説明

ドア

【課題】手を放すとどこからでも同じ力が作用して勝手に閉まるドアで、低速回転で閉止した後、衝撃を伴うことなく強くドアを密閉するにもかかわらず、ドアを開くときにドアが重たく感じられない特徴を持ち、バネで動くにも拘わらず、ドアの回転速度を微調整することが出来るドアを提供する。
【解決手段】
開いたどの位置からも一定の回転力で始動させるようにしたカム体とカム車輪からなる駆動部を調節して、回転速度をかろうじて動く速度に設定し、回転時にだけ作用するバネから密閉時にのみ作用するバネにリレーすることで閉まる直前に一旦停止し、且つ低速回転の後に減速しながら強く密閉する機能を持ち、ドアに伝える回転力の大きさを制御することで摩擦抵抗を使わず減速する構造的特徴を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドアに関する
【0002】
本発明は開くときにバネに閉める力を蓄え、何処から手を離しても勝手に閉まるドアに関するものである。何処から手を離してもドアが閉まる途中で止まらないようにするには、ドアに回転力が作用し続ける必要があり、ドアに力が作用するとドアの回転速度は加速するので、ドアが閉まるに従いドアの回転速度は加速し、ドアが閉まったときドアの回転速度は最高値に達して、激しい衝撃音を伴うことになる。
力が作用すると運動速度は加速する、何処においてもドアに力が作用するので、たとえ減速しても減速されながらドアの回転速度は加速の一途をたどる。本発明はドアが閉まる直前(以下、閉止直前という)に最高値に達した回転速度を減速して衝撃を緩和し、しかもドアを戸当たりに当たる時(以下、密閉時という)まで回転させて確実に密閉するようになされたものである。
【0003】
ドアには閉まったドアが再び開かないように、ドア側面に取付けたラッチがドア枠に施された穴に嵌り込む逆転防止装置(以下、ラッチ装置という)が付いており、ドアを戸当たりに当てるまでに、ドアの回転に加えてラッチ装置を作動させる仕事が追加される。
従ってドアが勝手に閉まるようにするバネの力よりもドアを戸当りに押圧し密閉する力のほうが大きいことになる。しかも、バネの力が弱まったドアを閉める最後の段階で、ドアを戸当りに押圧するための最大の力が要求される。
ドアを開き始めるとき、バネの力は上記の「戸当りに押圧するための最大の力(以下、密閉力という)」であり、ドアを開くときこれを初期値にして、バネの力は増加する。即ちドアを開くとき、強くした密閉力は最後まで影響を与える。本発明はドアを開くときの力を最小限に留めて、しかも密閉力を最大にするようになされたものである。
【0004】
ドアが閉まる過程において最後まで強い力が働くとそれだけ慣性力が閉まるに従って大きく成長することになり、ドアが閉まったときの衝撃が大きくなる。通常ドアクローザと呼ばれる商品は油の粘性抵抗やその他の摩擦抵抗によって慣性力によって生じたドアの加速に抵抗をかけて減速するもので、この抵抗に打ち勝って回転させるため、バネの力を更に強める結果となり、ドアを開く際、更に重たく感じるようになった。
本発明はドアを閉める回転作業と最後に密閉する作業を別々に処理して、ドアを閉めるバネが閉まるときに限って作用して、ドアを密閉する際働かないようにするもので、ドアを開くときドアが重たく感じないようにするものである。
【背景技術】
【0005】
従来のドアの閉止装置、例えば特許文献1〜5は、ドアを最後に密閉する力でドアを全開状態から閉止するまで回転させるものであって、本願のように、ドアを回転させる範囲を全開状態から閉止直前までに留める回転装置と、閉止直前から閉止にいたる範囲に限ってドアを回転させる密閉装置ではない。本願の密閉装置では密閉力を強くしてもドアの回転は速くならないが、従来のドアの閉止装置では密閉力を強くすればするほどドアの回転が速くなり、抵抗をかけて減速する必要になった。
特許文献1〜5に限らず従来の減速装置は密閉力に反対方向の力を負荷して密閉力を弱めるものであり、本願の装置は密閉力を温存しながら回転力を弱めるもので、摩擦抵抗などの反対方向の力を負荷して密閉力を弱めるものではなく力の働く方向を変えることによって回転力を増減して制御するもので、ドアの閉止と密閉に必要な力を最小限にしている。
【0006】
特許文献1〜5は閉止直前に減速或いは一時停止させるドアの緩衝装置に関するものであり、これらの緩衝装置には本願の密閉装置のように密閉する機能を備えていない。また特許文献4,5の緩衝装置はドアの取手に近い位置でドアの回転軸から離れた位置に取り付けられ、ドアの回転軸から離れた位置の長い円周の軌跡に対してブレーキをかける距離が短くいので、ブレーキのかかる時間は短くなり、減速は殆んど衝突に近い状態になる。特許文献4,5やその他一般の緩衝装置は強い密閉力を温存して閉止するドアを止めようとするものであり、本発明のように密閉力を失ったドアを減速しようとするものではない。
特許文献6〜9は本願出願人のドアに関する一連の発明であり未公開であるが、既に本願の回転装置と密閉装置について記載している。
【0007】
【特許文献1】特開平9−177425
【特許文献2】特開2006−63557
【特許文献3】特開2007−39917
【特許文献4】特開2003−286787
【特許文献5】特願2006−144419
【特許文献6】特願2007−087561
【特許文献7】特願2007−198248
【特許文献8】特願2007−265603
【特許文献9】特願2007−319541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のドアは、どこからでも手を放すと同じ力が作用して勝手に閉まるドアで、低速回転で閉止した後、衝撃を伴うことなく強くドアを密閉するにもかかわらず、ドアを開くときにドアが重たく感じられない特徴を持ち、バネで動くにも拘わらず、ドアの回転速度を微調整することが出来るドアを提供するもので、ドアが閉まる前に一旦停止するドアを提供するものである。即ち、一般に普及している油の粘性抵抗によって閉止速度を減速するドアクローザと同等以上の性能を有することを目的にしている。
低速回転でどこからでも手を放しても止まったままにならず、かろうじて閉まり始めるようすることで、ドアを開いたどの位置においても、かろうじて閉まり始めるために必要な力以上の力が働かないようにすることであり、ドアを開くときにドアが重たく感じられないようにするには、ドアを開くときに初めから終わりまで均等の力でドアを開くことである。
「ドアクローザと同等以上の性能を有する目的」を達成するための第一の課題は、ドアに働く回転力が「止まったままにならずに、かろうじて閉まり始めるようする必要で且つ十分な最小の力」であって、ドアを開いたどの位置においても、常に一定であるようにすることである。
【0009】
通常のバネで動くドアはバネを調節してドアの回転速度を調節しようと試みても、止まってしまうか、動くとしても早くドアが閉止するかのどちらかであり、ドアの回転速度を調節できない。
ドアに働く回転力である「止まったままにならずに、かろうじて閉まり始めるようする必要で且つ十分な最小の力」はドアによって異なり、本発明においても、1つの回転伝達装置で全てのドアに対応できることと、1つのドアに対してもドアの回転速度を最低速度に調節できることが必要である。
「ドアクローザと同等以上の性能を有する目的」を達成するための第ニの課題は、ドアに働く回転力を調節することである。
【0010】
ドアを密閉する力はドアを回転させながらドア側面に仕込んだラッチを回転させる仕事をするので、単にドアを閉止する力よりも強く、上述の弱い回転力で閉止するドアはラッチを回転させることなく停止しドアを密閉するに至らない。
バネの力はドアが開くに従い大きくなり、通常のドアクローザでは上記の密閉する強い力に加えてドアが開くに従い大きくなる力が加算されるためドアを開くときにドアが重たく感じられるが、本発明のようにカム車輪とカム体摺動面とによる回転伝達装置では、ドアを開くときに上記の密閉する強い力が影響しないように出来る。
「ドアクローザと同等以上の性能を有する目的」を達成するための第三の課題は、上記の密閉する強い力がドアを開くときに影響しないようにしてドアを密閉するときにだけ働くようにすることである。
【0011】
本発明のドアが低速で閉止するとしても常にドアに回転力が働いている以上は加速しており、ドアの閉止時に強い衝撃を伴う。第三の課題の「密閉する強い力がドアを密閉するときにだけ働くようにする装置」が加速されたドアを減速しながら密閉する装置でなければ、ドアの閉止直前でドアを密閉する強い力が作用すると、更にドアの回転は加速するので、
衝撃を伴うことなく強くドアを密閉するための第四の課題は、ドアを減速しながら密閉する装置である。この密閉装置の密閉に伴う動作に伴うドアの回転を出来るだけ小さくすることによって、即ち密閉装置の作動ができるだけ瞬間的に実行されることによって、更なるドアの回転の加速を最小に留めることができる。
【0012】
本発明の最も困難とするところは、カム体摺動面がカム車輪に一定の押圧力を作用させることであるが、カム体摺動面がカム車輪に働く押圧力が一定でなくても、カム車輪がカム体摺動面上を移動する速度にそれほど影響するものではないので、むしろドアを密閉する作業を上述のようにカム体摺動面の形状を変化させる手段に頼るよりも、バネの力の調整によるほうが、閉止作業とドアの密閉作業を別個に取り扱い調節することが出来、ついでにドアの閉止作業とドアの密閉作業との間の引き継ぎにドアの一旦停止状態を挿入することが出来る。第五の課題は、ドアの閉止作業にだけ携わるバネとドアの密閉作業とにだけ携わるバネとを分離してドアの閉止作業からドアの密閉作業に引き継ぐようにするリレー装置である。
【0013】
オイルダンパーを用いたドアクローザが取り付くドアは、強風にあおられてもドアが閉まる前に停止する機能があり、本発明のドアが「オイルダンパーを用いたドアクローザと同等以上の性能を有する目的」を達成するためには、強風にあおられてもドアが閉まる前に停止する機能を有する必要がある。これが第六の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ドアを開くときにドアが重たく感じられないようにする手段で、ドアに働く回転力が「止まったままにならずに、かろうじて閉まり始めるようする必要で且つ十分な最小の力」であって、ドアを開いたどの位置においても、常に一定であるようにする第一の課題を解決するための手段は、
「カム体回転軸の周りを回転自在に軸支されるカム体に設けられたカム体摺動面に沿って、回転体回転軸の周りを回転自在に軸支される回転体の先端部に設けられた回転支軸に取付けたカム車輪が移動して、上記カム体摺動面が上記カム車輪を押圧して上記回転体を回転させる回転伝達装置において、上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保つようにしたカム体摺動面の形状」である。
【0015】
「上記カム車輪が上記カム体摺動面を押圧して上記カム体を回転させる回転伝達装置」には図1〜5に説明する凹面のカム体摺動面がカム車輪を回転体回転軸に向かって押圧する回転伝達装置と、図6に説明する凸面のカム体摺動面がカム車輪を回転体回転軸に向かう方向と反対方向に押圧する回転伝達装置とがあり、共にカム体摺動面の形状は「上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保つ形状」である。
【0016】
「上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保ようにしたカム体摺動面の形状」は図1〜5に説明する凹面のカム体摺動面についても、図6に説明する凸面のカム体摺動面についても、
「回転体回転軸Oを中心とする円Rb上に等分に配した点bi(i=0,1,2、・・・)を通る接線Ti(i=0,1,2、・・・)が回転体回転軸Oを中心とする仮想円Raの接点ai(i=0,1,2、・・・)に接するとして、
上記点biを通り上記接点aiを中心とする次の円弧の始点biに、上記点bi−1を通り上記接点ai−1を中心とする前の円弧が交わるように、上記前の円弧をカム体回転軸Qを中心に回転移動して、上記次の円弧に上記前の円弧を連続し、更に移動した前の円弧の始点bi−1に、前の円弧の前の円弧を連続して作図されるカム体摺動面の形状」である。
【0017】
ドアを開いたどの位置においても、常にドアに働く回転力が一定であるようにする第一の課題を解決するための手段は、上述の図1〜6に説明するカム体摺動面がカム車輪を押圧して回転体を回転させるものと図7,8に説明するカム車輪がカム体摺動面を押圧してカム体を回転させるものとがある。
カム車輪がカム体摺動面を押圧してカム体を回転させ場合の「カム車輪とカム体摺動面との間で働く押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保ようにするカム体摺動面の形状」は図8に説明するようにインボリュート渦線である。形状がインボリュート渦線であるカム体摺動面に押圧力が作用するときカム体の移動軌道に関係なくカム体が一定の回転力で回転するので、この回転伝達装置は
「形状がインボリュート渦線であるカム体摺動面にカム車輪が押圧力を作用させてカム体を一定の回転力で回転させる回転伝達装置で、且つカム体の回転力でカム車輪に一定の押圧力を作用させる移動装置」である。
【0018】
図7,8に説明する形状がインボリュート渦線であるカム体摺動面に押圧力が作用するときカム体の移動軌道に関係なくカム体が一定の回転力で回転するが、図1〜6に説明するカム体摺動面がカム車輪を押圧して回転体を回転させる回転伝達装置では、カム体に作用する回転力がカム体の移動軌道に関係し、図9〜15に説明するように
「上記カム体回転軸と上記回転体回転軸とに間の距離が変化するカム車輪とカム体とによる回転伝達装置」や「上記カム車輪の上記回転支軸と上記回転体回転軸との間の距離が変化するカム車輪とカム体とによる回転伝達装置」は回転体を回転させる回転力を調節することが出来、「ドアに働く回転力を調節する」第ニの課題を解決する手段である。
この手段は止まってしまったドアを再び動き出すように調節し、ドアを回転させるには力不足の状態を解消させることによってドアの閉止速度を止まるか止まらないかの最低速度に調節するもので、カム体摺動面がカム車輪に働く押圧力の方向を変化させて調節するものである。通常のドアクローザのようにドアを閉止する力の方向と反対方向に抵抗その他の力を作用させるものではないので、ドアを開くときの力がそれだけ軽減される。又摩擦抵抗による減速装置ではないので、磨耗がなく、また性能の低下はなく安定している。
【0019】
第三の課題の「上記の密閉する強い力がドアを開くときに影響しないようにしてドアを密閉するときにだけ働くようにする」手段は図15〜18に説明するように、
「上記カム体摺動面の上記カム体回転軸に近い部分を直線或いは凸面にして、上記カム車輪が上記カム体回転軸に近い部分にあるとき、上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸との距離を大きく変化させるカム体摺動面をもつ回転伝達装置」であり、ドアを開くときに影響しない「カム体摺動面がカム車輪を押圧する強い力」が、ドアが閉まる直前に大きくその威力を発揮するようになる。
【0020】
第四の課題のドアを減速しながら密閉する装置は図19〜21に説明するように、
「カム体回転軸の周りを回転自在に軸支されるカム体に設けられた凹面或いは凸面のカム体摺動面に沿って、回転体回転軸の周りを回転自在に軸支される回転体の先端部に設けられた回転支軸に取付けたカム車輪が移動して、上記カム体摺動面が上記カム車輪を押圧して上記回転体を回転させる回転伝達装置で、上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにしたカム体摺動面をもつ回転伝達装置」であり、この装置はドアが閉止する直前で「凹面或いは凸面の焦点を通るようにした押圧力の作用線」がかならず回転体回転軸を通るか接近するかして、ドアの回転を停止させるか減速するかの状態にする。
凹面のカム体摺動面の1例として円弧のカム体摺動面を、また凸面のカム体摺動面の1例として直角に折れたカム体摺動面を図19に示し、それぞれの実施例を図20,21に示す。
【0021】
図19に説明するようにこの装置を
「上記カム体回転軸と上記回転体回転軸とに間の距離が変化する回転伝達装置」とすることによって動き出すように調整し第四の課題のドアを減速しながら密閉する課題を解決する。またこの装置がドアの回転を伴わず作動するものとするために図20、21に説明するように、「上記カム体回転軸が回転移動する回転伝達装置」とする。
【0022】
「ドアの閉止作業にだけ携わる回転伝達装置とドアの密閉作業にだけ携わる回転伝達装置とを備える回転伝達装置」は例えば図22、23に説明するように「ドアの閉止作業にだけ携わる摺動面」に「ドアの密閉作業にだけ携わる摺動面」を連続して1つのカム体摺動面にした最も簡単な構造のものと、図24〜27に説明するように「ドアの閉止作業にだけ携わる摺動面」と「ドアの密閉作業にだけ携わる摺動面」とを分離して、ドアの閉止作業の後にドアの密閉作業を引き継がせるものがあり、この場合ドアの閉止作業とドアの密閉作業を別個に取り扱い調節することが出来、ドアを最も弱い力で回転させ、最も弱い力で密閉するように出来る。またドアの閉止作業とドアの密閉作業との間の引き継ぎにおいて、ドアを回転させる仕事以外の仕事をすることによって、ドアの一旦停止状態を挿入することも可能となる。
図24、25の実施例は「上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保つようにしたカム体摺動面と、それに沿って円運動するカム車輪と、上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにしたカム体摺動面と、それに沿って円運動するカム車輪とを備え、
上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにしたカム体摺動面に上記カム車輪が接触するとき、上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保つようにしたカム体摺動面に上記カム車輪が接触しないようにした回転伝達装置」であり、
図26、27の実施例は「上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにしカム体摺動面と、それに沿って円運動するカム車輪とを備え、
上記カム車輪が接触するとき回転し、接触しないとき回転しない上記カム体摺動面を有する回転伝達装置」である。
【0023】
第五の課題の、「ドアの閉止作業にだけ携わるバネ」と「ドアの密閉作業にだけ携わるバネ」とを別にするバネの機構と、「ドアの閉止作業からドアの密閉作業への引継ぎ」は図28に説明し、「ドアの密閉作業にだけ携わるバネ」は図28〜33に説明する。図28に説明する「ドアの密閉作業にだけ携わるバネ」は
「ドア枠に取り付けられるプレートに取付けられる回転軸に固着する回転体と、該回転体の該回転軸と反対側の端部に設けられる回転支軸と、中間の連結軸で連結されるリンクとバネと、該リンクの片方の側面に接触する当りと、上記プレートに取付けられる固定支軸とを備え、
上記リンクの連結軸の反対側の接続軸が上記回転支軸に回転自在に軸支されるとき、上記リンクの両端の接続軸の間の距離が上記回転支軸と上記回転軸との間の距離であるようにし、且つ上記当りを上記回転体に取付けて、
或いは上記リンクの連結軸の反対側の接続軸が上記固定支軸に回転自在に軸支されるとき、上記リンクの両端の接続軸の間の距離が上記固定支軸と上記回転軸との間の距離であるようにし、且つ上記当りを上記プレートに取付けて、
上記回転体の回転の途中までは上記リンクの回転が上記当りによって止められ、上記連結軸を上記回転軸の位置に留めるようにして上記バネが伸縮しないようにして、上記回転体の回転の途中からは上記リンクと上記当たりが離れて、上記連結軸が回転軸の位置から離れるようにして上記バネが伸縮するようにし、上記回転体に回転の途中から作用するバネ」である。
【0024】
図29〜33に説明する「ドアの密閉作業にだけ携わるバネ」は
「前記リンクに車輪が取り付き、前記リンクが前記当たりから離れたあと、該車輪が前記プレートに取付けられる滑走面に沿って移動することで、前記連結軸を前記回転軸の位置に留めるようにして前記バネが伸縮しないようにして、
或いは前記リンクに滑走面が取り付き、前記リンクが前記当たりから離れたあと、該滑走面が前記プレートに取付けられる車輪に沿って移動することで、前記連結軸を前記回転軸の位置に留めるようにして前記バネが伸縮しないようにして、
前記回転体が更に回転し、上記滑走面と上記当たりが離れて、上記連結軸が回転軸の位置から離れるようにして上記バネが伸縮するようにし、上記回転体に回転の途中から作用するバネ」である。
【0025】
上述の「ドアの密閉作業にだけ携わるバネ」と「ドアの閉止作業にだけ携わるバネ」とによる回転機構はこれだけで、ドアを低速で閉止した後強く密閉する機能を有しているが、ドアの回転に対して装置の回転体の回転が大きい場合など、バネの伸縮に負荷がかからなくなるとバネが一瞬に縮まる性質から、ドアを減速する機能がなくなる場合があり、閉止直前の減速は期待できない。これに対して「カム体とカム体摺動面とによる回転伝達機構」は強く密閉する機能に限界があり、このバネの機構によって回転するものでもあり、バネの機構と互いに機能を補い合うものである。
強風にあおられてもドアが閉まる前に停止する機能を有する必要がある。これが第六の課題である
【0026】
「強風にあおられてもドアが閉まる前に停止する機能を有する」第六の課題を解決する手段は、
「駆動する回転軸に固着される回転体の該回転軸と反対側の端部に設けられた接続軸とドアの接続軸とを2つのリンクによって連結し、ドアが全開状態から閉まる直前までは上記2つのリンクが一直線を保ち、ドアが閉まる直前で上記回転体とそれに連結するリンクが側面で互いに接触して一体となり、
上記2つのリンクA及びAAの連結点PPが、上記回転体Jの回転軸Qと上記接続軸Cとを結ぶ直線Zを境界にして、上記ドアDの回転軸Oを含まない領域内にドアが閉まる直前に移動するようにして、上記回転体の回転によってドアが開く方向に回転し、ドアに力が作用しても動かない状態にするドアの連結部を有するドア」であり、このドアは上述した本発明の「減速して回転する駆動部」によって回転することで、ドアが閉まる前に一旦停止状態になるが、単にバネで動く場合は、ドアが開く方向に回転したあと、バネが無負荷状態になって、一瞬にしてバネが縮みドアが閉まる前に一旦停止状態にならない。カム体とカム車輪とからなる駆動部の場合、ドアが開く方向に回転させるために時間が経過して緩慢に回転させることになり、ドアを回転させる必要のない一旦停止状態になっても駆動部が無負荷状態にならないので、一瞬にしてバネが縮み駆動部一瞬にして回転を終えることはない。
【発明の効果】
【0027】
通常ドアクローザと呼ばれる商品はドアを閉める回転作業と最後に密閉する作業を1本のバネで処理するため、ドアを開いてバネを引き伸ばす際、バネの力はドアを密閉する強い力から始まってどんどん強くなり、何処から手を離しても勝手に閉まるようにする以上の力が蓄えられる。これがドアを開く際、ドアが重たく感じる要因の1つであり、我々はドアクローザが取り付けられたドアを重たく感じているにもかかわらず、慣れてしまって意識しないようになっていて不便さを感じてないようになっている。また一気に回転して激しい衝撃音ともに戸当たりに衝突するようになる原因でもあり、ドアに指などを挟む事故の原因でもある。通常のドアクローザはともすれば、単に勝手に閉まる機能をつけるだけで、せっかく抵抗なく回転するドアにわざわざ抵抗をつけて回りにくくしただけの結果になっている。
【0028】
本発明のドアにおいては、ドアに回転を与えるバネはドアの回転軸に近い位置に取り付けられ、しかも何処から手を離しても勝手に閉まるようにバネの力を必要最小限に微弱にして、ドアの開閉する際、バネをドアに取付けたとことも感じ取れないようにしている。
また本発明ではドアに作用する力の方向をドアの回転の接線方向から半径方向に移行させることによって、密閉時にはバネの力の最大値を、全開時には最小値を作用させるようにしている。またドアの回転量に対してバネの伸縮量を少なくして、ドアの開閉に力がかからないようにしている
【0029】
玄関ドアのように外壁に取り付けられるドアクローザは、ドアクローザを取り付ける骨組の強度が強く強力なバネで作動するドアクローザを支持することが出来るが、室内に取り付ける場合、取付け部分がともすれば木造であるように骨組の強度が弱く、又使用頻度が高いため、取付け部分の骨組が壊れたり、取付けボルトが抜けたりする。本発明の強力なバネで作動するものではないので、ドアの回転時にドアが受ける反力が小さく、強度が弱い骨組にも取付けることができる。また本願図面に示した全ての実施例において本願の閉止装置はドアのドア枠に対面しない外面に取り付けられ、装置がドアとドア枠に挟まれる領域内に入らないので、開口部を通過する人の邪魔にならない。
【0030】
本発明のカム体とカム車輪による回転伝達装置は、一定の押圧力を一定の回転力に変換するもので、逆に使用すれば一定の回転力を一定の押圧力に変換するものとなる。図1〜7の回転伝達装置は一定の重力が働く重量物を回転させる手段でもあり、図8の回転伝達装置は上下に移動させる手段でもある。これは初めから終わりまで一定の力で均等に力を作用させることにより、必要とする力の上限を低く抑えるもので、手動や出力の小さなモータなど小さな力で重量物を移動させるとき有効な手段となる。
【0031】
駆動部と被駆動部が2つのリンクで連結される伝達機構は駆動部がバネに頼らず、例えば電動のモータとすると、閉まる前に開く或いは止まる或いは減速する効果がある。また被駆動部の動きが止まっても、駆動部の動きが止まらないので電動のモータによると、閉まった後にドアを密閉する押圧力を徐々に上昇させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
通常カム体とカム車輪との組み合わせは、カム体の回転をカム車輪の直線往復運動に変えるものである。本発明はカム体の回転をカム車輪の円運動に変えるものである。或いはカム車輪の円運動をカム体の回転に変えるものである
カム車輪に沿ってカム体の摺動面が移動するときカム体とカム車輪との接点には押圧力が作用し、押圧力の作用線がカム体回転軸との間に距離が生まれて、カム体回転軸の周りに回転力が働く。
本発明のカム体の摺動面の形状は、上記押圧力の作用線とカム体回転軸との間に距離を一定にするもので、カム体とカム車輪との接点に一定の押圧力が作用させたときカム体回転軸の周りに一定の回転力が働くようにするものである。
本願図面に図示する力の作用線のすべては、力の作用線の方向を表すもので、図示される力の作用線の長さは力の大きさを表すものではない。
【0033】
図1〜8に例示するように本発明のドアの駆動部は、回転体回転軸を中心に円運動するカム車輪Bがカム体回転軸を中心に回転するカム体摺動面Kに沿って移動することにより、回転体A或いはカム体KKの回転を生み出すものである。図1〜6に示すようにカム体KKの回転によって回転体Aが車輪を押圧する場合と、図7,図8に示すように回転体Aの回転によってカム体KKが回転する場合とがある。
【0034】
本発明のドアはどこで手を放しても止まったままにならずに、かろうじて閉まる方向に動き始める力が働いているようにするもので、最小の速度で回転するドアは最小の力によって回転し、どの位置においても、かろうじて動き始める力以上の力が働かないようにするものである。即ち、どの位置においてもドアに同じ回転力が働くようにするものである。
【0035】
本発明のドアは開くことによってバネに閉める力を蓄えて、ドアから手を放したとき、ドアがどの位置にあっても止まったままではなく必ず閉まり始めるようにするもので、どの位置においても止まったままではなく必ず閉まり始めるために必要で最小の力をドアに作用させることにより、ドアを開くときどの位置においても開く力が一定しており必要以上の力が要求されないように設計している。このようにかろうじて止まったままにならない力で閉まるドアは、ドアを開くとき強い力が要らないだけでなく閉まる速度が加速することが少なく、ドアの閉止時の衝撃も少ない。
【0036】
図1〜8はどの位置においても回転体に同じ回転力が働くようになるカム体摺動面Kの形状を提供するもので、車輪Bとカム体摺動面Kの任意の接点bにおいて、車輪Bに働く押圧力の作用線Fbが回転体Aの回転中心Oと一定の距離を保つようにするものである。即ち車輪Bとカム体摺動面Kの任意の接点bにおいて、カム体摺動面Kに垂直な垂線Tが共通の仮想円Rの接線であるようにするものである。
【0037】
図1は本発明の実施例を示し回転軸Qを中心に回転するカム体KKの摺動面Kが、回転軸Oを中心に回転するアームAの先端の回転支軸Ibに取付けた車輪Bを押圧して、カム車輪Bがカム体摺動面Kに沿って転動移動することによりアームAに回転を与えるもので、本発明のドアの駆動部の一例を説明するものである。
引きバネVは片端をカム体KKの接続軸Skに接続し多端を接続軸Swに固定して、且つ回転軸Qを中心とする円周のガイドレールKsに沿って伸縮するようにして、カム体の回転と引きバネVの長さの変化が比例するようにしている。引きバネVの引張力の作用線Fvは円周Qsの接線であり、回転軸Qから一定の距離を保つ。従ってカム体の回転とカム体に働く回転モーメントMkは比例する。
【0038】
カム体KKが図中矢印イ方向に回転すると、カム車輪Bは回転軸Oを中心に図中矢印ロ方向に公転して、カム車輪Bとカム体摺動面Kとの接点bを通る押圧力の作用線Fbと回転軸Qとの距離Lbは減少する。カム体に働く回転モーメントMkと距離Lbが共にカム体の回転にほぼ比例して増加し、カム体に働く回転モーメントMkが押圧力Fbと距離Lbとの積であることから、押圧力Fbはカム体摺動面K上のカム車輪の位置に関係なくほぼ一定である。図1(a)はドアが全開した状態、図1(c)は閉止した状態、図1(b)はその途中の状態を示している。
【0039】
全開状態からドアが閉まるに従い引きバネの長さが減少し、バネの力が弱くなってカム体KKに働く回転モーメントMkは小さくなるが、カム車輪Bが回転軸に近づくことによってテコの原理でカム車輪Bを押圧する力を一定にするようにしている。
図2はカム車輪Bに一定の押圧力が作用するものとして、アームAに一定の回転モーメントを与えるカム体KKの摺動面Kの形状を定義するものである。
【0040】
図2(a)においてカム車輪Bは回転軸Oを中心に回転するアームAの先端の支軸Ibに軸支されている。点Oは仮想円Raと円Rbの中心で、円Rbは点Oを中心に一定の距離を保って公転するカム車輪Bの点Oから最も遠い点の軌跡である。円Rb上の各点b0、b1、b2・・・は中心角Θ0、Θ1、Θ2・・・に対応している。直線T0、T1、T2は点b0、b1、b2・・・を通り、仮想円Raに接する接線であり、点a0、a1、a2・・・はそれぞれの接点である。半径r0、r1、r2・・・は点a0と点b0、点a1と点b1、点a2と点b2・・・の間の距離であり、円Ra円Rbとが同心円であるから半径r0、r1、r2・・・は全て等長である。円弧R0、R1、R2・・・はそれぞれ接点a0、a1、a2・・・を中心とする半径r0、r1、r2・・・の円の一部である。又全ての円弧は半径を同じくし、点Oを中心とする円Rbに限りなく近似する。
【0041】
ここで円弧R0、R1、R2・・・を摺動面とする図示されないカム体が、回転軸Qを中心に図中矢印→イ方向に回転し、車輪B0、B1、B2・・・を押圧し、回転軸Oを中心に図中矢印→ロ方向に公転させるものとすれば、円弧R0、R1、R2・・・が円Rbと僅かな角度で交差し、円弧R0、R1、R2・・・の僅かな回転で車輪Bを大きく移動させる。
カム車輪Bと接する摺動面形状は限りなく円Rbに近似し、等長の半径r0、r1、r2・・・を持つ円弧であり、図1に示されたカム体摺動面Kを分割してどの位置を取り出しても合同な円弧R0、R1、R2・・・であって、図1に示したカム体摺動面Kが同じ円弧の集合体であると仮定することが出来る。
【0042】
接線T0、T1、T2・・・はカム体摺動面R0、R1、R2・・・がカム車輪B0、B1、B2・・・を押圧する力の作用線であり、仮想円Roに接していることから点Oとの距離が一定である。このことはカム体摺動面Rがカム車輪Bを押圧する力が一定であれば、回転軸Oを中心に回転するアームAに働く回転モーメントは一定であることを意味している。
図2(a)において渦線K2は円弧R2であり、渦線K1は円弧R0、R1を点Qを中心に回転移動し、円弧R2に連続させてたものである。連続した渦線K1K2は図1に示したカム体摺動面Kを形成する。渦線K1K2を摺動面とし、回転軸Qを中心に回転する図示されないカム体がカム車輪Bを押圧して回転体Aを回転させるとき、カム車輪Bはカム体摺動面K1K2に沿って移動し、カム車輪Bがどの位置にあっても同じ回転力が働くことになる。
【0043】
図2(b)は渦線K1K2の作図方法を説明するもので、円弧R0、R1、R2のそれぞれが点Qを中心に回転して円弧K0,K1,K2に移動するとき、b0、b1、b2の各点も点Qを中心に回転して点k0、k1、k2に移動し、円弧R0、R1、R2の中心a0,a1,a2は点Qを中心にして回転し点ako,ak1,ak2に移動する。点ak0,ak1,ak2は円弧K0,K1,K2の中心である。
次に作図方法について説明する。
円弧R3の始点b3に連続する円弧K2は、点a2の点Qを中心に円運動する軌跡Ra2上で、点b3から距離r2にある点ak2を中心とする円弧である。同様に円弧K2の始点k2に連続する円弧K1は、点a1の点Qを中心に円運動する軌跡Ra1上で、点k2から距離r1にある点ak1を中心とする円弧である。以下同様にして円弧K0は点ak0を中心とする円弧である。
【0044】
図3(a)に点線で示される渦線K0K1K2・・・R7は、図2(b)の作図方法に従って作図された図1に示したカム体摺動面Kである。
カム体摺動面KがQを中心に図中矢印イ方向に回転して点k6が点b6に移動するとき、カム体摺動面Kとカム車輪Bの円運動の軌跡Rbとの交点は点b7から点b6に移り、図示されないカム車輪Bも点b7の位置から点b6の位置に移動する。次に点k5が点b5の位置に至るとカム体摺動面Kと軌跡Rbとの交点はb5の位置になり、カム車輪Bもb5の位置に移動する。このようにして点k0が点b0の位置に至るとカム車輪Bはb0の位置に移動している。
カム車輪とカム体摺動面との間に働く押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保ようにしたカム体摺動面の形状は次の説明する手順で作図される。
カム体摺動面Kとカム車輪Bの接点bi(i=0,1,2、・・・)を回転体回転軸Oを中心とする円Rb上に等分に配し、次に接点biを通り回転体回転軸Oを中心とする仮想円Ra上の点ai(i=0,1,2、・・・)に接する接線Ti(i=0,1,2、・・・)を描き、接点biを通り点aiを中心とする円弧aiciを描く。
円弧aiciの終点ci(i=0,1,2、・・・)は接点bi+1を通りカム体回転軸Qを中心とする円Rqi+1(i=0,1,2、・・・)との交点とし、次の円弧bi+1ci+1の始点bi+1と交点ciは円Rqi+1上にある、
次の円弧bi+1ci+1をカム体回転軸Qを中心に回転移動して、次の円弧bi+1ci+1の始点bi+1を前の円弧biciの終点ciの位置に移動し、前の円弧biciに次の円弧bi+1ci+1を順次連続してカム体摺動面の形状が作図される。
図3(a)に点線で示される渦線K0K1K2・・・R7は上に説明した手順と反対の作図されたもので、上に説明した手順で作図されたカム体摺動面の形状と合同である。前の円弧biciをカム体回転軸Qを中心に回転移動して、次の円弧bi+1ci+1の始点biの位置に前の円弧biciの終点ciを移動して、次の円弧bi+1ci+1に前の円弧biciが順次連続してカム体摺動面の形状K0K1K2・・・R7が作図される。
【0045】
図3(b)はカム車輪Bが各点b0、b1、b2・・・b7の位置にある時、点線で示すカム車輪の移動方向とカム体摺動面との交差角度が常に一定であることを示すもので、カム体摺動面が同じ半径の円弧で構成されることを示している。各直角三角形a0b0O、a1b1O、o2B2O・・・a7b7Oは全て合同であり、例えば図3(a)に示す直角三角形a5b5OをQを中心に回転移動すると、点線で示す直角三角形ak5k5O5になる。
カム体摺動面上の各点k0、k1,k2・・・b7は、図3(b)に示す各直角三角形aibiO(i=0,1,2,3・・・)をQを中心に回転して、円弧R0、R1、R2・・・R7が連続するようにしたときの位置である。図2図3に示した摺動面はカム車輪に働く押圧力が一定のとき、回転軸Oの周りに一定の回転力が働くようにするものである。
【0046】
バネで働くドアは開くに従いバネの力が変化し、バネの支点が空間を移動することから力の方向が変化し、その結果ドアに働く回転力の大きさも変化する。
図3の場合においても図3(b)に示すように、カム車輪Bが移動した位置における各力の作用線と回転軸Qとの距離Qq0,Qq1,Qq2・・・は変化し、カム車輪Bに働く押圧力を一定にするためには、力の作用線と回転軸Qとの距離の変化に対応して点Qの周りに働くモーメントの大きさも変化しなければならない。図2図3で仮定したように、車輪に働く押圧力を一定にすることは設計上無理な場合がある。
【0047】
図1〜3に示したカム体摺動面はカム車輪Bに働く押圧力の作用線と回転中心Oとの距離が常に一定にする形状であり、カム車輪Bに働く押圧力が一定であると仮定して回転中心Oの周りのモーメントを一定に保つものである。
図4は回転中心Oの周りのモーメントを一定に保つため、「一定でないカム車輪Bに働く押圧力」に対応して形状を変えるものである。図4(a)は該押圧力Fbが開くに従い弱くなる場合で、次第に減少する各押圧力の作用線Fb0,Fb1,Fb2・・・Fb7と回転中心Oとの距離を次第に増加させることで、回転軸Oの周りの回転モーメントを一定に保つようにしている。
図4(b)は該押圧力Fbが開くに従い強くなる場合で、次第に増加する各押圧力の作用線Fb0,Fb1,Fb2・・・Fb7と、回転中心Oとの距離を次第に減少させることで、回転軸Oの周りの回転モーメントを一定に保つようにしている。
【0048】
図4(a)図4(b)の場合は図3(b)の場合と異なり回転中心Oを頂点とし力の作用線を底辺とする直角三角形Oaibi(i=0,1,2・・・)はそれぞれ高さが異なり形も異なっている。車輪を押圧する力Fbが変化する場合、回転中心Oの周りに一定の回転モーメントを働きかけるカム体滑走面の渦線Kは、車輪Bの円軌道Rb上の各点において車輪Bに働く押圧力に応じて各力の作用線と回転中心との距離を決め、点Oを中心とする該距離を半径とする仮想円Ro0、Ro1、Ro2・・・に接する接線Fb0,Fb1,Fb2・・・を決めて、円弧R0、R1、R2・・・を決めてこれらを回転中心Qを中心に回転移動させて連続させることにより形成することができる。
図4において渦線KAは図3に示した渦線KAであり、押圧力Fbが一定に働く場合で渦線Kbは押圧力Fbが開くに従い減少する場合で、渦線KAに比べて回転軸Qに近づくに従い曲率が変化する割合が大きくなる。渦線Kcは押圧力Fbが開くに従い増加する場合で、渦線KAに比べて回転軸Qに近づくに従い曲率が変化する割合が小さくなる。
【0049】
次に押圧力Fbを一定にするバネの力Fvについて説明する。
図1においてガイドKsの円周の半径をrkとすると、回転軸Qのまわりのモーメントの釣り合いから、
Fv=(Fb/rk)Lb (数式1)
であり、ここに(Fb/rk)は一定であるからFVはLbに比例する。Lbの変化は図3(b)において点Qと各点q0、q1、q2・・・との間の距離の変化であり、この距離の変化にFVの変化が対応している。バネVの片方の支点をQに固定し、片方の支点を各点q0、q1、q2・・・を通る点線で示される曲線に沿って移動させたときのバネの長さの変化に対応している。
【0050】
図5(a)は図3(b)に点線で示した曲線q0q1q2・・・を点Qqを中心とする円周であると仮定し、該曲線を裏返して図1(a)に示すカム体KKの回転軸Qに円の中心Qqを一致させたものである。
図5においてバネVの片方の支点を固定点Swとし、他方の支点Skをカム体KKに取付けるとすると、図5(a)においては回転軸Qを中心にカム体KKが回転すると、バネの支点も回転軸Qの周りを公転し、位置をq0、q1、q2・・・q7の位置に順次移動し、バネVの長さの変化は図3(b)で示す押圧力の作用線と回転軸Qとの間の距離の変化に一致する。図5(a)の場合カム体KKに働くバネの力の作用線はバネの軸芯線であり、回転軸Qとの距離が変化し、数式1の仮定のrkが一定である条件を満たしていない。
【0051】
図5(b)はバネVが回転軸を中心とした円周のガイドKsに沿って巻きつくようにしたもので、カム体KKは回転軸Qを中心に回転し点線で示すKK0の状態から実線で示すKK90の状態に移動し、バネの支点Skの位置もSk0の位置からSk90の位置に移動する。バネの支点Skがq0、q1の位置に順次移動した後、q2q3の位置に順次移動するとき、バネVはガイドKsに沿って巻きつきながら長さを変化させる。このときバネの力の作用線と回転軸Q」との距離rkは一定であり数式1の仮定を満足する。
又図5(a)においてバネの支点Skの位置がq2q3・・・の位置に順次移動し、そのときのバネの長さの変化が図5(b)においてバネの支点Skの位置がq2からq3の位置に移動し、バネVがガイドKsに巻きつきながら長さを変化させるときの長さの変化と一致するものとするならば、図5(b)に示すバネの機構は図3に示すカム車輪に働く押圧力を一定にすることになる。
しかしバネの引張力はバネ全長の変化ではなくバネの伸縮量に比例するので、図5(c)に示すように固定点側のバネの支点をSwの位置からバネの自然長LVの長さだけ延長した位置Swwに移動させる。図5(b)においてSwの位置からq3の位置に図示するバネの部分はバネの引張力に比例する伸縮量を示すことになる。
【0052】
数式1に示すように図1の構造の駆動部は、車輪Bが回転軸Qに近づくに従い、即ちLbが小さくなればなるほど、働くバネの力が弱くなることになる。しかしLbの変化はカム体の回転に比例するものではなく、図3(b)や図4に示したように、曲線q0q1q2・・・は次第に曲率を大きくして直線に近づく曲線で、固定点Qと移動点qとの距離の変化は点qが円周上を移動するときの円の中心から遠ざかる弦の長さの変化であり、次第に点qが直線上を移動するようになるときの変化である。点qが直線上を移動するときにカム体の回転とバネの力は、より比例関係にあることになるが、図5(b)に示すバネの構造は比例関係にない部分においても比例関係が成立しており、カム体を大きく回転させるほどバネの強さは必要以上に大きくなることになる。
図5(c)はこれを改善するもので、図5(b)に示したガイドKsの形状を円弧Ksから渦線Kssにしてカム体に働く回転軸Qの周りの回転モーメントを調整している。即ちカム体KKが回転するに従い、バネと回転軸との距離の変化が関係することになる。
【0053】
図6図7図8はカム車輪がカム摺動面に沿って移動することにより回転を伝達し合うその他の機構の実施例を示すもので、図6は回転軸Qの周りを回転するカム体摺動面Kが、カム車輪Bに一定の押圧力を作用させることにより、回転体Aに回転軸Oの周りに一定の回転力を与えるものである。
図6(b)図7(b)図8(b)は、図2で説明した作図方法に従ってそれぞれの場合のカム体摺動面形状を作図するもので、すべての場合において図3(a)の場合と同じく、カム車輪Bの軌道とカム体摺動面との交点bにおけるカム体摺動面の接線に垂直な直線Tは、点Oを中心とする仮想円Raに接点aにて接している。カム体摺動面に垂直な直線Tはカム車輪に作用する力或いはカム車輪が作用する力の作用線で、回転軸Oとの距離を一定に保っている。従って回転軸Oの周りの回転モーメントは常に一定である。
カム体摺動面を細かく分割してカム体摺動面をその分割した微分要素の集合体と考えると、
交点bを通るカム体摺動面の微分要素は、「垂線Tと仮想円Raの接点a」を中心として距離abを半径とする円弧Ri(i=0,1,2・・・)に近似している。
【0054】
図6(b)においては点bi(i=0,1,2・・・)を通り点Qを中心とする円Rqi(i=0,1,2・・・)と円弧Riとの交点をci(i=0,1,2・・・)とし、同様に、図7(b)図8(b)においては点bi(i=0,1,2・・・)を通り点Oを中心とする円Roi(i=0,1,2・・・)と円弧Riとの交点をci(i=0,1,2・・・)とし、
円弧Riと接線Tiからなる図形aibici(i=0,1,2・・・)を、図6(b)においては点Qを、図7(b)図8(b)においては点Oを中心に回転移動して、図6(b)においてはR5に、図7(b)図8(c)においてはRoに連続するようにすると、各々のRii(i=0,1,2・・・)はKii(i=0,1,2・・・)に回転移動してカム体摺動面が作図される。
【0055】
図1〜図6に例示した実施例はカム体KKの回転によってカム体KKがカム車輪を押圧し、回転体Aが回転するものである。図7,図8に示す実施例は回転体Aの円運動によってカム体KKが回転するものある。図1〜図6に例示した実施例とは逆に図7図8はカム車輪Bがカム体摺動面Kに一定の押圧力を作用させて、カム体KKに回転軸Oの周りの回転力を一定にするものである。
図1〜図6のカム体摺動面において、カム体摺動面の接線に垂直な直線Tは、カム体が回転させる相手の回転体Aの回転軸を中心とする仮想円に接している。従って図1〜図6のカム体摺動面の形状は相手の回転体Aの回転軸の位置によって変化する。
これに対して図7図8のカム体摺動面において、カム体摺動面の接線に垂直な直線Tは、自身の回転軸を中心とする仮想円に接している。従って図7図8のカム体摺動面の形状は相手の回転体Aの回転軸の位置によって変化されない。図7図8のカム体摺動面の形状は自身の回転軸を中心とする仮想円の大きさによって決定する。
【0056】
図1〜図6においてカム車輪が移動する円軌道の中心は、カム車輪とカム体摺動面との接点bを通るに垂線Tが接する仮想円の中心と同じで、カム車輪は仮想円の中心と一定の距離を保って移動する。カム車輪が移動する円軌道と仮想円は同心円であるから、図3(b)図6(b)に示すように同心円で定義されるカム体摺動面の微分要素は、すべて合同である。
これに対してカム車輪が移動する円軌道の中心は、カム体摺動面に立てた垂線Tが接する仮想円の中心ではなく、カム車輪は仮想円の中心からの距離を変化させて移動する。図7(b)図8(b)に示すようにカム体摺動面の微分要素の円弧の半径は、カム車輪とカム体摺動面との接点bが仮想円の中心から離れるに従いおおきくなる。カム体摺動面の微分要素の円弧の半径は、カム車輪とカム体摺動面との接点bが仮想円の中心から離れるに従い大きくなるが、分要素の円弧は次第に同一に近づき図7図8のカム体摺動面の形状はカム体の回転軸から離れるに従い円に近づく。
図7図8の場合、カム体の回転軸から離れたカム体摺動面の円に近い場所ではカム車輪の移動に対してカム体が大きく回転することになり、図1〜図6においてカム体と回転体の速比がほとんど一定であるのに対して、図7図8の場合、カム体の回転軸から離れる程に速比が大きく変化する。
【0057】
図3(b)図6(b)においてまた図7(b)図8(b)において、カム体摺動面の微分要素の円弧Ri(i=0,1,2・・・)が仮想円と同心円と交わる角度はカム車輪のカム体摺動面上の移動方向に対するカム体摺動面の勾配を表しているが、図3(b)図6(b)においては一定であり、図7(b)図8(b)においてはカム体の回転軸から離れる程に勾配が小さくなる。
このことは図7図8の場合カム体の回転軸から離れる程に車輪が移動しにくくなることを意味しており、カム体の回転軸から離れる程に速比が大きく変化する意味も含めて、カム車輪がカム体の回転軸に近づくに従いカム体の回転が速くなることを意味している。
【0058】
図7においてカム車輪Bは回転軸Qの周りを公転し、図8においては単に直線的に上下するもので図7の回転半径が無限大の場合に相当する。図7図8のカム体摺動面の形状はカム車輪Bは回転軸Qの位置に関係なく自身の回転軸を中心とする仮想円の大きさによって決定するので、図7のカム車輪Bは回転軸Qの周りを公転する場合でも、図8の直線的に上下する場合でも、カム体摺動面の形状は自身の回転軸を中心とする仮想円の大きさによって決定する。
図7の場合でも、図8場合でも、仮想円の大きさを同じ大きさに設定するならばカム体摺動面の形状は一致する。
【0059】
図8はカム体の一定の回転力によってカム車輪Bを上下に移動させる手段にもなり、同様に図3図6図7の場合についてもカム車輪の一定の回転力でカム体が回転することも考えられる。カム体とカム車輪との間には常に一定の力を作用している。
図8は回転運動を上下の移動手段に用いる一般的な手段ではあるが、初めから終わりまで一定の回転力で物を上下に移動することになる。図8で定義するカム摺動面を有するカム体を採用すれば、初めから終わりまで作用させる力を均一にすることによって、最も弱い力で重量物を上下に移動することを可能になる。
【0060】
図8(b)は図7(b)に示す円弧bici(i=0.1.2.・・・)の始点bi(i=0.1.2.・・・)を点Oを中心にして回転移動して半径方向の直線上に配したものである。
円Oを中心とする円Ri(i=0,1,2・・・)とカム車輪が移動する軌道との交点を点bi(i=0,1,2・・・)とし、直線Ti(i=0,1,2・・・)が点bi(i=0,1,2・・・)を通り、仮想円Raと接点ai(i=0,1,2・・・)で接するとし、点aiを中心とする半径をaibiとする円弧と円Ri−1との交点をci(i=0.1.2.・・・)とすると、図7(b)においても図8(b)においても、円弧biciは、円Riとカム車輪が移動する軌道との交点を点biが円Ri上のどの位置にあってもどうどうである。図7(b)に示した円弧と図8(b)に示した円弧とは合同である。
【0061】
図形aibici(i=0.1.2.・・・)を点Oを中心にして回転移動して、図形aibiciの終点ciを図形ai−1bi−1c−1iの始点bi−1の位置に移動させ円弧biciを円弧bi−1ci−1に連続させる。このように直前の円弧の始点に次の円弧の終点を連続させて渦線b0k1k2k3・・・は作図される。
点biが円Ri上のどこにあっても定義される円弧biciは全て合同であるので、円弧biciを回転移動して連続させて作図される渦線b0k1k2k3・・・はカム車輪の移動が如何なるものであっても1つに決定する。
図8(b)において円弧biciの始点biは半径方向の直線上に等分に配しているが、円弧biciの長さは点Oから離れるに従い長くなり、円弧biciの終点ci付近では垂線が仮想円Ra上の接点aiを通るが仮想円Raに接するようにならないので、図8(b)において円弧biciの長さを一定にして円Riと円Ri−1との間隔を漸次減少させていくと、より精度のよい渦線が得られる。
仮想円Raに点jiで接し点jiを中心に長さjikiを半径とする円弧kiki+1を描き、仮想円Raから遠いほうの端点ki+1に、端点ki+1を通り仮想円Raに点ji+1で接する接線Ti+1の長さji+1iki+1を半径とし点ji+1を中心とする「円弧kiki+1と等長である円弧ki+1ki+2」を順次連結していくとより精度のよい渦線が得られる。
【0062】
図8(b)において例えば円弧K2の半径はj3k3であり、j3k2でもある。j3k2は半径j2k2と円弧j2j3の長さの和である。このように全ての円弧Kiについて円弧ki+1ki+2の長さは半径の長さがjikiから長さji+1iki+1に変化したときの増分である。よって、このようにして作図される図8(b)の渦線はインボリュート渦線である。
図8(a)に示すようにカム体摺動面の任意の点に立てた垂線がひとつの仮想円に接する場合、カム体摺動面の渦線形状はインボリュート渦線であり、初めから終わりまで一定の回転力で物を上下に移動する図8のカム体摺動面の渦線形状はインボリュート渦線である。図8(b)に示した作図方法はインボリュート関数を使わない点において簡便である。このインボリュート渦線はカム車輪の移動に関係なくは決定する。これに対して図1〜6のカム体摺動面の渦線はカム車輪の移動軌道によって変化する渦線である。
図1〜6のカム体摺動面の渦線は仮想円と移動軌道が決まれば渦線の形状が決まるが、カム体摺動面が決められた後で、カム体と回転体の回転軸間の距離を変化させるなどしてカム車輪の移動を変化させると、カム車輪に働く押圧力の作用線の方向が変化する。図7,8に示す渦線は、カム車輪の移動を変化させてもカム車輪に働く押圧力の作用線の方向は変化しない。図7,8に示す、インボリュート渦線と図1〜6の渦線とは明らかに異なっている。
【0063】
図1〜図6においても一定の回転力で回転するカム車輪の回転で一定の荷重が負荷されるカム体を回転させると考えた場合、重量物を直線上ではなく円周上を移動させる手段と考えられる。本発明はドア等を手動で回転させるとき初めから終わりまで作用させる力を均一にすることによって最も弱い力でドアを開閉するものであり、重量物を手動で移動させるとき初めから終わりまで作用させる力を均一にすることによって最も弱い力で重量物を移動するものである。
【0064】
ドアが開いたどの位置においても、止まったドアが動き始めるために必要な力は同じである。以上に説明したカム体摺動面はドアが開いたどの位置においてもドアに同じ回転力を与えるものである。
実施例図3図6において、カム車輪の円運動の移動方向、即ち図3図6においてはカム車輪の移動Rb方向とカム体摺動面とは常に同じ角度で交わっている。実施例図7においては実施例図3図6の場合と異なり、カム車輪の移動が回転の中心から常に同じ距離を保つ円運動ではなく回転の中心からの距離が変化し、一定の押圧力で同じ回転力を与えるために、カム車輪の移動Rb方向がカム体摺動面と交わる角度は変化している。
【0065】
実施例図3図6図7において、カム車輪がカム体回転軸に向かって移動するとき、一定の重さを積載した台車が下り勾配の坂道を降りる状態で、反対に遠ざかる方向に移動するとき、上り勾配の坂道を移動する状態である。台車の車輪はカム車輪Bにたとえられ、坂道に働く一定の重さはカム車輪に働く押圧力Fbにたとえられる。
実施例図3図6の場合、一定の勾配の坂道で止まる「一定の重さを積載した台車」はどの位置においても止まり、動き始める台車はどの位置においても動き始める。カム体摺動面Kが一定の押圧力Fbでカム車輪に働くとき、どの位置においても止まり、動き始める台車はどの位置においても動き始める。
実施例図7の場合、「一定の重さを積載した台車」に働く重力は坂道の上のほうでは小さくなる状態で、どの位置においても止まり、動き始めるためには坂道の勾配は坂道の上のほうでは小さくなる。
【0066】
カム体に働く回転力は該押圧力Fbの大きさに比例し、バネの力を大きくすればするほどカム体は容易に回転することになるが、坂道を急勾配にすることによって台車は動き動き易くなるようにカム車輪Bの移動方向とカム体摺動面との交角を大きくすることで、バネの強さが弱くても車輪Bは用意に移動する。
図9(a)(b)(c)は、それぞれ図3図6図7についてカム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角の異なる場合の異なるカム体摺動面の形状を示すものである。異なるカム体摺動面KX,KY,KZのそれぞれは回転軸Oを中心に異なる半径の円RX、RY、RZに対応している。
【0067】
カム体摺動面KX,KY,KZのそれぞれは回転軸Qを中心に回転して回転軸Oを中心とする円Rbと交点bで交わるとき、任意の交点Bにおいて、任意の交点Bを通るカム体摺動面の垂線は交通の円RX、RY、RZに接している。
図9(a)(b)のカム体摺動面Kは、分割してどの位置を取り出しても合同な円弧で、同じ円弧の集合体である。図中qX,qY,qZのそれぞれはカム体摺動面KX,KY,KZの微分要素の円弧の中心の移動を示す。
図9(c)はのカム体摺動面Kの微分要素の円弧は合同ではない。微分要素の円弧の中心は回転軸Oで移動しない。
【0068】
該交角の異なるカム体摺動面は種々考えられ、回転し易いドアには交角が小さいカム体摺動面を採用してドアの回転速度を減速し、又回転しにくいドアには交角が大きいカム体摺動面を採用して加速すればよい事になるが、ドアには回転し易いドアと回転しにくいドアがあって、ドアによって別々のカム体摺動面を用意するわけにはいかない。
図10〜図14に説明するように、同じ交角で一定であるカム体摺動面でも、「回転体回転軸Qとカム回転軸Oとの間の距離」を変化させることによって、「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角」を変えることが出来る。また「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角」は、「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交点b」と回転の中心との距離Rbを変化することによって変えることが出来る。
【0069】
このようにしてドアには回転し易いドアと回転しにくいドアのどのドアに対しても1つのカム体摺動面を用意して対応できる。
「止まったままではなく動き始めるために必要なカム体摺動面の勾配」はドアによって異なり、「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角」が変化するように調整できれば回転し易いドアに取付けたカム体でも、回転しにくいドアに転用することが出来る。又同じドアに同じカム体をつける場合でも、バネの強さを止まってしまわない程度に調整することが出来る。このようにしてドアには回転し易いドアと回転しにくいドアのどのドアに対しても1つのカム体摺動面を用意して、ドアの回転速度を止まってしまわない程度に調整することが出来る。
【0070】
伸びたバネは一瞬にして縮まるもので、バネで動くドアの回転速度を止まってしまわない程度に調整することは非常に難しく、ドアの回転速度をブレーキなどの摩擦抵抗をかけてバネの力と反対方向の力を作用させて減速するようにすると、ブレーキなどの摩擦抵抗などでは性能にバラツキもあって、またブレーキなどの摩擦抵抗を微調整することは困難であり、ブレーキなどの摩擦抵抗を取り除くことによってドアは止まってしまうか急速に動くかのどちらかで、ゆっくり動くように調整することは不可能であった。
【0071】
ドアの回転速度をブレーキなどの摩擦抵抗をかけてバネの力と反対方向の力を作用させて減速することは、バネの力を弱くすることなので、本発明のように「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角」を変化させることによってバネの力を弱くすることと同じである。「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角」は微調整可能であり、ドアの回転速度を連続的に変化させることが出来、ドアをゆっくり動くように調整することが出来る。このように摩擦抵抗に頼らずドアの回転速度を調整することにより、装置に磨耗もなく寿命を長くすることが出来、性能にもバラツキがなく安定した効果を得ることが出来る。
【0072】
図10〜図15は「カム体回転軸と先端にカム車輪を取付けた回転体回転軸との間の距離」を変化させた場合の「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角の変化」を説明するもので、「押圧力の作用線の向く方向の変化」について説明する。図13〜15は図1〜5に関するもので、図13、14はそれぞれ図6、7に関するものである。
また「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交点b」と回転の中心との距離Rbを変化させた場合の「カム車輪の移動方向とカム体摺動面との交角の変化」を図10,13において説明する。
【0073】
図10(a)は回転軸Oの位置を回転軸から遠い位置で距離がLfである位置Ofに移動したときの状態を示し、図10(b)は近い位置で距離がLnである位置Onに移動した状態を示している。図10(a)(b)においてカム体摺動面Kとカム車輪と接する位置は移動し、「カム体摺動面とカム車輪の移動方向との交角」も変化している。
【0074】
図10(a)は「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を遠ざけた場合。点線で示す状態から実線で示す状態に変化し、「カム体摺動面とカム車輪の移動方向との交角」が大きくなり、カム車輪はカム体摺動面上を加速して移動することになる。また回転体回転軸Oを中心とする回転体の回転角も大きくなることから、また「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を遠ざけると、ドアが閉止する位置に近い位置でドアの回転速度が加速するようになる。
【0075】
図10(a)において点線と実線で示す状態の変化が、回転軸Oの位置がOfである回転体の「回転軸Oから「カム体摺動面とカム車輪との交点」までの距離」がLafである状態からLaになる状態に変化したことによるものとも考えられるので、回転体の「回転軸からカム車輪の先端までの距離」を縮めて、「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を遠ざけた場合と同じ効果が得られることになる。即ち回転体の「回転軸からカム車輪の先端までの距離」を縮めるとドアが閉止する位置に近い位置でドアの回転速度が加速するようになる。
【0076】
図10(b)は「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を近づけた場合、点線で示す状態から実線で示す状態に変化し、「カム体摺動面とカム車輪の移動方向との交角」が小さくなり、カム車輪はカム体摺動面上を減速して移動することになる。また回転体回転軸Oを中心とする回転体の回転角も小さくなることから、また「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を近づけると、ドアが閉止する位置に遠い位置でドアの回転速度が減速するようになる。
【0077】
図10(b)において点線と実線で示す状態の変化が、回転軸Oの位置がOnである回転体の「回転軸Oから「カム体摺動面とカム車輪との交点」までの距離」がLanである状態からLaになる状態に変化したことによるものとも考えられるので、回転体の「回転軸からカム車輪の先端までの距離」を伸ばして、「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を近づけた場合と同じ効果が得られることになる。即ち回転体の「回転軸からカム車輪の先端までの距離」を伸ばすとドアが閉止する位置に遠い位置でドアの回転速度が減速するようになる。
このようにして「回転軸からカム車輪の先端までの距離」を変化させることによってドアの回転速度を調節することが出来る。
【0078】
図10(c)において「カム車輪とカム体摺動面との接点b」が円Oを中心とする円周Rb上を移動するとき、「接点bと回転軸Ibを通る押圧力Fb」は点Oを中心とする仮想円Raに接点aで接している。
カム車輪とカム体摺動面とが接する点を接点bとし、接点bと回転体回転軸Oとの距離をLaとすると、図10(a)に示した回転軸QからLfの距離にある回転軸Ofは、点Qを中心とする半径Lfの円Rfと、点bを中心とする半径Laの円Rlaとの交点の位置にある。同様に図10(b)に示した回転軸Onは円Rnと円Rlaとの交点の位置にある。
【0079】
図10(c)において交点bを通る力の作用線Fbは回転軸Oを中心とする円Raの接線で、力の作用線Fbと回転中心Of或いはOnとの距離は、それぞれ点afと点ofとの間の距離、或いは点anと点ofとの間の距離で、押圧力Fbが一定のとき回転軸Oの周りの回転モーメントは前者の場合大きくなり、後者の場合小さくなる。
図10(a)のように回転体とカム体を遠ざけると、「カム体摺動面Kとカム車輪の円軌道Rbfとの交角」は大きくなり、回転体は回されやすくなり、又図10(b)のように回転体カム体を近づけると、「カム体摺動面Kとカム車輪の円軌道Rbfとの交角」は小さくなり回転体は回されにくくなる。このことは図1〜5の実施例のカム体をドアの駆動部に採用したとき止ってしまう場合は、回転体とカム体を遠ざけて動くようにすることが出来、又ドアが速く動きすぎる場合は近づけて減速することが出来る。
【0080】
図11(a)はカム体回転軸と回転体回転軸との間を遠ざけた場合の力の作用線の方向の変化を説明するもので、図11(b)は近づけた場合の力の作用線の方向の変化を説明するものである。
図11(a)は図10(c)に説明したように、カム体回転軸と回転体回転軸との間を遠ざけた場合の回転軸Ofの位置は、回転軸Qからの距離がLfであるので、点Qを中心とする半径Lfの円Rfと、点bを中心とする半径Laの円Rlaとの交点の位置にある。交点bが円軌道Rb上をb2、b3、・・・b7と移動するとき、図11(a)において回転体回転軸Ofの位置をf2f3・・・f7に示し、それぞれの押圧力の作用線までの距離をaf2f2、af3f3・・・af7f7で示している。図11(b)においては回転軸Ofの位置をn0,n1,n2・・・n7で示し、それぞれの押圧力の作用線までの距離をan0n0、an1n1、an2n2・・・an7n7に示す。
【0081】
図12(a)(b)はそれぞれ図11と同じく図10(a)(b)の場合の力の作用線の方向の変化を示すもので、図12(a)では回転軸Of、図12(b)では回転軸Onの位置を定点として、カム車輪がb2からb6に順次移動するとき、カム体摺動面はK2、K3・・・K6と変化し、回転体回転軸もO2,O3・・・O6と変化する。また接線T2、T3・・・T6と接点af2、af3・・・af6も変化する。図12(a)ではそれぞれの接線Tと回転軸Ofとの間の距離の変化を表す。
図12(b)ではそれぞれの接線Tと回転軸Onとの間の距離の変化を表している。
【0082】
図11(a)図12(a)に図示するようにカム体と回転体の回転軸を互いに遠ざけると、総じて回転中心から力の作用線までの距離は大きくなり大きな回転力が働き、回転力は一定ではなくカム車輪がカム体回転軸Qに近づくほど大きくなる。カム体と回転体の回転軸を互いに遠ざけて、止まったドアが動き出すようにすることが出来、ドアが動き出したドアが止まる場所はドアが全開した位置に近づく。
カム体と回転体の回転軸を互いに遠ざけて止まったドアが動き出すと途中で止まることはなく、ドアが全開状態のときかろうじて動き出すようにすれば、最も小さな力でドアが回転することになる。この場合ドアが閉まるに従い大きな力が働くので、ドアが閉まるに従い加速することになる。
【0083】
又図11(b)図12(b)に図示するように、カム体と回転体の回転軸を互いに近づけて早く閉まるドアを減速することが出来る。カム体と回転体の回転軸を互いに近づけると、ドアが閉まるに従い働く回転力が小さくなるので止まり易くなり、カム体と回転体の回転軸を互いに近づけてドアが止まってしまうところは閉止した位置からを少し開いた位置になる。ドアを少し開いて手を放すと止まった場所において、ドアが動き出すようにすると、ドアが最も小さな力で止まることのないドアになる。
【0084】
カム体と回転体の回転軸を遠ざけたり近づけたりする場合、全開から閉止直前の間の範囲においては力の作用線と回転中心との距離の変化は大きくないので、この範囲ではドアの回転速度の加速も減速も顕著に認められないが、ドアの閉止直前から閉止までの間の範囲ではカム体と回転体の回転軸を互いに遠ざけることによって加速するようになり、近づけることによって減速するようになる。このようにして駆動部をバネの力を調整する以外にカム体と回転体の回転軸間の距離を調整することによって、ドアの回転速度を調整することが可能となる。
【0085】
図13(a)(b)は、それぞれ図6図7に示した実施例においてカム体と回転体の回転軸間の距離を遠ざけた場合の回転体回転軸の位置と、仮想円の中心との関係について説明するものである。
図1〜5の実施例について図11に説明したように、図6図7の実施例の場合においても、カム体摺動面の任意の位置に立てた垂線Tは仮想円Raに接し、接点bの位置と仮想円Raの関係はカム車輪の公転の中心の位置即ち回転体Aの回転軸の位置に無関係に成立している。
【0086】
カム体摺動面上の接点bの位置と仮想円Raの関係はカム車輪の回転軸の位置に無関係に成立しているので、図13において、接点bの位置と仮想円Raの関係を固定して図示し、カム体と回転体の回転軸間の距離が変化するあらゆる場合を、或いは「回転体回転軸からカム車輪とカム体摺動面との接点までの距離」が変化するあらゆる場合を、回転体回転軸の位置を移動するようにして図示する。
【0087】
図13(a)において図10(c)で示したように、公転の中心Oを定点として図示すると、回転体回転軸の位置Ofがカム体回転軸からLfの距離であり接点bの位置から距離Laの位置にあるので、回転体回転軸の位置はカム体回転軸Qを中心として半径がLfの円Rfと接点bを中心として半径がLaの円Rlaの交点になる。図13(a)から判断できるように、図6の実施例においてはカム体摺動面上で接点bが同じであるとき、カム体と回転体の回転軸を遠ざけると、カム体摺動面がカム車輪を押す方向が回転体の軸芯線に一致する状態に近づくので動きにくくなる。
【0088】
図6の実施例の場合でカム体と回転体の回転軸間の距離が変化せず、「回転体回転軸からカム車輪とカム体摺動面との接点までの距離」が変化するあらゆる場合、図13(a)において、回転体回転軸とカム体回転軸との距離が一定であるので、回転体回転軸の位置はカム体回転軸Qを中心とし点Oを通る円Ro上ある。
「回転体回転軸からカム車輪とカム体摺動面との接点までの距離」がL1或いはL2の場合、それぞれ回転体回転軸の位置は円Ro上のO1,O2の位置になる。図13(a)から判断できるように、図6の実施例においてはカム体摺動面上で接点bが同じであるとき、「回転体回転軸からカム車輪とカム体摺動面との接点までの距離」が短くなると、「カム体摺動面がカム車輪を押す力の作用線T」との距離が短くなるので動きにくくなる。また「回転体回転軸からカム車輪とカム体摺動面との接点までの距離」が長くなると、「カム体摺動面がカム車輪を押す力の作用線T」との距離が長くなるので動きやすくなる。
【0089】
図7の実施例に関する図13(b)については、カム体摺動面とカム車輪Bとの接点bを通る垂線Tは仮想円Raに接しており、接点bを通る垂線T方向は回転体回転軸の位置に関係なく一定であるので、回転体回転軸の位置に関係なくカム体に働く押圧力Fb方向は一定である。
カム体に働く押圧力Fbは一定であり、カム体KKは回転軸Qを中心に一定の回転力で回転する。カム体に働く押圧力の作用線Fbとカム体KKは回転軸Qとの距離は一定であるが、カム体と回転体の回転軸間の距離がLaからLfに大きくなると、回転体の回転軸Oの位置は接点bを中心として半径がLaである円Rla上の点Ofに移動し、押圧力Fbの作用線Tまでの距離は小さくなる。
押圧力Fbが一定であるのでカム体に回転を与える回転モーメントは小さくなる。図13(b)に示すようにカム体と回転体の回転軸を離せば離すほど、カム車輪Bの移動方向に対してカム体摺動面の勾配が小さくなり、小さな回転力でも移動可能となる。
【0090】
図6図7に示した実施例の場合においても図1〜5の場合と同様な調整が可能であり、図6の実施例の場合は図1〜5に実施例の場合とは逆である。
図14は図6に示した実施例においてカム体と回転体の回転軸との距離が変化した場合の押圧力の作用線Fbの方向の変化を示すもので、図14(a)はカム体と回転体の回転軸とを遠ざけた場合で、図14(b)か近づけた場合である。
図14(a)に示すようにカム体と回転体の回転軸を互いに遠ざけると、回転中心と力の作用線との距離は総じて小さくなり、ドアは閉まるに従い作用する回転力は小さくなる。又互いに近づけると図14(b)に示すように総じて大きくなる。
【0091】
図6に示すドアは早く回転する場合、回転軸の間を回転が止まるまで遠ざける。この場合全開に近い範囲では速く動き、閉まるに従い減速し、ドアが止まってしまう位置は遠ざけるほど閉止直前の位置から全開に近い位置に移行する。又止まって動かない場合は回転軸の間を近づけるが、全開から閉止までの範囲で働く回転力の大きさに変化は少ない。
【0092】
図15は図7の実施例に関するもので、図1〜6の実施例とは異なりカム体が回転体に回転を与える例ではなく、カム体が回転される側であり、カム体の回転軸の周りに押圧力による回転力が働く。
カム体摺動面においてカム体摺動面の任意の点に立てた垂線はカム体回転軸からの距離によって異なるものである。またカム体摺動面の任意の点のカム体回転軸からの距離を決めればその点に立てた垂線の方向は決定するが。図1〜6の実施例のカム体摺動面において、カム体摺動面の任意の点に立てた垂線の方向は回転体回転軸を中心とする仮想円の接線でありカム体回転軸と回転体回転軸との距離が異なれば異なることになる。
図7,8の場合カム体摺動面の任意の点に立てた垂線の方向は回転体回転軸ではなく自身のカム体回転軸を中心とする仮想円の接線であるので、カム体回転軸と回転体回転軸との距離に関係なく、カム体回転軸からの距離を決めれば決定する。従って図7,8の場合、カム体回転軸と回転体回転軸との距離を変えても図1〜6の実施例のようにカム体摺動面に立てた垂線の方向は変化しない。
図7,8の場合カム体摺動面上の任意の点においてその場所にカム車輪が接触するとき、カム車輪に働く押圧力の作用線はその接点を通る摺動面に立てた垂線であり、摺動面上のカム車輪の位置が決まればカム車輪の公転軌道に関係なく押圧力の方向は決まる。図7、8に示した摺動面Kは一定の押圧力がカム体に働くと、一定の回転力でカム体が回転するようにしたもので、カム車輪の公転の中心即ち回転体回転軸に関係しない。
【0093】
図15(a)は回転体回転軸Oをカム体回転軸QからLfの距離にして遠ざけた場合について説明するもので、図13(b)に説明したように、カム車輪がRb上のb0、b1、b2・・・の位置にあるときの回転体回転軸Oの位置を、点Oを中心として半径がLfである円周Rf上の各点f0、f1、f2・・・に示す。
円周Rf上の各点f0、f1、f2・・・の各点から力の作用線T0,T1,T2・・・までの距離は点Qから作用線T0,T1,T2までの距離より小さく、カム体KKに働く押圧力が一定であることから、f0、f1、f2・・・の各点の周りの回転モーメントは小さくなる。従って小さな回転力でカム体を回転させることが出来る。
図13(b)から判断できるように回転体回転軸をカム体回転軸から遠ざけることによって、カム車輪がカム摺動面に進入する角度が小さくなり、カム車輪が摺動面上を移動しやすくなる。
【0094】
図15(b)は回転体回転軸Oをカム体回転軸QからLnの距離にして近づけた場合について説明するもので、図15(b)の場合は図15(a)の場合の逆のことが言える。カム車輪がRb上のb0、b1、b2・・・の位置にあるときの回転体回転軸Oの位置を、Oを中心として半径がLnである円周Rn上の各点n0、n1、n2・・・に示す。
円周Rn上の各点n0、n1、n2・・・の各点から力の作用線T0,T1,T2・・・までの距離は点Qから作用線T0,T1,T2までの距離より大きく、カム体KKに働く押圧力が一定であることから、f0、f1、f2・・・の各点の周りの回転モーメントは大きくなる。従ってカム体を回転させるためには大きな回転力が必要となる。
【0095】
以上に述べた最小のバネの力で勝手に閉まるドアは、止まらずにかろうじて動く程度の速さで回転するものであるが、回転運動に力が作用する以上は加速しており、いくら低速で回転していても加速し閉止時に最高速度に達する。
又閉止時にはドアを回転させるだけでなくドア側面に取り付けたラッチをドア枠に施したラッチ穴に嵌め込む作業が追加される。従ってドアの閉止時に必要な力は、回転時に必要な力以上の大きな力となる。通常のバネで動くドアはドアを開き始めるときに「回転時に必要な力以上の大きな力」が必要で、更に開くに従い開く力は更に大きくなり、ドアを開くときにドアが重たく感じることになる。
【0096】
本発明のように、ドアを開き始めるときに必要な大きな力はドアを密閉するときにだけ働き、その他のドアの回転には関与しないようにすれば、ドアを開き始めるときに大きな力が必要であっても、その後のドアの回転には大きな力が必要でなくなる。
ドアを少し開いた状態から手を放してもドアは閉まり始めて、しかもドアの逆回転防止装置であるタッチ装置を作動させて、ドアを戸当たりに強く押圧する必要がある。そのためドアの閉止時には、回転時に必要とした最小の力以上の別の力が必要となる。
【0097】
以上に述べたカム体摺動面は、カム車輪の移動方向に対するカム体摺動面の勾配をカム車輪が止まらない程度の勾配に設定しており、この範囲の勾配ではカム車輪がカム体摺動面に或いはカム体摺動面がカム車輪に働く押圧力が即ちバネの強さが、いくら大きくてもカム体摺動面上をカム車輪が移動する速度は変化が少ない。
又カム車輪を移動させるために必要な力はバネの力が大きく負荷されていても無関係であり、ドアを開くときに必要な力にバネの力は影響しない。
【0098】
以上に述べたカム体摺動面の勾配は、回転時にバネの力の一部をカム車輪の移動方向に作用させるもので、カム体摺動面のカム体回転軸に近い部分(以下始点という)の勾配を変えることによって閉止時にバネの力の全てをカム車輪の移動方向に作用させるように出来る。カム体摺動面の勾配を始点部付近とその他の部分とで変えることによって、バネの大きな力をドアの開閉時に作動させずに、閉止時にだけ作用させるようにすることが出来る。
即ちドアの閉止時にバネの力の作用線の方向を突如として変えることによって、閉止時にドアに大きな密閉力を働かせることが出来る。この密閉力でも不足する場合は、図28,29に後述するように密閉時にだけドアに作用するバネを追加する。
【0099】
このようにしてドアを少し開いた位置からでもドアを密閉することが出来るようにすると、ドアが全開に近い状態から閉まる場合、閉止時に回転時に作用する力に加えてより大きな密閉力を追加することになり、加速されて最高速度に達したドアを閉止直前に更に加速することになる。
そのため閉止直前にブレーキをかける必要があるが、通常用いるブレーキシューによる摩擦抵抗などは、反対方向の力を作用させてドアに働く回転力を弱めるものである。単に回転力を弱めるだけであるならば、以上に説明したカム車輪に働く押圧力の方向をより回転中心に向くようにすることで解決できる。
図16〜18は図1〜15に説明したカム体摺動面の曲線の形状をカム体摺動面の始点部付近で変化させるもので、カム体回転軸に近い部分において車輪に働く押圧力の方向を回転の中心に向かう方向に次第に近づけるもので、ドアが閉止する直前でドアに与える回転力が不足してドアの回転速度が減速し、やがて止まってしまうようにするものである。
【0100】
本発明は低速で閉止した後強くドアを密閉にもかかわらず「ドアを開くときにドアが重たく感じられない特徴」を持ち、バネで動くにも拘わらず、ドアの回転速度を微調整することが出来るドアに関するもので、「回転力の大きさを調整することで摩擦抵抗を使わない」という構造的特徴を持つものである。
ゴム製の車輪は変形して接地面積を大きくし転がり摩擦が大きいが、磨耗して材質も性能も劣化し易く転がり摩擦の効果も不安定である。本発明のカム車輪には変形せず接地面が点であり転がり摩擦の小さい例えば鋼製の車輪を用い、出来ればベアリング入りの車輪が望ましく、ドアを開くときの抵抗をできるだけ小さくしてドアが重たく感じられないようにするものである。
【0101】
図19は閉止直前に止まった状態のドアを動くようにするもので、カム体回転軸と回転体回転軸との距離を調整することによって、図16〜18に説明した押圧力の作用線が回転中心に近い状態から遠い状態にして、ドアが閉止する直前で不足した回転力を回復させるもので、ドアが閉止直前で減速した後で強く密閉するようにするものである。
閉止直前でブレーキをかける手段はブレーキ調整が難しく、止まってしまうか動き出して速く動きすぎるかのどちらかであるが、図19に説明する調整では、減速速度を無段階に調整することが出来る。
【0102】
図16(a)に点線で示すカム体摺動面の曲線は、図3(a)において作図した曲線で、図16はこれに連続するカム体摺動面の始点部付近の曲線について説明するものである。図16(a)に点線で示すカム体摺動面の曲線は閉止するドアの速度を十分に減速するものであるが、ドアの密閉時にも回転時と同じ回転力を出力するのでドアを密閉する力は不足する。
【0103】
カム体摺動面Kの曲線の始点部付近で、2点鎖線で示す直線の摺動面KCが連続する場合、摺動面KCがカム車輪Bに働く押圧力の作用線と回転体Aの回転軸Oとの距離は大きくなり、ドアを強く密閉することになる。またカム体摺動面Kの曲線の始点部付近で、2点鎖線で示す凸面の摺動面KDが連続する場合、摺動面が凹面から凸面に変化し摺動面KDがカム車輪Bに働く押圧力の作用線と回転体Aの回転軸Oとの距離は更に大きくなる。
ドアの閉止速度が低速であっても加速しながら閉止するが、十分に減速され閉止時の衝撃が少ない場合はカム体摺動面Kの曲線の始点部付近で、直線の摺動面KCや凸面の摺動面KDを連続して、ドアの閉止直前で急激に加速してもかまわないが、カム体摺動面Kの曲線の始点部付近で実線で示す円弧の摺動面KAを連続させて、ドアの閉止直前で減速しながら強く密閉することが望ましい。
【0104】
ドアを強く密閉することは、ドアを開くとき「ドアを強く密閉した力と同じ大きさの力」を反対方向に働かせ、ドアを戸当たりから引き離す必要があって、ドアを開くときにドアが重たく感じられることになり、本発明の目的である「ドアを開くときにドアが重たく感じられない特徴」を損なうことになる。
ドアを強く密閉する構造を追加することは構造を複雑にする。またドアをを強く密閉する前にドアの回転速度を減速する構造にすると構造が複雑になるだけではなく、その調整が難しくなる。このようなことから、ドアを強く密閉する構造を追加するのではなく、カム体摺動面Kの曲線の始点部付近で、直線の摺動面KCや凸面の摺動面KDを連続して、1つのカム体摺動面でドアを弱い力で回転させた後に強く密閉するバネだけで満足できるのであればそれが最も望ましい。
【0105】
図16(b)において回転軸Oを中心とする円軌道Rb上を移動するカム車輪B0、B1・・・は、カム体摺動面Kの曲線の始点部付近に連続する円弧の摺動面KA0、KA1、・・・と接点b0、b1・・・にて接触し、接点b0、b1・・・とカム車輪B0、B1・・・の回転軸とを通る直線T0、T1・・・はカム車輪Bに働く押圧力の作用線で、円弧KA0、KA1、・・・の中心C0,C1・・・を通り、車輪Bが円軌道Rb上をカム体回転軸Qに近づく方向に移動するに従い、回転軸Oとの距離l3、l2・・・は減少し、点Q、b1、C1、Oが一直線上になるとき、力の作用線T1と回転軸Qとの距離はゼロになる。車輪BがB1の位置からb0に僅かに移動すると、回転軸Qとの距離l3はゼロから急に大きな値に増加する。このようにドアが閉止直前で回転力が減少し、その途中でドアは回転停止する。
【0106】
図17(a)に点線で示すカム体摺動面の曲線は、図6(b)に説明した作図方法に従い作図した曲線で、図17はこれに連続するカム体摺動面の始点部付近の曲線について説明するものである。図11(a)に点線で示すカム体摺動面の曲線は閉止するドアの速度を十分に減速するものであるが、ドアの密閉時にも回転時と同じ回転力を出力するのでドアを密閉する力は不足する。
カム体摺動面Kに2点鎖線で示す直線の摺動面KCが連続する場合、カム車輪Bに働く押圧力の作用線Tと回転体Aの回転軸Oとの距離を大きくし、ドアを強く密閉することになる。
【0107】
図17(a)は点線で示すカム体摺動面Kの始点付近を実線で示す直線KBに改造するもので、カム車輪Bが直線KBに接触するとき力の作用線は直線KBに直交することになる。
図17(b)において直線KBが回転してカム車輪Bが円軌道Rbに沿って移動し、公転をb2、b1、b0の位置に順次移動するとき、押圧力の作用線はT2,T1、T0と変化し、交点b1において作用線T1が回転軸Oを通るように設計している。
カム車輪Bが交点bからb0に僅かに移動すると、カム車輪がカム摺動面の始点からカム体回転軸Oに向かう径方向の部分に沿って移動し、作用線T0と回転軸Oとの距離l0は急激に増加する。
【0108】
図18(a)は図7に説明し、点線で示す摺動面Kの始点付近を実線で示す図17に示した直線KBに改造するもので、図18(b)に示す車輪Bの移動に伴う作用線Tの方向の変化は図17(b)に示した変化と同じである。
【0109】
図19(a)(b)(c)はそれぞれ図16(b)図17(b)図18(b)に示した状態から、カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離を変化させて回転力を大きくするようにするもので、回転軸間の距離を調整することによって、図16〜18に説明した途中で止まる状態を止まらない状態にすることが出来る。
図19(a)において図16(b)で示した途中で止まるようにした状態を点線で表し、回転軸間の距離を大きくすることによって回転が増加した状態を実線で示す。
【0110】
回転体回転軸をOの位置からOfの位置に移動し、カム体回転軸Qから遠ざけると、車輪Bの円軌道も点線で示すRbから実線で示すRbbに移動するが、円弧KA3、KA2・・・の中心C3、C2・・・の位置に変化はなく、力の作用線は回転の中心から遠ざかるように方向を変える。図19(a)に示すように力の作用線の回転中心からの距離l3、l2、・・・がゼロになることはなく総じて大きくなる。
回転体回転軸をカム体回転軸Qから徐々に遠ざけると、図16(b)で示した途中で止まるようにした状態で、力の作用線の回転中心からの距離がゼロの状態から徐々に大きくすることが出来、ドアが閉止直前に途中で止まる状態から徐々に動く状態に移行させることが出来、閉止直前のドアの回転速度を止まるか止まらないかの速度にすることが出来る。
【0111】
図19(b)において図17(b)に示した途中で止まるような状態を点線で表し、回転体回転軸をカム体回転軸との回転軸間の距離を小さくすることによって回転力が増加した状態を実線で示す。カム体回転軸をQの位置からQnの位置に移動し回転体回転軸Oに近づけると、各交点b3、b2、・・・において円軌道Rbと直線KBとの交角が大きくなり車輪の移動は容易になる。力の作用線T3、T2・・・の回転中心Oからの距離l3、l2・・・は大きくなり、図19(a)の場合とは異なり大きな密閉力が期待できる。このことは閉止したドアを開くとき、大きな力が必要となることでもある。
【0112】
摺動面KBが回転してカム車輪は摺動面KB上を始点に向かって移動するが、図19(b)においてはカム車輪は摺動面KBの始点を越えて径方向の摺動面上に移動して力の作用線T0は接線方向に向き力の作用線T0と回転中心Oとの距離l0を極端に大きくしている。
カム体回転軸を回転体回転軸Oから遠ざけると、摺動面KBが回転したとき、カム車輪は図中に示す点b0の位置に至らず摺動面KB上を後戻りして力の作用線と回転中心Oとの距離を大きくしてドアを密閉する。
【0113】
図19(c)は図18(b)に示した途中で止まるような状態をしめすもので、カム車輪B0、B1、B2・・・が常にカム摺動面の始点部b0の位置にあって、押圧力の作用線が常に回転中心Qを通る状態を示すもので、回転体回転軸がカム体回転軸から遠ざかってもカム体の回転は必ず止まることを示すものである。図19(c)のカム体は図7の「回転される側であるカム体」であり、押圧力の作用線の方向は回転体回転軸の位置に関係しない。
【0114】
図19は減速しながら強く密閉する装置の説明図で、閉止直前で停止する状態から動き出す状態に調整するものである。図20はドアが停止するまで減速しても動き続ける装置で、図19のようにドアの回転が止まれば装置も止まり機能しなくなるものではない。
図20は図19(a)に示した装置においてカム体回転軸Qが移動するものであり、図19(a)は図20においてカム体回転軸をQoの位置に固定するものである。
図20において図示されないカム車輪は回転軸Oを中心とする円Rb上をカム摺動面KAに沿って移動し、押圧力の力の作用線Tは常にカム車輪とカム摺動面との接点と円弧KA0の中心Cを通る。
【0115】
カム車輪が円Rbとカム摺動面KAとの交点bにある時停止するものし、図20(a)においてカム体回転軸は交点bを中心に円運動してQ0、Q1、Q2・・・に移動するものとすると、車輪Bは交点bの位置に留まり且つカム摺動面KA上でも移動しない。この時押圧力の作用線T0,T1,T2は円弧KA0,KA1,KA2,の中心C0,C1,C2を通り、車輪Bの公転の中心Oからの距離が増加して回転体Aに与える回転力が増加する。
即ちドアが閉止直前でカム車輪Bが交点bの位置で停止して、カム体回転軸が円Rq上を移動すると、カム車輪Bとドアは停止してもカム体は回転し続け装置は動作し、強い密閉力が働くようになる。
【0116】
図20(b)(c)においてカム体回転軸Qは回転軸QQの周りを回転するリンクAkの先端部に設けられ、回転軸QQを中心とする円周Rq上を移動する。リンクAkが当りG0に当って回転が制限されたときのカム体回転軸Qの位置はQ0であり、当りG2に当たるときの位置はQ2である。
引きバネVをカム体KKに設けた支点Skと固定した支点Swに取付けると、回転軸Qとカム車輪と間の距離が回転軸Q2と支点Skとの距離より大きいとき、カム体回転軸はQ0の位置にある。カム体KKはQ0を中心に回転し、カム車輪はカム体摺動面KA上を移動する。又回転軸Qとカム車輪と間の距離が回転軸Q2と支点Skとの距離より小さいとき、カム体KKはカム車輪とカム摺動面との交点bを中心に回転し、リンクAkは回転する。この時車輪Bは止まっているが、カム体摺動面KAは車輪Bに沿って移動する。
【0117】
カム体回転軸の位置がQ2に移動しリンクAkが当りG2に当って静止した後、カム体KKはQ2を中心に回転しカム車輪が再び動き回転する。図20(b)においては押圧力の作用線T2は一旦回転の中心Oに近づくが、図20(c)においては遠ざかっている。
図20(c)においては瞬時にリンクAkは回転しカム体も回転するが、図20(b)においてはリンクAkとカム体は減速しながら回転する。
図20(c)においてはカム体回転軸Qの位置がカム車輪Bが停止している位置bから遠ざかる移動をする。カム体回転軸Qの位置がカム車輪Bから遠ざかる移動をするときリンクAkは回転軸QQの周りを回転しやすく、カム体は加速しながら回転する。図20(b)においてはカム体回転軸Qの位置が車輪Bが停止している位置bに近づく移動をする。このときリンクAkは回転軸QQの周りを回転し難く、カム体は加速しながら回転する。
【0118】
回転体Aが回転せずカム車輪の位置に変化がない状態で、リンクAkの回転軸QQの位置を図20(c)の状態から図20(b)の状態へ変えていくと、即ちリンクAkの回転軸QQの位置を回転体回転軸Oの近づけていくと、リンクAkの回転によって引きバネが縮むようになったり、或いはカム体が逆回転したりありえないことになるので、この場合カム車輪の位置に変化し回転体Aが回転しなければリンクAkの回転も停止し、装置全体が停止してドアも再び回転することはない。
図20(b)(c)において、引きバネが縮む限り、或いはカム体が同方向に回転し続ける限り、カム車輪の移動が停止してもあるいはカム体摺動面上を逆戻りしても装置は動き続ける。図20は、カム車輪の移動が停止しても、或いは減速しても、リンクAkが回転するなどして装置は動き続けることで、ドアが閉まる寸前で一旦停止状態になり、しかも再び動き出すようにするものである。
【0119】
この場合リンクAkが回転する際、ドアを回転させる作業が伴い無負荷状態で回転するのではないので、場合によっては止まるか止まらないかの状態になる。即ちリンクAkの回転軸QQの位置を回転体回転軸Oの近づけていくことによって、ドアが止まるか止まらないかの限界に調整することが出来る。
このようなことからリンクAkの回転軸QQの位置を変えることで、「カム体回転軸Qの位置が一旦停止状態にあるカム車輪Bに近づく移動をする度合い」を調整でき、ドアが閉まる寸前の一旦停止状態の時間の長さをコントロールできる。
【0120】
ドアが閉まる寸前で一旦停止状態になることは装置がドアを回転させる必要がなくなることで、リンクAkが回転するなどして装置が動き続ける動作は、負荷がかからないため一瞬にして終了する動作となる。
図20(c)において、カム体回転軸Qの位置が一旦停止状態にあるカム車輪Bから遠ざかる移動をするとき、リンクAkは一瞬にして回転軸QQの周りを回転する。
【0121】
図20(b)(c)において、「ドアの閉止直前でカム体回転軸が移動してカム体が点Q2の周りを回転してカム車輪Bを押圧する力」は、「ドアの閉止直前でカム体回転軸が移動せずカム体が点Q0の周りを回転してカム車輪を押圧するときの力」よりも弱く密閉力は小さくなるが、閉まったドアを開くときそれだけ小さな力で開くことが出来る。
また「ドアの閉止直前でカム体回転軸が移動せずカム体が点Q0の周りを回転するときのカム車輪の位置」よりも「ドアの閉止直前でカム体回転軸が移動してカム体が点Q2の周りを回転するときのカム車輪Bの位置」のほうがカム体の回転中心から離れており、バネの力が同じ回転力をカム体の回転に与えるとき、カム車輪に働く押圧力は小さくなり、閉まったドアを開くときそれだけ小さな力でカム体を回転させることが出来、それだけ小さな力でドアを開くことが出来る。
このようにしてドアを強く密閉することで、ドアを開くときにドアが重たく感じられる欠点を解消することが出来る。
【0122】
図21は図19(b)に示した装置においてカム体回転軸Qが移動するものであり、図19(b)は図21においてカム体回転軸をQoの位置に固定するものである。
図21において図示されないカム車輪は回転軸Oを中心とする円Rb上をカム摺動面KBに沿って移動し、押圧力の力の作用線Tは常にカム摺動面KBに直交する。カム車輪が円Rbとカム摺動面KB上を移動し、円Rbとカム摺動面KBとの交点bにある時、押圧力の力の作用線T0はカム車輪の公転の中心Oを通りカム車輪は停止する。図21(a)においてカム体回転軸は交点bを中心に円運動してQ0、Q1、Q2・・・に移動するものとすると、車輪Bは交点bの位置に留まり且つカム摺動面KA上でも移動しない。この時押圧力の作用線T0,T1,T2は車輪Bの公転の中心Oからの距離が増加して回転体Aに与える回転力が増加する。即ちドアが閉止直前でカム車輪Bが交点bの位置で停止して、カム体回転軸が円Rq上を移動すると、カム車輪Bとドアは停止してもカム体KKは公転し続け装置は動作し、強い密閉力が働くようになる。
【0123】
図21(b)(c)においてカム体回転軸Qは回転軸QQの周りを回転するリンクAkの先端部に設けられ、回転軸QQを中心とする円周Rq上を移動する。リンクAkが当りG0に当って回転が制限されたときのカム体回転軸Qの位置はQ0であり、当りG2に当たるときの位置はQ2である。
引きバネVをカム体KKに設けた支点Skと固定した支点Swに取付けると、回転軸Qとカム車輪と間の距離が回転軸Q2と支点Skとの距離より大きいとき、カム体回転軸はQ0の位置にある。カム体KKはQ0を中心に回転し、カム車輪は摺動面K上を移動する。又回転軸Qとカム車輪と間の距離が回転軸Q2と支点Skとの距離より小さいとき、カム体KKはカム車輪とカム摺動面との交点bを中心に回転し、リンクAkは回転する。この時車輪Bはカム摺動面KBに沿って移動する。
カム体回転軸の位置がQ2に移動しリンクAkが当りG2に当って静止した後、カム体KKはQ2を中心に回転しカム車輪が再び動き回転する。
【0124】
図21(b)においてはカム体回転軸Qの位置が車輪Bが停止している位置bに近づく移動をし、図21(c)においてはカム体回転軸Qの位置が車輪Bが停止している位置bから遠ざかる移動をする。
図21(b)においてはカム体回転軸Qの位置が車輪Bが停止している位置bに近づく移動をし、図21(c)においてはカム体回転軸Qの位置が車輪Bが停止している位置bから遠ざかる移動をする。
図21(b)において、車輪Bはカム摺動面KB上を戻ることなく移動し、図21(c)において、車輪Bはカム摺動面KB上を戻りながら移動する。図21(b)(c)において、「ドアの閉止直前でカム体回転軸が移動してカム体が点Q2の周りを回転してカム車輪Bを押圧する力」は、「ドアの閉止直前でカム体回転軸が移動せずカム体が点Q0の周りを回転してカム車輪を押圧するときの力」よりも弱く密閉力は小さくなるが、閉まったドアを開くときそれだけ小さな力で開くことが出来る。
【0125】
図22は図1〜5に図示した実施例の動作説明図で(a)から(d)まで順にドアの全開状態、途中の閉止状態、閉止直前の状態、密閉時の状態を示す。ドアが閉止する全過程において、カム体KKが回転軸Qを中心に矢印イ方向に回転し、回転体Aが回転軸Oを中心に矢印ハ方向に回転する。この時カム車輪Bは摺動面Kに沿って移動しながら回転軸Oを中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。
【0126】
カム体KKの摺動面Kは図2図3に説明した渦線Kを外周とし、カム車輪Bと摺動面との接点bと車輪Bの回転軸Ibを結ぶ直線は、カム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線で図22(b)から(c)に示すドアが閉まり始めて閉止直前に至るまでの範囲では、回転軸Oとは一定の距離を保っている。この範囲においてドアは一定の回転力で回転しバネの力を最も弱い力に設定することにより、開いたドアからどこで手を放してもドアは止まったままになることなく動き出すようにする。
【0127】
図22(c)に示すように、カム体摺動面はドアが回転する範囲(あ)に携わるKの部分と、減速しながらドアを密閉する範囲(い)に携わるKAの部分からなる。カム摺動面KAについては図16において説明した。
範囲(あ)においてはカム車輪が摺動面K上を大きく移動しても、カム体の回転とバネVの長さの変化は少なく、範囲(い)においてはカム車輪が摺動面KA上を僅かに移動しても、カム体の回転とバネVの長さの変化は大きい。
またカム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線Fbと回転体Aの回転軸Oとのあいだの距離は、範囲(あ)においては小さく回転体の回転速度は遅く、範囲(い)においては大きく、回転体の回転速度は速い。
【0128】
カム体KKはドア枠に取り付けられる金具Wに2つのリンクAkk、Akを介して連続され、カム体回転軸QはリンクAkkに設けた接続軸QQを中心に公転し、図20に説明したようにドアを減速しながら密閉するようになる。
図22(d)は密閉時にリンクAkが回転し、当りG2に当る状態を示している。又金具Wに取付けられる調整ネジGBによって、リンクAkkを接続軸QQQの周りに矢印ニ方向に回転し、金具WとリンクAkkとの間の間隙Lgを調節することによって、カム体と回転体の回転軸間の距離OQを調整し、図10〜12に説明したようにドアの回転速度を調整することが出来る。
【0129】
図22(a)はドアの全開範囲をリンクAkkが回転することによって拡げ、且つ全開時にドアが静止する状態を示すものである。
ドアの全開時に近い範囲では回転体Aを僅かに回転させるだけでカム体は大きく回転し、カム車輪Bが円軌道Rb上を僅かに移動してもカム摺動面K上を大きく移動する。又カム車輪に働く押圧力がドアを開くに従い回転軸Qの方向に向かうので、図22(b)に示すようにカム車輪が摺動面末端に至る付近ではカム体の回転に大きなブレーキがかかる。このような理由からカム摺動面Kを延長するには限界があり、図22(b)に示す回転角以上にドアを開くことは困難となる。
【0130】
そのため図22(a)に示すようにリンクAkkが接続軸QQQを中心に回転し、図22(b)に示す回転角以上の回転を可能にしている。リンクAkkの回転に際してばねVの長さに変化は小さく、バネの力Fvの作用線が回転中心QQQに近づき、且つカム車輪Bと摺動面Kと交角が小さくなって、車輪に働く押圧力Fbの作用線の方向が回転中心Oに向かうので図22の装置全体は静止する。図22(a)に示すドアの全開範囲ではどこで手を放しても止まったままである。
【0131】
図23は図6に図示した実施例の動作説明図で(a)はドアの全開状態、(b)(c)はそれぞれカム体KK回転軸Qが移動しない場合と移動する場合の閉止直前の状態、密閉時の状態を示す。ドアが閉止する全過程において、カム体KKが回転軸Qを中心に矢印イ方向に回転し、回転体Aが回転軸Oを中心に矢印ハ方向に回転する。この時カム車輪Bは摺動面Kに沿って移動しながら回転軸Oを中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。
カム体KKの摺動面Kは図6(b)に説明した渦線Kを外周とし、カム車輪Bと摺動面との接点bと車輪Bの回転軸Ibを結ぶ直線は、カム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線で図23(a)に示すドアが閉まり始めて閉止直前に至るまでの範囲では、回転軸Oとは一定の距離を保っている。この範囲においてドアは一定の回転力で回転しバネの力を最も弱い力に設定することにより、開いたドアからどこで手を放してもドアは止まったままになることなく動き出すようにする。
【0132】
図23(b)に示すように、カム体摺動面はドアが回転する範囲(あ)に携わるKの部分と、減速しながらドアを密閉する範囲(い)に携わるKBの部分からなる。カム摺動面KBについては図17において説明した。
範囲(あ)においてはカム車輪が摺動面K上を大きく移動しても、カム体の回転とバネVの長さの変化は少なく、範囲(い)においてはカム車輪が摺動面KB上を僅かに移動しても、カム体の回転とバネVの長さの変化は大きい。
またカム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線Fbと回転体Aの回転軸Oとの間の距離は、範囲(あ)においては小さく回転体の回転速度は遅く、範囲(い)においては大きく、回転体の回転速度は速い。
【0133】
カム体KKはドア枠に取り付けられる金具WにリンクAkを介して連続され、カム体回転軸Qは接続軸QQを中心に公転し、図21に説明したようにドアを減速しながら密閉するようになる。
金具Wに取付けられる調整ネジGBによって、リンクAkを接続軸QQの周りに矢印ニ方向に回転し、金具WとリンクAkとの間の間隙Lgを調節することによって、カム体と回転体の回転軸間の距離OQを調整し、図14に説明したようにドアの回転速度を調整することが出来る。
【0134】
金具WとリンクAkとの間の間隙Lgを広げると、カム体と回転体の回転軸間の距離OQは近づき、カム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線Fbと回転体Aの回転軸Oとの間の距離は大きくなり回転体の回転速度は速くなる。
図23(b)に示すように、カム車輪を押圧する力の作用線Fbと回転体Aの回転軸Oとの間の距離が大きい場合、カム体KK回転軸Qが移動しないまま、カム体KKが回転軸Qを中心に矢印イ方向に回転する。この間カム車輪Bは摺動面Kに沿って移動しながら回転軸Oを中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。同時に回転体Aが回転軸Oを中心に矢印ハ方向に回転する。
【0135】
金具WとリンクAkとの間の間隙Lgを縮めると、カム体と回転体の回転軸間の距離OQは遠ざかり、カム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線Fbと回転体Aの回転軸Oとの間の距離は小さくなり回転体の回転速度は遅くなる。
図23(c)に示すように、カム車輪を押圧する力の作用線Fbと回転体Aの回転軸Oとの間の距離が小さい場合、リンクAkが回転してカム体KK回転軸Qが移動する。リンクAkが当りG2に当った後、カム体KKが回転軸Qを中心に矢印イ方向に回転する。
この間カム車輪Bは摺動面Kに沿って逆戻り方向に移動する。同時に回転体Aが回転軸Oを中心に矢印ハ方向に回転するが、図23(b)に示すようにカム体KK回転軸Qが移動しないままカム体KKが回転する場合より回転体Aの回転は遅い。
図23(a)はドアの全開範囲をリンクAkが回転することによって拡げる状態を示すものである。
【0136】
図22,23は1つの回転軸の周りを回転する1つのカム体摺動面に2つの機能を持たせるもので、図22,23に示す1つのカム体摺動面図は1〜15に説明した「減速しながら閉止する機能を持つカム体摺動面」と図16〜21に説明した「減速したあと強く密閉する機能をもつカム体摺動面」とで構成される。この場合「減速しながら閉止するための調整」と「減速したあと強く密閉するための調整」とを同時に処理するため、2つの調整のどちらか1つが満足されたとき、残りの1つの調整が満足されているとは限らない。
バネに「ドアを少し開いた位置から手を離してドアが密閉するす力」があれば、「ドアがどの位置からでも勝手に閉まる力」を持っているので、バネに「ドアを少し開いた位置から手を離してドアが密閉するす力」以上の力は必要でない。しかしながら図22,23の1つのカム体摺動面に2つの機能を持たせるものでは、ドアが密閉しても閉止速度が速いとか、閉止速度が減速されてもドアを密閉せずに途中で止まってしまうとか、2つの機能を同時に最も望ましい状態に調整できない場合がある。
【0137】
図24、25は図22,23の1つのカム体摺動面の「減速しながら閉止する機能を持つカム体摺動面」と「減速したあと強く密閉する機能をもつカム体摺動面」とを分離して別々に調整できるようにしたもので、2つの機能を同時に最も望ましい状態に調整できる。
図26、27は図22,23の1つのカム体摺動面の「減速しながら閉止する機能を持つカム体摺動面」と「減速したあと強く密閉する機能をもつカム体摺動面」とを別々の回転軸の周りを回転するようにして、「減速しながら閉止する動作」と「減速したあと強く密閉する動作」を別々にして、減速しながら閉止した後一旦停止して強く密閉するように出来、しかも別々に調整できるようにしたものである。
【0138】
図24は図7に図示した実施例の動作説明図で(a)はドアの全開状態、(b)(c)はそれぞれカム体摺動面の形状が異なる2つの場合の閉止直前の状態、密閉時の状態を示す。ドアが閉止する全過程において、カム体KKが回転軸Qを中心に矢印イ方向に回転し、回転体Aが回転軸Oを中心に矢印ハ方向に回転する。この時カム車輪Bは摺動面Kに沿って移動しながら回転軸Oを中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。図24の実施例は図22,23の実施例と異なり、カム体摺動面がカム車輪を押圧するのではなく、カム車輪がカム体摺動面を押圧することによってカム体摺動面が回転する。
【0139】
カム体KKの摺動面Kは図6(b)に説明した渦線Kを外周とし、カム体摺動面はドアが回転する範囲(あ)に携わるKの部分と、減速しながらドアを密閉する範囲(い)に携わるKBの部分からなる。カム摺動面KBについては図18において説明した。
カム体KKは渦線Kを外周とするカム体KK1とカム摺動面KBを外周とするカム体KK2からなり、カム体KK1とカム体KK2は接続軸Ikで連結され、調整ネジBkでカム体KK2を接続軸Ikの周りに回転させカム体KK1とカム体KK2との間の角度Θkを固定できる。
【0140】
回転体Aの先端部に設けた回転支軸Ib1、Ib2のそれぞれにカム車輪B1,B2が取り付き、先行のカム車輪B1と後続のカム車輪B2はそれぞれカム体摺動面K,KB上を移動し、KB,K上を移動しない。図24(a)に示すように、先行のカム車輪B1がカム体摺動面K上を移動し、カム体KKを回転させた後、図24(b)(c)に示すように、先行のカム車輪B1がカム体摺動面Kから離れて、後続のカム車輪B2はカム体摺動面KBに接触する。
【0141】
図24(b)はカム体KK1とカム体KK2との間の角度Θkが小さい場合で、「カム車輪B2と摺動面との接点bと車輪Bの回転軸Ibを結ぶ直線、即ちカム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線Fb」と、カム体回転軸Qとの距離が小さく、ドアの回転速度を減速するが、図24(c)に示すカム体KK1とカム体KK2との間の角度Θkが大きい場合、力の作用線Fbと、カム体回転軸Qとの距離が大きく、図24(d)に示すようにドアの回転速度を減速せずにドアを強く密閉する。
【0142】
回転体Aはドア枠に取り付けられる金具WにリンクAkを介して連続され、回転体回転軸Oは接続軸QQを中心に公転する。
金具Wに取付けられる調整ネジGBによって、リンクAkを接続軸QQの周りに矢印ニ方向に回転することによって、カム体と回転体の回転軸間の距離OQを調整し、図15に説明したようにドアの回転速度を調整することが出来る。
【0143】
回転体AにはバネV1,V2が取付けられ、図24(a)に示すようにドアが回転する範囲(あ)内では、バネV1の力の作用線と回転体Aの回転軸Oとの間の距離は大きくバネV1の力でドアは回転する。バネV2の力の作用線と回転体Aの回転軸Oとの間の距離は小さくバネV2の力はドアの回転に影響は少ない。
図24(b)〜(d)に示すようにドアを密閉する範囲(い)内では、バネV2の力の作用線と回転体Aの回転軸Oとの間の距離は大きくバネV2の力でドアを密閉する。バネV1の固定支点Swは回転軸QQの周りに回転自在に軸支されるアームAsの先端部に取付けられ、バネV1がドアを回転させた後自然長に戻ると、アームAsは回転軸QQの周りを矢印ホ方向に回転する。ドアが閉止する直前でバネV2の力がドアの回転に影響しないようになり、密閉時にドアを加速しないようにしている。バネV1がドアを回転させる間はアームAsは当りGsによって回転軸QQの周りを矢印ニ方向に回転しないようにしている。
【0144】
ドアが回転する範囲(あ)内では、ドアは大きく回転し且つ低速で回転するので、バネV1は長さが大きく変化しドアに働くバネの力は小さいものである必要がある。またドアを密閉する範囲(い)内では、ドアの僅かな回転で強い力で密閉するので、バネV1の長さの変化は少なく、ドアに働くバネの力は大きいものである必要がある。ドアが回転する範囲(あ)内とドアを密閉する範囲(い)内とでは、性能の異なるバネの使用が望ましく、バネV1からバネV2へリレーするとき、先に働くバネV1が後から働くバネV2に影響しないようにして、ドアが閉止する寸前においてドアが加速しないようにすることが望ましい。
【0145】
図25は図24と同じくカム体摺動面の形状が異なる実施例の動作説明図で、図25(a)はドアの全開状態、図25(b)は閉止直前の状態、図25(c)は密閉時の状態を示す。ドアが閉止する全過程において、カム体が回転軸Qを中心に矢印イ方向に回転し、回転体Aが回転軸Oを中心に矢印ハ方向に回転する。この時カム車輪は摺動面に沿って移動しながら回転軸Oを中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。カム体摺動面がカム車輪を押圧することによって回転体が回転する。
【0146】
カム体KKは渦線Kを外周とするカム体KK1とカム摺動面KBを外周とするカム体KK2からなり、カム体KK1とカム体KK2は接続軸Ikで連結され、調整ネジBkでカム体KK2を接続軸Ikの周りに回転させカム体KK1とカム体KK2との間の角度を固定できる。
カム体KK1の摺動面Kはドアが回転する範囲(あ)に携わるKの部分で摺動面KAは減速しながらドアを密閉する範囲(い)に携わる部分である。
【0147】
回転体Aの先端部に設けた回転支軸Ib1、Ib2のそれぞれにカム車輪B1,B2が取り付き、先行のカム車輪B1と後続のカム車輪B2はそれぞれカム体摺動面K,KA上を移動し、KA,K上を移動しない。図25(a)に示すように、ドアが回転する範囲(あ)では先行のカム車輪B1がカム体摺動面K上を移動し、図25(b)に示すように、先行のカム車輪B1がカム体KKを回転させた後、先行のカム車輪B1がカム体摺動面Kから離れて、後続のカム車輪B2はカム体摺動面KAに接触する。
【0148】
回転体Aの先端部に設けた回転支軸Ib1、Ib2のそれぞれと回転体回転軸との距離は異なり、後続のカム車輪B2の回転支軸Ib2と回転体回転軸との距離は先行のカム車輪B1の回転支軸Ib1と回転体回転軸との距離より大きく、これらに沿って移動する摺動面KA,Kの形状が同じであっても図10(b)で説明したように「カム体回転軸と回転体回転軸との間の距離」を近づけると、ドアが閉止する位置に遠い位置でドアの回転速度が減速するようになる。
【0149】
図25(b)はカム体KK1とカム体KK2との間の角度が小さい場合で、カム体摺動面がカム車輪を押圧する力の作用線Fbとカム体回転軸Qとの距離が小さく、ドアの回転速度を減速する。図25(c)に示すように力の作用線Fbと、カム体回転軸Qとの距離が大きくなり、ドアを強く密閉する。
【0150】
カム体を回転させるバネVは図5に説明したように、ドアが回転する範囲(あ)内ではバネVの力の作用線即ちバネVの軸芯線はカム体回転軸からの距離が小さくして回転力を弱め、ドアを密閉する範囲(い)内では、バネVは円弧のガイドKsから離れてバネVの軸芯線がカム体回転軸からの距離を次第に大きくして回転力を強める。バネの力がドアを密閉するために十分に強くなるためにはドアが回転する必要があり、ドアを密閉するために必要なドアの回転が大きいほどドアが閉止する直前からドアが閉止するまでの間にドアが加速することになる。
【0151】
図24,25に説明したバネは、ドアを密閉する時に働くバネではあるが、ドアの回転に少なからず関与する。バネの強さを少し大きくするだけでドアの回転速度が速くなり、バネの強さはドアの回転に大きく影響するので、ドアを密閉する時のバネの強さを大きくしようと調整するとき、ドアの回転速度が速くなる結果を招いた。
バネの強さはドアを密閉する範囲(い)は出来るだけ小さいほうがよく、ドアを密閉するバネが働くときのバネの力が働かないことが望ましい。図28に後述するようにドアを密閉するバネはドアを密閉するする瞬間にだけ大きな力が発生するバネである必要がある。
【0152】
しかしドアを強く密閉することは、ドアを開くときにドアが重たく感じられることでもあり、ドアを強く密閉するバネを別に用意することは構造を複雑にする。またドアを強く密閉するバネはドアを強く密閉するときにだけ働くようにしてもドアの回転に少なからず抵抗を与えるので、バネの調整を難しくする。このようなことから、ドアを強く密閉するバネを別に用意するのではなく、図25に説明したバネのように、1つのバネだけでドアを弱い力で回転させた後に強く密閉するように出来るのであれば、それが最も望ましいことになる。
【0153】
図24,25は形状が異なる2つのカム体摺動面上を別々のカム車輪が移動するようにして、ドアが回転する範囲ではドアを低速回転し、ドアを密閉する範囲ではドアを強く密閉するものである。図26はドアを回転する装置と密閉する装置とを別途にして、ドアを回転する装置が働いた後で密閉する装置が働くようにして、ドアに働く回転力が途中で途切れて新たに再び作用するようにし、ドアを回転する装置から密閉する装置に引き継ぐとき、静止状態の密閉する装置が運動状態に移行することによって、また余分な仕事をすることによって時間の経過を伴うようにして、ドアが閉まる直前でドアが一旦停止するようにするものである。
ドアを回転する装置は図7に説明したカム車輪がカム体を押圧してカム体を回転させるもので、カム車輪B1がカム体KK1を押圧して回転させる。ドアを密閉する装置は図7に説明した円弧の摺動面によるもので、摺動面を曲率の大きな直線に近い円弧の摺動面Kにすることよって、カム体摺動面Kがカム車輪B3を押圧する力の作用線Fbとカム体回転軸Q1との距離の変化を大きくして、摺動面Kを移動するカム車輪B3に反対方向の力を作用させることによってドアの回転速度を減速する。反対方向の力とはカム車輪B3がドア枠に取付けた金具Wに設けた円弧の摺動面K3上を移動するとき、トグルバネV3が伸縮して発生する力である。
【0154】
カム体KK1の先端部に設けた車輪B2,B3の回転支軸Ib2、Ib3のそれぞれとカム体回転軸Q1との距離は異なり、後続のカム車輪B3の回転支軸Ib3とカム体回転軸との距離は先行のカム車輪B2の回転支軸Ib3と回転体回転軸との距離より小さく、これらに沿って移動するカム体KK2の摺動面Kが同じであるので、図10(a)で説明したように回転体の「回転軸からカム車輪の先端までの距離」を縮めるとドアが閉止する位置に近い位置でドアの回転速度が加速するようになる。
【0155】
カム体KK2の摺動面Kの形状が先行のカム車輪B2がこれと接触している間、カム体回転軸Q1を中心とする円Rbに平行な円であって、カム車輪B2がこれと接触している間カム体KK1の回転に関与しなくても、後続のカム車輪B3が接触するとカム体KK1の回転に関与することになる。
この間カム体KK1は回転し続けているがカム車輪B3がカム体KK2の摺動面Kに接触するとき、はじめてカム体KK2の回転に関与するのであるから、たとえ加速するように働くとしても、カム体KK2がはじめてカム体KK1の回転を始動させるので、静から動に移る慣性のため、カム体KK1の回転は減速する。
【0156】
図26(a)はドアの全開状態、図26(b)は閉止途中の状態図、26(c)は閉止直前の状態、図25(d)は密閉時の状態を示す。ドアが密閉する過程において、カム体KK2が回転軸Q2を中心に矢印イ方向に回転し、カム体KK1が回転軸Q1を中心に矢印ハ方向に回転する。この時カム車輪は摺動面に沿って移動しながら回転軸Q1を中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。カム車輪B1を先端部に取り付ける回転体A1は回転軸Oを中心に矢印ニ方向に回転する。
図26(a)の全開状態から26(c)の閉止直前の状態にいたる間、車輪B2はカム体KK2の摺動面Kに沿って移動する。この間カム体KK2は回転せず静止状態を維持する。またバネV2の長さは変化しないのでバネV2の力はカム体KK2の回転に寄与しない。図26(c)に示す閉止直前にカム体KK2の摺動面から離れてカム車輪B3がカム体KK2の摺動面に接触する。車輪B2がカム体KK2の摺動面から離れた瞬間にバネV2の力がカム体KK2に大きく作用し、図24,25の場合とは異なり、ドアを密閉する大きな力が突如として働くことになる。
【0157】
26(c)に示すようにカム体KK2が回転してカム車輪B3を押圧する力の作用線Fbとカム体KK1の回転軸Q1との距離が大きくなるほどカム体KK1は強く回転するが、距離が小さいときカム車輪B3の摺動面Kに沿う移動速度は減速し、全開から閉止直前にいたる間加速してきたドアの回転速度は減速される。
即ちバネV2の力がカム体KK2に作用してカム体KK2が回転してカム車輪B3を押圧するが、この動作は車輪B2がカム体KK2の摺動面から離れた瞬間にバネV2の力がカム体KK2に大きく作用することによって始動し、それまで静止状態にあったバネV2とカム体KK2には静止状態を保とうとする静感性が働いており、突然運動し始めるには時間の経過が必要となる。この時間の経過がドアを閉止直前に一旦停止状態にする。
【0158】
カム車輪B3を押圧する力の作用線Fbとカム体KK1の回転軸Q1との距離は、車輪B1がカム体KK1の摺動面から離れる瞬間の位置をかえることで調整できる。カム車輪B3の摺動面Kに接触してからカム体KK1が車輪B1に押圧されて回転すればするほど、カム車輪B3を押圧する力の作用線Fbとカム体KK1の回転軸Q1との距離は大きくなり、カム体KK2には静止状態を保ち続けることが出来なくなり、ドアが閉止直前に停止したままの状態にすることはない。
回転体A1の回転軸Oの周りの矢印ニ方向の回転は調整ネジGBによって制限され、車輪B1がカム体KK1の摺動面から離れる瞬間の位置は調整ネジGBによって調整することができる。
【0159】
26(c)に示す閉止直前から図26(d)は密閉時に至る間、カム車輪B3がカム体KK2の摺動面K上を移動するとき、「カム体KK1に設けた回転軸Iaを中心に回転するアームA2の先端に取り付く車輪B2」がドア枠に取付けた金具Wに設けた円弧の摺動面K3上を移動し、トグルバネV3が伸縮する。25(c)に示す閉止直前にはトグルバネV3の伸縮はドアの回転速度を減速するが、図25(d)に示す密閉時にはトグルバネV3の軸芯線は回転軸Iaに近づき、トグルバネV3の伸縮はドアの密閉には関与しなくなる。
【0160】
図24〜26に示したドアが閉止する直前で減速するようする手段は、ドアが回転する範囲に携わる装置と密閉する範囲に携わる装置を別にして、ドアの回転から密閉に受け継がれる際に回転の伝達機構に不連続を生じさせるものであるが、図24,25に示した手法は回転体に回転を与えるカム体側の回転軸は2つの装置で共通しており、カム体の回転が継続している。
図26に示した手法は回転体に回転を与えるカム体側の回転軸は2つの装置で別にしており、密閉する範囲に携わる装置はドアが回転する範囲に携わる装置の動作が終了するまで静止している。図26に示した手法においては回転される側のカム体の回転に途中反対方向の力が作用してブレーキをかけられるが、継続している。
図27の手法はドアの回転から密閉に受け継がれる際に、ドアが回転する範囲に携わる装置が密閉する範囲に携わる装置を始動させるという余分な仕事をすることによって、回転の伝達機構に不連続を生じさせるものである。
【0161】
図27は図26と同じく、図27(a)はドアの全開状態、図27(b)は閉止途中の状態図、27(c)は閉止直前の状態、図27(d)は密閉時の状態を示す。ドアが密閉する過程において、カム体KK2が回転軸Q2を中心に矢印イ方向に回転し、カム体KK1が回転軸Q1を中心に矢印ハ方向に回転する。この時カム車輪B3は回転軸Q1を中心とする円周Rb上を矢印ロ方向に移動する。カム車輪B1を先端部に取り付ける回転体A1は回転軸Oを中心に矢印ニ方向に回転する。
【0162】
図26においてドアを開くとき、閉まったドアを開くことによってカム体KK1が矢印ハ方向と反対方向に回転し、カム車輪B2によってカム体KK2は回転軸Q2を中心に矢印イ方向と反対方向に回転する。ドアが全開してもカム体KK2は逆方向に回転して戻ることをカム車輪B2によって止められているので、閉まるときのカム車輪B3の通路が確保される。
これに対して図27においては、ドアを開くときカム車輪B3がカム体KK3の摺動面Kに沿って移動することにより、カム体KK3は回転軸Qを中心に矢印ホ方向と反対方向に回転する。カム車輪B3がカム体KK3の摺動面Kから離れるが、カム体KK3の車輪B2が金具Wに設けられる摺動面K3に沿って移動しカム体KK3は摺動面K3上に自立し、カム体KK3の回転軸Qと車輪B2の回転支軸を結ぶ線は摺動面K3に直交する。カム体KK3が摺動面K3上に自立することによりカム体KK2の逆方向の回転を阻止して、閉まるときのカム車輪B3の通路を確保する。
カム体KK3は中間部をカム体KK2と接続軸Qを介して回転自在に軸支され、摺動面は接続軸Qを中間にして、回転軸Q2に近い側の摺動面KAと遠い側の摺動面Kからなり、摺動面KAの末端部の回転支軸に車輪B2が取り付く。金具Wに設けられるあたりGwは車輪B2が金具Wに設けられる摺動面K3に沿う移動を阻止するものである。
【0163】
ドアが閉まるときカム車輪B3は回転軸Q1を中心に円運動して、円軌道Rb上を矢印ロ方向に移動し、摺動面K3に直立したカム体KK3の摺動面KAと接触して、カム体KK3を回転軸Qを中心に矢印ホ方向にさせる。カム体KK1を回転させるバネV1の設計において、カム体KK1が回転を終了する際、バネV1の力はカム体KK3を回転軸Qの周りに回転させる力を持ち、カム体KK3が回転し始めると回転体A1を回転させる力を失うようにしている。カム体KK3が回転し始めるとその後は、バネV1の力に頼らず専らバネV2の力によって回転する。
【0164】
つぎに以上に述べた駆動部を回転させるバネの機構について説明する。ドアを密閉するときカム車輪はカム体摺動面に沿ってカム体の回転軸に近づく方向に移動する。カム体が一定の回転力で回転するとき、カム車輪がカム体の回転軸に近づくほど、カム車輪に働く押圧力は大きくなるが、カム体を回転させるバネの力はカム体が回転するほど力を失い、カム車輪に働く押圧力は大きくならずに一定値を保つようになる。
カム車輪に働く押圧力が一定値を保たなくても、カム車輪がカム体摺動面を移動する速度はあまり影響されない。カム車輪がカム体摺動面を移動する速度は、カム車輪に働く力の作用線の方向に影響され、カム車輪に働く押圧力やバネの強さにあまり影響されない。
【0165】
図26、27に示した手法においてドアを密閉するバネはドアの回転を伴うことなくドアを密閉するときにだけ働くが、ドアに回転を与える装置とドアを密閉する装置はそれぞれ別個の回転軸を持ち、図24、25に示した手法より部品数が増えている。部品数が増えることはドアの回転に影響を与える要因が増えることであり、要因が増えることはこれらの要因が互いに影響しあうので、ドアの回転を制御することは難しくなる。
以下に説明するドアを密閉するときにだけ働くようにするバネは図24、25或いはそれ以前に示した手法のようにドアに回転を与える装置とドアを密閉する装置の回転軸が1つである装置に適用するものである。
【0166】
図28は図25のように1つのバネでドアの回転と密閉を処理するのではなく、図24に示すように2つのバネで処理するようにしている。また図29はドアを密閉するバネをドアが密閉される瞬間にだけ大きな力を突如として発生するようにするもので、突如として発生する大きな力に伴うドアの回転を小さくするものである。
図28は図24で説明したバネの機構の説明図で、ドアの回転に携わるバネV1から密閉に携わるバネV2へのリレーについての動作説明図で、図29は密閉の最後の瞬間にドアに作用するようにしたバネの動作説明図である。
図28においてプレートWに設けられる回転軸Qを中心に回転軸Qに固着される回転体Jは図中矢印→イ方向に回転しドアを閉める。
回転体Jに設けられる回転支軸SJ1、SJ2のそれぞれに、リンクS1,S2が回転自在に軸支され、リンクS1,S2の先端の接続軸SU1,SU2のそれぞれに、引きバネV1,V2の片方の端部が接続される。引きバネV1,V2の他方の端部は、それぞれプレートWに取り付く回転軸Iに軸支される回転アームAの先端の接続軸SAと、プレートWに設けられる接続軸SWに接続される。
【0167】
図28(a)はドアの全開時、図28(b)は閉まる直前、図28(c)は密閉時の状態を示す。リンクS1は図28(a)に示すように、その側面を回転軸Qに接続しながら回転軸Qの周りを回転し、リンクS1の端部Svは回転軸Qの周りを円運動する。その後リンクS1は回転軸Qと離れて、図28(b)に示すようにドアが閉まる直前でバネVは自然長に戻り、バネの力はゼロになる。
図28(a)〜(b)へ移行する過程においてバネの長さは減少してその力を弱めるが、バネの力の作用線F1と回転軸Qとの距離L1は増加し、バネV1が回転体Jに与える回転モーメントは出来る限り一定に保たれる。
バネV1は長さに対してコイル径の大きなコイルバネで、自然長に戻る
位置は一定しており、バネV1の力がゼロになったとき、図28(c)に示すように回転リンクAは回転軸Iを中心に図中矢印→ロ方向に回転する。
【0168】
リンクS2は図28(a)、(b)に示すように全開時から閉止直前までを当りGsに接触させて端部Sv2を回転軸Qの位置に留める。このことにより全開時から閉止直前までバネV2の長さに変化はなく、バネV2の力が回転体Jの回転に関与しないことになる。
図28(c)に示すように、バネの支点SVが回転軸Qから離れる以前は、リンクSの軸芯線とバネの軸芯線は折れ曲がり、離れる瞬間は一直線になる。閉止直前からリンクS2は当りGsから離れて、バネV2の力の作用線F2と回転軸Qとの距離L2を増加させながら、回転軸Qの周りの回転モーメントを増加させ、強い力でドアを密閉する。このとき回転軸Qと接続軸SJ2との距離が大きいほど回転体Jの小さな回転でバネV2の力の作用線F2と回転軸Qとの距離L2を大きく増加させる。
【0169】
図28(c)に示す構造は図28(a)〜(c)に示す構造においてバネVとリンクSを入れ替えたもので、回転体Jに設けられる回転支軸SJ1、SJ2のそれぞれに、引きバネV1,V2の片方の端部が接続され、引きバネV1,V2の他方の端部にリンクS1,S2の片方の端部が接続される。図28(c)は図28(a)に示すように全開時の状態を示すもので、図28(c)に示す構造は図28(a)〜(c)に説明した効果と同じ効果を得ることが出来る。
図28(c)に示す構造では当りGsは回転体JにではなくプレートWに設けられる。図28(a)〜(c)の場合と同様に、リンクS2は全開時から閉止直前までを当りG2に接触させて端部Sv2を回転軸Qの位置に留める。
【0170】
図28に示したバネの機構において、バネの支点SVが回転軸Qから離れて回転軸Qの周りの回転モーメントを大きく増加させるまでの回転体J回転をできるだけ小さくするには即ち、出来るだけ密閉すためのドアの回転を少なくするには、回転軸Qと接続軸SJ2との距離が大きいほどよいことになるが装置を大きくする必要がある。図29は装置を大きくすることなく、密閉時に瞬間的に大きな回転力をドアに働かせるものである。
図29に図示されるリンクS、回転軸IバネVとその支点SV、SWは、それぞれ図28に図示されるリンクS2、回転軸SJ2バネV2とその支点SV2,SWに同じ動作をするもので、リンクSには車輪Bが取り付き、図29においては図28に示した当りGsに代わって、回転軸Qを中心とする円周の摺動面K2が端部Svを回転軸Qの位置に留める役目を果たす。
【0171】
図29(a)、(b)に示すように、車輪Bが円周の摺動面K2に沿って移動することによって、バネVの支点SVを回転軸Qの位置に留める。また図29(b)に示すように、車輪Bが摺動面K2から離れても摺動面K1の凹面に沿って移動し、図29(c)の密閉作業の終点付近で車輪Bが摺動面K1からも離れて、バネの支点SVを回転軸Qから大きく引き離す。
図29(b)に示すように、バネの支点SVが回転軸Qから離れる以前は、リンクSの軸芯線とバネの軸芯線は折れ曲がり、図29(c)に示すように、離れた瞬間に一直線になる。このようにリンクSとバネが突如として一直線になるとき、バネVの力の作用線Fと回転軸との距離Sが瞬時に最大値を示すので、回転軸の周りの回転モーメントもドアの閉止終了時に瞬間的に発生する。即ちラッチが作動するドアの僅かな回転にだけバネVの力が作用することになる。
【0172】
車輪Bが摺動面K1K2上を移動するとき、転がり摩擦で回転体Jの回転速度は減速されるが、最後に密閉力を作用させるとき、バネVはこれらの摩擦抵抗から解放されて、密閉時に持てる力の全てを発揮することになる。車輪Bが摺動面K1上を移動するとき、ドアの回転速度は減速される。また車輪Bが摺動面K2上を移動するとき、閉止直前にドアの回転速度は減速され、一旦停止状態になる。図28に示したように当りGsによってバネの端部Svを回転軸Qの位置に留めるようにして、さらに図29に示したように摺動面K2によってバネの端部Svを回転軸Qの位置に留めるようにすればこのバネの構造の駆動部をドアに取付けるだけで、ドアを減速しながら回転させ、ドアを強く密閉することが出来る。
図29(c)の図中矢印→ロ方向は閉まったドアを開くときの車輪Bの移動方向を示し、ドアが閉まるとき車輪Bは摺動面K1の内側凸面上を移動するが、ドアを開くとき車輪Bは摺動面K1の外側凸面上を移動する。
【0173】
図29(d)(e)に示すように、図29(a)、(b)に示す回転軸Qを円棒Mと円棒Mが貫通する円筒の軸受けNとで構成されるとし、円筒の軸受けNから離れた円棒Mの端部に回転体Jを取り付け、円棒Mの端部にバネの力が作用するようにすると、片持ち梁端部に集中荷重が働いたときのように円棒Mは曲がり円棒Mが貫通する円筒の軸受けNと摩擦を生じる。図29(a)〜(b)に示すように端部Svを回転軸Qの位置に留める間も円棒Mの回転に抵抗がかかり減速する。
円棒Mと軸受けNとの間の摩擦は円筒の軸受けNからバネの力が作用する円棒Mの端部までの距離Lmが大きいほど大きくなり、円筒の軸受けNから円棒Mの端部までの距離Lmを調節することでドアの回転速度を調節できる。図28に示す回転軸Qを図29(d)(e)に示す円筒の軸受けNと円棒Mにすると、このバネだけで回転する回転軸Qの回転をドアの回転に伝えるとしたら、このバネの構造の駆動部をドアに取付けるだけで、ドアを減速しながら回転させ、ドアを強く密閉することが出来る。
【0174】
図29に示した「ドアが密閉される瞬間に大きな力を突如として発生するバネ」のその他の実施例を以下図32〜35に示す。
図30は図29と同様にリンクSの接続軸Sjを中心とする円運動の接線方向の動きを、リンクSの先端に取付けた車輪Bsが回転中心Qを中心とする円周の摺動面上Kwに沿って移動することによって阻止し、バネの支点Svを回転中心Qの位置にとどめるものである。
図29の場合は車輪Bsが摺動面Kwの円弧の内側に沿って移動するものであるが、図30は摺動面Kwの円弧の外側に沿って移動するものである。車輪Bsが摺動面Kwに乗り移るときバネの支点Svを回転中心Qの位置に引き寄せる。
図29の場合はバネの長さを縮めながら回転し、図30の場合はバネの長さを伸ばしながら回転する。回転体Jの回転速度は図29の場合は加速され、図30の場合は減速される。
【0175】
図31はリンクSの先端にバネの支点Svを中心とする円弧の摺動面Ksを設けて、摺動面Ks上に沿って車輪Bwが移動することによって、リンクSの接続軸Sjを中心とする円運動の接線方向の動きを阻止するものである。
図32、33は図29,30,31と異なり、回転体Jの回転支点Sjの周りにバネVが回転自在に軸支され、回転支点Swの周りにリンクSが回転自在に軸支される。
ドアが完全に閉まった状態からドアを開くとき、回転体Jが⇒と反対方向に回転して、車輪Bは摺動面Kのドアが閉まるときに接触した面と反対側の面上を通過する。ドアが閉まるとき車輪Bが摺動面Kと接触する面が図29,32、33においては内側であり、図30,31においては外側である。
ドアを開くとき車輪Bは図29,図32、33においては外側を通過し、図30においては内側を通過する。図29,30〜33の全ての場合においてドアを開くとき、車輪Bが閉まるときのルートと別のルートを通過し、いずれに場合もバネを伸ばしながら通過する。また抵抗を少なくしてドアを開くように出来る
【0176】
図31において車輪Bwは回転軸Iaの周りを回転するアームAbの先端に取付けられ、ドアが閉まるときアームAbは当たりGbに当たる方向に回転し、ドアを開くとき当たりGbから離れる方向に回転する。図31の場合、ドアを開くときバネと回転体は一直線の状態を保ったまま、バネの支点Svは回転中心Qの位置に戻る。ドアが閉まるときで、バネの支点SVが回転中心Qから離れて一瞬にしてドアが戸当りに当るとき、ドアの回転もバネの伸縮も僅かであるが、この場合ドアを戸当りから離して開くとき、図33の場合ドアの回転もバネの伸縮も僅かである。
【0177】
Y±0〜Y+30の範囲即ちリンクSと当たりGjが接触する範囲において、摺動面KのリンクSと当たりGjが接触する部分がない。摺動面へ長さを短くしているのはこの範囲でドアを開くとき、車輪Bが閉まるときの接触面側に移動できるようにしている。又、Y−30〜Y±0の範囲でドアを閉める場合は、バネの力が連続的に増加してもドアの回転量が少ないので加速や閉めたときの衝撃は問題にならない。又ドアを戸当たりに押圧するバネの力に違いはない。
【0178】
図34、35は以上に説明した一定の回転力をドアDに伝える連結部分を説明するもので、装置はドアの取手を引き寄せて開く側のドアの外面に取り付けられる。
ドアの駆動部は上部ドア枠に取り付けられ、ドア枠下縁X−Xより高い位置に取り付けられる。駆動部に接続するアームDaはドア枠下縁X−Xより高い位置にあって、ドア上部に取り付く金具Dwはドア枠下縁X−Xより低い位置にある。図34(a)においてアームDaの先端に取り付くローラーDbはドア上部に取り付く金具Dwの長穴Dh内を移動するようにしてあり、ドア枠下縁X−Xより低い位置にある。図35(b)において「アームDaとドア上部に取り付く金具Dwに接続されるリンクDl」とは接続軸Djによって接続される。接続軸Djドア枠下縁X−Xより低い位置にある。
ドアとドア枠に取付ける部品の全てはドアの駆動部ドアとトドア枠の間に挟まれる領域に進入することはなく、従ってドア開口部を塞ぐことはなく、ドア開口部を通過する人の邪魔にならない。
【0179】
図34において駆動部分に図16で説明したカム体摺動面の始点部分がKCであるカム体KKを採用し、図35においては、図26で説明し、摺動面と接触するカム車輪先端部までの距離が小さくなって加速するようにした回転体を駆動部分に採用する。
駆動部がドアに伝える回転が一定であっても、駆動部と連結部とを取付ける時の位置関係によって、ドアの全開の角度、ドアが減速する位置、ドアに強い密閉力がかかる位置が変化する。連結部分の構造は駆動部と連結部とを取付ける時の位置関係が如何なる場合であっても、ドアの全開の角度、ドアが減速する位置、ドアに強い密閉力がかかる位置を調節できるものでなければならない。
【0180】
図34の実施例は、ドアの閉止速度を止まるか止まらないかの速さに調整できるドアを示すもので、カム体摺動面Kにはドアが閉まる前に減速する機能はない。ドアが閉まる前に減速することなく、カム車輪Bがカム体摺動面の直線部分16KC上にある時ドアが加速されて密閉される。ここで、16KCのように符号の先頭の数字16は参照する図面の番号、図16を示している。
しかしながら、十分に減速して閉止するものでドアが加速されて密閉されるときの速度が大きくなければ、ドアの閉止時に激しい衝撃音を発することはない。通常このように減速せずに密閉するものであっても激しい衝撃音を発するものでない限り使用に耐えることが出来る。
【0181】
図34に示す実施例において、ドアの閉止速度は図10で説明したようにターンバックル10Atによって回転体回転軸Oとカム車輪の回転支軸Ibとの間の距離を変化させることによって調整できる。
図34に示す実施例において、カム体回転軸Qを回転させるバネ28V2は図5(c)で説明した円弧のガイドKssに沿って伸縮する。図34(a)に示すように、リンク29Sに取り付く車輪29Bが滑走面29Sから離れて、密閉時にのみ働くバネ28V2とリンク29Sは一直線になっている。
図34(b)は回転軸Odを中心に回転するドアDと連結部の動作を説明するもので、アームDaの先端に取り付くローラーDbがドア上部に取り付く金具Dwの長穴Dh内を移動しながら回転体回転軸Oを中心に公転する様子を示している。
【0182】
図35の実施例は、図26で説明したドアを図解するもので、先行の車輪26B2がカム体摺動面上を転動移動することによってドアの閉止速度を調整している。ドアの閉止時にはバネ26V3が直接カム体26KK1に作用し、先行の車輪26B2がカム体摺動面上を離れて後続の車輪26B3がカム体摺動面上を移動するようになると、突如としてドア似ることになり強い回転力が加わり、ドアを強く密閉することになる。
図35(b)は回転軸Odを中心に回転するドアDと連結部の動作を説明するもので、アームDaの回転に対してドアの回転が大きく、ドアの全開時にはアームDaの回転がドアに伝わりにくく、ドアを手動で自由に回転できやすい状態になっていて静止させておきやすい状態になっている。又ドアの閉止時にはドアの密閉力がドアの回転軸Odの方向に向いており、ドアヒンジに緩みが出来てガタツキが生じたドアに対しても、ドアを傷めることなく、ドアをしっかりと閉止することが出来る。
【0183】
図36は回転軸Qを中心に回転する回転体Jの先端部に設けられた接続軸PとドアDの接続軸Cとを連結する2つのリンクA,AAについて説明するもので、駆動部の回転をドアに伝える連結部を説明するものである。連結部は2つのリンクA,AAからなり、リンクAの先端がL型に曲げられた構造にするものである。
図36において回転体Jはドア枠に取り付く回転軸Qを中心に回転し、ドアDは回転軸Oを中心に回転する。回転体J先端の接続軸Pとドアの接続軸Cとは2つのリンクA,AAで連結される。リンクAとAAとは接続軸PPで連結される。
回転体JとリンクAが互いに側面同士を接続させて一体にならない限り、点P,PP、Cの3点は常に一直線上にある。
ドアが閉まる直前でドアが慣性力によって加速し回転体Jの回転がドアDの回転に遅れる場合2つのリンクは折れ曲がり、2つのリンクの連結点PPが回転軸Qと接続軸Cとを結ぶ直線Zを境界にして回転軸Oを含まない領域内にある時、ドアDは回転体Jの回転によって回転してもドアを直接閉めようとしても閉まらない状態になる。
【0184】
図36は回転体Jの回転がドアの回転に遅れることなく、ドアが加速すればバネが瞬時に縮まる性質から回転体が瞬時に反応して早く回転する場合について説明するもので、2つのリンクA,AAは折れ曲がることなく一直線を保つ。図36(a)はドアが閉まる直前の状態を示し、図36(b)は更に回転体Jが回転した状態を示すが、2つのリンクA,AAの連結点P,PP,Cは常に同一直線ZZ上にあって、2つのリンクの軸芯線は折れ曲がらない。
【0185】
上述したように連結軸PPが直線Zを境界にして回転軸Oを含む領域内にあるかどうかは、回転軸Qが直線ZZを境界にして、回転軸Oを含む領域内にあるかどうかはと同じことである。
図36(b)に示すようにリンクAの先端をL型に曲げる場合、必ず連結点PPが直線Zを境界にして回転軸Oを含まない領域内に這入るときがあり、ドアは一旦開く方向に回転するか或いは一旦停止するかして、ドアが強風で急激に閉まってもドアが閉まる寸前で開いたままの状態で静止する。
【0186】
図36(a)におけるようにドアが閉まる過程においては、連結軸Pが回転軸Qを中心に回転し、この場合の回転体Jの回転半径は図中に示されるLである。図36(b)に示すように、ドアを戸当たりに密着させる直前では、回転体JとリンクAは密着して一体となって回転するため連結軸PPが回転軸Qを中心に回転し、この場合回転半径は図36(b)の図中に示されるLLである。
このように回転半径が極端に小さくなることは、一体となったリンクAと回転体Jが回転軸Qを支点とするテコとなり、ドアを戸当たりGdに強く押圧する。
【0187】
リンクAは直角に折り曲げられているので図36(a)に示すように、点Pが回転体Jの回転軸Qとドアの接続軸Cとを結ぶ直線Zを境にしてドアの回転軸O側にある時、直線PC上にある点PPもO側にある。図36(b)に示すように点Pが直線Zを境にしてOと反対側にある時、点PPもOと反対側にある。
リンクAの先端が折り曲げられる場合、2つのリンクの接続軸PPは直線Zを境にしてOと反対側になるときがあり、このとき、ドアを閉める方向に強く押すと、力の作用線ZZが回転軸Qから見てOと反対側にあるので、図36(b)に示すように回転体Jを矢印イ方向に回転させ、接続軸PPは矢印ロ方向に移動し、直線P,PP、Cは折れ曲がる。
このとき回転体Jは開く方向に回転し、ドアを閉めることは出来ない。又、直線P,PP、Cが回転軸Qを通る場合も、ドアに力を作用させても各リンクは動くことなくドアは動かない。図36に示すドアはドアが閉まる直前でドアを押しても動かないドアで、回転体Jの図中イ方向と反対方向の回転で、ドアが開く方向に回転するドアある。
【0188】
図37は回転軸Qを中心に回転する回転体J先端の接続軸Pと回転軸Oを中心に回転するドアDの接続軸Cとの間をリンクA,AAで連結する構造で、リンクAは先端が直角に曲げられている。
図37(a)に実線で示す部分は、ドアが閉まる直前の状態を。点線で示す部分は、ドアが全開した状態とドアが閉まった状態を示す。図37(a)の点線で示す全開した状態では、回転体JとリンクAは離れた状態であり、接続軸P,PP,Cは一直線上にある。
ドアが全開した状態から閉まるとき、接続軸Pにおいて回転体JとリンクAとがなす角度は次第に減少し、図37(a)の実線に示すようにドアを閉める直前で回転体JとリンクAとがなす角度が0になり、回転体JとリンクAが重なって一体となる。回転体JとリンクAとが互いに接触しあうと、接触したままの形を保持する。
また回転体JとリンクAが重なって一体となるまで、接続軸P,PP,Cは一直線上にある。回転軸先端Pがドア接続軸Cを牽引する力の作用線は先端が直角に曲げられ他リンクAの形状の如何に関係なく一直線である。
【0189】
回転体JとリンクAが重なって一体となるとき、リンクAは先端が直角に曲げられているので、接続軸PPの位置は回転軸Qを通りドアに垂直な直線Yのドア回転軸Oのある反対側にある。重なって一体となった回転体JとリンクAは回転軸Qを中心にして回転し、リンクAとAAとの接続軸Pは回転軸Qの周りを公転しドアとほぼ平行に円弧の軌跡を描くようになる。
図37(a)に点線で示すように回転体JとリンクAが重なって一体となるとき、接続軸P,PP,Cは一直線上になく接続軸PPにおいてリンクAとAAとは折れ曲がっている。接続軸PPが円弧の軌跡の中央に向かうとき、AとAAとは折れ曲がった状態から一直線に近づこうとする。即ち、接続軸PとCは互いに遠ざかる。
このとき接続軸PPの移動のドアに直角の方向成分がドアに近づく方向で、ドアDは開く方向に回転し、更に回転体Jが回転して円弧の軌跡の中央を通り過ぎると、接続軸PPの移動のドアに直角の方向成分がドアから遠ざかる方向になるので、ドアDは再び閉まる方向に回転してドアを戸当たりに押さえつける。
このようにドアが閉まる前にドアが開く方向に回転するのは、接続軸PPの位置が接続軸Cを通りドアに垂直な直線Yのドア回転軸Oのある反対側にあるからである。
【0190】
図38に示す連結部は図36,37と異なり、リンクAの先端が曲がった形状でなく直線状である場合である。図37(a)に実線で示すようにリンクAの先端が曲がった形状である場合、回転体JとリンクAが重なるまでは接続軸P,PP,Cは一直線上にあっても、Y軸と平行な位置で回転体JとリンクAが重なって一体となるとき接続軸P,PP,Cは一直線上にない。図38の場合は回転体JとリンクAが重なって一体となるとき接続軸P,PP,Cは一直線上にあり、接続軸PPの位置は回転軸Qとドアの接続軸Cとを結ぶ直線Zを境にしてドアの回転軸O側にある。
接続軸PPは回転軸Qの周りを公転しドアとほぼ平行に円弧の軌跡を描きながら、接続軸PPの移動のドアに直角の方向成分がドアから遠ざかる方向になり、ドアは開く方向に回転しない。
【0191】
図38において接続軸PPにバネVを仕込むことによって、ドアが全開した状態から回転体JとリンクAが重なって一体となるまで、接続軸P,PP,Cは一直線上になく接続軸PPにおいてリンクAとAAとは折れ曲がっているようにしている。また回転体Jが回転してY軸と平行になる以前に回転体JとリンクAが重なって一体となるようにしている。
このようにすると図38の場合と同じく、ドアが閉まる前に回転体Jの回転によってドアが開く方向に回転する。
接続軸PPにおいてリンクAとAAとがそれ以上折れ曲がらないように接続軸PPに当りGqを取り付けると、ドアが開く方向に回転する範囲では図38の場合と同じく、回転体の回転でドアを動かすことが出来ても、ドアを押しても動かない状態となる。このことはドアが強風などによって強く押された場合でもドアは閉まることはなく、指が挟まれたり衝撃を伴ってドアが閉まることはないことを意味している。
【0192】
図38(b)はドアが閉まった状態からドアを少し開いた状態を示し、回転体Jが回転してドアを開く場合、重なり合った回転体JとリンクAはドアを少し開いてから閉める方向に回転させるが、閉める方向に抵抗がかかると、重なり合った回転体JとリンクAは離れながら回転するので、接続軸PPは上記円弧の軌跡上を図37(a)で示したPP+5の位置に到達することなく回転軸Qから遠ざかるのでドアは開く。
図37の場合は接続軸PPが上記円弧の軌跡上を移動して図37(a)で示したPP+5の位置に到達すると、ドアを開くときドアによって回転体が回転することはなくなる。
【0193】
図37(b)に示すように、ドアを少し開いて接続軸P、PP、Cが一直線にあるとき、回転軸Qの位置が接続軸PとCを結ぶ直線の接続軸Pの移動方向側にあるとき、ドアを少し開こうとすると回転体JとリンクAが重なろうとして、接続軸Pは回転軸Qの周りを回転しなくなる。即ち回転体Jは回転しなくなる。このドアは開くときについても閉まるときと同様にドアを操作しても動かない特徴がある。一旦閉まると施錠されたように外から開かない状態になる。
【0194】
図38は図37に示したドアの「閉まった状態から外から開かない欠点」を解消するもので、図38の構造は図37の構造と同様の構造で、図38のリンクAは、図37のリンクAのように先端で曲げられることなく、直線状にしている。
図37において接続軸PPあるいはCにバネVを仕込むことによって、ドアが全開した状態から閉まる直前まで、接続軸P,PP,Cは一直線上になく、リンクAとAAは接続軸PPにおいて折れ曲がっている。
このことにより回転体JがY軸と平行になる以前に回転体Jが回転してリンクAと重なって一体となり、2つのリンクの連結点PPが回転軸Qと接続軸Cとを結ぶ直線Zを境界にして回転軸Oを含まない領域内にあって、ドアが閉まるまえに開く方向に回転するようにしている。接続軸PPの位置がこの回転軸Oを含まない領域内にあればあるほどドアが開く方向に回転するようになり、回転体Jの回転に負荷がかかり減速する。
【0195】
PPの位置が「回転軸Qと接続軸Cとを結ぶ直線Zを境界にして回転軸Oを含む領域内にあれば、接続軸PPにおいて折れ曲がっているリンクAとAAが一直線になって接続軸PとCの間の距離を最大に伸ばしたとしても、接続軸PPがドアに近づく方向ではなく遠ざかる方向に移動するためドアが閉まる直前に開く方向に回転しない。
図38(a)に示すドアが閉まる直前から開く方向に回転する範囲内では、接続軸PPに取り付けた当たりGqによって接続軸PPにおけるリンクAとAAの回転が制限され、ドアはドアを押しても動かない状態になる。しかし図38(b)に示すようにドアを押して開く場合、回転軸Qの位置は接続軸PとCを結ぶ直線の接続軸Pの移動方向と反対側にあるので、回転体JとリンクAは重なった状態から分離しながら回転し、ドアが開くようになる。
【図面の簡単な説明】
【0196】
閉止速度をかろうじて動き出す最低速度にする駆動部の説明図
【図1】カム体の回転と反対方向の回転を回転体に伝える駆動部の説明図
【図2】図1のカム体摺動面の説明図
【図3】図1のカム体摺動面の作図方法の説明図
【図4】押圧力の方向は変化する場合の図1のカム体摺動面の説明図
【図5】図1のカム体摺動面に回転を伝えるバネの説明図
【図6】カム体の回転と同方向の回転を回転体に伝える駆動部の説明図
【図7】回転体の回転をカム体に伝える駆動部の説明図
【図8】カム回転体の回転をカム車輪の上下運動に変える駆動部の説明図
【図9】押圧力の大きさが異なる場合の図1,6,7のカム体摺動面の説明図
【0197】
回転体とカム体の回転軸間距離を調整して閉止速度を微調整する駆動部の説明図
【図10】図1に関して回転体とカム体の回転軸間距離の変化の説明図
【図11】図1に関して回転体とカム体の回転軸の位置の変化
【図12】図1に関して回転体とカム体の回転軸間距離の変化と押圧力の方向の変化
【図13】図6,7に関して回転体とカム体の回転軸間距離の変化の説明図
【図14】回転体とカム体の回転軸間距離を調整して微調整する図6の駆動部
【図15】回転体とカム体の回転軸間距離を調整して微調整する図7の駆動部
【0198】
密閉する摺動面の説明図
【図16】図1の摺動面の密閉する部分
【図17】図6の摺動面の密閉する部分
【図18】図7の摺動面の密閉する部分
【0199】
減速しながら密閉する摺動面の説明図
【図19】回転軸が移動するカム体の円弧の摺動面
【図20】回転軸が公転するカム体の円弧の摺動面
【図21】回転軸が公転するカム体の直角に折れた摺動面
【0200】
閉止速度と密閉する力を調整できる摺動面の説明図
【図22】カム体回転軸が公転する図1の回転伝達装置
【図23】カム体回転軸が公転する図6の回転伝達装置
【図24】閉止用摺動面と密閉用摺動面を別にする図7の回転伝達装置
【図25】閉止用摺動面と密閉用摺動面を別にする図1の回転伝達装置
【図26】閉止用バネと密閉用バネを別にする図1の回転伝達装置
【図27】閉止動作と密閉動作を別々に調整できる回転伝達装置
【0201】
閉止時にのみ作用するバネと密閉時にのみ作用するバネの動作説明図
【図28】閉止時にのみ作用するバネから密閉時にのみ作用するバネへのリレー説明図
【図29】密閉時にのみ作用するバネの動作説明図
【図30】回転体に車輪が取付くリンクが取付く場合
【図31】回転体に滑走面が取付くリンクが取付く場合
【図32】回転体にバネが取付きがリンクに車輪が取付く場合
【図33】回転体にバネが取付きがリンクに滑走面が取付く場合
【0202】
駆動部の回転をドアに伝える連結部の動作説明図
【図34】ローラが長穴内を移動する駆動部とドアの連結部の動作説明図
【図35】駆動部とドアをアームで繋ぐ連結部の動作説明図
【図36】開く方向に回転するドアの動作説明図
【図37】2つのリンクからなるドアの連結部の動作説明図
【図38】強風であおられたとき止まるドアの動作説明図
【符号の説明】
【0203】
A 回転体あるいはアーム
B 車輪
C 円の中心
D ドア或いはドアに取り付く金具
G 当たり
I 回転軸或いは回転支軸
K カム体或いはカム体摺動面
O カム体の回転軸
Q 回転体の回転軸
R 円弧
S バネ端部の接続軸
T 垂線
U 押しバネ
V 引きバネ
W ドア枠に取り付く金具或いはプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カム体回転軸の周りを回転自在に軸支されるカム体に設けられたカム体摺動面に沿って、回転体回転軸の周りを回転自在に軸支される回転体の先端部に設けられた回転支軸に取付けたカム車輪が移動して、上記カム体摺動面が上記カム車輪を押圧して上記回転体を回転させる回転伝達装置で、
上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保つようにしたカム体摺動面をもつ回転伝達装置
【請求項2】
「前記回転体回転軸から前記カム車輪とカム体摺動面との接点間での距離」を半径して前記回転体回転軸を中心とする円上に等分に配される各点を始点とし、その中心を上記始点を通り前記回転体回転軸を中心とする仮想円と接する接線の上記仮想円との接点とし、その半径を上記始点から上記仮想円との接点までの距離とするそれぞれの円弧を描き、
「上記等分に配される各点の前の点を始点とする前の円弧」の上に「上記等分に配される各点の次の点を始点とする次の円弧」の始点があるように、カム体回転軸Qを中心に回転移動して、上記次の円弧の始点に上記前の円弧が連続するようにし、移動した上記前の円弧の始点に、上記前の円弧の前の円弧が順次連続して作図される渦線形状の請求項1記載のカム体摺動面をもつ回転伝達装置
【請求項3】
形状がインボリュート渦線であるカム体摺動面にカム車輪が押圧力を作用させてカム体を一定の回転力で回転させる回転伝達装置で、且つカム体の回転力でカム車輪に一定の押圧力を作用させ上下方向に移動させる移動装置
【請求項4】
前記カム体摺動面の前記カム体回転軸に近い部分を直線或いは凸面にして、前記カム車輪が前記カム体回転軸に近い部分にあるとき、前記カム車輪と前記回転支軸とを通る押圧力の作用線が前記回転体回転軸との距離を大きく変化させる前記カム体摺動面をもつ請求項1記載の回転伝達装置
【請求項5】
カム体回転軸の周りを回転自在に軸支されるカム体に設けられた凹面或いは凸面のカム体摺動面に沿って、回転体回転軸の周りを回転自在に軸支される回転体の先端部に設けられた回転支軸に取付けたカム車輪が移動して、上記凹面或いは凸面のカム体摺動面が上記カム車輪を押圧して上記回転体を回転させる回転伝達装置で、
上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにしたカム体摺動面をもつ回転伝達装置
【請求項6】
上記カム体回転軸と上記回転体回転軸とに間の距離が変化する請求項1或いは5記載の回転伝達装置
【請求項7】
上記カム車輪の上記回転支軸と上記回転体回転軸との間の距離が変化する請求項1或いは5記載の回転伝達装置
【請求項8】
上記カム体回転軸が回転移動する請求項1或いは5記載の回転伝達装置
【請求項9】
上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が回転体回転軸と一定の距離を保つようにした請求項1或いは3記載のカム体摺動面と、それに沿って円運動する請求項1或いは3記載のカム車輪と、
上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにした請求項5記載のカム体摺動面と、それに沿って円運動する請求項5記載のカム車輪とを備え、
上記請求項5記載のカム車輪が上記請求項5記載のカム体摺動面に接触するとき、上記請求項1或いは3記載のカム車輪が上記請求項1或いは3記載のカム体摺動面から接触しないようにした回転伝達装置
【請求項10】
上記カム車輪と上記回転支軸とを通る押圧力の作用線が上記凹面或いは凸面の焦点を通るようにした請求項5記載のカム体摺動面と、それに沿って円運動する請求項5記載のカム車輪とを備え、
上記請求項5記載のカム車輪が接触するとき回転し、接触しないとき回転しない上記請求項5記載のカム体摺動面を有する回転伝達装置
【請求項11】
「ドア枠に取り付けられるプレートに取付けられる回転軸に固着する回転体と、該回転体の該回転軸と反対側の端部に設けられる回転支軸と、中間の連結軸で連結されるリンクとバネと、該リンクの片方の側面に接触する当りと、上記プレートに取付けられる固定支軸とを備え、
上記リンクの連結軸の反対側の接続軸が上記回転支軸に回転自在に軸支されるとき、上記リンクの両端の接続軸の間の距離が上記回転支軸と上記回転軸との間の距離であるようにし、且つ上記当りを上記回転体に取付けて、
或いは上記リンクの連結軸の反対側の接続軸が上記固定支軸に回転自在に軸支されるとき、上記リンクの両端の接続軸の間の距離が上記固定支軸と上記回転軸との間の距離であるようにし、且つ上記当りを上記プレートに取付けて、
上記回転体の回転の途中までは上記リンクの回転が上記当りによって止められ、上記連結軸を上記回転軸の位置に留めるようにして上記バネが伸縮しないようにして、上記回転体の回転の途中からは上記リンクと上記当たりが離れて、上記連結軸が回転軸の位置から離れるようにして上記バネが伸縮するようにし、上記回転体に回転の途中から作用するバネ
【請求項12】
前記リンクに車輪が取り付き、前記リンクが前記当たりから離れたあと、該車輪が前記プレートに取付けられる滑走面に沿って移動することで、前記連結軸を前記回転軸の位置に留めるようにして前記バネが伸縮しないようにして、
或いは前記リンクに滑走面が取り付き、前記リンクが前記当たりから離れたあと、該滑走面が前記プレートに取付けられる車輪に沿って移動することで、前記連結軸を前記回転軸の位置に留めるようにして前記バネが伸縮しないようにして、
前記回転体が更に回転し、上記滑走面と上記当たりが離れて、上記連結軸が回転軸の位置から離れるようにして上記バネが伸縮するようにし、上記回転体に回転の途中から作用する請求項11記載のバネ
【請求項13】
駆動する回転軸に固着される回転体の該回転軸と反対側の端部に設けられた接続軸とドアの接続軸とを2つのリンクによって連結し、ドアが全開状態から閉まる直前までは上記2つのリンクが一直線を保ち、ドアが閉まる直前で上記回転体とそれに連結するリンクが側面で互いに接触して一体となり、
上記2つのリンクの連結点が、上記回転体の回転軸と上記ドアの接続軸とを結ぶ直線を境界にして、上記ドアの回転軸を含まない領域内にドアが閉まる直前に移動するようにして、上記回転体の回転によってドアが開く方向に回転し、ドアに力が作用しても動かない状態にするドアの連結部を有するドア

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2009−185461(P2009−185461A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23894(P2008−23894)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(592106948)
【Fターム(参考)】