説明

ドア用モール

【課題】低コストで輝度の高い金属調を表現することが可能なドア用モールを提供すること。
【解決手段】ベルトモール10は、芯材20の表面に薄膜による意匠材21を備える。この意匠材21は、母材となる樹脂として硬質ポリプロピレンが選定されるとともに、その膜厚が0.2mmに設定され、さらに、この樹脂に光輝材となる金属粒として径が5μmのアルミニウムの粉が重量比1%配合されてなる。この意匠材21が車外側の側面に位置するようベルトモール10がベルトラインに沿って取り付けられると、可視光がアルミニウムの粉末に反射して光り輝き、下地である芯材20が透けて見えることのない好適な金属調が表現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの窓枠に装着されるドア用モールに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモールとして、特許文献1には、ドアのベルトラインに沿って取り付けられるベルトモールが開示されている。このベルトモールでは、車外側の側面に着色合成樹脂による帯状の意匠材が設けられ、これにより色彩を車両使用者の好みに応じて多様にできるようになっている。尚、特許文献1によるベルトモールは、ドアガラスの昇降時に、その外面を払拭して水切りを行うウエザストリップに一体化されている。
【0003】
すなわち、図3に示すように、ウエザストリップ50は、断面が略逆U字形をなしドアパネル61の上端縁に嵌着される取付基部51と、この取付基部51の内側上端から斜め上方へ延びるシールリップ52とを備えている。シールリップ52の下面には、ドアガラス62の外面に接する植毛52aが施されている。尚、取付基部51は硬質樹脂により形成されて芯材としての機能を果たし、その一方、シールリップ52は軟質樹脂により形成されるとともに、この軟質樹脂は取付基部51の車外側の側面へ延びて当該側面の全面を覆う被覆層53を形成し、さらに延びてドアパネル61に係合される保持リップ54を形成している。そして、被覆層53の一部に帯状の溝が形成され、この溝に顔料の添加された着色樹脂が充填されて意匠材55が形成されている。したがって、この意匠材55により、例えばステンレススチールのような光輝性の金属材或いはフィルムを用いるものとの比較において、低コストで金属調を表現することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−277829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたものでは、合成樹脂を着色して金属調を表現するので輝度に乏しい。
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、低コストで輝度の高い金属調を表現することが可能なドア用モールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車両用ドアの窓枠に装着されるドア用モールにおいて、芯材の表面に薄膜による意匠材を備え、前記意匠材は、金属粒が樹脂に配合されてなることをその要旨としている。
【0007】
同構成によると、例えばステンレススチールのような光輝性の金属材或いはフィルムを用いる代わりに、金属粒の配合された樹脂を意匠材として用いることでコストが抑制される。また、着色を目的とした顔料を配合するのではなく、狙いの輝度を出すための光輝材として金属粒を配合することで輝度の高い金属調を表現できるようになる。従って、低コストで輝度の高い金属調を表現することができる。尚、薄膜による意匠材を用いる本構成によるところ、金属調を表現しつつ、下地となる芯材の透けて見える、いわゆる色透けが生じないようにするための工夫が必要となるが、これは意匠材の膜厚並びに金属粒の大きさ及び配合量等が調整されることで実現される。ここに、本発明にかかるドア用モール以外の車両用モールとして、例えば車体のルーフに設けられるルーフモールが知られているが、このルーフモールでは、意匠面と車体との間に十分な空間があるために、意匠材を薄膜によって形成する必要がなく、したがって色透けが生じないようにするための工夫を凝らす必要のない点で本発明とは異なる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドア用モールにおいて、前記意匠材の母材となる樹脂について、可視光が透過されて前記芯材が視認可能となる材料及び膜厚が選定され、この樹脂に光輝材となる金属粒が配合されて可視光が当該金属粒に反射されるとともに前記芯材が視認不能となることをその要旨としている。
【0009】
同構成によると、可視光が透過されて芯材が視認可能となる程度に薄い膜厚の樹脂材料を母材とする意匠材を前提として、色透けなく金属調を表現することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のドア用モールにおいて、前記意匠材は、金属粒が均一に分散されるかたちで樹脂に配合されてなることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、意匠材の膜厚並びに金属粒の大きさ及び配合量等が固定されていることを前提に、金属粒が均一に分散されていることで、色透けが生じ難くなる。このため、意匠材の膜厚を薄くできるとともに、金属粒の大きさとして汎用性の高いものを選定でき、さらには金属粒の配合量を少なくするといったことができるようになる。そうすると、金属粒の配合されない薄膜による意匠材を備えるドア用モールの製造工程に倣うかたちで、その製造設備を流用することができ、また、ドアパネル或いはドアミラー等といった周辺部品を変更する必要がない。従って、本発明にかかるドア用モールへの置き換えを容易に実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストで輝度の高い金属調を表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明にかかるドア用モールを具体化したベルトモールの一実施の形態について、このベルトモールの装着されるベルトラインの周辺を示す車両の側面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】従来のベルトモールが一体化されたウエザストリップの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるドア用モールをベルトモールに具体化した一実施の形態について説明する。
図1に示すように、ベルトモール10は、車両用ドアの窓枠のうちベルトラインを形成する部位、すなわちドアパネル1の上端縁に装着されている。
【0014】
図2に示すように、ドアパネル1の上部において車内側に向かう湾曲部2には、ベルトラインを形成するフランジ部3が連設されている。このフランジ部3は、湾曲部2から上方へ延びる第1面部4と、その第1面部4の上部から最上部を経由してドアパネル1の裏側へ向かう略逆U字形の折曲部5と、その折曲部5から第1面部4に沿って下方へ延びる第2面部6とを有している。尚、第2面部6は、途中まで第1面部4と重なり合うとともに、さらに下方まで延設されている。
【0015】
一方、ベルトモール10は、フランジ部3の第1面部4を覆う第1対向部14と、折曲部5を覆う折曲対向部15と、第2面部6を覆う第2対向部16とを有して断面が略逆U字形をなす芯材20を備えている。この芯材20は、例えばタルクを重量比40%含有する硬質ポリプロピレンで形成され、所要の製品剛性を有するとともに低線膨脹の特性を有している。尚、第2対向部16の下部には、フランジ部3の第2面部6の下端面に係脱可能なフック部17が連設されている。
【0016】
芯材20の第1対向部14及び折曲対向部15の外側の面には、薄膜による意匠材21が設けられている。この意匠材21は、母材となる樹脂として硬質ポリプロピレンが選定されるとともに、その膜厚が0.2mmに設定され、さらに、この樹脂に光輝材となる金属粒として径が5μmのアルミニウムの粉が重量比1%配合されてなる。尚、膜厚が0.2mmといったように薄いため、光輝材の配合されない母材のみの状態では、可視光が透過されて芯材20が視認可能となるが、母材に光輝材が配合されて均一に分散されることで、可視光が光輝材に反射されるとともに芯材20が視認不能となり、色透けなく好適に金属調が表現されている。ちなみに、押出成形による製造過程で扱える膜厚の最小値がおよそ0.2mmであり、したがって本実施形態では、光輝材の配合されない薄膜による意匠材を備えるドア用モールの製造工程に倣うかたちで、その製造設備が流用される。
【0017】
芯材20の第1対向部14の下部には、ドアパネル1の湾曲部2に向かって延びる第1リップ部22が設けられている。この第1リップ部22は、芯材20よりも軟らかい材料である例えばショアA硬度70°のオレフィン系の熱可塑性エラストマーで形成されている。また、第1対向部14の高さ方向中央部には、ドアパネル1の第1面部4に向かって延びる第2リップ部23が設けられている。この第2リップ部23は、第1リップ部22と同様の材料で形成されている。
【0018】
折曲対向部15と第2対向部16との境界付近における外側の面には、ドアガラス7に押圧接触しつつドアガラス7の外面を払拭するウエザストリップ24が設けられ、また、第2対向部16下部の外側の面にも、同様のウエザストリップ24が設けられている。ウエザストリップ24の本体部25は、例えばショアA硬度70°のオレフィン系の熱可塑性エラストマーで形成され、その先端から基端へ向かう下側の面には、植毛接着用の樹脂部26が設けられ、そこに植毛27が施されている。
【0019】
そして、第1リップ部22がドアパネル1の湾曲部2に押圧接触するとともに、第1リップ部22の弾性反発力によりベルトモール10が上方へ付勢され、さらに、フック部17が第2面部6の下端面に係合されることで、ドアパネル1に対するベルトモール10の上下方向の位置決めがなされ、また、この方向のガタツキが防止されている。また、第2リップ部23がフランジ部3の第1面部4に押圧接触するとともに、第2リップ部23の弾性反発力によりベルトモール10が車外側へ付勢され、さらに、第2対向部16が第2面部6に押付けられることで、ドアパネル1に対するベルトモール10の水平方向の位置決めがなされ、また、この方向のガタツキが防止されている。
【0020】
次に、ベルトモール10の作用について説明する。
芯材20の表面に膜厚が0.2mmの意匠材21が設けられ、この意匠材21には、径が5μmのアルミニウムの粉末が配合されている。そして、この意匠材21が車外側の側面に位置するようベルトモール10がベルトラインに沿って取り付けられると、可視光がアルミニウムの粉末に反射して光り輝き、下地である芯材20が透けて見えることのない好適な金属調が表現される。その結果、このベルトモール10が装飾品となって車両用ドアの窓枠のうちベルトラインに高級感が醸し出される。
【0021】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)例えばステンレススチールのような光輝性の金属材或いはフィルムを用いる代わりに、金属粒の配合された樹脂を意匠材21として用いることでコストが抑制される。また、着色を目的とした顔料を配合するのではなく、狙いの輝度を出すための光輝材として金属粒を配合することで輝度の高い金属調を表現できるようになる。従って、低コストで輝度の高い金属調を表現することができる。また、金属板或いは金属箔による意匠材の用いられる構成との比較において、軽量化も図られる。
【0022】
(2)膜厚が0.2mmといったように可視光が透過されて芯材20が視認可能となる程度に薄い膜厚の樹脂材料を母材とする意匠材21を前提として、色透けなく金属調を表現することができる。
【0023】
(3)意匠材21の膜厚並びに金属粒の大きさ及び配合量が固定されていることを前提に、金属粒が均一に分散されていることで、色透けが生じ難くなる。このため、意匠材21の膜厚を0.2mmにまで薄くできるとともに、金属粒の大きさとして汎用性の高い粒径5μmのものを選定でき、さらには金属粒の配合量を重量比1%といったように少なくすることができる。そうすると、金属粒の配合されない薄膜による意匠材を備えるベルトモールの製造工程に倣うかたちで、その製造設備を流用することができ、また、ドアパネル1或いはドアミラー等といった周辺部品を変更する必要がない。従って、ベルトモール10への置き換えを容易に実現できる。
【0024】
(4)下地である芯材20が透けて見える程度の薄膜による意匠材21を前提に、光輝材となる金属粒を母材となる樹脂に配合することで、色透けなく金属調を表現することができる。従って、車両用ドアの窓枠のうち、装飾品であるベルトモール10の装着されたベルトラインに高級感を醸し出すことができる。
【0025】
尚、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・意匠材21の下地となる芯材20に製品剛性を持たせることを前提に、意匠材21の母材として軟質樹脂を選定するとともに、この樹脂に金属粒を配合することで、薄膜による意匠材21が構成されてもよい。尚、芯材20に製品剛性を持たせるにあたり、芯材20の全体を硬質樹脂で形成する代わりに、軟質樹脂に芯金を埋設することで芯材20が構成されてもよい。
【0026】
・上記実施形態では、ベルトモール10に置き換えられる現行のベルトモールの意匠材の膜厚が0.2mmであることを前提に、意匠材21の膜厚が0.2mmに設定されているが、例えば0.5mmの膜厚の意匠材を備えるベルトモールからの置き換えを対象とするならば、意匠材21の膜厚を0.5mmに設定する等、膜厚の変更が可能である。尚、膜厚の厚い程、色透けが生じ難くなるので、粒径の大きな金属粒を配合したり、或いは、配合量を少なくしたりする等の調整が可能となる。
【0027】
・上記実施形態では、意匠材21の膜厚が0.2mmに設定されているが、これは押出成形による製造過程で扱える膜厚の最小値に倣う値である。したがって、技術の進歩に伴い0.2mm未満の薄膜を用いた押出成形が可能となれば、意匠材21の膜厚を0.2mm未満に設定することも許容される。ただし、意匠材21の膜厚を0.2mmに設定することに伴い、色透けが生じ易くなると考えられるので、金属粒の径を5μm未満に設定することが必要となる。ここに、汎用性の高い粒径を選定することがコスト抑制の観点からは望ましいが、色透けを回避する目的で例えば粒径が2μmといった極小粒の金属粒を光輝材として配合することも許容される。尚、2μmの金属粒を選定する代わりに汎用性の高い5μmの金属粒を選定する場合にも、母材となる樹脂に例えば重量比2%配合する等、配合量を調整したり、或いは、樹脂内での分散が均一となるような配合を行ったりすることで、色透けなく金属調の表現される可能性が高まる。
【0028】
・意匠材21に配合される金属粒はアルミニウムの粉に限定されない。ステンレスの粉の配合された薄膜による意匠材が用いられてもよい。
・ベルトモール10の形状や構成要素の材質等は、要求される仕様に合わせて変更されてもよい。
【0029】
・ドア用モールはベルトモールに限定されない。車両用ドアの窓枠に装着されるフレームモールについて、薄膜による意匠材を備えるものに適用されてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
【0030】
(イ)前記意匠材について、母材となる樹脂の膜厚が0.2mm以上に規定されるとともに、光輝材となる金属粒の径が5μm以下に規定され、この金属粒が前記樹脂に重量比1%以上配合されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のドア用モール。
【0031】
同構成によると、押出成形によるドア用モールの製造を前提とすると、これで扱える膜厚の最小値はおよそ0.2mmであり、膜厚が厚くなる程、色透けが生じ難くなる。すなわち、0.2mmの膜厚が採用される場合に色透けが最も生じ易くなるが、小径の金属粒が配合されて樹脂内で分散されることで色透けが抑制される。尚、例えば20μmといった大粒の金属粒が配合される場合には分散による色透け解消の効果が低く、したがって径が小さい程、色透けが抑制される。ここに、例えば2μmの金属粒を配合すれば色透けを起こさない観点からは好適ではあるが、その一方で、そうした極小粒のものは高度な加工技術を要するためにコストの高騰を招き、したがって汎用性の高い中で最も小粒のものとしておよそ5μmの金属粒を配合する構成が望ましい。そして、この金属粒を重量比1%以上配合することで色透けなく金属調が表現される。
【0032】
(ロ)下地の表面に膜厚が0.2mm以上の薄膜による意匠材を備える装飾品において、前記意匠材は、母材となる樹脂に光輝材となる金属粒が配合されてなることを特徴とする装飾品。
【0033】
同構成によると、下地が透けて見える程度の薄膜による意匠材を前提に、光輝材となる金属粒を母材となる樹脂に配合することで、色透けなく金属調を表現することができる。従って、装飾品に高級感を醸し出すことができる。
【符号の説明】
【0034】
1…ドアパネル、2…湾曲部、3…フランジ部、4…第1面部、5…折曲部、6…第2面部、7…ドアガラス、10…ベルトモール(ドア用モール、装飾品)、14…第1対向部、15…折曲対向部、16…第2対向部、17…フック部、20…芯材、21…意匠材、22…第1リップ部、23…第2リップ部、24…ウエザストリップ、25…本体部、26…樹脂部、27…植毛。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアの窓枠に装着されるドア用モールにおいて、
芯材の表面に薄膜による意匠材を備え、
前記意匠材は、金属粒が樹脂に配合されてなる
ことを特徴とするドア用モール。
【請求項2】
前記意匠材の母材となる樹脂について、可視光が透過されて前記芯材が視認可能となる材料及び膜厚が選定され、この樹脂に光輝材となる金属粒が配合されて可視光が当該金属粒に反射されるとともに前記芯材が視認不能となる
請求項1に記載のドア用モール。
【請求項3】
前記意匠材は、金属粒が均一に分散されるかたちで樹脂に配合されてなる
請求項1又は2に記載のドア用モール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−112288(P2013−112288A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262566(P2011−262566)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】