説明

トンネル栽培方法と、それに使用されるマルチフィルム及びトンネル栽培用フィルム及びトンネル栽培装置

【課題】 従来は、畑での栽培位置によって植物の生育に差が出たり、トンネル内の温度調節が困難で葉焼けを起こしたりしていた。
【解決手段】 本件トンネル栽培方法は、マルチフィルムで被覆した土壌で植物を数条に栽培し、その植物の上にベタ掛けフィルムを掛け又は掛けずに、その上方にトンネル栽培用フィルムを架設してトンネルを形成し、そのトンネル内で前記植物を栽培するトンネル栽培方法において、最外条から前記マルチフィルムの埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条間の間隔よりも広くして栽培するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物のトンネル栽培方法、特に、厳寒期や寒冷地で大根(越冬大根)を栽培するのに適したトンネル栽培方法と、それに使用されるマルチフィルム及びトンネル栽培用フィルム及びトンネル栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、千葉県で、11月〜1月蒔き(2〜4月穫り)の大根を栽培(越冬栽培)する場合、千葉県北部では、図6に示すように、畑の畝AにマルチフィルムBを被せ、マルチフィルムBに四条に開口された植栽孔Cに大根Dの種を播き、播種した畝Aの上にシートEを被せ(ベタ掛けし)、その上方に円弧状の多数本の枠Hを略一定間隔で差込み、それにトンネル用フィルムIを架設してトンネルFを形成して栽培しているのが慣行である。しかし、この栽培方法によっても、千葉県北部では大根を十分に成長させることは困難であり、2〜4月穫りの大根栽培は殆ど行われていない。一方、千葉県内の暖地でこの栽培方法によって大根を栽培する場合は前記ベタ掛けをせずに栽培する。前記マルチフィルムBは、図7に示すように、幅方向両端部分の埋め代Gを畝Aの両外側に埋めて固定してあり、マルチフィルムBに四条に開口された植栽孔Cは、図8に示すように、各条間の間隔Kを等間隔としてある。この場合、最外条の植栽孔Cとその外側の埋め代Gの内側部分との間の間隔Jが、前記各条間の間隔Kより狭くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記図6に示す従来の栽培方法には次のような課題がある。
(1)最外条の植栽孔の植物が内側の条の植物よりも生育が悪く、トンネル中央部分の大根が先に肥大し、トンネル両端側の大根は遅れて肥大する傾向にある。したがって、全ての条の大根を一斉に収穫することはできない。このため収穫作業が二度手間になり、面倒である。また、等級が均一とならず、出荷も遅れるため、販売価格が低下し、生産者の収益が向上しにくい。
(2)トンネルの換気を怠ると、陽光が強い場合にはトンネル内の熱気と湿気で植物が葉焼けする恐れがあるため、それを避けるためにはトンネルの裾を巻上げて換気を行う必要があり、手間がかかる。
(3)密閉したトンネルは、図9に示すように、春先などに吹く強風を受けると、その風圧によってトンネル内に発生する揚力を逃がすことができず、トンネルのフィルムが破損することがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本件発明者は、前記した植物の成長(肥大)のずれを解消するべく、長年に亘って鋭意研究を重ねた結果、トンネル栽培した数条の植物が略均一に成長して同一時期に収穫できるようにすることに成功し、本件発明のトンネル栽培方法と、それに使用されるマルチフィルム、トンネル栽培用フィルム、トンネル栽培装置を完成した。
【0005】
この研究にあたっては次のようなことについて重点的に研究をした。
(1)地温確保のためのマルチフィルムの植栽孔の配置と間隔に関わる新規設計およびフィルムの無滴化処理効果の検討。特に、植栽孔の周囲面積(被熱面積)の配分効果の想定(生育前半までの有効性を探る)。
(2)ベタ掛けフィルムの生分解性フィルムを含めた材質選択による保温性向上に対する検討。
(3)トンネル栽培用フィルムの保温性を軸とした材質選択と換気孔の新規設計によるトンネル内の空気の対流発生誘起と温度の撹拌効果に関わる実験検討。
(4)生育中盤のベタ掛けフィルムの除去時期と後半におけるトンネルの裾換気時期の判断。
(5)均一化に対する複合組合せ効果の確認とトンネル設置の方向性(方角)による影響の有無調査。
【0006】
本件発明のトンネル栽培方法は、マルチフィルムで被覆した土壌で植物を数条に栽培し、その植物の上にベタ掛けフィルムを掛け又は掛けずに、その上方にトンネル栽培用フィルムを架設してトンネルを形成し、そのトンネル内で前記植物を栽培するトンネル栽培方法において、最外条から前記マルチフィルムの埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条間の間隔よりも広くして栽培するものである。また、トンネルの上部に、その長手方向に所定間隔で換気孔を開口した。
【0007】
前記栽培に使用するマルチフィルムは、埋め代の内側に数条の植栽孔を開口し、最外条の植栽孔から埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条の植栽孔間の間隔よりも広くしてある。
【0008】
前記栽培に使用するトンネル栽培用フィルムは、架設時にトンネルの上部(頂部又は頂部付近)となる箇所にフィルムの長手方向に所定間隔で換気孔を開口してある。
【0009】
本件発明のトンネル栽培装置は、前記マルチフィルムを土壌に被せて、埋め代の内側に開口された数条の植栽孔のうち、最外条の植栽孔から埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条の植栽孔間の間隔よりも広くし、その上方に前記トンネル栽培用フィルムを被せて、頂部又は頂部付近に換気孔を備えたトンネルとした。
【発明の効果】
【0010】
本件出願のトンネル栽培方法は、次のような効果がある。
(1)最外条からマルチフィルムの埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条間の間隔よりも広くして栽培するので、最外条の周囲の地温が十分に確保され、最外条で栽培した植物と内側の条の植栽孔で栽培した植物とを均一に成長させることができ、栽培した植物の一斉収穫が可能となる。また、収穫した植物の等級が均一となり、早期出荷も可能となるため、高値で販売でき、生産者の収益が向上する。
(2)トンネルの上部に、その長手方向に所定間隔で換気孔を開口したので、自動的に換気が行われる。このため、従来のように、定期的にトンネルの裾を巻上げて換気を行う必要がなく、手間が掛からない。また、トンネル内の湿度も高くなり過ぎないため葉焼け等が低減する。更に、強風が吹いても、風圧によってトンネル内に発生する揚力は図4のように換気孔からトンネル外へ抜け出るため、トンネルのフィルムが破損する事もない。
【0011】
本件出願のマルチフィルムは次のような効果がある。
(1)埋め代の内側に数条の植栽孔を開口し、最外条の植栽孔から埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条の植栽孔間の間隔よりも広くしたので、このマルチフィルムを使用すれば、最外条の植栽孔の周囲の地温が十分に確保され、最外条で栽培する植物と内側の条の植栽孔で栽培する植物が均一に成長し、条の位置によって成長に差が出ることがなく、栽培した植物の一斉収穫が可能となる。
(2)隣合う条の植栽孔を千鳥配列に開口した場合は、千鳥配列にしない場合よりも植栽孔の周囲面積(被熱面積)を広く確保することができ、植物の生育に好適になる。
【0012】
本件出願のトンネル栽培用フィルムは次のような効果がある。
(1)トンネルの上部となる箇所にフィルムの長手方向に所定間隔で換気孔を開口したので、このトンネル栽培用フィルムを用いてトンネルを架設すれば、その換気孔によって自動的にトンネル内の換気が行われ、トンネルの裾を巻上げて換気を行う必要がないため手間がかからず、作業が容易になる。
(2)換気孔によってトンネル内の湿気が自動的に抜けるため、葉焼け障害等の熱気と湿気による被害が低減される。
(3)強風が吹いても、風圧によってトンネル内に発生する揚力は換気孔からトンネル外へと抜け出るため、トンネルが破損する事もない。
【0013】
本件出願のトンネル栽培装置は次のような効果がある。
(1)前記マルチフィルムを土壌に被せて植物を栽培し、その植物の上方ベタ掛にフィルムを掛けて又は掛けずに、上方に前記トンネル栽培用フィルムを架設してトンネルを形成したため、上記マルチフィルムとトンネル栽培用フィルムの利点を活かしたトンネル栽培装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態1)
本発明のトンネル栽培方法の一例を以下に説明する。本発明のトンネル栽培方法で栽培できる植物は、大根、人参、レタス等々、各種植物であるが、ここでは大根を栽培する場合を例として図1〜図5に基づいて説明する。
【0015】
このトンネル栽培方法での大根の栽培は次のようにして行う。
(1)図1、図3に示すように、畑等の土壌1の土を盛り上げて、上面を平らにした平畝(ベッド状の畝)2を形成し、その平畝2をマルチフィルム4で被覆し、埋め代11を土中に埋めてマルチフィルム4を固定する。この場合、図2に示すように、予め植栽孔5が開口されているマルチフィルム4を平畝2に張って、張り終えると自動的に植栽孔5が数条形成されるようにするか、植栽孔5が開口されていないマルチフィルム4を張り、張ってから植栽孔5を数条、開口するようにしてもよい。いずれの場合も、四条の植栽孔5は、マルチフィルム4の埋め代11の内側端部11aとマルチフィルム4の最外条との間隔W1が、マルチフィルム4の最外条と内側の条との間隔W2より広くなるようにし、マルチフィルム4の最外条と内側の条との間隔W2がマルチフィルム4の内側の条同士の間隔W3より広くなるようにする。
(2)大根の種を各植栽孔5内に播種する。播種の時期は品種によっても異なるが、越冬大根の場合は10月〜2月の寒冷期となる。一つの栽培孔5内に5、6粒を播種する。
(3)図1、図3に示すように、大根3を播種した平畝2の上から生分解性フィルム製のベタ掛けフィルム6を必要に応じて被せる。
(4)図1、図3に示すように、大根3を播種した平畝2の上方にトンネル10を架設する。この場合、平畝2の上方に多数本の枠7を略均一間隔で配置し、それの上にトンネル栽培用フィルム8を張架してトンネル10を設ける。この場合、トンネル10の上部となる位置に予め換気孔15が開口されているフィルムを使用するか、換気孔15が開口されていないフィルムを使用して換気孔15を開けるかする。このトンネル10内で大根を発芽させ、育成する。
(5)発芽、育成した大根3を間引きながら、一本立ちさせる。大根3がある程度成長し、気温が上昇する温暖期(3月中旬〜下旬)になったら、ベタ掛けフィルム6及びトンネル10を外す。
(6)大根3の根部が十分に肥大したら、大根3を収穫する。この場合、各条の大根が同一時期に収穫可能となるので、全ての条の大根を同時に収穫する。
【0016】
土壌1は、畑には限られず、土を有する他の場所でもよい。土壌1を平畝2とする場合はその形状、幅、長さ、高さ等は、任意とすることができ、例えば、幅150cm、長さ50m、高さ15cmとすることができる。また、畝は平畝には限られず、山状にした高畝であってもよい。
【0017】
(本発明のマルチフィルムの実施例)
本発明のマルチフィルムの一例を以下に説明する。マルチフィルム4は図1〜図3に示すように平畝2の表面を被覆可能な幅と長さのフィルムであって、幅方向両端部に埋め代11が形成され、埋め代11の内側に植栽孔5が数条に開口され、しかも、隣合う条の植栽孔5が千鳥配列で開口されている。本例では図に示すように四条に開口されている。マルチフィルム4には太陽光の透過率が良く、赤外線を吸収し易い透明又はグリーンの無滴フィルムを用いる事が望ましいが、他の任意の材質及び色のフィルムを用いることもできる。マルチフィルム4の幅は例えば210cmとすることができるが(図5参照)、これに限られず任意の幅とすることができる。埋め代11は図3に示すように土中に埋めて平畝2に被せたマルチフィルム4を固定するためのものであり、その幅は例えば30cm程度が適する(図5参照)。
【0018】
各植栽孔5は図2に示すように、埋め代11の内側に四条に所定間隔で開口されており、その直径は栽培する大根3の栽培に適する大きさ、例えば直径80mm程度とすることができる(図5参照)。各条の植栽孔5は図2、図3に示すように、マルチフィルム4の埋め代11の内側部分11aとマルチフィルム4の最外条との間隔W1が、マルチフィルム4の最外条の植栽孔5と内側の条との間隔W2より広くなるようにし、マルチフィルム4の最外条と内側の条との間隔W2がマルチフィルム4の内側の条同士の間隔W3より広くなるようにしてある。例えば、図5に示すように、間隔W1を33cm、W2を30cm、間隔W3を24cmとすることができる。従って、本発明のマルチフィルム4は、最外条の植栽孔5の周囲面積が内側の条の植栽孔5の周囲面積よりも広くなるようにしてある。そのため、最外条の植栽孔5で栽培される植物を保温するための面積(被熱面積)が十分に確保でき、マルチングの被熱効果が各植栽孔5で栽培する大根3に均一に配分される。
【0019】
従って、図5に示すように、例えば本発明のマルチフィルム4の幅を210cmとし、埋め代11の幅を30cmとして、埋め代11の内側部分11aとマルチフィルム4の最外条の植栽孔5との間隔W1を33cm、マルチフィルム4の最外条と内側の条との間隔W2を30cm、マルチフィルム4の内側の条同士の間隔W3を24cmとした場合も、2つの最外条の植栽孔5と、1つの内側の条の植栽孔5と、埋め代11の内側部分11aとによって形成される菱形の面積S1は1575cm2であり、2つの内側の条の植栽孔5と、1つの別の内側の条の植栽孔5と、2つの最外条の植栽孔5とによって形成される菱形の面積S1は1350cm2であるため、最外条の植栽孔5の周囲面積が内側の条の植栽孔5の周囲面積よりも広くなるようにしてある。
【0020】
植栽孔5は四条には限られず、任意の条数開口することもできる。また、隣合う条の各植栽孔5同士の配列も、千鳥配列に限らず、横並びとか、他の任意の配列とすることができる。
【0021】
(本発明で使用されるベタ掛けフィルムの実施例)
前記ベタ掛けフィルム6は図1、図3に示すように、栽培中の大根3の上に直に掛けて(ベタ掛けして)、地面を保温するものである。このベタ掛けフィルム6には透光率、保温性、吸湿性、通気性等に優れた生分解性フィルムを用いることが望ましいが、不織布等、任意の素材のものを用いることができる。生分解性フィルムとしては、例えば、アイオン株式会社製の「タフベル6000」等が挙げられる。
【0022】
(本発明のトンネル栽培用フィルムの実施例)
本発明のトンネル栽培用フィルム8は、平畝2の上方に多数本の枠7を略均一間隔で配置し、それの上に張架してトンネル10を形成するためのフィルムである。トンネル栽培用フィルム8には保温効果の高いビニールフィルムや、無滴作用及び散乱光効果があり、汚れにくく、作業性及び耐久性の良いユーラックフィルム等、任意の素材のものを用いることができる。このトンネル栽培用フィルム8の厚さは、0.75mm程度が望ましいが、任意の厚さとすることができる。トンネル栽培用フィルム8には、枠7の上に被せてトンネル10を形成した際にトンネル10の上部(頂部又は頂部付近)となる箇所にフィルムの長手方向に所定間隔で換気孔15が開口されている。換気孔15の直径は例えば50mm、換気孔15同士の間隔は25cm〜35cmとすることができるが、これには限られず、任意の数値とすることもできる。換気孔15を備えることによって、換気が行われるのみならず、図4に示すように、強風が吹いても風圧によってトンネル10内に発生する揚力は換気孔15からトンネル10外へと抜け出るため、トンネル10が破損する事がなくなる。また、日中はトンネル10内の過度の温度、湿度の上昇を抑え、夜間はトンネル10内の空気を対流させて撹拌し、トンネル10内の温度を均一化して、急速な温度の下降を防ぐことができる。
【0023】
(本発明のトンネル栽培装置の実施例)
本発明のトンネル栽培装置は、前記したマルチフィルム4及びベタ掛けフィルム6及びトンネル栽培用フィルム8を用いて形成される。本発明のトンネル栽培装置は、図1に示すように、前記マルチフィルム4を平畝2に被せて、各植栽孔5内に大根3を播種し、大根3を播種した平畝2の上から生分解性フィルム製の前記ベタ掛けフィルム6を必要に応じて被せ、平畝2の上方に多数本の枠7を略均一間隔で配置し、それの上に前記トンネル栽培用フィルム8を張架してトンネル10を設けたものである。
【0024】
マルチフィルム4の埋め代11の内側に四条に開口された各植栽孔5は、前記同様図2、図3に示すように、マルチフィルム4の埋め代11の内側端部11aとマルチフィルム4の最外条との間隔W1が、マルチフィルム4の最外条の植栽孔5と内側の条との間隔W2より広くなるようにし、マルチフィルム4の最外条と内側の条との間隔W2がマルチフィルム4の内側の条同士の間隔W3より広くなるようにしてある。
【0025】
トンネル10の上部(頂上又はその付近)には、前記同様図1、図3に示すように長手方向に所定間隔で換気孔15が複数個開口されている。
【0026】
(実験結果)
前記図1〜図5に示す本発明のトンネル栽培装置を用いて、図6〜図9に示す従来のトンネル栽培装置と比較させて実際に大根3を栽培する実験を行った結果、大根の根径は以下の表1に示す数値に、根長は以下の表2に示す数値となった。なお、トンネル10の長さを50m、畝2の幅を150cmとし、播種から90日後の大根3について計測した。この実験では、図3、図8に示すように、四条の植栽孔5(C)を、東から西へ順に外側E、内側E、内側W、外側Wとして結果を計測した。次の各表において、表の左部(表1、2中「従来」部)は、従来のトンネル栽培装置によって成長させた各条の大根の根径及び根長、表の右部(表1、2中「本発明」部)は、本発明のトンネル栽培装置によって成長させた各条の大根の根径及び根長を夫々示す。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
上記表1に示すように、従来のトンネル栽培装置によって成長させた各条の大根の根径には、明らかに外側Eの大根は内側Eの大根より径が小さいという傾向が見られた。同様に外側Wと内側Wとの比較においても同じ傾向が見られた。一方、本発明のトンネル栽培装置によって成長させた各条の大根は東西両側とも外側と内側との根径の差が殆ど見られず、均一な太さの大根となった。もっとも、太陽光の入射角度等により相対的にE側とW側に部分的な温度差が生じており、根の肥大の遅速傾向に僅かなバラツキは生じ得る。
【0030】
上記表2に示すように、従来のトンネル栽培装置によって成長させた各条の大根の根長には、明らかに外側Eの大根は内側Eの大根より短いという傾向が見られた。同様に外側Wと内側Wとの比較においても同じ傾向が見られた。一方、本発明のトンネル栽培装置によって成長させた各条の大根は東西両側とも外側と内側との根長の差が殆ど見られず、均一な長さの大根となった。もっとも、太陽光の入射角度等により相対的にE側とW側に部分的な温度差が生じており、根の伸長の遅速傾向に僅かなバラツキは生じ得る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の植物栽培方法と、それに使用されるマルチフィルム及びトンネル栽培用フィルム及び植物栽培装置は、大根の越冬栽培には限られず、春人参、晩秋や初冬収穫のコカブおよび越冬レタス等の栽培にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のトンネル栽培装置の実施形態の一例を示す斜視説明図。
【図2】本発明のマルチフィルムの実施形態の一例を示す平面説明図。
【図3】図1のトンネル栽培装置を示す断面説明図。
【図4】図1のトンネル栽培装置が強風を受けた場合の様子を示す説明図。
【図5】本発明のマルチフィルムの実施形態の一例を示す平面説明図。
【図6】従来のトンネル栽培装置の実施形態の一例を示す斜視説明図。
【図7】従来のマルチフィルムの実施形態の一例を示す平面説明図。
【図8】図5のトンネル栽培装置を示す断面説明図。
【図9】図5のトンネル栽培装置が強風を受けた場合の様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 土壌
2 平畝
3 植物(大根)
4 マルチフィルム
5 植栽孔
6 シート
7 枠
8 トンネル栽培用フィルム
10 トンネル
11 埋め代
15 換気孔



【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィルムで被覆した土壌で植物を数条に栽培し、その植物の上にベタ掛けフィルムを掛け又は掛けずに、その上方にトンネル栽培用フィルムを架設してトンネルを形成し、そのトンネル内で前記植物を栽培するトンネル栽培方法において、最外条から前記マルチフィルムの埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条間の間隔よりも広くして栽培することを特徴とするトンネル栽培方法。
【請求項2】
請求項1記載のトンネル栽培方法において、トンネルの上部に、その長手方向に所定間隔で換気孔を開口したことを特徴とするトンネル栽培方法。
【請求項3】
埋め代の内側に数条の植栽孔を開口したマルチフィルムにおいて、最外条の植栽孔から埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条の植栽孔間の間隔よりも広くしたことを特徴とするマルチフィルム。
【請求項4】
土壌で栽培した植物の上方にトンネル状に架設するトンネル栽培用フィルムにおいて、トンネルの上部となる箇所にフィルムの長手方向に所定間隔で換気孔を開口したことを特徴とするトンネル栽培用フィルム。
【請求項5】
請求項3記載のマルチフィルムを土壌に被せて埋め代の内側に開口された数条の植栽孔のうち、最外条の植栽孔から埋め代の内側部分までの幅を、その条より内側の条の植栽孔間の間隔よりも広くし、その上方に請求項4記載のトンネル用フィルムを架設して、頂部又は頂部付近に換気孔を備えたトンネルとしたことを特徴とするトンネル栽培装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−14633(P2006−14633A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194382(P2004−194382)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000126148)株式会社みかど育種農場 (3)
【Fターム(参考)】