説明

トーンコントロール装置

【課題】 全帯域の振幅値を小さくすることなく、ブースト帯域がクリップすることを防止するトーンコントロール装置を提供すること。
【解決手段】 第1検出部および第2検出部によって、増幅部の出力電圧が第1設定値以上の場合と第2設定値未満の場合とが検出される。つまり、増幅部の出力電圧がハイレベル側にクリップする場合と、ローレベル側にクリップする場合とが検出される。合成部はこれらの検出結果を合成し、切換部は合成部の出力電圧に基づいてブースト処理部のブースト量を切り換える。従って、増幅部の出力電圧がハイレベル側にクリップする場合およびローレベル側にクリップする場合には、ブースト量が通常の第1ブースト値よりも小さい第2ブースト値に切り換えられるので、全帯域の振幅を小さくすることなく、増幅部の出力電圧がクリップすることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定帯域の音声信号をブースト処理するトーンコントロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置において、所定の周波数帯域のレベルを増加させるブースト処理などのトーンコントロール処理を行うトーンコントロール装置が採用されている。ブースト処理においては、図7に示すように、音声信号の振幅値が大きい場合に、ブースト帯域の音声信号が電源電圧においてクリップ状態となり、スピーカーから出力される音声に歪みが生じるという問題がある。図8は振幅値が大きい場合のアンプの出力電圧を示すシミュレーション結果であり、図9は振幅値が小さい場合のアンプの出力電圧を示すシミュレーション結果である。図8に示すように、出力電圧の振幅値が大きい場合にブースト帯域において出力電圧がクリップしていることが分かる。これを解決するために、所定時間、音声信号の全帯域の振幅値を小さくすることによって、ブースト帯域にクリップが生じすることを防止することが提案されている。しかし、この場合には、ユーザ操作によって音量レベルを上昇させようとしても、振幅を大きくすることが制限されているので、音量レベルを上昇させることができない。
【0003】
【特許文献1】特開2003−142970号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、全帯域の振幅値を小さくすることなく、ブースト帯域がクリップすることを防止するトーンコントロール装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の好ましい実施形態によるトーンコントロール装置は、入力信号のブースト帯域を第1ブースト値、または、前記第1ブースト値よりも小さい第2ブースト値によってブースト処理するブースト処理部と、前記ブースト処理部の出力信号を増幅する増幅部と、前記増幅部の出力電圧に基づいて、前記ブースト処理部のブースト量を前記第1ブースト値または前記第2ブースト値に切り換えるブースト制御部とを備え、前記ブースト制御部が、前記増幅部の出力電圧が第1設定値以上であるか否かを検出し、前記増幅部の出力電圧が前記第1設定値未満である場合に第1レベルの電圧を出力し、前記増幅部の出力電圧が前記第1設定値以上である場合に第2レベルの電圧を出力する第1検出部と、前記増幅部の出力電圧が前記第1設定値よりも小さい第2設定値未満であるか否かを検出し、前記増幅部の出力電圧が前記第2設定値未満である場合に前記第1レベルの電圧を出力し、前記増幅部の出力電圧が前記第2設定値以上である場合に前記第2レベルの電圧を出力する第2検出部と、前記第1検出部が前記第1レベルの電圧を出力し、前記第2検出部が前記第2レベルの電圧を出力する場合に、前記第2レベルの電圧を出力し、前記第1検出部が前記第2レベルの電圧を出力し、前記第2検出部が前記第2レベルの電圧を出力する場合に、前記第1レベルの電圧を出力し、前記第1検出部が前記第1レベルの電圧を出力し、前記第2検出部が前記第1レベルの電圧を出力する場合に、前記第1レベルの電圧を出力する合成部と、前記合成部が前記第1レベルの電圧を出力する場合に前記ブースト処理部のブースト量を前記第2ブースト値に切り換え、前記合成部が前記第2レベルの電圧を出力する場合に前記ブースト処理部のブースト量を前記第1ブースト値に切り換える切換部とを含む。
【0006】
第1検出部および第2検出部によって、増幅部の出力電圧が第1設定値以上の場合と第2設定値未満の場合とが検出される。つまり、増幅部の出力電圧がハイレベル側にクリップする場合と、ローレベル側にクリップする場合とが検出される。合成部はこれらの検出結果を合成し、切換部は合成部の出力電圧に基づいてブースト処理部のブースト量を切り換える。従って、増幅部の出力電圧がハイレベル側にクリップする場合およびローレベル側にクリップする場合には、ブースト量が通常の第1ブースト値よりも小さい第2ブースト値に切り換えられるので、全帯域の振幅を小さくすることなく、増幅部の出力電圧がクリップすることを防止することができる。
【0007】
好ましくは、前記第1検出部が、第1トランジスタと、前記増幅部からの出力電圧を分圧した電圧を前記第1トランジスタの制御電極に供給する第1抵抗及び第2抵抗とを含み、前記第1抵抗と前記第2抵抗との抵抗値の比に基づいて前記第1設定値が設定されており、前記第2検出部が、第2トランジスタと、前記増幅部からの出力電圧を分圧した電圧を前記第2トランジスタの制御電極に供給する第3抵抗及び第4抵抗とを含み、前記第3抵抗と前記第4抵抗との抵抗値の比に基づいて前記第2設定値が設定されている。
【0008】
この場合、第1抵抗と第2抵抗との抵抗値の比率、及び、第3抵抗と第4抵抗との抵抗値の比率を設定することによって、第1ブースト値と第2ブースト値とが切り替わる増幅部の出力電圧を設定することができる。
【0009】
好ましくは、前記第1トランジスタがpnp型トランジスタであり、そのエミッタには電源電圧が供給され、前記第2トランジスタがnpn型トランジスタであり、そのエミッタが接地電位に接続され、前記合成部がnpn型トランジスタである第3トランジスタを含み、そのベースが前記第1トランジスタのコレクタに接続され、そのエミッタが前記第2トランジスタのコレクタに接続されている。
【0010】
好ましくは、前記切換部が第4トランジスタを含み、前記第4トランジスタがオン状態になることによって前記ブースト処理部のブースト量を前記第1ブースト値に切り換え、前記第4トランジスタがオフ状態になることによって前記ブースト処理部のブースト量を前記第2ブースト値に切り換える。
【0011】
好ましくは、前記第4トランジスタがオン状態からオフ状態、又は、オフ状態からオン状態に切り換えられる際の前記第4トランジスタのインピーダンスの変化によって、前記第2ブースト値が設定される。
【発明の効果】
【0012】
全帯域の振幅値を小さくすることなく、ブースト帯域がクリップすることを防止するトーンコントロール装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1は、本発明の好ましい実施形態によるトーンコントロール装置1を示す回路図である。トーンコントロール装置1は、ブースト処理部2と、ブースト制御部3と、増幅部5とを備える。また、トーンコントロール装置1は、必要に応じて、ブースト処理部2と増幅部5との間にLPF(低域通過フィルタ)4を備える。
【0014】
ブースト処理部2は、入力音声信号が入力され、入力音声信号の所定周波数帯域(以下、ブースト帯域という。)を増幅処理(以下、ブースト処理という。)し、増幅部5に出力する。
【0015】
ブースト処理部2は、オペアンプQ1と、抵抗R2〜R4と、共振回路7とを含む。オペアンプQ1は、非反転入力端子が抵抗R1の一端に接続され、反転入力端子が抵抗R2を介してその出力端子に接続されると共に、抵抗R3の一端に接続されている。また、オペアンプQ1の出力端子は、抵抗R4の一端に接続されると共に、ブースト処理部2の出力端子として増幅部5に接続されている。オペアンプQ1には、抵抗R1を介して入力音声信号が入力される。
【0016】
共振回路7は、ブースト処理する周波数を特定すると共にブースト処理部2の利得を設定する回路であり、抵抗R5〜R8と、コンデンサC1〜C2と、オペアンプQ2とを含む。オペアンプQ2は、その非反転入力端子がコンデンサC1、抵抗R5、R7の各一端に接続され、その反転入力端子がその出力端子と抵抗R8の一端とに接続されている。抵抗R5の他端は、トランジスタQ6のコレクタに接続されている。抵抗R7の他端は、抵抗R6の一端とコンデンサC1の他端と抵抗R8の他端とコンデンサC2の一端とに接続されている。抵抗R6の他端はコンデンサC2の他端と抵抗3の他端と抵抗R4の他端とに接続されている。
【0017】
ブースト処理部2は抵抗R1を介して入力される入力音声信号のブースト帯域を増幅して、増幅部5に供給する。ブースト処理部2のブースト量は、増幅部5の出力電圧の振幅値に基づいて、第1ブースト値と、第1ブースト値よりも小さい第2ブースト値とに設定される。図2(a)に示すように、増幅部5の出力電圧の振幅値が小さい場合には、ブースト量が第1ブースト値に設定される。第1ブースト値に設定しても、増幅部5の出力電圧のブースト帯域にクリップが生じないからである。
【0018】
図2(b)、(c)に示すように、音量レベルが増大される又は入力音声信号の振幅値が大きくなって、増幅部5の出力電圧の振幅値が大きくなると、ブースト量が第2ブースト値に設定される。第1ブースト値のままで入力音声信号をブースト処理すると、増幅部5の出力電圧のブースト帯域にクリップが生じるからである。第2ブースト値は、増幅部5の出力電圧の振幅値に応じて変化する値であり、ブースト処理後の最大振幅値が、図2(a)の第1ブースト値でのブースト処理後の最大振幅値と同じになるようになっている(図2の破線参照)。言い換えると、増幅部5の出力電圧の振幅値が大きくなればなるほど、第2ブースト値は小さくなる。これによって、増幅部5の出力電圧の振幅値がどのような値の時でも、クリップが生じすることを防止できる。
【0019】
第1ブースト値に設定されるときには後述するトランジスタQ6がオン状態になっている。そして、第2にブースト値に設定されるときにはトランジスタQ6がオン状態からオフ状態に切り換えられる。このときに、トランジスタQ6のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスが瞬間的に所定値から無限大に変化するので、ブースト処理部2の利得とブースト帯域が瞬間的に変化する。より詳細には、図3のブースト処理部2の出力電圧のシミュレーション結果に示すように、時間の変化に伴い、高周波数から低周波数に向かってブースト帯域が変化すると共に、ブースト量が次第に小さくなっていく。その結果、図2(b)、(c)のように増幅部5の出力電圧の振幅値に応じて第2ブースト値が可変する。また、増幅部5の出力電圧の振幅値が大きな値から小さな値に変化し、トランジスタQ6がオフ状態からオン状態に切り換えられる場合には、トランジスタQ6のコレクタ−エミッタ間のインピーダンスが無限大から所定値に瞬間的に変化することによって、図3において時間の変化に伴い、低周波数から高周波数に向かってブースト帯域が変化すると共に、ブースト量が次第に大きくなっていく。
【0020】
LPF4は、ブースト処理部2からの出力信号から高周波成分を除去して増幅部5に出力信号を供給する。なお、LPF4は、増幅部5がスイッチングアンプ等のデジタルアンプの場合に必要であり、アナログアンプの場合には不要である。従って、アナログアンプの場合にはブースト処理部2の出力電圧が増幅部5に直接供給される。
【0021】
増幅部5は、ブースト処理部2又はLPF4からの出力電圧を増幅処理して出力電圧をブースト制御部3およびスピーカー6に出力する。なお、ユーザ操作によって音量レベルが調整されるので、調整された音量レベルに応じた利得でブースト処理部2からの出力電圧を増幅処理する。
【0022】
ブースト制御部3は、増幅部5の出力電圧の振幅値を検出し、増幅部5の出力電圧の振幅値に応じて、ブースト処理部2のブースト量を制御する。すなわち、図2(a)に示すように、ブースト制御部3は、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値未満、かつ、第2設定値(第2設定値は第1設定値よりも小)以上の場合には、第1ブースト値でブースト処理しても、増幅部5の出力電圧がクリップしないので、ブースト処理部2のブースト量を第1ブースト値に設定させる。一方、図2(b)、(c)に示すように、ブースト制御部3は、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値以上、又は、第2設定値未満である場合には、第1ブースト値でブースト処理すると、増幅部5の出力電圧がクリップするので、ブースト処理部2のブースト量をブースト量の小さい第2ブースト値に設定させる。
【0023】
ブースト制御部3は、第1設定値を決定するための抵抗R9及びR10と、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値以上であるか否かを検出する第1検出部(トランジスタQ3)と、第2設定電圧を決定するための抵抗R11及びR12と、増幅部5の出力電圧の振幅値が第2設定電圧以下であるか否かを検出する第2検出部(トランジスタQ4)と、第1検出部の検出結果と第2検出部の検出結果とを合成する合成部(トランジスタQ5)と、合成部からの信号に応じてブースト処理部2のブースト値を第1ブースト値と第2ブースト値との間で切り換える切換部(トランジスタQ6)とを含む。
【0024】
トランジスタQ3は、pnp型トランジスタであり、エミッタが抵抗R9の一端と抵抗R17の一端と(つまり、電源電圧V1の電源ライン)に接続され、コレクタが抵抗R13の一端に接続され、ベースが抵抗R9の他端と抵抗R10の一端とに接続されている。トランジスタQ4は、npn型トランジスタであり、エミッタが接地電位に接続され、コレクタが抵抗R16の一端と、トランジスタQ5のエミッタとに接続され、ベースが抵抗R11の一端と抵抗R12の一端とに接続されている。抵抗R11の他端は、抵抗R10の他端とコンデンサC3の一端と抵抗R20の一端とに接続されている。抵抗R12の他端は接地電位に接続されている。トランジスタQ5は、npn型トランジスタであり、ベースが抵抗R16の他端と抵抗R15の一端とに接続され、コレクタが抵抗R17の他端と抵抗18の一端とに接続されている。トランジスタQ6は、pnp型トランジスタであり、ベースが抵抗R18の他端と抵抗R19の一端とに接続され、エミッタが抵抗R19の他端に接続され、コレクタが抵抗R5に接続されている。抵抗R14は、一端が抵抗R13の他端と抵抗R15の他端とに接続され、他端が接地電位に接続されている。
【0025】
トランジスタQ3のベースには、増幅部5の出力電圧が抵抗R9及びR10によって分圧された電圧が供給される。トランジスタQ3は、ベースに供給される電圧が電源電圧V1+トランジスタQ3の導通開始電圧(0.6V)未満ではオン状態であり、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値以上であることを検出していない。このとき、トランジスタQ3のコレクタ電圧(トランジスタQ5のベース電圧)は電源電圧V1に引き上げられ、ハイレベルになっている。一方、トランジスタQ3は、ベースに供給される電圧が電源電圧V1+トランジスタQ3の導通開始電圧(0.6V)以上ではオフ状態であり、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値以上であることを検出する。このとき、トランジスタQ3のコレクタ電圧(トランジスタQ5のベース電圧)は接地電位に引き下げられ、ローレベルになっている。
【0026】
トランジスタQ3がオン状態の時には、トランジスタQ5がオン状態になる。このときトランジスタQ4がオン状態であれば、トランジスタQ6がオン状態であって、ブースト処理部2のブースト量は第1ブースト値に設定される。一方、トランジスタQ3がオフ状態の時には、トランジスタQ5、Q6がオフ状態になるので、ブースト処理部2のブースト量は第2ブースト値に設定される。従って、抵抗R9及びR10の抵抗値の比率を適宜設定することによって、トランジスタQ3のベースに供給される電圧を調整でき、その結果、ブースト処理部2のブースト値を第1ブースト値と第2ブースト値との間で切り換える際の増幅部5の出力電圧の振幅値を設定することができる。
【0027】
トランジスタQ4のベースには、増幅部5の出力電圧が抵抗R11及びR12によって分圧された電圧が供給される。トランジスタQ4は、ベースに供給される電圧がトランジスタQ4の導通開始電圧(0.6V)未満ではオフ状態であり、増幅部5の出力電圧の振幅値が第2設定値以下であることを検出していない。このとき、トランジスタQ4のコレクタ電圧(トランジスタQ5のエミッタ電圧)は電源電圧V1に引き上げられ、ハイレベルになっている。一方、トランジスタQ4は、ベースに供給される電圧がトランジスタQ4の導通開始電圧(0.6V)以上ではオン状態であり、増幅部5の出力電圧の振幅値が第2設定値以下であることを検出する。このとき、トランジスタQ4のコレクタ電圧(トランジスタQ5のエミッタ電圧)は接地電位に引き下げられ、ローレベルになっている。
【0028】
トランジスタQ4がオフ状態の時には、トランジスタQ5がオン状態であれば、トランジスタQ6がオン状態になるので、ブースト処理部2のブースト量は第1ブースト値に設定される。一方、トランジスタQ4がオフ状態の時には、トランジスタQ5がオン状態であっても、トランジスタQ6がオフ状態になるので、ブースト処理部2のブースト量は第2ブースト値に設定される。従って、抵抗R10及びR11の抵抗値の比率を適宜設定することによって、ブースト処理部2のブースト値を第1ブースト値と第2ブースト値との間で切り換える際の増幅部5の出力電圧の振幅値を設定することができる。
【0029】
トランジスタQ5のベースには、トランジスタQ3のコレクタ電圧が抵抗R13、R15を介して供給される。トランジスタQ3がオフ状態の時にはトランジスタQ5のベースにローレベルの電圧が供給されるので、トランジスタQ5がオフ状態になる。その結果、トランジスタQ5のコレクタは接地電位に対して開放された状態になり、トランジスタQ5のコレクタ電圧(トランジスタQ6のベース電圧)は電源電圧V1に引き上げられてハイレベルになる。
【0030】
トランジスタQ3がオン状態の時にはトランジスタQ5のベースにハイレベルの電圧が供給されるので、トランジスタQ5がオン状態になる。このとき、トランジスタQ4がオフ状態であれば、トランジスタQ5のコレクタは接地電位に対して開放された状態になり、トランジスタQ5のコレクタ電圧(トランジスタQ6のベース電圧)は電源電圧V1に引き上げられてハイレベルになる。一方、トランジスタQ4がオン状態であれば、トランジスタQ5のコレクタが接地電位に接続された状態になり、トランジスタQ5のコレクタ電圧(トランジスタQ6のベース電圧)は接地電位に引き下げられてローレベルになる。
【0031】
従って、トランジスタQ3、Q4のいずれか一方がオフ状態(つまり、増幅部5の出力電圧の振幅値が、第1設定値以上、又は、第2設定値未満)の場合には、トランジスタQ5のコレクタ電圧がハイレベルになる。トランジスタQ3、Q4の両方がオン状態(つまり、増幅部5の出力電圧の振幅値が、第1設定値未満、かつ、第2設定値以上)の場合には、トランジスタQ5のコレクタ電圧がローレベルになる。
【0032】
トランジスタQ6のベースには、トランジスタQ5のコレクタ電圧が抵抗R18を介して供給されている。トランジスタQ5のコレクタ電圧がローレベル(つまり、増幅部5の出力電圧の振幅値が、第1設定値未満、かつ、第2設定値以上)の場合には、トランジスタQ6はオン状態になる。従って、ブースト処理部2の抵抗R5が基準電位に接続された状態になり、ブースト処理部2のブースト量が第1ブースト値に設定される。
【0033】
トランジスタQ5のコレクタ電圧がハイレベル(つまり、増幅部5の出力電圧の振幅値が、第1設定値以上、又は、第2設定値未満)の場合には、トランジスタQ6はオフ状態になる。従って、ブースト処理部2の抵抗R5が基準電位から開放された状態になり、ブースト処理部2のブースト量が第2ブースト値に設定される。
【0034】
より詳細には、先述の通り、トランジスタQ6がオフ状態からオン状態に、又は、オン状態からオフ状態に切り換えられる際に、コレクタ−エミッタ間のインピーダンスが瞬間的に変化することによって、ブースト処理部2のブースト帯域及び利得を変化させる。その結果、トランジスタQ6がオン状態、オフ状態に切り換えられることによって、第2ブースト値は音量レベルによって変化する。
【0035】
以上の構成を有するトーンコントロール装置1についてその動作を説明する。図3は、トーンコントロール装置1の各点における波形を示すタイムチャートであり、各符号は図1の各点における波形に対応している。
【0036】
期間T1においては、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値未満、かつ、第2設定値以上である(A点電圧参照)。従って、トランジスタQ3はベース電圧が導通開始電圧に達しオン状態になっており、コレクタ電圧が電源電圧V1に引き上げられ、B点電圧がハイレベルになっている。一方、トランジスタQ4は、ベース電圧が導通開始電圧に達しオン状態になっており、コレクタ電圧が接地電位に引き下げられ、C点電圧がローレベルになっている。トランジスタQ5は、B点電圧がハイレベルであるので、ベース電圧が導通開始電圧に達しオン状態になっており、コレクタ電圧が接地電位に引き下げられ、D点電圧がローレベルになっている。その結果、トランジスタQ6がオン状態になり、抵抗R5が基準電位に接続された状態になり、ブースト処理部2のブースト量は第1ブースト値に設定されている。すなわち、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値未満、かつ、第2設定値以上である場合には、ブースト量を第1ブースト値に設定しても増幅部5の出力電圧がクリップすることがないので、ブースト量が第1ブースト値に設定される。
【0037】
期間T2においては、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値以上である(A点電圧参照)。従って、トランジスタQ3はベース電圧が導通開始電圧に達しておらずオフ状態になっており、コレクタが電源電圧V1に対して開放状態とされ、B点電圧がローレベルになっている。一方、トランジスタQ4は、ベース電圧が導通開始電圧に達しオン状態になっており、コレクタ電圧が接地電位に引き下げられ、C点電圧がローレベルになっている。トランジスタQ5は、B点電圧がローレベルであるので、ベース電圧が導通開始電圧に達しておらずオフ状態になっており、コレクタ電圧が電源電圧V1に引き上げられ、D点電圧がハイレベルになっている。その結果、トランジスタQ6がオフ状態になり、抵抗R5が基準電位に対して開放された状態になり、ブースト処理部2のブースト量は第2ブースト値に設定される。すなわち、増幅部5の出力電圧の振幅値が第1設定値以上である場合には、ブースト量を第1ブースト値に設定すると増幅部5の出力電圧がクリップするので、ブースト量が第2ブースト値に設定に設定される。
【0038】
期間T3においては、期間T1と同じであるので、説明を援用する。
【0039】
期間T4においては、増幅部5の出力電圧の振幅値が第2設定値未満である(A点電圧参照)。従って、トランジスタQ3はベース電圧が導通開始電圧に達しオン状態になっており、コレクタ電圧が電源電圧V1に引き上げられ、B点電圧がハイレベルになっている。一方、トランジスタQ4は、ベース電圧が導通開始電圧に達しておらずオフ状態になっており、コレクタが接地電位に対して開放状態になるので、C点電圧がB点電圧と同じハイレベルになっている。トランジスタQ5は、B点電圧がハイレベルであるので、ベース電圧が導通開始電圧に達しオン状態になっており、D点電圧がハイレベルになっている。その結果、トランジスタQ6がオフ状態になり、抵抗R5が基準電位に対して開放された状態になり、ブースト処理部2のブースト量は第2ブースト値に設定される。すなわち、増幅部5の出力電圧の振幅値が第2設定値未満である場合には、ブースト量を第1ブースト値に設定すると増幅部5の出力電圧がマイナス側にクリップするので、ブースト量は第2ブースト値に設定に設定される。
【0040】
図5は、音量レベルが大きい又は入力信号の振幅値が大きいために、増幅部5の出力電圧の振幅値が大きい場合(図2(b)、図2(c)に対応)の増幅部5の出力電圧の波形を示すシミュレーション結果である。図6は、音量レベルが小さい又は入力信号の振幅値が小さいために、増幅部5の出力電圧の振幅値が小さい場合(図2(a)に対応)の増幅部5の出力電圧の波形を示すシミュレーション結果である。このように増幅部5の出力電圧の振幅値が大きいほど、ブースト量を小さくすることによって、増幅部5の出力電圧のブースト帯域がクリップすることが防止される。
【0041】
以上のように、本実施形態によると、増幅部5の出力電圧の振幅値を常に監視しており、第1設定値以上、又は、第2設定値未満になった際に、直ちにブースト量を第2ブースト値に設定するので、増幅部5の出力電圧がクリップすることを確実に防止することができる。
【0042】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、トランジスタQ3〜Q6の極性は上記実施形態に限定されない。すなわち、図4のタイムチャートにおいて、ハイレベルとローレベルとが逆転していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、例えばオーディオ用のパワーアンプに好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるトーンコントロール装置1を示す回路図である。
【図2】本実施形態のトーンコントロール装置1の音量レベルに応じたブースト量の変化を説明する模式図である。
【図3】トランジスタQ6がオン状態−オフ状態に切り換えられる際のブースト処理部2の出力電圧の推移を示すシミュレーション結果である。
【図4】本実施形態のトーンコントロール装置1の動作を示すタイムチャートである。
【図5】本実施形態のトーンコントロール装置1における音量レベルが大きい場合の増幅部5の出力電圧を示すシミュレーション結果である。
【図6】本実施形態のトーンコントロール装置1における音量レベルが小さい場合の増幅部5の出力電圧を示すシミュレーション結果である。
【図7】従来のトーンコントロール装置の音量レベルに応じたブースト量の変化を説明する模式図である。
【図8】従来のトーンコントロール装置1における音量レベルが大きい場合の増幅部5の出力電圧を示すシミュレーション結果である。
【図9】従来のトーンコントロール装置1における音量レベルが小さい場合の増幅部5の出力電圧を示すシミュレーション結果である。
【符号の説明】
【0045】
1 トーンコントロール装置
2 ブースト処理部
3 ブースト制御部
4 増幅部5
7 共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号のブースト帯域を第1ブースト値、または、前記第1ブースト値よりも小さい第2ブースト値によってブースト処理するブースト処理部と、
前記ブースト処理部の出力信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部の出力電圧に基づいて、前記ブースト処理部のブースト量を前記第1ブースト値または前記第2ブースト値に切り換えるブースト制御部とを備え、
前記ブースト制御部が、
前記増幅部の出力電圧が第1設定値以上であるか否かを検出し、前記増幅部の出力電圧が前記第1設定値未満である場合に第1レベルの電圧を出力し、前記増幅部の出力電圧が前記第1設定値以上である場合に第2レベルの電圧を出力する第1検出部と、
前記増幅部の出力電圧が前記第1設定値よりも小さい第2設定値未満であるか否かを検出し、前記増幅部の出力電圧が前記第2設定値未満である場合に前記第1レベルの電圧を出力し、前記増幅部の出力電圧が前記第2設定値以上である場合に前記第2レベルの電圧を出力する第2検出部と、
前記第1検出部が前記第1レベルの電圧を出力し、前記第2検出部が前記第2レベルの電圧を出力する場合に、前記第2レベルの電圧を出力し、前記第1検出部が前記第2レベルの電圧を出力し、前記第2検出部が前記第2レベルの電圧を出力する場合に、前記第1レベルの電圧を出力し、前記第1検出部が前記第1レベルの電圧を出力し、前記第2検出部が前記第1レベルの電圧を出力する場合に、前記第1レベルの電圧を出力する合成部と、
前記合成部が前記第1レベルの電圧を出力する場合に前記ブースト処理部のブースト量を前記第2ブースト値に切り換え、前記合成部が前記第2レベルの電圧を出力する場合に前記ブースト処理部のブースト量を前記第1ブースト値に切り換える切換部とを含む、トーンコントロール装置。
【請求項2】
前記第1検出部が、第1トランジスタと、前記増幅部からの出力電圧を分圧した電圧を前記第1トランジスタの制御電極に供給する第1抵抗及び第2抵抗とを含み、前記第1抵抗と前記第2抵抗との抵抗値の比に基づいて前記第1設定値が設定されており、
前記第2検出部が、第2トランジスタと、前記増幅部からの出力電圧を分圧した電圧を前記第2トランジスタの制御電極に供給する第3抵抗及び第4抵抗とを含み、前記第3抵抗と前記第4抵抗との抵抗値の比に基づいて前記第2設定値が設定されている、請求項1に記載のトーンコントロール装置。
【請求項3】
前記第1トランジスタがpnp型トランジスタであり、そのエミッタには電源電圧が供給され、
前記第2トランジスタがnpn型トランジスタであり、そのエミッタが接地電位に接続され、
前記合成部がnpn型トランジスタである第3トランジスタを含み、そのベースが前記第1トランジスタのコレクタに接続され、そのエミッタが前記第2トランジスタのコレクタに接続されている、請求項2に記載のトーンコントロール装置。
【請求項4】
前記切換部が第4トランジスタを含み、前記第4トランジスタがオン状態になることによって前記ブースト処理部のブースト量を前記第1ブースト値に切り換え、前記第4トランジスタがオフ状態になることによって前記ブースト処理部のブースト量を前記第2ブースト値に切り換える、請求項1〜3のいずれかに記載のトーンコントロール装置。
【請求項5】
前記第4トランジスタがオン状態からオフ状態、又は、オフ状態からオン状態に切り換えられる際の前記第4トランジスタのインピーダンスの変化によって、前記第2ブースト値が設定される、請求項4に記載のトーンコントロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−109845(P2010−109845A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281485(P2008−281485)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】