることによって導かれるキメラ現象の評価との間の相関を示す。
【図20】図20は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラ胚の尿膜の、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、尿膜において観察され得、ES細胞がこの組織に寄与したことを確認する。
【図21】図21は、トランスフェクトされていない細胞を用いて作製されたキメラ(コントロール)、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって5%を超えるドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって5%を超えて10%未満のドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって10%を超えて30%未満のドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって30%を超えて75%未満のドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって75%を超えてドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、からのFACSデータ、からのFACSデータのまとめである。肝臓、脳および筋肉からの細胞を、本文において記載の通りに調製した。自己蛍光の閾値よりも上で検出された蛍光細胞の平均数を左に示す;M2閾値(これは、自己蛍光閾値よりも1桁高い)よりも上で検出された蛍光細胞の平均数を、右のパネルに示す。
【図22】図22は、トランスフェクトされていないES細胞を用いて作製されたキメラ(上のパネル)およびCX/GFP/Puroでトランスフェクトされた細胞を用いて作製されたキメラ(下のパネル)の脳から調製された細胞のFACS分析の例である。トランスフェクトされた細胞を用いて作製された胚由来の実質的に全ての細胞は、コントロールトリ由来の細胞の蛍光よりも高いレベルの蛍光を提示し、このことは、キメラの脳組織に対するドナーES細胞の寄与が大規模であることを示す。
【図23】図23は、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされた細胞を用いて作製されたキメラ(下のパネル)の脚部の筋肉から調製された細胞のFACS分析の例である。このキメラの右足は、裸眼で緑色であった。このことは、この組織に対する実質的寄与を示す。蛍光脚部筋肉からの細胞の調製物は、蛍光を発する細胞を主に含むことがFACS分析により示された(下のパネル)。このキメラの左脚部は、色は正常であり、これらの細胞の調製物は、蛍光を発しない細胞を含むことがFACS分析により示された。これらのデータは、同じ動物内での組織のキメラ現象が、ドナーES細胞による異なる寄与を受け得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、ニワトリES細胞株は、大きな核を含み、顕著な核小体を含む、X期胚(図1)から誘導される。これらの細胞は、長期の培養後の形態学により、ニワトリ胚性幹(cES)細胞であること、およびレシピエント胚中に注入された場合にキメラを生じることが確認されている。さらに、このES細胞は、大量の羽毛キメラ現象によって決定したところ、体細胞組織への高度の寄与を可能にする。なおさらに、これらの胚性幹細胞は、外因性タンパク質をコードするDNAを保有する導入遺伝子でトランスフェクトされることが実証されている。このES細胞は、この導入遺伝子を安定に組み込み、そしてこの導入遺伝子を発現して、形質転換細胞の選択を可能にする。これらの形質転換細胞は、キメラを形成し得、ここで、この導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質は、キメラのうちの選択された組織中に存在する。このキメラ由来の細胞は、この導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質を発現する。特に好ましい実施形態では、この導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質は、この導入遺伝子によってコードされるタンパク質に従って、特定の組織または組織型において発現される。胚性幹細胞の子孫は、レシピエント胚へのES細胞の導入およびキメラの形成後、非ES細胞表現型へと分化する、ES細胞誘導体である。トランスジェニックニワトリは、トランスジェニックES細胞由来細胞が生殖系列中に組み込まれた場合、ゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子を保有するニワトリES細胞から作製されたキメラの子孫である。
【0014】
体細胞組織における導入遺伝子の広範な発現は、胚体外組織および体細胞組織における発現によって実証される。トランスジェニック動物の卵のタンパク質内容物の分析は、導入遺伝子から得られ、かつ本発明の技術を用いた、導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質の卵白における選択的発現を実証する。組織特異的発現は、1つの器官、組織または細胞型に実質的に制限される発現によって実証される。
【実施例】
【0015】
(実施例1−ニワトリ胚性幹細胞(cES細胞)の誘導)
ニワトリES細胞を、2つの交配のうちの1つから誘導した:Barred Rock×Barred RockまたはBarred Rock×Rhode Island Red。これらの交配物を、cES細胞の開発可能性を試験する場合の羽毛マーカーを得るように選択した。このcES細胞を、白色レグホン胚(これは、優性の白色遺伝子座においてホモ接合性優性である)中に注入する。これらのES細胞の注入から得たキメラニワトリは、cES細胞由来の黒色の羽毛およびレシピエント胚由来の白色の羽毛を提示する。
【0016】
cES細胞培養物の最初の確立を、米国特許第5,565,479号に記載のプロトコルに従って開始した。X期に、この胚は、約40,000〜60,000個の細胞からなり、卵黄の表面に位置する、小さな丸い盤である。この胚を回収するために、紙のリングを卵黄の膜上に置き、胚を真ん中に露出させる。卵黄膜をこのリングの周囲で切断し、次いでこれを卵黄から持ち上げる。リングの腹側に結合した胚は、顕微鏡下に配置され、そして透明な領域が細い輪を用いて不透明領域から単離される。
【0017】
【表1】
胚を、単細胞懸濁物へと機械的に分散させ、有糸分裂が不活化されたSTO細胞のコンフルエントなフィーダー層上に3×104細胞/cm2の濃度で播種する。cES培養培地は、10% FCS、1% pen/strep;2mMグルタミン、1mMピルベート、1×ヌクレオシド(複数)、1×非必須アミノ酸および0.1mM β−メルカプトエタノールが補充されたDMEM(20%新鮮培地および80%馴化培地)からなる。使用前に、DMEM培地は、Buffalo Rat Liver(BRL)細胞において馴化される。手短に述べると、BRL細胞がコンフルエンシーになるまで増殖したあと、5%血清を含むDMEMを添加し、そして3日間馴化する。この培地を除去し、そして新たな培地バッチを3日間馴化し、そしてこれを繰り返す。3つのバッチを合わせ、そしてこれを用いてcES培地を作製する。ニワトリES細胞は、胚盤葉細胞の播種後3〜7日後に可視になる。これらのcES細胞は、mES細胞に形態学的に類似であった;これらの細胞は、大きな核および顕著な核小体を有して小さかった(図1を参照のこと)。
【0018】
cES細胞の増殖特徴は、mES細胞とは異なる。mES細胞は、平滑な縁部を有する堅い丸いコロニーで増殖し、個々の細胞を区別することが困難である。ニワトリES細胞は、明確に可視の個々の細胞を有する単一層コロニーにおいて増殖した。堅いコロニーはしばしば、cES培養における分化の最初の徴候である。
【0019】
培養において誘導された細胞の多能性マーカーについて試験するために、これらの細胞を固定し、そしてSSEA−1 1(Solter,D.およびB.B.Knowles,Proc.Natl.Acad.Sci,U.S.A.75:5565−5569,1978)、EMA−1(これは、マウスおよびニワトリにおける始原生殖細胞上のエピトープを認識する)(Hahnel,A.C.およびE.M.Eddy,Gamete Research 15:25−34,1986)およびアルカリホスファターゼ(AP)(これもまた、多能性細胞によって発現される)で染色した。これらの試験の結果(これを図2に示す)は、ニワトリES細胞が、アルカリホスファターゼを発現し、そして抗原がSSEA−1およびEMA−1によって認識されることを実証する。
【0020】
cES細胞は上記のプロトコルを用いた後に可視であるが、このような培養物は、数週間よりも長く維持できない。培養条件におけるいくつかの改変を、以下で議論の通りに開始し、このことにより、19の細胞株誘導物(表1)がもたらされ、これらのうちの14個を、レシピエント胚中への注入によるそれらの発生可能性について試験した。羽毛色素沈着によって決定したところ、14個の細胞株のうちの11個が、レシピエント胚に寄与した(以下の表2を参照のこと)。このプロトコルは、胚性幹細胞表現型を発現する多能性細胞の持続培養物を生じる。任意の時点で、この細胞を冷凍保存し得、そして傷つけられたレシピエント胚内に注入された場合、体細胞組織に実質的に寄与する可能性を有する(以下の実施例3および実施例5を参照のこと)。
【0021】
【表2】
マウスについてと同様、トリ胚性幹細胞(これは時々、胚性生殖細胞と呼ばれる)を、STO、STO−sn1および容易に入手可能な他のものを含めた種々のフィーダー層上で誘導する。これらのフィーダー細胞によって産生される白血病阻害因子(LIF)、および帯磁ウシ血清の添加は、ES細胞を未分化状態に維持することに寄与する。本発明の好ましい実施形態では、ニワトリES細胞培養を、STOフィーダー層上で開始する。STO細胞を、コンフルエンシーになるまで増殖させ、10μg/mlマイトマイシンで3〜4時間処理し、洗浄し、トリプシン処理し、そしてゼラチンコートディッシュ上に4×104細胞/cm2にて播種する。cES細胞は、STO細胞のフィーダーがまばらである場合、より迅速に増殖するようである。STOフィーダー細胞濃度を103と105との間まで、好ましくは104細胞/cm2未満まで低下させることにより、cES細胞の誘導体化および増殖を促進する。しかし、ニワトリ胚線維芽細胞およびマウス初代線維芽細胞をフィーダーとして用いた場合、cES細胞は誘導されなかった。また。以前に確立されたcES細胞をこれらのフィーダー上にプレーティングした場合、これらの全ては、1週間以内に分化した。
【0022】
cES細胞を、フィーダーなしで、合成挿入物(例えば、ポリマー膜(Costar,Transwell型)上で増殖させることは、ES細胞を注入した場合のフィーダー細胞によるレシピエント胚汚染を回避する。表3および表4が示すように、STOフィーダーの代わりに挿入物上で培養することは、cES細胞の誘導体化を容易にし、そして挿入物は、最初の誘導体化のために用いられ得る。しかし、挿入物上で最初に迅速に増殖させた後、ES細胞の有糸分裂活性は、4〜6週間の培養後、低下する。培養を長期化するために、これらの細胞は、STO細胞のフィーダーに移入されなければならない。
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
表3および表4におけるデータは、ニワトリの胚性フィーダー細胞およびマウス初代胎仔線維芽細胞が、cES細胞の誘導体化も培養も支持しないことを示す。STO細胞のフィーダーは、誘導体化および増殖を支持するが、103と105との間の限定された濃度、好ましくは、本発明の実施形態では、104未満または約104細胞/cm2の濃度のSTO細胞が存在する場合にのみ、支持する。濃密なSTOフィーダー層は、cES細胞の増殖を損ない、一方、指定された濃度のSTO細胞は、ES細胞の増殖に必要な因子を提供する。これらの細胞が長期の培養期間にわたって保持され、胚性幹細胞表現型を発現し続け、そしてインビボにおいて非胚性幹細胞表現型へと分化する場合、これらは、「ES細胞子孫」と呼ばれる。
【0025】
cES細胞培養物培地は、80%馴化培地から構成され、好ましくは、cES細胞の誘導体化および増殖に必要な因子を含む特定のBRL馴化培地を含む。50%の濃度において、cES細胞の増殖は、80%馴化培地においてほど信頼性はない。馴化培地の百分率が50%未満まで低下した場合、分化細胞の増加によって証明されるように、cES細胞の増殖は影響を受け、そして30%以下の濃度では、cES細胞は、1週間以内に分化する。cES細胞の誘導体化および維持に必要であることが見出されたこの馴化培地は、mESを維持しないが、それらの分化を引き起こす。
【0026】
胎仔ウシ血清は、本発明によるES細胞培地の好ましい成分であり、そしてcES細胞を未分化状態に保つ因子を含む。しかし、血清もまた、分化を誘導する因子を含むことが公知である。市販の血清ロットは、ES細胞を未分化状態に保つ可能性について、使用者によって慣用的に試験される。cES細胞培養物に使用される血清は、マウスES細胞培養物に使用される血清とは異なることが公知である。例えば、細胞毒およびヘモグロビン濃度が低く、マウスES細胞を未分化上体に維持することが公知の、マウスES細胞の培養のために用いられる血清は、ニワトリES細胞の持続増殖を支持しない。
【0027】
それゆえ、ニワトリES細胞について用いられるべき血清は、マウスES細胞について試験されて、培地成分としての適切さが決定されるべきでなく、その代わり、ニワトリES細胞について評価されるべきである。そうするために、ニワトリES細胞培養物を2つに分け、そして各々新たな血清バッチを試験するために用いる。試験した新たなバッチは、経験的に試験された場合、ニワトリES細胞の増殖を明らかに支持しなければならない。
【0028】
ニワトリ染色体展開物は、マウスとは異なる特別の評価技術を必要とする。なぜなら、複雑な核型は、10本の巨大染色体、66本の小さな染色体、及び一対の性染色体(優性においてはZZ、そして雌性においてはZW)からなるからである。図3に示す本発明の長期cES細胞を、培養189日後に分析し、2回冷凍保存した。図3に言及すると、これらは、10本の巨大染色体;2本のZ染色体および66本の小さな染色体を有する、正常な核型を示した。
【0029】
ニワトリES細胞を、培地中で10% DMSOにおいて凍結保存する。いくつかの細胞株の解凍およびレシピエント胚へのこれらの細胞株の注入の後、体細胞キメラが得られる。このことは、これらのcES細胞が、凍結保存プロセスの間、それらの発生能力を保持することを示す。
【0030】
(実施例2−レシピエント胚へのニワトリ胚性幹細胞の注入)
新鮮に置かれた卵中の胚への接近を可能にするために、殻は、半ズボンをはいた状態に(breech)されなければならず、このことは、21日間の孵化期間の最後における孵化率の低下を回避不可能にもたらす。慣例は、卵の側の小さな穴(直径10mm未満)を切断し、これを通して胚を操作し、そしてテープ、ガラスカバースリップ、殻の膜または殻の小片で再度シールした。実施することは比較的簡単であるが、この「窓開け」方法は、70%と100%との間の胚の死亡を引き起こした。胚への改善された接近、ならびに増大した生存および孵化能力は、2つの異なる殻および方法(Callebautから適応される)((Callebaut,Poult.Sci 60:723−725,1981)および(Rowlett,K.およびK.Simkiss,J.Exp.Biol.143:529−536,1989)、これは、この技術に関して、本明細書中に参考として援用される)を用いた孵化のためのインキュベーションのために、この胚を代理卵殻に移植する場合に達成され得、平均孵化率は、約41%(23〜70%の範囲)であり、469個のcES細胞注入胚から191匹のヒヨコが孵化する。
【0031】
レシピエント胚内へのドナーES細胞の注射後の胚のインキュベーションは、以下に記載の通り、システムAおよびシステムBを含む、2つの部分に分けられ得る:
システムAは、最初の3日間の産卵後発生を包含する。レシピエント胚を含む、繁殖能力のある卵は、3〜5グラムより重い卵と一致する。32mmの直径の窓を、指定された極で切断し、内容物を除去し、そして卵黄上のレシピエント胚を、周囲の卵白とともに、代理殻内に慎重に移す。
【0032】
細胞を、2ミクロンフィルターを取り付けたマウスアスピレータに接続した無菌の細くテーパ状になったガラスピペット中に吸い込む。ピペットの開口部は、直径が50〜120ミクロンであり得、そして30°のスパイクしたベベルを有し得る。この胚は、低倍率下で青色光を用いて可視化される。ニワトリES細胞をトリプシン処理して、単細胞懸濁物にし、そして約2,000と26,000との間の細胞、好ましくは約20,000細胞を胚に注入する。この細胞を胚の下または上のいずれかの空間、すなわち、胚下腔または透明領域および卵黄周囲層(卵黄膜)の頂部表面に[Rob:好ましくは、生殖腔下に]穏やかに放出する。新鮮な繁殖能力のある卵から収集された過剰な卵白を添加し、そして殻をサランラッププラスチックフィルムでシールする。
【0033】
システムBは、3日目から孵化までの期間を含む。インキュベーション3日目に、胚は、ほぼ17段階(H & H)に達した。水は、卵白から胚下腔に輸送されており、卵黄が拡大して非常に脆弱になるようになる。システムAの殻の内容物は、元の卵よりも30〜35グラム重い第2の代理殻(通常、七面鳥の卵)へと、非常に注意深く移される。ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加して細菌汚染を防止し、そして平らな極における38〜42mmの窓を、プラスチックフィルムでシールする。このより大きな殻は、人工的な空隙を可能にする。インキュベーション18日目〜19日目に、これらの胚培養物を、密接な観察のために、卓上用孵卵器に移す。肺への通気が確立されるにつれて、穴は、プラスチックフィルムにおいて定期的に作製されて、周囲の空気が間隙に入るのが可能になる。孵化の約6〜12時間前に、フィルムを小さなペトリ皿に置き換え、このペトリ皿は、孵化の間にヒヨコによって容易に押しのけられ得る。
【0034】
インキュベーションについては、従来の温度(37.5℃〜38℃)および相対湿度(50%〜60%)が、代理殻における胚について維持されるが、定期的に卵を揺り動かすこと(これは通常、毎時であり、90度である)は、良好な生存を確実にするために改変される。システムAでは、揺り動かしは、4〜5分間ごとに90°である;システムBでは、これは、40〜45分毎に40°〜60°である。両方の系では、揺り動かしの速度は、1分間あたり15°〜20°に維持される。
【0035】
キメラに対するcES細胞の寄与は、レシピエント胚が、cES細胞の注入の前に以下によって調製される場合、改善される:(1)660ラドのガンマ照射への曝露によって照射される、(2)約1000の細胞を胚の中心から機械的に除去することによって改変される、または上記の(1)および(2)の組み合わせ。表5を言及すると、体細胞組織に対するcES細胞の寄与は、レシピエント胚の中心から細胞を除去することまたは照射への曝露のいずれかによってレシピエント胚が傷つけられた場合に実質的に増加した。レシピエント胚が、細胞照射と細胞の機械的除去との組み合わせによって傷つけられた場合、ES細胞の寄与はさらに増加したが、cES細胞は、より長期にわたって培養された。得られたキメラヒヨコのいくつかは、純粋なBarred Rockヒヨコと区別できない(図4)。表5におけるデータが示す通り、キメラ現象の割合および1つの胚あたりのキメラ現象程度は、レシピエント胚を傷つけた後に増加した。
【0036】
【表5】
レシピエント胚は、X期よりも実質的に若く、そしてまた、ES細胞をドナーとして用いてキメラを生成するために用いられ得る。初期段階のレシピエント胚は、オキシトシンを雌鶏に注入して、早産での産卵を誘導することにより回収され、そして繁殖能力のある卵がVII期〜IX期に回収される。
【0037】
あるいは、卵管の有頭領域からの胚の回収は、約4〜250の細胞からなるI期〜VI期の胚への接触を提供し、潜在的レシピエント胚としての全ての胚段階からのキメラの発生を可能にする。
【0038】
(実施例3−ニワトリ胚性幹細胞(cES)からの体細胞キメラ)
本発明のcES細胞の多能性を実証するために、cES細胞を、白色レグホンレシピエント胚中に注入する。1回目の実験において、28の実験において、合計14個の細胞株を、X期レシピエント胚に注入する(表2を参照のこと)。このcES細胞は、4日間と106日間との間、培養して増殖されており、いくつかの株は、冷凍保存されている。ニワトリES細胞を、軽くトリプシン処理して、cES細胞の小さな塊を得て、そして25mM HEPES+10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM中に再懸濁する。2000〜5000の間の細胞を含む3μl〜5μlの細胞懸濁物を、レシピエント胚の胚芽下腔に注入する。羽毛を発生した全ての胚を分析し、そして24パーセントの胚(83/347)が、羽毛の色によって、キメラであると決定される。羽毛キメラは、11/14の細胞株から得られる。キメラ現象の程度は、1%〜95%に変動し、平均程度は、25.9%(SD=20.4)である。
【0039】
表2は、細胞株内および細胞株間で実施した実験での、体細胞キメラ現象における分散を例示する。キメラに対するES細胞の寄与例を、図4および図5に示す。図4では、2匹のヒヨコがキメラであり、2匹がBarred Rocksである;これらのヒヨコの間に表現型の差が存在せず、キメラに対するES細胞の寄与が(特に、外胚葉由来の系統において)大きいことが明らかである。図5では、左側のキメラは、ES細胞からの比較的低いレベルの寄与を有し、一方、右では、中間の寄与を有する。
【0040】
(実施例4−リポフェクションおよびエレクトロポレーションによるcES細胞のトランスフェクション)
表6を言及すると、トランスフェクトされるウェルのサイズと適合した適切な量のDNAを、血清も抗生物質も含まない培地中に希釈する。適切な体積のSuperfect(Stratagene)を添加し、そしてDNAと混合し、そして反応を5〜10分間にわたって生じさせる。この培地を除去し、そしてトランスフェクトされるべきウェルを、Ca/Mgを含まない塩溶液で洗浄する。適切な体積の培地(これは、血清および抗生物質を含み得る)を、DNA/トランスフェクト混合物に添加する。これらのプレートを37℃において2〜3時間インキュベートする。インキュベーションが完了した場合、Superfectを、細胞を1〜2回洗浄することによって除去し、そして新たな培養培地を添加する。
【0041】
【表6】
ペトリパルサーを用いて、35mmの直径のウェルにおいて、プレートに付着したcES細胞をエレクトロポレーションする。この培地を除去し、そしてウェルを、Ca++およびMg++を含まない塩溶液で洗浄する。1mlのエレクトロポレーション溶液をこのウェルに添加する。DNAを添加し、そしてこの培地を穏やかに混合する。このペトリパルサーを、ウェルの底に下げ、そして電流を送達する(電圧は好ましくは100〜500V/cmで変動し、そしてパルス長は12〜16m秒であり得る)。このペトリパルサーを除去し、そしてエレクトロポレーションしたウェルを、室温にて10分間静置させる。10分後、2mlの培地を添加し、そしてこれらの皿をインキュベーターに戻す。
【0042】
懸濁状態の細胞をトランスフェクトするために、培地を除去し、そして細胞をCa/Mgを含まない塩溶液で洗浄する。EDTAを含むトリプシン(Tryspin)を添加して、単細胞懸濁物を得る。細胞を洗浄し、遠心分離し、そして補正用エレクトロポレーション緩衝溶液(例えば、PBS)中に再懸濁する。このES細胞懸濁物を無菌のキュベット中に配置し、そしてDNA(1mg/mlの最低濃度)をこの細胞懸濁物に添加し、そして上下にピペッティングすることによって混合する。エレクトロポレーションしてRTにて10分間沈降させた細胞をキュベットから取り出し、そして予め調製したウェル/ディッシュに分配する。細胞をインキュベーター中に配置し、そしてエレクトロポレーションの24〜48時間後に、一過性トランスフェクションについて評価する。抗生物質耐性細胞の選択はまた、ピューロマイシンのような抗生物質を培養培地中に含めることによって開始され得る。
【0043】
好ましい実施形態では、トランスフェクトされた細胞を選択するために必要とされるピューロマイシンの濃度は、滴定殺傷曲線として算出される。ニワトリ胚性幹細胞についての滴定殺傷曲線を、培養中の細胞を、0.0〜1.0μg/mlに変動するピューロマイシン濃度に10日間(表7)曝露し、そして0.0〜200μg/mlに変動するネオマイシン濃度に曝露することにより、確立する。培地を2日毎に変更し、そして新たなピューロマイシンまたはネオマイシンを添加する。0.3g/mlの濃度のピューロマイシンに曝露した場合、ES細胞は、6日間の期間にわたって新たなピューロマイシンを3回交換した後に、全てのウェルに存在しなかった(表7を参照のこと)。0.3〜1.0g/mlのピューロマイシン濃度を、トランスフェクトされた培養物の選択に用いる。40μg/mlを超えるネオマイシン濃度は、全てのcES細胞を7日間以内に除去した(表8)。
【0044】
10日間の選択後、cES細胞コロニーが生存可能であり、さらなる増大のために拾われ得る。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
トランスフェクトされたニワトリES細胞の選択およびキメラにおけるそれらの同定は、この導入遺伝子が、培養中のこの細胞に選択優位性(例えば、この培地中のピューロマイシンに対する耐性)を付与すること、およびこれが、ES細胞由来のキメラにおいてこの細胞中に同定可能な遺伝子産物を産生することを必要とする。これは、pCX/GFP/Puroを用いて達成され得、pCX/GFP/Puroは、cES細胞においてピューロマイシンに対する耐性を提供し、キメラにおける全てではないにしろ大部分のドナー由来細胞中に緑色蛍光タンパク質(GFP)を産生する。
【0047】
図6を言及すると、PCX/GFP/Puro(図6)を、最終的なpCX/GFP/Puroプラスミドを作製する前に2つの中間体を含む3つのクローニング工程において生成した。工程1では、PGK駆動ピューロマイシン耐性遺伝子カセット(1.5Kb)を、Asc I消化により、pKO SelectPuro(Stratagene)から遊離させた。次いで、このフラグメントを平滑末端化し、そしてKpn Iリンカーを添加した。得られたフラグメント(GFP/Puro)を、pMIEM(Jim Petitte(NCSU)から無料提供、LacZ発現pMIWZ由来のGFP発現バージョン、Cell Diff and Dev.29:181−186(1990)を参照のこと)の対応するKpn I部位に挿入して、最初の中間体(pGFP/Puro)を生成した。このPGK−Puroカセットは、GFPと同じ転写方向にあった(BamH IおよびSty Iでの消化によって決定した)。工程2では、GFP/Puro発現カセット(2.5Kb)を、BamH IおよびEcoR Iでの二重消化によってpGFP/Puroから遊離させた。得られたフラグメントを、pUC18(Invitrogen)のBamH I−EcoR I部位に挿入した。これは、5’独特の部位である、Hind III、Pst IおよびSal Iを含む。得られたプラスミドpUC18/GFP/Puroを、BamH I、EcoR IおよびNot Iでの三重消化によって確認した。第3の工程では、384bpのCMV−IEエンハンサーを含むCxプロモーター、1.3kbのニワトリβ−アクチンプロモーターおよび第1イントロン部分を、Sal IおよびEcoR Iでの消化によってpCX−EGFP(Masahito,I.ら,FEBS Letters 375:125−128,1995)から遊離させた。3’EcoR I(null)−XmnI−BamH Iリンカーをこのフラグメントに結合させ、そしてこれを、pUC18/GFP/PuroのSal IおよびBamH I部位に挿入した。このプラスミドpCX/GFP/Puro(図6)を、BamH IおよびPst Iでの二重消化によって確認した。pCX/GFP/Puro DNAは、cES細胞へのトランスフェクションのために、Sca I消化によって直鎖状にされ得る。
【0048】
上記の手順を用いたES細胞のトランスフェクションおよび選択は、0.5μgのピューロマイシンの存在下で増殖する細胞集団を産生した。これらの細胞は、従来の蛍光顕微鏡法によって調べた場合、緑色蛍光を示した(図7を参照のこと)。ES細胞の調製物を、蛍光活性化細胞選別によって調べる場合、本質的に全ての細胞が、導入遺伝子を保有して発現することが明らかである(図8を参照のこと)。BamHI、EcoRIまたは両方の制限エンドヌクレアーゼを用いて消化された、トランスフェクトされたES細胞株TB01およびTB09からのDNAのサザン分析は、種々のサイズのDNAフラグメント中での導入遺伝子を示し、この導入遺伝子が、ゲノム中に組み込まれたという証拠を提供した(図9を参照のこと)。
【0049】
このCX/GFP/Puro構築物は、少なくとも4.5kbの導入遺伝子が、キメラニワトリ中に挿入され得ることを実証する。本明細書中に記載されるcES細胞を用いて、ニワトリES細胞は、異なるかまたはより大きな構築物を用いてトランスフェクトされ得る。この導入遺伝子の設計に依存して、外因性タンパク質をコードするDNAは、得られるキメラ動物またはトランスジェニック動物の体細胞(すなわち、内胚葉、中胚葉、外胚葉、および胚体外組織)において広範に検出され得、そして顕著なレベルの外因性タンパク質を選択された組織のみにおいて発現するように設計され得る。このタンパク質は、組織特異的導入遺伝子構築物中に含まれるDNAによってコードされる。この導入遺伝子構築物は、宿主生物のゲノム由来の遺伝子エレメントから構成され得、そして選択された組織におけるタンパク質の既知の発現(または発現パターン)に基づいて選択され得る。特定の組織における発現については、選択される組織において通常発現される、そして通常高度に発現される、タンパク質をコードする遺伝子を選択し、そしてこの遺伝子由来の調節エレメントを、この外因性タンパク質の発現を駆動するために選択する。この外因性タンパク質についてのDNAコード配列、他の調節エレメント、選択マーカーなどと合わせた場合、この導入遺伝子は、選択された組織においてこの外因性タンパク質の優先的発現を生じる。特定の組織型における優先的発現は、非選択組織と比較して、選択された組織において3〜4桁の大きさ分大きな発現と規定され得る。
【0050】
トランスジェニックトリにおける組織特異的タンパク質発現について、組織特異的発現は、好ましくは、膨大部、峡部、卵殻腺部または卵管漏斗部を含め、卵管の一領域に指向される。タンパク質発現についての個々の組織の選択は、発現されるべきタンパク質の型に依存する。この膨大部は、卵白の主なタンパク質を発現する管状腺細胞を含み、一方、この峡は、殻膜を発現する細胞を含む。可溶性タンパク質の発現は好ましくは、卵白タンパク質(好ましくは、オボアルブミンであるが、オボトランスフェリン、オボムコイド、リゾチーム、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、オボインヒビター、シスタチン、オボ糖タンパク質、オボフラボタンパク質、オボマクログロブリン、およびアビジンが挙げられる)を発現する遺伝子由来の(通常はプロモーターを含む)調節配列を選択することにより、卵管の膨大部の管状腺細胞に指向される。管状腺細胞における選択的発現は、上皮細胞における発現を排除するために、以下に実証され、そして2つの細胞型の間での選択性を区別するために、優先的発現と命名される。
【0051】
以下の実施例では、外因性免疫グロブリン遺伝子座とともにプロモーターを含む内因性卵白調節配列を含む導入遺伝子を構築して、卵管の管状腺細胞における組織特異的抗体発現を生じる。次いで、このようにして発現された抗体分子は、トランスジェニックニワトリの卵白中に蓄積される。この実施形態では、任意の再配置された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる抗体は、卵管の膨大部分の管状腺細胞を含む組織において特異的に発現され、そして卵の卵白から単離され得る。モノクローナル抗体をコードする再配置された免疫グロブリン遺伝子は、他の組織における発現を実質的に除いて、卵管において優先的に発現されるが、他の組織における発現は、検出可能なレベルより上で存在し得る。
【0052】
この実施形態では、オボアルブミン調節配列の制御下のこのモノクローナル抗体カセットは、少なくとも3.4kb、好ましくは少なくとも約7.5kbの5’調節配列から構成され、そして15kb以上の3’調節配列を含み得る。好ましくは、この構築物は、外因性抗体コード領域の5’末端および3’末端の両方に隣接する、オボアルブミン遺伝子の領域を含むが、5’隣接領域の内因性プロモーター配列の大きく充分なセグメントは、3’隣接領域についての必要性を回避し得る。抗体の重鎖および軽鎖の両方のコード領域は、導入遺伝子において提供され、そして選択されるアイソタイプの可変領域、多様性領域、連結領域および定常領域を含む。好ましい実施形態では、この抗体は、特徴的にはヒトであり、少なくともヒト重鎖を含む、免疫グロブリン遺伝子によってコードされる。また、このアイソタイプは、好ましくは、IgGであり、最も好ましくはIgG1である。
【0053】
オボアルブミン由来モノクローナル抗体構築物についての好ましい導入遺伝子構築物を、図10Aに提供する。この導入遺伝子構築物を、Ov7.5と命名し、そしてこの構築物は、5’末端配列ではMAbコードに、そしてコード領域の3’では15kbのプロモーター配列に隣接する、プロモーター(この特定の実施形態では、オボアルブミンプロモーター)を含む、約7.5kbの卵白調節配列を有する。このコード領域は、軽鎖および重鎖の両方についての可変領域、J−Cイントロン配列、κ軽鎖定常領域、IRES配列、ならびにγ1アイソタイプ重鎖定常領域を含む。この構築物の3’末端は、GFP遺伝子および選択マーカー(この場合、本明細書中に記載されるCXプロモーターによって駆動されるピューロマイシン遺伝子)を含む。モノクローナル抗体コード領域の3’および5’の両方でのオボアルブミンプロモーター配列の長さは、例にすぎず、類似の構築物は、25〜100kb以上の5’配列ならびに種々の長さを3’配列に含み得る。当業者は、GFPマーカーが、生理学的標本における検出のためにのみ存在し、この導入遺伝子の有用性から逸脱することなく除去され得ることを認識する。ピューロマイシン耐性マーカーは、この導入遺伝子で成功裏に形質転換された胚性幹細胞を選択する能力を提供する任意のマーカーで置換され得る。いくつかの型の類似の選択マーカーは、当該分野で周知であり、そしてこの実施形態のピューロマイシン耐性遺伝子と本質的に交換可能に用いられ得る。
【0054】
上記の通り、このモノクローナル抗体は、本発明の導入遺伝子構築物を用いて発現され得るいくつかの型のモノクローナル抗体産物のうちの1例にすぎない。さらに、タンパク質のクラスとしてのモノクローナル抗体は、本明細書中に記載される方法および技術に従って組織特異的様式で発現され得る多くのクラスのタンパク質産物の1例にすぎない。
【0055】
図10Bを言及すると、Ov 7.5導入遺伝子の発現がエストロゲン注射によって誘導された2週齢のキメラの膨大部の切片は、形質転換胚性幹細胞由来の抗ダンシルモノクローナル抗体産生細胞の組織特異的発現が、GFPを発現することを示し、これは、図10Bの左のパネルにおいて緑色として示され、Ov 7.5導入遺伝子で形質転換された胚性幹細胞による寄与を確認する。図10Bの左下のパネルを言及すると、このモノクローナル抗体は、管状腺細胞において赤色に染まり、一方、上皮細胞(これもまたドナー胚性幹細胞由来である)は、緑色に染まり、赤色には染まらない。染色におけるこの相違は、構築物の発現は、組織特異的であり、そして特定の組織型についての導入遺伝子の内容によって選択されることを実証する。以下の実施例は、卵管の管状腺細胞における組織特異的発現を実証するが、全ての細胞および組織型にまたがる発現の実証は、各々または任意の組織型が、導入遺伝子構築物の成分、および例えば、プロモーターまたは他の調節エレメントの対応する選択により、組織特異的発現または細胞特異的発現について選択され得ることを実証する。
【0056】
図10Bの右上のパネルでは、細胞型の全てを、DAPI染色によって示される。右下のパネルでは、染料を重ねて、ドナー由来の管状腺細胞のみがモノクローナル交代を発現し、一方、レシピエント由来細胞およびドナー由来上皮細胞がモノクローナル抗体を発現しないことを実証する。図10Cおよび図10Dは、抗ダンシルモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖が、それぞれ、3または5のキメラの卵管組織においてのみ選択的に発現され、これらのキメラの脳、腸、膵臓または筋肉にいずれにおいても、RT−PCRによって検出されるレベルより上では発現されないことを示すRT−PCR分析である。
【0057】
ヒトIgGアイソタイプモノクローナル抗体が選択的に発現され得、そして蓄積されるタンパク質が卵白であることを実証するために、合計18のキメラ雌を、Ov7.5構築物を保有するcES細胞を注入することにより作製した。この群からの6つのキメラを、早期エストロゲン誘導による導入遺伝子発現を試験するために用いた。残りの12のキメラ胚を、卵収集のために性的に成熟するまで育てた。9つのキメラ雌が、17〜22週齢において産卵を開始し、これらのキメラのうちの1つは、時々産卵した。キメラ雌のうちの3つは、35週齢においても卵を産卵せず、剖検時に、それらの性腺が、雄性ES細胞由来組織の存在により男性化していることが明らかであった。
【0058】
卵を産卵する9個のキメラ由来の卵を収集し、そして代表的卵白サンプルを、硫酸アンモニウム沈澱によって調製し、そしてELISAによって分析した。マイクロタイタープレートを、ヤギ抗ヒトIgG抗体でコートし、そして卵白サンプル中のヒトIgG MAbの存在が、重鎖について特異的な標識ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的)抗体および/または軽鎖についての標識ヤギ抗ヒトκ(κ鎖特異的)抗体によって明らかにされた。標準曲線を、精製ヒトIgγ1、κタンパク質を用いて確立した。ELISAの感度は、0.8ng/mlであった。非トランスジェニック白色レグホン雌鶏由来の卵白サンプルを、ネガティブコントロールとして用いた。ヒトIgG MAb蓄積は、非トランスジェニック白色レグホン雌鶏由来の卵(4個の卵)においても、6個のキメラ雌鶏由来の卵(雌鶏#OV11−17由来の8個の卵、雌鶏#OV11−53由来の8個の卵、雌鶏#OV11−73由来の6個の卵、雌鶏#OV11−88由来の6個の卵、雌鶏#OV12−97由来の4個の卵、および雌鶏#OV13−13由来の5個の卵)においても検出されなかった。
【0059】
ヒトIgG MAb蓄積が、3つの異なるキメラ雌鶏からの卵において検出された(IgHについてのELISAによって決定したところ、雌鶏#OV11−13由来の卵について約1.4〜6.3ng/ml、雌鶏#OV11−37由来の卵について約2.0〜2.9ng/ml、および雌鶏#OV11−43由来の卵について約2.9〜10.8ng/ml)。代表的な卵におけるヒトIgG MAbの濃度を、表9にまとめる。IgLについてのELISAによって決定された、卵中のヒトIgG MAbの濃度は、IgHについてのELISAによって決定された濃度よりも、一貫して低かった。一般に、IgLによって決定された濃度は、IgHによって決定された濃度の60%であった(表9における第3欄と第5欄とを比較する)。この相違はまた、精製したヒトIgγ1、κタンパク質を用いて作製された、スパイクされたサンプルにおいて存在する。
【0060】
【表10】
雌鶏#OV11−13、#OV11−37(これは、それらの卵中にヒトIgを蓄積した)および白色レグホン由来の血液サンプル中のヒトIgG MAbタンパク質の濃度は、アッセイ感度(0.8ng/ml)未満であった。これらのデータは、エストロゲン誘導性キメラヒヨコにおける腸、脳、膵臓および筋肉におけるヒトIg転写産物の存在を評価するためのRT−PCRを用いて観察された、キメラニワトリにおけるヒトIgの異所発現が存在しないことと一貫している(図Ti 10Cおよび10D)。それゆえ、Ov7.5構築物は、組織特異的な、ホルモンによって誘導された、そして発生によって調節される遺伝子発現を、トランスジェニックキメラ雌鶏において送達するようである。さらに、このタンパク質は、膨大部における管状腺細胞から運び出されて、卵白中に蓄積するようである。
【0061】
オボアルブミン由来の組織特異的タンパク質発現導入遺伝子を、以下の通りに構築した:
ニワトリゲノムBACライブラリー(Crooijmans,R.P.ら,Mamm.Genome 11:360−363,2000)、(Texas A & M BAC
Center)をスクリーニングして、オボアルブミン遺伝子座における46Kbの領域を単離する。MAbコード領域の5’側に位置する、このオボアルブミンプロモーターの異なるフラグメントを有する、2つの異なるベクターを構築した:(1)Ov7.5MAb−dns:42Kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の9.2Kbの5’配列(7.5Kbプロモーターを含む)および15.5Kbの3’隣接配列を含む(図10A)。この42kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の9.2kbの5’配列(7.5kbのプロモーターを含む)および15.5kbの3’隣接配列を含む。二シストロン性モノクローナル抗体カセットは、抗ダンシル抗体の軽鎖、IRESおよび重鎖をコードする。(2)Ov15MAb−dns:49Kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の16.8Kbの5’配列(15Kbプロモーターを含む)および15.5Kbの3’隣接配列(示さず)を含む。この49kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の16.8kbの5’配列(15kbのプロモーターを含む)および15.5kbの3’隣接配列を含む。このモノクローナル抗体カセットは、両方の構築物において同一である。
【0062】
上記のように、両方のベクターにおいて発現されるべき遺伝子は、マウス−ヒトハイブリッドの抗ダンシルモノクローナル抗体(MAbdns)である。CxEGFP/CxPuroカセットを、最も3’側の末端にクローン化して、cES細胞における安定なトランスフェクションについての、ピューロマイシンを用いた選択、およびキメラでのトランスフェクトされた細胞の容易な同定を可能にする。両方の構築物を線状にし、そしてcES細胞へのトランスフェクション前に精製する。cES細胞のトランスフェクションを、Ov7.5MAbdnsを用いて実施し、そしてOvl5MAbを、SuperFect(Stratagene)またはペトリパルサーエレクトロポレーションのいずれかを用いて実施する。ピューロマイシンを用いた選択後、6つの耐性クローンを、分子分析のために拾う。導入遺伝子の存在を、MAbdnsカセット中、GFP遺伝子中およびPuro遺伝子中に位置するプライマーを用いたPCRによって確認する。トランスフェクトされたES細胞を用いて、以下に詳細に記載する通り、トランスジェニックトリまたはキメラトリを作製する。
【0063】
なお別の例では、再配置されていないヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子座の一部をコードする、非常に大きな導入遺伝子は、ニワトリES細胞中にトランスフェクトされている。139キロベースの細菌人工染色体(BAC)クローンを、環状BAC DNAおよび直鎖状選択マーカーDNAの共リポフェクションによって、pCX−EGFP−CX−puro選択マーカーを用いて、cES細胞中に共トランスフェクトした。このBACクローンは、再配置されていない免疫グロブリン重鎖遺伝子座由来のヒトゲノムDNA挿入物を含み、そして最も3’側の可変領域(VH6−1)、全ての多様性(D)セグメント、全ての連結(J)セグメント、CμおよびCγ定常領域、J−イントロンエンハンサー、およびこれらのエレメントの間の全ての介在DNAを含む。これはまた、ヒト遺伝子KIAA0125を含む。ヒト遺伝子KIAA0125は、VH6−1とDセグメント領域との間に見出される、機能未知の非翻訳RNAをコードする遺伝子である。pCX−EGFP−CX−puroは、CXプロモーター(サイトメガロウイルスエンハンサーおよびニワトリβ−アクチンプロモーターからなる)によって駆動される強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子、および同じプロモーターによって駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドである。このプラスミドでトランスフェクトされたcES細胞は、緑色蛍光性であり、抗生物質ピューロマイシンに対して耐性である。ピューロマイシンの存在下で増殖したトランスフェクトされたES細胞における、再配置されていないヒト重鎖遺伝子の存在を、139kbの構築物全体に広がった導入遺伝子のPCR分析によって調べた。PCR分析において用いたプライマー配列は、以下であった:
【0064】
【化1】
cES細胞を、選択マーカーpCX−EGFP−CX−puroおよびBAC CTD−2005N2で共トランスフェクトして、BAC−Aと命名されるcES細胞株を得る。ゲノムDNAを調製し、そしてBACクローンの長さとともにマーカーに対応する5つの異なるプライマーセットを用いてPCRを実施する。これらのマーカーは、以下である:VH6−1(ヒトゲノム挿入物の[ヒト重鎖遺伝子座と比較して]5’末端から24kb)、D1−26(末端から83kb)、D1−20(末端から73kb)、Cμ(末端から約108kb)、およびCδ(末端から約120kb)。VH6−1、CμおよびD1−26のみを示すが、全てが類似の結果を与えた。cES細胞サンプルからの増幅についてのコントロールとして、ニワトリβ−アクチンPCRもまた行う。サンプルは、以下である:
1.BAC−A細胞;
2.cES細胞についてのフィーダー層として用いられるマウスSTO細胞(ネガティブコントロール);
3.Barred Rock胚DNA(同じ系統、親cES細胞株、ネガティブコントロール);
4.ヒトゲノムDNA(ポジティブコントロール);
5.cES細胞培地(ネガティブコントロール)。
【0065】
図11に示す通り、導入遺伝子の全てのセグメントは、トランスフェクトされて選択されたES細胞中に存在する。
【0066】
(実施例5−キメラにおける、トランスフェクトされたドナー由来細胞の同定)
トランスフェクトされたドナー由来細胞を、多数の方法により、キメラ中で検出する。例えば、導入遺伝子を、羽毛における黒色の色素沈着の存在によって同定される、キメラから採取した組織のサザン分析により検出する。また、DNAを、胚または鶏冠組織から収集し、そしてBamH1、EcoR1またはこれらのエンドヌクレアーゼの組み合わせにより消化する。キメラにおける組織由来のDNAを、サザン分析により調べた場合、TB01(これは、キメラを作製するために用いたドナー細胞である)において見られるバンドと同一であったバンドは、BamH1、EcoR1またはこれらの2つの制限エンドヌクレアーゼのいずれかを用いた消化の後に明らかであり(図12)、従って、キメラが、レシピエント胚中に導入されてキメラを形成するES細胞の子孫を含むという証拠を提供した。
【0067】
組織における導入遺伝子の存在を、キメラに蛍光を照射することにより検出する。これは、この導入遺伝子が、眼およびくちばし(図13)、口腔前庭、脚部および足(図14)、ならびに翼における骨および羽毛髄質における細胞(図15)において発現されることを示す。内部器官の検査は、ドナー由来のES細胞が、腸組織および胸筋(図16)ならびに脚部の筋肉(図17)に寄与したことを明らかにした。別のトリでは、膵臓への大規模の寄与が観察された(図18)。これらのデータは、ES細胞の子孫が、くちばし、羽毛および皮膚を生じる外胚葉、筋肉および骨を生じる中胚葉、ならびに膵臓を生じる内胚葉に寄与するという強力な証拠を提供する。
【0068】
蛍光によるトリの照射を用いて、トリを1〜4のスケールでスコア付けし、ここで、4は、可視の皮膚、眼およびとさかの全てが、蛍光性であることを示す。この蛍光スコアを、皮膚のいくつかの領域を、蛍光ランプを用いてスクリーニングし、そしてヒヨコを0〜4のスケールでスコア付けすることにより決定した。類似のスコアを用いて、羽毛の色素沈着によって評価されるキメラ現象の程度を評価する。羽毛キメラ現象を、孵化時のダウンと比較した、黒色ダウンの%として評価した。Barred Rockヒヨコのダウンの約25%は、白色である。それゆえ、Barred Rock由来ES細胞に完全に由来するキメラにおいて可能な最大スコアは、75%である。方程式y=0.41x+0.25(ここで、yは、蛍光スコアであり、xは、ES細胞由来の羽毛色素沈着の程度である)によって記載されるこれらの2つの間の相関を、図19に示す。
【0069】
漿尿膜の検査は、cES細胞もまた、胚体外組織に寄与することを示した(図20を参照のこと)。これらのデータは、ニワトリES細胞の多能性が、マウスES細胞(これは、栄養外胚葉に寄与しない)の多能性よりも大きいかもしれないことを示す。
【0070】
キメラにおける生存組織の検査に加えて、細胞を、種々の組織から調製し、そしてES細胞由来の蛍光細胞を決定した。組織(筋肉、肝臓または脳)を、死後のニワトリから取り出し、次いでPBSでリンスして、血液または他の流体を除去した。この組織の外膜を切開により除去し、そして残りのサンプルを細かく切り刻んだ。血清を含まない、DMEM(筋肉および肝臓)またはLiebovitz L15培地(脳)のいずれか中に1mlの1mg/mlコラゲナーゼ(IV型、Sigma)を含む微量遠心管に、各組織サンプルを移した。これらの管を、37℃の水浴中で30〜45分間インキュベートし(これらのチューブを、10〜15分毎に反転して懸濁物を振盪した)、次いでこれらの組織を、使い捨てのプラスチックチップを備えた100〜200μlのピペットを用いて、単細胞懸濁物中に分散させ、そして組織型に従って精製した。全ての遠心分離工程を、微量遠心管において実施した。
【0071】
筋肉細胞懸濁物について、この懸濁物を、4000rpmにおいて5分間遠心分離し、上清を除去し、そして10%熱不活化ウマ血清を含む500μlのDMEMで置換した。ペレットを再懸濁し、そして管を、2600rpmにおいてさらに60秒間遠心分離し、次いで上清を取り出し、そして40ミクロンのナイロンメッシュ(無菌で使い捨て用、Falconブランド)に通した。細胞懸濁物のサンプルを、この段階で顕微鏡によって検査して、適切な細胞形態およびフローサイトメトリーに関して充分な細胞密度を確実にした(最適未満の密度を、希釈、またはペレット化および再懸濁により訂正した)。
【0072】
肝臓細胞懸濁物について、この懸濁物を、40ミクロンのナイロンメッシュを通して濾過し、清浄な微量遠心管に移し、そして筋肉についての通りにペレット化した。ペレットの底に区別できる可視の層を形成する赤血球を破壊しないように注意しながら、このペレットの上の層を慎重に取り出して、完全DMEM(500μl)を有する清浄なチューブに移す。この細胞懸濁物をこの段階で検査し、そして細胞密度を調整した。赤血球が細胞調製物中に存在した場合、これらを、溶解工程(これらの細胞を、130mM塩化アンモニウム、17mM Tris、10mM重炭酸ナトリウムを含む1ml溶解緩衝液中で、室温にて5分間インキュベートする)を用いて除去する。
【0073】
脳細胞懸濁物については、この懸濁物を濾過し、そして上記のとおりにペレット化した。10%ウマ血清および6g/lグルコースを含み、Percollを添加して50%溶液(約260〜280μl)を得た250μlの完全Liebowitz(L−15)培地中にこのペレットを再懸濁した。この懸濁物を、3.5kにて5分間遠心分離し、その後、細胞の上層を注意深く取り出して清浄な微量遠心管に入れ、そして少なくとも1mlのL−15培地で希釈した。この細胞を、4000rpmにて5分間遠心分離することによりペレット化し、次いで適切な体積のL−15中に再懸濁した。
【0074】
GFP発現のフローサイトメトリー分析を、キメラからの肝臓細胞、脳細胞および筋肉細胞において実施した。単細胞懸濁物を、ポリスチレンチューブ中に移し、そしてフローサイトメトリー(これについては、サンプルの特定の細胞型を検出するように動作パラメーターを設定してあり、そして励起レーザービームに応答して緑色波長の放射された光を検出するような装備がある)にローディングした。各分析において、非トランスジェニックキメラ由来の少なくとも1つの群のサンプルを、蛍光測定についてのベースラインを設定するために分析した(なぜなら、このフローサイトメーターは、各細胞からのいくつかの自己蛍光を検出するからである)。これらは、図21において、コントロールサンプルと言及される。このフローサイトメーターによって生成されるデータは、(指定されたパラメーター内の)検出細胞の数を含んでおり、そしてその集団内での細胞の蛍光をまとめた。脳組織および筋肉組織の分析からのデータの例を、それぞれ、図22および図23に示す。データを、各組織型について非トランスジェニックサンプルによって設定された自己蛍光レベルよりも大きな蛍光強度を示す細胞の数(M1と命名される)について収集した。これらのデータのサブセットを、自己蛍光レベルよりも少なくとも10倍高い蛍光強度を示す細胞(M2と命名される)について収集した。
【0075】
脳サンプル、肝臓サンプルおよび筋肉(胸部および脚部)サンプルを、26のニワトリから取り出し、このうちの18は、上記の通りに、GFP導入遺伝子を保有するトランスジェニックニワトリES細胞を、非トランスジェニック白色レグホンのレシピエント胚に注入することにより作製されたキメラであった。残りの8つのニワトリは、トランスフェクトされていないcES細胞を非トランスジェニック白色レグホンのレシピエント胚中に注入することにより作製されたキメラであった。雄ニワトリおよび雌ニワトリは、両方の群に存在した。緑色蛍光は、トランスジェニックキメラからの脳由来細胞、肝臓由来細胞および筋肉由来細胞において検出された。蛍光強度および蛍光細胞と非蛍光細胞との比は、トリ毎に異なり、そして組織型毎に異なった。表にした結果を、図21に示す。ドナー由来の羽毛色素沈着について、または死後分析の前にUVランプを用いてスクリーニングされた場合に緑色皮膚について、低いスコアが与えられたトリでは、組織サンプル中の蛍光細胞の数は、一般に低いかまたはゼロであった。これらの基準について高く(例えば、75%を超えるドナー由来羽毛)スコア付けされたトリは、3つ全ての組織サンプル型において蛍光細胞を有することが見出され、そしてこれは、高度に蛍光性の(M2)細胞が、3つ全ての組織型に存在する唯一の群であった。3つの組織型のうち、肝臓由来の蛍光細胞の数が最も少なかった。脳由来蛍光細胞および筋肉由来蛍光細胞は、より多くの数で存在し、そしてトランスジェニックキメラ由来のより多数のサンプルにおいて存在した。このデータを、図19にグラフとして示す。
【0076】
このデータは、トランスジェニックcES細胞が、レシピエントのX期胚中に注入された場合に、宿主中で繁殖し得、そして肝臓細胞、筋肉細胞および脳細胞へと分化し得ることを示す。肝臓、筋肉および脳は、それぞれ、内胚葉、中胚葉および外胚葉に由来する組織である;従って、cES細胞は、3つの主な体細胞系列へと分化し得、これから、全ての他の体細胞が誘導される。さらに、この実験は、トランスジェニックcES由来細胞が、胚の段階を超えて持続して、若いニワトリにおいて見られ得、そして導入遺伝子が、これらの多様な細胞型において発現され続けることを示す。
【0077】
導入遺伝子はまた、ES細胞由来のリンパ球において存在する。造血(hemopeotic)系列(これは、リンパ様系列および骨髄系列を含む)は、ES細胞由来のトランスジェニックキメラにおいて特に目的のものである。なぜなら、リンパ様系列におけるB細胞は、抗体を生じるからである。リンパ球は、孵化から成体までの任意の時点においてキメラニワトリから、またはキメラ胚のファブリキウス嚢から採取された血液サンプルのいずれかから調製される。嚢は、胚発生(E20)の20日目においてヒヨコから取り出され、そして20mlのシリンジのプランジャを用いて10mlのハンクス平衡塩溶液(HBSS)中で鋼メッシュに強制的に通すことにより単離される。得られる組織フラグメントおよび細胞を管に収集し、そして室温において5分間インキュベートして、大きなフラグメントが沈澱するのを可能にする。細胞上清を収集し、そして細胞を計数し、次いで1500gでの、4℃にて10分間の遠心分離により収集し、そして15mlのコニカルチューブにおいて、HBSSの1mlあたり最大1×108細胞において再懸濁する。血液を、ヘパリン処理したシリンジを用いてキメラニワトリの翼の静脈から収集(0.5ml)し、そしてEDTAを含む真空管中に沈着させて凝集を存在させる。血液サンプルをHBSSと1:1で混合して、15mlのコニカルチューブ中に1mlの最終体積を得た。この点から、血液サンプルおよび嚢サンプルを同じように処理する。Fico/Liteを、細胞懸濁物の下にチューブの底に分配することにより、1mlの細胞懸濁物の下に、0.75ml Fico/Lite−LM(Atlanta Biologicalsカタログ番号I406)を敷く。次いで、チューブを1500gにて15分間、4℃にて、ブレーキなしで遠心分離する。Fico/LiteとHBSSとの間の界面を注意深く集めて、別個の物質層に濃縮した単核細胞を収集する。この物質を新たなチューブに移し、粉砕して詰まった細胞を破壊し、次いで3mlのHBSS/2%熱不活化ウシ胎児血清と混合する。細胞を、Sorvall卓上型遠心分離機における1500rpmにて、4℃にて10分間の遠心分離によって収集し、次いでHBSS/2% FBS中でさらに2回洗浄する。少量のアリコート(25μl)を、予備評価のために、顕微鏡下でのドナー由来GFP蛍光の程度の顕微鏡スライドに載せる。次いで、細胞の残りは、抗体染色または固定の準備ができている。
【0078】
分析前に数時間よりも長期に細胞を保存するために、または顕微鏡法のためにスライド上に永続的に載せられる場合、これらを最初に、パラホルムアルデヒド中で固定する。細胞のアリコート(50μl、0.5〜1×106細胞)を、1mlの4%パラホルムアルデヒドを添加し、そして室温で15分間インキュベートすることにより固定する。次いで、これらの細胞を、微量遠心機における500gにて6分間の遠心分離、続いてPBS/2%熱不活化ウシ胎仔血清中でのこれらの細胞の再懸濁によって3回洗浄する。
【0079】
抗体染色においては、新たなPBS/2%FBS/0.1%アジ化ナトリウム中の0.5×106細胞のアリコートを、氷上で、チューブ中または96ウェルプレートのウェル中に配置する。R−フィコエリトリンに結合体化したモノクローナル抗体(Southern Biotechnology Associates)をこれらの細胞に添加し、そして発蛍光団を保護するように覆われた氷上で30分間インキュベートする。ニワトリBリンパ球マーカーBu−1を認識する抗体(0.2g/106細胞の作業希釈において用いられる)またはニワトリT細胞マーカーCD3を認識する抗体(0.5g/106細胞において用いられる)を用いる。インキュベーション後、これらの細胞を、各回、500gにて6分間の遠心分離、0.5ml PBS/2% FBS/0.1%アジド中への再懸濁によって3回洗浄する。最終洗浄の後、これらの細胞を、フローサイトメトリーによる分析の前に、1週間まで、0.5%パラホルムアルデヒド中で保存する。これらの細胞をフローサイトメトリーによって分析する当日に、このパラホルムアルデヒドをPBS/2% FBSで置き換える;フェノールレッドを含まない緩衝液を、フローサイトメトリーに用いる。FACS分析を、GFP蛍光およびR−フィコエリトリン蛍光の両方について同時に実施して、ドナー由来である(GFP陽性)細胞の比率の合計、これらの抗体によって染色される(R−フィコエリトリン陽性)細胞の比率(ドナー細胞およびレシピエント細胞の両方に由来する)、およびこれらの抗体でもまた染色される(GFP、R−フィコエリトリン二重陽性)ドナー由来細胞の比率を検出する。
【0080】
3つの異なるES細胞株を用いて作製されたキメラを、リンパ様系列に対するドナー寄与について分析し、これにより、CX−GFPマーカーの3つの異なる挿入部位が表された(表9)。孵化前から成体までの合計27のキメラを分析した。リンパ球画分におけるドナー由来GFP陽性細胞の比率は、FACS分析により判断したところ、0%〜10%の範囲であった(0%の動物は、この表には示されない)。末梢血リンパ球の抗体染色は、抗Bu−1抗体を用いて5%〜17%の細胞染色をもたらし、そして抗CD3抗体を用いて75%〜85%の細胞染色をもたらした。抗Bu−1抗体を用いた嚢リンパ球の染色は、90%を超える細胞の染色をもたらした。GFP蛍光およびBu−1またはCD3のいずれかおよびGFPについての染色を用いた二重陽性細胞が、いくつかのサンプルにおいて低頻度で観察された。
【0081】
これらのデータは、外因性タンパク質をコードする遺伝子を含むES細胞が、孵化したヒヨコおよび成熟動物における造血系列に寄与したことを示す。
【0082】
【表9】
この表に列挙した8つのキメラは、cES細胞由来リンパ球を含むことが示された。末梢血リンパ球(またはキメラIG1−25の場合は嚢リンパ球)を、本文に記載される通りに、Fico/Lite−LMを用いて調製した。次いで、リンパ球を、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Bu−1 B細胞関連同種抗原(Bu−1)およびT細胞レセプター関連CD3複合体のCD3メンバー(CD3)の発現について分析した。GFP、Bu−1およびCD3とラベルされたカラムにおける数字は、FACS分析によってこれらのマーカーについて陽性である各サンプルにおける細胞の百分率を示す(GFP蛍光細胞の百分率を、顕微鏡下で細胞を数えることによって決定した、OV−36および10821についてを除く)。サンプルを分析用に採取したときのキメラの齢を日数で示し、各キメラの性別を示す。「羽毛」とラベルされたカラムは、黒色のCES細胞由来の羽毛色素沈着の評価の百分率を示し、75は、可能な黒色の最大量である(なぜなら、純粋なBarred Rockニワトリ自体が、約75%黒色である羽衣を有するからである)。「緑色スコア」は、携帯型UVランプを生体動物に対して輝かせることによって可視化される、動物全体における緑色蛍光全体の実質的な評価である。スケールは、0(緑色なし)〜4(最も緑色)である。このスコアを、各動物におけるcES細胞寄与の程度全体のさらなる指標として用いる。「細胞株」は、キメラを作製するために用いられた異なるcES細胞株の名称を示す。
【0083】
当業者に明らかな、開示された発明の種々の改変、改善、および適用が存在し、そして本出願は、法によって許容される程度まで、このような実施形態を包含する。本発明は、特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明の範囲全体は、このようには限定されないが、以下の特許請求の範囲に従って限定される。全ての参考文献、特許または他の刊行物は、本明細書中に特に参考として援用される。
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、トランスジェニック動物およびキメラ動物におけるタンパク質発現の分野、ならびに胚性幹細胞の遺伝子操作、トランスジェニックおよび長期培養のような、可能にする技術に関する。胚性幹細胞は、外因性タンパク質の組織特異的発現を生じる導入遺伝子の挿入によることを含め、遺伝子改変をトリに導入するために特別に設計された遺伝子構築物を用いて操作される。本発明のトランスジェニックトリは、導入遺伝子によって駆動される外因性タンパク質を卵管中に発現し、そしてこのタンパク質は、卵中に多量に蓄積される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
遺伝子操作された動物は、このような動物の細胞からの有益な薬学的製品の産生における途方もなく大きな前進の可能性を提供する。しかし、遺伝子操作された動物の産生は、いくつかの種についてしか克服されていない有意な技術的ハードルを含む。ある種の永続的DNAに遺伝子改変を取り込む能力は、遺伝子操作される各々の種について開発されねばならない、いくつかの別個の技術を必要とする。動物の遺伝的特徴および物理的特徴を変更する1つのアプローチは、動物の胚形態に注入した場合に動物の表現型に寄与する胚性幹細胞を使用することである。胚性幹細胞は、レシピエント胚から生まれた動物の組織に寄与し、交配したキメラによって作製されたトランスジェニック生物のゲノムに寄与する能力を有する。
【0003】
時間および資源の多大な消費が、胚性幹細胞株、細胞のゲノムの操作、ならびにこのような操作された細胞を培養において維持することを可能にする細胞培養技術の研究および開発に捧げられた。多くの試みがなされたが、操作された胚性幹細胞の多能性を培養において維持する能力は、ほんのいくつかの種(特に、マウス)においてしか達成されていない。他の種については、タンパク質産生のためのトランスジェニックにおける遺伝子操作の見込みは、維持可能な長期の胚性幹細胞培養物がないことにより挫折した。
【0004】
胚性幹細胞の維持可能な培養物が容易に利用可能であって、多能性を維持しながらも遺伝子操作が可能な場合、新たな技術の広範な適用が利用可能である。胚性幹細胞は、動物の永続的なDNAに寄与するので、胚性幹細胞が由来する動物の生理学的特徴は、これらの細胞を胚状態のレシピエント動物中に組み込むことにより、レシピエント胚に移入され得る。このことは、以下の2つの主な利点を提供する:第1に、胚性幹細胞が由来する動物の表現型が、レシピエント胚に選択的に移入され得る。第2に、上記の通り、胚性幹細胞培養物が特に安定である場合、この細胞のゲノムは、これらの細胞が導入されるレシピエント胚中に遺伝的改変を導入するように遺伝的に改変され得る。
【0005】
特定の場合には、これらの胚性幹細胞は、外因性タンパク質をコードする導入遺伝子を用いて操作され得る。この導入遺伝子は、有益なタンパク質の産生についての青写真として作用するDNAを含み、そしてレシピエント胚へのこの幹細胞の挿入から作製される動物の組織中でのこのタンパク質の発現を可能にするに充分なコードエレメントおよび調節エレメントを含む、遺伝子構築物である。多くの場合、タンパク質の発現は、特に有益である。なぜなら、このタンパク質が、トランスジェニック動物から収集および単離され得るからである。しかし、動物の組織からの有益なタンパク質の収集は、代表的に、発現されたタンパク質の収集を容易にする特定の特異的組織に発現が制限されることを必要とする。例えば、ウシでは、乳汁中でのタンパク質の発現は、容易な収集を可能にする。乳汁中のタンパク質の発現は、ウシの乳汁を単純に収集して外因性タンパク質を分離することによる、このタンパク質の容易な収集を可能にする。ニワトリでは、卵の卵白におけるタンパク質の頑強な産生はまた、外因性タンパク質の発現のための魅力的なビヒクルを提供する。有益なタンパク質の発現がこのような様式で達成され得る場合、この動物は、他の産生方法よりも優れたタンパク質産生のためのビヒクルとして用いられ得る。従って、1つの特に魅力的な研究分野および魅力的な商業的開発分野は、選択された外因性タンパク質を、このタンパク質の単離および収集を促進する特定の組織において発現する、遺伝子操作された動物である。外因性タンパク質を、動物のうちの特に選択された細胞において産生する能力もまた、特に有益である。なぜなら、組織特異性が単に存在しないことは、この動物の全ての組織においてこのタンパク質が発現されることをもたらすからである。このような環境においては、意味ある量のこのタンパク質が、この動物から分離され得ることはありそうになく、さらに、外因性タンパク質の遍在発現は、通常、動物の全般的健康状態および健康を非常に損なうからである。
【0006】
胚性幹細胞培養物が、導入遺伝子が胚性幹細胞のゲノムに組み込まれるのを可能にするに充分に安定であるならば、タンパク質の組織特異的発現をコードする導入遺伝子は、導入遺伝子として用いられる特定の構築物に依存したいくつかの異なる技術によって、新たなキメラ生物またはトランスジェニック生物に受け継がれ得る。ゲノム全体は、細胞ハイブリダイゼーションによって、インタクトな染色体はマイクロセルによって、染色体未満のセグメントは染色体媒介遺伝子移入によって、そしてキロベースの範囲のDNAフラグメントはDNA媒介遺伝子移入によって、移入され得る(Klobutcher,L.A.およびF.H.Ruddle,Annu.Rev.Biochem.,50:533−554,1981)。インタクトな染色体は、マイクロセル媒介染色体移入(MMCT)(Fournier,R.E.およびF.H.Puddle,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,74:319−323,1977)によって胚性幹細胞に移入され得る。導入遺伝子の特定の設計もまた、外因性タンパク質をコードするDNA配列の内容、発現が標的化される特定の組織、発現が生じる宿主生物、および発現されるべきタンパク質の性質を考慮しなければならないからである。インビボで通常発現されるタンパク質は、それらのサイズ、生化学的特徴、および機能が劇的に変化するので、組織特異的発現について設計された導入遺伝子は、胚性幹細胞のゲノムへの成功裏の組み込みを可能にして、宿主生物の選択された組織における成功裏の発現を確実にするいくつかのパラメーターを満たさねばならない。
【0007】
上記の通り、胚性幹細胞における遺伝的改変が、トランスジェニック動物を作製する性能は、非常にわずかな種についてのみ実証されている。マウスについては、キメラ子孫およびトランスジェニック子孫の作製に関する、相同組換えの別個の使用、続いて胚性幹(ES)細胞への染色体移入が周知である。部位特異的相同組換えまたは遺伝子標的化の強力な技術が開発されている(Thomas,K.R.およびM.R.Capecchi,Cell 51:503−512,1987を参照のこと;Waldman,A.S.,Crit.Rev.Oncol.Hematol.12:49−64,1992によって概説される)。クローニングされたDNAの挿入(Jakobovits,A.,Curr.Biol.4:761−763,1994)、およびCre−loxPシステム技術による染色体フラグメントの操作および選択(Smith,A.J.ら,Nat.Genet.9:376−385,1995;Ramirez−Solis,R.ら,Nature 378:720−724,1995;米国特許第4,959,317号;同第6,130,364号;同第6,091,001号;同第5,985,614号を参照のこと)は、安定な遺伝子キメラを作製するために、マウスES細胞内への遺伝子の操作および移入のために利用可能である。哺乳動物システムにおいて有用であると証明された多くのこのような技術は、必要な細胞培養物が入手可能であって、外因性タンパク質の単離および収集を促進する特定の組織での組織特異的発現を生じる導入遺伝子が設計され得るならば、非哺乳動物胚性幹細胞に適用されるべく利用可能である。
【0008】
組織特異的発現を可能にする導入遺伝子は複雑であり、そして導入遺伝子を胚性細胞株中に組み込むために必要な遺伝子操作は、胚性幹細胞の大規模の操作を必要とし、培養条件が遺伝子導入について最適化されなければ、幹細胞の多能性を脅かし得る。従って、導入遺伝子における使用に適切な胚性幹細胞株は、培養において安定でなければならず、かつ、多能性を維持しなければならない。ES細胞が、タンパク質発現に必要なエレメントの全てを含むに充分に大きくかつ複雑である遺伝子構築物でトランスフェクトされた場合に、さらに、この遺伝子構築物は、ES細胞中で発現されて、成功裏に形質転換された細胞の選択を可能にしなければならず、そしてES細胞は、潜在能力を維持しなければならず、そしてこの導入遺伝子は、レシピエント胚中への注入および得られる動物の形成の間、生存可能なままでなければならない。得られる動物では、この導入遺伝子は、導入遺伝子が発現されるように設計された特異的な個々の組織型において効果的に発現されなければならず、そして動物の生存率を損なうので、他の組織においては発現されるべきではない。例えば、免疫系のリンパ様エレメント由来のDNAをコードする導入遺伝子は、キメラ動物またはトランスジェニック動物のBリンパ球において発現されるように特異的に標的化され得る。特に、有益なタンパク質の発現については、この導入遺伝子は、卵管においてタンパク質を発現するように設計され得、その結果、得られるタンパク質は、卵白中に蓄積される。トリ種においては、卵管の細胞型における外因性タンパク質の組織特異的発現は、タンパク質産生のための有益な生物学的系をもたらす。
【0009】
外因性タンパク質の産生については、トリの生物学的系は、効率的な農場養殖、迅速な成長、および経済的生産を含め、多くの利点を提供する。全世界的に、ニワトリおよび七面鳥は、ヒトの食事における主なタンパク質供給源である。さらに、トリの卵は、いくつかのタンパク質の大量合成、ならびにタンパク質産物の単離および収集の容易さの両方について、理想的な生物学的設計を提供する。しかし、トリ種への哺乳動物全体のトランスジェニック技術の適用は、失敗した。最も顕著なことには、トリ胚性癌細胞中に導入されて組織特異性を伴って発現された外因性タンパク質をコードする遺伝的改変の成熟した生存動物への伝達が、実証されていない。
【0010】
多くの場合、胚性幹細胞に遺伝的改変を導入するために必要な技術、遺伝的構築物が導入された特定の細胞改変を選択するための改変された胚性幹細胞のスクリーニングは、胚内への注入のためにES細胞を操作してトランスジェニックニワトリを作製する能力は、これらの工程の全てを実施するために少なくとも数週間を必要とする。遺伝子導入において有用な胚性幹細胞については、胚内への注入までの期間全体について、多能性状態が保持されなければならず、そしてES細胞は、得られる動物において外因性タンパク質の有意義な量を発現するために必要な程度まで、レシピエント胚内に組み込まれなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、外因性タンパク質の非特異的発現および組織特異的発現を示す、トランスジェニックトリおよびキメラトリ、外因性タンパク質発現を可能にする導入遺伝子構築物、外因性タンパク質の単離された組成物、ならびに関連する方法を包含する。本発明は、長期胚性幹細胞培養物由来のキメラトリおよびトランスジェニックトリを作製するために、長期のトリES細胞培養物および特異的技術を用い、ここで、ES細胞のゲノムは、外因性タンパク質を発現する、安定に組み込まれた導入遺伝子を有し、その結果、このES細胞の子孫は、この導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、これらの遺伝子構築物は、ES細胞のDNAを改変して、外因性タンパク質の組織特異的発現を促進する。以下に記載の手順により、宿主トリ胚と組み合わされた場合、これらの改変されたES細胞は、この導入遺伝子を、得られる動物の特異的に選択された体細胞組織中に組み込んでいるキメラトリを産生する。これらのキメラトリまたはトランスジェニックトリは、ES細胞由来の表現型を示し、そして全ての組織にまたがって、または選択された組織において、外来タンパク質を発現する。好ましくは、特異的発現パターンは、他の組織を実質的に除いて、発現をある組織または組織型に焦点を合わせて、このタンパク質の濃縮および収集を容易にする。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
外因性タンパク質を管状腺細胞において選択的に発現するトランスジェニックニワトリであって、該タンパク質が、該ニワトリのゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子導入遺伝子によってコードされ、該導入遺伝子が、該外因性タンパク質をコードするDNAに作動可能に連結されている、卵白タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの少なくとも一部分を含む、トランスジェニックニワトリ。
(項目2)
前記外因性タンパク質をコードするDNAの3’末端に隣接する、卵白タンパク質をコードする遺伝子のプロモーターの少なくとも第2の部分をさらに含む、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目3)
前記外因性タンパク質が、モノクローナル抗体である、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目4)
前記モノクローナル抗体が、ヒト重鎖を含む、項目3に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目5)
前記モノクローナル抗体が、アイソタイプIgGである、項目4に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目6)
前記卵白タンパク質が、オボアルブミンである、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目7)
前記卵白タンパク質が、オボトランスフェリン、オボムコイド、リゾチーム、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、オボインヒビター、シスタチン、オボ糖タンパク質、オボフラボタンパク質、オボマクログロブリン、およびアビジンからなる群より選択される、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目8)
前記導入遺伝子のサイズが、15kbよりも大きい、項目1に記載のトランスジェニックニワトリ。
(項目9)
卵白中にヒトタンパク質を含むニワトリ卵であって、該ヒトタンパク質が、トランスジェニックニワトリのゲノムに安定に組み込まれた導入遺伝子によってコードされる、ニワトリ卵。
(項目10)
前記ヒトタンパク質が、モノクローナル抗体である、項目9に記載の卵。
本発明はまた、多量の外来DNAを組み込むように遺伝子改変されて、レシピエント胚の体細胞組織および生殖系列に寄与する、ニワトリ胚性幹細胞の長期培養物を含む組成物を包含する。本発明はまた、卵管組織中に外因性タンパク質を発現し、その結果、外因性タンパク質が、卵白中に濃縮される、トランスジェニックニワトリを包含する。1つの好ましい実施形態では、この外因性タンパク質は、胚性幹細胞および子孫のゲノム中に組み込まれた導入遺伝子構築物によってコードされるモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体配列は、卵管における発現のために特異的に構築されて、組織特異的発現を促進する適切なプロモーターおよび調節配列を含む、導入遺伝子内に含まれる。外因性タンパク質を発現するトランスジェニックトリまたはキメラトリの実施形態では、本発明は、この動物およびタンパク質(例えば、卵白、外因性タンパク質を含むアルブミン)に特異的な組成物を含む。これらの実施形態の全てについて、本発明のこの構築物、動物および外因性タンパク質を用いる方法もまた含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ニワトリES細胞の特徴的な形態を示し、ここで、小さな細胞は、細胞質がほとんどなくおよび顕著な核小体を伴って、単層で増殖する。
【図2】図2は、ニワトリES細胞のインビトロでの特性、特に、抗体SSEA−1およびEMA−1との反応、ならびにアルカリホスファターゼの発現を示す。
【図3】図3は、189日間培養されたニワトリES細胞の核型である。これらの細胞は二倍体であり、38対の常染色体及び一対のZ染色体を保有する。
【図4】図4は、2つのBarred Rockヒヨコ、およびBarred Rock ES細胞を白色レグホンレシピエント胚に注入することによって形成された2つのキメラである。これらのキメラおよびBarred Rocksは区別ができず、このことは、メラノサイト系列へのES細胞の寄与が大規模であることを示す。
【図5】図5は、Barred Rock ES細胞を白色レグホンレシピエントへと注入することにより作製されたキメラである。左のパネルにおける一対のキメラは、メラノサイト系列に対する、より小さな寄与を示し、一方、左のパネルにおける対は、より大規模の寄与を示す。
【図6】図6は、ES細胞のトランスフェクションに用いられるpCX/GFP/Puro プラスミド構築物の図である。
【図7】図7は、pCX/GFP/Puro 構築物でトランスフェクトされ、ピューロマイシンの存在下で増殖させたニワトリES細胞を示す。上のパネルは、蛍光を示すために写真撮影される;下のパネルは、位相差顕微鏡法によって観察された同じ視野である。
【図8】図8は、トランスフェクトされていないニワトリES細胞(上のパネル)、およびpCX/GFP/Puro構築物でトランスフェクトされてピューロマイシンの存在下で増殖させたニワトリES細胞のFACS分析である。この分析は、トランスフェクトされた細胞の実質的に全てが、導入遺伝子を発現することを示す。
【図9】図9は、pCX/GFP/Puro構築物でトランスフェクトされたES細胞のサザン分析である。BamH1、EcoR1およびこの2つのエンドヌクレアーゼの組み合わせによって消化されたDNAの組み合わせにおけるプローブ位置の相違は、この導入遺伝子が、細胞株TB01およびTB09において異なる位置でゲノム中に組み込まれたことを示す。
【図10A】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Aは、Ov7.5MAbdnsと称される導入遺伝子の図である(上のパネル);(B)モノクローナル抗体についてのコードDNAと組み合わされた、宿主オボアルブミンプロモーター由来のDNA配列を含む、組織特異的発現の導入遺伝子の、図表による提示。
【図10B】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Bは、他の細胞型以外の管状腺細胞において選択的な、モノクローナル抗体の発現を示す、組織特異的発現の導入遺伝子を含むキメラニワトリの膨大部の切片である。
【図10C】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Cおよび図10Dは、キメラの脳組織、腸組織、膵臓組織および筋肉組織を除いて、卵管におけるモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の両方の発現を示す、RT−PCR分析である。
【図10D】図10A〜図10Dは、ニワトリの卵管の管状腺細胞における組織特異的発現および組織特異的発現を確認する生理学的証拠を提供する導入遺伝子構築物である。図10Cおよび図10Dは、キメラの脳組織、腸組織、膵臓組織および筋肉組織を除いて、卵管におけるモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の両方の発現を示す、RT−PCR分析である。
【図11】図11は、BAC−AでトランスフェクトされたcES細胞のゲノムPCR分析である。
【図12】図12は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラのサザン分析である。
【図13】図13は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(右パネル)である。緑色蛍光は、眼およびくちばしにおいて観察され得、このトランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図14】図14は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真である。口腔前庭、脚部および足における緑色蛍光は、トランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図15】図15は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。出現する始原翼羽毛の骨および羽毛髄質中の細胞における緑色蛍光が観察され得、トランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図16】図16は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、腸組織および胸部筋肉において観察され得、トランスフェクトされたES細胞が、これらの組織に寄与したことを確認する。
【図17】図17は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、脚部筋肉において観察され得、トランスフェクトされたES細胞がこれらの組織に寄与し得ることを確認する。
【図18】図18は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラニワトリの、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、膵臓において観察され得、ES細胞がこの組織に寄与したことを確認する。
【図19】図19は、皮膚およびとさかの組織における蛍光レベルをスコア付けすることにより導かれるキメラ現象の評価と、孵化時のヒヨコの黒色色素沈着の程度をスコア付けすることによって導かれるキメラ現象の評価との間の相関を示す。
【図20】図20は、CX/GFP/PuroでトランスフェクトされたcES細胞を用いて作製されたキメラ胚の尿膜の、蛍光下での写真(左パネル)および白色光下での写真(左パネル)である。緑色蛍光は、尿膜において観察され得、ES細胞がこの組織に寄与したことを確認する。
【図21】図21は、トランスフェクトされていない細胞を用いて作製されたキメラ(コントロール)、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって5%を超えるドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって5%を超えて10%未満のドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって10%を超えて30%未満のドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって30%を超えて75%未満のドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされ、羽毛色素沈着によって75%を超えてドナー由来細胞を含むと評価されたES細胞を用いて作製されたキメラ、からのFACSデータ、からのFACSデータのまとめである。肝臓、脳および筋肉からの細胞を、本文において記載の通りに調製した。自己蛍光の閾値よりも上で検出された蛍光細胞の平均数を左に示す;M2閾値(これは、自己蛍光閾値よりも1桁高い)よりも上で検出された蛍光細胞の平均数を、右のパネルに示す。
【図22】図22は、トランスフェクトされていないES細胞を用いて作製されたキメラ(上のパネル)およびCX/GFP/Puroでトランスフェクトされた細胞を用いて作製されたキメラ(下のパネル)の脳から調製された細胞のFACS分析の例である。トランスフェクトされた細胞を用いて作製された胚由来の実質的に全ての細胞は、コントロールトリ由来の細胞の蛍光よりも高いレベルの蛍光を提示し、このことは、キメラの脳組織に対するドナーES細胞の寄与が大規模であることを示す。
【図23】図23は、CX/GFP/Puroでトランスフェクトされた細胞を用いて作製されたキメラ(下のパネル)の脚部の筋肉から調製された細胞のFACS分析の例である。このキメラの右足は、裸眼で緑色であった。このことは、この組織に対する実質的寄与を示す。蛍光脚部筋肉からの細胞の調製物は、蛍光を発する細胞を主に含むことがFACS分析により示された(下のパネル)。このキメラの左脚部は、色は正常であり、これらの細胞の調製物は、蛍光を発しない細胞を含むことがFACS分析により示された。これらのデータは、同じ動物内での組織のキメラ現象が、ドナーES細胞による異なる寄与を受け得ることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、ニワトリES細胞株は、大きな核を含み、顕著な核小体を含む、X期胚(図1)から誘導される。これらの細胞は、長期の培養後の形態学により、ニワトリ胚性幹(cES)細胞であること、およびレシピエント胚中に注入された場合にキメラを生じることが確認されている。さらに、このES細胞は、大量の羽毛キメラ現象によって決定したところ、体細胞組織への高度の寄与を可能にする。なおさらに、これらの胚性幹細胞は、外因性タンパク質をコードするDNAを保有する導入遺伝子でトランスフェクトされることが実証されている。このES細胞は、この導入遺伝子を安定に組み込み、そしてこの導入遺伝子を発現して、形質転換細胞の選択を可能にする。これらの形質転換細胞は、キメラを形成し得、ここで、この導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質は、キメラのうちの選択された組織中に存在する。このキメラ由来の細胞は、この導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質を発現する。特に好ましい実施形態では、この導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質は、この導入遺伝子によってコードされるタンパク質に従って、特定の組織または組織型において発現される。胚性幹細胞の子孫は、レシピエント胚へのES細胞の導入およびキメラの形成後、非ES細胞表現型へと分化する、ES細胞誘導体である。トランスジェニックニワトリは、トランスジェニックES細胞由来細胞が生殖系列中に組み込まれた場合、ゲノム中に安定に組み込まれた導入遺伝子を保有するニワトリES細胞から作製されたキメラの子孫である。
【0014】
体細胞組織における導入遺伝子の広範な発現は、胚体外組織および体細胞組織における発現によって実証される。トランスジェニック動物の卵のタンパク質内容物の分析は、導入遺伝子から得られ、かつ本発明の技術を用いた、導入遺伝子によってコードされる外因性タンパク質の卵白における選択的発現を実証する。組織特異的発現は、1つの器官、組織または細胞型に実質的に制限される発現によって実証される。
【実施例】
【0015】
(実施例1−ニワトリ胚性幹細胞(cES細胞)の誘導)
ニワトリES細胞を、2つの交配のうちの1つから誘導した:Barred Rock×Barred RockまたはBarred Rock×Rhode Island Red。これらの交配物を、cES細胞の開発可能性を試験する場合の羽毛マーカーを得るように選択した。このcES細胞を、白色レグホン胚(これは、優性の白色遺伝子座においてホモ接合性優性である)中に注入する。これらのES細胞の注入から得たキメラニワトリは、cES細胞由来の黒色の羽毛およびレシピエント胚由来の白色の羽毛を提示する。
【0016】
cES細胞培養物の最初の確立を、米国特許第5,565,479号に記載のプロトコルに従って開始した。X期に、この胚は、約40,000〜60,000個の細胞からなり、卵黄の表面に位置する、小さな丸い盤である。この胚を回収するために、紙のリングを卵黄の膜上に置き、胚を真ん中に露出させる。卵黄膜をこのリングの周囲で切断し、次いでこれを卵黄から持ち上げる。リングの腹側に結合した胚は、顕微鏡下に配置され、そして透明な領域が細い輪を用いて不透明領域から単離される。
【0017】
【表1】
胚を、単細胞懸濁物へと機械的に分散させ、有糸分裂が不活化されたSTO細胞のコンフルエントなフィーダー層上に3×104細胞/cm2の濃度で播種する。cES培養培地は、10% FCS、1% pen/strep;2mMグルタミン、1mMピルベート、1×ヌクレオシド(複数)、1×非必須アミノ酸および0.1mM β−メルカプトエタノールが補充されたDMEM(20%新鮮培地および80%馴化培地)からなる。使用前に、DMEM培地は、Buffalo Rat Liver(BRL)細胞において馴化される。手短に述べると、BRL細胞がコンフルエンシーになるまで増殖したあと、5%血清を含むDMEMを添加し、そして3日間馴化する。この培地を除去し、そして新たな培地バッチを3日間馴化し、そしてこれを繰り返す。3つのバッチを合わせ、そしてこれを用いてcES培地を作製する。ニワトリES細胞は、胚盤葉細胞の播種後3〜7日後に可視になる。これらのcES細胞は、mES細胞に形態学的に類似であった;これらの細胞は、大きな核および顕著な核小体を有して小さかった(図1を参照のこと)。
【0018】
cES細胞の増殖特徴は、mES細胞とは異なる。mES細胞は、平滑な縁部を有する堅い丸いコロニーで増殖し、個々の細胞を区別することが困難である。ニワトリES細胞は、明確に可視の個々の細胞を有する単一層コロニーにおいて増殖した。堅いコロニーはしばしば、cES培養における分化の最初の徴候である。
【0019】
培養において誘導された細胞の多能性マーカーについて試験するために、これらの細胞を固定し、そしてSSEA−1 1(Solter,D.およびB.B.Knowles,Proc.Natl.Acad.Sci,U.S.A.75:5565−5569,1978)、EMA−1(これは、マウスおよびニワトリにおける始原生殖細胞上のエピトープを認識する)(Hahnel,A.C.およびE.M.Eddy,Gamete Research 15:25−34,1986)およびアルカリホスファターゼ(AP)(これもまた、多能性細胞によって発現される)で染色した。これらの試験の結果(これを図2に示す)は、ニワトリES細胞が、アルカリホスファターゼを発現し、そして抗原がSSEA−1およびEMA−1によって認識されることを実証する。
【0020】
cES細胞は上記のプロトコルを用いた後に可視であるが、このような培養物は、数週間よりも長く維持できない。培養条件におけるいくつかの改変を、以下で議論の通りに開始し、このことにより、19の細胞株誘導物(表1)がもたらされ、これらのうちの14個を、レシピエント胚中への注入によるそれらの発生可能性について試験した。羽毛色素沈着によって決定したところ、14個の細胞株のうちの11個が、レシピエント胚に寄与した(以下の表2を参照のこと)。このプロトコルは、胚性幹細胞表現型を発現する多能性細胞の持続培養物を生じる。任意の時点で、この細胞を冷凍保存し得、そして傷つけられたレシピエント胚内に注入された場合、体細胞組織に実質的に寄与する可能性を有する(以下の実施例3および実施例5を参照のこと)。
【0021】
【表2】
マウスについてと同様、トリ胚性幹細胞(これは時々、胚性生殖細胞と呼ばれる)を、STO、STO−sn1および容易に入手可能な他のものを含めた種々のフィーダー層上で誘導する。これらのフィーダー細胞によって産生される白血病阻害因子(LIF)、および帯磁ウシ血清の添加は、ES細胞を未分化状態に維持することに寄与する。本発明の好ましい実施形態では、ニワトリES細胞培養を、STOフィーダー層上で開始する。STO細胞を、コンフルエンシーになるまで増殖させ、10μg/mlマイトマイシンで3〜4時間処理し、洗浄し、トリプシン処理し、そしてゼラチンコートディッシュ上に4×104細胞/cm2にて播種する。cES細胞は、STO細胞のフィーダーがまばらである場合、より迅速に増殖するようである。STOフィーダー細胞濃度を103と105との間まで、好ましくは104細胞/cm2未満まで低下させることにより、cES細胞の誘導体化および増殖を促進する。しかし、ニワトリ胚線維芽細胞およびマウス初代線維芽細胞をフィーダーとして用いた場合、cES細胞は誘導されなかった。また。以前に確立されたcES細胞をこれらのフィーダー上にプレーティングした場合、これらの全ては、1週間以内に分化した。
【0022】
cES細胞を、フィーダーなしで、合成挿入物(例えば、ポリマー膜(Costar,Transwell型)上で増殖させることは、ES細胞を注入した場合のフィーダー細胞によるレシピエント胚汚染を回避する。表3および表4が示すように、STOフィーダーの代わりに挿入物上で培養することは、cES細胞の誘導体化を容易にし、そして挿入物は、最初の誘導体化のために用いられ得る。しかし、挿入物上で最初に迅速に増殖させた後、ES細胞の有糸分裂活性は、4〜6週間の培養後、低下する。培養を長期化するために、これらの細胞は、STO細胞のフィーダーに移入されなければならない。
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
表3および表4におけるデータは、ニワトリの胚性フィーダー細胞およびマウス初代胎仔線維芽細胞が、cES細胞の誘導体化も培養も支持しないことを示す。STO細胞のフィーダーは、誘導体化および増殖を支持するが、103と105との間の限定された濃度、好ましくは、本発明の実施形態では、104未満または約104細胞/cm2の濃度のSTO細胞が存在する場合にのみ、支持する。濃密なSTOフィーダー層は、cES細胞の増殖を損ない、一方、指定された濃度のSTO細胞は、ES細胞の増殖に必要な因子を提供する。これらの細胞が長期の培養期間にわたって保持され、胚性幹細胞表現型を発現し続け、そしてインビボにおいて非胚性幹細胞表現型へと分化する場合、これらは、「ES細胞子孫」と呼ばれる。
【0025】
cES細胞培養物培地は、80%馴化培地から構成され、好ましくは、cES細胞の誘導体化および増殖に必要な因子を含む特定のBRL馴化培地を含む。50%の濃度において、cES細胞の増殖は、80%馴化培地においてほど信頼性はない。馴化培地の百分率が50%未満まで低下した場合、分化細胞の増加によって証明されるように、cES細胞の増殖は影響を受け、そして30%以下の濃度では、cES細胞は、1週間以内に分化する。cES細胞の誘導体化および維持に必要であることが見出されたこの馴化培地は、mESを維持しないが、それらの分化を引き起こす。
【0026】
胎仔ウシ血清は、本発明によるES細胞培地の好ましい成分であり、そしてcES細胞を未分化状態に保つ因子を含む。しかし、血清もまた、分化を誘導する因子を含むことが公知である。市販の血清ロットは、ES細胞を未分化状態に保つ可能性について、使用者によって慣用的に試験される。cES細胞培養物に使用される血清は、マウスES細胞培養物に使用される血清とは異なることが公知である。例えば、細胞毒およびヘモグロビン濃度が低く、マウスES細胞を未分化上体に維持することが公知の、マウスES細胞の培養のために用いられる血清は、ニワトリES細胞の持続増殖を支持しない。
【0027】
それゆえ、ニワトリES細胞について用いられるべき血清は、マウスES細胞について試験されて、培地成分としての適切さが決定されるべきでなく、その代わり、ニワトリES細胞について評価されるべきである。そうするために、ニワトリES細胞培養物を2つに分け、そして各々新たな血清バッチを試験するために用いる。試験した新たなバッチは、経験的に試験された場合、ニワトリES細胞の増殖を明らかに支持しなければならない。
【0028】
ニワトリ染色体展開物は、マウスとは異なる特別の評価技術を必要とする。なぜなら、複雑な核型は、10本の巨大染色体、66本の小さな染色体、及び一対の性染色体(優性においてはZZ、そして雌性においてはZW)からなるからである。図3に示す本発明の長期cES細胞を、培養189日後に分析し、2回冷凍保存した。図3に言及すると、これらは、10本の巨大染色体;2本のZ染色体および66本の小さな染色体を有する、正常な核型を示した。
【0029】
ニワトリES細胞を、培地中で10% DMSOにおいて凍結保存する。いくつかの細胞株の解凍およびレシピエント胚へのこれらの細胞株の注入の後、体細胞キメラが得られる。このことは、これらのcES細胞が、凍結保存プロセスの間、それらの発生能力を保持することを示す。
【0030】
(実施例2−レシピエント胚へのニワトリ胚性幹細胞の注入)
新鮮に置かれた卵中の胚への接近を可能にするために、殻は、半ズボンをはいた状態に(breech)されなければならず、このことは、21日間の孵化期間の最後における孵化率の低下を回避不可能にもたらす。慣例は、卵の側の小さな穴(直径10mm未満)を切断し、これを通して胚を操作し、そしてテープ、ガラスカバースリップ、殻の膜または殻の小片で再度シールした。実施することは比較的簡単であるが、この「窓開け」方法は、70%と100%との間の胚の死亡を引き起こした。胚への改善された接近、ならびに増大した生存および孵化能力は、2つの異なる殻および方法(Callebautから適応される)((Callebaut,Poult.Sci 60:723−725,1981)および(Rowlett,K.およびK.Simkiss,J.Exp.Biol.143:529−536,1989)、これは、この技術に関して、本明細書中に参考として援用される)を用いた孵化のためのインキュベーションのために、この胚を代理卵殻に移植する場合に達成され得、平均孵化率は、約41%(23〜70%の範囲)であり、469個のcES細胞注入胚から191匹のヒヨコが孵化する。
【0031】
レシピエント胚内へのドナーES細胞の注射後の胚のインキュベーションは、以下に記載の通り、システムAおよびシステムBを含む、2つの部分に分けられ得る:
システムAは、最初の3日間の産卵後発生を包含する。レシピエント胚を含む、繁殖能力のある卵は、3〜5グラムより重い卵と一致する。32mmの直径の窓を、指定された極で切断し、内容物を除去し、そして卵黄上のレシピエント胚を、周囲の卵白とともに、代理殻内に慎重に移す。
【0032】
細胞を、2ミクロンフィルターを取り付けたマウスアスピレータに接続した無菌の細くテーパ状になったガラスピペット中に吸い込む。ピペットの開口部は、直径が50〜120ミクロンであり得、そして30°のスパイクしたベベルを有し得る。この胚は、低倍率下で青色光を用いて可視化される。ニワトリES細胞をトリプシン処理して、単細胞懸濁物にし、そして約2,000と26,000との間の細胞、好ましくは約20,000細胞を胚に注入する。この細胞を胚の下または上のいずれかの空間、すなわち、胚下腔または透明領域および卵黄周囲層(卵黄膜)の頂部表面に[Rob:好ましくは、生殖腔下に]穏やかに放出する。新鮮な繁殖能力のある卵から収集された過剰な卵白を添加し、そして殻をサランラッププラスチックフィルムでシールする。
【0033】
システムBは、3日目から孵化までの期間を含む。インキュベーション3日目に、胚は、ほぼ17段階(H & H)に達した。水は、卵白から胚下腔に輸送されており、卵黄が拡大して非常に脆弱になるようになる。システムAの殻の内容物は、元の卵よりも30〜35グラム重い第2の代理殻(通常、七面鳥の卵)へと、非常に注意深く移される。ペニシリンおよびストレプトマイシンを添加して細菌汚染を防止し、そして平らな極における38〜42mmの窓を、プラスチックフィルムでシールする。このより大きな殻は、人工的な空隙を可能にする。インキュベーション18日目〜19日目に、これらの胚培養物を、密接な観察のために、卓上用孵卵器に移す。肺への通気が確立されるにつれて、穴は、プラスチックフィルムにおいて定期的に作製されて、周囲の空気が間隙に入るのが可能になる。孵化の約6〜12時間前に、フィルムを小さなペトリ皿に置き換え、このペトリ皿は、孵化の間にヒヨコによって容易に押しのけられ得る。
【0034】
インキュベーションについては、従来の温度(37.5℃〜38℃)および相対湿度(50%〜60%)が、代理殻における胚について維持されるが、定期的に卵を揺り動かすこと(これは通常、毎時であり、90度である)は、良好な生存を確実にするために改変される。システムAでは、揺り動かしは、4〜5分間ごとに90°である;システムBでは、これは、40〜45分毎に40°〜60°である。両方の系では、揺り動かしの速度は、1分間あたり15°〜20°に維持される。
【0035】
キメラに対するcES細胞の寄与は、レシピエント胚が、cES細胞の注入の前に以下によって調製される場合、改善される:(1)660ラドのガンマ照射への曝露によって照射される、(2)約1000の細胞を胚の中心から機械的に除去することによって改変される、または上記の(1)および(2)の組み合わせ。表5を言及すると、体細胞組織に対するcES細胞の寄与は、レシピエント胚の中心から細胞を除去することまたは照射への曝露のいずれかによってレシピエント胚が傷つけられた場合に実質的に増加した。レシピエント胚が、細胞照射と細胞の機械的除去との組み合わせによって傷つけられた場合、ES細胞の寄与はさらに増加したが、cES細胞は、より長期にわたって培養された。得られたキメラヒヨコのいくつかは、純粋なBarred Rockヒヨコと区別できない(図4)。表5におけるデータが示す通り、キメラ現象の割合および1つの胚あたりのキメラ現象程度は、レシピエント胚を傷つけた後に増加した。
【0036】
【表5】
レシピエント胚は、X期よりも実質的に若く、そしてまた、ES細胞をドナーとして用いてキメラを生成するために用いられ得る。初期段階のレシピエント胚は、オキシトシンを雌鶏に注入して、早産での産卵を誘導することにより回収され、そして繁殖能力のある卵がVII期〜IX期に回収される。
【0037】
あるいは、卵管の有頭領域からの胚の回収は、約4〜250の細胞からなるI期〜VI期の胚への接触を提供し、潜在的レシピエント胚としての全ての胚段階からのキメラの発生を可能にする。
【0038】
(実施例3−ニワトリ胚性幹細胞(cES)からの体細胞キメラ)
本発明のcES細胞の多能性を実証するために、cES細胞を、白色レグホンレシピエント胚中に注入する。1回目の実験において、28の実験において、合計14個の細胞株を、X期レシピエント胚に注入する(表2を参照のこと)。このcES細胞は、4日間と106日間との間、培養して増殖されており、いくつかの株は、冷凍保存されている。ニワトリES細胞を、軽くトリプシン処理して、cES細胞の小さな塊を得て、そして25mM HEPES+10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM中に再懸濁する。2000〜5000の間の細胞を含む3μl〜5μlの細胞懸濁物を、レシピエント胚の胚芽下腔に注入する。羽毛を発生した全ての胚を分析し、そして24パーセントの胚(83/347)が、羽毛の色によって、キメラであると決定される。羽毛キメラは、11/14の細胞株から得られる。キメラ現象の程度は、1%〜95%に変動し、平均程度は、25.9%(SD=20.4)である。
【0039】
表2は、細胞株内および細胞株間で実施した実験での、体細胞キメラ現象における分散を例示する。キメラに対するES細胞の寄与例を、図4および図5に示す。図4では、2匹のヒヨコがキメラであり、2匹がBarred Rocksである;これらのヒヨコの間に表現型の差が存在せず、キメラに対するES細胞の寄与が(特に、外胚葉由来の系統において)大きいことが明らかである。図5では、左側のキメラは、ES細胞からの比較的低いレベルの寄与を有し、一方、右では、中間の寄与を有する。
【0040】
(実施例4−リポフェクションおよびエレクトロポレーションによるcES細胞のトランスフェクション)
表6を言及すると、トランスフェクトされるウェルのサイズと適合した適切な量のDNAを、血清も抗生物質も含まない培地中に希釈する。適切な体積のSuperfect(Stratagene)を添加し、そしてDNAと混合し、そして反応を5〜10分間にわたって生じさせる。この培地を除去し、そしてトランスフェクトされるべきウェルを、Ca/Mgを含まない塩溶液で洗浄する。適切な体積の培地(これは、血清および抗生物質を含み得る)を、DNA/トランスフェクト混合物に添加する。これらのプレートを37℃において2〜3時間インキュベートする。インキュベーションが完了した場合、Superfectを、細胞を1〜2回洗浄することによって除去し、そして新たな培養培地を添加する。
【0041】
【表6】
ペトリパルサーを用いて、35mmの直径のウェルにおいて、プレートに付着したcES細胞をエレクトロポレーションする。この培地を除去し、そしてウェルを、Ca++およびMg++を含まない塩溶液で洗浄する。1mlのエレクトロポレーション溶液をこのウェルに添加する。DNAを添加し、そしてこの培地を穏やかに混合する。このペトリパルサーを、ウェルの底に下げ、そして電流を送達する(電圧は好ましくは100〜500V/cmで変動し、そしてパルス長は12〜16m秒であり得る)。このペトリパルサーを除去し、そしてエレクトロポレーションしたウェルを、室温にて10分間静置させる。10分後、2mlの培地を添加し、そしてこれらの皿をインキュベーターに戻す。
【0042】
懸濁状態の細胞をトランスフェクトするために、培地を除去し、そして細胞をCa/Mgを含まない塩溶液で洗浄する。EDTAを含むトリプシン(Tryspin)を添加して、単細胞懸濁物を得る。細胞を洗浄し、遠心分離し、そして補正用エレクトロポレーション緩衝溶液(例えば、PBS)中に再懸濁する。このES細胞懸濁物を無菌のキュベット中に配置し、そしてDNA(1mg/mlの最低濃度)をこの細胞懸濁物に添加し、そして上下にピペッティングすることによって混合する。エレクトロポレーションしてRTにて10分間沈降させた細胞をキュベットから取り出し、そして予め調製したウェル/ディッシュに分配する。細胞をインキュベーター中に配置し、そしてエレクトロポレーションの24〜48時間後に、一過性トランスフェクションについて評価する。抗生物質耐性細胞の選択はまた、ピューロマイシンのような抗生物質を培養培地中に含めることによって開始され得る。
【0043】
好ましい実施形態では、トランスフェクトされた細胞を選択するために必要とされるピューロマイシンの濃度は、滴定殺傷曲線として算出される。ニワトリ胚性幹細胞についての滴定殺傷曲線を、培養中の細胞を、0.0〜1.0μg/mlに変動するピューロマイシン濃度に10日間(表7)曝露し、そして0.0〜200μg/mlに変動するネオマイシン濃度に曝露することにより、確立する。培地を2日毎に変更し、そして新たなピューロマイシンまたはネオマイシンを添加する。0.3g/mlの濃度のピューロマイシンに曝露した場合、ES細胞は、6日間の期間にわたって新たなピューロマイシンを3回交換した後に、全てのウェルに存在しなかった(表7を参照のこと)。0.3〜1.0g/mlのピューロマイシン濃度を、トランスフェクトされた培養物の選択に用いる。40μg/mlを超えるネオマイシン濃度は、全てのcES細胞を7日間以内に除去した(表8)。
【0044】
10日間の選択後、cES細胞コロニーが生存可能であり、さらなる増大のために拾われ得る。
【0045】
【表7】
【0046】
【表8】
トランスフェクトされたニワトリES細胞の選択およびキメラにおけるそれらの同定は、この導入遺伝子が、培養中のこの細胞に選択優位性(例えば、この培地中のピューロマイシンに対する耐性)を付与すること、およびこれが、ES細胞由来のキメラにおいてこの細胞中に同定可能な遺伝子産物を産生することを必要とする。これは、pCX/GFP/Puroを用いて達成され得、pCX/GFP/Puroは、cES細胞においてピューロマイシンに対する耐性を提供し、キメラにおける全てではないにしろ大部分のドナー由来細胞中に緑色蛍光タンパク質(GFP)を産生する。
【0047】
図6を言及すると、PCX/GFP/Puro(図6)を、最終的なpCX/GFP/Puroプラスミドを作製する前に2つの中間体を含む3つのクローニング工程において生成した。工程1では、PGK駆動ピューロマイシン耐性遺伝子カセット(1.5Kb)を、Asc I消化により、pKO SelectPuro(Stratagene)から遊離させた。次いで、このフラグメントを平滑末端化し、そしてKpn Iリンカーを添加した。得られたフラグメント(GFP/Puro)を、pMIEM(Jim Petitte(NCSU)から無料提供、LacZ発現pMIWZ由来のGFP発現バージョン、Cell Diff and Dev.29:181−186(1990)を参照のこと)の対応するKpn I部位に挿入して、最初の中間体(pGFP/Puro)を生成した。このPGK−Puroカセットは、GFPと同じ転写方向にあった(BamH IおよびSty Iでの消化によって決定した)。工程2では、GFP/Puro発現カセット(2.5Kb)を、BamH IおよびEcoR Iでの二重消化によってpGFP/Puroから遊離させた。得られたフラグメントを、pUC18(Invitrogen)のBamH I−EcoR I部位に挿入した。これは、5’独特の部位である、Hind III、Pst IおよびSal Iを含む。得られたプラスミドpUC18/GFP/Puroを、BamH I、EcoR IおよびNot Iでの三重消化によって確認した。第3の工程では、384bpのCMV−IEエンハンサーを含むCxプロモーター、1.3kbのニワトリβ−アクチンプロモーターおよび第1イントロン部分を、Sal IおよびEcoR Iでの消化によってpCX−EGFP(Masahito,I.ら,FEBS Letters 375:125−128,1995)から遊離させた。3’EcoR I(null)−XmnI−BamH Iリンカーをこのフラグメントに結合させ、そしてこれを、pUC18/GFP/PuroのSal IおよびBamH I部位に挿入した。このプラスミドpCX/GFP/Puro(図6)を、BamH IおよびPst Iでの二重消化によって確認した。pCX/GFP/Puro DNAは、cES細胞へのトランスフェクションのために、Sca I消化によって直鎖状にされ得る。
【0048】
上記の手順を用いたES細胞のトランスフェクションおよび選択は、0.5μgのピューロマイシンの存在下で増殖する細胞集団を産生した。これらの細胞は、従来の蛍光顕微鏡法によって調べた場合、緑色蛍光を示した(図7を参照のこと)。ES細胞の調製物を、蛍光活性化細胞選別によって調べる場合、本質的に全ての細胞が、導入遺伝子を保有して発現することが明らかである(図8を参照のこと)。BamHI、EcoRIまたは両方の制限エンドヌクレアーゼを用いて消化された、トランスフェクトされたES細胞株TB01およびTB09からのDNAのサザン分析は、種々のサイズのDNAフラグメント中での導入遺伝子を示し、この導入遺伝子が、ゲノム中に組み込まれたという証拠を提供した(図9を参照のこと)。
【0049】
このCX/GFP/Puro構築物は、少なくとも4.5kbの導入遺伝子が、キメラニワトリ中に挿入され得ることを実証する。本明細書中に記載されるcES細胞を用いて、ニワトリES細胞は、異なるかまたはより大きな構築物を用いてトランスフェクトされ得る。この導入遺伝子の設計に依存して、外因性タンパク質をコードするDNAは、得られるキメラ動物またはトランスジェニック動物の体細胞(すなわち、内胚葉、中胚葉、外胚葉、および胚体外組織)において広範に検出され得、そして顕著なレベルの外因性タンパク質を選択された組織のみにおいて発現するように設計され得る。このタンパク質は、組織特異的導入遺伝子構築物中に含まれるDNAによってコードされる。この導入遺伝子構築物は、宿主生物のゲノム由来の遺伝子エレメントから構成され得、そして選択された組織におけるタンパク質の既知の発現(または発現パターン)に基づいて選択され得る。特定の組織における発現については、選択される組織において通常発現される、そして通常高度に発現される、タンパク質をコードする遺伝子を選択し、そしてこの遺伝子由来の調節エレメントを、この外因性タンパク質の発現を駆動するために選択する。この外因性タンパク質についてのDNAコード配列、他の調節エレメント、選択マーカーなどと合わせた場合、この導入遺伝子は、選択された組織においてこの外因性タンパク質の優先的発現を生じる。特定の組織型における優先的発現は、非選択組織と比較して、選択された組織において3〜4桁の大きさ分大きな発現と規定され得る。
【0050】
トランスジェニックトリにおける組織特異的タンパク質発現について、組織特異的発現は、好ましくは、膨大部、峡部、卵殻腺部または卵管漏斗部を含め、卵管の一領域に指向される。タンパク質発現についての個々の組織の選択は、発現されるべきタンパク質の型に依存する。この膨大部は、卵白の主なタンパク質を発現する管状腺細胞を含み、一方、この峡は、殻膜を発現する細胞を含む。可溶性タンパク質の発現は好ましくは、卵白タンパク質(好ましくは、オボアルブミンであるが、オボトランスフェリン、オボムコイド、リゾチーム、オボグロブリンG2、オボグロブリンG3、オボインヒビター、シスタチン、オボ糖タンパク質、オボフラボタンパク質、オボマクログロブリン、およびアビジンが挙げられる)を発現する遺伝子由来の(通常はプロモーターを含む)調節配列を選択することにより、卵管の膨大部の管状腺細胞に指向される。管状腺細胞における選択的発現は、上皮細胞における発現を排除するために、以下に実証され、そして2つの細胞型の間での選択性を区別するために、優先的発現と命名される。
【0051】
以下の実施例では、外因性免疫グロブリン遺伝子座とともにプロモーターを含む内因性卵白調節配列を含む導入遺伝子を構築して、卵管の管状腺細胞における組織特異的抗体発現を生じる。次いで、このようにして発現された抗体分子は、トランスジェニックニワトリの卵白中に蓄積される。この実施形態では、任意の再配置された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる抗体は、卵管の膨大部分の管状腺細胞を含む組織において特異的に発現され、そして卵の卵白から単離され得る。モノクローナル抗体をコードする再配置された免疫グロブリン遺伝子は、他の組織における発現を実質的に除いて、卵管において優先的に発現されるが、他の組織における発現は、検出可能なレベルより上で存在し得る。
【0052】
この実施形態では、オボアルブミン調節配列の制御下のこのモノクローナル抗体カセットは、少なくとも3.4kb、好ましくは少なくとも約7.5kbの5’調節配列から構成され、そして15kb以上の3’調節配列を含み得る。好ましくは、この構築物は、外因性抗体コード領域の5’末端および3’末端の両方に隣接する、オボアルブミン遺伝子の領域を含むが、5’隣接領域の内因性プロモーター配列の大きく充分なセグメントは、3’隣接領域についての必要性を回避し得る。抗体の重鎖および軽鎖の両方のコード領域は、導入遺伝子において提供され、そして選択されるアイソタイプの可変領域、多様性領域、連結領域および定常領域を含む。好ましい実施形態では、この抗体は、特徴的にはヒトであり、少なくともヒト重鎖を含む、免疫グロブリン遺伝子によってコードされる。また、このアイソタイプは、好ましくは、IgGであり、最も好ましくはIgG1である。
【0053】
オボアルブミン由来モノクローナル抗体構築物についての好ましい導入遺伝子構築物を、図10Aに提供する。この導入遺伝子構築物を、Ov7.5と命名し、そしてこの構築物は、5’末端配列ではMAbコードに、そしてコード領域の3’では15kbのプロモーター配列に隣接する、プロモーター(この特定の実施形態では、オボアルブミンプロモーター)を含む、約7.5kbの卵白調節配列を有する。このコード領域は、軽鎖および重鎖の両方についての可変領域、J−Cイントロン配列、κ軽鎖定常領域、IRES配列、ならびにγ1アイソタイプ重鎖定常領域を含む。この構築物の3’末端は、GFP遺伝子および選択マーカー(この場合、本明細書中に記載されるCXプロモーターによって駆動されるピューロマイシン遺伝子)を含む。モノクローナル抗体コード領域の3’および5’の両方でのオボアルブミンプロモーター配列の長さは、例にすぎず、類似の構築物は、25〜100kb以上の5’配列ならびに種々の長さを3’配列に含み得る。当業者は、GFPマーカーが、生理学的標本における検出のためにのみ存在し、この導入遺伝子の有用性から逸脱することなく除去され得ることを認識する。ピューロマイシン耐性マーカーは、この導入遺伝子で成功裏に形質転換された胚性幹細胞を選択する能力を提供する任意のマーカーで置換され得る。いくつかの型の類似の選択マーカーは、当該分野で周知であり、そしてこの実施形態のピューロマイシン耐性遺伝子と本質的に交換可能に用いられ得る。
【0054】
上記の通り、このモノクローナル抗体は、本発明の導入遺伝子構築物を用いて発現され得るいくつかの型のモノクローナル抗体産物のうちの1例にすぎない。さらに、タンパク質のクラスとしてのモノクローナル抗体は、本明細書中に記載される方法および技術に従って組織特異的様式で発現され得る多くのクラスのタンパク質産物の1例にすぎない。
【0055】
図10Bを言及すると、Ov 7.5導入遺伝子の発現がエストロゲン注射によって誘導された2週齢のキメラの膨大部の切片は、形質転換胚性幹細胞由来の抗ダンシルモノクローナル抗体産生細胞の組織特異的発現が、GFPを発現することを示し、これは、図10Bの左のパネルにおいて緑色として示され、Ov 7.5導入遺伝子で形質転換された胚性幹細胞による寄与を確認する。図10Bの左下のパネルを言及すると、このモノクローナル抗体は、管状腺細胞において赤色に染まり、一方、上皮細胞(これもまたドナー胚性幹細胞由来である)は、緑色に染まり、赤色には染まらない。染色におけるこの相違は、構築物の発現は、組織特異的であり、そして特定の組織型についての導入遺伝子の内容によって選択されることを実証する。以下の実施例は、卵管の管状腺細胞における組織特異的発現を実証するが、全ての細胞および組織型にまたがる発現の実証は、各々または任意の組織型が、導入遺伝子構築物の成分、および例えば、プロモーターまたは他の調節エレメントの対応する選択により、組織特異的発現または細胞特異的発現について選択され得ることを実証する。
【0056】
図10Bの右上のパネルでは、細胞型の全てを、DAPI染色によって示される。右下のパネルでは、染料を重ねて、ドナー由来の管状腺細胞のみがモノクローナル交代を発現し、一方、レシピエント由来細胞およびドナー由来上皮細胞がモノクローナル抗体を発現しないことを実証する。図10Cおよび図10Dは、抗ダンシルモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖が、それぞれ、3または5のキメラの卵管組織においてのみ選択的に発現され、これらのキメラの脳、腸、膵臓または筋肉にいずれにおいても、RT−PCRによって検出されるレベルより上では発現されないことを示すRT−PCR分析である。
【0057】
ヒトIgGアイソタイプモノクローナル抗体が選択的に発現され得、そして蓄積されるタンパク質が卵白であることを実証するために、合計18のキメラ雌を、Ov7.5構築物を保有するcES細胞を注入することにより作製した。この群からの6つのキメラを、早期エストロゲン誘導による導入遺伝子発現を試験するために用いた。残りの12のキメラ胚を、卵収集のために性的に成熟するまで育てた。9つのキメラ雌が、17〜22週齢において産卵を開始し、これらのキメラのうちの1つは、時々産卵した。キメラ雌のうちの3つは、35週齢においても卵を産卵せず、剖検時に、それらの性腺が、雄性ES細胞由来組織の存在により男性化していることが明らかであった。
【0058】
卵を産卵する9個のキメラ由来の卵を収集し、そして代表的卵白サンプルを、硫酸アンモニウム沈澱によって調製し、そしてELISAによって分析した。マイクロタイタープレートを、ヤギ抗ヒトIgG抗体でコートし、そして卵白サンプル中のヒトIgG MAbの存在が、重鎖について特異的な標識ヤギ抗ヒトIgG(γ鎖特異的)抗体および/または軽鎖についての標識ヤギ抗ヒトκ(κ鎖特異的)抗体によって明らかにされた。標準曲線を、精製ヒトIgγ1、κタンパク質を用いて確立した。ELISAの感度は、0.8ng/mlであった。非トランスジェニック白色レグホン雌鶏由来の卵白サンプルを、ネガティブコントロールとして用いた。ヒトIgG MAb蓄積は、非トランスジェニック白色レグホン雌鶏由来の卵(4個の卵)においても、6個のキメラ雌鶏由来の卵(雌鶏#OV11−17由来の8個の卵、雌鶏#OV11−53由来の8個の卵、雌鶏#OV11−73由来の6個の卵、雌鶏#OV11−88由来の6個の卵、雌鶏#OV12−97由来の4個の卵、および雌鶏#OV13−13由来の5個の卵)においても検出されなかった。
【0059】
ヒトIgG MAb蓄積が、3つの異なるキメラ雌鶏からの卵において検出された(IgHについてのELISAによって決定したところ、雌鶏#OV11−13由来の卵について約1.4〜6.3ng/ml、雌鶏#OV11−37由来の卵について約2.0〜2.9ng/ml、および雌鶏#OV11−43由来の卵について約2.9〜10.8ng/ml)。代表的な卵におけるヒトIgG MAbの濃度を、表9にまとめる。IgLについてのELISAによって決定された、卵中のヒトIgG MAbの濃度は、IgHについてのELISAによって決定された濃度よりも、一貫して低かった。一般に、IgLによって決定された濃度は、IgHによって決定された濃度の60%であった(表9における第3欄と第5欄とを比較する)。この相違はまた、精製したヒトIgγ1、κタンパク質を用いて作製された、スパイクされたサンプルにおいて存在する。
【0060】
【表10】
雌鶏#OV11−13、#OV11−37(これは、それらの卵中にヒトIgを蓄積した)および白色レグホン由来の血液サンプル中のヒトIgG MAbタンパク質の濃度は、アッセイ感度(0.8ng/ml)未満であった。これらのデータは、エストロゲン誘導性キメラヒヨコにおける腸、脳、膵臓および筋肉におけるヒトIg転写産物の存在を評価するためのRT−PCRを用いて観察された、キメラニワトリにおけるヒトIgの異所発現が存在しないことと一貫している(図Ti 10Cおよび10D)。それゆえ、Ov7.5構築物は、組織特異的な、ホルモンによって誘導された、そして発生によって調節される遺伝子発現を、トランスジェニックキメラ雌鶏において送達するようである。さらに、このタンパク質は、膨大部における管状腺細胞から運び出されて、卵白中に蓄積するようである。
【0061】
オボアルブミン由来の組織特異的タンパク質発現導入遺伝子を、以下の通りに構築した:
ニワトリゲノムBACライブラリー(Crooijmans,R.P.ら,Mamm.Genome 11:360−363,2000)、(Texas A & M BAC
Center)をスクリーニングして、オボアルブミン遺伝子座における46Kbの領域を単離する。MAbコード領域の5’側に位置する、このオボアルブミンプロモーターの異なるフラグメントを有する、2つの異なるベクターを構築した:(1)Ov7.5MAb−dns:42Kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の9.2Kbの5’配列(7.5Kbプロモーターを含む)および15.5Kbの3’隣接配列を含む(図10A)。この42kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の9.2kbの5’配列(7.5kbのプロモーターを含む)および15.5kbの3’隣接配列を含む。二シストロン性モノクローナル抗体カセットは、抗ダンシル抗体の軽鎖、IRESおよび重鎖をコードする。(2)Ov15MAb−dns:49Kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の16.8Kbの5’配列(15Kbプロモーターを含む)および15.5Kbの3’隣接配列(示さず)を含む。この49kbの発現ベクターは、オボアルブミン遺伝子由来の16.8kbの5’配列(15kbのプロモーターを含む)および15.5kbの3’隣接配列を含む。このモノクローナル抗体カセットは、両方の構築物において同一である。
【0062】
上記のように、両方のベクターにおいて発現されるべき遺伝子は、マウス−ヒトハイブリッドの抗ダンシルモノクローナル抗体(MAbdns)である。CxEGFP/CxPuroカセットを、最も3’側の末端にクローン化して、cES細胞における安定なトランスフェクションについての、ピューロマイシンを用いた選択、およびキメラでのトランスフェクトされた細胞の容易な同定を可能にする。両方の構築物を線状にし、そしてcES細胞へのトランスフェクション前に精製する。cES細胞のトランスフェクションを、Ov7.5MAbdnsを用いて実施し、そしてOvl5MAbを、SuperFect(Stratagene)またはペトリパルサーエレクトロポレーションのいずれかを用いて実施する。ピューロマイシンを用いた選択後、6つの耐性クローンを、分子分析のために拾う。導入遺伝子の存在を、MAbdnsカセット中、GFP遺伝子中およびPuro遺伝子中に位置するプライマーを用いたPCRによって確認する。トランスフェクトされたES細胞を用いて、以下に詳細に記載する通り、トランスジェニックトリまたはキメラトリを作製する。
【0063】
なお別の例では、再配置されていないヒト重鎖免疫グロブリン遺伝子座の一部をコードする、非常に大きな導入遺伝子は、ニワトリES細胞中にトランスフェクトされている。139キロベースの細菌人工染色体(BAC)クローンを、環状BAC DNAおよび直鎖状選択マーカーDNAの共リポフェクションによって、pCX−EGFP−CX−puro選択マーカーを用いて、cES細胞中に共トランスフェクトした。このBACクローンは、再配置されていない免疫グロブリン重鎖遺伝子座由来のヒトゲノムDNA挿入物を含み、そして最も3’側の可変領域(VH6−1)、全ての多様性(D)セグメント、全ての連結(J)セグメント、CμおよびCγ定常領域、J−イントロンエンハンサー、およびこれらのエレメントの間の全ての介在DNAを含む。これはまた、ヒト遺伝子KIAA0125を含む。ヒト遺伝子KIAA0125は、VH6−1とDセグメント領域との間に見出される、機能未知の非翻訳RNAをコードする遺伝子である。pCX−EGFP−CX−puroは、CXプロモーター(サイトメガロウイルスエンハンサーおよびニワトリβ−アクチンプロモーターからなる)によって駆動される強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子、および同じプロモーターによって駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドである。このプラスミドでトランスフェクトされたcES細胞は、緑色蛍光性であり、抗生物質ピューロマイシンに対して耐性である。ピューロマイシンの存在下で増殖したトランスフェクトされたES細胞における、再配置されていないヒト重鎖遺伝子の存在を、139kbの構築物全体に広がった導入遺伝子のPCR分析によって調べた。PCR分析において用いたプライマー配列は、以下であった:
【0064】
【化1】
cES細胞を、選択マーカーpCX−EGFP−CX−puroおよびBAC CTD−2005N2で共トランスフェクトして、BAC−Aと命名されるcES細胞株を得る。ゲノムDNAを調製し、そしてBACクローンの長さとともにマーカーに対応する5つの異なるプライマーセットを用いてPCRを実施する。これらのマーカーは、以下である:VH6−1(ヒトゲノム挿入物の[ヒト重鎖遺伝子座と比較して]5’末端から24kb)、D1−26(末端から83kb)、D1−20(末端から73kb)、Cμ(末端から約108kb)、およびCδ(末端から約120kb)。VH6−1、CμおよびD1−26のみを示すが、全てが類似の結果を与えた。cES細胞サンプルからの増幅についてのコントロールとして、ニワトリβ−アクチンPCRもまた行う。サンプルは、以下である:
1.BAC−A細胞;
2.cES細胞についてのフィーダー層として用いられるマウスSTO細胞(ネガティブコントロール);
3.Barred Rock胚DNA(同じ系統、親cES細胞株、ネガティブコントロール);
4.ヒトゲノムDNA(ポジティブコントロール);
5.cES細胞培地(ネガティブコントロール)。
【0065】
図11に示す通り、導入遺伝子の全てのセグメントは、トランスフェクトされて選択されたES細胞中に存在する。
【0066】
(実施例5−キメラにおける、トランスフェクトされたドナー由来細胞の同定)
トランスフェクトされたドナー由来細胞を、多数の方法により、キメラ中で検出する。例えば、導入遺伝子を、羽毛における黒色の色素沈着の存在によって同定される、キメラから採取した組織のサザン分析により検出する。また、DNAを、胚または鶏冠組織から収集し、そしてBamH1、EcoR1またはこれらのエンドヌクレアーゼの組み合わせにより消化する。キメラにおける組織由来のDNAを、サザン分析により調べた場合、TB01(これは、キメラを作製するために用いたドナー細胞である)において見られるバンドと同一であったバンドは、BamH1、EcoR1またはこれらの2つの制限エンドヌクレアーゼのいずれかを用いた消化の後に明らかであり(図12)、従って、キメラが、レシピエント胚中に導入されてキメラを形成するES細胞の子孫を含むという証拠を提供した。
【0067】
組織における導入遺伝子の存在を、キメラに蛍光を照射することにより検出する。これは、この導入遺伝子が、眼およびくちばし(図13)、口腔前庭、脚部および足(図14)、ならびに翼における骨および羽毛髄質における細胞(図15)において発現されることを示す。内部器官の検査は、ドナー由来のES細胞が、腸組織および胸筋(図16)ならびに脚部の筋肉(図17)に寄与したことを明らかにした。別のトリでは、膵臓への大規模の寄与が観察された(図18)。これらのデータは、ES細胞の子孫が、くちばし、羽毛および皮膚を生じる外胚葉、筋肉および骨を生じる中胚葉、ならびに膵臓を生じる内胚葉に寄与するという強力な証拠を提供する。
【0068】
蛍光によるトリの照射を用いて、トリを1〜4のスケールでスコア付けし、ここで、4は、可視の皮膚、眼およびとさかの全てが、蛍光性であることを示す。この蛍光スコアを、皮膚のいくつかの領域を、蛍光ランプを用いてスクリーニングし、そしてヒヨコを0〜4のスケールでスコア付けすることにより決定した。類似のスコアを用いて、羽毛の色素沈着によって評価されるキメラ現象の程度を評価する。羽毛キメラ現象を、孵化時のダウンと比較した、黒色ダウンの%として評価した。Barred Rockヒヨコのダウンの約25%は、白色である。それゆえ、Barred Rock由来ES細胞に完全に由来するキメラにおいて可能な最大スコアは、75%である。方程式y=0.41x+0.25(ここで、yは、蛍光スコアであり、xは、ES細胞由来の羽毛色素沈着の程度である)によって記載されるこれらの2つの間の相関を、図19に示す。
【0069】
漿尿膜の検査は、cES細胞もまた、胚体外組織に寄与することを示した(図20を参照のこと)。これらのデータは、ニワトリES細胞の多能性が、マウスES細胞(これは、栄養外胚葉に寄与しない)の多能性よりも大きいかもしれないことを示す。
【0070】
キメラにおける生存組織の検査に加えて、細胞を、種々の組織から調製し、そしてES細胞由来の蛍光細胞を決定した。組織(筋肉、肝臓または脳)を、死後のニワトリから取り出し、次いでPBSでリンスして、血液または他の流体を除去した。この組織の外膜を切開により除去し、そして残りのサンプルを細かく切り刻んだ。血清を含まない、DMEM(筋肉および肝臓)またはLiebovitz L15培地(脳)のいずれか中に1mlの1mg/mlコラゲナーゼ(IV型、Sigma)を含む微量遠心管に、各組織サンプルを移した。これらの管を、37℃の水浴中で30〜45分間インキュベートし(これらのチューブを、10〜15分毎に反転して懸濁物を振盪した)、次いでこれらの組織を、使い捨てのプラスチックチップを備えた100〜200μlのピペットを用いて、単細胞懸濁物中に分散させ、そして組織型に従って精製した。全ての遠心分離工程を、微量遠心管において実施した。
【0071】
筋肉細胞懸濁物について、この懸濁物を、4000rpmにおいて5分間遠心分離し、上清を除去し、そして10%熱不活化ウマ血清を含む500μlのDMEMで置換した。ペレットを再懸濁し、そして管を、2600rpmにおいてさらに60秒間遠心分離し、次いで上清を取り出し、そして40ミクロンのナイロンメッシュ(無菌で使い捨て用、Falconブランド)に通した。細胞懸濁物のサンプルを、この段階で顕微鏡によって検査して、適切な細胞形態およびフローサイトメトリーに関して充分な細胞密度を確実にした(最適未満の密度を、希釈、またはペレット化および再懸濁により訂正した)。
【0072】
肝臓細胞懸濁物について、この懸濁物を、40ミクロンのナイロンメッシュを通して濾過し、清浄な微量遠心管に移し、そして筋肉についての通りにペレット化した。ペレットの底に区別できる可視の層を形成する赤血球を破壊しないように注意しながら、このペレットの上の層を慎重に取り出して、完全DMEM(500μl)を有する清浄なチューブに移す。この細胞懸濁物をこの段階で検査し、そして細胞密度を調整した。赤血球が細胞調製物中に存在した場合、これらを、溶解工程(これらの細胞を、130mM塩化アンモニウム、17mM Tris、10mM重炭酸ナトリウムを含む1ml溶解緩衝液中で、室温にて5分間インキュベートする)を用いて除去する。
【0073】
脳細胞懸濁物については、この懸濁物を濾過し、そして上記のとおりにペレット化した。10%ウマ血清および6g/lグルコースを含み、Percollを添加して50%溶液(約260〜280μl)を得た250μlの完全Liebowitz(L−15)培地中にこのペレットを再懸濁した。この懸濁物を、3.5kにて5分間遠心分離し、その後、細胞の上層を注意深く取り出して清浄な微量遠心管に入れ、そして少なくとも1mlのL−15培地で希釈した。この細胞を、4000rpmにて5分間遠心分離することによりペレット化し、次いで適切な体積のL−15中に再懸濁した。
【0074】
GFP発現のフローサイトメトリー分析を、キメラからの肝臓細胞、脳細胞および筋肉細胞において実施した。単細胞懸濁物を、ポリスチレンチューブ中に移し、そしてフローサイトメトリー(これについては、サンプルの特定の細胞型を検出するように動作パラメーターを設定してあり、そして励起レーザービームに応答して緑色波長の放射された光を検出するような装備がある)にローディングした。各分析において、非トランスジェニックキメラ由来の少なくとも1つの群のサンプルを、蛍光測定についてのベースラインを設定するために分析した(なぜなら、このフローサイトメーターは、各細胞からのいくつかの自己蛍光を検出するからである)。これらは、図21において、コントロールサンプルと言及される。このフローサイトメーターによって生成されるデータは、(指定されたパラメーター内の)検出細胞の数を含んでおり、そしてその集団内での細胞の蛍光をまとめた。脳組織および筋肉組織の分析からのデータの例を、それぞれ、図22および図23に示す。データを、各組織型について非トランスジェニックサンプルによって設定された自己蛍光レベルよりも大きな蛍光強度を示す細胞の数(M1と命名される)について収集した。これらのデータのサブセットを、自己蛍光レベルよりも少なくとも10倍高い蛍光強度を示す細胞(M2と命名される)について収集した。
【0075】
脳サンプル、肝臓サンプルおよび筋肉(胸部および脚部)サンプルを、26のニワトリから取り出し、このうちの18は、上記の通りに、GFP導入遺伝子を保有するトランスジェニックニワトリES細胞を、非トランスジェニック白色レグホンのレシピエント胚に注入することにより作製されたキメラであった。残りの8つのニワトリは、トランスフェクトされていないcES細胞を非トランスジェニック白色レグホンのレシピエント胚中に注入することにより作製されたキメラであった。雄ニワトリおよび雌ニワトリは、両方の群に存在した。緑色蛍光は、トランスジェニックキメラからの脳由来細胞、肝臓由来細胞および筋肉由来細胞において検出された。蛍光強度および蛍光細胞と非蛍光細胞との比は、トリ毎に異なり、そして組織型毎に異なった。表にした結果を、図21に示す。ドナー由来の羽毛色素沈着について、または死後分析の前にUVランプを用いてスクリーニングされた場合に緑色皮膚について、低いスコアが与えられたトリでは、組織サンプル中の蛍光細胞の数は、一般に低いかまたはゼロであった。これらの基準について高く(例えば、75%を超えるドナー由来羽毛)スコア付けされたトリは、3つ全ての組織サンプル型において蛍光細胞を有することが見出され、そしてこれは、高度に蛍光性の(M2)細胞が、3つ全ての組織型に存在する唯一の群であった。3つの組織型のうち、肝臓由来の蛍光細胞の数が最も少なかった。脳由来蛍光細胞および筋肉由来蛍光細胞は、より多くの数で存在し、そしてトランスジェニックキメラ由来のより多数のサンプルにおいて存在した。このデータを、図19にグラフとして示す。
【0076】
このデータは、トランスジェニックcES細胞が、レシピエントのX期胚中に注入された場合に、宿主中で繁殖し得、そして肝臓細胞、筋肉細胞および脳細胞へと分化し得ることを示す。肝臓、筋肉および脳は、それぞれ、内胚葉、中胚葉および外胚葉に由来する組織である;従って、cES細胞は、3つの主な体細胞系列へと分化し得、これから、全ての他の体細胞が誘導される。さらに、この実験は、トランスジェニックcES由来細胞が、胚の段階を超えて持続して、若いニワトリにおいて見られ得、そして導入遺伝子が、これらの多様な細胞型において発現され続けることを示す。
【0077】
導入遺伝子はまた、ES細胞由来のリンパ球において存在する。造血(hemopeotic)系列(これは、リンパ様系列および骨髄系列を含む)は、ES細胞由来のトランスジェニックキメラにおいて特に目的のものである。なぜなら、リンパ様系列におけるB細胞は、抗体を生じるからである。リンパ球は、孵化から成体までの任意の時点においてキメラニワトリから、またはキメラ胚のファブリキウス嚢から採取された血液サンプルのいずれかから調製される。嚢は、胚発生(E20)の20日目においてヒヨコから取り出され、そして20mlのシリンジのプランジャを用いて10mlのハンクス平衡塩溶液(HBSS)中で鋼メッシュに強制的に通すことにより単離される。得られる組織フラグメントおよび細胞を管に収集し、そして室温において5分間インキュベートして、大きなフラグメントが沈澱するのを可能にする。細胞上清を収集し、そして細胞を計数し、次いで1500gでの、4℃にて10分間の遠心分離により収集し、そして15mlのコニカルチューブにおいて、HBSSの1mlあたり最大1×108細胞において再懸濁する。血液を、ヘパリン処理したシリンジを用いてキメラニワトリの翼の静脈から収集(0.5ml)し、そしてEDTAを含む真空管中に沈着させて凝集を存在させる。血液サンプルをHBSSと1:1で混合して、15mlのコニカルチューブ中に1mlの最終体積を得た。この点から、血液サンプルおよび嚢サンプルを同じように処理する。Fico/Liteを、細胞懸濁物の下にチューブの底に分配することにより、1mlの細胞懸濁物の下に、0.75ml Fico/Lite−LM(Atlanta Biologicalsカタログ番号I406)を敷く。次いで、チューブを1500gにて15分間、4℃にて、ブレーキなしで遠心分離する。Fico/LiteとHBSSとの間の界面を注意深く集めて、別個の物質層に濃縮した単核細胞を収集する。この物質を新たなチューブに移し、粉砕して詰まった細胞を破壊し、次いで3mlのHBSS/2%熱不活化ウシ胎児血清と混合する。細胞を、Sorvall卓上型遠心分離機における1500rpmにて、4℃にて10分間の遠心分離によって収集し、次いでHBSS/2% FBS中でさらに2回洗浄する。少量のアリコート(25μl)を、予備評価のために、顕微鏡下でのドナー由来GFP蛍光の程度の顕微鏡スライドに載せる。次いで、細胞の残りは、抗体染色または固定の準備ができている。
【0078】
分析前に数時間よりも長期に細胞を保存するために、または顕微鏡法のためにスライド上に永続的に載せられる場合、これらを最初に、パラホルムアルデヒド中で固定する。細胞のアリコート(50μl、0.5〜1×106細胞)を、1mlの4%パラホルムアルデヒドを添加し、そして室温で15分間インキュベートすることにより固定する。次いで、これらの細胞を、微量遠心機における500gにて6分間の遠心分離、続いてPBS/2%熱不活化ウシ胎仔血清中でのこれらの細胞の再懸濁によって3回洗浄する。
【0079】
抗体染色においては、新たなPBS/2%FBS/0.1%アジ化ナトリウム中の0.5×106細胞のアリコートを、氷上で、チューブ中または96ウェルプレートのウェル中に配置する。R−フィコエリトリンに結合体化したモノクローナル抗体(Southern Biotechnology Associates)をこれらの細胞に添加し、そして発蛍光団を保護するように覆われた氷上で30分間インキュベートする。ニワトリBリンパ球マーカーBu−1を認識する抗体(0.2g/106細胞の作業希釈において用いられる)またはニワトリT細胞マーカーCD3を認識する抗体(0.5g/106細胞において用いられる)を用いる。インキュベーション後、これらの細胞を、各回、500gにて6分間の遠心分離、0.5ml PBS/2% FBS/0.1%アジド中への再懸濁によって3回洗浄する。最終洗浄の後、これらの細胞を、フローサイトメトリーによる分析の前に、1週間まで、0.5%パラホルムアルデヒド中で保存する。これらの細胞をフローサイトメトリーによって分析する当日に、このパラホルムアルデヒドをPBS/2% FBSで置き換える;フェノールレッドを含まない緩衝液を、フローサイトメトリーに用いる。FACS分析を、GFP蛍光およびR−フィコエリトリン蛍光の両方について同時に実施して、ドナー由来である(GFP陽性)細胞の比率の合計、これらの抗体によって染色される(R−フィコエリトリン陽性)細胞の比率(ドナー細胞およびレシピエント細胞の両方に由来する)、およびこれらの抗体でもまた染色される(GFP、R−フィコエリトリン二重陽性)ドナー由来細胞の比率を検出する。
【0080】
3つの異なるES細胞株を用いて作製されたキメラを、リンパ様系列に対するドナー寄与について分析し、これにより、CX−GFPマーカーの3つの異なる挿入部位が表された(表9)。孵化前から成体までの合計27のキメラを分析した。リンパ球画分におけるドナー由来GFP陽性細胞の比率は、FACS分析により判断したところ、0%〜10%の範囲であった(0%の動物は、この表には示されない)。末梢血リンパ球の抗体染色は、抗Bu−1抗体を用いて5%〜17%の細胞染色をもたらし、そして抗CD3抗体を用いて75%〜85%の細胞染色をもたらした。抗Bu−1抗体を用いた嚢リンパ球の染色は、90%を超える細胞の染色をもたらした。GFP蛍光およびBu−1またはCD3のいずれかおよびGFPについての染色を用いた二重陽性細胞が、いくつかのサンプルにおいて低頻度で観察された。
【0081】
これらのデータは、外因性タンパク質をコードする遺伝子を含むES細胞が、孵化したヒヨコおよび成熟動物における造血系列に寄与したことを示す。
【0082】
【表9】
この表に列挙した8つのキメラは、cES細胞由来リンパ球を含むことが示された。末梢血リンパ球(またはキメラIG1−25の場合は嚢リンパ球)を、本文に記載される通りに、Fico/Lite−LMを用いて調製した。次いで、リンパ球を、緑色蛍光タンパク質(GFP)、Bu−1 B細胞関連同種抗原(Bu−1)およびT細胞レセプター関連CD3複合体のCD3メンバー(CD3)の発現について分析した。GFP、Bu−1およびCD3とラベルされたカラムにおける数字は、FACS分析によってこれらのマーカーについて陽性である各サンプルにおける細胞の百分率を示す(GFP蛍光細胞の百分率を、顕微鏡下で細胞を数えることによって決定した、OV−36および10821についてを除く)。サンプルを分析用に採取したときのキメラの齢を日数で示し、各キメラの性別を示す。「羽毛」とラベルされたカラムは、黒色のCES細胞由来の羽毛色素沈着の評価の百分率を示し、75は、可能な黒色の最大量である(なぜなら、純粋なBarred Rockニワトリ自体が、約75%黒色である羽衣を有するからである)。「緑色スコア」は、携帯型UVランプを生体動物に対して輝かせることによって可視化される、動物全体における緑色蛍光全体の実質的な評価である。スケールは、0(緑色なし)〜4(最も緑色)である。このスコアを、各動物におけるcES細胞寄与の程度全体のさらなる指標として用いる。「細胞株」は、キメラを作製するために用いられた異なるcES細胞株の名称を示す。
【0083】
当業者に明らかな、開示された発明の種々の改変、改善、および適用が存在し、そして本出願は、法によって許容される程度まで、このような実施形態を包含する。本発明は、特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、本発明の範囲全体は、このようには限定されないが、以下の特許請求の範囲に従って限定される。全ての参考文献、特許または他の刊行物は、本明細書中に特に参考として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図1】
【図4】
【図5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図3】
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【図10B】
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【図11】
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【図19】
【図21】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【公開番号】特開2010−158245(P2010−158245A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21678(P2010−21678)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【分割の表示】特願2004−528087(P2004−528087)の分割
【原出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(505049054)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【分割の表示】特願2004−528087(P2004−528087)の分割
【原出願日】平成15年8月11日(2003.8.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
【出願人】(505049054)
【Fターム(参考)】
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