説明

ハイブリッド火力発電システム及びその建造方法

【課題】原油を用いた火力発電システムにおいて、原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を容易に実現するハイブリッド火力発電システム及びその建造方法を提供する。
【解決手段】原油を用いたハイブリッド火力発電システムであって、常圧蒸留塔3のみにより分離されたナフサ及び軽質油をそれぞれ異なるガスタービンに供給して発電を行うとともに排熱で生成された蒸気を用いて発電を行うコンバインドサイクル発電システム6と、常圧蒸留塔3のみにより分離された重質油を燃焼させて発電を行うコンベンショナル発電システム7と、を備えて構成する。これにより、運転効率を著しく損なうことなく両システムを併用できるので、システム全体の熱効率を向上させることができる。また、コンバインドサイクル発電システム6の余剰燃料を、コンベンショナル発電システム7のボイラ12へ供給することにより、システム全体の熱効率を一層向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油を燃料とするハイブリッド火力発電システム及びハイブリッド火力発電システムの建造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の火力発電システムとして、原油を燃料として発電するものが知られている。例えば、コンベンショナル発電システム(Conventional power generation systems)は、原油をボイラにて燃焼し、発生した蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電する。しかしながら、コンベンショナル発電システムは、十分な発電効率を得ることが困難である。このため、原油からガスタービン燃料油を製造し、製造されたガスタービン燃料油をガスタービンで燃焼させて発電を行うコンバインドサイクル発電システム(Combined cycle power generation systems)が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。特許文献1〜3記載のシステムは、常圧蒸留塔及び減圧蒸留塔によって原油からガスタービン燃料油を製造する。なお、ガスタービン燃料油は、350℃〜400℃よりも沸点の低い軽質油として原油から分留される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−273467号公報
【特許文献2】特開2000−282069号公報
【特許文献3】国際公開第00/26325号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1〜3記載の火力発電システムにあっては、コンバインドサイクル発電システムのみを利用して発電することを前提としている。このため、原油単位量当たりのエネルギー効率を向上させるためには、特許文献1〜3記載のように蒸留工程を繰り返して、できるだけ多くのガスタービンの燃料油を原油から抽出する必要がある。
【0005】
しかしながら、できるだけ多くのガスタービン燃料を原油から抽出すると、蒸留されたガスタービンの燃料油に未燃炭化水素が混入するおそれがある。ガスタービンにて未燃炭化水素を含む燃料油を燃焼させた場合、煤が発生する。発生した煤は、タービン翼の冷却空気孔を塞ぐおそれがあるため、ガスタービンが機能しなくなる一因となる。
【0006】
したがって、特許文献1〜3記載の火力発電システムにおいて、原油単位量当たりのエネルギー効率を向上させつつ電力供給の安定性確保を実現するためには、未燃炭化水素の混入を考慮しつつ、できるだけ多くのガスタービンの燃料油を原油から抽出する必要がある。このような条件を実現するためには、複雑な蒸留工程と制御が必要となるので、火力発電システムの構造が複雑化し、高コストとなる。
【0007】
一方、特許文献1〜3記載の火力発電システムにおいては、350℃〜400℃よりも沸点の低い軽質油をガスタービンの燃料油として原油から抽出しているため、軽油より低い温度で抽出されるナフサは、ナフサより高い温度で抽出される軽油と混合された状態となる。しかしながら、軽油とナフサとの混合比や均一性にはばらつきが存在するため、このような燃料をガスタービンの燃料油として採用すると、ガスタービンの燃焼が安定しないおそれがある。よって、従来のシステムにあっては、ガスタービンの信頼性が低下し長期安定発電を阻害するおそれがあるとともに、効率的な運転が困難となる場合がある。
【0008】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、原油を用いた火力発電システムにおいて、原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を容易に実現することができるハイブリッド火力発電システム及びその建造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、原油単位当たりのエネルギー効率の向上を、原油からできるだけ多くのガスタービン燃料を抽出するというアプローチで実現するのではなく、原油全てを燃料として用いるというアプローチに着眼し、コンバインドサイクル発電システムとコンベンショナル発電システムとを併用することで、原油単位量当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の安定性の確保を容易に実現することができることを見出すとともに、上記効果を奏するためには、常圧蒸留塔のみで蒸留工程を行うことが重要であることを見出した。さらに、本発明者は、原油単位量当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の安定性の確保をさらに簡易に実現するためには、ナフサと軽質油とを分離してそれぞれ異なるガスタービンへ供給することが好適であることを見いだした。
【0010】
すなわち、本発明に係るハイブリッド火力発電システムは、原油を燃料とするハイブリッド火力発電システムであって、原油を脱塩する脱塩処理装置と、前記脱塩処理装置により脱塩された原油をナフサ、軽質油及び重質油に分離する常圧蒸留塔と、前記常圧蒸留塔により分離されたナフサを燃料として第1ガスタービンを駆動させて発電し、前記常圧蒸留塔により分離された軽質油を燃料として第2ガスタービンを駆動させて発電し、前記第1ガスタービン及び前記第2ガスタービンの排熱を利用して生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンバインドサイクル発電システムと、前記常圧蒸留塔により分離された重質油をボイラにて燃焼させ、前記ボイラにて生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンベンショナル発電システムと、を備え、前記常圧蒸留塔のみを用いて前記コンバインドサイクル発電システム及び前記コンベンショナル発電システムの燃料を原油から分離し、前記第1ガスタービンの余剰ナフサ又は前記第2ガスタービンの余剰軽質油を、前記コンベンショナル発電システムの前記ボイラへ供給することを特徴として構成される。
【0011】
本発明に係るハイブリッド火力発電システムによれば、常圧蒸留塔のみを用いて蒸留工程を行うので、未燃炭化水素が混入しない範囲で原油からナフサ及び軽質油を分離させる工程を簡易な構成で実現することができる。さらに、常圧蒸留塔のみを用いて蒸留工程を行うため、重質油に含まれる不純物の濃度をボイラにて容易に燃焼できる範囲に収めることが可能となる。このため、コンバインドサイクル発電システムとコンベンショナル発電システムとを両者の運転効率を著しく損なうことなく併用することができるので、安定した電力供給を行うことができる。
【0012】
また、コンバインドサイクル発電システムとコンベンショナル発電システムとを併用することで、原油から分離されるナフサ及び軽質油と重質油との両方を用いて発電することが可能となる。ナフサ及び軽質油を用いてガスタービンにて発電を行うことができるので、コンベンショナル発電システム単体を採用した場合の発電効率に比べて大きな発電効率を得ることが可能となる。一方、蒸留工程を繰り返す場合に比べて得られるガスタービン燃料は減少するため、蒸留工程を繰り返す場合に比べてコンバインドサイクル発電システムの発電量が低下するものの、分離しなかったガスタービン燃料を含む重質油を用いてコンベンショナル発電システムにて発電を行うことができる。このため、複雑な制御や蒸留工程を実行することなく発電量の低下を補うように発電することが可能となる。よって、原油を用いた火力発電システムにおいて、原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を容易に実現することができる。
【0013】
さらに、常圧蒸留塔を用いて、ガスタービンの燃料がナフサと軽質油とに分離され、それぞれ異なるガスタービンへ供給されるため、ガスタービンにナフサと軽質油とが混合された燃料を供給することを回避することができる。このため、混合された燃料に合せてガスタービンを設定することなく、それぞれ供給されるナフサ及び軽質油に合わせて効率的な運転ができるように個々のガスタービンを容易に設定することができるとともに、混合された燃料の不均一性に起因する動作不安定を回避することが可能となる。また、余剰ナフサ又は余剰軽質油が前記ボイラへ供給されることで、コンバインドサイクル発電システムの余剰燃料を前記コンベンショナル発電システムの発電に利用することが可能となる。よって、コンバインドサイクル発電システムとコンベンショナル発電システムとの両者を用いて効率良く発電することができる。
【0014】
ここで、前記コンバインドサイクル発電システムは、前記蒸気タービンとして、前記第1ガスタービンの排熱を利用する第1蒸気タービン、及び、前記第2ガスタービンの排熱を利用する第2蒸気タービンを有する構成としてもよい。
【0015】
このように構成することで、コンバインドサイクル発電システムがガスタービンごとに独立する。このため、例えば一方のコンバインドサイクル発電システムを稼働させた状態で他方のコンバインドサイクル発電システムを停止することができるのでメンテナンスを容易に行うことができるとともに、一方のコンバインドサイクル発電システムが障害により停止したりした場合であっても他方のコンバインドサイクル発電システムに影響がないため、連続して安定稼働をすることが可能となる。
【0016】
また、前記常圧蒸留塔は、分留されたナフサを前記第1ガスタービンへ供給する第1供給路、分留された軽質油を前記第2ガスタービンへ供給する第2供給路、及び分留された重質油を前記ボイラへ供給する第3供給路に接続されており、前記第1供給路又は前記第2供給路が前記第3供給路に接続されることで、前記余剰ナフサ又は前記余剰軽質油を前記ボイラへ供給可能に構成されてもよい。
【0017】
また、前記常圧蒸留塔は、前記第1ガスタービン及び前記第2ガスタービンの要求仕様に基づいて、前記第1ガスタービン及び前記第2ガスタービンの燃料として許容するナフサ及び軽質油を原油からそれぞれ分離することが好適である。
【0018】
このように構成することで、常圧蒸留塔によりガスタービンの要求仕様に適合したナフサ及び軽質油が原油から過度に分離されることなく取得され、ガスタービンへ供給される。このように、原油から過度にナフサ及び軽質油を分離しないため、常圧蒸留塔より残渣油として得られる重質油が、重金属等を高い濃度で含有することがないため、ボイラの要求仕様を容易に満たすことができる。
【0019】
また、前記コンバインドサイクル発電システムが有する前記蒸気タービン、及び、前記コンベンショナル発電システムが有する前記蒸気タービンの少なくとも一方から出力された蒸気を用いて塩水淡水化を行う第1の造水装置をさらに備えてもよい。
【0020】
このように構成することで、第1の造水装置により蒸気タービンの排熱を利用して塩水から淡水を生成することができるので、原油単位当たりのエネルギー効率を一層向上させることが可能となる。
【0021】
また、前記コンバインドサイクル発電システム及び前記コンベンショナル発電システムの少なくとも一方から出力された電力を用いて塩水淡水化を行う第2の造水装置をさらに備えてもよい。また、前記第1の造水装置及び前記第2の造水装置を併用してもよい。
【0022】
また、本発明に係るハイブリッド火力発電システムの建造方法は、原油を燃料とするハイブリッド火力発電システムの建造方法であって、原油を脱塩する脱塩処理装置、前記脱塩処理装置により脱塩された原油をナフサ、軽質油及び重質油に分離する常圧蒸留塔、及び、前記常圧蒸留塔により分離されたナフサを燃料として第1ガスタービンを駆動させ発電を行い、前記常圧蒸留塔により分離された軽質油を燃料として第2ガスタービンを駆動させ発電を行い、第1ガスタービン及び第2ガスタービンの排熱を利用して生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンバインドサイクル発電システムを建造する第1建造ステップと、前記常圧蒸留塔により分離された重質油を燃料としてボイラを駆動させ、前記ボイラにて生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンベンショナル発電システムを建造する第2建造ステップと、前記第1建造ステップ及び前記第2建造ステップの終了後に、前記第1ガスタービンの余剰ナフサ又は前記第2ガスタービンの余剰軽質油を、前記コンベンショナル発電システムの前記ボイラへ供給する供給路を配置する第3建造ステップと、を備え、前記第1建造ステップ及び前記第2建造ステップを並行して行うことを特徴として構成される。
【0023】
本発明に係るハイブリッド火力発電システムの建造方法によれば、脱塩処理装置、常圧蒸留塔及びコンバインドサイクル発電システムを建造する第1建造ステップと、コンベンショナル発電システムを建造する第2建造ステップを並行して行うことにより、例えば第1建造ステップによる建造が完了した時点で、第2建造ステップによる建造の完了を待つことなく、シンプルサイクルで、またコンバインドサイクル発電システムの完成後、コンバインドサイクルでコンバインドサイクル発電システムを運転させることができる。このため、ハイブリッド火力発電システムの全体が完成する前に発電することが可能となり、コンベンショナル発電システムのみを建造する場合に比べて早期に電力供給をすることができる。さらに、コンバインドサイクル発電システムの燃料をコンベンショナル発電システムへ供給する供給路を設けることで、コンバインドサイクル発電システム及びコンベンショナル発電システムの両者を用いて効率よく運転させることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、原油を用いた火力発電システムにおいて、原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1参考例に係るハイブリッド火力発電システムの構成概要図である。
【図2】第2参考例に係るハイブリッド火力発電システムの構成概要図である。
【図3】第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システムの構成概要図である。
【図4】第2実施形態に係るハイブリッド火力発電システムの構成概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
(第1参考例)
本参考例に係るハイブリッド火力発電システムは、原油を燃料として用いた火力発電システムとして好適に採用されるものである。
【0028】
図1は、本参考例に係るハイブリッド火力発電システムの構成概要図である。図1に示すように、ハイブリッド火力発電システム1は、脱塩処理装置2、常圧蒸留塔3、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7を備えている。
【0029】
脱塩処理装置2は、例えば原油タンクに接続されており、原油タンクから供給された原油に対して脱塩処理を行う。脱塩処理装置2は、例えば、原油に水を加えて洗浄し水層を分離する処理を行う。また、脱塩処理装置2は、不純物・塩分を除去した原油を常圧蒸留塔3へ供給する。
【0030】
常圧蒸留塔3は、脱塩処理装置2から供給された原油を分留する。常圧蒸留塔3は、例えば、加熱炉、ボイラ、主蒸留塔を備えている。主蒸留塔は、加熱炉によって約350℃に加熱され低沸点成分を蒸発させた原油を導入する。また、主蒸留塔は、ボイラから蒸気を導入する。主蒸留塔は、原油を大気圧より少し高い圧力で蒸留し、ガスタービン燃料として許容する軽質油とその残渣油である重質油に分離する。ここで、常圧蒸留塔3は、ガスタービンの要求仕様に基づいて、ガスタービン燃料として許容する軽質油を分留する。ガスタービンが安定動作可能な軽質油は、例えば、引火点、リード蒸気圧、流出点、蒸留温度、比重、密度、粘度、低位発熱量、炭化水素比、セタン指数、残留炭素、底部沈殿物(水)、微量金属含有量(ナトリウム、カリウム、バナジウム、鉛等)等によって定義されている。残渣油である重質油は、蒸留工程を一度しか行っていないものであるので、ボイラ燃料として許容される。分離された軽質油は、軽質油供給系統4を介してコンバインドサイクル発電システム6へ供給され、分離された重質油は、重質油供給系統5を介してコンベンショナル発電システム7へ供給される。このように、常圧蒸留塔3のみを用いてコンバインドサイクル発電システム及びコンベンショナル発電システムの燃料が原油から分離される。
【0031】
コンバインドサイクル発電システム6は、ガスタービン8、蒸気タービン9、発電機10及び排熱回収ボイラ11を備えている。
【0032】
ガスタービン8は、軽質油供給系統4を介して導入した軽質油を、圧縮した空気中で燃焼し、高温・高圧のガスでタービンを高速回転させる。ガスタービン8は、発電機10に接続されている。発電機10は、回転するタービンの運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。これによりガスタービン8で発電が行われる。ガスタービン8から排出された排気ガスは、排熱回収ボイラ11へ供給される。
【0033】
排熱回収ボイラ11は、ガスタービンから高温の排気ガスを取り入れ、供給された水と排気ガスを熱交換させて蒸気を発生する。なお、排熱回収ボイラ11は、常圧蒸留塔3から発生する高温ガスをさらに取り入れる構成としてもよい。排熱回収ボイラ11には、蒸気タービン9が接続されており、発生させた蒸気は蒸気タービン9に供給される。
【0034】
蒸気タービン9は、排熱回収ボイラ11から供給された蒸気によりタービンを高速回転させる。蒸気タービン9は、発電機10に接続されている。発電機10は、回転するタービンの運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。これにより蒸気タービン9で発電が行われる。なお、蒸気タービン9として、再熱サイクル蒸気タービンを用いてもよい。
【0035】
このように、コンバインドサイクル発電システム6は、常圧蒸留塔3により分離された軽質油を燃料としてガスタービン8を駆動させ発電を行うとともに、ガスタービン8の排熱を利用して生成された蒸気により蒸気タービン9を駆動させて発電を行う。
【0036】
一方、コンベンショナル発電システム7は、ボイラ12、蒸気タービン9及び発電機10を備えている。ボイラ12は、重質油供給系統5を介して導入した重質油を燃焼し、供給された水を蒸気へ変換する。ボイラ12には、蒸気タービン9が接続されており、発生させた蒸気は蒸気タービン9に供給される。蒸気タービン9及び発電機10の構成は上述したものと同様である。
【0037】
このように、コンベンショナル発電システム7は、常圧蒸留塔3により分離された重質油をボイラ12で燃焼させ、ボイラ12にて生成された蒸気により蒸気タービン9を駆動させて発電を行う。
【0038】
上述のように、ハイブリッド火力発電システム1は、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7を併用するとともに、各システムに供給される燃料は、常圧蒸留塔3のみにより蒸留される。
【0039】
次に、本参考例に係るハイブリッド火力発電システム1の作用効果について説明する。供給された原油は、脱塩処理装置2により脱塩処理され、常圧蒸留塔3により軽質油及び重質油に分離される。軽質油は、軽質油供給系統4を介してコンバインドサイクル発電システム6のガスタービン8へ供給され、ガスタービン8の燃料として利用される。これにより、ガスタービン8に接続された発電機10を介して電力が得られる。また、ガスタービン8から排気された排気ガスは、排熱回収ボイラ11に送られ、排熱回収ボイラ11に供給される水と熱交換し、蒸気が発生する。蒸気は蒸気タービン9を駆動し、発電機10を介して電力が得られる。このように、ガスタービン8の排熱を利用して電力を得ることができる。一方、重質油は、重質油供給系統5を介してコンベンショナル発電システム7のボイラ12へ供給され燃料として利用される。これにより、排熱回収ボイラ11に供給される水が蒸気となる。蒸気は蒸気タービン9を駆動し、発電機10を介して電力が得られる。このように、常圧蒸留塔3によって分離された軽質油及び重質油は、何れも発電の燃料として採用される。このため、原油単位量当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の安定性の確保を容易に実現することができる。本発明者等のシミュレーション結果によれば、ハイブリッド火力発電システム1は、一般のコンベンショナル発電システムに比べ、発電効率の約5%(相対値)の向上が得られた。また、ハイブリッド火力発電システム1は、一般のコンベンショナル発電システムに比べ、COの削減が約5%(相対値)可能とることが確認された。よって、省エネルギーでCO削減の効果を有することが確認された。
【0040】
以上、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1によれば、常圧蒸留塔3のみを用いて蒸留工程を行うので、原油から軽質油を分離させる工程を簡易な構成で実現しつつ、未燃炭化水素等の不純物の混入を容易に回避することができる。さらに、常圧蒸留塔3のみを用いて蒸留工程を行うため、重質油に含まれる不純物の濃度をボイラにて容易に燃焼できる範囲に収めることが可能となる。このため、コンバインドサイクル発電システム6とコンベンショナル発電システム7とを両者の運転効率を著しく損なうことなく併用することができるので、安定した電力供給を行うことができる。さらに、コンバインドサイクル発電システム6とコンベンショナル発電システム7とを併用することで、原油から分離される軽質油と重質油との両方を用いて発電することが可能となる。軽質油を用いてガスタービン8にて発電を行うことができるので、コンベンショナル発電システム7単体を採用した場合の発電効率に比べて大きな発電効率を得ることが可能となる。一方、蒸留工程を繰り返す場合に比べて得られる軽質油量は減少するため、蒸留工程を繰り返す場合に比べてコンバインドサイクル発電システム6の発電量が低下するものの、分離しなかった軽質油を含む重質油を用いてコンベンショナル発電システム7にて発電を行うことができる。このため、複雑な制御や蒸留工程を実行することなく発電量の低下を補うように発電することが可能となる。よって、原油を用いた火力発電システムにおいて、発電プラントの原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を容易に実現することができる。さらに、常圧蒸留塔及び減圧蒸留塔を併用することなく、原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を実現することができるので、設備コスト及び運用・保守コストを低減することが可能となり、経済的にも優れている。第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1は、低価格で安定した電力供給を行えるという、生活インフラとして要求される重要な項目を満足することができる。
【0041】
さらに、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1によれば、常圧蒸留塔3によりガスタービン8の要求仕様に適合した軽質油が原油から過度に分離されることなく取得され、ガスタービン8へ供給される。このように、原油から過度に軽質油を分離しないため、常圧蒸留塔3より残渣油として得られる重質油が、重金属等を高い濃度で含有することがないため、ボイラ12の要求仕様を容易に満たすことができる。
【0042】
次に、本参考例に係るハイブリッド火力発電システム1の建造方法について説明する。ハイブリッド火力発電システム1の建造方法は、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7を別々に並行させて建造する。一般的に、コンバインドサイクル発電システム6の建造期間は、コンベンショナル発電システム7の建造期間よりも短い。このため、コンバインドサイクル発電システム6を建造する第1建造ステップと、コンベンショナル発電システム7を建造する第2建造ステップとを同時に開始して並行して行うことで、コンベンショナル発電システム7を先に完成させることが可能となる。ハイブリッド火力発電システム1は、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7をそれぞれ独立して動作させることができるので、コンベンショナル発電システム7の完成を待つことなくコンバインドサイクル発電システム6を動作させて電力をいち早く供給することができる。ハイブリッド火力発電システム1の建造方法によれば、ガスタービン8のシンプルサイクル運転によって一般のコンベンショナル発電システムに比べ約18ヶ月前に電力を供給可能であるとともに、コンバインドサイクル運転により一般のコンベンショナル発電システムに比べ約7ヶ月前に、電力を供給できる。このように、建造開始から電力供給までの期間を短縮できる。
【0043】
以上、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1の建造方法によれば、脱塩処理装置2、常圧蒸留塔3及びコンバインドサイクル発電システム6を建造する第1建造ステップと、コンベンショナル発電システム7を建造する第2建造ステップを並行して行うことにより、例えば第1建造ステップによる建造が完了した時点で、第2建造ステップによる建造の完了を待つことなくコンバインドサイクル発電システム6を運転させることができる。このため、ハイブリッド火力発電システム1の全体が完成する前に発電することが可能となり、コンベンショナル発電システム7のみを建造する場合に比べて早期に電力供給をすることができる。
【0044】
(第2参考例)
第2参考例に係るハイブリッド火力発電システム20は、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1とほぼ同様に構成され、造水機能を有する造水装置を備える点が相違する。このため、ハイブリッド火力発電システム20を説明するにあたり、ハイブリッド火力発電システム1と重複する点については説明を省略する。
【0045】
最初に、第2参考例に係るハイブリッド火力発電システム20の構成を説明する。図2は、第2参考例に係るハイブリッド火力発電システム20の構成概要図である。図2に示すように、ハイブリッド火力発電システム20は、ハイブリッド火力発電システム1とほぼ同様に構成されており、淡水化装置13,14及び貯水タンク15を備える点が相違する。
【0046】
淡水化装置(第1の造水装置)13は、コンバインドサイクル発電システム6の蒸気タービン9、及び、コンベンショナル発電システム7の蒸気タービン9に接続されている。淡水化装置13は、各蒸気タービン9から供給された高温の蒸気を用いて、海水又はかん水を蒸発させて蒸留水を生成する。淡水化装置13の蒸発法としては、例えば、多段フラッシュ法(MSF:Multi Stage Flash distillation)又は多重効用法(MED:Multi Effect Desalination)が用いられる。淡水化装置13は、得られた蒸留水を貯水タンク15に格納する。このように、淡水化装置13は、ハイブリッド火力発電システム20の排熱を利用して塩水から淡水を生成する。生成された水は、民生、工業、農業又は灌漑等に利用される。なお、熱交換した蒸気は水となり、排熱回収ボイラ11及びボイラ12へ再供給される。
【0047】
淡水化装置(第2の造水装置)14は、海水又はかん水を所定の膜に浸透させて淡水を生成する。淡水化装置13の膜法としては、例えば、逆浸透法(RO:Reverse Osmosis membrane)が用いられる。淡水化装置14は、生成した淡水を貯水タンク15に格納する。
【0048】
淡水化装置13,14には、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7の少なくとも一方から必要な電力が供給される。その他の構成は、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1と同様である。
【0049】
以上、第2参考例に係るハイブリッド火力発電システム20によれば、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1と同様の効果を奏するとともに、淡水化装置13により蒸気タービン9の排熱を利用して海水又はかん水から淡水を生成することができるので、総合的に熱効率を高め、原油単位当たりのエネルギー効率を一層向上させることが可能となる。
【0050】
(第1実施形態)
第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30は、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1とほぼ同様に構成され、常圧蒸留塔3が原油をナフサ、軽質油及び重質油に分離する点、ナフサ及び軽質油ごとにガスタービンを設ける点、及び、コンバインドサイクル発電システム6の余剰燃料をコンベンショナル発電システム7へ供給する点が相違する。このため、ハイブリッド火力発電システム30を説明するにあたり、ハイブリッド火力発電システム1と重複する点については説明を省略する。
【0051】
最初に、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30の構成を説明する。図3は、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30の構成概要図である。図3に示すように、ハイブリッド火力発電システム30は、ハイブリッド火力発電システム1とほぼ同様に構成されており、常圧蒸留塔3の機能、複数のコンバインド発電システム6及び供給路17を備える点が相違する。
【0052】
常圧蒸留塔3は、ハイブリッド火力発電システム1の常圧蒸留塔3と同様に構成され、原油を、ナフサ、軽質油及び重質油に分離する。例えば、30℃〜180℃の範囲でナフサを分留し、180℃〜350℃の範囲で軽質油を分留し、残渣油を重質油として分離する。分離されたナフサは、ナフサ供給系統(第1供給路)16を介してコンバインドサイクル発電システム6の第1ガスタービン80へ供給され、分離された軽質油は、軽質油供給系統(第2供給路)4を介してコンバインドサイクル発電システム6の第2ガスタービン8へ供給され、分離された重質油は、重質油供給系統(第3供給路)5を介してコンベンショナル発電システム7のボイラ12へ供給される。このように、常圧蒸留塔3のみを用いて、コンバインドサイクル発電システム及びコンベンショナル発電システムの燃料が原油から分離される。
【0053】
また、ガスタービン8,80は、供給される燃料が効率的に燃焼するように設定されている。ナフサと軽質油とを比較すると、燃焼特性や粘度が異なることから、ガスタービンの噴霧ノズルの口径や噴射圧力をナフサ用及び軽質油用に分けて予め設定されている。
【0054】
また、ハイブリッド火力発電システム30では、ナフサ供給系統16が供給路17を介して重質油供給系統5に接続されており、第1ガスタービン80で燃焼しきれなかった余剰ナフサが供給路17を通ってボイラ12へ供給される。さらに、軽質油供給系統4が供給路18を介して重質油供給系統5に接続されており、第2ガスタービン8で燃焼しきれなかった余剰軽質油が供給路18を通ってボイラ12へ供給される。
【0055】
上述のように、ハイブリッド火力発電システム30は、複数のコンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7を併用するとともに、各システムに供給される燃料は、常圧蒸留塔3のみにより蒸留される。
【0056】
次に、本実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30の作用効果について説明する。供給された原油は、脱塩処理装置2により脱塩処理され、常圧蒸留塔3によりナフサ、軽質油及び重質油に分離される。ナフサは、ナフサ供給系統16を介してコンバインドサイクル発電システム6の第1ガスタービン80へ供給され、第1ガスタービン80の燃料として利用される。これにより、第1ガスタービン80に接続された発電機10を介して電力が得られる。軽質油は、軽質油供給系統4を介してコンバインドサイクル発電システム6の第2ガスタービン8へ供給され、第2ガスタービン8の燃料として利用される。これにより、第2ガスタービン8に接続された発電機10を介して電力が得られる。また、ガスタービン8,80から排気された排気ガスは、排熱回収ボイラ11に送られ、排熱回収ボイラ11に供給される水と熱交換し、蒸気が発生する。蒸気は蒸気タービン9を駆動し、発電機10を介して電力が得られる。このように、ガスタービン8,80の排熱を利用して電力を得ることができる。一方、重質油は、重質油供給系統5を介してコンベンショナル発電システム7のボイラ12へ供給され燃料として利用される。これにより、排熱回収ボイラ11に供給される水が蒸気となる。蒸気は蒸気タービン9を駆動し、発電機10を介して電力が得られる。また、第1ガスタービン80の余剰ナフサは、供給路17を通ってボイラ12へ供給され、ボイラ12の燃料として利用され、第2ガスタービン8の余剰軽質油は、供給路18を通ってボイラ12へ供給され、ボイラ12の燃料として利用される。このように、常圧蒸留塔3によって分離されたナフサ、軽質油及び重質油は、何れも発電の燃料として採用される。このため、原油単位量当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の安定性の確保を容易に実現することができる。
【0057】
以上、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30によれば、常圧蒸留塔3のみを用いて蒸留工程を行うので、原油からナフサ及び軽質油を分離させる工程を簡易な構成で実現しつつ、未燃炭化水素等の不純物の混入を容易に回避することができる。さらに、常圧蒸留塔3のみを用いて蒸留工程を行うため、重質油に含まれる不純物の濃度をボイラにて容易に燃焼できる範囲に収めることが可能となる。このため、コンバインドサイクル発電システム6とコンベンショナル発電システム7とを両者の運転効率を著しく損なうことなく併用することができるので、安定した電力供給を行うことができる。さらに、コンバインドサイクル発電システム6とコンベンショナル発電システム7とを併用することで、原油から分離されるナフサ及び軽質油と重質油との両方を用いて発電することが可能となる。ナフサ及び軽質油を用いてそれぞれ異なるガスタービン8,80にて発電を行うことができるので、コンベンショナル発電システム7単体を採用した場合の発電効率に比べて大きな発電効率を得ることが可能となる。一方、蒸留工程を繰り返す場合に比べて得られる軽質油量は減少するため、蒸留工程を繰り返す場合に比べてコンバインドサイクル発電システム6の発電量が低下するものの、分離しなかったナフサ及び軽質油を含む重質油を用いてコンベンショナル発電システム7にて発電を行うことができる。このため、複雑な制御や蒸留工程を実行することなく発電量の低下を補うように発電することが可能となる。よって、原油を用いた火力発電システムにおいて、発電プラントの原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を容易に実現することができる。さらに、常圧蒸留塔及び減圧蒸留塔を併用することなく、原油単位当たりのエネルギー効率の向上及び電力供給の早期の安定性確保を実現することができるので、設備コスト及び運用・保守コストを低減することが可能となり、経済的にも優れている。
【0058】
また、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30によれば、常圧蒸留塔3を用いて、ガスタービン8,80の燃料がナフサと軽質油とに分離され、それぞれ異なるガスタービン8,80へ供給されるため、ガスタービン8,80にナフサと軽質油とが混合された燃料を供給することを回避することができる。このため、混合比や均一性にばらつきのある燃料に合せてガスタービンを設定することなく、それぞれ供給されるナフサ及び軽質油に合わせて効率的な運転ができるように個々のガスタービン8,80を容易に設定することができるとともに、混合された燃料の不均一性に起因する動作不安定を回避することが可能となる。また、余剰ナフサ又は余剰軽質油がボイラ12へ供給されることで、コンバインドサイクル発電システムの余剰燃料をコンベンショナル発電システム7の発電に利用することが可能となる。よって、コンバインドサイクル発電システム6とコンベンショナル発電システム7との両者を用いて効率良く発電することができる。このように、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30は、低価格で安定した電力供給を行えるという、生活インフラとして要求される重要な項目を満足することができる。
【0059】
また、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30によれば、コンバインドサイクル発電システム6がガスタービン8,80ごとに独立する。このため、例えば一方のコンバインドサイクル発電システム6を稼働させた状態で他方のコンバインドサイクル発電システム6を停止することができるのでメンテナンスを容易に行うことができるとともに、一方のコンバインドサイクル発電システム6が障害により停止したりした場合であっても他方のコンバインドサイクル発電システム6に影響がないため、連続して安定稼働をすることが可能となる。
【0060】
さらに、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30によれば、常圧蒸留塔3によりガスタービン8,80の要求仕様に適合したナフサ及び軽質油が原油から過度に分離されることなく取得され、ガスタービン8,80へ供給される。このように、原油から過度にナフサ及び軽質油を分離しないため、常圧蒸留塔3より残渣油として得られる重質油が、重金属等を高い濃度で含有することがないため、ボイラ12の要求仕様を容易に満たすことができる。
【0061】
次に、本実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30の建造方法について説明する。ハイブリッド火力発電システム30の建造方法は、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1とほぼ同様であり、第1建設ステップ及び第2建設ステップの終了後に供給路17の配置を行う第3建造ステップを有する点のみが相違する。このため、第1参考例に係るハイブリッド火力発電システム1と同様に、コンベンショナル発電システム7の完成を待つことなくコンバインドサイクル発電システム6を動作させて電力をいち早く供給することができる。そして、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7が完成すると、コンバインドサイクル発電システム6の余剰ナフサをコンベンショナル発電システム7へ供給する供給路17が設けられ、原油すべてを用いて効率的な発電を行うというアプローチがより実現されることとなる。
【0062】
以上、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30の建造方法によれば、脱塩処理装置2、常圧蒸留塔3及びコンバインドサイクル発電システム6を建造する第1建造ステップと、コンベンショナル発電システム7を建造する第2建造ステップを並行して行うことにより、例えば第1建造ステップによる建造が完了した時点で、第2建造ステップによる建造の完了を待つことなくコンバインドサイクル発電システム6を運転させることができる。このため、ハイブリッド火力発電システム30の全体が完成する前に発電することが可能となり、コンベンショナル発電システム7のみを建造する場合に比べて早期に電力供給をすることができる。さらに、コンバインドサイクル発電システム6の燃料をコンベンショナル発電システム7へ供給する供給路17を設けることで、コンバインドサイクル発電システム6及びコンベンショナル発電システム7の両者を用いて効率よく運転させることが可能となる。
【0063】
(第2実施形態)
第2実施形態に係るハイブリッド火力発電システム40は、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30とほぼ同様に構成され、造水機能を有する造水装置を備える点が相違する。このため、ハイブリッド火力発電システム40を説明するにあたり、ハイブリッド火力発電システム30と重複する点については説明を省略する。
【0064】
最初に、第2実施形態に係るハイブリッド火力発電システム40の構成を説明する。図4は、第2実施形態に係るハイブリッド火力発電システム40の構成概要図である。図4に示すように、ハイブリッド火力発電システム40は、ハイブリッド火力発電システム30とほぼ同様に構成されており、淡水化装置13,14及び貯水タンク15を備える点が相違する。なお、淡水化装置13,14及び貯水タンク15の構成については、第2参考例と同様であるので説明を省略する。
【0065】
以上、第2実施形態に係るハイブリッド火力発電システム40によれば、第1実施形態に係るハイブリッド火力発電システム30と同様の効果を奏するとともに、淡水化装置13により蒸気タービン9の排熱を利用して海水又はかん水から淡水を生成することができるので、総合的に熱効率を高め、原油単位当たりのエネルギー効率を一層向上させることが可能となる。
【0066】
上述したように、本発明の好適な実施形態について具体的に説明したが、上記各実施形態は本発明に係るハイブリッド火力発電システムの一例を示すものであり、本発明に係るハイブリッド火力発電システムは、上記各実施形態に係るハイブリッド火力発電システム1、20、30、40に限られるものではない。
【0067】
例えば、上記各実施形態では、常圧蒸留塔3で分離した軽質油に対して何ら処理を加えることなくコンバインドサイクル発電システム6が利用する例を説明したが、常圧蒸留塔3で分離した軽質油に対して蒸留以外の工程、例えば水素化処理等により不純物を取り除く工程を実行した後に、コンバインドサイクル発電システム6へ軽質油を供給してもよい。
【0068】
また、第2参考例、第2実施形態では、淡水化装置13がコンバインドサイクル発電システム6の蒸気タービン9、及び、コンベンショナル発電システム7の蒸気タービン9に接続されている例を説明したが、何れか一方に接続されていてもよい。
【0069】
また、第2参考例、第2実施形態では、淡水化装置13の他に淡水化装置14を備える例を説明したが、淡水化装置14は備えなくてもよいし、また、淡水化装置14のみ備える構成としてもよい。
【0070】
また、第2参考例、第2実施形態で説明した淡水化装置13は、第1参考例、第1実施形態で説明した第1建造ステップ及び第2建造ステップと同様に並行して建造してもよい。
【0071】
また、第1実施形態及び第2実施形態では、コンバインドサイクル発電システム6を複数備え、ガスタービン8,80にそれぞれ異なる蒸気タービン(第1蒸気タービン、第2蒸気タービン)9が接続されるシステムを説明したが、ガスタービン8,80に接続される排熱回収ボイラ11、蒸気タービン9及び発電機10を共通化して1つのコンバインドサイクル発電システムとして構成してもよい。このように構成することで、建造コストを低減することができる。
【0072】
さらに、第1実施形態及び第2実施形態では、余剰ナフサ及び余剰軽質油がボイラ12へ供給される例を説明したが、供給路17,18のうち何れか一方のみ備え、余剰ナフサ及び余剰軽質油の何れか一方のみをボイラ12へ供給する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,20,30,40…ハイブリッド火力発電システム、2…脱塩処理装置、3…常圧蒸留塔、4…軽質油供給系統、5…重質油供給系統、6…コンバインドサイクル発電システム、7…コンベンショナル発電システム、8,80…ガスタービン、9…蒸気タービン、10…発電機、11…排熱回収ボイラ、12…ボイラ、13,14…淡水化装置、15…貯水タンク、16…ナフサ供給系統、17,18…供給路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原油を燃料とするハイブリッド火力発電システムであって、
原油を脱塩する脱塩処理装置と、
前記脱塩処理装置により脱塩された原油をナフサ、軽質油及び重質油に分離する常圧蒸留塔と、
前記常圧蒸留塔により分離されたナフサを燃料として第1ガスタービンを駆動させて発電し、前記常圧蒸留塔により分離された軽質油を燃料として第2ガスタービンを駆動させて発電し、前記第1ガスタービン及び前記第2ガスタービンの排熱を利用して生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンバインドサイクル発電システムと、
前記常圧蒸留塔により分離された重質油をボイラにて燃焼させ、前記ボイラにて生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンベンショナル発電システムと、
を備え、
前記常圧蒸留塔のみを用いて前記コンバインドサイクル発電システム及び前記コンベンショナル発電システムの燃料を原油から分離し、
前記第1ガスタービンの余剰ナフサ又は前記第2ガスタービンの余剰軽質油を、前記コンベンショナル発電システムの前記ボイラへ供給すること、
を特徴とするハイブリッド火力発電システム。
【請求項2】
前記コンバインドサイクル発電システムは、前記蒸気タービンとして、前記第1ガスタービンの排熱を利用する第1蒸気タービン、及び、前記第2ガスタービンの排熱を利用する第2蒸気タービンを有する請求項1に記載のハイブリッド火力発電システム。
【請求項3】
前記常圧蒸留塔は、分留されたナフサを前記第1ガスタービンへ供給する第1供給路、分留された軽質油を前記第2ガスタービンへ供給する第2供給路、及び分留された重質油を前記ボイラへ供給する第3供給路に接続されており、
前記第1供給路又は前記第2供給路が前記第3供給路に接続されることで、前記余剰ナフサ又は前記余剰軽質油を前記ボイラへ供給可能に構成される請求項2に記載のハイブリッド火力発電システム。
【請求項4】
前記常圧蒸留塔は、前記第1ガスタービン及び前記第2ガスタービンの要求仕様に基づいて、前記第1ガスタービン及び前記第2ガスタービンの燃料として許容するナフサ及び軽質油を原油からそれぞれ分離する請求項1〜3の何れか一項に記載のハイブリッド火力発電システム。
【請求項5】
前記コンバインドサイクル発電システムが有する前記蒸気タービン、及び、前記コンベンショナル発電システムが有する前記蒸気タービンの少なくとも一方から出力された蒸気を用いて塩水淡水化を行う第1の造水装置をさらに備える請求項1〜4の何れか一項に記載のハイブリッド火力発電システム。
【請求項6】
前記コンバインドサイクル発電システム及び前記コンベンショナル発電システムの少なくとも一方から出力された電力を用いて塩水淡水化を行う第2の造水装置をさらに備える請求項1〜4の何れか一項に記載のハイブリッド火力発電システム。
【請求項7】
請求項5に記載の前記第1の造水装置及び請求項6に記載の前記第2の造水装置をさらに備える請求項1〜4の何れか一項のハイブリッド火力発電システム。
【請求項8】
原油を燃料とするハイブリッド火力発電システムの建造方法であって、
原油を脱塩する脱塩処理装置、前記脱塩処理装置により脱塩された原油をナフサ、軽質油及び重質油に分離する常圧蒸留塔、及び、前記常圧蒸留塔により分離されたナフサを燃料として第1ガスタービンを駆動させ発電を行い、前記常圧蒸留塔により分離された軽質油を燃料として第2ガスタービンを駆動させ発電を行い、第1ガスタービン及び第2ガスタービンの排熱を利用して生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンバインドサイクル発電システムを建造する第1建造ステップと、
前記常圧蒸留塔により分離された重質油を燃料としてボイラを駆動させ、前記ボイラにて生成された蒸気により蒸気タービンを駆動させて発電を行うコンベンショナル発電システムを建造する第2建造ステップと、
前記第1建造ステップ及び前記第2建造ステップの終了後に、前記第1ガスタービンの余剰ナフサ又は前記第2ガスタービンの余剰軽質油を、前記コンベンショナル発電システムの前記ボイラへ供給する供給路を配置する第3建造ステップと、
を備え、
前記第1建造ステップ及び前記第2建造ステップを並行して行うこと、
を特徴とするハイブリッド火力発電システムの建造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−7602(P2012−7602A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196086(P2010−196086)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【特許番号】特許第4634538号(P4634538)
【特許公報発行日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002129)住友商事株式会社 (42)
【Fターム(参考)】