説明

ドライブレコーダ及びドライブレコーダシステム

【課題】走行中の車両の映像データを記録するドライブレコーダ及びドライブレコーダシステムを提供する。
【解決手段】カメラユニット(12)と、レコーダユニット(13)と、カメラユニット(14)とレコーダユニット(13)とを電気的に接続するケーブル(200)と、を備え、制御部(160)は、カメラモジュール(121)を制御する信号をケーブル(200)を経由して伝送し、画像処理部(140)は、カメラモジュール(121)から出力されたデジタル信号を、ケーブル(200)を経由して受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両の映像データを記録するドライブレコーダ及びドライブレコーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
走行中車両の走行データを映像データと共に記録するドライブレコーダを車両に搭載することが行われている。
【0003】
画像データは撮像素子を搭載したカメラユニットによって取得される。カメラユニットは、ドライブレコーダ本体から離れて設置してもよく、その場合には、カメラユニットとドライブレコーダ本体とを映像データを伝送するケーブル等によって分離する。
【0004】
従来は、CCDカメラによる映像データをA/D変換して、1つのフレームに2つのフィールドを含むインターレス方式のアナログ信号として伝送することが一般的であった。しかしインターレス方式の映像データは、再生時にインターレス間に画像のずれが発生することにより、例えば動きの速い映像では画像が二重となり、画質が低下するという問題がある。
【0005】
このような問題に対して、インターレス方式によるビデオ信号に対して一方のフィールド画像を間引きする間引処理を行い、他方のフィールド画像のみを含むフレーム画像によるビデオ処理信号を生成するとともに、このビデオ処理信号から少なくとも前記ドライブレコーダ本体に記録する画像データを生成するドライブレコーダの画像処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−182665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された従来のドライブレコーダは、カメラユニットからインターレス方式の映像信号が送られるところ、これを、一つのフィールドのみを間引きして伝送することによって、映像が二重となってしまうことを防いでいる。
【0008】
しかしながら、一フィールド分の映像データを用いる場合は、水平方向の情報量が半分となってしまうために、画質が低下してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、映像データの情報量を低下させることなく画質を低下させないドライブレコーダ及びドライブレコーダシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両走行時の映像信号をデジタル信号として取得するカメラモジュールを備えるカメラユニットと、カメラモジュールが取得した映像信号のエンコードを行う画像処理部と、画像処理部によってエンコードされた映像データを記録部に記録する記録制御部と、カメラモジュール、画像処理部及び記録制御部を制御する制御部と、を備えるレコーダユニットと、カメラユニットとレコーダユニットとを電気的に接続するケーブルと、を備え、制御部は、カメラモジュールを制御する信号を、ケーブルを経由して伝送し、画像処理部は、カメラモジュールから出力されたデジタル信号を、ケーブルを経由して受信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カメラユニットをケーブルによってレコーダユニットから分離した構成において、制御部がカメラモジュールを制御する信号をケーブルを経由して伝送し、カメラモジュールが出力するデジタル信号をケーブルを経由して画像処理部が受信するので、デジタル信号に対してD/A変換、A/D変換を行う必要がなくなり、情報量及び画質を低下させることなく映像データを記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態の本発明のドライブレコーダを含むドライブレコーダシステムの説明図である。
【図2】本発明の実施形態のドライブレコーダの機能ブロック図である。
【図3】本発明における比較例のドライブレコーダの説明図である。
【図4】本発明の実施形態のケーブルの信号線の一例の説明図である。
【図5】本発明の実施形態の映像データの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明のドライブレコーダ10を含むドライブレコーダシステム1の説明図である。
【0015】
ドライブレコーダシステム1は、車両11に搭載されるドライブレコーダ10と、事業所等に設置されるパーソナルコンピュータ(以下、PC)20と、ドライブレコーダ10が取得するデータを記録するメモリカード30とから構成される。
【0016】
ドライブレコーダ10は、車両11から走行データ(例えば車速、エンジン回転数、緯度、経度等)を取得して、これらを日時と共に所定の間隔で記録する。
【0017】
ドライブレコーダ10は、レコーダユニット13とカメラユニット12とから構成されている。レコーダユニット13は、カメラユニット12が撮影した映像データを記録する。走行データ及び映像データは、レコーダユニット13に挿入されるメモリカード30に記録される。レコーダユニット13とカメラユニット12とはケーブル200によって接続されている。
【0018】
レコーダユニット13は、メモリカード30が挿入された状態でメモリカード30との間でデータの書き込み及び読み出しを行う記録制御部150と、メモリカード30に人為的に画像データを記録させる記録ボタン180とが設けられている。
【0019】
PC20は、メモリカード30が挿入された状態でメモリカード30との間でデータの書き込み及び読み出しを行うメモリカードインタフェース21と、画像データ等を表示可能な液晶ディスプレイ等からなる表示部22と、ユーザからの指示が入力可能なキーボード及びマウス等からなる入力部23とから構成される。
【0020】
メモリカード30は、記録制御部150及びメモリカードインタフェース21によって読み書き可能に構成されており、例えばSD(Source Digital)やCF(Compact Flash)等のフラッシュメモリカードが用いられる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態のドライブレコーダ10の機能ブロック図である。
【0022】
ドライブレコーダ10は、レコーダユニット13とカメラユニット12とから構成される。
【0023】
レコーダユニット13は、カメラユニット12から受信した映像信号に対して所定のエンコード方式に基づいて画像処理を行う画像処理部140と、画像処理部140によってエンコードされた映像データをメモリカード30に記録する記録制御部150と、後述するイベントの発生にかかわらず画像データ及び走行データをメモリカードに記録する記録ボタン180と、を備える。制御部160は、これら各部の動作を制御する。
【0024】
なお、画像処理部140よるエンコード方法は、たとえばJPEG方式やMPEG方式が用いられる。
【0025】
制御部160は、車両とのインターフェースを備えて、走行データ(車速、加速度等)を取得して、画像処理部140が取得した映像データと共にメモリカード30に記録する。
【0026】
また、制御部160は、加速度センサを備えて、加速度センサが検出した加速度が所定の閾値を超えた場合に、車両に衝撃等のイベントが発生したと判断して、衝撃が加わった時刻の前後の映像データを抜き出し、メモリカード30に記録するようにしてもよい。
【0027】
カメラユニット12は、CMOSカメラモジュール121を備える。CMOSカメラモジュール121と画像処理部140とは、ケーブル200によって通信可能に接続されている。CMOSカメラモジュール121が出力する映像信号は、ケーブル200を経由して画像処理部140に送られる。
【0028】
次に、本発明の実施形態のドライブレコーダ10と従来のドライブレコーダとを比較する。図3は、比較例のドライブレコーダ10を示す。
【0029】
従来、例えばCCDカメラモジュール122を備えたカメラユニット12において、カメラユニット12とレコーダユニット13とは、同軸ケーブル210によって接続することが一般的である。
【0030】
図3(A)に従来の構成を示す。図3(A)に示す構成例は、CCDカメラモジュール122から出力されるデジタル信号は、D/A変換部123によってインターレスのアナログ信号に変換されて、同軸ケーブル210を経由してレコーダユニット13に送られる。ドライブレコーダ10において、アナログ信号は、A/D変換部220によってデジタル信号に変換される。
【0031】
この図3(A)に示すような構成では、同軸ケーブル210を介して伝送されるアナログ信号は1つのフィールドに2つのフレームを含むインターレス映像である。そのため、記録された映像データを再生した場合は、表示される映像データが二重に表示される場合がある。また、D/A変換部123とA/D変換部220とにおいて、Y/C結合とY/C分離とをそれぞれ行っているため、映像の滲み、色むら等が発生する場合がある。このため映像データを再生した場合は、当該滲み、色むら等により映像が不鮮明となる結果、映像データの確認に支障を生じることがあった。
【0032】
これに対して、CCDカメラモジュール122から出力されるデジタル信号を、USB規格のシリアル信号に変換して、デジタル信号として伝送する方法も考えられる。
【0033】
図3(B)に示す構成例は、CCDカメラモジュール122から出力されるデジタル信号は、USBレシーバ124によってUSB準拠のデジタル信号に変換されて、USBケーブル230を経由してレコーダユニット13に送られる。ドライブレコーダ10において、USBレシーバ240によってデジタル信号が映像データに変換される。
【0034】
この図3(B)に示すような構成では、カメラユニット12から出力されたデジタル信号を、USBレシーバ240が受信して、画像処理部140が映像データとして生成するので、映像データをプログレッシブ映像として記録することができる。しかしながら、USB規格では映像データを伝送するための速度が不足する場合がある。
【0035】
例えば、非圧縮のVGAサイズの映像データ(Y:U:V=4:2:2)を30fpsで伝送する場合は約148Mbpsの速度が必要になるが、USB2.0の伝送速度は、USB2.0規格の最高速度は480Mbpsに対して、実際の実行速度は120Mbps前後であり、この実行速度を下回ることもしばしばある。その場合は、映像データが欠落する恐れがある。安全に映像データを送るには、映像サイズをQVGA等に下げる必要があり、また、VGAサイズの映像データの転送を維持するには、実行速度を上げる必要がある。そのため、USBレシーバ124や制御部125の処理速度を向上する必要があり、そのためのコストが大きくなる。
【0036】
これに対して、本願の実施形態では、次に説明するように、カメラユニット12が取得した映像データの画質を低下させないように構成した。
【0037】
図2に示すように、カメラユニット12はCMOSカメラモジュール121を備える。CMOSカメラモジュール121は、ITU−R REC.656準拠のデジタル信号を出力するように構成されている。
【0038】
カメラユニット12とレコーダユニット13とは、ケーブル200によって接続されている。ケーブル200は、信号をパラレルに伝送可能な多芯ケーブルによって構成されている。
【0039】
図4は、本発明の実施形態のケーブル200によって伝送される信号の一例を示す説明図である。
【0040】
CMOSカメラモジュール121は、映像信号を、ITU−R REC.656準拠のデジタル信号として出力する。このデジタル信号は、輝度信号及び色差信号を、YUV=4:2:2の8bitに量子化されたデジタル信号である。信号線1〜8は、この8bitのデジタル信号(DOUT0〜DOUT7)をパラレル伝送するための信号線である。また、デジタル信号には、同期用のビデオクロック信号CLK、垂直同期信号V_sync及び水平同期信号H_syncが含まれる。
【0041】
また、ケーブル200により伝送される信号は、CMOSカメラモジュール121と制御部160とがシリアル通信を行うためのシリアルデータ信号SDATAと、このシリアルデータ信号SDATAの同期のためのシリアルクロックSCLKとを含む。
【0042】
制御部160は、CMOSカメラモジュール121を制御するためにシリアル通信を利用する。例えばCMOSカメラモジュール121の輝度や感度等の調整を制御する制御信号を、シリアル通信によって送信することができる。ケーブル200は、係るシリアル通信を行うための通信線を備える。
【0043】
また、ケーブル200は、CMOSカメラモジュール121の電源を供給するための信号線を含む。
【0044】
図5は、本発明の実施形態のドライブレコーダ10による映像データと従来のドライブレコーダによる映像データとの比較結果の説明図である。
【0045】
図5(A)及び(B)は、従来のドライブレコーダによるインターレス信号による映像データの一例を示す。
【0046】
インターレス信号による映像データは1つのフィールドに2つのフレームを含み、走査線の1ラインごとに前後のフレームを表示する。そのため、動きが速い映像では二重の像で表示される。
【0047】
図5(A)は、直線路を走行中の映像データの1フレームを示す。図5(A)においては、右側に表示されている電柱や街路樹が二重に表示されて、画質が低下している。また、図5(B)は、カーブを走行中の映像データの1フレームを示す。図5(B)においては、左側に表示されているカーブミラーや電柱、ガードレール等が二重に表示されて、画質が低下している。
【0048】
一方、図5(C)及び(D)は、本実施形態のドライブレコーダ10によるプログレッシブ信号による映像データの一例を示す。
【0049】
本発明の実施の形態のドライブレコーダ10では、CMOSカメラモジュール121が取得した映像信号を、そのままデジタル信号として受信し、プログレッシブの映像データとして記録する。
【0050】
従って、インターレス信号のように二重の像となることはなく、映像が不鮮明となることはない。
【0051】
図5(C)は、直線路を走行中の映像データの1フレームを示し、図5(D)は、カーブを走行中の映像データの1フレームを示す。いずれの映像データにおいても、街路樹やガードレール、標識等は二重に表示されることはなく、映像は不鮮明となっていない。
【0052】
以上のように本発明の実施形態では、カメラユニット12が出力するデジタル信号は、多芯ケーブルであるケーブル200を経由してドライブレコーダ10に伝送されるように構成したので、CMOSカメラモジュール121により得られたデジタル信号を、そのまま画像処理部140に送り、画像圧縮等の画像処理を行うことができる。
【0053】
これにより、デジタル信号に対してD/A変換を行う必要がなくなり、プログレッシブ画像として映像データを生成することができるので、画質が低下することを防止することができる。また、D/A変換、A/D変換によるY/C結合、Y/C分離の処理によって発生する滲み、色むらが無い映像データを生成することができる。
【0054】
また、カメラユニット12はCMOS撮像素子からなるCMOSカメラモジュール121を備えたので、CCD撮像素子と比較してコスト及び消費電力を削減できる。
【0055】
また、デジタル信号は、ITU−R REC.656準拠のデジタル信号であり、YUV=4:2:2の8bitに量子化されたパラレル信号である。デジタル信号は、多芯ケーブルであるケーブル200を介してカメラユニット12からレコーダユニット13に送ることができる。また、多芯ケーブルを介して、CMOSカメラモジュール121への輝度や感度等を制御する制御信号を伝送したり、CMOSカメラモジュール121の電力を供給したりすることができる。
【0056】
多芯ケーブルは、例えばRGBディスプレイケーブルに用いられる15芯ケーブル及び15ピンコネクタを用いることができる。これらは汎用品であり、本発明の実施形態に適した専用ケーブルを開発及び製造する必要がないため、コストを上昇させることなく、カメラユニット12とレコーダユニット13とを分離することができる。
【0057】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 ドライブレコーダシステム
10 ドライブレコーダ
11 車両
12 カメラユニット
13 レコーダユニット
20 パーソナルコンピュータ(PC)
30 メモリカード
121 CMOSカメラモジュール
140 画像処理部
150 記録制御部
160 制御部
180 記録ボタン
200 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行時の映像信号をデジタル信号として取得するカメラモジュールを備えるカメラユニットと、
前記カメラモジュールが取得した映像信号のエンコードを行う画像処理部と、前記画像処理部によってエンコードされた映像データを記録部に記録する記録制御部と、前記カメラモジュール、前記画像処理部及び前記記録制御部を制御する制御部と、を備えるレコーダユニットと、
前記カメラユニットと前記レコーダユニットとを電気的に接続するケーブルと、
を備え、
前記制御部は、前記カメラモジュールを制御する信号を、前記ケーブルを経由して伝送し、
前記画像処理部は、前記カメラモジュールが取得した前記デジタル信号を、前記ケーブルを経由して受信することを特徴とするドライブレコーダ。
【請求項2】
前記ケーブルは、前記デジタル信号を伝送する複数の信号線と、前記制御信号を伝送する信号線と、を伝送する多芯のケーブルによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のドライブレコーダ。
【請求項3】
前記カメラモジュールは、CMOS撮像素子を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のドライブレコーダ。
【請求項4】
前記ケーブルは、前記カメラモジュールの輝度及び感度を制御する制御信号を伝送することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のドライブレコーダ。
【請求項5】
前記ケーブルは、前記カメラモジュールの動作に必要な電力を供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のドライブレコーダ。
【請求項6】
車両走行時の映像信号をデジタル信号として取得するカメラモジュールを備えるカメラユニットと、前記カメラモジュールが取得した映像信号のエンコードを行う画像処理部と、前記画像処理部によってエンコードされた映像データを記録部に記録する記録制御部と、前記カメラモジュール、前記画像処理部及び前記記録制御部を制御する制御部と、を備えるレコーダユニットと、前記カメラユニットと前記レコーダユニットとを電気的に接続するケーブルと、を備え、前記制御部は、前記カメラモジュールを制御する信号を前記ケーブルを経由して伝送し、前記画像処理部は、前記カメラモジュールから出力された前記デジタル信号を前記ケーブルを経由して取得するドライブレコーダと、
前記記録部に記録された映像データを再生する画像再生装置と、
を備えることを特徴とするドライブレコーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25574(P2013−25574A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159925(P2011−159925)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】