説明

ドレントラップ及びドレントラップの制御方法

【課題】ドレンタンクからの排水に供する制御弁の寿命を延ばし、ドレントラップの長期的な連続使用を可能とする。
【解決手段】排水の導入口1aと排水口1bとが設けられたドレンタンク1と、排水口1bに設けられた電動弁2と、ドレンタンク1内の水位を検出する水位センサ3と、水位センサ3の検出結果に基づいて電動弁2を制御するものであって、ドレンタンク1内の水位が上限値H1を超えると電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みに増大させ、ドレンタンク1内の水位が下限値L1を下回ると電動弁2の開度を一定時間辺り所定の幅で減少させる制御装置とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレントラップ及びドレントラップの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスクーラなどの装置では、ガスの排気を伴うことなく排水するために、排水管の途中にドレントラップが設けられている。このドレントラップは、ドレンタンクに排水を一時的に貯留し、ガスの戻り口からガスを装置あるいはガスの母管に戻す一方、排水をガスの戻り口とは別の排水口から排出する一種の気液分離装置である。このようなドレントラップの1つとして、ドレンタンク内の水位を水位センサによって検出し、水位に応じて排水口に設けられた電動弁などの制御弁を全開閉する制御弁付きドレントラップがある。また、制御弁付きドレントラップとは別に、下記特許文献1に示すように、磁石が内蔵されたフロートを貯留された排水に浮かべ、フロートの上下動によりリードスイッチをON/OFFすることで、排水口を開閉するフロート式ドレントラップも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−162792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記制御弁付きドレントラップでは、水位の変動が激しい場合には制御弁の全開閉を頻繁に繰り返すことになり、この開閉によって制御弁の寿命が短くなるという問題があった。また、上記特許文献1に記載されたフロート式ドレントラップには、ドレンタンクの底部に排水口が設けられており、沈殿したゴミが排水口に詰まる恐れがあった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ドレンタンクからの排水に供する制御弁の寿命を延ばし、ドレントラップの長期的な連続使用を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、ドレントラップに係る第1の解決手段として、排水の導入口と排水口とが設けられたドレンタンクと、前記排水口に設けられた制御弁と、前記ドレンタンク内の水位を検出する水位センサと、該水位センサの検出結果に基づいて前記制御弁を制御するものであって、前記ドレンタンク内の水位が上限値を超えると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で増大させ、前記ドレンタンク内の水位が下限値を下回ると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で減少させる制御装置とを具備する、という手段を採用する。
【0007】
また、ドレントラップに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記制御装置は、前記制御弁の開度を増大させる際に、前記水位が前記上限値から第1の制御弁固定水位を下回るまで下降したと判定した場合に、前記制御弁を現在の開度に保持する、という手段を採用する。
【0008】
ドレントラップに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記制御装置は、前記制御弁の開度を減少させている際に、前記水位が前記下限値から第2の制御弁固定水位を超えるまで上昇したと判定した場合に、前記制御弁を現在の開度に保持する、という手段を採用する。
【0009】
ドレントラップに係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、前記制御装置は、前記ドレンタンク内の水位が上限値を超えたときに、前記制御弁が全閉状態の場合には、初回の開度刻み幅を次回以降の開度刻み幅よりも大として増大させる、という手段を採用する。
【0010】
ドレントラップに係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、前記制御装置は、前記ドレンタンク内の水位が下限値を下回ったときに、前記制御弁が全開状態の場合には、初回の開度刻み幅を次回以降の開度刻み幅よりも大として減少させる、という手段を採用する。
【0011】
ドレントラップに係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれか1つの解決手段において、前記制御装置は、前記水位が前記上限値を超えた状態が第1のアラーム時間継続したと判定した場合、または前記水位が前記下限値を下回る状態が第2のアラーム時間継続したと判定した場合には、アラームを出力する、という手段を採用する。
【0012】
また、ドレントラップの制御方法に係る解決手段として、排水の導入口と排水口とが設けられたドレンタンクと、前記排水口に設けられた制御弁とを具備するドレントラップの制御方法であって、前記ドレンタンク内の水位を検出する水位検出工程と、該水位検出工程の検出結果に基づいて前記制御弁を制御するものであって、前記ドレンタンク内の水位が上限値を超えると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で増大させ、前記ドレンタンク内の水位が下限値を下回ると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で減少させる制御工程とを具備する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水位センサによってドレンタンク内の水位を検出し、水位に応じて制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で増大または減少させるので、従来のように水位の変動に応じて制御弁を全開または全閉する場合に比べて、制御弁の劣化を抑え、その寿命を延ばすことができ、長期的な連続使用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るドレントラップAの一部断面を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るドレントラップAの機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における水位が上限値H1を超えた場合の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における水位が下限値L1を下回った場合の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態における水位が上昇した状態を示す説明図である。
【図6】本発明の実施形態における水位が下降した状態を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態の水位変化に応じた電動弁2の状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るドレントラップAは、ガスクーラなどの装置において、ガスの排気を伴うことなくガスから発生したドレンを排水する機器として用いられるものであり、図1及び図2に示すように、ドレンタンク1と、電動弁2と、水位センサ3と、制御装置4とを備える。なお、電動弁2は、本実施形態における制御弁である。
【0016】
ドレンタンク1は、金属からなる箱型容器であり、一方の側部に導入口1aが、他方の側部に排水口1bがそれぞれ設けられ、また排水口1bには電動弁2が設けられている。上記排水口1bは、導入口1aよりも低い位置に設けられ、上端が後述する水位の下限値L1より低い位置に配置されている。また、このドレンタンク1には、上部にガスの戻り口1cが設けられている。このガスの戻り口1cは、排水から分離されたガスを装置あるいはガスの母管に戻す。
【0017】
また、ドレンタンク1には、上部中央から下方に向けて延在する棒状の水位センサ3が取り付けられている。このようなドレンタンク1は、外部の圧縮機(図示略)から導入口1aに供給されたガスを含む排水を収容すると共に、当該排水に含まれるガスを分離し、排水のみを排水口1bからピット(図2参照)に排出する。さらに、このドレンタンク1は電気的に接地されている。
【0018】
電動弁2は、排水口1bに設けられ、電磁石の磁力によりプランジャを動かすことで開閉する弁である。電動弁2は、プランジャを駆動する駆動モータを備え、駆動モータの回転位置を示す回転位置信号を制御装置4に出力する。このような電動弁2は、制御装置4から入力される電動弁制御信号(電動弁開信号及び電動弁閉信号)によって制御・駆動されると共に、駆動状態を示す信号として上記回転位置信号を制御装置4に出力する。
【0019】
水位センサ3は、ドレンタンク1内における排水の水位を検出するセンサであり、第1の電極3aと、第2の電極3bと、第3の電極3cと、第4の電極3dと、水位信号出力部3eとを備える。第1の電極3a、第2の電極3b、第3の電極3c及び第4の電極3dは、金属からなる棒状部材であり、先端が異なる高さに設定されている。
【0020】
すなわち、第1の電極3aは、先端が排水の上限値H1に位置するように、第2の電極3bは、先端が排水の第1の電動弁固定水位H2に位置するように、第3の電極3cは、先端が排水の下限値L1に位置するように、第4の電極3dは、先端が排水の第2の電動弁固定水位L2に位置するようにそれぞれ配置されている。また、このような第1の電極3a、第2の電極3b、第3の電極3c及び第4の電極3dは、後端が水位信号出力部3eにそれぞれ接続されている。
【0021】
水位信号出力部3eは、ドレンタンク1内の排水の水位を第1の電極3a、第2の電極3b、第3の電極3c及び第4の電極3dの電位として制御装置4のドレントラップ制御回路4cに出力するものである。すなわち、上記第1の電極3a、第2の電極3b、第3の電極3c及び第4の電極3dは、水位信号出力部3eにおいて所定抵抗値の抵抗器を介して一定の基準電圧がそれぞれ印加されており、先端が排水に接触すると、排水が有限の抵抗値を有しているので電位が低下する。水位信号出力部3eは、このように変化する第1の電極3a、第2の電極3b、第3の電極3c及び第4の電極3dの電位を排水の水位を示す水位信号としてドレントラップ制御回路4cに出力する。
【0022】
制御装置4は、操作部4aと、表示部4bと、ドレントラップ制御回路4cとを備える。操作部4aは、本ドレントラップAを管理する管理者の操作指示を受け付ける操作ボタンを備え、上記操作指示を示す操作信号をドレントラップ制御回路4cに出力する。表示部4bは、ドレントラップ制御回路4cから入力される表示制御信号に基づいて、上記管理者に提供する水位などの管理情報を表示する。
【0023】
ドレントラップ制御回路4cは、電動弁2から入力される回転位置信号、水位センサ3から入力される水位信号、また操作部4aから入力される操作信号に基づいて上記電動弁制御信号を生成して電動弁2を制御すると共に表示制御信号を生成することにより表示部4bを制御する。すなわち、ドレントラップ制御回路4cは、回転位置信号や水位信号等に基づいて電動弁2の開度を制御することによりドレンタンク1における水位を制御すると共に、水位などの管理情報を表示部4bに表示させ、また操作部4aが受け付けた操作指示に基づいて設定変更などを行う。
【0024】
次に、このような本ドレントラップAの動作について、図3〜7を参照して説明する。
最初に、ドレンタンク1内の水位が上昇する場合について図1,2と図3のフローチャートとに沿って説明する。すなわち、外部の圧縮機の運転が開始されると、本ドレントラップAでは、導入口1aからガスを含む排水が順次供給されるので、ドレンタンク1内の水位は順次上昇する。このような状態において、ドレントラップ制御回路4cは、水位信号出力部3eから入力される水位信号に基づいてドレンタンク1の排水の水位が上限値H1を超えたか否か判定する(ステップS1)。
【0025】
すなわち、ドレンタンク1における排水の水位が上限値H1を超えると、第1の電極3aが排水と接触するので、第1〜第4の電極3a〜3dの全てが電位低下し、水位信号出力部3eは、このことを示す水位信号をドレントラップ制御回路4cに出力する。この結果、ドレントラップ制御回路4cは、上記水位信号に基づいてドレンタンク1内の水位が上限値H1を超えたと判定する。図5(a)は、水位が上限値H1に到達した状態を示している。なお、ドレントラップ制御回路4cは、水位が上限値H1を超えていないと判定した場合(NOの場合)には、ステップS1の判定処理を繰り返す。
【0026】
そして、ドレントラップ制御回路4cは、電動弁2から入力される回転位置信号に基づいて電動弁2が全閉状態であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0027】
ドレントラップ制御回路4cは、ステップS2において、電動弁2が全閉状態でないと判定した場合(NOの場合)には、電動弁開信号を出力することにより電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みに増大させる(ステップS3)。このステップS3において、電動弁2の開度を1回増大させる際の電動弁動作時間T1、つまり1回の開動作における電動弁2の駆動時間は下式(1)によって設定される。
T1〔sec〕=Ta〔sec〕÷2×W1〔%〕/100 (1)
なお、この式(1)において、Taは全開閉時間〔sec〕であり、W1は電動弁1回の動作開度〔%〕である。例えば、全開閉時間Taが「50sec」であり、電動弁1回の動作開度W1が「10%」である場合には、電動弁動作時間T1として「2.5sec」が算出される(2.5〔sec〕=50〔sec〕÷2×10〔%〕/100)。
【0028】
一方、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS2において、電動弁2が全閉状態であると判定した場合(YESの場合)には、上記ステップS3における開度刻み幅よりも大きい開度刻み幅で電動弁2の開動作を1回実行させる(ステップS4)。ステップS4における電動弁動作時間T1aは、下式(2)によって設定される。
T1a〔sec〕=Ta〔sec〕÷2×W2〔%〕/100 (2)
なお、この式(2)において、W2は全閉時の電動弁動作開度〔%〕である。例えば、全開閉時間Taが「50sec」であり、全閉時の電動弁動作開度W2が「50%」である場合には、全閉時の電動弁動作時間T1aとして「12.5sec」が算出される(12.5〔sec〕=50〔sec〕÷2×50〔%〕/100)。
なお、このようにして電動弁2の開度を増大させることにより、ドレンタンク1内における排水の水位は徐々に低下する。
【0029】
続いて、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS3またはステップS4の処理の後に、水位信号に基づいてドレンタンク1内の水位が第1の電動弁固定水位H2を下回ったか否か判定する(ステップS5)。すなわち、上述したステップS1〜S4の処理により電動弁2の開度が徐々に増大することで、ドレンタンク1内の水位が第2の電極3bの先端の下側まで下がると、第1の電極3a及び第2の電極3bは電位が上昇する一方、第3の電極3c及び第4の電極3dは電位が低下した状態を維持する。水位信号出力部3eは、このような第1〜第4の電極3a〜3dの電位状態を示す水位信号をドレントラップ制御回路4cに出力する。そして、ドレントラップ制御回路4cは、この水位信号が入力されると、水位が第1の電動弁固定水位H2を下回ったと判定する。図5(b)は、水位が第1の電動弁固定水位H2まで下がった状態を示している。
【0030】
そして、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS5の判断処理が「YES」となると、電動弁2を現在の開度に保持する(ステップS6)。すなわち、ドレントラップ制御回路4cは、水位が上限値H1から第1の電動弁固定水位H2を下回るまで下降した場合には、ステップS3における一定時間毎の開度増大処理を停止して、電動弁2を現在の開度に保持する、または、ステップS4において大きい開度刻み幅で電動弁2の開動作を実行させた後に、電動弁2を現在の開度に保持する。
【0031】
一方、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS5の判断処理が「NO」の場合には、上限値H1を超えた状態が所定時間(第1のアラーム時間)継続しているか否か判定する(ステップS7)。そして、ドレントラップ制御回路4cは、このステップS7の判断処理が「YES」の場合には、電動弁2の開度の増大を停止し、アラームを出力する(ステップS8)。アラームの出力方法としては、表示部4bにアラーム画面を表示させてもよいし、あるいはスピーカを備える場合にはスピーカにアラーム音を鳴動させるようにしてもよい。
【0032】
上記第1のアラーム時間Teは、下式(3)に基づいて設定される。
Te〔sec〕=T1〔sec〕×10〔回〕+T2×9〔回〕 (3)
ここで、この式(3)において、T2は一定時間に相当する電動弁動作間隔〔sec〕である。例えば電動弁動作時間T1が「2.5sec」であり、電動弁動作間隔T2が「5sec」である場合には、第1のアラーム時間Teは「70sec」となる(70〔sec〕=2.5〔sec〕×10回+5〔sec〕×9回)。なお、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS7の判断処理が「NO」の場合には、ステップS3において再び電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みに増大させる。つまり、ドレントラップ制御回路4cは、電動弁2が全閉状態の場合においてステップS5の判断処理が「NO」かつステップS7の判断処理が「NO」の場合には、ステップS4の処理を実行した後に、ステップS3の処理を実行する、すなわち、初回の開度刻み幅を次回以降の開度刻み幅よりも大として増大させる。
【0033】
次に、ドレントラップAにおける水位下降時の動作について、図4のフローチャートに沿って説明する。
導入口1aからドレンタンク1に供給されるガスを含む排水の供給量が低下すると、ドレンタンク1内の水位は徐々に低下する。このような状態において、ドレントラップ制御回路4cは、水位信号出力部3eから入力される水位信号に基づいてドレンタンク1の排水の水位が下限値L1を下回ったか否かを判定する(ステップS11)。
【0034】
すなわち、ドレンタンク1内の水位が第3の電極3cの先端の下側まで下がると、第1〜第4の電極3a〜3dの全ての電位が上昇するので、水位信号出力部3eは、この電位状態を示す水位信号をドレントラップ制御回路4cに出力する。そして、ドレントラップ制御回路4cは、このような水位信号に基づいてドレンタンク1内の水位が下限値L1を下回ったと判定する。図6(a)は、ドレンタンク1内の水位が下限値L1まで下がった状態を示している。
【0035】
そして、ドレントラップ制御回路4cは、電動弁2から入力される回転位置信号に基づいて電動弁2が全開状態であるか否かを判定する(ステップS12)。なお、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS11の判定処理がNOの場合には、当該ステップS11の判定処理を繰り返す。
【0036】
そして、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS12の判定処理が「NO」の場合には、電動弁閉信号を出力することにより電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みに減少させる(ステップS13)。このステップS13において、電動弁2の開度を1回減少させる際の電動弁動作時間T3、つまり1回の閉動作における電動弁2の駆動時間は、下式(4)にによって設定される。
T3〔sec〕=Ta〔sec〕÷2×W3〔%〕/100 (4)
例えば、全開閉時間Taが「50sec」であり、電動弁1回の動作開度W3が「10%」である場合には、電動弁動作時間T3は「2.5sec」である(2.5〔sec〕=50〔sec〕÷2×10〔%〕/100)。
【0037】
一方、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS12の判定処理が「YES」の場合には、上記ステップS13の開度刻み幅よりも大きい開度刻み幅で電動弁2に閉動作を1回実行させる(ステップS14)。すなわち、ステップS14における電動弁動作時間T3aは、下式(5)によって設定される。
T3a〔sec〕=Ta〔sec〕÷2×W4〔%〕/100 (5)
例えば、全開閉時間Taが「50sec」であり、全開時の電動弁動作開度W4が「50%」である場合には、全開時の電動弁動作時間T3aは「12.5sec」となる(12.5〔sec〕=50〔sec〕÷2×50〔%〕/100)。
なお、このようにして電動弁2の開度を徐々に減少させることにより、ドレンタンク1の水位は少しずつ上昇する。
【0038】
続いて、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS13またはステップS14の処理の後に、水位信号に基づいてドレンタンク1内の水位が第2の電動弁固定水位L2を超えたか否かを判定する(ステップS15)。すなわち、上述したステップS11〜S14の処理により電動弁2の開度が徐々に減少することによりドレンタンク1内の水位が徐々に上昇して第4の電極3dの先端に到達すると、第1の電極3a及び第2の電極3bの電位は高い状態のままである一方、第3の電極3c及び第4の電極3dの電位は低い状態になる。水位信号出力部3eは、このような電位状態を示す水位信号をドレントラップ制御回路4cに出力する。そして、ドレントラップ制御回路4cは、この水位信号が入力されると、ドレンタンク1内の水位が第2の電動弁固定水位L2を超えたと判定する。図6(b)は、水位が第2の電動弁固定水位L2に到達した状態を示している。
【0039】
そして、ドレントラップ制御回路4cは、電動弁2を現在の開度に保持する(ステップS16)。すなわち、ドレントラップ制御回路4cは、水位が下限値L1から第2の電動弁固定水位L2を超えるまで上昇した場合には、ステップS13における一定時間毎の開度減少処理を停止して、電動弁2を現在の開度に保持する、または、ステップS14において大きい開度刻み幅で電動弁2の閉動作を実行させた後に、電動弁2を現在の開度に保持する。
【0040】
ドレントラップ制御回路4cは、ステップS15の判定処理が「NO」の場合には、下限値L1を下回った状態が所定の時間(第2のアラーム時間)継続しているか否か判定する(ステップS17)。ドレントラップ制御回路4cは、ステップS17において下限値L1を下回った状態が第2のアラーム時間だけ継続したと判定した場合(YESの場合)には、電動弁2から入力される回転位置信号に基づいて電動弁2が全閉状態であるか否かを判定する(ステップS18)。ドレントラップ制御回路4cは、ステップS18において、電動弁2が全閉状態でないと判定した場合(NOの場合)には、電動弁2の開度の減少を停止し、アラームを出力する(ステップS19)。また、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS18において、電動弁2が全閉状態であると判定した場合(YESの場合)には、アラームを出力しない。
【0041】
上記アラームは、ドレンタンク1内の水位が下がった際に、水位が下がり過ぎてドレントラップAの排水口1bからガスが流れ出ることを防止するために設けられたアラームである。つまり、水位が低下したために電動弁2を閉めてドレンタンク1内の水位を保もたなければならないが、異物が電動弁2に詰まることなどが原因で電動弁2が閉動作できないために排水が排出され続いていることを警告するアラームである。ドレントラップAの管理者は、上記アラームを認知すると、手動操作によって電動弁2を閉めたり、また電動弁2の点検等を行う。
【0042】
しかしながら、ドレントラップAの使用開始(最初あるいはメンテナンス後の使用開始)時には、ドレンタンク1内が排水の無い状態になっているが、排水が無い、つまり排水の水位が低いからといってアラームを鳴らしては、ドレンタンク1内の排水が一定水位に上昇するまでアラームを鳴らし続けなければならない。よって、アラームが鳴り続けることがないように、ドレントラップAの使用開始時、つまり、電動弁2が全閉状態である場合(上記ステップS18の判定処理においてYESと判定した場合)には、アラームを出力しない。
【0043】
アラームの出力方法としては、上記ステップS8と同様に、アラーム画面を表示部4bに表示するようにしてもよし、あるいはアラーム音を鳴動するようにしてもよい。上記第2のアラーム時間は、上述した式(3)に基づいて設定される。なお、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS17において下限値L1を下回った状態が第2のアラーム時間継続していないと判定した場合(NOの場合)には、ステップS13において再び電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みに減少させる。つまり、ドレントラップ制御回路4cは、電動弁2が全開状態の場合においてステップS15の判断処理が「NO」かつステップS17の判断処理が「NO」の場合には、ステップS14の処理を実行した後に、ステップS13の処理を実行する、すなわち、初回の開度刻み幅を次回以降の開度刻み幅よりも大として減少させる。
【0044】
このように、電動弁2の開度を徐々に増大あるいは減少させることで、ドレンタンク1内の水位は、図7に示すように変動する。すなわち、排水を送出する圧縮機の運転が開始されると、ドレンタンク1内の水位が徐々に上昇し、水位が上限値H1を超えるまで上昇する。このような水位の上昇に対して、ドレントラップ制御回路4cは、ステップS3において電動弁開信号を一定時間経過毎に出力することにより電動弁2の開度を小刻みに増大させる。
【0045】
図7には、1回目の水位上昇について電動弁動作時間T1の電動弁開信号が電動弁動作間隔T2で3回生成され、2回目の水位上昇について電動弁開信号が2回生成された状態が一例として示されている。このような電動弁開信号によって電動弁2の開度が小刻みに増大することにより、ドレンタンク1からピットに排出される排水の排出量が増大するのでドレンタンク1内の水位は徐々に低下する。そして、ドレンタンク1内の水位が第1の電動弁固定水位H2を下回るまで下降すると、電動弁2の開度が保持されるので排出量は一定量に維持される。
【0046】
その後、ドレンタンク1内の水位が下限値L1を下回るまで下降すると、電動弁動作時間T3の電動弁閉信号が電動弁動作間隔T4(=T3)で生成されることにより、電動弁2の開度は小刻みに減少する。図7には、1回目の水位下降について電動弁閉信号を2回生成し、2回目の水位下降について電動弁閉信号を4回生成した状態を示している。このような電動弁閉信号によって電動弁2の開度が小刻みに減少することにより、ドレンタンク1からピットに排出される排水の排出量が減少し、この結果ドレンタンク1内の水位は上昇する。そして、水位が第2の電動弁固定水位L2を超えるまで上昇すると、電動弁2の開度が保持される。
【0047】
なお、図7に示すように、例えば圧縮機の停止によりドレンタンク1内の水位がさらに下降することにより全閉状態になるまで電動弁2の開度が減少し、ドレンタンク1内の水位が下限値L1を下回った状態が第2のアラーム時間だけ継続する場合があるが、電動弁2が全閉状態である場合には、アラームの出力を実行しない。
【0048】
このような本実施形態によれば、水位センサ3によってドレンタンク1内の水位を検出し、水位に応じて電動弁2の開度を一定時間経過毎に小刻みに増大または減少させるので、従来のように水位の変動に応じて電動弁2を全開または全閉する場合に比べて、電動弁2の劣化を抑え、その寿命を延ばすことができ、長期的な連続使用を可能にする。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態において、ステップS3において電動弁2を一定時間が経過する毎に開度を増大させ、また、ステップS13において電動弁2を一定時間が経過する毎に開度を減少させるが、その開度刻み幅は同じであてもよいし、また可変であってもよい。例えば、開度刻み幅が可変である場合には、前回の開度刻み幅より次回の開度刻み幅を大きくして開度を増大または減少させるようにする。
【0050】
(2)上記各実施形態において、ステップS3における開度を増大させる際の開度刻み幅と、ステップS13における開度を減少させる際の開度刻み幅とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、ステップS4における全閉時の開度刻み幅と、ステップS14における全開時の開度刻み幅も、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
(3)上記各実施形態において、制御弁として電動弁2を用いているが、本発明はこれに限定されない。例えば、空気式または油圧式などの流体を使用して開閉する弁を電動弁2の代わりに用いるようにしてもよい。また、バタフライ弁、ボール弁、グローブ弁、ゲート弁等の弁体の形状が異なる様々な構造の弁を使用可能である。例えば流量と弁の閉め量との関係をできるだけ線形にするのであれば、一般的にグローブ弁が適している。また、排水にある程度異物が含まれることが考慮される場合には、比較的詰まりにくいと考えられるバタフライ弁が適している。
【0052】
(4)上記各実施形態では、電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みに増大または減少させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、電動弁2の開度を一定時間が経過する毎に小刻みではなく、一定の速度で増大または減少させるようにしてもよい。つまり、本発明は、電動弁2の開度を一定時間辺り所定の幅で増大または減少させるようにすればよい。
【符号の説明】
【0053】
A…ドレントラップ、1…ドレンタンク、2…電動弁(制御弁)、3…水位センサ、4…制御装置、1a…導入口、1b…排水口、1c…ガスの戻り口、1d…グランド線、3a…第1の電極、3b…第2の電極、3c…第3の電極、3d…第4の電極、3e…水位信号出力部、4a…操作部、4b…表示部、4c…ドレントラップ制御回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の導入口と排水口とが設けられたドレンタンクと、
前記排水口に設けられた制御弁と、
前記ドレンタンク内の水位を検出する水位センサと、
該水位センサの検出結果に基づいて前記制御弁を制御するものであって、前記ドレンタンク内の水位が上限値を超えると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で増大させ、前記ドレンタンク内の水位が下限値を下回ると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で減少させる制御装置と
を具備することを特徴とするドレントラップ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記制御弁の開度を増大させる際に、前記水位が前記上限値から第1の制御弁固定水位を下回るまで下降したと判定した場合に、前記制御弁を現在の開度に保持することを特徴とする請求項1に記載のドレントラップ。
【請求項3】
前記制御装置は、前記制御弁の開度を減少させている際に、前記水位が前記下限値から第2の制御弁固定水位を超えるまで上昇したと判定した場合に、前記制御弁を現在の開度に保持することを特徴とする請求項1または2に記載のドレントラップ。
【請求項4】
前記制御装置は、前記ドレンタンク内の水位が上限値を超えたときに、前記制御弁が全閉状態の場合には、初回の開度刻み幅を次回以降の開度刻み幅よりも大として増大させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のドレントラップ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ドレンタンク内の水位が下限値を下回ったときに、前記制御弁が全開状態の場合には、初回の開度刻み幅を次回以降の開度刻み幅よりも大として減少させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のドレントラップ。
【請求項6】
前記制御装置は、前記水位が前記上限値を超えた状態が第1のアラーム時間継続したと判定した場合、または前記水位が前記下限値を下回った状態が第2のアラーム時間継続したと判定した場合には、アラームを出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のドレントラップ。
【請求項7】
排水の導入口と排水口とが設けられたドレンタンクと、前記排水口に設けられた制御弁とを具備するドレントラップの制御方法であって、
前記ドレンタンク内の水位を検出する水位検出工程と、
該水位検出工程の検出結果に基づいて前記制御弁を制御するものであって、前記ドレンタンク内の水位が上限値を超えると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で増大させ、前記ドレンタンク内の水位が下限値を下回ると前記制御弁の開度を一定時間辺り所定の幅で減少させる制御工程とを具備するドレントラップの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96455(P2013−96455A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237824(P2011−237824)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)