説明

ノック式筆記具

【課題】ノック操作を行う場合に、筆記状態における軸筒の握りの姿勢を大きく変えることなくノック操作を行うことが可能なノック式筆記具を提供すること。
【解決手段】軸筒の後端部に突出し、ノック操作により筆記芯を軸筒の前端部側より繰り出すノックカバー34と、前記ノックカバーと一部品で構成され、軸筒の側面より突出して前記ノックカバー34と共に軸方向に移動可能な突起部34aとが具備され、前記突起部34aが前記ノックカバー34の後端部よりも軸方向の前端部側に位置して構成されている。また、前記ノックカバー34と前記突起部34aとは、当該ノックカバーおよび突起部の幅よりも小さな幅の連結頸部34bを介して一体に形成され、軸筒の後端部から前方に向かって直線状に形成された切欠き溝18b内を前記連結頸部34bが移動可能となるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノック操作により軸筒の先端側から例えば筆記芯(替え芯)を繰り出すことができるシャープペンシルなどに好適に採用し得るノック式筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
前記したシャープペンシルは、軸筒の後端部側に突出したノック操作部をノック操作することで、このノック操作が例えば芯ケースを介してチャックを含む筆記芯の繰り出し機構に伝達され、軸筒の先端側から筆記芯が順次繰り出されるように作用する。
したがって、この種のノック式シャープペンシルによると、繰り出された芯が筆記動作によりある程度まで摩耗すると、再度ノック操作を行い芯の繰り出し操作を行うことになる。
【0003】
このノック操作により筆記芯の繰り出し動作を行う場合には、筆記状態から軸筒を持ち直して、軸筒の後端部に突出したノック操作部を親指などによりノック操作をする必要があり、筆記中においてノック操作に煩わしさを感ずることがある。
そこで、軸筒の側面にノック操作部が突出するようにして配置し、この側面のノック操作部をノック操作することで、筆記芯を繰り出すことができるサイドノック式のシャープペンシルが、特許文献1および2などに提案されている。
【0004】
このサイドノック式のシャープペンシルによると、筆記状態における軸筒の握りの姿勢を大きく変えることなくノック操作部のノック動作が可能となる。
しかしながら、サイドノック式のシャープペンシルによると、長手方向に直交する方向になされるノック操作を、芯ケースが前進する動作に変換するためのカム機構などを別に備える必要が生じ、このための部品や組み立て工数の増加を招き、またカム機構などを備えるために軸筒の外径をある程度以上に増大させなければならないという問題も抱えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−207491号公報
【特許文献2】特開平11−254881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、サイドノック式のシャープペンシルが抱える前記した問題点を解消することができると共に、例えば筆記芯の繰り出し動作のためにノック操作を行う場合に、筆記状態における軸筒の握りの姿勢を大きく変えることなくノック操作を行うことが可能なノック式筆記具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかるノック式筆記具は、軸筒の後端部に突出し、ノック操作により筆記体を軸筒の前端部側より繰り出すノック操作部と、前記ノック操作部と一部品で構成され、軸筒の側面より突出して前記ノック操作部と共に軸方向に移動可能な突起部とが具備され、前記突起部が前記ノック操作部の後端部よりも軸方向の前端部側に位置していることを特徴とする。
【0008】
この場合、好ましい形態においては、前記ノック操作部と前記突起部とは、当該ノック操作部および突起部の幅よりも小さな幅の連結頸部を介して一体に形成され、軸筒の後端部から前方に向かって直線状に形成された切欠き溝内を前記連結頸部が移動可能となるように配置される。
【0009】
加えて、前記軸筒に施された切欠き溝内に位置する前記連結頸部には、前記切欠き溝に対峙する両側の位置に、切欠き溝の対向する内側面にそれぞれ向かって突出する突出体が形成され、前記切欠き溝の各内側面には、前記連結頸部に形成された突出体のみが接触するように構成されていることが望ましい。
この場合、より望ましくは、前記連結頸部に形成された各突出体は、それぞれ軸方向に長く突出形成された構成が採用される。
【0010】
そして、軸筒の後端部に突出する前記ノック操作部としては、ノック操作を伝達するノック棒に対して軸方向に着脱可能に取り付けられたノックカバーにより構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
前記したこの発明にかかるノック式筆記具によると、軸筒の後端部に突出するノック操作部と軸筒の側面より突出して前記ノック操作部と共に軸方向に移動可能な突起部とが一部品で構成されると共に、前記突起部が前記ノック操作部の後端部よりも軸方向の前端部側に位置した構成にされているので、これを例えばシャープペンシルに採用した場合には、筆記状態における軸筒の握りの姿勢を大きく変えることなく前記突起部を親指等でノック操作することが可能であり、これにより筆記体としての芯を繰り出すことができる。
【0012】
また、軸筒の後端部から前方に向かって直線状に形成された切欠き溝内を、前記ノック操作部と前記突起部とを連結する連結頸部が移動可能となるように配置され、前記切欠き溝の対向する内側面には、前記連結頸部に形成された突出体のみが接触するように構成することで、ノック操作によって前記突起部の一部が軸筒に接触するのを効果的に防止することができる。
これにより、前記軸筒や突起部に施した塗装や転写等による表装に損傷を与えるのを防止することができ、筆記具の外観を保護することに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明に係るノック式筆記具についてシャープペンシルに採用した例を示す斜視図である。
【図2】図1に示すシャープペンシルの前半部を示した断面図である。
【図3】同じく後半部を示した断面図である。
【図4】突起部を備えたノックカバーの外観構成を示した斜視図である。
【図5】突起部を切除してノックカバーの装着状態を示した斜視図である。
【図6】ノックカバーと突起部とを連結する連結頸部の一部を破断した状態で示した拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明にかかるノック式筆記具の一例について、これをシャープペンシルに採用した形態について先に説明し、このシャープペンシルに具備されたノックカバーの詳細な構成について後で説明する。
なお、以下に示す各図においては同一部分を同一符号で示しているが、紙面の都合により一部の図面においては、代表的な部分に符号を付け、その詳細な構成はその他の図面に付した符号を引用して説明する場合もある。
【0015】
先ず、図1〜図3はシャープペンシルの全体構成を説明するものであり、軸筒を構成する先軸1の先端部には、口金2が螺合されることで、先軸1に対して着脱可能に取り付けられている。そして、前記先軸1および後述する後軸の軸芯に沿って筒状の芯ケース3が収容されており、この芯ケース3の先端部には短軸の芯ケース継手4が取り付けられ、前記芯ケース継手4を介して真ちゅう製のチャック5が連結されている。
【0016】
前記チャック5内には、その軸芯に沿って図示せぬ筆記芯の通孔が形成され、また先端部が複数に分割されて、分割された先端部は真ちゅうによりリング状に形成された締め具6内に遊嵌されている。またリング状の前記締め具6は前記チャック5の周囲を覆うようにして配置された中継パイプ7の先端部内面に装着されている。
なお、この中継パイプ7の後端部は筆記圧を利用して筆記芯(替え芯)を回転させる後述する回転駆動機構に接続されている。
【0017】
前記中継パイプ7の前端部には、前記した口金2内に収容されてその前端部が口金2より突出される円筒状のスライダー8が中継パイプ7に対して嵌合されることで着脱可能に取り付けられ、さらにスライダー8の前端部には、筆記芯を案内する先端パイプ9がパイプ保持具10を介して取り付けられている。
また、前記スライダー8の内周面におけるパイプ保持具10の直後には、軸芯部分に通孔を形成したゴム製の保持チャック12が収容されている。
【0018】
前記した構成により、芯ケース3に続くチャック5内に形成された通孔、および前記保持チャック12の軸芯に形成された通孔を介して、先端パイプ9に至る直線状の芯挿通孔が形成されており、この直線状の芯挿通孔内に図示せぬ筆記芯が挿通される。そして、前記した中継パイプ7と芯ケース継手4との間には、コイル状のチャックスプリング13が配置されている。
【0019】
すなわち、前記チャックスプリング13は、その前端部が中継パイプ7の内周面に形成された環状の段部に当接し、チャックスプリング13の後端部は前記芯ケース継手4の前端面に当接した状態で収容されている。したがって、前記チャックスプリング13の作用により、前記チャック5は中継パイプ7内を後退してその先端部がリング状の締め具6内に収容される方向に、すなわち筆記芯を把持する方向に付勢されている。
【0020】
軸筒を構成する前記した先軸2には例えばゴムなどの弾性素材により形成されたグリップ部材14が先軸2を取り巻くようにして装着されている。このグリップ部材14を先軸2に装着するにあたっては、先に飾りリングとして機能する透明な樹脂素材により形成された透明リング15が先軸2の先端部側から装着される。
この透明リング15は、先軸に一体に成形された環状の鍔部1aによって位置決めされ、続いて前記グリップ部材14が同方向から先軸2を取り巻くようにして装着される。その後に、前記した口金2が先軸1の前端部に螺合されることで、前記透明リング15およびグリップ部材14が軸方向に抜け出ることなく、前記先軸1に取り付けられる。
【0021】
前記した飾りリングとして機能する透明リング15は、予め先軸1に巻回されるようにして貼り付けられている加飾シール16を覆い、このシール16の周面が視認できるように構成されている。
この加飾シール16には、金もしくは銀色などの光沢のある印刷が施され、その適宜の位置には印刷が施されない透明部分が形成されている。そして、この透明部分および透明な樹脂素材により成形された前記先軸1を透視して、内部の中継パイプ7の一部が視認できるように構成されている。
これにより、後述する回転駆動機構によって中継パイプ7が回転駆動される様子を、透明リング15を介して確認することができる。
【0022】
前記した先軸1の後端部には、軸筒を構成する後軸18の前端部内面が嵌合されて取り付けられており、この後軸18の前半部分には図3に示されているように、ユニット化された回転駆動機構21が収容されている。
この回転駆動機構21には前記したとおり中継パイプ7の後端部が接続されており、この中継パイプ7は筆記動作に基づく筆記芯の後退および前進動作(クッション動作)を前記チャック5を介して受けて、回転駆動機構21に伝達させると共に、クッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21による回転運動を、前記中継パイプ7を介して前記チャック5に伝達させるように作用する。
これにより、チャック5に把持された図示せぬ筆記芯は、筆記動作に伴い前記回転駆動機構21による回転運動を受けることになる。
【0023】
なお、前記回転駆動機構21は、その前端部において前記先軸1との間に介在された軸スプリング22によって後方に付勢されている。また回転駆動機構21の後端部は前記後軸18内の縮径により形成された段部18aに、前記軸スプリング22の付勢力により当接している。
すなわち、この実施の形態においては、ユニット化された前記回転駆動機構21は後軸18内の段部18aに当接することによる摩擦により回動が規制され、前記したクッション動作によって生ずる前記回転駆動機構21による回転運動を、前記チャック5側に伝達させるように作用する。
【0024】
前記回転駆動機構21には円筒状に形成された回転子24が具備されており、前記した中継パイプ7は、回転駆動機構21の前端部において、前記回転子24の内周面に嵌合することで結合されている。
【0025】
前記回転子24は、その前端部付近が若干径を太くした太径部になされ、その太径部の一端面(後端面)には第1のカム面24aが形成されており、太径部の他端面(前端面)には第2のカム面24bが形成されている。一方、前記回転子24の後端部側を覆うようにして円筒状の上カム形成部材25が、前記回転子24を回動可能に支持するように配置されており、前記上カム形成部材25の前端部外周には、円筒状の下カム形成部材26が、上カム形成部材25に嵌合されて取り付けられている。
【0026】
そして、前記回転子24における第1のカム面24aに対峙する上カム形成部材25の前端面に、第1の固定カム面25aが形成されている。また、前記回転子24における第2のカム面24bに対峙する下カム形成部材26の前端部内面に、第2の固定カム面26aが形成されている。
【0027】
前記した上カム形成部材25の後端部側には、シリンダー部材27が上カム形成部材25に対して嵌め込まれており、このシリンダー部材27内には円筒状に形成され軸方向に移動可能なトルクキャンセラー28が配置され、当該トルクキャンセラー28の内周面前端部と前記シリンダー部材27の内周面後端部との間にはコイル状のクッションスプリング29が装着されている。
前記クッションスプリング29は、トルクキャンセラー28を前方に付勢するように作用し、この付勢力を受けた前記トルクキャンセラー28に押されて前記回転子24は前方に向かうように作用する。
【0028】
以上のとおり前記した回転駆動機構21は、その中央部が前記芯ケース3を通す空間部になされて芯ケース3とは隔離されており、回転駆動機構21は前記した符号25〜29で示す各部材によりユニット化されている。
【0029】
前記した後軸18の後半部分、すなわち回転駆動機構21の後部側にはノック棒31が軸方向に摺動可能に装着されている。このノック棒31の前端部は環状の楔形突出部31aになされており、この楔形突出部31aが後軸18内に形成された環状突起18bを乗り越えて取り付けられている。
そして、環状突起18bとノック棒31との間にはコイル状のノック棒スプリング32が配置され、このスプリング32によって、前記ノック棒31を後軸18の後端部側に向けて付勢するように構成されている。
【0030】
また、ノック棒31の中央よりも若干後端部寄りには、筆記芯の補給孔31cを備えた当接部31bが形成されており、さらにこのノック棒31の後端部には、消しゴム33が着脱可能に装着されると共に、前記消しゴム33を覆うようにノック操作部として機能するノックカバー34がノック棒31の後端部の周面に着脱可能に取り付けられている。
【0031】
なお、前記ノック棒31の当接部31bと、前記した芯ケース3の後端部とは所定の間隔をもって対峙した構成にされている。この構成によると、筆記による前記したクッション動作によりチャック5および芯ケース3が若干後退しても、芯ケース3の後端部が前記ノック棒31の当接部31bに衝突することはなく、前記回転駆動機構21による回転動作に障害を与えるのを防止することができる。
【0032】
前記ノック棒31に対して着脱可能に取り付けられた前記ノックカバー34には、このノックカバー34の側壁面に円盤状の突起部34aが一体に形成されている。そして、円盤状突起部34aの円盤面には、円形状にして中央部が若干凸面状になされ前記ノックカバー34とは異色の樹脂盛りシール35が装着されている。
前記後軸18の後端部における周方向の一部には、軸方向に切欠き溝18cが形成されており、前記ノックカバー34と円盤状突起部34aとを連結する連結頸部が前記切欠き溝18cに沿って移動することで、前記ノックカバー34のノック操作が可能となるように構成されている。
【0033】
前記ノックカバー34に一体に形成された円盤状の突起部34aは、前記樹脂盛りシール35により飾りの機能を果たすと共に、シャープペンシルの転がり止めとしての機能も果たすものとなる。
なお、前記ノックカバー34と円盤状の突起部34aなどを含む詳細な構成については、図4〜図6を用いて後で説明する。
【0034】
以上のように構成されたシャープペンシルにおける前記した回転駆動機構21によると、チャック5が筆記芯を把持した状態で、前記回転子24は中継パイプ7を介してチャック5と共に軸芯を中心にして回転可能になされている。そして、シャープペンシルが筆記状態以外の場合においては、回転駆動機構21内に配置された前記クッションスプリング29の作用により、前記トルクキャンセラー28を介して回転子24は前方に付勢されている。
【0035】
一方、シャープペンシルを使用した場合、すなわち先端パイプ9から突出している筆記芯に筆記圧が加わった場合には、前記チャック5は前記クッションスプリング29の付勢力に抗して後退し、これに伴って回転子24も軸方向に僅かに後退する。したがって、回転子24に形成された第1のカム面24aは前記第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされる。
【0036】
前記第1のカム面24aは周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第1の固定カム面25aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、対峙した状態の第1カム面24aと固定カム面25aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されており、前記したように第1のカム面24aが第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされることによって、回転子24は第1カム面24aの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する回転駆動を受ける。
【0037】
一方、前記第2のカム面24bも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、また前記第2の固定カム面26aも周方向に沿って連続的に鋸歯状になされており、そのピッチは互いに同一となるように形成されている。
そして、前記したように第1のカム面24aが第1の固定カム面25aに接合して噛み合い状態になされた状態においては、対峙した状態の第2カム面24bと第2の固定カム面26aは、軸方向においてカムの一歯に対して半位相(半ピッチ)ずれた関係となるように設定されている。
【0038】
したがって一画の筆記が終わり、筆記芯に対する筆記圧が解かれた場合には、前記したクッションスプリング29の作用により回転子24は軸方向に僅かに前進し、回転子24に形成された第2カム面24bが、第2の固定カム面26aに噛み合う。これにより回転子24は第2カム面24bの一歯の半位相(半ピッチ)に相当する同方向の回転駆動を再び受ける。
【0039】
以上のとおり、前記したシャープペンシルによると、筆記圧を受けることによる回転子24の軸方向への往復運動に伴って、回転子24は第1カム面24aおよび第2カム面24bの一歯(1ピッチ)に相当する回転駆動を受け、前記した中継パイプ7およびチャック5を介してこれに把持された筆記芯も同様に一方向に回転駆動される。
したがって、筆記芯は自身が受ける回転運動と筆記による摩耗とにより、先端部が常に円錐形状になされる。それ故、書き進むにしたがって筆記芯が偏摩耗するのを防止させることができ、安定した線幅による筆記が可能となる。
【0040】
なお、前記した回転駆動機構21においては、回転子24とクッションスプリング29との間に、トルクキャンセラー28が介在されている。このトルクキャンセラー28は前記回転子24の後端部との間ですべりを発生させて、回転子26の回転運動がクッションスプリング29側に伝達されるのを阻止するように作用する。これにより、スプリング29の捩じれ戻り(バネトルク)が発生することで、回転子24の回転動作に障害を与えるという問題を解消させることができる。
【0041】
また、この構成によるシャープペンシルにおいては、ノックカバー34をノック操作することで、ノック棒の当接部31bが芯ケース3を前方に押し出し、中継パイプ7に取り付けられたスライダー8の一部が口金2内に当接して、その前進が阻まれる。このため、チャック5の先端部が締め具6から相対的に突出してチャック5による筆記芯の把持状態が解除される。そして、前記ノック操作の解除により、チャックスプリング13の作用により芯ケース3およびチャック5は軸筒内において後退する。
【0042】
この時、筆記芯は保持チャック12に形成された通孔内において摩擦により保持されており、この状態でチャック5が後退してその先端部が前記締め具6内に収容されることで、筆記芯を再び把持状態にする。すなわち、ノックカバー34のノック操作の繰り返しによりチャック5が前後動し、これにより筆記芯の解除と把持が行われ、筆記芯はチャック5から順次前方に繰り出されるように作用する。
【0043】
図4〜6は、前記したノック操作部として機能するノックカバー34と、このノックカバー34に一体に形成された円盤状の突起部34aを含む構成を拡大して示したものである。
ノック操作部として機能するノックカバー34は、図3に基づいてすでに説明したとおり、ノック棒31の後端部を覆いノック棒31に対して軸方向に着脱可能に取り付けられて、軸筒(後軸18)の後端部に突出した状態になされている。
【0044】
そして、円盤状の突起部34aは、図4に示されているように、前記ノックカバー34および突起部34aの幅よりも小さな幅の連結頸部34bを介して一体に樹脂成形されており、前記突起部34aは前記ノックカバー34の後端部(頂端部)よりも軸方向の前端部側に位置するように構成されている。
また、前記突起部34aの外向きの面は、軸方向とほぼ平行となるように構成され、その面の外周縁34cを残して中央部に円形状の凹部が形成され、この凹部内に中央部が若干凸面状になされた別部品の樹脂盛りシール35(図1、図3参照)が、嵌め込まれて装着されている。
【0045】
また、前記突起部34aにおける前記ノックカバー34に向く面は、前記した連結頸部34bを中央にしてその両側が若干厚みを増して軸芯に沿うように成形されており、これをシャーブペンシルの本体に装着した場合に、円筒状の軸筒(後軸18)との間で、ほぼ均等な隙間が形成されるように構成されている。
なお、図4に示した符号34eは、ノックカバー34の頂端部に形成された通気孔を示している。
【0046】
図5に突起部34aを切除して示したように、ノックカバー34に突起部34aを連結する前記した連結頸部34bは、若干軸方向に長い方形状の柱状体により構成されており、ノック操作がなされた時に、後軸18の後端部から前方に向かって直線状に形成された切欠き溝18c内に沿って軸方向に移動できるように構成されている。
そして、連結頸部34bにおける切欠き溝18cに対峙する両側の位置には、軸方向に長く突出形成された突出体34dがそれぞれ一体に形成されている。
【0047】
すなわち、切欠き溝18c内に位置する前記連結頸部34bには、前記切欠き溝18cに対峙する両側の位置に、切欠き溝の対向する内側面(切欠き溝と同一の符号18cで示す)にそれぞれ向かって突出する突出体34dが形成されている。
この構成により、前記切欠き溝の各内側面18cには、前記連結頸部34bに形成された突出体34dのみが接触するようになされる。
【0048】
以上のとおり、前記した実施の形態によると、ノック操作部として機能するノックカバー34には、当該ノックカバーの後端部よりも前方に位置するように突起部34aが一体に形成されているので、筆記状態における軸筒の握りの姿勢を大きく変えることなく、前記突起部34aを親指等でノック操作することが可能であり、筆記芯の摩耗による芯の繰り出し操作を筆記の能率を落とすことなく円滑に行うことができる。
【0049】
また、前記した実施の形態によると、軸筒の後端部から前方に向かって直線状に形成された切欠き溝18c内を、前記ノックカバー34と前記突起部34aとを連結する連結頸部34bが移動可能となるように構成され、さらに前記切欠き溝34bの対向する内側面には、前記連結頸部34bに形成された突出体34dのみが接触するように構成されている。
この構成によると、前記突起部34aを軸方向に回すようなノック操作を行っても、前記突出体34dの作用により、突出体34dを除く例えば突起部34aの一部が軸筒の一部に接触するのを防止することができる。したがって、前記軸筒18や突起部34aに施した塗装や転写等による表装に損傷を与えるのを防止することができ、永続的に筆記具の外観を保護することに寄与できる。
【0050】
なお、以上説明した実施の形態においては、ノック棒31に着脱可能に装着されるノックカバー34に対して突起部34aを一体に形成した例を示しているが、前記ノックカバー34およびノック棒31を一部品によりノック操作部として構成する場合もあり、この発明はこのようなノック操作部にも同様に適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
また、以上説明した実施の形態は、ノック操作により筆記芯を順次繰り出すことができるシャープペンシルにこの発明を適用した例を示しているが、この発明にかかるノック式筆記具は、前記したシャープペンシル以外に、ノック操作により軸筒の前端部側より筆記体が繰り出されるその他の筆記具にも採用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 先軸(軸筒)
2 口金
3 芯ケース
5 チャック
6 締め具
7 中継パイプ
8 スライダー
13 チャックスプリング
14 グリップ部材
17 中継パイプ
18 後軸(軸筒)
18c 切欠き溝
21 回転駆動機構
31 ノック棒
32 ノック棒スプリング
34 ノックカバー(ノック操作部)
34a 突起部
34b 連結頸部
34c 外周縁
34d 突出体
34e 通気孔
35 樹脂盛りシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒の後端部に突出し、ノック操作により筆記体を軸筒の前端部側より繰り出すノック操作部と、前記ノック操作部と一部品で構成され、軸筒の側面より突出して前記ノック操作部と共に軸方向に移動可能な突起部とが具備され、
前記突起部が前記ノック操作部の後端部よりも軸方向の前端部側に位置していることを特徴とするノック式筆記具。
【請求項2】
前記ノック操作部と前記突起部とは、当該ノック操作部および突起部の幅よりも小さな幅の連結頸部を介して一体に形成され、軸筒の後端部から前方に向かって直線状に形成された切欠き溝内を前記連結頸部が移動可能となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載されたノック式筆記具。
【請求項3】
前記軸筒に施された切欠き溝内に位置する前記連結頸部には、前記切欠き溝に対峙する両側の位置に、切欠き溝の対向する内側面にそれぞれ向かって突出する突出体が形成され、前記切欠き溝の各内側面には、前記連結頸部に形成された突出体のみが接触するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載されたノック式筆記具。
【請求項4】
前記連結頸部に形成された各突出体は、それぞれ軸方向に長く突出形成されていることを特徴とする請求項3に記載されたノック式筆記具。
【請求項5】
軸筒の後端部に突出する前記ノック操作部は、ノック操作を伝達するノック棒に対して軸方向に着脱可能に取り付けられたノックカバーであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載されたノック式筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107265(P2013−107265A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253699(P2011−253699)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】