説明

トレー及びその収納棚

【課題】使用時は高く、不使用時は低く積み重ねることができるようにしたトレーを提供する。
【解決手段】底面板2と前後左右3,4の側面板とを備え、それらにより囲まれた内部に、上方に開口する物品収納空間が形成された入れ子状に積み重ね可能なトレー1において、入れ子状に積み重ね可能なトレー1における左右の側面板4の上端部内面に、外向きの係止段部11を設け、この係止段部11に、下位のトレー1に対し90度向きを異ならせた上位のトレー1における前後の側面板3の下端が係止されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時は高く、不使用時は低く積み重ねることができるようにしたトレー及びその収納棚に関する。
【背景技術】
【0002】
このような、積み重ね可能、いわゆるスタッキング可能な従来のトレーとしては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−178454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の特許文献1に記載されているトレーは、単にトレーの不使用時において、複数のトレーを入れ子状に低く積み重ねることができるようにしたもので、物品をトレーに収容した使用状態で高く積み重ねることはできない。
【0005】
物品をトレーに収容した状態で積み重ねるには、トレーを平面視長方形とし、このトレーを交互に90度向きを異ならせて、下位のトレーの上端に、上位のトレーの下面を載置するようにすればよいが、このようにすると、上下のトレーを位置決めして積み重ねることができないだけでなく、積み重ねたトレーが位置ずれして崩れる恐れがある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、使用時は高く、不使用時は低くなるように、簡単に積み重ねることができるようにしたトレー及びその収納棚を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明のトレーは、
底面板と前後左右の側面板とを備え、それらにより囲まれた内部に、上方に開口する物品収納空間が形成された入れ子状に積み重ね可能なトレーにおいて、
前記前後の側面板と左右の側面板とのいずれか一方の上端部内面に、外向きの係止段部を設け、この係止段部に、下位のトレーに対し90度向きを異ならせた上位のトレーにおける前後左右の側面板のいずれか一方の下端が係止されるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、トレーの不使用時には、複数のトレーを同じ向きで入れ子状に積み重ねることにより、積み重ね寸法を小さくして効率よく保管することができる。また、トレーに物品を収容した使用時においては、下位のトレーに対し上位のトレーを90度向きを異ならせて、下位のトレーにおける側面板の上端部の係止段部に、上位のトレーの側面板の下端を係止することにより、上下のトレーを、高さを高くして積み重ねることができる。この際、上下のトレーが位置決めされるので、簡単に積み重ねることができるとともに、位置ずれして崩れる恐れもなく、使い勝手のよいトレーを提供することができる。
【0008】
本発明のトレーは、
前後の側面板と左右の側面板との少なくともいずれか一方の対向面の上下方向の中間部内面に、下位のトレーと同方向に向けた上位のトレーにおける前後左右の側面板のいずれかの下端が係止される内向きの係止段部を設けたことを特徴としている。
この特徴によれば、上下のトレーを入れ子状に積み重ねた際に、上位のトレーが、下位のトレーの内向きの係止段部の位置までしか嵌合されないので、上下のトレー同士が深く嵌合して積み重ねられるのが防止され、上下のトレーの分離が容易となる。
【0009】
本発明のトレーは、
前後左右の側面板の上端に、外向きのフランジを連設したことを特徴としている。
この特徴によれば、外向きのフランジを把手として使用することができるので、トレーの持ち運びが容易となる。
【0010】
本発明のトレーの収納棚は、
左右の側板の対向面に、トレーを載置可能な複数の棚板またはトレーの外向きのフランジを支持可能な支持レールを、上下位置を変更可能に取り付けたことを特徴としている。
この特徴によれば、複数の棚板または支持レールの上下位置を変更することにより、単品のトレーはもとより、積み重ねた複数のトレーを効率よく支持して保管することができる。
【0011】
本発明のトレーの収納棚は、
支持レールを、正面視内向きコ字状をなすものとし、左右の支持レールにおける下片により、トレーにおける互いに対向する側面板の上端の外向きのフランジを、前後方向にスライド可能に支持しうるようにしたことを特徴としている。
この特徴によれば、左右の支持レールに沿ってトレーを前後にスライドさせることにより、収納棚へのトレーの出し入れを容易に行うことができる。
【0012】
本発明のトレーの収納棚は、
支持レールの下片の前端に、上向きのストッパ片を設けたことを特徴としている。
この特徴によれば、地震等の振動により収納棚がぐらついても、左右の支持レールにより支持されたトレーが前方より落下するのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のトレーの平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う拡大縦断面図である。
【図3】同じく、III−III線に沿う拡大縦断面図である。
【図4】トレーを積み重ねる要領を示す斜視図である。
【図5】トレーを同方向に向けて積み重ねた状態の、図2と同部位の縦断面図である。
【図6】同じく、トレーを同方向に向けて積み重ねた状態の、図3と同部位の縦断面図である。
【図7】トレーを交互に90度向きを異ならせて積み重ねた状態の縦断面図である。
【図8】本発明のトレーの収納棚の正面図である。
【図9】同じく、支持レールと、その側板への取り付け例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るトレー及びその収納棚を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、例えば学校等において、生徒が体操服等を収納するのに用いられる本発明のトレー1の平面図、図2は、図1のII−II線に沿う拡大縦断面図、図3は、同じくIII−III線に沿う拡大縦断面図、図4は斜視図である。なお、便宜上、以下の説明において、前後方向は図1についていう。すなわち、図1の上方を前、下方を後、左方を左、右方を右として説明する。
【0016】
このトレー1は、底面板2と前後及び左右の側面板3、4よりなる平面視概ね方形の箱状をなし、内部には、上面が開口する物品収納空間が形成されている。また、底面板2には、通気性を良好とするために、多数の長孔5が形成されている。
【0017】
前後左右の側面板3、4の上縁には、互いに連続するほぼ倒立L字状断面の外向フランジ6が、一体的に連設されている。前後の側面板3、3の中央部には、内向きの突出部7が形成され、この突出部7と対向する外面には、内向き凹入する凹部8が形成されている(図4参照)。トレー1を積み重ねる際、下位のトレー1の突出部7に上位のトレー1の凹部8が上方より嵌合されるようになっている。なお、この嵌合を容易とするために、突出部7と凹部8の幅を上方に向かって漸次小さくなるようにしてある。
【0018】
左右の側面板4、4における外向フランジ6の直下の中央上部には、把持孔9、9が穿設されている。前後左右の側面板3、4は、上下のトレーを入れ子状に嵌合しうるように、上方に向かって漸次拡開するように若干傾斜させてある。
【0019】
前後の側面板3、3における突出部7を含む内面の上下方向の中央部と、左右の側面板4、4における上下方向の中央部の内面とには、前後左右の側面板3、4を、その下半部の幅寸法が上半部のそれよりも若干小なるように内向きに若干折曲することより、前後左右の側面板3、4の内面には、内向きの第1係止段部10が、同じ高さで連続するように形成されている。
【0020】
図5に示すように、上下のトレー1を同じ向きで積み重ねた際に、上位のトレー1の下半部が、下位のトレー1の上半部に嵌合されて、上位のトレー1の前後左右の側面板3、4の下端が、下位のトレー1の前後左右の側面板3、4の第1係止段部10に係止されるようになっている。この際、上下のトレー1が密着するのを防止し、互いの挿脱を容易とするために、前後左右の側面板3、4の上半部の内面間の幅寸法を、前後左右の側面板3、4の下半部の外面間の幅寸法よりも僅かに大としてある。
【0021】
図3及び図4に示すように、左右の側面板4、4の上端部の内面には、その長手方向の両端部を除いた部分を外向きに折曲することにより、前後方向に長い外向きの第2係止段部11、11が形成されている。図2及び図3に示すように、左右の側面板3、3における凹部8を除いた部分の下半部の外面間の寸法L1は、前後の側面板4、4における第2係止段部11よりも上方の対向面間の寸法L2よりも僅かに小とされている。
【0022】
次に、前述の実施例のトレー1の使用方法について説明する。図4〜図6に示すように、トレー1を使用しないときには、上下複数のトレー1を同じ向きとして、すなわち、この例では上下のトレー1の突出部7と把持孔同士が同じ向きとなるように積み重ねることにより、下位のトレー1における前後左右の側面板3、4の上半部内に、上位のトレー1における前後左右の側面板3、4の下半部が入れ子状に嵌合され、下位のトレー1の内向きの第1係止段部10に、上位のトレー1の側面板3、4の下端が当接して係止される。このようにして、複数のトレー1の下半部を入れ子状に積み重ねることにより、トレー1の積み重ね寸法が小さくなり、複数のトレー1を効率よく保管することができる。
【0023】
一方、トレー1の使用時、すなわち、トレー1に物品を収容した際には、図7に示すように、上下複数のトレー1を、交互に90度向きを異ならせて積み重ねる。すると、下位のトレー1の左右の側面板4の上端部に、上位のトレー1の前後の側面板3の下端部が嵌合されて、上位のトレー1の下端が、下位のトレー1の第2係止段部11に係止される。これにより、上下のトレー1における底面板2の対向面間に大きな空間が形成され、下位のトレー1に収容した物品が、上位のトレー1の底面板2により押圧されるのが防止されるとともに、上下のトレー1が位置決めされて積み重ねられるので、位置ずれして崩れる恐れもない。
【0024】
以上説明したように、前述の実施例のトレー1においては、トレー1の不使用時には、複数のトレー1を同じ向きで入れ子状に積み重ねることにより、積み重ね寸法を小さくして効率よく保管することができ、また、トレー1の使用時は、上下複数のトレー1を、交互に90度向きを異ならせて積み重ねるだけで、上下のトレー1における底面板2の対向面間に、下位のトレー1に収容した物品を押圧しない大きさの空間が形成され、しかも上下のトレー1が位置ずれすることもないので、使い勝手のよいトレー1を提供することができる。
【0025】
また、前後左右の側面板3、4の上下方向の中央部内面に、内向きの第1係止段部10を設け、この第1係止段部10に、同方向に向けた上位のトレー1の前後左右の側面板3、4の下端が当接するようにしてあるので、上下のトレー1同士が深く嵌合して積み重ねられるのが防止され、従って上下のトレー1の分離が容易となる。
【0026】
図8は、前述の実施例のトレーを収納するための、学校等で使用される収納棚の正面図である。この収納棚12は、前面が開口された縦長の箱形をなし、左右の側板13、13と中央部の中間側板14との間には、トレー1の収納空間Sが形成されている。
【0027】
右方の側板13と中間側板14との対向面には、互いに対向する前後1対ずつのダボ孔15が、上下方向に所定間隔おきに形成され、左右に対向するダボ孔15に嵌合された支持ピン16により、棚板17が、上下位置変更可能に支持されている。棚板17には、単品または複数積み重ねたトレー1が載置されるようになっている。18は、各トレー1の前後両面の凹部8に貼着されたネームプレートである。なお、ダボ孔15に代えて雌ねじ孔とし、この雌ねじ孔に、支持ピンの先端部に形成した雄ねじを螺合させてもよい。
【0028】
図9にも示すように、左方の側板13と中間側板14との対向面(図9においては、中間側板は図示略)には、互いに対向する前後1対ずつの雌ねじ孔19、19が、上下方向に所定間隔おきに形成され、この雌ねじ孔19を利用して、左方の側板13と中間側板14との対向面には、トレー1における互いに対向する外向フランジ6を支持可能な左右1対ずつの支持レール20、20が、複数の皿ねじ21をもって、上下位置を変更可能に複数取り付けられている。左右の支持レール20は、正面視内向きコ字状をなし、その下片20aにより、トレー1の外向フランジ6が前後にスライド可能に支持されるようになっている。
【0029】
支持レール20の下片20aの前後両端には、外向フランジ6が前後方向に大きくスライドするのを規制する上向きのストッパ片22、22が連設され、左右の支持レール20により支持されたトレー1が、前方より落下したり、後方に移動したりするのが防止されるようになっている。また、支持レール20の上片20bの前後の端部には、切欠部23が形成され、支持レール20への外向フランジ6を挿脱を容易に行いうるようにしてある。なお、後部の切欠部23は、支持レール20を左右勝手違いで使用するときのために形成されている。
【0030】
このような収納棚12を使用すると、右方の複数の棚板17の上下位置を変更することにより、単品のトレー1はもとより、使用時、不使用時に積み重ねた複数のトレー1を、効率よく載置して保管することができる。
【0031】
また、左方の側板13と中間側板14に取り付けた複数の支持レール20により、各トレー1の外向フランジ6を支持して、出し入れ自在に容易に収納することができる。この際、支持レール20の上下位置を変更することにより、前述と同様に、単品または複数積み重ねたトレー1を効率よく支持して保管することもできる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
前記実施例では、内向きの第1係止段部10を、前後左右の側面板3、4の内面に連続するように設けたが、前後の側面板3と左右の側面板4とのいずれか一方の対向面のみに設けてもよい。
【0034】
外向フランジ6を把手として使用しうるので、把手孔9を省略してもよく、また、外向フランジ6を省略して、把手孔9のみとすることもある。さらに、前後の側面板3に形成した突出部7と凹部8も省略してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 トレー
2 底面板
3 側面板
4 側面板
5 長孔
6 外向フランジ
7 突出部
8 凹部
9 把持孔
10 第1係止段部
11 第2係止段部
12 収納棚
13 側板
14 中間側板
15 ダボ孔
16 支持ピン
17 棚板
18 ネームプレート
19 雌ねじ孔
20 支持レール
20a 下片
20b 上片
21 皿ねじ
22 ストッパ片
23 切欠部
S 収納空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面板と前後左右の側面板とを備え、それらにより囲まれた内部に、上方に開口する物品収納空間が形成された入れ子状に積み重ね可能なトレーにおいて、
前記前後の側面板と左右の側面板とのいずれか一方の上端部内面に、外向きの係止段部を設け、この係止段部に、下位のトレーに対し90度向きを異ならせた上位のトレーにおける前後左右の側面板のいずれか一方の下端が係止されるようにしたことを特徴とするトレー。
【請求項2】
前後の側面板と左右の側面板との少なくともいずれか一方の対向面の上下方向の中間部内面に、下位のトレーと同方向に向けた上位のトレーにおける前後左右の側面板のいずれかの下端が係止される内向きの係止段部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のトレー。
【請求項3】
前後左右の側面板の上端に、外向きのフランジを連設したことを特徴とする請求項1または2に記載のトレー。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のトレーを収納する収納棚であって、
左右の側板の対向面に、トレーを載置可能な複数の棚板またはトレーの外向きのフランジを支持可能な支持レールを、上下位置を変更可能に取り付けたことを特徴とするトレーの収納棚。
【請求項5】
支持レールを、正面視内向きコ字状をなすものとし、左右の支持レールにおける下片により、トレーにおける互いに対向する側面板の上端の外向きのフランジを、前後方向にスライド可能に支持しうるようにしたことを特徴とする請求項4に記載のトレーの収納棚。
【請求項6】
支持レールの下片の前端に、上向きのストッパ片を設けたことを特徴とする請求項5に記載のトレーの収納棚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−95476(P2013−95476A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239694(P2011−239694)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】