ドリル製造用のブランク材とドリル
【課題】 高精度であり且つ耐磨耗性の優れたドリルが容易に且つ安価に製造できるドリル製造用ブランク材を提供すること。
【解決手段】 円柱状の母材焼結体の外周面に形成されたねじれ溝11に、多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体12が充填・埋設されており、前記超高圧焼結体12と母材焼結体とが焼結固着されている第1ブランク材1aと、一端面が前記第1ブランク材1aの端面とほぼ同一形状の母材焼結体で構成されている二つの第2ブランク材2とを具備し、前記第1ブランク材1aの両端面にそれぞれ第2ブランク材2が超高圧・高温度で焼結固着されている。
【解決手段】 円柱状の母材焼結体の外周面に形成されたねじれ溝11に、多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体12が充填・埋設されており、前記超高圧焼結体12と母材焼結体とが焼結固着されている第1ブランク材1aと、一端面が前記第1ブランク材1aの端面とほぼ同一形状の母材焼結体で構成されている二つの第2ブランク材2とを具備し、前記第1ブランク材1aの両端面にそれぞれ第2ブランク材2が超高圧・高温度で焼結固着されている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ねじれ刃を有するドリルを製造するためのブランク材(ドリル製造用のブランク材)及び、このブランク材から製造したドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より切削性能の向上や工具寿命の延長という要請に応えるため、切部に硬度が非常に高く且つ耐磨耗性に優れた多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)又は立方晶窒化硼素焼結体(CBN)の焼結体を用いたものが開発されている。
【0003】この種の切削工具としては、例えば、図12R>2及び図13に示すように、薄板チップ状に形成された焼結体から切刃体80を形成し、この切刃体80を母材8の外周コーナ部にろう付け81したものがあるが、このものでは、切刃体80の母材8への張り付け面積が小さいことから、■ろう付けによる接着力の不足や■切削によって発生する熱により、短期間で母材8から切刃体80が外れてしまうという問題が発生していた。
【0004】上記問題を解決した切削工具としては、図1515に示すようなブランク材や、図16に示すようなブランク材を使用したものがある。
【0005】前者のものは、図15に示すように、超硬合金の母材82の先端部分のみ超高圧焼結体83を焼結固着したもので、図14に示すように超高圧焼結体83部分に先端部84が形成されるものである。ところが、この工具では、超高圧焼結体83より成る刃部が先端のみに有するものであることから、上記問題は解決できるものの切削性能が特別に優れたというほどのものではなかった。
【0006】後者のものは、図16に示すように、超硬合金の母材82に形成したねじれ溝に超高圧焼結体83を充填・埋設すると共に両者を一体的に焼結固着したものであり、ドリルの製造工程において前記超高圧焼結体83にねじれ刃を形成するようにしている。
【0007】ところが、このブランク材をドリルに使用する場合には、超高圧焼結体83を有する先端部をドリル先端形状に削り落とす必要があることから、加工が非常に困難であり、更には、両端を支持した状態での機械加工ができないので高精度のドリルを製造することが困難であった。
【0008】尚、先端部の機械加工を容易ならしめるために上記した後者のブランク材のねじれ溝を一端から他端にいたるまでの途中で止めたものとすることが考えられるが、実際に加工をしてみれば判ることであるが前記機械加工は容易なものとはならない。即ち、前記ねじれ溝の加工はある程度の直径(例えば直径150mm)を有した円盤状の砥石を使用して行うが、砥石で加工した場合にはねじれ溝の先端部側端部が一定の深さとならず(端部になるほど溝が浅くなる)、その結果、超高圧焼結体83の前記先端部側端部は薄くなってしまう。したがって、この薄い超高圧焼結体83部分はねじれ刃を形成することができないため、ドリルの先端部を形成するためのものとなり、結局は先端部を形成するための機械加工が困難なものとなってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明では、高精度であり且つ耐磨耗性の優れたドリルが容易に且つ安価に製造できるドリル製造用ブランク材を提供することを課題とし、更には、安価で且つ耐磨耗性に優れ高性能なドリルを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
■.この発明のドリル製造用のブランク材は、円柱状の母材焼結体の外周面に形成されたねじれ溝に、多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体が充填・埋設されており、前記超高圧焼結体と母材焼結体とが焼結固着されている第1ブランク材と、一端面が前記第1ブランク材の端面とほぼ同一形状の母材焼結体で構成されている二つの第2ブランク材とを具備し、前記第1ブランク材の両端面にそれぞれ第2ブランク材が超高圧・高温度で焼結固着されている。
■.そして、この発明のドリルは、■に記載したドリル製造用のブランク材を二分割したものにシャンク材を固着し、前記ブランク材部分にねじれ刃及びこれと連続する先端部を形成して成るドリルであって、前記ブランク材における第1ブランク材の超高圧焼結体にねじれ刃が形成されていると共に第2ブランク材側に先端部が形成されている。
■.尚、■に記載した第2ブランク材が短円柱状に形成されたものとすることが望ましい。
【0011】
【作用】この発明は次のように作用する。
【0012】このブランク材を二分割したものにシャンク材を固着するようにすれば一つのブランク材から高性能な二個のドリルを製造できる。
【0013】そして、ブランク材のうち高価な材料は超高圧焼結体を構成する多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素であるが、従来の技術の欄に記載した後者のものと比較してその部分を研磨等の加工によって削除する量が少なくなる。何故ならば、このブランク材では必要な部分以外には高価な材料を使用していないからである。したがって、ブランク材自体の製造についてコストダウンが図れる。
【0014】また、ブランク材のうち特に硬質な材料は多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素が構成する超高圧焼結体であるが、第2ブランク部材からドリル先端部を製作し、第1ブランク材は前記超高圧焼結体に倣ってねじれ刃を製作するものとしているから、従来の技術の欄に記載した後者のものと比較して、ドリル先端部における硬質部分の加工がなくなり、全体として加工が容易になる。したがって、このブランク材を利用してドリルを製作すると、コストダウンが図れる。
【0015】更に、この発明のブランク材を使用してドリルを製造すると、ねじれ刃は多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体により構成され、このねじれ刃を構成する超高圧焼結体は母材焼結体に超高圧・超高温で焼結固着されているから、切削熱によるねじれ刃の外れがなく、さらに、ねじれ刃は磨耗しにくいものとなる。即ち、工具として寿命が長いものとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】この実施形態のドリルは、図1に示すように、刃部Hとこれの一端に接合せしめられたシャンク部Sとから構成されている。
【0018】刃部Hは、図1及び図2に示すように、二本のねじれ溝15と二つのランド14とが交互に配設される構成としてあり、図1に示すように各ランド14の一端縁に形成された螺旋状のねじれ刃10と、このねじれ刃10の先端と連続する直線状の先端部20とを有するものとしてある。そして、刃部Hの母材を超硬合金により構成すると共に上記したねじれ刃10の先端側部分(一定範囲)を超硬合金よりも硬度が高く耐磨耗性に優れた、高硬度・耐磨耗性の焼結体(この明細書では超高圧焼結体12という)により構成させている。尚、前記超高圧焼結体12としては、超硬合金よりも硬度が高く耐磨耗に優れた焼結体であれば、公知の任意のものを使用できるが、特にPCDやCNBの粉末を高温・超高圧下で焼結させてなるものを採用することが望ましい。
【0019】シャンク部Sは、超硬合金により構成されており、図1に示すように、上記刃部Aとほぼ同径の円柱状に設定してある。尚、この実施形態ではシャンク部Sを超硬合金により構成するが、一定の剛性を有する材料、例えば鋼製等としてもよい。
【0020】このドリルは上記のように構成されているが、刃部Hの先端部分(一定範囲を有する)を構成するブランク材Bは第1ブランク材1と第2ブランク材2とから構成されている。ここで、前記ブランク材Bの製造方法について、図面に基づいて説明する。
第1工程先ず、超硬合金の母材焼結体の外周面に二本のねじれ溝11を形成し、図3に示すようなブランク材1’を構成させる。尚、前記ねじれ溝11は、図1に示すねじれ刃10が形成される箇所に対応させて設定されている。
【0021】尚、第2ブランク材2としては、前記第1ブランク材1と同径であり且つドリルの先端部より少し長い円柱状に形成されている。
第2工程次に、図3に示したブランク材1’と第2ブランク材2とを図4の如く接触(相互管にコバルト粉を介在)させると共にブランク材1’のねじれ溝11に超高圧焼結体12となる原料粉末に適当な焼結助材を混合したものを充填し、全体形状がほぼ完全な円柱状となるようにする。
第3工程続いて、第2工程で製造したものをカプセル(容器)Kにいれて、図5に示す加熱・加圧装置9に入れ、圧力約45,000気圧以上、温度約1,300〜1,600℃の条件で3分以上保持する。すると、ブランク材1’と第2ブランク材2相互が焼結固着されると共に前記ブランク材1’のねじれ溝11に充填されていた原料粉末が焼結され、ねじれ溝11内に超高圧焼結体12が形成される。即ち、ブランク材1’と先端側ブランク材2と超高圧焼結体12とが焼結固着せしめられ、図6に示すようなブランク材Bが完成する。
【0022】尚、図5に示す加熱・加圧装置9は、X、Y、Zの三軸線上から加圧できる(六方向から加圧できる)構造を有しており、立体的形状の焼結体の製造が可能なものである。
【0023】次に、上記第1〜第3の工程により製造されたブランク材Bを利用してドリルの製造方法を説明する。
第1工程先ず、上記の如く製造されたブランク材Bにおける先端側ブランク材2を、超高圧焼結体12の端部に至るまで、ダイヤモンド砥石によって研削加工し、図7に示すような凸状のセンター部19を形成させる。そして、これの他端にシャンク材S’をろう付けし、図8に示すようなドリルの半完成品Pを製造する。尚、この実施形態ではセンター部19を凸状とするが、必要に応じた形状とすることができる。
第2工程次に、上記したドリルの半完成品Pにおける第1ブランク材1部分の外周面に、図1及び図2に示す如くねじれ溝15とねじれ刃10を加工する。
【0024】先ず、半完成品Pを工具研削盤等に装着し、ダイヤモンド砥石により、ブランク材B部分の外周面に、各超高圧焼結体12に仕上げ用の取り代が残るように二本のねじれ溝15及びランド14を研削加工する。
第3工程そして、第2工程で加工したねじれ溝15及びランド14を、放電加工、電解研磨加工等によって超高圧焼結体12に対して精密且つ高精度に仕上げ加工を行い、ねじれ刃10及び先端部20を形成させると、図1及び図2に示すドリルが完成することとなる。尚、この実施形態では、ねじれ刃10と先端部20との接続部分が超高圧焼結体のエンド部となるように機械加工してある。
【0025】このドリルは、上記のようにして構成されているから、作用・効果の欄にも記載されているように耐磨耗性に優れ高性能なものとなる。
【0026】他方、上記実施形態のドリルは、上記したドリル製造用のブランク材Bにかえて、図9に示すブランク材Baを採用することができる。
【0027】このブランク材Baは、同図に示すように、第1ブランク材1aを、上記実施形態の第1ブランク材の二倍の長さに設定されていると共に、前記第1ブランク材1aの両端面にそれぞれ第2ブランク材2を超高圧・高温度で焼結固着して構成してあり、上記実施形態のブランク材製造のための第1〜第3工程をほぼ同様に施せば図10→図11→図9の順序で製造することができる。
【0028】そして、前記ブランク材Baから上記実施形態のドリル(図1及び図2参照)を製造する場合には、これを図11に示す二点鎖線の位置で分割したものに、上記実施形態のドリルを製造するための第1〜第3工程を施せばよく、この場合、一つのブランク材から高性能な二個のドリルを製造することができる。
【0029】
【発明の効果】この発明は上記のような構成であるから、次の効果を有する。
【0030】作用の欄に記載した内容から、ブランク材を二分割したものにシャンク材を固着するようにすれば、一つのブランク材から高性能な二個のドリルを製造することができ、更に安価で且つ耐磨耗性に優れた高性能なドリルを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態のドリルの側面図。
【図2】前記ドリルの刃先部の詳細図。
【図3】第1ブランク材と、第2ブランク材の母材を示した図。
【図4】第1ブランク材と第2ブランク材とを当接させた状態を示す図。
【図5】前記ドリルの製造に使用する加熱・加圧装置の概念説明図。
【図6】この発明の実施形態のドリルを製造するためのブランク材を示す図。
【図7】前記ブランク材を機械加工して機械加工用のセンター部を形成させたものを示した図。
【図8】図7に示した機械加工済みのブランク材にシャンク材を固着したものを示した図。
【図9】この発明の実施形態のドリルを製造するための他の構成のブランク材を示す図。
【図10】前記ブランク材における第1ブランク材と、第2ブランク材の母材を示した図。
【図11】前記ブランク材における、第1ブランク材と第2ブランク材とを当接させた状態を示す図。
【図12】従来の技術の欄において示したドリルの側面図。
【図13】図12に示したドリルの刃先部の詳細図。
【図14】従来の技術の欄において示したドリルの要部説明図。
【図15】図14のドリルの先端部用のブランク材を示した図。
【図16】従来の技術の欄において示したエンドミル用のブランク材にシャンクを固着したものの図。
【符号の説明】
B ブランク材
Ba ブランク材
1 第1ブランク材
2 第2ブランク材
10 ねじれ刃
11 ねじれ溝
12 超高圧焼結体
20 先端部
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ねじれ刃を有するドリルを製造するためのブランク材(ドリル製造用のブランク材)及び、このブランク材から製造したドリルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より切削性能の向上や工具寿命の延長という要請に応えるため、切部に硬度が非常に高く且つ耐磨耗性に優れた多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)又は立方晶窒化硼素焼結体(CBN)の焼結体を用いたものが開発されている。
【0003】この種の切削工具としては、例えば、図12R>2及び図13に示すように、薄板チップ状に形成された焼結体から切刃体80を形成し、この切刃体80を母材8の外周コーナ部にろう付け81したものがあるが、このものでは、切刃体80の母材8への張り付け面積が小さいことから、
【0004】上記問題を解決した切削工具としては、図1515に示すようなブランク材や、図16に示すようなブランク材を使用したものがある。
【0005】前者のものは、図15に示すように、超硬合金の母材82の先端部分のみ超高圧焼結体83を焼結固着したもので、図14に示すように超高圧焼結体83部分に先端部84が形成されるものである。ところが、この工具では、超高圧焼結体83より成る刃部が先端のみに有するものであることから、上記問題は解決できるものの切削性能が特別に優れたというほどのものではなかった。
【0006】後者のものは、図16に示すように、超硬合金の母材82に形成したねじれ溝に超高圧焼結体83を充填・埋設すると共に両者を一体的に焼結固着したものであり、ドリルの製造工程において前記超高圧焼結体83にねじれ刃を形成するようにしている。
【0007】ところが、このブランク材をドリルに使用する場合には、超高圧焼結体83を有する先端部をドリル先端形状に削り落とす必要があることから、加工が非常に困難であり、更には、両端を支持した状態での機械加工ができないので高精度のドリルを製造することが困難であった。
【0008】尚、先端部の機械加工を容易ならしめるために上記した後者のブランク材のねじれ溝を一端から他端にいたるまでの途中で止めたものとすることが考えられるが、実際に加工をしてみれば判ることであるが前記機械加工は容易なものとはならない。即ち、前記ねじれ溝の加工はある程度の直径(例えば直径150mm)を有した円盤状の砥石を使用して行うが、砥石で加工した場合にはねじれ溝の先端部側端部が一定の深さとならず(端部になるほど溝が浅くなる)、その結果、超高圧焼結体83の前記先端部側端部は薄くなってしまう。したがって、この薄い超高圧焼結体83部分はねじれ刃を形成することができないため、ドリルの先端部を形成するためのものとなり、結局は先端部を形成するための機械加工が困難なものとなってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明では、高精度であり且つ耐磨耗性の優れたドリルが容易に且つ安価に製造できるドリル製造用ブランク材を提供することを課題とし、更には、安価で且つ耐磨耗性に優れ高性能なドリルを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
【0011】
【作用】この発明は次のように作用する。
【0012】このブランク材を二分割したものにシャンク材を固着するようにすれば一つのブランク材から高性能な二個のドリルを製造できる。
【0013】そして、ブランク材のうち高価な材料は超高圧焼結体を構成する多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素であるが、従来の技術の欄に記載した後者のものと比較してその部分を研磨等の加工によって削除する量が少なくなる。何故ならば、このブランク材では必要な部分以外には高価な材料を使用していないからである。したがって、ブランク材自体の製造についてコストダウンが図れる。
【0014】また、ブランク材のうち特に硬質な材料は多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素が構成する超高圧焼結体であるが、第2ブランク部材からドリル先端部を製作し、第1ブランク材は前記超高圧焼結体に倣ってねじれ刃を製作するものとしているから、従来の技術の欄に記載した後者のものと比較して、ドリル先端部における硬質部分の加工がなくなり、全体として加工が容易になる。したがって、このブランク材を利用してドリルを製作すると、コストダウンが図れる。
【0015】更に、この発明のブランク材を使用してドリルを製造すると、ねじれ刃は多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体により構成され、このねじれ刃を構成する超高圧焼結体は母材焼結体に超高圧・超高温で焼結固着されているから、切削熱によるねじれ刃の外れがなく、さらに、ねじれ刃は磨耗しにくいものとなる。即ち、工具として寿命が長いものとなる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】この実施形態のドリルは、図1に示すように、刃部Hとこれの一端に接合せしめられたシャンク部Sとから構成されている。
【0018】刃部Hは、図1及び図2に示すように、二本のねじれ溝15と二つのランド14とが交互に配設される構成としてあり、図1に示すように各ランド14の一端縁に形成された螺旋状のねじれ刃10と、このねじれ刃10の先端と連続する直線状の先端部20とを有するものとしてある。そして、刃部Hの母材を超硬合金により構成すると共に上記したねじれ刃10の先端側部分(一定範囲)を超硬合金よりも硬度が高く耐磨耗性に優れた、高硬度・耐磨耗性の焼結体(この明細書では超高圧焼結体12という)により構成させている。尚、前記超高圧焼結体12としては、超硬合金よりも硬度が高く耐磨耗に優れた焼結体であれば、公知の任意のものを使用できるが、特にPCDやCNBの粉末を高温・超高圧下で焼結させてなるものを採用することが望ましい。
【0019】シャンク部Sは、超硬合金により構成されており、図1に示すように、上記刃部Aとほぼ同径の円柱状に設定してある。尚、この実施形態ではシャンク部Sを超硬合金により構成するが、一定の剛性を有する材料、例えば鋼製等としてもよい。
【0020】このドリルは上記のように構成されているが、刃部Hの先端部分(一定範囲を有する)を構成するブランク材Bは第1ブランク材1と第2ブランク材2とから構成されている。ここで、前記ブランク材Bの製造方法について、図面に基づいて説明する。
第1工程先ず、超硬合金の母材焼結体の外周面に二本のねじれ溝11を形成し、図3に示すようなブランク材1’を構成させる。尚、前記ねじれ溝11は、図1に示すねじれ刃10が形成される箇所に対応させて設定されている。
【0021】尚、第2ブランク材2としては、前記第1ブランク材1と同径であり且つドリルの先端部より少し長い円柱状に形成されている。
第2工程次に、図3に示したブランク材1’と第2ブランク材2とを図4の如く接触(相互管にコバルト粉を介在)させると共にブランク材1’のねじれ溝11に超高圧焼結体12となる原料粉末に適当な焼結助材を混合したものを充填し、全体形状がほぼ完全な円柱状となるようにする。
第3工程続いて、第2工程で製造したものをカプセル(容器)Kにいれて、図5に示す加熱・加圧装置9に入れ、圧力約45,000気圧以上、温度約1,300〜1,600℃の条件で3分以上保持する。すると、ブランク材1’と第2ブランク材2相互が焼結固着されると共に前記ブランク材1’のねじれ溝11に充填されていた原料粉末が焼結され、ねじれ溝11内に超高圧焼結体12が形成される。即ち、ブランク材1’と先端側ブランク材2と超高圧焼結体12とが焼結固着せしめられ、図6に示すようなブランク材Bが完成する。
【0022】尚、図5に示す加熱・加圧装置9は、X、Y、Zの三軸線上から加圧できる(六方向から加圧できる)構造を有しており、立体的形状の焼結体の製造が可能なものである。
【0023】次に、上記第1〜第3の工程により製造されたブランク材Bを利用してドリルの製造方法を説明する。
第1工程先ず、上記の如く製造されたブランク材Bにおける先端側ブランク材2を、超高圧焼結体12の端部に至るまで、ダイヤモンド砥石によって研削加工し、図7に示すような凸状のセンター部19を形成させる。そして、これの他端にシャンク材S’をろう付けし、図8に示すようなドリルの半完成品Pを製造する。尚、この実施形態ではセンター部19を凸状とするが、必要に応じた形状とすることができる。
第2工程次に、上記したドリルの半完成品Pにおける第1ブランク材1部分の外周面に、図1及び図2に示す如くねじれ溝15とねじれ刃10を加工する。
【0024】先ず、半完成品Pを工具研削盤等に装着し、ダイヤモンド砥石により、ブランク材B部分の外周面に、各超高圧焼結体12に仕上げ用の取り代が残るように二本のねじれ溝15及びランド14を研削加工する。
第3工程そして、第2工程で加工したねじれ溝15及びランド14を、放電加工、電解研磨加工等によって超高圧焼結体12に対して精密且つ高精度に仕上げ加工を行い、ねじれ刃10及び先端部20を形成させると、図1及び図2に示すドリルが完成することとなる。尚、この実施形態では、ねじれ刃10と先端部20との接続部分が超高圧焼結体のエンド部となるように機械加工してある。
【0025】このドリルは、上記のようにして構成されているから、作用・効果の欄にも記載されているように耐磨耗性に優れ高性能なものとなる。
【0026】他方、上記実施形態のドリルは、上記したドリル製造用のブランク材Bにかえて、図9に示すブランク材Baを採用することができる。
【0027】このブランク材Baは、同図に示すように、第1ブランク材1aを、上記実施形態の第1ブランク材の二倍の長さに設定されていると共に、前記第1ブランク材1aの両端面にそれぞれ第2ブランク材2を超高圧・高温度で焼結固着して構成してあり、上記実施形態のブランク材製造のための第1〜第3工程をほぼ同様に施せば図10→図11→図9の順序で製造することができる。
【0028】そして、前記ブランク材Baから上記実施形態のドリル(図1及び図2参照)を製造する場合には、これを図11に示す二点鎖線の位置で分割したものに、上記実施形態のドリルを製造するための第1〜第3工程を施せばよく、この場合、一つのブランク材から高性能な二個のドリルを製造することができる。
【0029】
【発明の効果】この発明は上記のような構成であるから、次の効果を有する。
【0030】作用の欄に記載した内容から、ブランク材を二分割したものにシャンク材を固着するようにすれば、一つのブランク材から高性能な二個のドリルを製造することができ、更に安価で且つ耐磨耗性に優れた高性能なドリルを提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態のドリルの側面図。
【図2】前記ドリルの刃先部の詳細図。
【図3】第1ブランク材と、第2ブランク材の母材を示した図。
【図4】第1ブランク材と第2ブランク材とを当接させた状態を示す図。
【図5】前記ドリルの製造に使用する加熱・加圧装置の概念説明図。
【図6】この発明の実施形態のドリルを製造するためのブランク材を示す図。
【図7】前記ブランク材を機械加工して機械加工用のセンター部を形成させたものを示した図。
【図8】図7に示した機械加工済みのブランク材にシャンク材を固着したものを示した図。
【図9】この発明の実施形態のドリルを製造するための他の構成のブランク材を示す図。
【図10】前記ブランク材における第1ブランク材と、第2ブランク材の母材を示した図。
【図11】前記ブランク材における、第1ブランク材と第2ブランク材とを当接させた状態を示す図。
【図12】従来の技術の欄において示したドリルの側面図。
【図13】図12に示したドリルの刃先部の詳細図。
【図14】従来の技術の欄において示したドリルの要部説明図。
【図15】図14のドリルの先端部用のブランク材を示した図。
【図16】従来の技術の欄において示したエンドミル用のブランク材にシャンクを固着したものの図。
【符号の説明】
B ブランク材
Ba ブランク材
1 第1ブランク材
2 第2ブランク材
10 ねじれ刃
11 ねじれ溝
12 超高圧焼結体
20 先端部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 円柱状の母材焼結体の外周面に形成されたねじれ溝に、多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体が充填・埋設されており、前記超高圧焼結体と母材焼結体とが焼結固着されている第1ブランク材と、一端面が前記第1ブランク材の端面とほぼ同一形状の母材焼結体で構成されている二つの第2ブランク材とを具備し、前記第1ブランク材の両端面にそれぞれ第2ブランク材が超高圧・高温度で焼結固着されていることを特徴とするドリル製造用のブランク材。
【請求項2】 第2ブランク材が、短円柱状に形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のドリル製造用のブランク材。
【請求項3】 母材焼結体が、超硬合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリル製造用のブランク材。
【請求項4】 請求項1、2、3のいずれかに記載のドリル製造用のブランク材を二分割したものにシャンク材を固着し、前記ブランク材部分にねじれ刃及びこれと連続する先端部を形成して成るドリルであって、前記ブランク材における第1ブランク材の超高圧焼結体にねじれ刃が形成されていると共に第2ブランク材側に先端部が形成されていることを特徴とするドリル。
【請求項1】 円柱状の母材焼結体の外周面に形成されたねじれ溝に、多結晶ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素より成る超高圧焼結体が充填・埋設されており、前記超高圧焼結体と母材焼結体とが焼結固着されている第1ブランク材と、一端面が前記第1ブランク材の端面とほぼ同一形状の母材焼結体で構成されている二つの第2ブランク材とを具備し、前記第1ブランク材の両端面にそれぞれ第2ブランク材が超高圧・高温度で焼結固着されていることを特徴とするドリル製造用のブランク材。
【請求項2】 第2ブランク材が、短円柱状に形成されたものであることを特徴とする請求項1記載のドリル製造用のブランク材。
【請求項3】 母材焼結体が、超硬合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載のドリル製造用のブランク材。
【請求項4】 請求項1、2、3のいずれかに記載のドリル製造用のブランク材を二分割したものにシャンク材を固着し、前記ブランク材部分にねじれ刃及びこれと連続する先端部を形成して成るドリルであって、前記ブランク材における第1ブランク材の超高圧焼結体にねじれ刃が形成されていると共に第2ブランク材側に先端部が形成されていることを特徴とするドリル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平9−168911
【公開日】平成9年(1997)6月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−296718
【分割の表示】特願平4−102789の分割
【出願日】平成4年(1992)4月22日
【出願人】(000107228)ジーエヌツール株式会社 (2)
【公開日】平成9年(1997)6月30日
【国際特許分類】
【分割の表示】特願平4−102789の分割
【出願日】平成4年(1992)4月22日
【出願人】(000107228)ジーエヌツール株式会社 (2)
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