説明

ナノ結晶で着色された植物

【課題】ナノ結晶で着色された植物の提供。
【解決手段】光に曝された場合にそれを介して植物が特定の色又はいくつかの色を発する、少なくとも1種類のナノ結晶を含む植物。別の態様において、少なくとも1種類のナノ結晶で植物の外表面を着色する方法。また、少なくとも1種類のナノ結晶で植物の組織を着色する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ある特定の波長の光に曝された場合にそれを介して植物が特定の色又はいくつかの色を発する、少なくとも1種類のナノ結晶を含む植物に関する。別の態様において、本発明は、少なくとも1種類のナノ結晶で植物の外表面を着色する方法に関する。本発明はまた、少なくとも1種類のナノ結晶で植物の組織を着色する方法に関する。
【背景】
【0002】
[0002]半導体ナノ結晶(量子ドット)は、発光デバイス(Colvinら、Nature 370、354〜357頁、1994年;Tesslerら、Science 295、1506〜1508頁、2002年)、レーザ(Klimovら、Science 290、314〜317頁、2000年)、太陽電池(Huynhら、Science 295、2425〜2427頁、2002年)、又は、細胞生物学等の生化学研究領域における蛍光生体標識等、様々な技術における使用に向け、非常に根本的及び技術的関心が持たれている。例えば、Bruchezら、Science、第281巻、2013〜2015頁、2001年;Chan&Nie、Science、第281巻、2016〜2018頁、2001年;Klarreich、Nature、第43巻、450〜452頁、2001年に要約される、米国特許第6,207,392号明細書を参照されたい。また、Mitchell、Nature Biotechnology、1013〜1017頁、2001年、及び米国特許第6,423,551号、第6,306,610号、及び第6,326,144号明細書を参照されたい。
【0003】
[0003]量子ドットの驚くべきルミネセンス特性は、金属及び半導体コア粒子がその励起ボーア半径、約1nmから5nmよりも小さい場合に生じる、量子サイズ閉じ込めに起因する。(Alivisatos、Science、271、933〜37頁、1996年;Alivisatos、J.Plays.Chem.100、13226〜39頁、1996年;Brus、Appl Phys.、A53、465〜74、1991年;Wilsonら、Science、262、1242〜46頁、1993年。)
【0004】
[0004]最も研究された半導体ナノ結晶材料の中に、カルコゲニドII〜VI材料及びIII〜V材料がある。これらの半導体ナノ結晶材料における関心の主な理由は、可視領域全体にわたるそのサイズ調整可能な光ルミネセンス放出である。
【0005】
[0005]上記を鑑み、ナノ結晶のさらなる用途を見出すことが望まれている。
【0006】
[0006]本発明は、詳細な説明を参照して、非限定的な実施例及び添付の図面と併せて考えるとよりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】CdZnSeナノ結晶を含む溶液に浸漬コーティングされたデンドロビウムホワイトフェアリーというランを示す図である。写真は、302/345nmで励起されたUVランプの下でのランを示す。ランの花は、図1の左上の小さな写真に示されるその天然の白/紫色と比較して、溶液に浸漬された後は橙色に見える。
【図2】左上は、オクタデセンに溶解したCdZnSeナノ結晶を含む溶液を入れたバイアル瓶を示す写真である。右上は、植物の茎からのCdZnSeナノ結晶取込み前の白色の状態のラン、デンドロビウムホワイトフェアリーを示す写真である。下は、CdZnSeナノ結晶の取込み後、302/345nmで励起されたUVランプで照らされたランを示す写真である。着色されたランは、図1に示されるランと同じ色、すなわち橙色である。
【図3】左上は、フルオレセインを含む水溶液を入れたバイアル瓶を示す写真である。右上は、植物の根からのフルオレセイン取込み前の白色の状態のラン、デンドロビウムホワイトフェアリーを示す写真である。下は、フルオレセインの取込み後、302/345nmで励起されたUVランプで照らされたランを示す写真である。着色されたランは緑色に見え、葉脈又は葉脈網とも呼ばれる維管束において色が濃縮している。
【図4】図4aは、フルオレセイン及びCdZnSeナノ結晶の取込み後の、多色のデンドロビウムホワイトフェアリーを示す写真である。図4aでは、子房領域に、また花弁及び萼片の基部に若干、ナノ結晶の橙色が見られるが、葉脈はフルオレセインの蛍光光源において緑色に見える。図4bは、茎の横断面図を示す写真である。図4bは、32チャンネル/32色範囲に基づいた実際のカラー画像である。切断された茎の中心を囲む6つのグレードット(図4cにより明瞭に示されている)は、フルオレセインの蛍光光源において緑色に見えるが、周囲の部分はCdZnSeナノ結晶からの発光により橙色に見える。図4cは、同じ茎の断面を示すが、フィルタを使用した写真であり、フルオレセインが発した光のみを示している(c)。図4dは、CdZnSeナノ結晶が放出した光のみを示す写真である。
【詳細な説明】
【0008】
[0011]第1の態様において、本発明は、少なくとも1種類のナノ結晶(量子ドット)を含む又は組み込む植物に関する。半導体ナノ結晶材料を含む又は組み込む植物は、植物を着色するために使用されるナノ結晶(量子ドット)に依存して、特定波長の光を発する。
【0009】
[0012]「植物」という用語は、その細胞が細胞核(二重核膜及びいくつかの染色体を含む)に加えて色素体も含む生物を含む。色素体は、葉緑体の形態で存在するか、又は好適な条件下でそれらに発達することができる。緑色植物は、動物及び他のすべての従属栄養生物とは対照的に、光栄養性である。本発明において使用される植物という用語は、時折植物に添加されることもあるシアノバクテリア等の単細胞生物、又は単細胞を含むことは考慮されない。植物に関する本発明はまた、苔、地衣類及び菌を含まず、菌は色素体を有さないにもかかわらず時折植物に区分されることもある。
【0010】
[0013]本発明の別の態様において、ナノ結晶はまた、乾燥植物又は人工植物の中又はその上に備えられることが可能である。これは、本明細書において使用される植物という用語が、生きた植物だけを示すのではなく、生きていない、又は死んだ植物をも示し得ることを意味する。これらの植物は、乾燥植物だけでなく人工植物も含む。乾燥植物は、以下にさらに示される植物又は同じく以下にさらに特定されるその一部から選択することができる。人工植物は、一般に装飾目的で使用され、ポリマー若しくはポリマー混合物、紙若しくは板(積層若しくは非積層板)、金属箔、又は前記材料の混合物から作製することができる。人工植物は、以下に列挙される植物のうちの1つの複製であってもよく、又は天然にはその形態で存在しない、新たに創作された新たな形態の植物であってもよい。
【0011】
[0014]人工植物は、シルク;例えばレーヨン、シルケット綿、ポリエステル若しくはこれらの材料のブレンド若しくはレーヨンとシルクのブレンド等から作製された人工シルク;ポリマー改質シルク、例えばコラーゲン改質シルク;ポリマー改質綿、例えばシルケット綿;又は無加工ポリマー、例えばナイロン、ポリアミド若しくはポリエステルから作製することができる。
【0012】
[0015]植物は、外面に多数発達し得るいくつかの器官を備える。そのような器官には、根、葉、及び花が含まれる。本発明の一態様において、ナノ結晶は、植物の空中部分、すなわち、茎、枝、花及び葉等、植物が成長している地面から上にある植物の部分に備えられるか又は組み込まれる。一実施例において、この空中部分は、植物の花(複数可)又は葉(複数可)を指す。
【0013】
[0016]一実施例において、本発明の植物は、顕花植物、すなわち、少なくともその一生のある特定の段階で花を咲かす又は開花を迎える植物である。「顕花植物」という語句は、一般に、根、茎、葉、及び高度に発達した通道組織(木部及び師部)を有する、被子植物(マグノリオフィタ門)の250,000を超える種のいずれかを指す。それらは多くの場合、花の中の閉じた房(子房)内における種子の発生により裸子植物と区別されるが、この識別は常に明確なわけではない。被子植物門は、単子葉植物と双子葉植物の2つの網からなる。単子葉植物は、3つの花部、茎に分散した道束、及び通常は葉に卓越した平行脈があり、形成層を有さない。双子葉植物は、4つ又は5つの花部、円筒状に配された道束、葉に網状脈パターンがあり、形成層を有する。顕花植物は、習性、サイズ、及び形態において非常に大きな多様性を示しており、南極大陸を含めてどの大陸上にも300を超える科が生育している。顕花植物は、ほとんどどの生育環境にも適応している。大部分は、どの花にも存在する特殊な生殖器官を介して種子により有性生殖を行う。
【0014】
[0017]本発明の一態様において、顕花植物は、バラ科、アジサイ科、ラン科、アジサイ科、ヒヤシンス科、シュウカイドウ科、例えばラベンダー属を含むシソ科、例えばダリア及びガーベラ属を含むキク科、例えばゼラニウム属を含むフクロソウ科、例えばペチュニア属を含むナス科、例えばチューリップ属を含むユリ科、例えばサクラソウ及びシクラメンを含むサクラソウ科、アカバナ科、スミレ科、イワタバコ科、例えばハイビスカス属を含むアオイ科、パイナップル科、例えばアンスリウム属を含むサトイモ科、例えばツツジ属(アザレアを含む)を含むツツジ科、例えばツバキ属を含むツバキ科、又は例えばブーゲンビリア属を含むオシロイバナ科からの植物を含むが、これらに限定されない。
【0015】
[0018]一実施例において、植物は、バラ、ラン、アジサイ、ヒヤシンス、ベゴニア、ラベンダー、ダリア、ゼラニウム、ペチュニア、チューリップ、ユリ、サクラソウ、スミレ、ガーベラ、グロキシニア、ハイビスカス、アナナス、シクラメン、アンスリウム、アザレア、ブーゲンビリア、又はツバキを含むが、これらに限定されない。
【0016】
[0019]ラン科は、チドリソウ亜科(Orchidoideae)、セッコク亜科(Epidendroideae)、バニラ亜科(Vanilloideae)、アツモリソウ亜科(Cypripedioideae)、及びヤクシマラン亜科(Apostasioideae)を含む。アツモリソウ亜科(Cypripedioideae)は、例えば、アツモリソウ連(Cypripedieae)、メキシペディウム連(Mexipedieae)、フラグミペディウム連(Phragmipedieae)、及びセレニペディウム連(Selenipedieae)を含む。セッコク亜科(Epidendroideae)は、例えば、アレサス連(Arethuseae)、カリプソ連(Calypsoeae)、クリプタレナ連(Cryptarrheneae)、セロジネ連(Coelogyneae)、エピデンドラム連(Epidendreae)、エピポギウム連(Epipogieae)、ガストロディア連(Gastrodieae)、マラキス連(Malaxideae)、ネオッティ連(Neottieae)、ポドチラス連(Podochilaeae)、トロピディア連(Tropidieae)及びクセロルキス連(Xerorchideae)を含む。バニラ亜科(Vanilloideae)は、例えば、ポゴニア連(Pogoniinae)及びバニラ連(Vanilleae)を含む。チドリソウ亜科(Orchidoideae)は、例えば、ディセラトステレ連(Diceratosteleae)、コドノルキス連(Codonorchideae)、クラニチス連(Cranichideae)、ディサ連(Diseae)、ディウリス連(Diurideae)及びオルキス連(Orchideae)を含む。
【0017】
[0020]セッコク亜科(Epidendroideae)のポドチラス連(Podichileae)は、例えば、カデチア属(Cadetia)、デンドロビウム属(Dendrobium)、ディプロカウロビウム属(Diplocaulobium)、エピゲネイウム属(Epigeneium)、フリキンゲリア属(Flickingeria)、及びプセウデリア属(Pseuderia)等を含むデンドロビウム亜連(Dendrobiinaa)を含む。例えば、本発明の実施例において使用されるラン植物の一つ「デンドロビウムホワイトフェアリー」は、デンドロビウム属(Dendrobium)に属する。
【0018】
[0021]本発明において使用されるナノ結晶の種類は、3成分以上の系を含む半導体物質又は磁性酸化物、例えば金属フェライトを含むか、又はこれらからなることができる。これらのナノ結晶(量子ドット)の発光は、組成及び/又はサイズにより調整可能である。
【0019】
[0022]植物の着色に使用される少なくとも1種類のナノ結晶は、
化学式MeAl:Re若しくはMeAl1425:Rの希土類金属ドープ金属酸化物、又は
化学式M1A若しくはM1Oの2成分ナノ結晶、又は
化学式M1M2A若しくはM1AB若しくはM1M2Oの3成分ナノ結晶、又は
化学式M1M2ABの4成分ナノ結晶
を含み得るがこれらに限定されず、2成分、3成分及び4成分ナノ結晶のM1及びM2は、独立して、PSEの第II族、第III族、第IV族及び第VIII族のうちの1つ等の金属であり、A及びBは、存在する場合、互いに独立して、PSEの第VI族又は第V族から等の元素であり、
希土類金属ドープ金属酸化物のMeは、例えばCa、Sr又はBaを含むことができ、
希土類金属ドープ金属酸化物のReは、Tb、Dy、Nd、Eu又はTmを含み得る少なくとも1種の元素である。
【0020】
[0023]希土類金属ドープ金属酸化物は、当技術分野において知られており、例えば、米国特許第6,264,855号明細書、JP H9−143,463、JP 2543852、JP 2697733、JP 2697688、JP H10−273654、JP 2929162に詳細に記載されている。簡潔には、上述のもの等の希土類金属ドープ金属酸化物は、耐水性であってもよく、例えば、出発材料としての発光顔料の、pH3以下の条件下での酸又は酸生成化合物であってもよい少なくとも1種の酸性化合物を用いた酸処理、続いて、pH4〜9の条件下でのアルカリ又はアルカリ生成化合物であってもよい少なくとも1種のアルカリ性化合物を用いたアルカリ処理により、調製することができる。
【0021】
[0024]酸処理の対象としての発光顔料は、Mg、Ca、Sr、Ba及びZn等の少なくとも1種の元素、並びにB、Al、P又はGa等の少なくとも1種の元素を含む酸化物マトリックスが、少なくとも1種の希土類金属元素でドープされている発光顔料であれば、いかなる種類であってもよい。ドープされる希土類元素の量は、特に制限されないが、発光顔料の総量に対して0.0001重量%から30重量%、又は、一実施例においては0.1重量%から10重量%で十分である。
発光顔料の例には、一般式MeAl:Re又はMeAl1425:Rの化合物が含まれる。この式において、Meは、Ca、Sr及びBaであってもよく;希土類金属ドープ金属酸化物のReは、Tb、Dy、Nd、Eu及びTm等の少なくとも1種の元素である。そのような希土類金属ドープ金属酸化物の製造は、例えば米国特許第6,264,855号明細書に詳細に記載されている。
【0022】
[0025]化学式M1A又はM1Oの2成分ナノ結晶の例は、当技術分野において知られている。この式におけるM1は、旧IUPAC方式に従う元素の周期律(PSE)の第II族、第III族、第IV族、第VII族又は第VIII族の金属であってもよい。新IUPAC方式によれば、対応する族(括弧内は旧方式)は、第2族/第12族(第II族)、第13族(第III族)、第14族(第IV族)、第7族(第VII族)である。第II族の好適な例は、(新IUPAC方式の第12族である)Cd、Zn、並びに(新IUPAC方式の第2族である)Mg、Sr、Ca、及びBaである。第III族の好適な例は、(新IUPAC方式の第13族である)Al、Ga、及びInである。第IV族の好適な元素の2つの実例は、(新IUPAC方式の第14族である)Pb及びSnである。第VII族の好適な元素の実例は、(新IUPAC方式の第7族である)Mnである。第VIII族の元素の好適な例は、(新IUPAC方式の第8族である)Fe、Co、Ni、及びIrである。本発明の一実施例において、Pb及びCdは、2成分ナノ結晶の製造への使用から除外される。
【0023】
[0026]一般に、M1、又は該当する場合はM1及びM2のそれぞれは、例えば、Cd、Zn、Mg、Sr、Ca、若しくはBa等の第II族、Al、Ga、及びIn等の第III族、Pb、Sn等の第IV族、Mn等の第VII族、又は、Fe、Co、Ni若しくはIr等の第VIII族であってもよい。
【0024】
[0027]上記式中のAは、カルコゲン又はニクトゲン、すなわち旧来のIUPAC命名法に従うPSEの第VI族若しくは第V族、又は新IUPAC命名法に従う第16族若しくは第15族の元素であってもよい。この場合、そのような2成分ナノ結晶の製造のための反応混合物は、金属M1を含有する金属前駆体及び元素Aを含むことができる。金属前駆体は、ナノ結晶の形成において対応する金属を提供する塩を含むことができる。例えば、それは対応する金属の無機塩(例えば炭酸塩)又は有機塩(例えば酢酸塩、ステアリン酸塩若しくはオレイン酸塩)であってもよい。そのような2成分ナノ結晶系の製造に2種の金属又は金属前駆体、例えばカドミウム及び亜鉛又はそれらの酸化物が使用される場合、2種の金属/前駆体は、任意の所望の比で存在する。
【0025】
[0028]元素A、及び該当する場合には元素Bは、PSEの第VI族、例えばS、Se、Te、Oから、又はPSEの第V族、例えばP、Bi若しくはAsから独立して選択され得る。
【0026】
[0029]そのような2成分ナノ結晶の製造に使用される金属前駆体は、オレイン酸金属であってもよい。そのようなオレイン酸金属は、オレイン酸カドミウム、オレイン酸カドミウム亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カドミウム鉛、オレイン酸マグネシウム第一鉄、オレイン酸マンガン第一鉄、オレイン酸カルシウム第一鉄、オレイン酸亜鉛第一鉄、オレイン酸ストロンチウム第一鉄、オレイン酸コバルト第一鉄、又はオレイン酸ニッケル第一鉄を含み得るが、これらに限定されない。
【0027】
[0030]2成分ナノ結晶の例は、CdSe、CdTe、CdS、PbSe、PbTe、PbS、SnSe、ZnS、ZnSe、又はZnTeを含むが、これらに限定されない。一般式M1Oの2成分ナノ結晶は、例えば、式CdO、PbO、MnO、CoO、ZnO、又はFeOの結晶であってもよい。この説明において、M1A及びM1Oという表現は、このナノ結晶が2成分である、すなわちそれらが2種の元素を含むことを例示するものであるに過ぎないことに留意されたい。M1A及びM1Aという表現は、(例として2つのみを挙げると、CdSe又はCdOの場合には、化学量を表現し得るとしても)必ずしもナノ結晶の化学量を表現するものではなく、化学量MO(例えばMnO)、M(例えばAl)、又はM(例えばFe)のナノ結晶もまた含み得る。
【0028】
[0031]いくつかの研究では、サイズ調整可能なより低いバンドギャップのコア粒子を、より高いバンドギャップの無機材料シェルでキャッピングすることにより、ナノ結晶の改善されたルミネセンスを達成し得ることが示されている。例えば、ZnS層で不動態化されたCdSe量子ドットは、室温で強いルミネセンスを示し、その発光波長は、粒径を変化させることにより青から赤に調整することができる。さらに、ZnSキャッピング層は、表面の非発光性再結合部位を不動態化し、ナノ結晶(量子ドット)のより大きな安定性をもたらす。(Dabbousiら、J.Phys.Chem.B101、9463〜75頁、1997年。Kortanら、J.Am.Chem.Soc.112、1327〜1332頁、1990年。)
【0029】
[0032]3成分ナノ結晶は、一般式M1M2Aの結晶であり得る。この式において、M1及びM2は、独立して、PSEの第II族、第III族、第IV族、第VII族又は第VIII族の金属であってもよい。Aは、PSEの第VI族又は第V族からの元素であってもよい。他の実施例において、3成分ナノ結晶は、一般式M1ABを有し得る。この式において、M1は、PSEの第II族、第III族、第IV族、第VII族又は第VIII族の金属であってもよい。A及びBは、独立して、PSEの第V族又は第VI族の元素であってもよい。さらに別の実施例において、本発明の方法に従い形成される3成分ナノ結晶は、一般式M1M2Oの結晶であり得る。M1及びM2は、独立して、PSEの第II族、第III族、第IV族、第VII族又は第VIII族の金属であってもよい。Oは酸素である。3成分ナノ結晶は、いかなる構造のものであってもよい。例えば、コア/シェル構造等の層状構造のものであってもよく、或いは、例えば均一な組成又は徐々に若しくは無段階で変化する組成の、均質なものであってもよい。
【0030】
[0033]形成される4成分ナノ結晶は、一般式M1M2ABの結晶であり得る。上に定義されるように、M1及びM2は、PSEの第II族、第III族、第IV族、第VII族又は第VIII族の金属であってもよい。A及びBは、独立して、PSEの第V族又は第VI族の元素であってもよい。
【0031】
[0034]一般式M1M2Aの3成分ナノ結晶の実例は、式ZnCdSe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、SnPbS、SnPbSe、及びSnPbTeの3成分ナノ結晶を含むが、これらに限定されない。一般式M1ABの3成分ナノ結晶の実例は、式CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、及びPbSTeのナノ結晶を含み得る。式M1M2Oの3成分ナノ結晶の実例は、一般式M1M2、例えばフェライトMgFe、CaFe、SrFe、ZnFe、NiFe、CoFe、及びMnFeのナノ結晶を含み得る。この説明において、M1M2A、M1AB、及びM1M2Oという表現もまた、これらのナノ結晶が3成分である、つまりそれらが3種の異なる元素を含むことを例示する役割を果たすに過ぎないことに留意されたい。したがって、いくつかの実施例においては偶然に、例えばCdZnSe、CdSeTe又はMgFeの実施形態において、一般式にナノ結晶の化学量を幾分正確に読み込むことができるが、M1M2A、M1AB及びM1M2Oという表現からは、ナノ結晶の化学量に関しての結論を下すことはできない。したがって、上記一般式M1M2A、M1AB、及びM1M2Oはまた、例えば化学量M11−xM2A(例えばCd1−xZnSe)、M1M21−xA(例えば、ZnCd1−xSe)、又はM11−y(例えばCdSe1−y)、M11−y(例えばCdSe1−y)又はM11−xM2O(例えばMg1−xFeO)又はM1M21−xO(例えばFeMn1−xO)のナノ結晶を含む。
【0032】
[0035]一般式M1M2ABの4成分ナノ結晶の実例は、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe及びHgZnSTeのナノ結晶を含み得る。この説明において、M1M2ABという表現も、このナノ結晶が4成分である、すなわちそれらが4種の元素を含むことを例示するものであるに過ぎないことに留意されたい。M1M2ABという表現は、(例として1つのみを挙げると、CdZnSeSの場合には、化学量を表現し得るとしても)必ずしもナノ結晶の化学量を表現するものではなく、化学量M11−xM21−y(例えばCd1−xZnxSe1−y)、又はM11−xM21−y(例えばCd1−xZnxSe1−y)のナノ結晶もまた含む。
【0033】
[0036]均質な3成分(M11−xM2A)又は4成分(M11−xM21−y)ナノ結晶の例は、例えば、Zhongら、J.Am.Chem.Soc、2003年125、8598〜8594頁、Zhongら、J.Am.Chem.Soc、2003年125、13559〜13553頁、又は国際特許出願国際公開第2004/054923号パンフレットに記載されている。
【0034】
[0037]2成分、3成分、又は4成分ナノ結晶が使用されるかどうかにかかわらず、それらのナノ結晶は、任意の所望の構造であり得ることにさらに留意されたい。ナノ結晶は、例えば、層状構造、例えばコア/シェル構造若しくはコア−マントル−シェル構造のもの(Hines,M.A.及びGuyot−Sionnest,P.、J.Phys.Chem.(1996年)100、468頁;Dabbousi,B.O.ら、J Phys.Chem.B(1997年)101、9463頁;Peng,X.ら、J.Am.Chem.Soc.(1997年)119、7019 16〜18頁)、又は任意の合金構造(例えば米国特許第7,056,471号明細書を参照)、例えば合金勾配構造(Foley,J.ら、Materials Science Forum、第225〜227巻(1996年)323〜328頁)、若しくは、同時係属PCT出願PCT/SG2008/000290「Process Of Forming A Cadmium And Selenium Containing Nanocrystalline Composite And Nanocrystalline Composite Obtained Therefrom」に記載のような、比較的薄い合金層で囲まれたコア及びシェルを有する「マントル構造」等のものであってもよい。
【0035】
[0038]それらのナノ結晶は、
(i)金属M1、元素A、及び低沸点の非極性溶媒を含有する金属前駆体を含む均質な反応混合物を形成するステップと、
(ii)該均質な反応混合物を、高圧下で、ナノ結晶の形成に好適な高温に上昇させるステップと
を含む方法を使用して製造することができる。
【0036】
[0039]この方法において、低沸点の非極性溶媒は、大気圧下(1013mbar)で約100℃又は80℃未満の沸点を有する。そのような溶媒の例は、ヘキサン、クロロホルム、トルエン、ベンゼン、ヘプタン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、ピリジン、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びテトラヒドロフラン、並びにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0037】
[0040]この方法において、有機カルボン酸、有機ホスフェート、有機ホスホン酸、有機ホスフィンオキシド、有機アミン又はこれらの混合物等の界面活性剤を添加することも可能である。そのようなナノ結晶の製造の例は、実施例2に示されている。
【0038】
[0041]水溶性ナノ結晶
【0039】
[0042]本発明の一実施例において、使用されるナノ結晶は水溶性である。水溶性ナノ結晶は当技術分野において知られており、例えば国際公開第2006/118543号、国際公開第2006/118542号及び国際公開第2006/075974号パンフレットに記載されている。
【0040】
[0043]また、PCT刊行物国際公開第00/17656号パンフレットは、ナノ結晶を水溶性とするために、それぞれ式SH(CH−COOH及びSH(CH−SOHのカルボキシル酸又はスルホン酸化合物でキャッピングされた、コア−シェルナノ結晶を開示している。同様に、PCT出願国際公開第00/29617号パンフレット及び英国特許出願第2342651号明細書は、メルカプト酢酸又はメルカプト−ウンデカン酸等の有機酸がナノ結晶の表面に結合してそれらを水溶性とし、タンパク質又は核酸等の生体分子の接合に好適なものとすることを記載している。英国特許出願第2342651号明細書はまた、ナノ結晶の水溶性を付与すべきキャッピング材料としての、トリオクチルホスフィンの使用を記載している。
【0041】
[0044]別の文献において、PCT刊行物国際公開第00/27365号パンフレットは、ナノ結晶の水溶化剤としてのジアミノカルボン酸又はアミノ酸の使用を報告している。PCT刊行物国際公開第00/17655号パンフレットは、親水性部分及び疎水性部分を有する可溶化剤の使用により水溶性となったナノ結晶を開示している。可溶化剤は疎水基を介してナノ結晶に結合し、一方カルボン酸又はメタクリル酸等の親水基は、水溶性を提供する。さらなるPCT出願(国際公開第02/073155号パンフレット)において、水溶性半導体ナノ結晶が記載されており、様々な分子、例えばトリオクチルホスフィンオキシドヒドロキサメート、ヒドロキサム酸の誘導体、又はエチレンジアミン等の多座錯化剤等がナノ結晶の表面に直接結合してそれらを水溶性としている。これらのナノ結晶は、次いでEDCを介してタンパク質に連結し得る。別の手法において、PCT出願国際公開第00/58731号パンフレットは、血球数の分析に使用されるナノ結晶を開示しており、約3,000から約3,000,000の分子量を有するアミノ誘導多糖類がナノ結晶に連結されている。
【0042】
[0045]米国特許第6,699,723号明細書は、ビオチン及びストレプトアビジン等の生体分子の発光性ナノ結晶プローブへの結合を促進する連結剤としてのシラン系化合物の使用を開示している。米国特許出願公開第2004/0072373A1号明細書は、シラン系化合物を使用した生体分子標識化の方法を記載している。シラン連結ナノ粒子は、分子インプリンティングによりテンプレート分子に結合し、次いで重合化されてマトリックスを形成する。その後、テンプレート分子がマトリックスから除去される。テンプレート分子の除去によりマトリックス中に生成された空洞は、標識化に使用可能な特性を有する。
【0043】
[0046]最近、水溶性ナノ結晶を安定化するための合成ポリマーの使用が報告されている。米国特許出願公開第2004/0115817A1号明細書は、両親媒性ジブロックポリマーが、表面がトリオクチルホスフィン又はトリオクチルホスフィンオキシド等の物質でコーティングされたナノ結晶に、疎水性相互作用を介して非共有結合し得ることを記載している。同様に、Gaoら(Nature Biotechnology、第22巻、969〜976頁、2004年8月)は、非共有結合性の疎水性相互作用を介して両親媒性トリブロックコポリマーでカプセル化された水溶性半導体ナノ結晶を開示している。
【0044】
[0047]1.一実施例において、水溶性ナノ結晶を得るために、ナノ結晶の表面にキャッピング試薬が結合する。キャッピング試薬は、水溶性分子とホスト−ゲスト錯体を形成する。
【0045】
[0048]本明細書において、コアナノ結晶(の表面)に対する親和性を有する(末端)基を有するキャッピング試薬と表面を反応させることができるあらゆるナノ結晶を使用して、水溶性ナノ結晶を得ることができる。したがって、キャッピング試薬は、典型的にはナノ結晶の表面と共有結合を形成する。コア−シェルナノ結晶の場合、共有結合は通常、キャッピング試薬とナノ結晶のシェルとの間に形成される。国際公開第2004/054923号パンフレットに記載のような均質な3成分又は4成分ナノ結晶が使用される場合、共有結合は、均質なコアの表面とキャッピング試薬との間に形成される。キャッピング試薬は、例えば、ホスト分子の内部空洞の疎水性(又は親水性)に依存して、実質的に親水性又は実質的に疎水性の性質のものであり得る。この点で、「(実質的に)疎水性の分子」という用語の意味には、親水性部分が分子(すなわちキャッピング試薬)の疎水性部分によるホスト−ゲスト錯体(ホスト分子は疎水性の内部空洞を有する)の形成に干渉しない限り、疎水性部分だけでなくそれらの親水性部分も備えることができる分子もまた含まれることに留意されたい。同様に、「(実質的に)親水性の分子」という用語は、疎水性部分が分子(すなわちキャッピング試薬)の親水性部分によるホスト−ゲスト錯体(ホスト分子は親水性の内部空洞を有する)の形成に干渉しない限り、親水性部分だけでなくそれらの疎水性部分も備えることができる分子もまた含むことに留意されたい。
【0046】
[0049]一実施例において、「表面キャッピング」に使用されるキャッピング試薬は、式
X−Y−Z
(式中、Xは、S、N、P、又はO=Pから選択される末端基であり、Aは、0から3までの整数であり、Yは、少なくとも3個の主鎖原子を有する部分であり、Zは、好適なホスト分子とともにホスト−ゲスト含有錯体を形成し得る疎水性終端基である)を有する。
【0047】
[0050]典型的には、キャッピング試薬のY部分は、3個から50個の主鎖原子を含む。Y部分は、この試薬に主に疎水性の特徴をもたらす任意の好適な部分を主として含み得る。Yに使用可能な好適な部分の例は、そのいくつかを挙げると、CH−基等のアルキル部分、シクロヘキシル基等のシクロアルキル部分、−OCHCH−基等のエーテル部分、又はベンゼン環若しくはナフタレン環等の芳香族部分を含む。Y部分は、直鎖、分岐鎖であってもよく、また主鎖原子に置換を有していてもよい。Zは、いくつか例を挙げると、−CH基、フェニル基(−C)、−SH基、ヒドロキシル基(OH)、酸性基(例えば、−SOH、POH又は−COOH)、塩基性基(例えば、NH又はNHR(式中、R=CH若しくは−CH−CHである)、ハロゲン(−Cl、−Br、−I、−F)、−OH、−C≡CH、−CH=H、トリメチルシリル基(−Si(Me))、フェロセン基、或いはアダマンタン(adamantine)基であってもよい。
【0048】
[0051]いくつかの実施例において、CH(CHCHSH、CHO(CHCHO)CHSH、HSCHCHCH(SH)(CHCH、CH(CHCHNH、CHO(CHCHO)CHNH、P((CHCH、O=P((CHCH(式中、nは、30≧n≧6の整数である)等の化合物が、キャッピング剤として使用される。他の実施形態において、nは、30≧n≧8の整数である。
【0049】
[0052]この点で、より疎水性又は実質的に疎水性の特性を提供するキャッピング試薬の例は、1−メルカプト−6−フェニルヘキサン酸(HS−(CH−Ph)、1,16−ジメルカプト−ヘキサデカン(HS−(CH16−SH)、18−メルカプト−オクタデシルアミン(HS−(CH18−NH)、トリオクチルホスフィン、又は6−メルカプト−ヘキサン(HS−(CH−CH)を含むが、これらに限定されないことに留意されたい。
【0050】
[0053]より疎水性又は実質的に親水性の特性を提供する例示的キャッピング試薬は、6−メルカプト−ヘキサン酸(HS−(CH−COOH)、16−メルカプト−ヘキサデカン酸(HS−(CH)16−COOH)、18−メルカプト−オクタデシルアミン(HS−(CH18−NH)、6−メルカプト−ヘキシルアミン(HS−(CH−NH)、又は8−ヒドロキシ−オクチルチオールHO−(CH−SHを含むが、これらに限定されない。
【0051】
[0054]キャッピング剤と反応することができ、キャッピングされたナノ結晶とホスト分子との間で形成される錯体に水溶性をもたらす限り、いかなるホスト分子でも使用可能である。典型的には、ホスト分子は、溶媒に露出した極性基、例えばヒドロキシル基、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスフェート基、アミン基、カルボキサミド基等を含有する水溶性化合物である。
【0052】
[0055]好適なホスト分子の例は、炭水化物、環状ポリアミン、環状ペプチド、クラウンエーテル、デンドリマー等を含むが、これらに限定されない。
【0053】
[0056]ホスト分子として使用可能な環状ポリアミンの例は、例えば、テトラアザ大環状分子、例えば1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(シクラムとしても知られる)及びその誘導体、例えば1,4,7,11−テトラアザシクロテトラデカン(イソシクラム)、1−(2−アミノメチル)−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(スコーピアンド)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−6,13−ジカルボキシレート(Sroczynski及びGrzejdaziak、J.Incl.Phenom.Macrocyclic Chem.35、251〜260頁、1999年、又はBernhardtら、J.Aus.Chem、56、679〜684頁、2003年に記載)、ヘキサザ大環状錯体(Hausmann,J.ら、Chemistry,A European Journal、2004年、10、1716頁;Piotrowski,T.ら、Electroanalysis、2000年、12、1397頁)、又はオクタザ大環状化合物(Kobayashi,K.ら、J.Am.Chem.Soc.1992年、114、1105頁)を含む。Kobayashi,K.ら(上記参照)が説明するオクタザ大環状化合物は、極性ゲスト分子(例えば、親水性キャッピング試薬)の収容に好適な化合物の一例でもある。限られた範囲内でのみ水溶性となり得る環状ポリアミン、例えば5,5,7,12,14,14−ヘキサメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(Meシクラム)を使用し、それをカルボキシレート又はスルホネート基等の極性基を提供する置換基で修飾することも可能である。ホスト分子として使用可能な大環状アミンの他の例は、Odashima,K.、Journal of Inclusion phenomena and molecular recognition in chemistry、1998年、32、165頁に記載の化合物である。
【0054】
[0057]好適なカリックスアレーンの例は、4−tert−ブチルカリックス[4]アレーンテトラ酢酸テトラエチルエステル、テトラガラクトシルカリックスアレーン(Dondoniら、Chem.Eur.,J.3、1774頁、1997年に記載)、テトラガラクトシルカリックスアレーン(Davis,AP.ら、Angew.Chem.Int.Edit.、1999年、38、2979頁)、オクタアミノアミドレゾルシン[4]−アレーン(Kazakov,E.Kら、Eur.J.Org.Chem.、2004年、3323頁)、4−スルホニックカリックス[n]−アレーン(Yang,W.Z.、J.Pharm.Pharmacology、2004年、56、703頁)、スルホン化チアカリックス[4又は6]−アレーン(Kunsasgi−Mate S.、Tetrahedron Letters、2004年、45、1387頁)、Kobayashiら、J.Am.Chem.Soc.116、6081頁、1994年及びYanagiharaら、J.Am.Chem.Soc.114、10307頁、1992年に記載のカリックスアレーンを含む。
【0055】
[0058]本発明においてホスト分子として使用可能な環状ペプチドの例は、Guo,Wら、Tetrahedron Letters、2002年、43、5665頁;又はPeng Liら、Current Organic Chemistry、2002年、6に記載の、カリックスアレーンを備えるジシクロジペプチドを含むが、これに限定されない。
【0056】
[0059]ホスト分子として使用可能なクラウンエーテルは、任意の環サイズを有することができ、例えば、8、9、10、12、14、15、16、18又は20個の原子を含み、そのうちのいくつかは典型的にはO又はS等のヘテロ原子である環系を有することができる。本明細書において使用される典型的なクラウンエーテルは、水溶性8−クラウン−4化合物(4はヘテロ原子の数を示す)、9−クラウン−3化合物、12−クラウン−4化合物、15−クラウン−5化合物、18−クラウン−6化合物、及び20−クラウン−8化合物を含むが、これらに限定されない。そのような好適なクラウンエーテルの例は、ほんのいくつかを挙げると、(18−クラウン−6)−2,3,11,12テトラカルボン酸又は1,4,7,10−テトラアザシクロデカン−1,4,7,10テトラカルボン酸を含む。
【0057】
[0060]原則として、(疎水性又は親水性キャッピング試薬が使用されるかどうかに依存して)親水性又は疎水性空洞を提供するあらゆる水溶性デンドリマーが、本明細書において使用されるキャッピング試薬を少なくとも部分的に収容することができる。好適なクラスのデンドリマーは、ポリプロピレンイミンデンドリマー、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリアリールエーテルデンドリマー、ポリリジンデンドリマー、炭水化物デンドリマー及びケイ素デンドリマー(例えばBoas及びHeegard、Chem.Soc.Rev.33、43〜63頁、2004年において検討されている)を含むが、これらに限定されない。
【0058】
[0061]一実施例において、ナノ結晶は、ホスト分子として炭水化物を含む。この炭水化物ホスト分子は、オリゴ糖、デンプン又はシクロデキストリン分子(Davis及びWareham、Angew.Chem.Int.Edit.38、2979〜2996頁、1999年を参照)であってもよいが、これらに限定されない。
【0059】
[0062]ホスト分子がオリゴ糖であるいくつかの実施例において、このオリゴ糖は、2個から、例えば6個から20個の、モノマー単位を主鎖に含むことができる。これらのオリゴマーは、直鎖でも分岐鎖でもよい。好適なオリゴ糖の例は、1,3−(ジメチレン)ベンゼンジイル−6,6’−O−(2,2’−オキシジエチル)−ビス−(2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシド)、1,3−(ジメチレン)ベンゼンジイル−6,6’−O−(2,2’−オキシジエチル)−ビス−(2,3,4−トリ−O−メチル−β−D−ガラクトピラノシド)(Shizumaら、J.Org.Chem.2002年、67、4795頁)、シクロトリキス−(1,2,3,4,5,6)−[α−D−グルコピラノシル)−(1,2,3,4)−α−D−グルコピラノシル](Cescuttiら、Carbohydrate Research、2000年、329、647頁)、アセチレノサッカリド(Burliら、Angew.Chem.Int.Edit.1997年、36、1852頁)、又は環状フラクトオリゴ糖(Takaiら、J.Chem.Soc.Chem.Commun.、1993年、53)を含むが、これらに限定されない。
【0060】
[0063]ホスト分子としてデンプンが使用される場合、デンプンは、約1,000から約6,000Daの分子量Mwを有し得る。いくつかの実施例において、デンプンは、約4,000Da≧Mw≧約2,000Daの分子量Mwを有する。使用可能なデンプンはまた、アミロース、例えばα−アミロース又はβ−アミロースを含む。
【0061】
[0064]ホスト分子として好適なシクロデキストリンの例は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジメチル−α−シクロデキストリン、トリメチル−α−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−γ−シクロデキストリン、及びトリメチル−γ−シクロデキストリンを含む。
【0062】
[0065]そのような水溶性ナノ結晶を製造するためのプロセスは、当技術分野において知られており、例えば国際公開第2006/075974号パンフレットに記載されている。簡潔には、そのような方法は、ナノ結晶コアを有するナノ結晶をキャッピング試薬と反応させ、それによりキャッピング剤をナノ結晶のコアの表面に結合させるステップと、次いでそのように得られたナノ結晶をホスト分子と接触させ、試薬と水溶性ホスト分子との間でホスト−ゲスト錯体を形成するステップとを含む。(キャッピング)試薬は、親水性又は疎水性の性質のものであり得る。純金属ナノ結晶又は均質な3成分若しくは4成分ナノ結晶が使用される場合、同じ反応を行ってそのようなナノ結晶を調製することができる。そのような水溶性ナノ結晶の調製の例は、実施例3に示されている。
【0063】
[0066]2.別の実施例において、少なくとも1種のナノ結晶は、第1の層を形成するナノ結晶の表面に結合したキャッピング試薬を含み、キャッピング試薬は少なくとも1個のカップリング基を有する。さらに、第2の層を形成し、少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーが、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に共有カップリングしている。
【0064】
[0067]一実施例において、キャッピング試薬のカップリング基に対し反応性である少なくとも1個のカップリング部分を含むポリマーは、式:
【化1】

(式中、Jは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対し反応性であるカップリング部分であり、mは、少なくとも1の整数である)を有する。
【0065】
[0068]この実施例を説明すると、例えば第1の層がアミノ終端基を有する場合、第2の層を形成するポリマーは、第1の層のアミノ基と共有カップリングするためのカルボキシル基を有し得る。実際には、存在するすべてのカップリング部分及びカップリング基が共有カップリングに関与するわけではないことが考えられる。例えば、50%のカルボキシル基が第1の層のアミノ基と重合し得る。
【0066】
[0069]別の実施例において、第1の層がカルボキシル終端表面を有する場合、第2の層のポリマーは、第1の層のカルボキシル基と共有カップリングするアミノ基を有し得る。この場合も、存在するすべてのカップリング部分及びカップリング基が共有カップリングに関与するわけではないことが考えられる。例えば、50%のアミノ基が第1の層のアミノ基と重合し得る。
【0067】
[0070]別の実施例において、ポリマーは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対し反応性である少なくとも2個のカップリング部分を含む。この場合、ポリマーは、式:
【化2】

(式中、J及びKは、カップリング部分であり、該J及びKは、同じでも異なってもよく、m及びnのそれぞれは、少なくとも1の整数である)を有し得る。
【0068】
[0071]一般に、キャッピング試薬がまたJ及びK終端基の両方を有している場合、ポリマーは、キャッピング試薬との共有カップリングのためにK及びJ基の1つ又は両方を有することができる。例えば、第1の層がカルボキシル及びアミノ終端表面の両方を有している場合、第2の層のポリマーは、第1の層のカルボキシル基及びアミノ基との共有カップリングのために、それぞれアミノ基及びカルボキシル基の1つのみ、又はその両方を有し得る。カップリング部分のいくつかがカップリング基に共有カップリングすれば十分であり、カップリング部分がカップリング基に対し正確な化学量論比で存在する必要はない。
【0069】
[0072]さらに別の実施例において、ポリマーは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対し反応性である少なくとも3個のカップリング部分を含む。この場合、ポリマーは、式:
【化3】

(式中、J、K及びLは、カップリング部分であり、該J、K及びLは、同じでも異なってもよく、m、n及びpのそれぞれは、少なくとも1の整数である)を有し得る。さらなる実施形態において、ポリマーは、水溶性及び第1の層との表面カップリングを提供するために、3個以上の異なる官能基(NH、COOH、NCO、CHO等)を有することができる。
【0070】
[0073]第2の層を形成するポリマーは、ナノ結晶が導入される溶媒と接触する。したがって、ナノ結晶が、例えば水を含み得る溶媒に可溶であるためには、前記カップリング部分J、K又はLの少なくとも1つが、好ましくは、水溶性シェルに水溶性を付与する親水基を含む。この目的のために、ポリマーはまた、水溶性シェルに水溶性を付与する親水基を有する少なくとも1個の部分を含み得る。その部分は、カップリング部分とは別個に存在してもよく、又はカップリング部分自体に存在してもよい。
【0071】
[0074]一実施例において、カップリング部分J、K及びLは、それぞれ、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、ニトリル基、イソシアネート基及びハライド基から選択される官能基を含む。ホモ官能性ポリマーを有することが望ましい場合は、ポリマーのカップリング部分は、例えば、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基、又はアミノ基のみで構成され得る。そのような場合、ポリマーは、それぞれ、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、及びポリアミンである。
【0072】
[0075]異なる特性(例えば水に対する溶解性等)を有するナノ結晶を得るために、2種類以上のモノマーを有する他の種類のポリマーを使用することができる。例えば、第2の層を形成するためのポリマーとして、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマー、又は混合ランダムポリマーを使用することができる。具体例は、ポリ(アクリル酸−b−メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−エチレンオキシド)、ポリ(メチルメタクリレート−b−メタクリル酸ナトリウム)、及びポリ(メチルメタクリレート−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)を含む。
【0073】
[0076]式(III)のポリマーにおけるカップリング部分Jは、キャッピング試薬に存在するカップリング基に対し反応性である任意の好適な官能基を含み得る。親水性部分Kは、ポリマーに主に親水性の特徴を与える任意の官能基を含むことができ、それによりポリマーを水溶性とすることができる。好適な官能基の例は、例えば、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、アミド、エステル、無水物、及びアルデヒド部分を含む。
【0074】
[0077]一実施例において、ポリマーは、ポリアミン、ポリアセチル酸、又はポリオールからなる群から選択される。ポリマーの分子量は、約500未満(約400)から約1,000,000超の範囲となり得る。これらの実施形態の1つにおいて、分子量範囲は、約600から約1,400,000、より好ましくは約2000から約750,000となり得る。生体内用途では、人体に対する潜在的毒性を最小限化するために、約2000の下限値を選択することができる。
【0075】
[0078]存在するキャッピング試薬がカップリング基として重合性不飽和基を含む場合、親水性シェルの第2の層を形成するために、ポリアセチレン、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミンを含む不飽和ポリマーを使用することができる。
【0076】
[0079]さらに別の実施例において、水溶性ナノ結晶を得るために、少なくとも1種のナノ結晶は、
第1の層を形成するナノ結晶の表面に結合したキャッピング試薬であって、少なくとも2個のカップリング基を有するキャッピング試薬と、
第2の層を形成し、コーティング試薬と共有カップリングした少なくとも2個のカップリング部分を有する、低分子量コーティング試薬と、
第2の層に水溶性を付与するための少なくとも1個の水溶性基と
を含む。
【0077】
[0080]キャッピング試薬は、ナノ結晶のコアの表面に対する親和性を有する末端基を含み得る。末端基は、スルフヒドリル、アミノ、アミン−オキシド及びホスフィノ基を含み得るが、これらに限定されない。キャッピング試薬の少なくとも2個のカップリング基は、疎水性領域により末端基から隔てられていてもよい。少なくとも2個のカップリング基のそれぞれは、アミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、ニトロ、イソシアネート、エポキシド、無水物及びハライド基から独立して選択される官能基を含み得る。
【0078】
[0081]キャッピング試薬は、下記一般式に示されるように、疎水性領域により末端基から隔てられた2個のカップリング基を含み得る。
【化4】

【0079】
[0082]この式において、Xは、ナノ結晶の表面、又は時折呼ばれるようにナノ結晶コアに対する親和性を有する末端基を表す。Xは、S、N、P、又はO=Pから選択され得る。Hn−X−部分の具体例は、例えば、H−S−、O=P−、及びH2N−のうちのいずれか1つを含み得る。Raは、少なくとも2個の主鎖炭素原子を含む部分であり、したがって疎水性の特徴を有する。Raが主に疎水性の特徴を有する、例えば炭化水素である場合は、それはナノ結晶コアからZ部分を隔てる疎水性領域を提供する。Y部分は、N、C、−COO−、又は−CH2O−から選択される。Zは、後の重合のための少なくとも1個のカップリング部分を含む部分であり、したがってこれは親水性キャッピング試薬の一部に主に親水性の特徴を付与する。例示的な極性官能基は、−OH、−COOH、−NH2、−CHO、−CONHR、−CN、−NCO、−COR及びハライドを含むが、これらに限定されない。式中の数詞は、k、n、n’及びmの記号で表される。kは、0又は1である。数詞nは、0から3の整数であり、n’は、0から2の整数であり、両方とも、それぞれX及びYの価数要件を満たすために選択される。数詞mは、1から3の整数である。数詞kは、0又は1である。kが0である場合、ZはRaに結合するという条件が成り立つ。k=0の値は、カップリング部分Zが直接Raに結合しており、例えば、Raは環状部分、例えば脂肪族シクロアルカン、芳香族炭化水素又は複素環等である場合を満たす。しかしながら、k=1の場合にRaは環状部分、例えばベンゼン環に結合した第3アミノ基、又は環状炭化水素であることも可能である。この式において、Zは、アミノ、ヒドロキシル、カルボニル、カルボキシル、ニトリル、ニトロ、イソシアネート、エポキシド、無水物及びハライド基からなる群から選択される官能基である。Y又はZがカップリング基として機能し得る。Zがカップリング基として存在する場合、Yは、カップリング基Zを結合させる構造要素として機能し得る。Zが存在しない場合、Yはカップリング基の部分を形成し得る。
【0080】
[0083]上記式中のRa部分は、数十個から数百個の主鎖原子を含み得る。具体的な一実施形態において、Ra及びZのそれぞれが、独立して、2個から50個の主鎖原子を含む。Zは、1個又は複数のアミド又はエステル連結を含み得る。Raに使用可能な好適な部分の例は、アルキル、アルケニル、アルコキシ、及びアリール部分を含む。
【0081】
[0084]本明細書において使用される「アルキル」という用語は、概して2個から50個の炭素原子を含む分岐又は非分岐の直鎖又は環状の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等、及びシクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル等を指す。本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、概して2個から50個の炭素原子を含み、少なくとも1個の二重結合を含有する、典型的には1個から6個の二重結合、より典型的には1個又は2個の二重結合を含有する、分岐又は非分岐の炭化水素基、例えばエテニル、n−プロペニル、n−ブテニル、オクテニル、デセニル等、及びシクロアルケニル基、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル等を指す。本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、置換基−O−Rを指し、式中、Rは、上に定義されるアルキルである。本明細書において使用される「アリール」という用語は、別段の指定がない限り、1個又は複数の芳香環を含有する芳香族部分を指す。アリール基は、芳香環上で1個又は複数の不活性な水素以外の置換基で任意選択で置換されていてもよく、好適な置換基は、例えば、ハロ、ハロアルキル(好ましくはハロ置換低級アルキル)、アルキル(好ましくは低級アルキル)、アルケニル(好ましくは低級アルケニル)、アルキニル(好ましくは低級アルキニル)、アルコキシ(好ましくは低級アルコキシ)、アルコキシカルボニル(好ましくは低級アルコキシカルボニル)、カルボキシ、ニトロ、シアノ及びスルホニルを含む。すべての実施形態において、Raは、概して窒素、酸素、又は硫黄等のヘテロ原子を含むヘテロ芳香族部分を含み得る。
【0082】
[0085]いくつかの実施例において、Raは、エチル、プロピル、ブチル及びペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ベンジル、プリン、ピリジン、イミダゾール部分を含み得るが、これらに限定されない。
【0083】
[0086]別の実施例において、キャッピング試薬の少なくとも2個のカップリング基は、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性であってもよく、つまり、それぞれ、少なくとも2個の同一のカップリング基又は2個の異なるカップリング基を含み得る。2個又は3個のカップリング基を有するいくつかの好適なキャッピング試薬の実例は、以下のようなそれぞれの構造を有する。
【化5】

【0084】
[0087]コーティング試薬がヘテロ二官能性である、すなわち2個の異なるカップリング基が存在する例示的キャッピング試薬は、以下を含むがこれらに限定されない。
【化6】

【0085】
[0088]別の実施例において、キャッピング試薬は、C=C二重結合等の重合性不飽和基を介して、任意のラジカル重合機構によりコーティング試薬とカップリングする。そのようなキャッピング試薬の具体例は、ω−チオール終端メチルメタクリレート、2−ブテンチオール、(E)−2−ブテン−1−チオール、S−(E)−2−ブテニルチオアセテート、S−3−メチルブテニルチオアセテート、2−キノリンメタンチオール、及びS−2−キノリンメチルチオアセテートを含むが、これらに限定されない。
【0086】
[0089]ナノ結晶コアを囲む水溶性シェルの第2の成分は、水溶性基を備える低分子量コーティング試薬の、キャッピング試薬へのカップリングにより形成される。カップリング剤は、任意選択で、キャッピング試薬に存在するカップリング基を活性化するために使用されてもよい。カップリング剤及びカップリング部分を備えるコーティング試薬は順次添加されてもよく、すなわち、活性化が行われた後にコーティング試薬が添加されてもよく、或いは、カップリング剤と同時にコーティング試薬が添加されてもよい。
【0087】
[0090]適切なカップリング剤の決定は、当技術分野における平均的な技術を有する者の知識の範囲内である。好適なカップリング試薬の一例は、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と組み合わせて使用される1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)である。イミド及びアゾールを含むがこれらに限定されない、他の種類のカップリング試薬も使用可能である。使用可能なイミドのいくつかの例は、カルボジイミド、スクシンイミド及びフタルイミドである。イミドの明示的ないくつかの例は、N−ヒドロキシスクシンイミド又は任意の他の活性化分子と関連して使用される、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC)、スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミドを含む。
【0088】
[0091]水溶性シェルの第2の層を形成するために使用されるコーティング試薬は、キャッピング試薬上の活性化されたカップリング基と反応するカップリング部分を有する1個又は複数の好適なカップリング部分を含み得る。典型的には、好適なコーティング試薬は、少なくとも2個のカップリング部分を有し、すなわち、いくつかの実施例では、例えば2個、3個又は4個の官能基があり、それらはキャッピング試薬の活性化されたカップリング基に対し反応性である。コーティング試薬の少なくとも2個のカップリング部分がキャッピング試薬と反応する場合、コーティング試薬は、例えばエステル又はアミド連結の形成により、キャッピング試薬に共有カップリング(「架橋」)し、それによりナノ結晶コアを囲む水溶性シェルが形成される。
【0089】
[0092]水溶性シェルの第2の層を形成するために使用される「低分子量コーティング試薬」という用語は、非ポリマー(「小」)分子を含む。コーティング試薬の分子量は、コーティング試薬分子に存在する基の種類に依存して、低くても高くてもよい。例えばコーティング試薬が小さい側鎖を有する場合、コーティング試薬の分子量は低くなる。大きい側鎖が存在するコーティング試薬の場合は、そのようなコーティング試薬分子の分子量はより高くなる。したがって、いくつかの実施形態において、コーティング試薬の分子量の上限は、約200、約400、約600ダルトン又は約1000となり得る。高分子量又は大きな空間体積のキャッピング試薬が使用される他の実施形態においては、例えば約1200、又は約1500、又は約2000ダルトン等、上限はより高くなり得る。この定義に従い、「低分子量コーティング試薬」という用語はまた、例えば約2000ダルトンまでの分子量を有するオリゴマー化合物を含む。「カップリング」及び「共有カップリング」という用語は、エステルを形成する酸とアルコールのカップリング、又はアミドを形成する酸とアミンのカップリング等、概して、2個の分子を互いに連結して単一のより大きな物質を形成するいかなる種類の反応をも指す。したがって、キャッピング試薬及びコーティング試薬に存在するカップリング基及びカップリング部分をカップリングし得るいかなる反応も、この用語の意味に含まれる。「カップリング」はまた、キャッピング試薬にカップリング基として存在する1個又は複数の不飽和基(例えば−C=C−二重結合)を、コーティング試薬の対応するカップリング部分と、フリーラジカルカップリングにより反応させ、コーティング試薬をキャッピング試薬層に共有結合させることを含む。
【0090】
[0093]キャッピング試薬及びコーティング試薬は、それぞれ、重合が行われるようにするために互いに反応性の官能基を有し得る。一実施例において、コーティング試薬は、キャッピング試薬上のカップリング基と反応し得る少なくとも1個の共重合性官能基をそれぞれ有する、少なくとも2個のカップリング部分を含む水溶性分子である。一実施例において、コーティング試薬は、式:
【化7】

(式中、
Tは、溶解性を調節するための部分であり、
Rcは、少なくとも3個の主鎖炭素原子を含む部分であり、
Gは、N又はCから選択され、
Z’は、共重合性部分であり、
nは、1又は2の整数であり、
n’は、0又は1であり、n’は、Gの価数要件を満たすように選択される)を有する水溶性分子であってもよい。
【0091】
[0094]望ましい特性を有する水溶性シェルは、Rc部分が30個未満、好ましくは20個未満、又はより好ましくは12個未満の主鎖炭素原子を有するキャッピング試薬で得ることができる。好ましい実施形態において、Rcは、3個から12個の主鎖炭素原子を含む。特定の実験条件下で、この範囲は、ナノ結晶の合成中に高いカップリング効率をもたらした。T部分は、それが導入される環境に対するナノ結晶の溶解性を調節するための極性/親水性官能基であり得る。したがって、それは、シェルに親水性又は疎水性の特徴をもたらすことができ、それによりナノ結晶を水性環境だけでなく非水性環境に対しても溶解性とすることができる。Tは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホネート基、ホスフェート基、アミノ基、カルボキサミド基等の極性基から選択され得る。T部分は、水性環境に不溶性のナノ結晶を得るために、任意の脂肪族若しくは芳香族炭化水素(例えば脂肪酸若しくはベンゼン誘導体)等の疎水性のもの、又は水に不溶性のその他の任意の有機部分であってもよい。Tが疎水性である場合、これは、コーティング試薬がキャッピング試薬と共重合した後の親水性部分の組込みにより修飾されてもよい。Z’部分は、キャッピング試薬上のカップリング部分と共重合可能な官能基を有する共重合性部分である。好適な官能基は、例えば、−NH、−COOH又は−OH、−Br、−C=C−を含むが、これらに限定されない。Z’は、好ましくは少なくとも2個の主鎖炭素原子を有する脂肪族又は環状炭素鎖を追加的に含んでもよい。
【0092】
[0095]一実施例において、Tは、シクロデキストリン分子から得ることができる。シクロデキストリン分子は、得られるコポリマーの水溶性を向上させる多数のヒドロキシル基を有し、生体標識化目的のために生体分子に容易に接合することもできる。好適なシクロデキストリンの例は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジメチル−α−シクロデキストリン、トリメチル−α−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、トリメチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−γ−シクロデキストリン、及びトリメチル−γ−シクロデキストリンを含む。
【0093】
[0096]さらに別の実施例において、コーティング試薬は、アミノ酸、好ましくはジアミノ酸又はジカルボキシルアミノ酸から選択される水溶性分子である。本発明において企図されるジアミノ酸の具体例は、ほんのいくつかを挙げると、2,4−ジアミノ酪酸、2,3−ジアミノプロピオン酸又は2,5−ジアミノペンタン酸を含む。本発明において企図されるジカルボン酸は、アスパラギン酸及びグルタミン酸を含むが、これらに限定されない。
【0094】
[0097]他の実施例において、コーティング試薬は、
【化8】

(式中、CDは、シクロデキストリンである)、及び
【化9】

からなる群から選択される水溶性分子である。
【0095】
[0098]キャッピング試薬が不飽和基(例えばC=C二重結合)を含む別の実施例において、カップリングに使用可能な好適なコーティング試薬は、1,4−ブタジエン、1,5−ペンタジエン、及び1,6−ヘキサジエン等のジエン及びトリエンを含む。
【0096】
[0099]上述の水溶性ナノ結晶のうちの1つの製造のための方法(項目2)は、例えば、国際公開第2006/118543号及び国際公開第2006/118542号パンフレットに記載されている。そのような水溶性ナノ結晶の製造のためのいくつかの例は、実施例4及び5に記載されている。
【0097】
[00100]水溶性ナノ結晶を得るための別の選択肢は、PCT/SG2008/000356に記載されている。この出願に記載されているナノ結晶は、非共有結合性又は共有結合性相互作用によりその表面上に両親媒性ポリマーを含む。
【0098】
[00101]両親媒性ポリマーは、下記一般式(V)のものであり得る。
【化10】

【0099】
[00102]この式において、m、o及びpのそれぞれは、1から約400又は約2から約400を含む0から約400、例えば約0から約400、約0から約350、約0から約300、約3から約300、約0から約250、約0から約200、約2から約200、約0から約150、約2から約150、約0から約200、約1から約200、約3から約100、約2から約100、約0から約100、約3から約50、約2から約50、約1から約50、又は約0から約50等から独立して選択される整数である。さらなる例示として、mは、いくつかの実施例において、約5から約50、例えば約10から約43を含む約10から約45等の範囲内で選択することができ、一方pは、約3から約40、例えば約3から約35又は約4から約30等の範囲内で選択することができ、pは、0から約30、例えば0から約25又は0から約20等の範囲内で選択することができる。m+o+pの和は、約10から約8000、約10から約6000、約10から約5000、約10から約4000、約10から約2000、約10から約1000、約10から約750、約10から約600、約10から約400、約10から約250、約10から約150、約10から約100、約15から約150、約20から約150、約15から約100、又は約20から約100を含む、約10から約10000の範囲内で選択される。いくつかの実施例において、m、o及びpのそれぞれは、約3から約300、約3から約250、約3から約200、約3から約150若しくは約2から約200、約3から約100、約2から約100、約3から約80、約2から約80、約3から約40又は約2から約40を含む、約2から約300から独立して選択される整数であり、(m+o+p)の和は、約10から約400、約10から約350、約10から約300、約10から約250、約10から約200、約6から約200、約10から約150、約6から約150、約10から約100、約6から約100、約10から約50、又は約6から約50を含む、約6から約400の範囲内で選択される。一実施形態において、(m+o+p)の和は、32である。別の実施例において、(m+o+p)の和は、48である。p/(m+o)の比は、0から約20、0から約15、0から約12、0から約10、0から約8、約0から約6、約4、約3、又は約2等の約0から約25の範囲内で選択することができる。一実施例において、p/(m+o)の比は、約1である。
【0100】
[00103]Rは、上述の第1の脂肪族部分であり、約3個から約20個の炭素原子及び0個から約3個のヘテロ原子の主鎖を有する。ヘテロ原子は、基N、O、S、Se及びSiから選択される。Rは、上述の第2の脂肪族部分であり、約3個から約80個の炭素原子及び0個から約40個のヘテロ原子の主鎖を有する。ヘテロ原子は、N及びOから選択される。第2の脂肪族部分Rは、共重合性基を有する。上記式に示される個々の単位は、ブロックの形態ではなく、ランダムを含む任意の順番で配置され得ることが理解される。したがって、上記一般式は、
【化11】

のm単位、
【化12】

のo単位、及び
【化13】

のp単位がポリマー中に存在することを定義するにすぎない。したがって、そのようなポリマーは、これらの単位の任意の順序を包含する。実例として、それぞれの順序は、以下の単位の配置を含み得る。
【化14】

【0101】
[00104]両親媒性ポリマーは、PCT/SG2008/000356に記載のプロセスにより調製することができる。両親媒性ポリマーは、典型的には、少なくとも本質的に架橋を含まない。したがって、両親媒性ポリマーにおいて、第2の脂肪族部分Rの共重合性基(上記参照)は、任意の架橋又は共重合反応に利用可能である。
【0102】
[00105]例えば、両親媒性ポリマーでコーティングされたそのようなナノ結晶を製造するプロセスにおいて、両親媒性ポリマー上の親水性骨格を形成する無水マレイン酸ポリマーが反応物質として使用される。無水マレイン酸ポリマーは、イソブチレン−無水マレイン酸コポリマーとも呼ばれる、Chemical Abstracts番号26426−80−2の市販のポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)であってもよい。とりわけ、BM30AE20、ファイバーゾルブ(Fibersorb)(商標)SA7200H、IB6、KIゲル(KI Gel)及びイソバム(Isobam)(登録商標)の商品名で入手可能である。また、例えばSigma Aldrich社(ミズーリ州セントルイス、米国)又はSinoChemexper Company(上海、中国)から入手可能である。無水マレイン酸ポリマーはまた、エチレン−無水マレイン酸交互コポリマーとも呼ばれる、Chemical Abstracts番号106973−21−1のポリ(エチレン−alt−無水マレイン酸)であってもよい。これは、例えば、Rutherford Chemicals社(ニュージャージー州ベイヨン)から、商品コード27109Pで、またゼマック(ZeMac)(登録商標)E400又はゼマック(登録商標)E60の商品名で入手可能である。上記式(V)において、nは、約10から約10000、例えば約10から約5000、約10から約2000、約10から約1000、約20から約1000、約10から約800、約20から約800、例えば約10から約400等の任意の整数であり得る。一実施例において、nは32である。無水マレイン酸ポリマーの上記例は、限定としてみなされるものではなく、あらゆる利用可能な無水マレイン酸ポリマー(及びまだ合成されていないもの)、具体的には、当技術分野において知られるような標準的手順に従い調製され得る無水マレイン酸ポリマーが、使用に好適である。それぞれの無水マレイン酸ポリマーは、例えば、米国特許第3846383号及び第6316554号明細書に記載の手順に従い形成することができる。当技術分野において使用される一般的な標準的手順はまた、Frank,H.P.、Makromolekulare Chemie(1968年)114、113〜121頁の抄録に要約されており、例えば過酸化物の存在下での無水マレイン酸のオレフィンとのラジカル共重合を含む。
【0103】
[00106]さらなる反応物質として、単官能性化合物及び少なくとも二官能性の化合物が使用される。プロセスの間、単官能性化合物は、上述の第1の脂肪族部分Rに変換される。単官能性化合物の官能基は、無水物との連結を形成することができる。少なくとも二官能性の化合物は、第2の脂肪族部分R(上記参照)に変換される。少なくとも二官能性の化合物は、2個、3個、4個、又はそれより多くの官能基を有し得る。官能基のうちの1つは、無水物との連結を形成することができる。少なくとも二官能性の化合物の官能基のうちの別の官能基は、共重合性である。無水物環の断片の単官能性化合物との反応は、本明細書に記載されるようなナノ結晶の疎水性表面と相互作用し得る疎水性側鎖の形成へとつながる。無水物環の別の断片は、少なくとも二官能性の化合物を骨格に連結するために使用される。ポリマー骨格中のカルボキシル基の数に対する疎水性単位の数の制御は、ポリ酸無水物鎖との反応に使用される求核反応物質の量を変化させることにより達成することができる。したがって、本発明の単官能性化合物は、利用可能な無水物環の少なくとも約25%、例えば少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、又は少なくとも約75%と反応することができる。本発明の少なくとも二官能性の化合物は、利用可能な無水物環の少なくとも約5%、例えば少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、又は少なくとも約25%と反応することができる。
【0104】
[00107]単官能性化合物の官能基は、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン基、エーテル基、チオエーテル基等から選択され得るが、これらに限定されない。単官能性化合物は、約2個から約20個の炭素原子、例えば、約5個から約20個の炭素原子、約5個から約15個の炭素原子、約7個から約20個の炭素原子を含む、約3個から約20個の炭素原子、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個の炭素原子を有する。さらに、単官能性化合物は、0個から約2個のヘテロ原子、例えば1個のヘテロ原子を有する。ヘテロ原子は、例えば、N、O、S、Se又はSiであってもよい。単官能性化合物の例は、アルキルアミン(アルキル基は上に定義される)であってもよいがこれに限定されない。一実施形態において、アルキルアミンは、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン又はn−ドデシルアミンであってもよい。
【0105】
[00108]一般に、少なくとも二官能性の基は、2個以上の異なる官能基を有する。少なくとも2個の官能基のそれぞれには、それらのうちの1個、典型的には1個だけが、無水物との連結を形成することができる限り、任意の官能基を選択することができる。無水マレイン酸部分と反応する1個の基は、アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、セレノール基、ハロゲン基、エーテル基、チオエーテル基等から選択され得るが、これらに限定されない。無水マレイン酸部分と反応しない第2の官能基は、共重合性基であってもよい。共重合性とは、この基が別の官能基と重合可能であることを意味する。好適な共重合性基の例は、アミノ基、ヒドロキシル基、アリルグリシジルエーテル基、エポキシド基、オキセタン基、及び、アリル基等のC=C結合を含むが、これらに限定されない。
【0106】
[00109]少なくとも二官能性の化合物は、約3個から約70個の炭素原子、約3個から約60個の炭素原子、約3個から約40個の炭素原子、約10個から約80個の炭素原子、約10個から約60個の炭素原子、約25個から約60個の炭素原子、約10個から約40個の炭素原子、約3個から約20個の炭素原子、又は約3個から約10個の炭素原子を含む、約3個から約80個の炭素原子、例えば3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個又は44個の炭素原子のアルキル鎖を有する。さらに、少なくとも二官能性の化合物は、0個から約40個のヘテロ原子、1個から約40個のヘテロ原子、約2個から約40個のヘテロ原子、約2個から約30個のヘテロ原子又は約0個から約3個のヘテロ原子を含む、0個から約45個のヘテロ原子、例えば1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個又は43個のヘテロ原子、例えばN又はOを有する。
【0107】
[00110]上述のような両親媒性ポリマーを形成するプロセスにおいて、式(V)(上記参照)の無水マレイン酸ポリマー、単官能性化合物及び少なくとも二官能性の化合物の間の反応は、塩基の存在下で行うことができる。一般に、意図される目的に好適な任意の塩基を使用することができる。一実施形態において、塩基は、求核性塩基である。求核性塩基は、塩基性だけでなく求核性も有する塩基である。実例は、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムテトラメチルピペリジド、ジイソプロピルエチルアミン(Hunig塩基)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、ビス(トリメチルシリル)アミド、ヘキサメチルジシラザン又はビスメシチルマグネシウムを含むが、これらに限定されない。
【0108】
[00111]両親媒性ポリマーの形成プロセス中、典型的には、無水マレイン酸ポリマーの無水物基の反応により、アミド又はエステル基が形成され、それにより非極性側鎖が提供される。この側鎖は、単官能性化合物から形成される部分、例えばアルキル鎖と、単官能性化合物から形成される部分が結合するエステル又はアミド基のそれぞれの原子である、少なくとも1個のヘテロ原子とを含む。したがって、第1の脂肪族部分は、単官能性化合物から形成される部分及び基COO−、CO−NH−又はCO−N−を含む。基がCO−N−である実施形態においては、二級アミドが形成され、したがって第1の脂肪族部分は、単官能性化合物から形成される2個の部分を含む。
【0109】
[00112]この点で、二級アミドが形成される実施例において、第1の脂肪族部分は、単官能性化合物から形成される1個の部分、及び少なくとも二官能性の化合物から形成される1個の部分もまた含むことができる。明確性のために、少なくとも二官能性の化合物から形成される部分を含む任意の脂肪族部分が、第2の脂肪族部分とみなされるものとする。したがって、単官能性化合物から形成される部分と少なくとも二官能性の化合物から形成される部分の両方を含む脂肪族部分は、分岐した第2の脂肪族部分とみなされるものとする。
【0110】
[00113]さらに、無水マレイン酸ポリマーの各無水物基は、1個若しくは2個の単官能性化合物と、又は1個若しくは2個の少なくとも二官能性の化合物と反応し得る(以下も参照されたい)。典型的には、無水物基は、単官能性化合物か少なくとも二官能性の化合物かにかかわらず、最大1個の反応物質と反応する。結果として、カルボン酸基が形成され、これは典型的には溶液中で負電荷を提供する。さらに、多くの無水物基は反応しない。これらの無水物基は、一般に本発明のプロセスの間に加水分解し、それによりさらなるカルボン酸基を提供する。両親媒性ポリマーを形成する本発明のプロセスが、架橋剤等のいかなるカップリング剤の使用も必要としないことが、当業者には理解される。
【0111】
[00114]ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)が脂肪族アミンと反応することができることは以前に示されているが(日本国特許出願JP57016004、Fernandez−Arguelles,M.T.ら、Nano Letters(2008年)7、9、2613〜2617頁)、さらに二官能化、三官能化、及びより高官能化された化合物がワンポット合成における追加的な反応物質として使用可能であることが見出されている。一般に、二官能化又はより高官能化された化合物を1つだけの反応に供し、それによりポリマーの炭化水素骨格への1つだけの連結を形成するように、反応条件を制御することが可能である。二官能化又はより高官能化された化合物の残りの官能基は、後にカップリング及び架橋反応に利用可能である。この点で、両親媒性ポリマーの炭化水素骨格が、約3個から約80個の炭素原子のアルキル鎖並びに0個から約40個のN及びOから選択されるヘテロ原子を有する極性側基及び側鎖を有することができ、側鎖は共重合性基を有することに留意されたい。上述のように、共重合性基はアミノ基、ヒドロキシル基、又は、末端若しくは内部C=C若しくはC≡C結合を含有する基、例えば末端基−CH=CH、末端基−C≡CH、内部−CH=CH−若しくは内部基−C≡C−等であってもよい。上述のように、共重合性基はまた、末端若しくは内部C=C若しくはC≡C結合、及び追加の官能基又はビシナル若しくはジェミナルへテロ原子を含んでもよく、例えば一般構造−G−CH=CH−又はG−C≡C−(Gは例えばN、O、又は基−CH=CH−若しくは−C≡C−である)のものである。
【0112】
[00115]共重合性基は、少なくとも二官能性の化合物の残りの基と同じであっても異なっていてもよい。官能基が同じである実施例において、無水マレイン酸ポリマーと反応させないそれらの官能基を、重合プロセスに関与しないように遮蔽することができる。当業者には周知である多数の保護基が、様々な官能基に対し利用可能である。実例として、ヒドロキシル基は、イソプロピリデン基により保護され得る。そのような保護基は、重合の後に除去することができ、このようにもはや遮蔽されていない官能基(複数可)は、カップリング、架橋又は共重合反応に利用可能である。例えば、ヒドロキシル基を遮蔽しているイソプロピリデン保護基は、酸処理により除去することができる。それぞれの少なくとも二官能性の化合物の合成の間、十分先立ってそのような保護基が導入されなければならない可能性があることが、当業者にはさらに認識される。
【0113】
[00116]そのような両親媒性ポリマー、及びそれらでコーティングされたナノ結晶の製造の例は、PCT/SG2008/000356に記載されている。いくつかの例は、実施例6にも列挙されている。本発明において使用可能なその他の両親媒性ナノ結晶は、例えば、Fernandez−Arguelles,M.T.、Yakovlev,A.ら(2007年、Nano Lett.、第7巻、第9号、2613頁)、及びCheng−An,J.L.、Ralph,A.ら(2008年、small、第4巻、第3号、334頁)の論文に記載されている。Cheng−An,J.L.、Ralph,A.らが説明する両親媒性ナノ結晶は、ポリ(無水マレイン酸)骨格に基づいている。無水物環の断片のアルキルアミンとの反応は、ナノ粒子表面上の疎水性界面活性剤層とのインターカレーションに必要な疎水性側鎖の形成へとつながる。無水物環の別の断片は、官能性有機分子を骨格に連結するために使用される。Fernandez−Arguelles,M.T.、Yakovlev,A.らが説明する両親媒性ナノ結晶は、ポリマー骨格の無水物環の反応の下で、アミノ官能化疎水性炭化水素鎖(ドデシルアミン)を極性骨格(ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)に連結することにより合成される、両親媒性ポリマーを含む。
【0114】
[00117]さらなる水溶性ナノ結晶が、Dubertretら(Science(2002年)298、1759頁)により説明されている。Dubertretのグループは、40%の1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]及び60%の1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリンの混合物で構成されるミセルの疎水性コア内に、ナノ結晶をカプセル化した。ミセルは、ナノ粒子に疎水性界面を提供し、高いコロイド安定性を維持した。PEG層の存在が、ナノ結晶を可溶化するための必要条件であった。
【0115】
[00118]その他の著者は、Dubertretのグループの方法のようなポリマーミセル形成ではなく、両親媒性ポリマーによるナノ結晶の直接コーティングに依存するさらなる可能性に関して報告した。両親媒性アルキル変性(オクチルアミン又はイソプロピルアミン)低分子量ポリアクリル酸が、TOPO保護ナノ結晶をコーティングし、ナノ結晶を水に可溶化することの実証が成功している(Wu,X.ら、Nat.Biotechnol.(2003年)21、41頁;Mattheakis,L.C.ら、Anal.Biochem.(2004年)327、200頁;Luccardini C.ら、Langmuir(2006年)22、2304頁)。ある研究において、Luccardiniら(同書)は、コーティングされたナノ結晶の脂質膜とのpH依存性相互作用について報告している。彼らは、生物学的緩衝液中で、ポリマーコーティングされたナノ結晶と膜との間の相互作用が、緩衝液のpHにより制御可能であることを見出した。Gaoらの研究では、ポリブチルアクリレート部分(疎水性)、ポリエチルアクリレート部分(疎水性)、及びポリメタクリル酸部分(親水性)からなる高分子量両親媒性ABCトリブロックコポリマーを使用して、QDが直接カプセル化された(Gao X.ら、Nat.Biotechnol.(2004年)22、969頁)。
【0116】
[00119]疎水性QDを直接水に移すために使用される異なるクラスのポリマーは、ポリ(無水マレイン酸alt−1−テトラデセン)である(Pellegrino,T.ら、Nano Lett.(2004年)4、703頁;Yu,W.W.ら、J.Am.Chem.Soc.(2007年)129、2871頁)。ポリマーシェルの安定性は、ビス(6−アミノヘキシル)アミン架橋剤の添加により増加した。
【0117】
[00120]ナノ結晶に加え、本発明の植物はまた、フルオロフォア等の有機染料を含むことができる。フルオロフォアの例は、ほんのいくつかを挙げると、ヒドロキシクマリン(青色)、例えば7−ヒドロキシクマリン−3−カルボン酸;メトキシクマリン(青色)、例えば7−メトキシクマリン−4−酢酸;シアニン染料、例えばシアニン(Cy2、濃緑)、インドカルボシアニン(Cy3)、インドジカルボシアニン(Cy5);アミノクマリン(青色)、例えば7−アミノクマリン;FAM(濃緑色)、例えば5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM);アレクサフルオル、例えばアレクサフルオル350、405、430、488、500、514、532、546、555、568、594、610、633、647、660、680、700及び750;フルオレセイン(FITC;CAS番号:2321−07−5)(薄緑色);HEXフルオロフォア(薄緑色)、例えば6−カルボキシ−2’,4,4’,5’,7,7’−ヘキサクロロフルオレセイン;TRITC(黄色)、例えばテトラメチルローダミン6−イソチオシアネートクロリド(6−TRITC);R−フィコエリトリン(PE)(黄色);テキサスレッド(C3129Cl;CAS番号:82354−19−6)(橙色);カルボキシテトラメチルローダミン(TAMARA)(赤色);6−カルボキシル−X−ローダミン(6−Rox)(赤色);又はアロフィコシアニン(A−PC)(赤色)を含むが、これらに限定されない。一実施例において、ナノ結晶と混合することができるフルオロフォアとして、フルオレセインが使用されている(図4を参照)。
【0118】
[00121]有機染料はまた、発色団、例えばアゾ化合物、リコペン、β−カロテン、アントシアニン、フルオレセイン及びルシフェリンを含み得るが、これらに限定されない。
【0119】
[00122]ナノ結晶及び有機染料のそのような混合物は、少なくとも1種類のナノ結晶及び少なくとも1種類の有機染料のそのような混合物を含む植物の異なる色をもたらすことができる。
【0120】
[00123]別の態様において、本発明は、少なくとも1種類のナノ結晶で植物を着色する方法であって、
それに溶解した少なくとも1種類のナノ結晶を含む溶液を提供するステップと、
植物を前記溶液と接触させるステップと
を含む方法に関する。
【0121】
[00124]本発明の上記方法において、まず、ナノ結晶は、好適な溶媒又はそのような溶媒の混合物中に提供され、すなわち溶液は溶媒と少なくとも1種類のナノ結晶との混合物であり、ナノ結晶は溶媒に溶解している。
【0122】
[00125]この点で、好適とは、ナノ結晶がそれぞれの溶媒に可溶であるべきであることを意味する。そのような溶媒の例は、非プロトン性溶媒及び/又は非極性溶媒、例えば非プロトン性非極性溶媒であるが、これに限定されない。後者は、鉱物油、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、1−オクタデセン、9−オクタデセン、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン又はこれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。一実施例において、1−オクタデセンを使用してナノ結晶を溶解している。
【0123】
[00126]別の実施例において、プロトン性溶媒が使用される。プロトン性溶媒は、例えば、ヒドロキシル基中等の酸素又はアミノ基中等の窒素に結合した水素原子を有する溶媒である。より一般的には、フッ化水素等の解離性Hを含有する任意の分子溶媒が、プロトン性溶媒と呼ばれる。そのような溶媒の分子は、H(プロトン)を供与することができる。極性プロトン性溶媒の例は、水、メタノール、エタノール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、ギ酸、酢酸、ジメチルアルシン酸[(CHAsO(OH)]、アニリン、N,N−ジメチル−ホルムアミド、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、又はクロロフェノールを含むが、これらに限定されない。具体的には、水溶性ナノ結晶が使用される場合、水等のプロトン性溶媒を使用することができる。
【0124】
[00127]好適な非極性溶媒のさらなる例は、非極性イオン液体である。非極性イオン液体の例は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミドビス(トリフリル)アミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミドトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス[オキサラト(2−)]ボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N”−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド及び1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムを含むが、これらに限定されない。極性非プロトン性溶媒の例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、エチルアセテート、イソブチルイソブチレート、エチレングリコールジアセテート、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドを含むが、これらに限定されない。
【0125】
[00128]一実施例において、溶媒は、高沸点を有する溶媒である。そのような溶媒の例は、1−オクタデセン又は9−オクタデセンを含む。それらの沸点は250℃を超える。他の例は、2種の非常に安定な化合物、ビフェニル(C1210)及びジフェニルオキシド(C1210O)の共融混合物である、沸点が275.1℃のダウサムA、又は、一般式C1210−xClのポリ塩化ビフェニル、例えば沸点が359℃のサーミノール66を含むが、これらに限定されない。別の実施形態において、ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム等の低沸点溶媒を使用することができる。
【0126】
[00129]水溶性ナノ結晶は、水溶液中に容易に混合又は溶解することができる。そのような水溶液は、植物が根又は切断された茎から取り込むのに好適である。非水溶性、すなわち疎水性のナノ結晶が使用される場合、それらは、植物が根又は切断された茎から取り込むことができる好適な溶媒、例えば疎水性又は両親媒性溶媒に溶解させる必要がある。本明細書に記載の実施例の1つ(実施例1を参照)において使用されたオクタデセンに加え、その他の疎水性溶媒を使用することができる。例としては、ほんのいくつかを挙げると、大豆油、菜種油、ひまわり油、オリーブ油等の植物油が含まれる。疎水性ナノ結晶は、植物が根又は切断された茎から取り込む前に、まずそのような油に溶解させることができる。
【0127】
[00130]また、疎水性ナノ粒子を非疎水性溶媒中に分散させることも可能である。例えば、上述のような極性又は水性溶媒中に疎水性ナノ結晶を分散させることにより、水−油エマルジョンを生成することができる。
【0128】
[00131]本発明の別の態様において、植物の根が溶液中に含浸される。別の態様において、植物の茎が切断され、切断された茎を有する植物が溶液中に入れられる。そのような場合、植物の細胞壁及び表皮物質は主として長鎖脂肪酸で構成されるため、発光性ナノ結晶は、長鎖炭化水素、例えば2つだけ例を挙げると、1−オクタデセン又は9−オクタデセン等に分散される。
【0129】
[00132]一実施例において、デンドロビウムホワイトフェアリーというランに、オクタデセンに溶解したナノ結晶を取り込ませた。植物に有機媒体の特殊な輸送チャネルがないため、ナノ結晶の花への拡散は非常に低速度で生じる。ナノ結晶を含む有機溶媒溶液に植物の切断された茎を含浸することにより着色された植物の例を、図2に示す。別の実施例において、ナノ結晶とフルオロフォアの混合物が、有機染料に溶解された。後に、植物の切断された茎がこの溶液に含浸されたが、植物への取込み後、示された植物は多色であった(例えば図4aを参照)。
【0130】
[00133]本発明の別の態様において、空中部分又は植物全体を、好適な溶媒に溶解した少なくとも1種類のナノ結晶又はナノ結晶と有機染料の混合物を含む溶液と接触させた。
【0131】
[00134]植物のこの溶液との接触は、植物の空中部分若しくは植物全体を溶液に浸漬するか、又は溶液を噴霧することにより行うことができる。図1は、溶液で浸漬コーティングされたデンドロビウムホワイトフェアリーというランの例を示す。ナノ結晶、又はナノ結晶と有機染料の混合物は、植物の表面に吸着され、また、表皮/クチクラの植物細胞により部分的に取り込まれる。
【0132】
[00135]少なくとも1種類のナノ結晶の濃度は、約0.001mmol/lから1mmol/l、又は約0.01mmol/lから1mmol/l、又は約0.1mmol/lから0.5mmol/lである。使用可能な有機染料の濃度は、0.001〜1.0mol/L、又は約0.01mmol/lから1mmol/l、又は約0.1mmol/lから0.5mmol/lの範囲内である。
【0133】
[00136]本発明の植物は、ある特定の波長の光に曝露されている際に、少なくとも1種類のナノ結晶の取込み又はそれとの接触により付与される色で観察され得る。これは、可視領域及びUV光の下で可能である。ほとんどのナノ結晶は、UV光に曝露されると、特定の色を発する。
【0134】
[00137]本明細書で例示的に説明される発明は、本明細書で具体的に開示されていない要素(複数を含む)、制限(複数を含む)がない場合に好適に実践することができる。したがって、例えば、「備える」、「含む」、「含有する」等の用語は、広範に、また制限なく解釈されるものとする。さらに、本明細書において使用されている用語及び表現は、説明のために用いられており、制限を目的とせず、そのような用語及び表現の使用において、示され説明される特徴又はその一部のいかなる等価物をも除外する意図はなく、請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが理解される。したがって、本発明は好ましい実施形態及び任意選択の特徴により具体的に開示されているが、本明細書において開示される、具現化された本発明の修正及び変型が当業者により成されてもよく、またそのような修正及び変型は、本発明の範囲内とみなされることが理解されるべきである。
【0135】
[00138]本発明は、本明細書において、広義に、及び包括的に説明されている。包括的な開示に含まれる下位種及び亜属の分類もまたそれぞれ、本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書に具体的に列挙されているかどうかにかかわらず、任意の主題を属から除く条件又は消極的な限定を伴う本発明の包括的説明を含む。
【0136】
[00139]その他の実施形態は、以下の請求項及び非制限的実施例の範囲内である。さらに、本発明の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して説明されている場合、当業者には、本発明が、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーの部分群に関しても説明されていることが認識される。
【実施例】
【0137】
[00140]1.1 発光性ナノ結晶の表面吸着/取込み
植物及び枝葉の色の改良を達成する様々な方法がある。簡便な技法であることから、物理的方法が遺伝子組み換えに比べ魅力的である。ラン、例えばデンドロビウムホワイトフェアリーをCdZnSeナノ結晶の溶液中に浸漬コーティングすることによる発光性ナノ結晶の表面吸着/取込みは、302/345nm励起によるUV励起の下で極めて発光性の花を示した(図1)。
【0138】
[00141]オクタデセン中の発光性ナノ結晶の根からの取込み
【0139】
[00142]植物の細胞壁及び表皮物質は主として長鎖脂肪酸で構成されるため、オクタデセン等の長鎖炭化水素中に分散した発光性ナノ結晶を設計した。次いで、ランであるデンドロビウムホワイトフェアリーを、オクタデセンに溶解したCdZnSeナノ結晶(量子ドット)を同様に取り込ませた。有機媒体の特殊な輸送チャネルがないため、量子ドットの花への拡散は非常に低速度で生じた。観察可能な輝きを有するためには、UV励起の下で最低1時間の取込みが、また実質的な取込みには3時間が必要であった。葉脈状のフルオレセイン拡散とは対照的に、ナノ結晶の取込みは、萼片の外周に沿ってより速い速度で生じることが観察された。後に、中央部からの拡散が、花弁及び萼片の端部に向かって、より指向性を持たずに生じた。これは、オクタデセンが、植物のクチクラ及び細胞壁の化学と適合性が高いことにより解釈することができる。15時間の取込みの結果、花の完全な発色が得られた(図2、下の写真)。
【0140】
[00143]一般に、植物の着色は、異なる種類のナノ結晶又は別の有機染料又はその両方の混合物等の着色剤の取込み時間を変えることにより制御可能であると言うこともできる。一実施例においては、CdZnSeナノ結晶とフルオレセインの混合物を使用した。両方の着色剤を含む溶液の短い取込み時間の結果、フルオレセインが葉脈を着色し、CdZnSeナノ結晶が子房領域、花弁及び萼片の基部及び外周を着色することになる。
【0141】
[00144]発光性量子ドット及び染料の順次的な根からの取込み
【0142】
[00145]さらに一歩進んで、オクタデセンに溶解したCdZnSeナノ結晶及び水性フルオレセイン染料の順次的取込みを示す。ナノ結晶及び有機染料の順次的取込みにより、多色の改良を行うことができる。切断した茎からのナノ結晶の4時間の取込みの後、フルオレセインの15分間の花への(及び切断した茎からの)取込みを行った。その結果、子房領域においてフルオレセイン−ナノ結晶の組み合わされた発光が得られ、花弁及び萼片において明確な発光コントラストへと広がっていた(図4a)が、花の明視野の外見の変化は僅かであった。
【0143】
[00146]上述の取込みに対応する茎の横断面を、共焦点顕微鏡で観察した(図4b)。標準共焦点像に加え、スペクトル共焦点像を使用して、CdZnSeナノ結晶(量子ドット)及びフルオレセインの存在を確認した。適切な波長のサンプリング増分を選択することによりクロストーク情報がないことを確実とし、また自己蛍光を最小化しながら、共焦点像を分光学的に分離した。
【0144】
[00147]細胞壁上の染料及びナノ結晶の特異的吸着を、茎の縦断面上でさらに検討した。一貫して、維管束及びそれらの維管束を囲む疎水性領域に沿って、明確な水性領域が観察された。断面の異なる領域の分光分析により、フルオレセイン及びナノ結晶の発光のデータを比較した。染料及びナノ結晶の発光挙動に基づき、共焦点ソフトウェアを使用して、拡大部分を対応する疎水性及び親水性セル表示にデジタル処理で再構成した。
【0145】
[00148]染料及びナノ結晶の取込みは、商業的に得た白色のデンドロビウムを使用して行った。茎を切断し、0.001〜1.0mmol/L、若しくはこの特定の実施例の場合のように0.03mol/lのオクタデセ−1−エン中CdZnSeナノ結晶、又は、0.001〜1.0mol/L若しくはこの特定の実施例のように0.03mol/lの水中フルオレセインナトリウム(Fluka46960)に浸漬した。植物全体の可視着色が望ましい場合、CdZnSeナノ結晶を含む溶液中に茎を約4時間浸漬した後、フルオレセインを含む溶液中に15分間浸漬した。次に、茎をそれぞれオクタデセン又は水で洗浄してから、キムワイプクレンジングティッシュで拭き取って乾燥させた。次いで、デジタルカメラSony Cybershot DSC−T1を使用して、UV下での画像を撮像した。
【0146】
[00149]共焦点画像用に、手術用の刃を用いて茎の断面を慎重にスライスした。次いで、スライスした茎の個々の断面を慎重に顕微鏡用ガラスカバースリップ上に移した。試料を対物レンズに向けて設置し、スペクトル画像分析及び蛍光プローブ分離を備えたNikon C1siレーザー走査共焦点顕微鏡を使用して画像化を行った。
【0147】
[00150]CdZnSeナノ結晶の製造は、以下のように行った。
【0148】
[00151]発光性又は磁性ナノ結晶を調製するために、液体オレイン酸及び液体オクタデセンを使用してナノ結晶を製造した。発光性ナノ結晶の調製手順を、一例として以下に示す。3.1mmolのオレイン酸及び10mLのオクタデセンを含有するフラスコに、1.0mmolの酸化カドミウム、0.5mmolの酸化亜鉛、3.1mmolのセレンを投入した後、脱ガスし、透明溶液が形成されるまで撹拌しながら300℃まで加熱した。反応を30分間続け、反応物質を自然に室温まで冷却した。得られたナノ結晶は、植物への取込みに直接使用することができる。
【0149】
[00152]オレイン酸の代わりに、大豆油を使用することもできる。前項又は上記実施例1で説明したように、ナノ結晶はこれらの媒体中で形成し得る。また、他の方法で生成されたナノ結晶を精製した後の既製のナノ結晶を溶液中に分散させることも可能である。
【0150】
[00153]2.低沸点の非極性溶媒を使用した均質混合物中の2成分金属酸化物の合成
【0151】
[00154]2.1 2成分金属酸化物ZnOの合成
【0152】
[00155]3.0mmolのZnOを7.5mmolのオレイン酸に260℃で溶解し、透明溶液を形成した。室温まで冷却した後、18mlのヘキサン及び6mmolのオレイルアミンを添加し、次いで100mL Parr反応器4950に移し、Nガスでパージした。混合物を撹拌しながら迅速に320℃に加熱し、30分間同じ温度に維持した。次いで、単に熱を取り除いて冷却することにより、反応を停止させた。最終生成物を単純な遠心分離−分散プロセスにより精製した。すなわち、沈殿したナノ結晶を回収して乾燥させるか、又は保存のためにヘキサン等の有機溶媒中に再溶解することができる。
【0153】
[00156]2.2 3成分量子ドットZnCdSeの合成
【0154】
[00157]0.3mmolのZnO及び0.3mmolのCdOを、2.4mmolのオレイン酸に320℃で溶解し、透明な均質溶液を形成した。60℃まで冷却した後、2.4mLのSe溶液(1M TOP−Se溶液)及び5gのヘキサデシルアミン(HDA)を、2gのトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)及び20mLのヘキサンとともに添加し、次いで100mL Parr反応器4950に移し、Nガスでパージした。混合物を撹拌しながら迅速に320℃に加熱し、30分から3時間同じ温度に維持した。熱を取り除いて冷却することにより、反応を停止させた。得られたナノ結晶を単純な遠心分離/分散プロセスにより精製した。すなわち、沈殿したナノ結晶を回収して乾燥させるか、又は沈殿した生成物を保存のためにヘキサン等の有機溶媒中に再溶解することができる。
【0155】
[00158]2.3 3成分量子ドットMgFeの合成
【0156】
[00159]0.4mmolの炭酸マグネシウム及び0.4mmolの酢酸第一鉄を、3.0mmolのオレイン酸に320℃で溶解し、透明な均質溶液を形成した。60℃まで冷却した後、5gのオレイルアミン及び20mLのヘキサンを添加し、次いで100mL Parr反応器4950に移し、Nガスでパージした。混合物を撹拌しながら迅速に320℃に加熱し、30分から3時間同じ温度に維持した。熱を取り除いて冷却することにより、反応を停止させた。遠心分離後、沈殿した生成物を回収及び乾燥させるか、又は保存のためにヘキサン等の有機溶媒中に再溶解した。
【0157】
[00160]2.4 NiFeナノ結晶の合成
【0158】
[00161]1.0mmolの酢酸ニッケル及び2.0mmolの鉄(III)アセチルアセトネートを、9.0mmolのオレイン酸に150℃で溶解し、均質溶液を形成した。60℃まで冷却した後、5mLのトリオクチルアミン及び20mLのヘキサンを添加し、次いで100mL Parr反応器4950に移し、Nガスでパージした。混合物を撹拌しながら迅速に320℃に加熱し、30分から1時間同じ温度に維持した。熱を取り除いて冷却することにより、反応を停止させた。ここで、1.0mmolの酢酸ニッケル及び2.0mmolの鉄(III)アセチルアセトネートを、5mLのトリオクチルアミン及び5mLのODEとともに、9.0mmolのオレイン酸に150℃で溶解し、均質溶液を形成した。次いでこれを撹拌しながら、1気圧で迅速に320℃に加熱し、30分から1時間同じ温度に維持した。熱を取り除いて冷却することにより、反応を停止させた。得られた混合物に遠心分離を施し、得られたナノ結晶を回収及び乾燥させるか、又は保存目的でヘキサン等の有機溶媒中に再溶解した。
【0159】
[00162]3.1 TOPOキャップ(CdSe)−ZnSナノ結晶(量子ドット、QD)の調製
【0160】
[00163]トリオクチルホスフィン(TOP)/トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)キャップCdSeナノ結晶を、以下のように調製した。TOPO(30g)をフラスコに入れ、真空下(約1トル)、180℃で1時間乾燥させた。次いでフラスコを窒素で満たし、350℃に加熱した。不活性雰囲気のドライボックス内で、CdMe(200ml)、1M TOPSe溶液(4.0ml)、及びTOP(16ml)の注入溶液を調製した。注入溶液を完全に混合し、シリンジに装填してドライボックスから取り出した。
【0161】
[00164]反応から熱を取り除き、激しく撹拌しているTOPOに反応混合物を単回の連続注入で移した。反応フラスコを再び加熱し、温度を260〜280℃まで徐々に上げた。反応後、反応フラスコを約60℃に冷却し、TOPOの固化を防ぐために20mlのブタノールを添加した。大量のメタノールを過剰に添加すると、粒子が凝集する。遠心分離により凝集物を上澄液から分離した。得られた粉末は様々な有機溶媒に分散させて光学的に透明な溶液を生成することができる。
【0162】
[00165]5gのTOPOを含有するフラスコを真空下で数時間190℃に加熱した後、60℃に冷却し、その後0.5mlのトリオクチルホスフィン(TOP)を添加した。ヘキサン中に分散した約0.1〜0.4μmolのCdSeドットを、シリンジにより反応槽に移し、溶媒をポンプで取り除いた。ジエチル亜鉛(ZnEt)及びヘキサメチルジシラチアン((TMS)S)を、それぞれZn及びSの前駆体として使用した。不活性雰囲気グローブボックス内で、等モル量の前駆体を2〜4mlのTOPに溶解した。前駆体溶液をシリンジに装填し、反応フラスコに取り付けられた添加用漏斗に移した。添加が完了した後、混合物を90℃に冷却し、数時間撹拌を続けた。室温への冷却時のTOPOの固化を防ぐために、ブタノールを混合物に添加した。
【0163】
[00166]3.2 γ−シクロデキストリンとのホスト−ゲスト錯体形成による水溶性ナノ結晶の調製
【0164】
[00167]3.1において得られた、TOP/TOPOによる疎水性キャッピングを有するナノ結晶を、200μlのクロロホルム/ヘキサン(1:1)混合物に溶解した。約0.5gのγ−シクロデキストリン及びナノ結晶溶液を、20mlの脱イオン水の溶液に添加した。濁った溶液が形成されるまで、混合物を約8時間還流した。ロータリーエバポレータを使用して水のほとんどを除去し、次いで、形成されたホスト−ゲスト含有錯体を遠心分離により単離した。回収された固体をさらに水で洗浄して、遊離シクロデキストリン分子を除去した。TOP/TOPOを介してシクロデキストリンとホスト−ゲスト錯体を形成した、そのようにして得られたナノ結晶を、固体状態で保存した。これは、超音波処理を用いて水中に溶解させることにより、容易に水中に移すことができる。ホスト/ゲスト錯体により保護されたナノ結晶は、比較的長時間、固体状態で安定であることが判明した。
【0165】
[00168]ホスト−ゲスト錯体の形成による水溶性γ−CD改質量子ドットの形成を光学的に追跡することができた。TOP/TOPOキャップCdSe/ZnSコアシェルナノ結晶を含有するクロロホルム溶液にγ−シクロデキストリンを添加すると、形成されたナノ結晶が有機クロロホルム相から水溶液に移動した。γ−CD改質量子ドットはまた、H−NMR、FT−IR分光法及びXRD測定(データは示されていない)により確認された。透過型電子顕微鏡法(TEM)及び蛍光画像は、γ−シクロデキストリンとホスト−ゲスト錯体を形成した量子ドットが、極めて単分散性の粒子を形成することを示している。CdSe/ZnSコアシェルナノ結晶が、ホスト錯体の形成後、非改質TOP/TOPOキャップコアシェルナノ結晶(CHCl中で測定)よりも高い蛍光強度を有し(水中で測定)、一方最大発光の波長は変化しなかったことが示された。光ルミネセンス測定では、γ−シクロデキストリンとホスト−ゲスト錯体を形成したCdSe/ZnSコアシェルナノ結晶が、pH7.4のPBS緩衝液中(すなわち生理学的条件下)で非常に安定であり、pH5.0(上向きの三角形)及びpH3.0(下向きの三角形)の水溶液中でも、それぞれ満足し得る安定性を示すことが示された。最後に、γ−シクロデキストリンとホスト−ゲスト錯体を形成した後のCdSe/ZnSコアシェルナノ結晶は、50℃に加熱された場合でも水溶液中で良好な熱安定性を示す。
【0166】
[00169]4.1 水溶液中におけるポリマーがカップリングした水溶性ナノ結晶の調製
【0167】
[00170]TOPOコーティング量子ドットを、3.1に記載のように製造する。その後、大量のアミノエチルチオールとともにTOPOコーティング量子ドットをクロロホルムに溶解した。混合物を2時間超音波処理してから、沈殿物の形成が完了するまで室温で静置した。得られた固体をクロロホルムで数回洗浄し、遠心分離により回収した。次いで、アミノキャップ量子ドットをpH値が8の緩衝溶液に溶解してから、キャッピング試薬上のカップリング基を活性化するためのカップリング剤としてEDC及びスルホ−NHSが存在するポリ(アクリル酸)ポリマー(GPCに基づく平均分子量:2,000)の溶液に滴下により添加し、室温で30分間撹拌した。
【0168】
[00171]反応混合物をまず0℃で4時間撹拌し、次いで室温で一晩反応させた。得られた溶液を一晩透析し、窒素で脱ガスした後に保存した。まず反応溶液をエーテルで2回洗浄し、また酸性(pHを約4〜5に調節)ポリマーコーティングナノ結晶溶液を遠心分離することにより、さらなる精製を行った。次いで、回収されたナノ結晶を、pH値の(7〜8への)調節により、水中に再溶解した。
【0169】
[00172]以下のように、本発明のポリマーシェルナノ結晶の物理的−化学的特性を、メルカプトプロピオン酸(MCA)又はアミノエタンチオール(AET)のみでキャッピングされた(CdSe)−ZnSコアシェルナノ粒子の特性と比較した。ナノ結晶の水溶液に、最終濃度0.15mol/lでHを添加し、化学的挙動を分光学的に追跡した。MCA又はAETのみでコーティングされたナノ結晶の場合、ナノ結晶の酸化がすぐに検出され、ナノ結晶は30分以内に沈殿した。一方、シェル状ナノ結晶は、化学酸化に対して極めてより安定であり、酸化はごく緩やかに生じた。
【0170】
[00173]4.2 有機溶液中におけるポリマーがカップリングした水溶性ナノ結晶の調製
【0171】
[00174]TOPOキャップナノ結晶を、実施例4.1に従い調製し、過剰の3−メルカプトプロピオン酸とともにクロロホルムに溶解した。混合物をまず1時間超音波処理してから、溶液中に大量の沈殿物が形成されるまで、一晩室温で静置した。沈殿物を遠心分離により回収し、アセトンで数回洗浄することにより遊離3−メルカプトプロピオン酸を除去した。得られた3−メルカプトプロピオン酸キャップ量子ドットをアルゴンガスで簡単に乾燥させてから、無水DMFに溶解した。この溶液に、過剰のEDC及びNHSを添加してから、架橋界面の活性化及び形成のために約30分間室温で撹拌した。添加用漏斗から、無水DMFに溶解した分子量が1200(400から60,000のMWが一般に好適である)のポリエチレンイミン(Sigma−Aldrich Pte Ltd)を滴下により添加し、激しく撹拌した。すべてのポリエチレンイミン溶液を添加した後、ポリマーの第2の層のキャッピング試薬へのカップリングのために、反応を室温で一晩継続した。次いで、減圧下でのロータリーエバポレーションによりDMF溶媒を除去してから、水に溶解した。エーテルで2回洗浄することにより、ポリマーコーティング量子ドットのさらなる精製を行った。
【0172】
[00175]5.1 水溶液中におけるシェルが架橋した水溶性ナノ結晶の調製
【0173】
[00176]TOPOコーティング量子ドットを、2.1に記載のように製造する。そのように形成された(CdSe)−ZnSコアシェルナノ結晶を、大量の過剰3−メルカプトプロピオン酸及び数滴のピリジンとともにクロロホルムに溶解した。混合物に2時間超音波処理を施し、一晩室温で撹拌し続けた。形成された沈殿物を遠心分離により回収し、アセトンで洗浄して過剰の酸を除去した。アルゴンの気流で残渣を簡単に乾燥させた。ナノ結晶コアを覆う/囲む第1の層を形成するカルボン酸の分子でコーティングされた得られるナノ結晶を、次いで水又は緩衝溶液に溶解した。水溶液中のナノ結晶をもう一度遠心分離し、0.2μmフィルタで濾過し、アルゴンで脱ガスし、使用まで25℃で保存した。
【0174】
[00177]架橋界面の形成、及び続く第2の層に含まれるコーティング試薬層との重合のために、カルボン酸キャップナノ結晶を水性緩衝液系に溶解した。架橋剤として、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド)及びスルホNHS(スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド)を、500〜1000倍過剰にナノ結晶溶液に添加した。架橋界面の形成に関与する官能基の活性化のために、得られる溶液を室温で30分間撹拌した。カルボン酸キャップナノ結晶、EDC及びスルホNHSを含有する混合物を、ジアミノ−カルボキシルメチルエステルの同じ緩衝液中の溶液に、撹拌しながら滴下により添加した。混合物を室温で2時間撹拌してから、架橋界面の形成、及び第2の層に含まれるコーティング試薬の第1の層への共有カップリングのために、4℃で一晩静置した。次いで、ジアミノ−カルボキシルエステルの水溶性カルボキシル基の遊離(すなわちメチルエステル結合の加水分解)、ひいては第2の水溶性層の形成のために、0.1N NaOH及びエタノールを添加し、溶液を室温でさらに6時間撹拌し続けた。溶液を遠心分離していかなる固体も除去し、原液として水溶液中に4℃で保存した。
【0175】
[00178]得られる量子ドットは、有機溶媒抽出によって精製することもできる。反応(架橋界面の形成、及び第2の層に含まれるコーティング試薬の第1の層への共有カップリング)が完了した後、有機溶媒からエステル表面を有するポリマーシェル量子ドットを抽出するために、溶液をエチルアセテートで抽出した。このようにして得られた有機溶媒を組み合わせて乾燥させてから、ロータリーエバポレータで除去し、エステル結合の加水分解及び水溶性ナノ結晶の形成のために、エタノール及び0.1N NaOHに溶解した。溶液を室温で4時間継続的に撹拌し続けてから、中和した。得られた透明溶液を遠心分離していかなる微量固体も除去し、脱ガスした後、水溶液中に室温で保存した。
【0176】
[00179]以下のように、得られた本発明の架橋水溶性シェル状ナノ結晶の物理的−化学的特性を、メルカプトプロピオン酸(MCA)又はアミノエタンチオール(AET)のみでキャッピングされた(CdSe)−ZnSコアシェルナノ粒子の特性と比較した。ナノ結晶の水溶液に、最終濃度0.15mol/lでHを添加し、化学的挙動を分光学的に追跡した。MCA又はAETのみでコーティングされたナノ結晶の場合、ナノ結晶の酸化がすぐに検出され、ナノ結晶は30分以内に沈殿した。一方、本発明のシェル状ナノ結晶は、化学酸化に対して極めてより安定であり、酸化はごく緩やかに生じた。
【0177】
[00180]さらなる実験において(データは示されていない)、0.1M CdSO溶液を、MCAのみでキャッピングされた(CdSe)−ZnSコアシェルナノ結晶、又は本発明のシェル状ナノ結晶に添加すると、MCAキャップナノ結晶が速やかに溶液から沈殿した。対照的に、本発明のナノ結晶は、溶液中での安定性を維持したが、これはカドミウムイオンの添加がその安定性に大きく影響しないことを意味する。
【0178】
[00181]同様に、シェル状ナノ結晶の光化学的安定性もまた、MCAキャップナノ結晶と比較して大きく改善された(データは示されていない)。254nmの波長を有するUV光に曝露されると、MCAキャップナノ結晶は、48時間で溶液から沈殿することが判明し、一方本発明のシェル状ナノ結晶は、4日間安定であった。蛍光強度もまた長時間安定であることが判明した。
【0179】
[00182]5.2 有機溶液中におけるシェルが架橋した水溶性ナノ結晶の調製
【0180】
[00183]TOPOキャップナノ結晶を実施例4.1に従い調製し、第1の層の形成のために過剰量のペンタン−(3−N−エチルチオール)−1,5−ジアミンとともにクロロホルムに溶解した。混合物を室温で一晩静置した。形成された沈殿物を遠心分離により回収してから、メタノールで洗浄し、アルゴンガスで簡単に乾燥させた。得られたナノ結晶を無水DMF(50ml)に溶解した。
【0181】
[00184]別のフラスコ内で、ペンタン−3,3−ジエチル−カルボン酸エステル−1,5−ジカルボン酸(第2の層に含まれるコーティング剤として)を5当量のEDC及びNHSとともにDMFに溶解し、窒素保護の下で、室温で20分間撹拌した。コーティング剤との共有カップリングのために、溶液をナノ結晶溶液に徐々に添加した。得られる溶液を室温で2時間撹拌した後、ロータリーエバポレータシステムを使用して、減圧下でDMF溶媒を留去した。得られるスラリーを水5mlに溶解し、次いで1M EtONa/EtOH溶液5mlを添加して室温でさらに2時間撹拌し、溶媒に露出した水溶性結合を第2の層に形成した。得られる溶液をエーテルで2回(5ml×2)洗浄し、いかなる微量の添加剤又は未反応の出発材料も除去した。次いで、保存のために0.1N HCl水溶液で中和した。酸性溶液中でのポリマーコーティングナノ結晶の遠心分離、及び溶液のpH値の調節によるナノ結晶の水への再溶解によって、さらなる精製を行った。
【0182】
[00185]6.1 両親媒性ポリマーの製造
【0183】
[00186]1gのポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)の300mLの乾燥CHCl中溶液に、各アミン、次いでDIPEA(1mL)を添加し、混合物を50℃で16時間撹拌した。CHClの留去後、ポリマー骨格中のカルボン酸基に対しやや過剰のNaOHを用い、材料を水中に懸濁させた。水及びDIPEAの留去後、残留物を水に溶解し、数日間水に対し透析した。溶液の1M NaOHを用いたpH11へのアルカリ化、及び続く留去の後、生成物が得られた。ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)は、高収率で、単官能性化合物及び少なくとも二官能性の化合物(ここでは第2の成分)の両方と自発的に反応する。
【0184】
[00187]対象となる一連の両親媒性ポリマー1〜5の形成に関する例示的データを以下に示す。上記のプロトコルに従い、これらの両親媒性ポリマーは、n−オクチルアミンをポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)に異なるモル比でグラフトすることにより合成された。
ポリマー1
【化15】

【0185】
[00188]ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.05g、0.4mmol)との反応により、結晶性生成物1(0.86g、59%)が得られた。H−NMR(400MHz,DO)δ:3.25〜2.90(m,9H)、2.59(bs,39H)、2.08(bs 39H)、1.95〜1.35(m,81H)、1.34(bs,62H)、1.13〜0.65(m,238H)。目標組成物:カルボキシリック97%、オクチルアミド3%;実測値:カルボキシリック96%、オクチルアミド4%。
ポリマー2
【化16】

【0186】
[00189]ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.15g、1.2mmol)との反応により、結晶性生成物2(0.97g、64%)が得られた。H−NMR(400MHz,DO)δ:3.30〜2.90(m,23H)、2.59(bs,38H)、2.42〜1.40(m,152H)、1.23(bs,116H)、1.15〜0.70(m,238H)。目標組成物:カルボキシリック91%、オクチルアミド9%;実測値:カルボキシリック89%、オクチルアミド11%。
ポリマー3
【化17】

【0187】
[00190]ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.42g、3.2mmol)との反応により、結晶性生成物3(1.06g、63%)が得られた。H−NMR(400MHz,DO)δ:3.28〜2.85(m,47H)、2.60(bs,37H)、2.41〜1.60(m,81H)、1.47(bs,68H)、1.24(bs,253H)、1.12〜0.75(m,286H)。目標組成物:カルボキシリック75%、オクチルアミド25%;実測値:カルボキシリック75%、オクチルアミド25%。
ポリマー4
【化18】

【0188】
[00191]ポリ(イソブチレン−alt−無水マレイン酸)6000のオクチルアミン(0.84g、6.5mmol)との反応により、結晶性生成物4(1.63g、88%)が得られた。H−NMR(400MHz,DO)δ:3.25〜2.85(m,72H)、2.60(bs,34H)、2.40〜1.65(m,73H)、1.48(bs,87H)、1.24(bs,379H)、1.12〜0.65(m,317H)。目標組成物:カルボキシリック50%、オクチルアミド50%;実測値:カルボキシリック61%、オクチルアミド39%。
ポリマー5
【化19】

【0189】
[00192]6.2 ナノ結晶(量子ドット(QD))/ポリマー会合体の合成
【0190】
[00193]2mgの精製QDをTHF(2mL)に溶解し、0.5mLの1.4mMポリマー溶液を添加した後、5mLの水を添加した。混合物をロータリーエバポレータで1mLまで濃縮した。不透明な水懸濁液を0.8μmフィルタで濾過し、フィルタを5mLの純水で洗浄した。同じ手順に従い、親水性フィルタ(0.2μm)で上澄みを再び濾過したところ、透明なQD水溶液が得られた。ロータリーエバポレータで過剰の水を除去し、所望の濃度を達成することができる。
【0191】
[00194]上述のポリマー1〜5を使用して、ナノ結晶を水中に移した。QD/ポリマー会合体の吸収に基づき、ドットの10%から80%が懸濁手順をパスすると予測される。しかし、この収率は、使用されるポリマーに大きく依存し、またQDの純度にさらに大きく依存する(過剰の疎水性リガンドは凝集体の形成へとつながる)。続いてポリマー1〜5の懸濁効率を試験した。THF中の同じ初期量のQDで開始し、同じ水中濃度のポリマー1〜5を適用したが、異なる水中濃度のQDが得られた(光吸収から計算)。QDの最終水中濃度は、水中にQDを懸濁させる所与のポリマーの能力に依存する。ポリマー骨格により多数のn−オクチル基が結合したポリマーがより好ましいことが判明しており、これは、より多数のアンカー点(この場合疎水性n−オクチル鎖)が、疎水性−疎水性相互作用に基づき、会合体により高い安定性を与えるという一般的観察に従っている。1〜4よりも10倍高いモル質量値を有するポリマー5の場合、最終水溶液中のQDの濃度が低いのは、凝集体の形成(同ポリマー鎖にほとんどドットが結合していない)、及び濾過ステップに関連した問題に起因すると考えることができる。QD溶液中のTOPO、TOP及びヘキサデシルアミンを除去するための慎重な精製が、安定なQD/ポリマー会合体の効果的な形成に重要である。おそらく、残留したアルキルリガンドが、単分散ミセルの形成を妨げるとともに、凝集を促進すると考えられる。ポリマーによるQDのコーティング及びそれらの水への移行は、その基本的ルミネセンス特性に対し大きな影響を全く示さない。吸収スペクトルは僅かな変化を示しているが、最大発光の波長及び発光スペクトルの幅は本質的に変化していない。
【0192】
[00195]6.2.1 ナノ結晶コーティング
【0193】
[00196]疎水性ナノ結晶(量子ドット(QD))の被覆(例えばTOPOコーティングCdSe/ZnS量子ドット)は、それらをTHFに懸濁させ、続いてポリマー水溶液を添加することにより行う。留去によるTHFの除去により、ポリマーコーティング量子ドットの安定したコロイド溶液が得られる。得られる溶液は透明で清澄であり、長期間の光学的及びコロイド安定性を示す。コーティングプロセスは、一般に、その表面に関係なく、いかなるナノ粒子物質に対しても行うことができることに留意されたい。
【0194】
[00197]6.3 実施例4:NIPAM量子ドット共重合
【0195】
[00198]重合は、アクリルモノマーと、ポリマーでコーティングされたQDとの水中での直接混合により、又は、適切な開始剤の存在下で成分の1つをその他の成分の溶液に投入することにより行う。使用されるポリマー及び反応条件(例えば、温度、開始剤、成分の濃度等)に依存して、ポリマー鎖に共有結合した組み込みQDの数が異なる、様々なサイズのミクロスフェアを得ることができる。
【0196】
[00199]代表的重合手順:
【0197】
[00200]50mLの三口フラスコ内で、NIPAM(0.0503g)、アクリルエステルポリマーでコーティングされたQD(アンモニウム塩形態)(8mg)の溶液、及び20mLの水を、15回の真空/アルゴン排気により脱酸素した。温度を70℃に上げ、開始剤K(HO1mL中0.0319g)を添加した。続いて、架橋剤MBAAM(0.0285g)及びNIPAM(0.2526g)のHO4mL中溶液を75分以内に投入した。投入後、混合物をさらに4時間71℃に維持し、室温まで冷却した。透析(50kD膜)により精製を行い、遠心分離してより大きな粒子を除去した。結果として、QDを備えるPNIPAMのサブミクロン粒子の水溶液が得られた。
【0198】
[00201]量子ドットの直接架橋重合
【0199】
[00202]重合性両親媒性ポリマーでコーティングされたドットの水溶液に開始剤(K等)を添加することにより、重合を行う。粗反応混合物の透析により、水処理可能で懸濁可能な高含有量のQDを有する固体ポリマーフィルムが得られる。
【0200】
[00203]代表的重合手順:
【0201】
[00204]50mLのフラスコ内で、アクリルアミドポリマーでコーティングされたQD(ナトリウム塩形態)(8mg)の溶液、及び20mLの水を、15回の真空/アルゴン排気により脱酸素した。温度を70℃に上げ、開始剤K(HO1mL中0.0319g)を添加した。反応温度を6時間維持した。透析(50kD膜)により精製を行った。精製により、高濃度のQDを備える水溶性ポリマーネットワークが得られた。
【0202】
[00205]6.4 QDのマイクロエマルジョン重合及び共重合
【0203】
[00206]重合性官能基(実施例5.3に記載のもの等)を有するコーティングされたQD(実施例5.1から5.2に記載のもの等)を備えたポリマー材料を使用して、逆マイクロエマルジョンプロセスにおいて自己重合及びその他の水溶性モノマーとの共重合を行う。400nmから10μmの範囲の制御可能な直径を有するミクロスフェアが得られる。ミクロスフェアは長期間にわたりルミネセンスを示す。
【0204】
[00207]マイクロエマルジョン重合の代表的重合手順:
【0205】
[00208]ソルビタンモノオレエート(Span80、0.23g)のパラフィンオイル10mL中溶液に1時間、アルゴンを通過させる。NIPAM(0.15g、1.32mmol)、N,N’メチレンビスアクリルアミド(0.013g、0.06mmol)、QD8mg及びポリマー10mg(1.3.2等)を含有する体積1mLの水溶液を油相に添加し、アルゴンのバブリングをそれから1時間継続した。エマルジョンを40℃で1分間超音波処理してから、実験用ボルテックスシェーカーで室温で1時間振盪した。安定な均質エマルジョンをペトリ皿に流し込み、窒素気流下の架橋デバイスにおいて、5℃から15℃の温度で4時間UVランプで照射し、続いて不活性雰囲気下で16時間、照射せずに静置した。ヘキサンによる数回の洗浄ステップ及び遠心分離、続いて水による数回の洗浄ステップ及び遠心分離により、PNIPAMラテックスの精製を行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のナノ結晶を含む植物。
【請求項2】
少なくとも1種類のナノ結晶が、
化学式MeAl:Re又はMeAl1425:Rの希土類金属ドープ金属酸化物、
化学式M1A又はM1Oの2成分ナノ結晶、
化学式M1M2A又はM1AB又はM1M2Oの3成分ナノ結晶、及び
化学式M1M2ABの4成分ナノ結晶
からなるナノ結晶の種類の群から選択され、
2成分、3成分及び4成分ナノ結晶のM1及びM2は、独立して、PSEの第II族、第III族、第IV族及び第VIII族のうちの1つから選択される金属であり、A及びBは、存在する場合、互いに独立して、PSEの第VI族又は第V族から選択される元素であり、
希土類金属ドープ金属酸化物のMeは、Ca、Sr及びBaからなる群から選択され、
希土類金属ドープ金属酸化物のReは、Tb、Dy、Nd、Eu及びTmからなる群から選択される少なくとも1種の元素である、請求項1に記載の植物。
【請求項3】
少なくとも1種類のナノ結晶が、カドミウム(Cd)を含まない、請求項1又は2に記載の植物。
【請求項4】
少なくとも1種類のナノ結晶が、水溶性である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の植物。
【請求項5】
ナノ結晶の表面にキャッピング試薬が結合し、キャッピング試薬が水溶性分子とホスト−ゲスト錯体を形成する、請求項4に記載の植物。
【請求項6】
キャッピング試薬が、式:
X−Y−Z
(式中、
Xは、S、N、P、又はO=Pから選択される末端基であり、
aは、0から3までの整数であり、
Yは、少なくとも3個の主鎖原子を有する部分であり、
Zは、疎水性終端基である)を有する分子である、請求項5に記載の植物。
【請求項7】
水溶性分子が、溶媒に露出した極性基を含有する化合物である、請求項5に記載の植物。
【請求項8】
水溶性分子が、炭水化物、環状ポリアミン、環状ペプチド、カリックスアレーン、クラウンエーテル及びデンドリマーからなる群から選択される、請求項7に記載の植物。
【請求項9】
少なくとも1種のナノ結晶が、
第1の層を形成するナノ結晶の表面に結合したキャッピング試薬であって、少なくとも2個のカップリング基を有するキャッピング試薬と、
第2の層を形成し、コーティング試薬と共有カップリングした少なくとも2個のカップリング部分を有する、低分子量コーティング試薬と、
第2の層に水溶性を付与するための少なくとも1個の水溶性基とを含む、請求項4に記載の植物。
【請求項10】
少なくとも1種のナノ結晶が、
第1の層を形成するナノ結晶の表面に結合したキャッピング試薬であって、少なくとも1個のカップリング基を有するキャッピング試薬と、
第2の層を形成し、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に共有カップリングした少なくとも1個のカップリング部分を有するポリマーとを含む、請求項4に記載の植物。
【請求項11】
キャッピング試薬が、式:
【化1】

(式中、
Xは、S、N、P、又はO=Pから選択される末端基であり、
Raは、少なくとも2個の主鎖炭素原子を含む部分であり、
Yは、N、C、−COO−、又は−CHO−から選択され、
Zは、極性官能基を含む部分であり、
kは、0又は1であり、
mは、1から3までの整数であり、
nは、0から3までの整数であり、
n’は、0から2までの整数であり、n’は、Yの価数要件を満たすように選択される)を有する分子である、請求項9又は10に記載の植物。
【請求項12】
ポリマーが、式:
【化2】

(式中、
Jは、キャッピング試薬の少なくとも1個のカップリング基に対し反応性であるカップリング部分であり、
mは、少なくとも1の整数である)を有する、請求項10に記載の植物。
【請求項13】
第2の層に含まれる低分子量コーティング試薬が、一般式:
【化3】

(式中、
Tは、親水性部分であり、
Rcは、少なくとも2個の主鎖炭素原子を含む部分であり、
Gは、N、P若しくはC、又はSiから選択され、
Z’は、カップリング部分であり、
m’は、2又は3であり、
nは、1又は2であり、
n’は、0又は1であり、n’は、Gの価数要件を満たすように選択される)を有する水溶性分子を含む、請求項9に記載の植物。
【請求項14】
少なくとも1種類のナノ結晶のうちの少なくとも1個が、非共有結合性又は共有結合性相互作用により、その表面上に一般式:
【化4】

(式中、m、o及びpのそれぞれは、約3から約400から独立して選択される整数であり、m+o+pの和は、約10から約10000の範囲内で選択され、
は、約3個から約20個の炭素原子の主鎖と、N、O、S、Se及びSiの群から選択される0個から約3個のヘテロ原子とを有する第1の脂肪族部分であり、
は、約3個から約80個の炭素原子の主鎖と、N及びOから選択される0個から約40個のヘテロ原子とを有する第2の脂肪族部分であり、
は、共重合性基を有する)の両親媒性ポリマーを備える、請求項4に記載の植物。
【請求項15】
ナノ結晶が、植物の空中部分又は全外表面上に備えられている、請求項1〜14のいずれか一項に記載の植物。
【請求項16】
ナノ結晶が、植物の空中部分に備えられている、請求項15に記載の植物。
【請求項17】
植物の空中部分が、植物の花及び/又は葉である、請求項15又は16に記載の植物。
【請求項18】
少なくとも1種のポリマー若しくは紙若しくは金属箔若しくは前記材料の混合物、又は乾燥植物で作られた人工植物である、請求項1〜15のいずれか一項又は17に記載の植物。
【請求項19】
顕花植物である、請求項1〜18のいずれか一項に記載の植物。
【請求項20】
バラ科、アジサイ科、ラン科、アジサイ科、ヒヤシンス科、シュウカイドウ科、シソ科、キク科、フウロソウ科、ナス科、ユリ科、サクラソウ科、アカバナ科、スミレ科、イワタバコ科、アオイ科、パイナップル科、サトイモ科、ツツジ科、ツバキ科、及びオシロイバナ科からの植物からなる群から選択される、請求項19に記載の植物。
【請求項21】
バラ、ラン、アジサイ、ヒヤシンス、ベゴニア、ラベンダー、ダリア、ゼラニウム、ペチュニア、チューリップ、ユリ、サクラソウ、スミレ、ガーベラ、グロキシニア、ハイビスカス、アナナス、シクラメン、アンスリウム、アザレア、ブーゲンビリア、及びツバキからなる植物の群から選択される、請求項19に記載の植物。
【請求項22】
ランが、チドリソウ亜科(Orchidoideae)、セッコク亜科(Epidendroideae)、バニラ亜科(Vanilloideae)、アツモリソウ亜科(Cypripedioideae)、及びヤクシマラン亜科(Apostasioideae)からなる群から選択される、ラン科の亜科から選択される、請求項20に記載の植物。
【請求項23】
有機染料をさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の植物。
【請求項24】
有機染料が、フルオロフォアである、請求項23に記載の植物。
【請求項25】
有機染料が、インク、発色団、例えばアゾ化合物、リコペン、β−カロテン、及びアントシアニン、フルオレセイン並びにルシフェリンからなる群から選択される、請求項23に記載の植物。
【請求項26】
少なくとも1種類のナノ結晶で植物を着色する方法であって、
それに溶解した少なくとも1種類のナノ結晶を含む溶液を提供するステップと、
植物を前記溶液と接触させるステップと
を含む方法。
【請求項27】
植物の根を溶液に含浸するか、又は植物の茎を切断し、切断した茎の端部を溶液に含浸するステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
空中部分又は植物全体を溶液に接触させるステップを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
接触させるステップが、植物の空中部分若しくは植物全体を溶液に浸漬するか、又は溶液を噴霧するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1種類のナノ結晶が、請求項1〜14のいずれか一項に記載のナノ結晶、又はナノ結晶と請求項23〜25のいずれか一項に記載の有機染料との混合物である、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項31】
溶液が、少なくとも1種類のナノ結晶が溶解した好適な溶媒又は溶媒混合物を含む、請求項26〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
溶媒が、非プロトン性溶媒及び/若しくは非極性溶媒又はプロトン性溶媒である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
非極性溶媒が、鉱物油、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ピリジン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、ジオキサン、ジエチルエーテル、1−オクタデセン、9−オクタデセン、ジイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン及び前記溶媒の混合物からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1種類のナノ結晶の濃度が、約0.001mol/lから1mol/lの間である、請求項26〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
溶液が、有機染料をさらに含む、請求項26〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
有機染料が、フルオロフォアである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
有機染料が、インク、発色団、例えばアゾ化合物、リコペン、β−カロテン、及びアントシアニン、フルオレセイン並びにルシフェリンからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
溶媒が、高沸点を有する溶媒である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
溶媒が、1−オクタデセン及び9−オクタデセンからなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のナノ結晶、又はナノ結晶と請求項23〜25のいずれか一項に記載の有機染料との混合物の、植物を染色するための使用。
【請求項41】
植物の空中部分が染色される、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
空中部分が、好適な溶媒に溶解したナノ結晶を含む溶液と植物を接触させることにより染色される、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
接触させるステップが、植物の根を溶液に含浸するか、又は植物の茎を切断し、切断した茎の端部を溶液に含浸するステップを含む、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
接触させるステップが、植物の空中部分若しくは植物全体を溶液に浸漬するか、又は溶液を噴霧するステップを含む、請求項43に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150254(P2010−150254A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−280695(P2009−280695)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】