説明

ネオン放電管

【課題】電極に使用される焼結体からの飛散物質がガラスバルブの内壁に付着することを抑制する。
【解決手段】長手方向に延伸し、内部空間を有するガラスバルブと、該ガラスバルブの一端に設置された第1の電極と、前記ガラスバルブの他端に設置された第2の電極と、前記内部空間に封入されたネオンガスとを有するネオン放電管。前記第2の電極は、前記ガラスバルブの前記他端に封止された第2の金属棒と、該第2の金属棒の先端に設置された焼結体と、開放先端を有する金属筒とを有し、前記金属筒は、前記焼結体の周囲を完全に覆い、前記開放先端を介して、少なくとも前記焼結体の先端は、前記内部空間と気体連通され、前記長手方向に対して垂直な方向から見たとき、前記焼結体の前記先端は、前記金属筒の前記開放先端から突出しておらず、前記焼結体は、導電性マイエナイト化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネオン放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオン放電管は、液晶表示、広告、および自動車用の表示光源等として、広く使用されている。
【0003】
図1には、従来のネオン放電管の代表的な構成を示す(特許文献1)。図1に示すように、従来のネオン放電管10は、内部空間30を有する直管形状のガラスバルブ20と、このガラスバルブ20の内部空間30に設置された第1の電極40および第2の電極50とを有する。ガラスバルブ20の内部空間30には、使用の条件に合わせて適量のネオンガスが封入されている。
【0004】
第1の電極40は、ニッケル線やジュメット線のような金属棒45で構成される。一方、第2の電極50は、第1の電極40と同様の金属棒55と、該金属棒55の一端に取付けられた金属製の焼結体60とで構成される。第1の電極40は、金属棒45の一端がガラスバルブ20の一端を気密貫通しており、これにより、金属棒45が外部に導出されている。同様に、第2の電極50は、金属棒55の一端がガラスバルブ20の他端を気密貫通しており、これにより、金属棒55が外部に導出されている。
【0005】
従来のネオン放電管10の作動の際には、第1の電極40と第2の電極50の間に、直流電圧または交流電圧が印加される。これにより、両電極40、50間にガス放電が生じ、ネオン放電管10を点灯状態とすることができる。なお、直流電圧を印加する際には、第2の電極が陰極となるようにして、両電極に電圧が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−110088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように構成される従来のネオン放電管10において、第2の電極50の焼結体60は、通常、タングステン粉末の単体、またはタングステン粉末と例えばタンタル粉末やハフニウム粉末のような他の粉末との混合粉末をプレス成形した後、この成形体を500℃以上の高温で焼結することにより製造される。その後、得られた焼結体を、金属棒55の先端に、溶接等の方法で設置することにより、第2の電極50が構成される。
【0008】
ところで、ネオン放電管10の使用時には、放電過程において、第2の電極50の焼結体60から、飛散物質が内部空間30に飛散する。このため、ネオン放電管10を長時間使用すると、飛散物質がガラスバルブ20の内壁に徐々に付着、堆積するようになる。そして、このような現象が顕著となると、ガラスバルブ20の光透過率が低下し、内部空間30で発生した光量を十分に利用することができなくなるという問題が生じ得る。さらに、この問題がより深刻化すると、ガラスバルブ20に微小クラックが生じ、ネオン放電管10での放電点灯を行うことができなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、電極に使用される焼結体からの飛散物質がガラスバルブの内壁に付着することを有意に抑制することが可能なネオン放電管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、
長手方向に延伸し、内部空間を有するガラスバルブと、該ガラスバルブの一端に設置された第1の電極と、前記ガラスバルブの他端に設置された第2の電極と、前記ガラスバルブの前記内部空間に封入されたネオンガスとを有するネオン放電管であって、
前記第1の電極は、前記ガラスバルブの前記一端に封止された第1の金属棒を有し、
前記第2の電極は、前記ガラスバルブの前記他端に封止された第2の金属棒と、該第2の金属棒の先端に設置された焼結体と、開放先端を有する金属筒とを有し、
前記金属筒は、前記焼結体の周囲を完全に覆い、前記開放先端を介して、少なくとも前記焼結体の先端は、前記内部空間と気体連通され、
前記長手方向に対して垂直な方向から見たとき、前記焼結体の前記先端は、前記金属筒の前記開放先端から突出しておらず、
前記焼結体は、導電性マイエナイト化合物を含むことを特徴とするネオン放電管が提供される。
【0011】
ここで、本発明によるネオン放電管において、前記第1の電極は、前記第2の電極と同じ構成を有しても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電極に使用される焼結体からの飛散物質がガラスバルブの内壁に付着することを有意に抑制することが可能なネオン放電管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来のネオン放電管の概略的な構成図である。
【図2】本発明によるネオン放電管の一構成例を概略的に示した断面図である。
【図3】本発明によるネオン放電管の第2の電極の先端部分を模式的に示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の構成を説明する。
【0015】
図2には、本発明によるネオン放電管の一構成例を概略的に示した断面図を示す。
【0016】
図2に示すように、本発明によるネオン放電管100は、内部空間130を有する直管形状の光透過性のガラスバルブ120と、このガラスバルブ120の内部空間130に、互いに対向するように設置された第1の電極140および第2の電極150とを備える。ガラスバルブ120の内部空間130には、使用の条件に合わせて適量のネオンガスが封入されている。
【0017】
図1に示した従来のネオン放電管10と同様、第1の電極140は、ニッケル線またはジュメット線のような金属棒145で構成される。第1の電極140は、金属棒145の一端がガラスバルブ120の一端を気密貫通しており、これにより、金属棒145が外部、まで導出される。
【0018】
しかしながら、第2の電極150は、図1に示した従来の電極50とは異なる構成を有する。
【0019】
図3には、本発明によるネオン放電管100に使用される第2の電極150の先端部分を拡大した模式図を示す。
【0020】
図3に示すように、第2の電極150は、第1の電極140と同様の金属棒155と、該金属棒155の一端に設置された焼結体160とを有する。第2の電極150は、金属棒155の一端がガラスバルブ120の他端を気密貫通しており、これにより、金属棒155が外部まで導出される(図2参照)。
【0021】
さらに、第2の電極150は、開放先端190を有する金属筒180を有する。この金属筒180は、焼結体160の周囲全体を完全に覆うが、開放先端190のため、焼結体160の先端(金属棒155が設置された側とは反対側の先端)側は、開放されている。すなわち、焼結体160の先端は、金属筒180の開放先端190を介して、内部空間130と気体連通される。ただし、ネオン放電管100の長手方向に対して垂直な方向から見たとき、焼結体160の先端は、金属筒180の開放先端190から突出してはいない。
【0022】
金属筒180は、例えばタングステン金属のような高融点材料で構成される。また、焼結体160は、導電性マイエナイト化合物で構成される。
【0023】
ここで、「マイエナイト化合物」とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。
【0024】
また、本願において、「導電性マイエナイト化合物」とは、ケージ中に含まれる「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換された、電子密度が1.0×1018cm−3以上のマイエナイト化合物を表す。全てのフリー酸素イオンが電子で置換されたときの電子密度は、2.3×1021cm−3である。
【0025】
なお、一般に、導電性マイエナイト化合物の電子密度は、マイエナイト化合物の電子密度により、2つの方法で測定される。電子密度は、1.0×1018〜3.0×1020cm−3未満の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルの2.8eV(波長443nm)の吸光度(クベルカムンク変換値)から算出される。この方法は、電子密度とクベルカムンク変換値が比例関係になることを利用している。以下、検量線の作成方法について説明する。
【0026】
電子密度の異なる試料を4点作成しておき、それぞれの試料の電子密度を、電子スピン共鳴(ESR)のシグナル強度から求めておく。ESRで測定できる電子密度は、1.0×1014〜1.0×1019cm−3程度である。クベルカムンク値とESRで求めた電子密度をそれぞれ対数でプロットすると比例関係となり、これを検量線とした。すなわち、この方法では、電子密度が1.0×1019〜3.0×1020cm−3では検量線を外挿した値である。
【0027】
電子密度は、3.0×1020〜2.3×1021cm−3の場合、導電性マイエナイト化合物粉末の拡散反射を測定し、クベルカムンク変換させた吸収スペクトルのピークの波長(エネルギー)から換算される。関係式は下記の式を用いた:

n=(−(Esp−2.83)/0.199)0.782

ここで、nは電子密度(cm−3)、Espはクベルカムンク変換した吸収スペクトルのピークのエネルギー(eV)を示す。
【0028】
また、本発明において、導電性マイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)および銅(Cu)からなる群から選択される1以上の原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)およびテリビウム(Tb)からなる群から選択される1以上の原子で置換されても良い。また、ケージの骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
【0029】
導電性マイエナイト化合物は、金属ニッケルなど、通常の電極構成材料に比べて、スパッタに対する耐性が高いという特徴を有する。
【0030】
本発明によるネオン放電管100は、金属筒180で焼結体160の周囲が被覆されている。このため、本発明では、ネオン放電管100の点灯の際に、少なくとも、焼結体160の側面から、材料が飛散することを防止することができる。また、金属筒180の先端位置は、開放先端190から突出していないため、焼結体160の先端からの飛散物質の飛散に関しても、金属筒180により、有効に抑制することができる。
【0031】
また、本発明では、焼結体160は、導電性マイエナイト化合物で構成されている。このため、ネオン放電管100の点灯時に、焼結体160から生じ得る飛散物質の量自体を有意に抑制することができる。
【0032】
従って、本発明によるネオン放電管100では、以上の効果により、焼結体160から飛散物質が飛散して、これがガラスバルブ120の内壁に付着、堆積することを、有意に抑制することができる。また、これにより、ネオン放電管の寿命を延伸化することが可能となる。
【0033】
なお、導電性マイエナイト化合物で構成された焼結体160は、マイエナイト化合物の粒子を還元性の雰囲気で焼成することにより、製造することができる。
【0034】
例えばマイエナイト化合物は、以下の方法で製造することができる。
【0035】
酸化カルシウム(CaO)および酸化アルミニウム(Al)を、モル比換算で12:7となるように秤量、混合し、この混合粉末を、大気中、1350℃まで加熱して白色塊体を得る。これを、アルミナ製スタンプミル等で大きさが約5mm程度に粉砕後、さらに、アルミナ製自動乳鉢など粗粉砕して白色粒子にする。さらに、ジルコニアボールと粉砕溶媒にイソプロピルアルコールを、ジルコニア製容器に入れ、ボールミル粉砕処理し、乾燥することによってイソプロピルアルコールを除去してマイエナイト化合物の微粉末を得る。
【0036】
得られた粉末は有機物などのバインダーと混合し、金型成形、押し出し成形、射出成型などの一般的なセラミックス方法で成形する。成形体は、大気中1000℃でバインダーを除去後、蓋付カーボン容器内にカーボンに触れないように設置し、雰囲気調整ができる電気炉で還元熱処理する。例えば、窒素雰囲気下で、300℃/時間の昇温速度で1280〜1320℃の範囲で6〜12時間加熱保持した後、300℃/時間の降温速度で室温まで冷却させることにより、導電性マイエナイト化合物焼結体を製造することができる。
【0037】
以上、図2および図3を参照して、本発明によるネオン放電管100の特徴について説明した。なお、図2および図3の例では、第1の電極140は、金属棒145のみで構成されている。しかしながら、これは単なる一例に過ぎず、第1の電極140は、第2の電極150と同様の構成を有しても良いことは当業者には明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、液晶表示、広告、および自動車用の表示光源等として使用されるネオン放電管等に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 従来のネオン放電管
20 ガラスバルブ
30 内部空間
40 第1の電極
45 金属棒
50 第2の電極
55 金属棒
60 焼結体
100 本発明によるネオン放電管
120 ガラスバルブ
130 内部空間
140 第1の電極
145 金属棒
150 第2の電極
155 金属棒
160 焼結体
180 金属筒
190 開放先端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延伸し、内部空間を有するガラスバルブと、該ガラスバルブの一端に設置された第1の電極と、前記ガラスバルブの他端に設置された第2の電極と、前記ガラスバルブの前記内部空間に封入されたネオンガスとを有するネオン放電管であって、
前記第1の電極は、前記ガラスバルブの前記一端に封止された第1の金属棒を有し、
前記第2の電極は、前記ガラスバルブの前記他端に封止された第2の金属棒と、該第2の金属棒の先端に設置された焼結体と、開放先端を有する金属筒とを有し、
前記金属筒は、前記焼結体の周囲を完全に覆い、前記開放先端を介して、少なくとも前記焼結体の先端は、前記内部空間と気体連通され、
前記長手方向に対して垂直な方向から見たとき、前記焼結体の前記先端は、前記金属筒の前記開放先端から突出しておらず、
前記焼結体は、導電性マイエナイト化合物を含むことを特徴とするネオン放電管。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記第2の電極と同じ構成を有することを特徴とする請求項1に記載のネオン放電管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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