説明

トレーサビリティシステム

【課題】システムに入力された情報が不正確な情報に書き換えられてしまうことを防止することが出来るトレーサビリティシステムを提供する。
【解決手段】製品製造現場に必要な情報を出力し且つ製品製造現場1〜3から記録するべき情報が入力される制御装置10を有し、製品製造現場は複数の階層(例えば、現場作業者、中間管理者、上級管理者)に区分けされて制御装置10に接続されており、制御装置10は、製品製造現場1〜3から制御装置10に入力されるべき情報が、各階層で承認(或いは、登録)されていない場合には、承認(或いは、登録)するべき階層に対して、未承認(或いは未登録)の情報が存在することを示す信号を出力する機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、市場で流通している製品(例えば、飲料品)に関する情報を、当該製品の製造における各段階から流通過程の始まりに至るまで、確実に追跡することが出来る情報処理システムに関する。
係る情報処理システム、すなわち製品に関する情報を追跡することが出来る情報処理システムは、「追跡可能性(トレーサビリティ)を有する情報処理システム」ということで、「トレーサビリティシステム」と呼ばれている。
【背景技術】
【0002】
その様なトレーサビリティシステムは、或る製品(商品)に不都合が発見された場合に、当該製品の製造工程を検証して不具合原因を特定することによって、同様な不都合を有するであろう製品(不良品である可能性が高い製品)を特定し、当該製品(同様な不都合を有するであろう製品:不良品である可能性が高い製品)の流通を停止し、以って、当該不具合を有する恐れのある製品が流通過程で拡散してしまうことを防止し、そして、一般消費者にまで拡散することを防止するために、極めて有用である。
また、トレーサビリティシステムは、或る原材料に不都合が発見された場合に、その原材料を使用して製造された製品を特定し、当該製品の流通を停止し、以って、当該不具合を有する恐れのある製品が流通過程で拡散してしまうことを防止することもできる。
特に、いわゆる「食の安全」に関心が高い昨今では、飲食物の製造や、流通について、トレーサビリティシステムの有用性が注目されている。
【0003】
従来のトレーサビリティシステムは、例えば、製品が製造された箇所や製造時間を製品に記入し、製造者を明示してから、当該製品を流通させることにより行なわれていた。
係るシステムにおいて、製品に不都合が発見された場合には、当該製品に記入された(当該不都合が発見された製品の)製造元を特定する。そして、当該製品と同一製造箇所で且つ同一時間に製造された製品には、同様な不都合が存在する可能性が高いと判断して、その製品(不都合が発見された製品と同一製造箇所で且つ同一時間に製造された製品)を、流通経路に沿って追跡し、当該製品不都合が発見された製品と同一製造箇所で且つ同一時間に製造された製品)の流通を停止し、回収することを行なっていた。
【0004】
ここで、トレーサビリティシステムにより、特定の製品を追跡するためには、製造段階や流通段階で、製品に関する各種情報(製造過程における各種条件や原料使用量等)をシステムに入力する必要がある。
上述した各種従来技術において、製品製造に携わっている作業者が、製品を特定するのに必要な各種情報をシステムに入力した後、不正確な情報(実際とは異なる情報)に書き換えてしまった場合(いわゆる「改竄」に相当する場合を含む)には、流通している製品を追跡する機能を発揮することが出来なくなってしまう。
その結果、製品中に何らかの不都合が発見された場合に、同様な不都合を持つ製品(不良品)のみの流通を停止することが困難となり、不都合がある可能性が極めて小さい製品を含めて、製品全数を回収しなければならなくなってしまう、という事態が生じてしまう恐れがある。
或いは、不都合が発見されたにも拘らず、製品の回収が為されないという事態も想定される。
【0005】
しかし、従来技術に係るトレーサビリティシステムでは、システムに入力された情報を不正確な情報(実際とは異なる情報)に書き換えること(いわゆる「改竄」に相当する事例を含む)を抑制する機能は有していない。
仮に管理者がシステムに入力された製品情報をチェックする体制であったとしても、管理者がチェックするべき情報量は膨大であり、システムに入力された情報の適否を迅速且つ正確に判断することは困難であった。
さらに、管理者がチェックした後に、現場作業者によりシステムに記憶されている各種情報を書き換えることが可能であるため、システムに入力された情報を書き換えた(或いは、改竄した)としても、管理者は、情報が書き換えられたことを認識することが困難であり、システムに入力された情報の書換えを防止することは困難であった。
また、過失により誤った情報を入力してしまった場合、当該誤った情報を正しい情報に修正する必要がある。このような修正がなされた場合、従来のトレーサビリティシステムでは修正履歴が残らなかったため、情報がどのように修正されたのかが不明であった。そのため、情報の信頼性という点が不足していた。
【0006】
その他の従来技術として、不都合の原因に応じて、同様な不都合を持つ製品(不良品)を推定する条件を入力するインターフェースを有するトレーサビリティシステムも提案されている(特許文献1参照)。
係るトレーサビリティシステムによれば、製品の製造箇所(製造施設)における各エリア(例えば、工場と、倉庫と、集配所或いは出荷部)において、それぞれ独自の識別情報によって製品を管理している場合であっても、不都合を持つ製品(不良品)を回収することが可能である。
しかし、係る従来技術(特許文献1の技術)は、上述したシステムに入力された情報が書き換えられること(或いは、製品情報の改竄)を防止することについては、何ら開示していない。
また、情報の修正履歴を記録することについても、何ら開示等していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−122926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、製品(例えば、飲料品)に関する情報を、当該製品の製造における各段階から流通過程の始まりに至るまで追跡することが出来るトレーサビリティシステムであって、システムに入力された情報が承認された後は、不正確な情報に書き換えられてしまうことを防止することが出来、さらに情報の修正履歴を記録することが出来るトレーサビリティシステムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のトレーサビリティシステムは、製品製造現場(製品を製造するのに必要な材料を貯蔵する材料貯蔵施設1と、製品を製造する製造工場2と、製品を出荷する出荷設備3を含む)に必要な情報を出力し且つ製品製造現場(1〜3)から記録するべき情報が入力される制御装置(システム制御ユニット10)を有し、
製品製造現場は複数の階層(例えば、現場作業者、中間管理者、上級管理者)に区分けされて制御装置(10)に接続されており、
制御装置(10)は、製品製造現場(1〜3)から制御装置(10)に入力されるべき情報が、各階層で承認または登録されていない場合には、承認または登録するべき階層に対して、未承認または未登録の情報が存在することを示す信号を出力する機能と、
上位の階層で承認された情報について下位の階層から修正要求があった場合に、係る修正を禁止する機能と、
各階層で承認または登録された情報を修正した修正履歴を全て記憶装置で保存する機能を有することを特徴としている。
【0010】
本発明において、制御装置(システム制御ユニット10)は、最上位の階層から修正要求があった場合には、何れの階層で承認または登録された情報であっても修正する機能を有しているのが好ましい。
【0011】
本発明の実施に際して、制御装置(システム制御ユニット10)は、
最下層の階層(現場作業者)に製品製造現場(1〜3)における作業を実行するのに必要な情報を出力し、当該必要な情報に対応する(使用者が適正と定めた範囲の)情報が最下層の階層から返信された場合には、引き続き必要な情報を順次出力する機能と、
前記必要な情報に対応する(使用者が適正と定めた範囲の)情報が最下層の階層から返信されない場合には、当該最下層の階層に対して警報(アラーム)信号を出力する機能を有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上述する構成を具備する本発明によれば、上位階層者によって承認された情報については、下位階層者が修正することはできない様に構成されているので、上位階層者が承認した後においては、下位階層者が情報を書き換え或いは改竄することは出来ない。
ここで、本発明によれば、上位階層者が承認する前の段階であれば、下位階層者は情報を修正することが出来るので、例えば、単純な入力ミスによる誤情報の修正であれば、(上位階層者が承認する前の段階であれば、)可能である。そのため、単純な入力ミス等についても上位階層者が修正する必要性は極めて少なくなり、現場における各種作業が滞ってしまう恐れは小さい。
【0013】
また、本発明によれば、製品情報を修正した履歴(修正履歴)は、全て残存される様に構成されており、全ての階層においても、修正履歴を訂正、消去することが出来ないように構成されている。
修正履歴が全て残っているので、システムに入力された情報を事後に書き換えた場合(或いは、改竄した場合)には、その事実が証拠として半永久的に残存する。そのため、故意、悪意により、システムに入力された情報を書き換えようとする作業者、管理者に対して、非常に強く抑止力が作用する。
さらに、過失により誤った情報を入力し、当該誤った情報を正しい情報に書き換えた場合にもその修正履歴が全て残存するため、システムに入力された情報がどのような修正履歴を経ているのかがわかり、情報自体に信頼性が付与される。
【0014】
ここで、本発明において、最下層の階層(現場作業者)に対して製造現場における作業を実行するのに必要な情報(アドバイス情報)を出力する様に構成すれば、最下層の階層(現場作業者)では、業務遂行の補助となる様な内容(アドバイスとなる内容)の情報を参照しつつ作業を行なうことが出来る。したがって、製造工程における作業ミスが低減する。
また本発明において、前記必要な情報に対応する適正な情報が最下層の階層から返信されない場合(アドバイス情報に対して、適正なアンサーバックが現場作業者から返信されない場合)に、当該最下層の階層に対して警報(アラーム)信号を出力する機能を有する様に構成すれば、不正確な情報がトレーサビリティシステムに入力されてしまうことを事前に防止することが出来る。そして、不正確な情報が入力されることが防止されることにより、製品の追跡が正確に出来なくなってしまう事態が防止される。
【0015】
本発明によれば、システムに入力された情報が書き換えられることや、不正確な情報が入力されることが防止されるので、仮に製品に不都合が発生したとしても、当該製品に係る種々の情報から不都合発生の原因を推定して、当該製品と同様な不都合を発生している可能性が高い製品を特定して、その流通を停止して、回収することが可能である。
さらに、不都合発生の原因を推定して、当該製品と同様な不都合を発生している可能性が高い製品を特定して回収すれば良いため、不都合が発生する可能性が低い製品も含めた全数回収を行なう必要がなく、不都合が発生した際の損失を必要最低限に抑えることが出来る。
一方、不都合発生の原因をより高い精度で推定することが出来る可能性があるので、当該製品と同様な不都合を発生している可能性が高い製品を漏れなく回収して、不都合を発生した製品が一般需要者によって消費されてしまう可能性を極めて小さくすることが可能になる。
【0016】
これに加えて本発明によれば、最終的には必ず最上位の管理者(上級管理者或いは最終責任者)が承認を行なうので、「承認」された結果に対する信頼度が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るトレーサビリティシステムの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における要部の概要を示すブロック図である。
【図3】図2で示す要部の機能ブロック図である。
【図4】図2、図3で示す実施形態の要部における承認或いは登録における制御の最初の段階を示すフローチャートである。
【図5】図4に続く制御であって、現場作業者の登録及び修正に関する制御を示すフローチャートである。
【図6】図4に続く制御であって、中間管理者の承認及び修正に関する制御を示すフローチャートである。
【図7】図4に続く制御であって、上級管理者の承認及び修正に関する制御を示すフローチャートである。
【図8】実施形態で、作業のアドバイスとなる情報を提供する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に図1を参照して、本発明が適用されるトレーサビリティシステムの概要を説明する。
図1は、実施形態に係るトレーサビリティシステム(システム全体に符号100を付す)の全体構成を示している。
ここで、「トレーサビリティシステム」とは、「流通経路情報把握システム」とも言い、商品の生産過程および流通過程の一部を追跡するシステムである。
当該システムによれば、商品の生産過程および流通過程の一部を追跡することにより、生産者が生産過程および流通過程をさかのぼって検索できる。それのみならず、製造現場等で不良品が発生した場合に、不良品発生の原因を迅速に特定して、早期対応が可能となる。
【0019】
図示の実施形態では、図1で全体を符号100で示すトレーサビリティシステムは、原材料貯蔵倉庫1、製造工場2、出荷部3を有する製品製造現場(例えば、飲料品の製造工場)に適用されている。
ここで、「製品」とは、原材料から加工される飲食品や工業製品等のあらゆる製品を指し、最終製品はもちろんのこと、最終製品に至るまでの中間加工品や加工原材料等も含まれる。最終製品が飲食品の場合、中間加工品としては、飲食品に包含されるシロップや菌液等を例示することができる。
そして、トレーサビリティシステム100は、システム制御ユニット10と入力手段30を有している。入力手段30は、例えば、不良品の発生その他の不都合が生じて、その原因を特定するべき場合に、システム制御ユニット10に対して、不都合発生の原因を特定する旨の命令や、必要な情報を入力するための手段である。図1において、図示の簡略化のため、入力手段30は1組のみを示しているが、複数設けることが出来る。
原材料貯蔵倉庫1では、製造現場の外部から輸送手段4(例えば、貨物自動車等)で搬入した原材料を、製品を製造する原材料として製造工場2に供給されるまで貯留している。
原材料貯蔵倉庫1においては、例えば、ロット番号、入庫原料、入庫元、入庫日時、入庫数量、使用中原料(その時点で、製造工場2へ供給されている原料)等のデータ(情報)を、所定のタイミングで(例えば、入・出庫する度毎に)、記録して管理している。そして、原材料貯蔵倉庫1は、通信回路L1(例えば、情報伝達ライン)によって、システム制御ユニット10と情報を授受している。
【0020】
製造工場(例えば、乳酸菌飲料、乳酸菌飲料の原液、発酵乳または清涼飲料の製造工場)2は、いわゆる製造ラインを有していると共に、洗浄・殺菌手段21及び検査手段22も備えている。上述した様に、図示の実施形態では飲料製品の製造現場が例示されており、係る飲料製品の製造に際しては、洗浄・殺菌工程と検査工程が必須である。係る洗浄・殺菌工程を行なうのが洗浄・殺菌手段21であり、検査工程を行なうのが検査手段22である。
製造工場2は、通信回路L2(例えば、情報伝達ライン)によって、システム制御ユニット10と接続されている。そして、システム制御ユニット10から、通信回路L2を介して、製造に関する各種情報、品質に関する各種情報、洗浄・殺菌に関する各種情報が、製造工場2に送信される。明確には図示されていないが、製造工場2においては、システム制御ユニット10から送信された情報が、各種端末(図示せず)等から、随時、確認することができる。
また、通信回路L2を介して、製造工場2における各種情報(製造に関する各種情報、品質に関する各種情報、洗浄・殺菌に関する各種情報)が、システム制御ユニット10に伝達される。
【0021】
出荷部3では、製造工場2で製造された製品を、輸送手段(例えば、貨物自動車等)によって、販売拠点等(製造されたものが、乳酸菌飲料の原料液である場合には、乳酸菌飲料の製造工場)に出荷する。
出荷部3においては、製品名、ロット番号、出荷先、出荷日時、出荷量等のデータ(情報)が、所定のタイミングで(例えば、出荷の際に)記録される。
出荷部3は、通信回路L3(例えば、情報伝達ライン)によって、システム制御ユニット10と接続されている。
また、出荷部3には製品倉庫(図示せず)を併設することもでき、製品が出荷されるまでは当該倉庫に保管される。
【0022】
通信回路L3を介して、出荷部3からシステム制御ユニット10に対して、出荷時の情報(例えば、製品名、ロット番号、出荷先、出荷日時、出荷量等のデータ)が伝送される。
原材料貯蔵倉庫1からの情報、製造工場2からの情報、出荷部3からの情報は、システム制御ユニット10側で記憶される。
不良品の発生等の不都合が生じた場合には、システム制御ユニット10側で記憶された情報に基いて、流通過程において、精度の高い追跡・遡及調査が行なわれる。そして、不良品の回収等が、迅速に行なわれる。
また、システム制御ユニット10側で記憶された情報に基いて、不都合の原因を早期に特定すると共に、同様な不都合を生じている可能性が高い製品が迅速に特定され、当該製品(不都合を生じている可能性が高い製品)の流通を停止して、迅速に回収することが出来る。
【0023】
原材料は、搬送手段6によって、原材料貯蔵倉庫1から製造工場2に搬送される。また、製造された製品は、搬送手段7によって、製造工場2から出荷部3に搬送される。
搬送手段6は、通信回路L6(例えば、情報伝達ライン)によって、システム制御ユニット10と接続されている。また搬送手段7は、通信回路L7(例えば、情報伝達ライン)によって、システム制御ユニット10と接続されている。
【0024】
上述した様に、図示の実施形態においては、システム制御ユニット10から、製造工場2の現場作業者の端末に対して、例えば、「製造に関する情報」、「品質に関する情報」、「洗浄殺菌に関する情報」が送信される。
ここで、「製造に関する情報」としては、各種製造工程において、必要な手順を実行するために必要な情報、例えば、投入するべき原材料の種類、量、材料貯蔵状況(原材料貯蔵倉庫1におけるどのエリアにどの程度の量の原材料が存在するかを示す情報)等がある。
「品質に関する情報」としては、所定の製品の品質を維持するための情報、例えば、選択するべき原料の種類、検査工程の実施に関する情報等がある。
「洗浄殺菌に関する情報」は、例えば飲料製品製造現場では、製造に係る機器や装置等の洗浄・殺菌の手順であり、当該手順が製造現場の端末(図示せず)に随時表示されるように構成されている。
【0025】
ここで、「製造に関する情報」、「品質に関する情報」、「洗浄殺菌に関する情報」には、製造工場における業務遂行のアドバイスとなる情報が、種々包含されている。
製造工場の現場作業者は、端末に表示される各種情報を参照して、製造作業を行なうことが出来るので、製造工程における作業ミスが低減する。
業務遂行のアドバイス機能については、図8を参照して、後述する。
【0026】
図1では示されていないが、図示の実施形態に係るトレーサビリティシステム100においては、原料の搬入から製品出荷の各段階において、製品製造に関する各種情報を、作業現場で登録して、登録された製品情報は上位階層の作業者(例えば、中間管理者、上級管理者)により、承認されなければならない様に構成されている。そして、上位の階層の作業者が承認する以前の段階でなければ、下位の階層の作業者は情報を修正することが出来ない様に構成されている。
それに加えて、図示の実施形態に係るトレーサビリティシステム100においては、製品製造に関する各種情報を修正した履歴(修正履歴)は、全て残存される。どの様な階層のものでも、修正履歴を訂正、消去することが出来ない様に構成されている。
また、図示の実施形態に係るトレーサビリティシステム100においては、システム制御ユニット10から製造工場2に送信した情報に対して、対応する適正な情報が製造工場2の現場作業員から返信されない場合に、当該現場作業員に対応する端末に対して、警報(アラーム)信号を出力する機能を有している。係る機能により、システム制御ユニット10から製造工場2に送信した情報に対して対応していない情報(不適正な情報:不正確な情報)が、トレーサビリティシステムに入力されてしまうことを事前に防止することが出来る。そして、不正確な情報が入力されることが防止されることにより、製品の追跡が正確に出来なくなってしまう事態が防止される。
【0027】
現場作業者による情報の登録、上位階層の作業者(「中間管理者」と「上級管理者」)による登録事項の承認の概要については、図2に示されている。
図2において、現場作業者は、システム制御ユニット10に対して、未登録事項の表示の要求、登録に必要な情報(例えば、登録メニュー、トレースメニュー、訂正履歴、その他)の取得要求、登録(或いは、登録解除)指令、修正要求、閲覧要求等の情報(要求、指令を含む)を発信する(図2の矢印1A)。
一方、システム制御ユニット10は、現場作業者に対して、要登録事項(未登録の情報)の表示、登録に必要な情報の表示、修正要求に関する情報(例えば、修正の可否)の表示、閲覧要求に対する要求された情報の表示等を、現場作業者側の端末に対して出力する。換言すれば、システム制御ユニット10は、登録作業を行なおうとする現場作業者から情報の表示を要求された場合に、当該要求に対する応答として、現場作業者から要求された情報を現場作業者側の端末に対して出力する(図2の矢印1B)。ただし、現場作業者が自らの担当以外の作業工程に関する情報の登録要求、または閲覧要求をしたとしても、当該現場作業者にその権限がない場合は、システム制御ユニット10から何の応答もないことがある。
【0028】
図2において、中間管理者は、システム制御ユニット10に対して、未承認事項の表示の要求、承認に必要な情報(例えば、承認メニュー、トレースメニュー、訂正履歴、その他)の取得要求、修正要求、登録の解除要求、閲覧要求等を発信する(図2の矢印2A)。
上記中間管理者の要求に対して、システム制御ユニット10は、応答内容として、未承認事項の表示、承認に必要な情報の表示、修正要求に関する情報(例えば、修正の可否)の表示、閲覧要求に対する要求された情報の表示等を、中間管理者側の端末に対して行なう(図2の矢印2B)。
【0029】
図2において、上級管理者は、システム制御ユニット10に対して、未承認事項の表示の要求、承認に必要な情報(例えば、承認メニュー、トレースメニュー、訂正履歴、その他)の取得要求、修正要求、登録或いは承認の解除要求、閲覧要求等を発信する(図2の矢印3A)。
上記上級管理者の要求に対して、システム制御ユニット10は、応答内容として、未承認事項の表示、承認に必要な情報の表示、登録或いは承認の解除要求に対して全ての解除要求に対する表示、閲覧要求に対して要求された情報の表示等を、上級管理者側の端末に対して行なう(図2の矢印3B)。
【0030】
上述した様に、図示の実施形態では、図示を簡略化するため、登録或いは承認を行なう担当者を、現場作業者(最も低い階層に区分けされている作業者)、中間管理者(中間の階層に区分けされている作業者)、上級管理者(最も上位の階層に区分けされている作業者)の3種類のみを示している。
しかし、登録或いは承認を行なう作業者の階層としては、4層以上に区分けされていても良い。
【0031】
図2に関連して説明されたのは、現場作業者による登録に関する情報と、中間管理者による承認に関する情報と、上位階層者による承認に関する情報である。
しかし、図1を参照して説明したように、システム制御ユニット10から現場作業者に対しては、図2の情報1Bに加えて、製造工程を実行するのに必要な種々の情報(製造に関する情報、品質に関する情報、洗浄殺菌に関する情報)が、供給される。
【0032】
一方、現場作業者は、図2の情報1Aに加えて、システム制御ユニット10から送信された情報(製造に関する情報、品質に関する情報、洗浄殺菌に関する情報等)に対して、いわゆる「アンサーバック」として適正な情報を入力する。
そして、係る適正な情報(アンサーバック)に応答して、システム制御ユニット10から現場作業者に対して、製造工程を実行するのに必要な情報が順次表示される。
【0033】
その際に、現場作業者が、単純ミス、その他の原因により、端末に表示された情報に対して適正ではない情報を誤入力してしまった場合には、システム制御ユニット10から現場作業者に対して、警報(アラーム)信号が出力される。
このように警報(アラーム)信号が出力されるのは、使用者が適正な範囲を設定した情報について現場作業者が情報を入力した場合であって、そもそも使用者が適正な範囲を設定していない情報について現場作業者が入力した場合は、警報(アラーム)信号が出力されることはない。
この警報信号に対して、現場作業者は必要な作業(適正な情報の再入力、登録された情報の修正等)を実行する。
これにより、不正確な情報(適正ではないアンサーバックの内容)がトレーサビリティシステムに入力されてしまうことが、事前に防止される。
【0034】
図2で示すシステム制御ユニット10における概要が、図3で示されている。
ここで、図3はシステム制御ユニット10のいわゆる機能ブロック図である。
図示の実施形態に係るトレーサビリティシステム100において、承認或いは登録や、各種情報(製造に関する情報、品質に関する情報、洗浄殺菌に関する情報等)の送信、アンサーバックに対する処理を、例えば、情報処理装置(コンピュータ)により実行する場合には、当該情報処理装置の内部は、制御の段階毎において、多種類の機能を発揮する。
図3は、その様な各種機能を発揮する部位を、便宜的に、機能毎に別個のブロックで表現して、トレーサビリティシステム100の構成を簡便に表現したものである。なお図3では、「承認或いは登録」に関する機能ブロックが、主として表示している。
【0035】
図3において、システム制御ユニット10は、情報記憶処理ブロック11、修正要求処理ブロック12、承認(登録)必要情報処理ブロック13、閲覧処理ブロック14、信号発生ブロック15、要求者識別ブロック16、業務用インターフェース17及び承認用インターフェース18を有している。
情報記憶処理ブロック11は、各種ブロックからの情報を処理する機能に加え、該当情報検索機能ブロック11Aと修正履歴記憶ブロック11Bを備えている。
さらに、情報記憶処理ブロック11は、各種情報を記憶する記憶ブロック(図示せず)をも有している。
図3において、業務用インターフェース17には、図1で示す各部署から、製造業務に関する情報が送られている。
係る情報は、情報記憶処理ブロック11に送信されて、それに対応して、必要な情報(製造に関する情報、品質に関する情報、洗浄殺菌に関する情報)が、順次、アンサーバックされる。
【0036】
図3において、承認(登録)要求とは、例えば、中間管理者が承認するべき情報(例えば、未承認の情報の一覧表示)を、中間管理者の端末(図示せず)上に表示する旨の要求である。
ここで、「承認(登録)要求」となっており、「(登録)」という文言が付加されているのは、現場作業者が登録するべき情報(例えば、未登録の情報の一覧表示)を、現場作業者の端末(図示せず)上に表示する旨の要求を包含する趣旨である。
上述した様に、現場作業者については「登録」という文言を用い、中間管理者以上の階層の作業者が行なう場合については「承認」という文言を用いている。
図3において、修正要求とは、各種情報を修正する旨の要求である。修正の対象としては、例えば、現場作業者により登録された情報や、中間管理者や上級管理者により承認された情報も含む。また、必要情報要求とは、承認または登録に必要な情報(例えば、承認メニュー、トレースメニュー、訂正履歴、その他)を、作業者側の端末に表示してもらいたい旨の要求である。
【0037】
図3において、「必要情報要求」および「承認(登録)要求」は承認用インターフェース18を介して、要求者識別ブロック16に伝達される。
要求者識別ブロック16は、例えば、現場作業者が入力時に打ち込んだID番号等により、修正要求を発信した者が適正であるか否かを判断すると共に、修正要求を発信した者が何れの階層に所属するかを判断して、必要情報要求および承認(登録)要求と共に、(要求者識別ブロック16における)判断結果を、承認(登録)必要情報処理ブロック13または修正要求処理ブロック12に伝達する。
【0038】
承認(登録)必要情報処理ブロック13は、必要情報要求および承認(登録)要求を情報記憶処理ブロック11へ伝達し、情報記憶処理ブロック11は承認(或いは登録)に必要な情報および承認(或いは登録)するべき情報を承認(登録)必要情報処理ブロック13に返信する。情報記憶処理ブロック11から承認(登録)必要情報処理ブロック13に返信された情報(承認或いは登録に必要な情報および承認或いは登録するべき情報:図3における「必要情報」)は、信号発生ブロック15、インターフェース18を介して、必要情報要求および承認(或いは登録)要求を発信した者の端末に送信される。
ここで、信号発生ブロック15は、システム制御ユニット10から作業者に対して情報を送信するに際して、当該情報を発信するべき作業者を特定し、当該情報を特定された作業者に対して発信する機能を有している。システム制御ユニット10には、常時、複数の作業者からアクセスがあるため、各アクセスに対応して、正確に情報をアンサーバックする必要がある。そのためのいわゆる「仕分け」作業を行なう機能を有するのが、信号発生ブロック15である。
必要情報要求および承認(或いは登録)要求を発信した者は、表示された必要情報に基いて、承認(或いは登録)に必要なコマンドを入力する。係るコマンドは、承認(或いは登録)要求と同様に、承認用インターフェース18、要求者識別ブロック16を介して、承認(登録)必要情報処理ブロック13に伝達される。
【0039】
情報を修正する旨の修正要求は、承認用インターフェース18、要求者識別ブロック16を介して、修正要求処理ブロック12に伝達される。修正要求処理ブロック12は、修正要求を情報記憶処理ブロック11に伝達する。
情報記憶処理ブロック11は必要な修正を行ない、修正結果を修正要求処理ブロック12に返信する。
後述するように、情報の修正が禁止されている場合(修正要求をした者よりも上位階層に属する作業者により既に承認されている場合)には、該当情報機能検索ブロック11Aにより、修正ができない旨のアンサーバックが、修正要求を行なった作業者の図示しない端末に送信される。
【0040】
情報記憶処理ブロック11において情報が修正された場合には、修正要求に基いて情報が修正された旨は、「修正履歴」として、情報記憶処理ブロック11の修正履歴記憶ブロック11Bに記憶される。ここで、修正履歴記憶ブロック11Bには、情報が修正された旨が全て記録され、そこで記憶されている内容(修正履歴)は書き換えが出来ない様に、或いは、訂正が出来ない様に構成されている。
情報が修正された場合に、当該修正の内容を自動的に全て記録する機能と、記憶されている内容(修正履歴)を書換禁止(或いは訂正禁止)にする機能については、公知のソフトウェア技術或いはハードウェアの活用により、可能である。換言すれば、修正の内容を自動的に全て記録する機能と、記憶されている内容(修正履歴)を書換禁止(或いは訂正禁止)にする機能は、公知技術を適宜選択することにより、実施可能である。
情報記憶処理ブロック11から修正要求処理ブロック12に修正された情報(修正できない旨のアンサーバックを含む:図3における「修正結果」)が返信されると、信号発生ブロック15、インターフェース18を介して、修正要求を発信した者の端末に送信される。
【0041】
次に、主として図4〜図7を参照して、図示の実施形態による製品情報の承認或いは登録と、情報の修正における制御について説明する。
最初に図4を参照して、図示の実施形態において、どの階層の作業者が、承認或いは登録を行なうのかを確定する制御を示している。
【0042】
図4において、ステップS1では、システム制御ユニット10は、インターフェース18を介して、要求者識別ブロック16に、承認(登録)要求や修正要求が送信されたか否かを判断する。
要求者識別ブロック16に承認(登録)要求や修正要求が送信されていない場合には(ステップS1がNO)、ステップS2に進み、制御を終了するか否かを判断する。制御を終了するべき場合には(ステップS2がYES)、そのまま終了する。制御を続行するのであれば(ステップS2がNO)、ステップS1に戻りステップS1以降を繰り返す。
インターフェース18を介して、要求者識別ブロック16に承認(登録)要求又は修正要求が送信された場合には(ステップS1がYES)、ステップS3に進む。
【0043】
ステップS3では、システム制御ユニット10の要求者識別ブロック16により、承認(登録)要求又は修正要求を送信したのが、現場作業者、中間管理者、上級管理者の何れなのかを判断する。
現場作業者が登録要求又は修正要求を送信したのであれば(ステップS3で「現場作業者」)、図5の制御フローチャートに従って制御を行なう。
承認要求または修正要求を送信したのが中間管理者であれば(ステップS3で「中間管理者」)、図6の制御フローチャートに従って制御を行なう。
承認要求または修正要求を送信したのが上級管理者であれば(ステップS3で「上級管理者」)、図7の制御フローチャートに従って制御を行なう。
【0044】
図5のフローチャートに基づいて、現場作業者が登録処理又は修正処理を行なう場合の制御を説明する。
図5において、ステップS11では、現場作業者が登録するべき情報であって且つ登録されていない情報(未登録事項)があるか否かを判断する。
未登録事項があれば(ステップS11がYES)、ステップS12に進み、未登録事項が無ければ(ステップS11がNO)、ステップS14に進む。
【0045】
ステップS12(未登録事項がある場合)では、現場作業者の端末(図示せず)を介して、未登録事項を入力する。そして、入力した未登録事項を登録して(ステップS13)、ステップS18に進む。
ステップS14(未登録事項がない場合)では、情報を修正する旨の要求(修正要求)があるか否かを判断する。修正要求があれば(ステップS14がYES)、ステップS15に進む。一方、修正要求が無ければ(ステップS14がNO)、ステップS18まで進む。
【0046】
ステップS15(修正要求が有る場合)では、上位階層者(この場合は、中間管理者)による承認が完了しているか否かを判断する。
上位階層者による承認がなされていれば(ステップS15がYES)、ステップS16に進む。ステップS16では後述するように修正は不可能であり、現場作業者は、情報の修正をしたいが不可能であった旨を上位階層者(中間管理者)に報告する。そして、ステップS18に進む。
上位階層者による承認がなされていなければ(ステップS15がNO)、ステップS17に進み、必要な修正を行う。現場作業者が情報を修正した旨は、「修正履歴」として、情報記憶処理ブロック11の修正履歴記憶ブロック11Bに記憶される。そして、ステップS18に進む。
【0047】
ステップS18では、登録又は修正に係る処理を終了するか否かを判断する。登録又は修正に係る処理を終了するのであれば(ステップS18がYES)、そのまま終了する。
登録又は修正の処理を継続するのであれば(ステップS18がNO)、ステップS11まで戻り、ステップS11以降を繰り返す。
【0048】
次に、主として図6のフローチャートに基づいて、中間管理者が承認処理又は修正処理を行なう制御を説明する。
図6において、ステップS21では、未承認事項(中間管理者が承認するべき情報であって、未だに承認されていない情報)があるか否かを判断する。
未承認事項があれば(ステップS21がYES)、ステップS22に進み、未承認事項が無ければ(ステップS21がNO)、ステップS24に進む。
【0049】
ステップS22(未承認事項がある場合)では、未承認事項を表示して、表示した未承認事項を承認して(ステップS23)、ステップS28に進む。
ステップS24(未承認事項がない場合)では、修正要求があるか否かを判断する。修正要求があれば(ステップS24がYES)、ステップS25に進み、修正要求が無ければ(ステップS24がNO)、そのままステップS28まで進む。
【0050】
ステップS25(修正要求がある場合)では、上位階層者による承認が完了しているか否かを判断する。
上位階層者による承認がされていれば(ステップS25がYES)、ステップS26に進み、上位階層者による承認がなされていなければ(ステップS25がNO)、ステップS27に進む。
ステップS26(上位階層者が承認済みである場合)では修正することが不可能であり、中間管理者は、上位階層者である上級管理者に対して、修正をしたいが修正が出来なかった旨を報告した後、ステップS28に進む。
一方、ステップS27(上位階層者が承認していない場合)では、中間管理者は、情報に対して修正を行なう。その際にも、中間管理者が情報を修正した旨が、修正履歴として、情報記憶処理ブロック11の修正履歴記憶ブロック11Bに記憶される。そして、ステップS28に進む。さらに、ステップS27では、中間管理者は、自らがした承認の取消を行うことができ、承認の取消は修正履歴として、修正履歴記憶ブロック11Bに記憶される。この承認の取消により、現場作業者は図5に図示するフローチャートに従って登録事項を修正することができる。現場作業者が修正した登録事項は、中間管理者が再承認することができる。
【0051】
ステップS28では、中間管理者による承認処理、又は、中間管理者による修正処理が終了したか否かを判断する。
処理を終了するのであれば(ステップS28がYES)、そのまま終了する。
中間管理者による承認処理、又は、中間管理者による修正処理を続行するのであれば(ステップS28がNO)、ステップS21まで戻り、ステップS21以降を繰り返す。
【0052】
次に、図7のフローチャートに基づいて、上級管理者が情報を承認する処理、又は、情報を修正する処理を行なう場合の制御を説明する。
図示の実施形態において、上級管理者は最も上層の階層に属している。
図7において、ステップS31では、未承認事項(上級管理者が承認するべき情報であって、未だに承認されていない情報)があるか否かを判断する。
未承認事項があれば(ステップS31がYES)、ステップS32に進み、未承認事項が無ければ(ステップS31がNO)、ステップS34に進む。
【0053】
ステップS32(未承認事項がある場合)では、上級管理者の端末(図示せず)に未承認事項を表示する。そして、上級管理者は、未承認事項を承認して(ステップS33)、ステップS36に進む。
ステップS34(未承認事項がない場合)では、情報を修正する旨の要求があるか否かを判断する。修正要求があれば(ステップS34がYES)、ステップS35に進み、修正要求が無ければ(ステップS34がNO)、そのままステップS36まで進む。
【0054】
ステップS35(修正要求がある場合)では、所定の情報の修正を行う。上述した様に、図示の実施形態において、上級管理者は最上方に区分される階層に属しており、上位階層者の承認の有無については判断すること無く、情報を修正することが出来る。さらにステップS35では、上級管理者は、自らがした承認の取消をすることができる。この承認の取消により、中間管理者は、図6に図示するフローチャートに従って承認事項を修正することができ、または、承認の取消を行うことができる。これらの承認の取消は修正履歴として、修正履歴記憶ブロック11Bに記憶される。中間管理者の承認の取消により、現場作業者は図5に図示するフローチャートに従って、登録事項を修正することができる。現場作業者が修正した登録事項は、中間管理者が再承認することができ、さらに、上級管理者が再承認することができる。
上級管理者による情報の修正も、「修正履歴」として、情報記憶処理ブロック11の修正履歴記憶ブロック11Bに記憶される。そして、ステップS36に進む。
ステップS36では、上級者による情報の承認処理、又は、上級者による修正処理を終了するか否かを判断する。処理を終了するのであれば(ステップS36がYES)、そのまま終了する。
上級者による承認処理、又は、情報の修正処理を継続するのであれば(ステップS36がNO)、ステップS31まで戻り、ステップS31以降を繰り返す。
【0055】
「現場作業者」(図5のフローチャート)と、「中間管理者」(図6のフローチャート)では、その者よりも上位階層に区分される作業者によって承認された情報については、修正することが出来ない(図5のステップS16、図6のステップS26参照)。
しかし、上位階層者が承認する前の段階であれば、下位階層に区分される作業者は、情報を修正することが出来る。
例えば、「現場作業者」は、「中間管理者」が承認する前の段階であれば、自分が登録した情報であっても修正することが出来る。もちろん、登録されていない情報であれば、修正した後に、登録することが出来る。「現場作業者」自らが登録した情報の修正は、「更新」という形態で行なわれる。
同様に、「中間管理者」は、「上級管理者」が承認する前の段階であれば、自分が承認した情報であっても修正することが出来る。もちろん、承認されていない情報であれば、修正した後に、承認することが出来る。「中間管理者」自らが承認した情報の修正は、「更新」という形態で行なわれる。
【0056】
図5、図6で示す制御において、上位階層者が承認した後に、下位階層者が修正するべき情報を発見した場合には、修正する権限を有する上位階層者に対して「報告」することにより対応する。
係る報告は、口頭による報告や、作業日報に記載して当該作業日報について上位階層者のチェックを受けることにより、行なわれる。
【0057】
下位階層者が登録或いは承認した情報であっても、上位階層者が承認する以前であれば、当該下位階層者が自ら登録或いは承認した情報を修正出来る様にしたのは、例えば、下位階層者が登録或いは承認した情報であって、単純な入力ミスによる誤って入力された誤情報を修正するのに、全て、上位階層者が行なうようにしたのでは、現場における作業が滞ってしまうからである。
換言すれば、下位階層者が登録或いは承認した情報を修正するのに、全て、上位階層者が行なうようにすると、現場における作業が滞ってしまうため、上位階層者が承認する以前であれば、下位階層者が情報を修正出来る様にしたのである。
【0058】
しかし、下位階層者による修正を無制限に認めてしまうと、上述した「改竄」等の事態に対処することが出来なくなる。
そのため、図示の実施形態では、ある種の「区切り」を設定して、その「区切り」以降は上位階層者でなければ、下位階層者が登録或いは承認した情報は、修正できないようにしている。そして図示の実施形態では、係る「区切り」として、「上位階層者の承認」を採用している。
上位階層者が承認した後は、上位階層者でなければ登録或いは承認された情報を修正できなくした結果、図示の実施形態に係るトレーサビリティシステムに入力された情報を、事後に書き換える(或いは改竄する)ことは、大変に困難である。
【0059】
それに加えて、図示の実施形態では、製品情報を修正した履歴(修正履歴)は、全て残存される。どの様な階層のものでも、修正履歴を訂正、消去することが出来ないように構成されている。
ここで、修正履歴の訂正、消去を禁止することは、従来、公知の技術により実行することが出来る。
修正履歴が全て残っているので、システムに入力された情報を事後に書き換えた場合には、その事実が証拠として半永久的に残存する。そのため、故意、悪意によりシステムに入力された情報を書き換えようとする作業者、管理者に対して、非常に強く抑止力(改竄に対する抑止力)が作用する。
また、過失により誤った情報を入力し、当該誤った情報を正しい情報に書き換えた場合にも、その修正履歴が全て残存するため、システムに入力された情報がどのような修正履歴を経ているのかがわかり、情報自体に信頼性が付加される。
【0060】
図示の実施形態において、修正履歴の訂正、消去を禁止することは、例えば、以下の様なアルゴリズムで行なわれる。
上位階層者により承認されている情報を、下位階層者が修正しようとすれば(図5のステップS15が「YES」、図6のステップS25が「YES」)、システム制御ブロック10における該当情報検索機能ブロック11Aが作動して、当該修正要求があった情報が、既に上位階層者により承認されている情報であるか否かを検索する。
この場合(図5のステップS15が「YES」の場合、図6のステップS25が「YES」の場合)は、既に上位階層者により承認されている情報であるので、情報を修正しようとしている下位階層者(の端末)に対して、例えば、「承認済みの情報です。操作できません。」という画面を表示する旨の制御信号を発信する。
係る画面が表示される結果として、下位階層者は、修正しようとするデータが記憶されているエリアに到達することができず、データを修正することが出来ない。
なお、下位階層者(の端末)に「承認済みの情報です。操作できません。」という画面が表示された後であっても、当該下位階層者は、データを閲覧する機能のみの画面に行き着くことは出来る。ただし、データを閲覧する機能のみの画面では、データを修正することは出来ない。
【0061】
これに加えて、図示の実施形態によれば、最終的には必ず上級管理者或いは最終責任者が承認を行なうので、「承認」された結果に対する信頼度が高くなる。
すなわち、製造現場におけるトップ(或いは、製造者のトップ)となる者が最終的に承認することを要求するので、製造現場のトップが製品に対して承認しているのと同様となり、ユーザーの信頼が向上するという作用効果も奏する。
【0062】
図8は、製造工場(図1参照)の現場作業者に対して、アドバイス情報(例えば、製造作業における各種工程を、正確に遂行するための補助となる内容或いはアドバイスとなる内容を有する情報)を提供する態様を示している。
図8において、ステップS41では、システム制御ユニット10は、工場の現場作業員の図示しない端末に対して、必要なアドバイス情報を表示する。ステップS42では、現場作業者は、端末に表示されたアドバイス情報に従って、必要な作業(工程)を実行する。
ここでアドバイス情報は、「製造に関する情報」、「品質に関する情報」、「洗浄殺菌に関する情報」等である。そしてアドバイス情報は、上述した様に、製造工場における作業を正確に遂行するのに役立つ(或いは補助となる)内容を包含しているので、現場作業者が端末に表示されるアドバイス情報に従って、必要な作業を実行すれば、作業ミスが低減し、正確且つ迅速な作業が期待できる。
【0063】
端末に表示されたアドバイス情報に従って、必要な作業(工程)を実行した現場作業者は、当該端末を介して、アドバイス情報に対応する情報(アンサーバック)を、システム制御ユニット10に送信する。そして、製造工場の現場作業者から、アドバイス情報に対して適正な情報が返送されると、システム制御ユニット10から、現場作業者の端末に対して、次の作業に必要な情報が、順次表示される。現場作業者は、順次表示される情報(アドバイス情報)に従って作業を実行することにより、正確な作業を行なうことが出来る。
ステップS43において、システム制御ユニット10は、現場作業者から送信された情報(アンサーバック)が、アドバイス情報のアンサーバックとして適正であるか否かを判断する。作業者が適正なアンサーバックを行なったのであれば(ステップS43がYES)、ステップS44に進み、行なっていなければ(ステップS43がNO)、ステップS45に進む。
【0064】
ステップS44(適正なアンサーバックを行なった場合)では、システム制御ユニット10は、製造作業を終了するか否かを判断する。作業を終了するのであれば(ステップS44がYES)、そのまま制御を終了する。
一方、製造作業を続行するのであれば(ステップS44がNO)、ステップS41まで戻り、再びステップS41以降を繰り返す。
【0065】
ステップS45(適正なアンサーバックを行なっていない場合)において、システム制御ユニット10は、現場作業者が操作している端末に対して警報信号を発信する。そして、ステップS43に戻り、適正なアンサーバックが行なわれるまで(ステップS43がYESとなるまで)、警報信号を出力する(ステップS43がNOのループ)。
係る制御により、現場作業者が、単純ミス、その他の原因により、端末に表示されたアドバイス情報のアンサーバックとして、適正ではない情報を誤入力した場合(適正なアンサーバックを行なわない場合)に、システム制御ユニット10から警報(アラーム)信号が出力され、現場作業者の端末画面には、警報が表示されることにより、製造工場2から不正確な情報がトレーサビリティシステムに入力されてしまうことを事前に防止することが出来る。以って、不正確な情報が入力されたことに起因して、不都合な事態(不良品の発生等)が発生した際に、製品の追跡が正確に出来なくなってしまうという事態を防止している。
【0066】
以上説明したように、図示の実施形態によれば、上位階層者が承認した後は上位階層者でなければ登録或いは承認された情報を修正できない様に構成し、且つ、製品情報を修正した履歴(修正履歴)を全て残存する様に構成したことにより、故意、悪意により、システムに入力された情報を書き換えること(改竄)に対して、強い抑止力を発揮する。
そして、システムに入力された情報の書換え(改竄)が強力に抑止されることにより、図示の実施形態によれば、製品の追跡が正確且つ迅速に行なわれる。
【0067】
さらに、現場作業者に対して製造現場における作業を実行するのに必要な情報(アドバイス情報)を出力する様に構成しているので、現場作業者は、業務遂行の補助となる様な内容(アドバイスとなる内容)の情報を参照しつつ作業を行なうことが出来る。したがって、製造工程における作業ミスが低減する。
また、図示の実施形態では、前記作業に必要な情報(アドバイス情報)に対して現場作業者から適正な情報(適正なアンサーバック)が返信されない場合に、当該現場作業者の端末に警報(アラーム)信号を出力する機能を有する様に構成されており、不正確な情報がトレーサビリティシステムに入力されてしまうことを事前に防止することが出来る。
【0068】
この様に、図示の実施形態によれば、不正確な情報が入力されることが防止されることにより、製品の追跡が正確に出来なくなってしまう事態が防止される。
そのため、図示の実施形態では、仮に製品に不都合が発生したとしても、当該製品に係る種々の情報から不都合発生の原因を推定して、当該製品と同様な不都合を発生している可能性が高い製品を特定して、その流通を停止して、回収することが可能である。
さらに、不都合発生の原因を推定して、当該製品と同様な不都合を発生している可能性が高い製品を特定して回収すれば良いため、不都合が発生する可能性が低い製品も含めた全数回収を行なう必要がなく、不都合が発生した際の損失を必要最低限に抑えることが出来る。
一方、不都合発生の原因をより高い精度で推定することが出来る可能性があるので、当該製品と同様な不都合を発生している可能性が高い製品を漏れなく回収して、不都合を発生した製品が一般需要者によって消費されてしまう可能性を極めて小さくすることが可能になる。
【0069】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0070】
1・・・原材料貯蔵倉庫
2・・・製造工場
3・・・出荷部
6・・・倉庫・工場間原材料搬送機構
7・・・工場・出荷部間製品搬送機構
10・・・システム制御ユニット
11・・・情報記憶・処理ブロック
12・・・修正要求処理ブロック
13・・・承認(登録)必要情報処理ブロック
14・・・閲覧処理ブロック
15・・・信号発生ブロック
16・・・要求者識別ブロック
30・・・入力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品製造現場に必要な情報を出力し且つ製品製造現場から記録するべき情報が入力される制御装置を有し、
製品製造現場は複数の階層に区分けされて制御装置に接続されており、
制御装置は、製品製造現場から制御装置に入力されるべき情報が、各階層で承認または登録されていない場合には、承認または登録するべき階層に対して、未承認または未登録の情報が存在することを示す信号を出力する機能と、
上位の階層で承認された情報について下位の階層から修正要求があった場合に、係る修正を禁止する機能と、
各階層で承認または登録された情報を修正した修正履歴を全て記憶装置で保存する機能を有することを特徴とするトレーサビリティシステム。
【請求項2】
制御装置は、最上位の階層から修正要求があった場合には、何れの階層で承認または登録された情報であっても修正する機能を有している請求項1のトレーサビリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−177982(P2012−177982A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39484(P2011−39484)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】