ハニカム構造体及びその製造方法
【課題】フィルタ外周部におけるセルの目詰まりを抑制することができるハニカム構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりを抑制することができるハニカム構造体21は、四角断面のフィルタコア部21Aと、フィルタコア部21Aの外側面に配置されるフィルタ外周部21Bとを有し、円形断面を有する。フィルタコア部21Aは第1のハニカム部材22Aからなり、フィルタ外周部21Bは第2のハニカム部材22Bを備える。ハニカム構造体21においては、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材の代わりに、充填層35が充填されている。
【解決手段】フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりを抑制することができるハニカム構造体21は、四角断面のフィルタコア部21Aと、フィルタコア部21Aの外側面に配置されるフィルタ外周部21Bとを有し、円形断面を有する。フィルタコア部21Aは第1のハニカム部材22Aからなり、フィルタ外周部21Bは第2のハニカム部材22Bを備える。ハニカム構造体21においては、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材の代わりに、充填層35が充填されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関、ボイラー等の排気ガス中に含まれる粒子状物質等を捕集及び除去するために用いられるハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、環境への影響を考慮し、内燃機関やボイラー等の燃焼装置の排気ガスに含まれる粒子状物質を排気ガス中から除去する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される黒鉛微粒子等の粒子状物質(以下PMという)の除去に関する規制は欧米、日本国内ともに強化されつつある。PM等を除去するための捕集フィルタとして、DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるハニカム構造体が使用されている。ハニカム構造体は、燃焼装置の排気通路に設けられたケーシング内に収容されている。ハニカム構造体は、その長手方向に延びるとともに隔壁により区画された多数のセルを有している。隣接する一対のセルにおいて、一方のセルの開口端と、その開口端と反対側にある他方のセルの開口端が封止体で封止される。複数の封止体はハニカム構造体の各端面(流入口側端面及び流出口側端面)に市松模様状に配置される。排気ガスは、ハニカム構造体の流入口側端面において、開放されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って、流出口側端面において開放されている隣のセルから排出される。例えばディーゼルエンジンから排出されるPMは濾過フィルタとして機能する隔壁に捕集され隔壁上に堆積する。隔壁に堆積したPMは、バーナやヒータ等の加熱手段、又は排気ガスの熱により、燃焼されて除去される。本明細書では、PMを燃焼して除去することを、単に「PMの除去」または「ハニカム構造体の再生」ともいう。
【0003】
種々のハニカム構造体が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1に示すハニカム構造体は、断面円形状をなし、その外壁の所定箇所に補強部を有している。この補強部は、ハニカム構造体の外壁において強度の低い所定箇所に設けられる。その結果、機械的強度に優れるとともに圧力損失の少ないハニカム構造体が得られる。
【0004】
特許文献2に示すハニカム構造体は、その軸線に平行な面で分割された複数個のハニカム部材より構成されている。このハニカム構造体は、8本の角柱状のハニカム部材と4本の直角二等辺三角形断面を有するハニカム部材とより形成され、その断面は八角形である。ハニカム部材間には弾性質素材からなるシール材が介在されており、ハニカム部材が一体に接着されている。
【0005】
特許文献3は円形断面のハニカム構造体を開示している。このハニカム構造体は、角柱状をなす複数のハニカム部材をシール材を用いて結束してハニカム部材の束を形成し、ハニカム部材の束の一部を切削加工してその外形を整えて得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−260322号公報
【特許文献2】特許第3121497号
【特許文献3】特開2005−154202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3に示す円形断面のハニカム構造体では、ハニカム構造体の外周部を構成するハニカム部材の断面は、切削加工により直角二等辺三角形に形成される。そのため、ハニカム構造体の直径や、結束させるハニカム部材の数に応じて、ハニカム構造体の外周部を構成するいくつかのハニカム部材の断面積が極度に小さくなることがある。
【0008】
従来のハニカム構造体においては、その外周部からケーシング側に熱が逃げやすい。そのため、中心部に比べて外周部の温度が低くなる傾向がある。特にハニカム部材間にシール材が介在するハニカム構造体では、シール材により熱の伝導が弱められ、外周部の温度
が低くなりやすい。ハニカム構造体の外周部においては、PMを燃焼及び除去するのに十分な高温を得にくく、ハニカム構造体の外周部を構成するハニカム部材の隔壁には、PMが燃焼されずに残りやすい。PMの燃え残りを生じさせる温度低下は、外周部に位置する
ハニカム部材のなかでも断面積が極度に小さいハニカム部材において顕著なものとなる。その結果、断面積が極度に小さいハニカム部材では、セルがPMによって目詰まりしやすい。セルを目詰まらせたPMは、時に自己着火し、局部的な熱衝撃を生じ、ハニカム構造体(特に、ハニカム構造体の外周部)に亀裂を生じさせる要因となる。
【0009】
この発明の目的は、フィルタ外周部におけるセルの目詰まりを抑制することができるハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する複数のハニカム部材を、接合材により結束させて集合体を形成する集合体形成工程と、前記集合体の外側面における所定箇所に充填層を設ける充填層形成工程と、前記集合体の外側面に塗布層を塗布する塗布層形成工程とを経て製造される。
【0011】
一例では、前記集合体の外側面を切削加工する切削工程が行われる。
一例では、前記集合体形成工程、前記充填層形成工程、前記切削工程、及び前記塗布層形成工程の順で行われる。
【0012】
別の例では、前記集合体形成工程と前記切削工程とを行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とが行われる。
更に別の例では、前記複数のハニカム部材の各々が予め所定形状に形成されている。この場合、前記集合体形成工程を行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とが行われる。
【0013】
前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを同時に行うことができる。
前記集合体は、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記
複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部とからなり、前記製造方法は、前記集合体形成工程に先だって、前記複数のハニカム部材のいくつかを切削加工して、前記複数の第2のハニカム部材を形成する工程を更に備え、前記集合体形成工程は、前記フィルタコア部を形成する工程と、前記フィルタコア部の周囲に前記フィルタ外周部を形成する工程とを含む。
【0014】
ハニカム構造体は、接合材により結束された複数のハニカム部材であって、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する前記複数のハニカム部材と、塗布層からなる外側面とを備えるハニカム構造体であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部と、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面と、前記塗布層との間に設けられた充填層とを備え、前記ハニカム構造体は、前記軸線に平行に延びる外面と、前記外面において、前記ハニカム構造体の中心に隣接する第1のハニカム部材の一外面に沿った延長線上にある0度位置と、前記0度位置から45度、135度、225度、及び315度だけそれぞれ離間した45度位置、135度位置、225度位置、及び315度位置とを有し、前記複数の充填層は、前記45度位置、前記135度位置、前記225度位置、及び前記315度位置に配置されているハニカム構造体を提供する。
【0015】
前記充填層は、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面に塗布され、乾燥、硬化を経て、切削により形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルタ外周部におけるセルの目詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい実施形態に従うハニカム構造体を備えた排気ガス浄化装置の概略図。
【図2】(a)は本発明の好ましい実施形態に従うハニカム構造体の垂直断面図、(b)は図2(a)のハニカム構造体の部分拡大図、(c)は図2(a)のハニカム構造体のフィルタコア部の断面図、(d)は図2(a)のハニカム構造体のフィルタ外周部の断面図。
【図3】ハニカム部材の斜視図。
【図4】図1のケーシングの内部の断面図。
【図5】ハニカム部材の集合体の垂直断面図。
【図6】図5のハニカム部材の集合体の切削加工を説明する図。
【図7】第1の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図8】第2の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図9】第3の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図10】第4の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図11】排気ガスの浄化試験における試験条件を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うハニカム構造体を説明する。好ましい実施形態では、ハニカム構造体は排気ガスの熱のみにより捕集されたPMが除去される自然着火方式の車両排気ガス浄化装置に使用される。
【0019】
図1に示すように、排気ガス浄化装置10は、例えば、ディーゼルエンジン11から排出される排気ガスを浄化するための装置である。ディーゼルエンジン11は、図示しない複数の気筒を備えている。複数の気筒には、金属材料からなる排気マニホールド12の複数の分岐管13がそれぞれ連結されている。
【0020】
排気マニホールド12の下流側には、金属材料からなる第1排気管15及び第2排気管16が配設されている。第1排気管15の上流端は、マニホールド12に連結されている。第1排気管15と第2排気管16との間には、金属材料からなる筒状のケーシング18が配設されている。ケーシング18の上流端は第1排気管15の下流端に連結され、ケーシング18の下流端は第2排気管16の上流端に連結されている。第1排気管15、ケーシング18及び第2排気管16の内部は互いに連通し、その中を排気ガスが流れる。
【0021】
ケーシング18の中央部は排気管15,16よりも大径であり、ケーシング18の内部領域は、排気管15,16の内部領域に比べて広い。ケーシング18にハニカム構造体21が収容されている。ハニカム構造体21の外周面とケーシング18の内周面との間には、ハニカム構造体21とは別体の断熱材19が配設されている。ケーシング18の内部においてハニカム構造体21より上流側には、プレフィルタ41が収容されている。プレフィルタ41の内部には従来公知の酸化触媒が担持されており、プレフィルタ41の内部において排気ガスが酸化処理される。このときの酸化熱がハニカム構造体21の内部に伝導され、ハニカム構造体21の内部におけるPMの除去に寄与する。
【0022】
次に、本実施形態のハニカム構造体21について説明する。本明細書中の文言「垂直断面」は、ハニカム構造体21の軸線Qに直交する断面を意味する。そして、その断面の形状を「垂直断面形状」といい、その断面の面積を「垂直断面積」という。
【0023】
図2(a)に示すように、ハニカム構造体21は、四角柱状をなす複数個(本実施形態では16個)のハニカム部材22を接合材24により結束してハニカム部材の束または集合体を形成しその集合体の外側面を所定形状に切削加工することで得られる。接合材24は、無機バインダ、有機バインダ、無機繊維等を含有することができる。
【0024】
ハニカム構造体21は、断面四角形状をなすフィルタコア部21Aと、フィルタコア部21Aの外側に配置されるフィルタ外周部21Bとを有し、断面円形状(直径:凡そ143mm、垂直断面積:凡そ160.6cm2)に形成されている。以下、フィルタコア部21A、フィルタ外周部21B、及びそれらを構成するハニカム部材22について説明する。
【0025】
フィルタコア部21Aは、ハニカム構造体21の中心部に配置されている。図2(c)に示すように、フィルタコア部21Aは、4個のハニカム部材22(第1ハニカム部材22A)より構成されている。図3に示すように、各第1ハニカム部材22Aは、外壁26と、外壁26の内側に配置された隔壁27と、正方形の垂直断面を有する。本実施形態では、各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積は、11.8cm2である。
【0026】
各第1ハニカム部材22Aの外壁26及び隔壁27は、主として多孔質セラミックから形成されている。このセラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミックや、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミックや、アルミナ、ジルコニア、コージュライト、ムライト、シリカ、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック、及び金属珪素−炭化珪素複合材等が挙げられる。
【0027】
隔壁27の厚みは0.33mm以下であることが好ましい。隔壁27の厚みが0.33mm以下である場合には、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMを除去する際に隔壁27温度が上昇しやすい。隔壁27の厚みを0.1mm以上とすることで、ハニカム構造体21の機械的強度を充分に確保することができる。
【0028】
本実施形態の隔壁27には、白金族元素(例えばPt等)や、その他の金属元素及びその酸化物等からなる酸化触媒が担持されていてもよい。この場合、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMの除去が、そうした酸化触媒の触媒作用により促進される。
【0029】
ハニカム部材22(22A)は、隔壁27により区画されてなる複数のセル28を有している。図4に示すように、各セル28は、一方の端面(上流側端面)29Aから他方の端面(下流側端面)29Bにかけて軸線Qに沿って延び、流体としての排気ガスの流路として機能する。各セル28は端面29Aと端面29Bに開口を有する。各セル28の1つの開口は、例えば多孔質炭化珪素焼結体よりなる封止体30により封止されている。複数の封止体30は各端面29A、29Bに市松模様状に配置される。すなわち、約半数のセル28は上流側端面29Aにおいて開口し、残りの約半数のセル28は下流側端面29Bにおいて開口している。
【0030】
ハニカム部材22のセル密度は、200〜300セル/平方インチであり、好ましくは200〜250セル/平方インチである。本明細書において文言「セル密度」は、単位断面積当りのセルの数を意味する。ハニカム部材22のセル密度が200セル/平方インチ以上の場合には、排気ガス中のPMを十分に捕集し得る、隔壁27の表面積を確保することができる。一方、セル密度が300セル/平方インチ以下の場合には、排気ガス中のPMを十分に捕集し得る、隔壁27の表面積と、ハニカム部材22の耐熱衝撃性とを確保することができ、加えて、セルの内部におけるPMの目詰まり(ブリッジ)を招きにくい。さらに、セルが過剰に細かくなることがないため、圧力損失の増大、内燃機関の出力低下、及び燃費の悪化を引き起こさない。
【0031】
図2(d)に示すように、フィルタ外周部21Bは、12個のハニカム部材22(第2ハニカム部材22B)より構成されている。このフィルタ外周部21Bの外側面には、平坦部32が90度間隔で設けられている。各平坦部32は、フィルタ外周部21Bの外側面において軸線Qに沿って延びている。平坦部32は、16個の第2ハニカム部材22Bを結束させて直径が凡そ143mmであるハニカム構造体21を製造する際に形成される。
【0032】
各第2ハニカム部材22Bの垂直断面は異形状である。本明細書中の文言「異形状」は、例えば、四角柱状のハニカム部材に対して所定の切削加工等が施された後のハニカム部材の断面形状を示す。特に、「異形状」は、円形、楕円形、三角形、多角形等のように外形が直線及び曲線のいずれか一方のみからなる形状を意味せず、直線及び曲線の両方からなる形状を意味する。異形状断面の例には、2つの直線と1つの円弧によって区画された断面、3つの直線と1つの円弧によって区画された断面、4つの直線と1つの円弧によって区画された断面が含まれる。「直線」又は「曲線」について説明する。ハニカム部材の集合体を切削加工するときに、その集合体に含まれる一部の隔壁と一部の封止体が除去される。この除去の結果、集合体の外面が凹凸形状となる。集合体の外面に露出した凸部を結ぶ仮想線のことを、本明細書では「直線」又は「曲線」と呼ぶ。また、押出成形で作製した複数のハニカム部材22Bを結束した集合体には、集合体の側面(周面)に隔壁が存在する。この場合、周面の隔壁部分を本明細書では「直線」又は「曲線」と呼ぶ。各第2ハニカム部材22Bの垂直断面形状以外の構成(例えば、材質、隔壁27の厚み、セル密度等)は第1ハニカム部材22Aのものと同一である。フィルタ外周部21Bを構成する複数の第2ハニカム部材22Bの垂直断面は互いに同じでもよく、互いに異なっていてもよい。フィルタ外周部21Bを構成する複数の第2ハニカム部材22Bのうち少なくとも1つは、フィルタコア部21Aを構成する第1ハニカム部材22Aと同じ構成のハニカム部材すなわち四角形の垂直断面を有するハニカム部材であってもよい。従って、フィルタ外周部21Bは、異形状の垂直断面を有するハニカム部材と、四角形の垂直断面を有するハニカム部材とから構成されてもよい。フィルタ外周部21Bを構成する複数のハニカム部材の大部分が異形状であることが好ましい。 各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積をS0で表し、フィルタ外周部21Bを構成する任意の第2ハニカム部材22Bの垂直断面積をS2で表したとき、断面積S0に対する断面積S2の割合は4%以上である。この割合が4%以上の場合、すなわち垂直断面積が極度に小さい第2ハニカム部材22Bがフィルタ外周部21Bに存在しない場合、全てのハニカム部材22においてPMを十分に除去することができ、燃え残ったPMによるセル28の目詰まりを防止することができる。一方、この割合が4%未満の場合、すなわち垂直断面積が極度に小さい第2ハニカム部材22Bがフィルタ外周部21Bに存在する場合、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Bに捕集されたPMは十分に除去することが困難であり、燃え残ったPMにより、セル28が目詰まりしやすい。
【0033】
フィルタ外周部21Bの外側面には、複数の充填層35が配置されている。より詳しくは、各充填層35は、フィルタ外周部21Bの平坦部32と塗布層34との間の隙間に充填されている。図2(a)の例では、充填層35は、ハニカム構造体21の外側面であって、その中心Xの回りの等角度間隔位置(例えば、0度、90度、180度、270度の位置)に設けられている。0度位置は、中心Xに隣接する第1ハニカム部材22Aの外壁26のうち、方向P(図2(c)参照)と平行な一外壁26に沿った延長線上にある、ハニカム構造体21の外側面である。90度位置、180度位置及び270度位置は、ハニカム構造体21の外側面において、0度位置からそれぞれ90度、180度、及び270度だけ離間した位置である。ここで、塗布層34は、フィルタ外周部21Bの外側面に塗布された略同じ厚みを有する層状の部分を指す。充填層35はフィルタ外周部21Bの外側面と、塗布層34との間に充填された部分を指す。
【0034】
図2(b)に示すフィルタ外周部21Bは切削加工されたものである。この場合、フィルタ外周部21Bの外側面の一部に凹凸が生じ、塗布層34はその凹凸を覆うように塗布される。従って、フィルタ外周部21Bの外側面の凹部は塗布層34の材料によって埋められる。押出形成により形成された異形状の第2のハニカム部材22Bを使用したフィルタ外周部21Bの場合、凹凸の無い側壁がフィルタ外周部21Bの全外側面を提供する。この場合、塗布層34はその側壁を覆うように塗布される。
【0035】
充填層35の垂直断面積をS1で表し、フィルタコア部21Aを構成する各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積をS0で表したとき、面積S0に対する面積S1の割合は4%未満である。この割合が4%以上である場合には、排気ガスによる加熱に際して温度ムラが生じやすくなるとともに、内部の熱応力が過剰なものとなり、充填層35に亀裂が生じたり、充填層35が剥離したりするおそれがある。このため、この割合が4%以上の充填層35がある場合には、その充填層35は第2ハニカム部材22Bに置き換えられるのが好ましい。上述したように、第2ハニカム部材22Bの垂直断面積S2が、フィルタコア部21Aを構成する第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上であれば、PMを除去するのに十分な熱量を確保することができるからである。充填層35は、ハニカム構造体21の外側面の一部において、端面29A,29B間に亘り、軸線Qに沿って配置されている(図4参照)。
【0036】
充填層35は、無機粒子、及び無機繊維を含有する。無機粒子は、充填層35に良好な熱伝導性を付与する機能を有する。無機粒子としては、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ(例えば、溶融アルミナ、焼結アルミナ)、ムライト、ジルコニア、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、チタニア、シリカ(例えば、溶融シリカ)及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるセラミックス、鉄−クロム−アルミニウム系金属、ニッケル系金属、金属珪素−炭化珪素複合材等が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0037】
無機繊維は、充填層35の耐熱性及び強度を向上させる機能を有する。この種の無機繊維としては、シリカ−アルミナセラミックファイバー、ムライトファイバー、シリカファイバー、アルミナファイバー、ジルコニアファイバー等が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。本実施形態では、この無機繊維の性質を特定することで、充填層35の耐熱性及び強度の向上を図っている。以下、本実施形態の無機繊維の性質について説明する。
【0038】
本実施形態の無機繊維の平均繊維径は、1〜40μmが好ましく、6〜40μmがより好ましい。無機繊維の平均繊維長は、10〜200μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。本明細書中の文言「平均繊維径」及び「平均繊維長」は、走査型電子顕微鏡で撮影した充填層35の断面写真からランダムに選択した複数本の無機繊維の繊維径の平均値及び繊維長の平均値である。
【0039】
無機繊維の平均繊維径が1μm未満、及び平均繊維長が10μm未満の場合には、充填層35の十分な耐熱性及び強度を確保することが困難となる。従って、排気ガスによる加熱に起因して、充填層35に亀裂が生じたり、充填層35が容易に剥離したりする可能性がある。一方、無機繊維の平均繊維径が40μmを超える場合、及び平均繊維長が200μmを超える場合には、充填層35の耐熱性及び強度についてそれ以上の効果はみられず、経済的でない。
【0040】
無機繊維のタップ密度は、55〜65g/cm3が好ましく、55〜60g/cm3がより好ましい。本明細書中の文言「タップ密度」は、一定条件で容器をタッピングして得られる、無機繊維の嵩密度を示す。このタップ密度が大きい程、無機繊維が緻密に充填されていることを意味する。無機繊維のタップ密度が55g/cm3未満の場合には、充填層35の耐熱性や強度を十分に確保することが困難となる。一方、無機繊維のタップ密度が65g/cm3を超える場合には、繊維の配向性が高くなり過ぎ、ハニカム部材22に対する充填層35の接着性が低下する可能性がある。
【0041】
上記無機繊維に代えて、或いは無機繊維とともに、無機中空体(無機バルーン)を、充填層35に含有させてもよい。この種の無機中空体としては、ガラスマイクロバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等が挙げられる。無機中空体の平均粒径は特に限定されるものではない。
【0042】
充填層35には、他の成分として無機バインダ、有機バインダ等が含有されてもよい。この種の無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。有機バインダとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース等の親水性有機高分子が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0043】
塗布層34は、ケーシング18内におけるハニカム構造体21の位置ずれを抑制する機能を有する。塗布層34の組成は充填層35の組成と同一であってもよい。塗布層34は、フィルタ外周部21Bの全外側面に亘って設けられている。
【0044】
充填層35を形成した後に塗布層34を形成してもよい。充填層35と塗布層34を同時に形成してもよい。
ハニカム構造体の製造方法を説明する。
【0045】
まず、複数のハニカム部材22を用意する。各ハニカム部材22は、外壁26と、流体の流路として機能する複数のセル28を区画する隔壁27とを有する。複数のハニカム部材22を接合材24により結束して集合体Sを形成する(集合体形成工程)。必要に応じて、集合体Sの外側面を切削加工して、集合体Sの形状を整えてもよい(切削工程)。押出加工で製造されたハニカム部材22のように、所望の異形状を有するハニカム部材22を使用する場合、集合体Sの切削加工を省略してもよい。集合体Sの外側面の所定箇所に充填層35を設ける(充填層形成工程)。集合体Sの外側面に塗布層34を塗布する(塗布層形成工程)。こうして、本発明のハニカム構造体が製造される。
【0046】
集合体形成工程、充填層形成工程、切削工程、及び塗布層形成工程の順で行われる第1の製造例を以下に説明する。例えばプランジャ型の押出機や二軸スクリュー型の連続押出機等による押出成形により中間成形体を成形し、その中間成形体を焼成してハニカム部材22を得る。16個のハニカム部材22を接合材24により結束して集合体Sを形成する(図5参照)。集合体Sの外側面における所定箇所(集合体Sの各側面の中央部)に充填層35を設ける。次に、集合体Sの外側面をダイヤモンドツール等により切削加工し、集合体Sの断面を円形状に整える。集合体Sの全外側面に塗布層34を塗布する。これにより、図2(a)のハニカム構造体21が得られる。
【0047】
切削工程により、垂直断面が円形のハニカム構造体21を製造する場合には、フィルタ外周部21Bを構成するハニカム部材22Bが異形状に形成される。その際、結束させるハニカム部材22の個数や、ハニカム構造体21の直径の大きさ等に起因して、フィルタ外周部21Bを構成する所定のハニカム部材(22C)の垂直断面積が、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して極度に小さくなることがある(図6参照)。例えば、図6に示すように、集合体Sの各側面の中央部にハニカム部材22を1個ずつ結束させた集合体から、本実施形態と同様の直径(143mm)を有するハニカム構造体21を製造する場合等である。この場合、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%未満となる垂直断面積を有するハニカム部材22Cが得られる。このように垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Cの内部においては、隔壁27に捕集されたPMが燃焼されにくくなる。そして、このようなハニカム構造体21をそのまま放置した場合には、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Cの内部にPMが経時的に堆積し、ハニカム部材22Cのセル28がPMによって目詰まりする。その結果、排気ガスの浄化効率の低下を招くだけでなく、PMの自己着火による熱衝撃に伴ってハニカム構造体21(特に、ハニカム構造体21の外周部)に亀裂が生じる可能性がある。
【0048】
そこで、セル28の目詰まりを起こしやすい、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Cを省略し、そうしたハニカム部材22Cの代わりに充填層35を充填している(図2(b)参照)。これにより、セル28の目詰まりが著しい部材(垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22C)が排除される。従って、本実施形態のハニカム構造体21の外周部においては、垂直断面積がある程度確保された第2ハニカム部材22Bのみで構成される。具体的には、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上の垂直断面積を有する第2ハニカム部材22Bのみで構成される。これにより、フィルタ外周部21Bを構成する各ハニカム部材22Bにおいては、排気ガスによる加熱に際し、PMを十分に除去することができる程度の熱量が保持されるようになる。従って、本実施形態のハニカム構造体21においては、フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりが抑制される。ひいては、ハニカム構造体21の外周部における亀裂の発生が抑制される。
【0049】
そして、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材の形成箇所に、軸線Qに沿って充填層35を充填することで、フィルタ外周部21Bと塗布層34との間に隙間が生じることがなく、排気ガスの侵入が防止される。また、この充填層35は無機粒子を含有することから、良好な熱伝導性が付与されている。このため、充填層35は、フィルタ外周部21Bにおける熱伝導の向上にも寄与している。
【0050】
ここで、充填層35においては、その垂直断面積S1が極度に大きい場合には、排気ガスによる加熱に際して温度ムラが生じやすくなるとともに、内部の熱応力が過剰なものとなり、亀裂が生じたり剥離したりする可能性がある。その結果、フィルタ外周部21Bと塗布層34との間に、排気ガスが侵入する可能性が生じる。これに対し、本実施形態の充填層35は、その垂直断面積S1が、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%未満であるため、加熱に際しての温度ムラは小さくなり、また、内部の熱応力が過度に増加することもない。従って、充填層35に亀裂が生じたり、充填層35が剥離したりして、フィルタ外周部21Bと塗布層34との間に隙間が生じるおそれはない。よって、浄化されていない排気ガスが排出されるといった不具合は生じ得ない。
【0051】
集合体形成工程と切削工程とを行い、その後、充填層形成工程と塗布層形成工程とを行う第2の製造例を以下に説明する。
集合体形成工程と切削工程については、第1の製造例と同じである。充填層35をフィルタ外周部21Bに塗布する。その後、充填層35とフィルタ外周部21Bを覆うように塗布層34を形成する。充填層35の塗布では、フィルタ外周部21Bの仮想輪郭線(例えば円)よりも凹んだ箇所に選択的に充填層35を塗布する。この時点では、充填層35は前記仮想外周円よりも突出することが望ましい。それは、塗布層34の塗布後に、ハニカム構造体21の外側面の凹凸が少なくなるからである。ハニカム構造体21の外側面の凹凸は、排気漏れの要因となるばかりか、ハニカム構造体21をシール材(断熱材19)で保持しにくくなる。
【0052】
集合体形成工程と切削工程の後に、充填層形成工程と塗布層形成工程とを同時に行う第3及び第4の製造例を以下に説明する。
集合体形成工程と切削工程については、第1の製造例と同じである。第3の製造例では、充填層35と塗布層34を形成するペースト材料を、へらでフィルタ外周部21Bに塗布する。これにより、充填層35と塗布層34とを同時に形成することができる。第4の製造例では、フィルタ外周部21Bを筒状の冶具に収容する。充填層35と塗布層34を形成するペースト材料を冶具とフィルタ外周部21Bとの間の隙間に注入する。ペースト材料の乾燥後、冶具を外すことにより、ハニカム構造体21が得られる。冶具は互いに分離可能な複数の部品を組み合わせたものであることが望ましい。ハニカム構造体21を取り出しやすいからである。第4の製造例は工程数及び作業の簡単さの点で第3の製造例よりも好ましい。
【0053】
集合体形成工程の後に、充填層形成工程と塗布層形成工程とを行う製造方法の第5及び第6の製造例を以下に説明する。
第5の製造例では、押出加工により、所望の異形断面を有する第2のハニカム部材22Bを用意する。第6の製造例では、四角柱状のハニカム部材22を切削加工して、所望の異形断面を有する第2のハニカム部材22Bを用意する。複数の第1のハニカム部材22Aと、複数の第2のハニカム部材22Bとを接合材24により結束して集合体Sを形成する。充填層形成工程と塗布層形成工程については、第3及び第4の製造例を参照。第5の製造例は工程数及び作業の簡単さの点で第6の製造例よりも好ましい。第2乃至第6の製造例によっても、第1の製造例と同等の利点が得られる。
【0054】
充填層を形成することなく、複数のハニカム部材を結束するだけで、円形の垂直断面を有するハニカム構造体が得られるように、複数のハニカム部材を形成する方法も考えられる。この場合、いくつかのハニカム部材に、比較的もろい鋭角部分が生じることがある。鋭角部分は欠けやすいため、押出成形時に、その鋭角部分が欠けて丸みを帯びた外形を有するハニカム部材が製造されやすく、所望の形状を有するハニカム部材が正しく製造されないことがある。よって、充填層を形成しない前記方法は、ハニカム構造体21の歩留まりの点で好ましくない。これに対し、第1乃至第6の製造例によれば、ハニカム部材22に鋭角部分が生じない。よって、所望の形状を有するハニカム部材を正しく製造することができる。また、充填層を形成しない前記方法では、図6乃至8及び10のハニカム構造体21を製造することができるが、図9のハニカム構造体21を製造することはできない。よって、充填層を形成しない前記方法は、製造可能なハニカム構造体21の範囲の広さの点で好ましくない。
【0055】
フィルタコア部21Aを形成してから、フィルタ外周部21Bをフィルタコア部21Aの外側に形成してもよく、フィルタコア部21Aと、フィルタ外周部21Bとを別々に形成してから、フィルタコア部21Aとフィルタ外周部21Bとを一体化してもよく、フィルタコア部21Aとフィルタ外周部21Bとを同時に形成してもよい。
【0056】
好ましい実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1) 内部に保持される熱量が少ないとされるハニカム部材、すなわち垂直断面積が極度に小さいハニカム部材については、敢えてPMの除去に寄与させることを断念し、そうしたハニカム部材を存在させる代わりに、その箇所に充填層35を充填する構成を採用している。これにより、セル28の目詰まりが著しいとされるハニカム部材が排除される。その結果、フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりを抑制することができる。ひいては、ハニカム構造体21の外周部における亀裂の発生を好適に抑制することができる。
【0057】
(2)各充填層35の垂直断面積をS1で表し、フィルタコア部21Aを構成する各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積をS0で表したとき、面積S0に対する面積S1の割合は4%未満である。従って、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して垂直断面積が4%未満となるハニカム部材の代わりに、充填層35を設ける結果、フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりを抑制することができる。また、充填層35の垂直断面積S1を4%未満とすることで、排気ガスによる加熱に際しての充填層35の温度ムラが小さくなり、内部の熱応力が過度に増加することもなく、充填層35における亀裂の発生や剥離を抑制することができる。
【0058】
(3) フィルタ外周部21Bは、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上となる垂直断面積を有するハニカム部材22Bのみから形成されている。これにより、フィルタ外周部21Bを構成する各ハニカム部材22Bにおいては、隔壁27に捕集されたPMを十分に除去することができる程度の熱を保持することが可能となる。従って、本実施形態のハニカム構造体21の外周部においては、PMによるセル28の目詰まりを好適に抑制することができる。
【0059】
(4) 充填層35は、ハニカム構造体21の端面29A,29B間に亘り軸線Qに沿って充填されている。このため、フィルタ外周部21Bと、塗布層34との間に隙間が生じることはなく、フィルタ外周部21Bにおける熱伝導を良好なものとすることができる。
【0060】
(5) 充填層35には無機粒子が含有されており、十分な熱伝導性を有している。従って、フィルタ外周部21Bにおける熱伝導を良好なものとすることができる。
(6) 充填層35には、平均繊維径が1〜40μm、平均繊維長が10〜200μmである無機繊維が含有されており、耐熱性及び強度が高められている。このため、充填層35における、亀裂の発生や剥離を好適に抑制することができる。
【0061】
(7) 無機繊維のタップ密度は、55〜65g/cm3であるため、充填層35の強度及び接着性がより一層高められている。このため、充填層35における、亀裂の発生や剥離を抑制することが容易となる。
【0062】
(8) 充填層35の組成は、塗布層34の組成と同一であることから、充填層35と塗布層34との間における熱の伝導が極めて容易なものとなり、ハニカム構造体21の外周部における熱の伝導を好適に高めることができる。
【0063】
(9) ハニカム部材22のセル密度は、200〜300セル/平方インチであるため、排気ガス中のPMを十分に捕集し得る、隔壁27の表面積を確保することができる。また、圧力損失の低減を図ることができ、セルの内部におけるPMの目詰まり(ブリッジ)も極力抑制することができる。
【0064】
(10) 隔壁27の厚みは0.33mm以下であるため、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMを除去する際の隔壁温度の上昇速度が高まり、ひいてはPMの除去を容易に行うことができる。また、隔壁の厚みを0.1mm以上とすることで、ハニカム構造体21の十分な機械的強度を確保することができる。
【0065】
(11) ハニカム部材22の隔壁27には酸化触媒が担持されていることが好ましい。この場合、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMの除去を促進することができる。すなわち、PMを容易に燃焼及び浄化することができる。
【0066】
好ましい実施形態は、次のように変更することも可能である。
図7に示す第1の変形例のように、断面が楕円形のハニカム構造体21を採用してもよい。この場合、充填層35は、ハニカム構造体21の外側面であって、中心Xの回りの等角度間隔位置(45度、135度、225度、315度の位置)に設けられている。この例において0度位置は、中心Xから短軸Lに沿った延長線上にある、ハニカム構造体21の外側面である。
【0067】
図8に示す第2の変形例のように、垂直断面が略三角形のハニカム構造体21を採用してもよい。
充填層35及び塗布層34の組成を同一のものとしたが、これらは異なっていてもよい。例えば、塗布層34には無機中空体を含有せず、充填層35にのみ無機中空体が含有されていてもよい。
【0068】
ハニカム構造体21の端面29A,29B間に亘って充填層35を設けたが、充填層35は、少なくともハニカム構造体21の上流側端面29Aの近傍に設けられればよい。
フィルタ外周部21Bの外側面において0度、90度、180度、270度の位置に充填層35を設けたが、充填層35の形成位置はこれに限定されるものではなく、充填層35の形成位置は、ハニカム構造体21の直径や、ハニカム部材22の結束数により適宜変更される。例えば、図9に示す第3の変形例のように、ハニカム部材22を32個結束させて、直径が凡そ203mmのハニカム構造体21を製造する場合、充填層35は、ハニカム構造体21の外側面において、中心Xに対して45度、135度、225度、315度の位置に配置してもよい。この例において0度位置は、中心Xに隣接する第1ハニカム部材22Aの外壁26のうち、方向Pと平行な一外壁26に沿った延長線上にある、ハニカム構造体21の外側面である。
【0069】
ハニカム構造体21の直径の大きさや、結束させるハニカム部材22の個数によっては、充填層35を必要としない場合がある。例えば、図10に示す第4の変形例のように、本実施形態のハニカム部材22を45個結束させて、直径が凡そ228mmのハニカム構造体21を製造する場合である。この場合、フィルタ外周部21Bを構成する各ハニカム部材22Bの垂直断面積S2は、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上となる。
【0070】
第1ハニカム部材22Aを形成する多孔質セラミックよりも熱伝導率の低い材料により、第2ハニカム部材22Bを形成してもよい。この場合、フィルタ外周部21Bにおける断熱効果が高くなり、ケーシング18側に熱が逃げにくくなる。これにより、フィルタ外周部21Bの温度の低下が抑制され、PMの除去の効率も良くなる。
【0071】
本実施形態のハニカム構造体は自然着火方式以外の方式の排気ガス浄化装置に使用することができる。例えば、ヒータやバーナ等の加熱手段によってPMを除去する排気ガス浄化装置に使用することができる。また、ボイラーのような内燃機関以外の燃焼装置の排気ガス浄化装置に使用することができる。
【0072】
本発明には以下の構成を有するハニカム構造体が含まれる。
(1) 接合材により結束された複数のハニカム部材であって、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する前記複数のハニカム部材と、塗布層からなる外側面とを備えるハニカム構造体であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する断面を有し、各断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する断面を有し、各断面が四角形とは異なる形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部とを備え、各第1のハニカム部材の前記断面の断面積をS0で表し、前記充填層の前記軸線に直交する断面をS1で表したとき、前記断面積S0に対する前記断面積S1の割合が4%未満であることを特徴とするハニカム構造体。この構成によれば、フィルタ外周部を構成する各ハニカム部材においては、隔壁に捕集されたPMを十分に除去することができる程度の熱を保持することが可能となり、PMによるセルの目詰まりを好適に抑制することができる。
【0073】
(2) 前記断面積S0に対する前記断面積S1の割合が9%未満であるハニカム構造体。
(3) 前記軸線に直交する断面が楕円形状であり、前記ハニカム構造体は、前記ハニカム構造体の外側面において、前記ハニカム構造体の中心から短軸に沿った延長線上にある0度位置と、前記0度位置から45度、135度、225度、及び315度だけそれぞれ離間した45度位置、135度位置、225度位置、及び315度位置とを有し、複数の充填層が、前記45度位置、前記135度位置、前記225度位置、及び前記315度位置に配置されているハニカム構造体。この構成によれば、楕円形の断面を有するハニカム構造体において、フィルタ外周部における、PMの除去を確実に行うことができる。
【0074】
次に、本発明の試験例と比較例を説明する。
<ハニカム構造体の製造>
(試験例1)
試験例1では、図2、6に示すハニカム構造体21を作製した。まず、平均粒径10μmのα型炭化珪素粉末7000重量部と、平均粒径0.5μmのα型炭化珪素粉末3000重量部とを湿式混合し、得られた混合物10000重量部に対して有機バインダ(メチルセルロース)570重量部と、水1770重量部とを加え、混錬して混合組成物を得た。その混合組成物に可塑剤(日本油脂社製、ユニルーブ(登録商標))330重量部と、潤滑剤(グリセリン)150重量部とを加え、更に混錬した後、押出成形し、図3に示す角柱状の生成形体を作製した。
【0075】
次に、マイクロ波乾燥機等を用いて、生成形体を乾燥して、セラミック乾燥体を得た。生成形体の組成と同様の組成を有する封止材ペーストを所定のセルの開口に充填した。乾燥機で乾燥させた後、セラミック乾燥体を400℃で脱脂し、常圧、2200℃、アルゴン雰囲気下で、3時間焼成し、炭化珪素焼結体からなるハニカム部材22(図3)を製造した。このハニカム部材22の寸法は34.3mm×34.3mm×150mm(H×W×L)、気孔率は42%、平均気孔径は11μm、セル密度は240セル/平方インチ(cpsi)、セル隔壁の厚さは0.3mmである。
【0076】
別途、耐熱性の接合材ペーストを調整した。この接合材ペーストの組成は、平均繊維長20μmで平均繊維径2μmのアルミナファイバー30重量%、平均粒径0.6μmの炭化珪素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び水28.4重量%である。接合材ペーストの粘度は30Pa・s(室温)である。
【0077】
別途、スペーサー(空隙保持部材)を用意した。各スペーサーは、両面に粘着材が塗布されたボール紙製で、直径5mm×厚さ1mmの円盤である。
各ハニカム部材22の各側面の各隅に1つのスペーサーを取り付けた。各スペーサーは、ハニカム部材22の隅を区画する2つの辺からそれぞれ6.5mmだけ離れた位置に取り付けた。スペーサー付きのハニカム部材22を4個×4個に結束し、集合体Sを組み立てた。
【0078】
次に、接合材ペースト供給装置に取り付けられたペースト供給室に集合体Sを設置した。ペースト供給室の内寸は、145mm×145mm×150mm(H×W×L)である。接合材ペースト供給装置は、集合体S中のハニカム部材22間の空隙に対応する位置に形成された、幅5mmの3つの供給溝を備える。各供給溝は、ペースト供給室の内面と接合材ペースト供給装置の内部とを連通する。ペースト供給室は、接合材ペースト供給装置に取り付けられた端部とは反対の端部に、開閉可能な底板を有する。この底板を閉じて、底板を集合体Sの端面(29Aまたは29B)に当接させることで、ハニカム部材22間の空隙を封止した。
【0079】
この状態で、接合材ペースト供給装置のペースト供給室に接合材ペーストを投入した。接合材ペーストを、ペースト供給室の内面から集合体Sの側面に0.2MPaの圧力で注入し、底板に当接した端面とは反対側の集合体Sの端面に0.05MPaの圧力で注入した。これにより、ハニカム部材22間の間隙に接合材ペーストを充填した。次に、集合体Sを100℃で1時間乾燥し、接合材ペーストを硬化させた。硬化後に、厚さ1mmの接合材24により一体化された集合体Sが得られた。
【0080】
次に、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバ(ショット含有率3%、平均繊維長20μm、平均繊維径6μm)22,3重量%、無機粒子しとして平均粒径0.3μmの炭化珪素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2含有率30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%、及び水39重量%を混合し、混錬することにより、充填層形成ペーストを調整した。
【0081】
集合体Sの外側面の4箇所に充填層形成ペーストを塗布して、120℃1時間乾燥して、充填層形成ペーストを硬化させ、充填層35を形成した(図5参照)。
次に、集合体Sをダイヤモンドカッターで切削し、直径142mmの円柱状のハニカムブロックを作製した。
【0082】
次に、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバ(ショット含有率3%、平均繊維長20μm、平均繊維径6μm)22,3重量%、無機粒子しとして平均粒径0.3μmの炭化珪素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2含有率30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%、及び水39重量%を混合し、混錬することにより、塗布層形成ペーストを調整した。試験例1では、塗布層形成ペーストは充填層形成ペーストと同じ組成である。
【0083】
次に、塗布層形成ペーストをハニカムブロックの外側面に塗布して、120℃1時間乾燥して、塗布層形成ペーストを硬化させ、塗布層34を形成した。こうして、直径143mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体21を得た。試験例1のハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0084】
(試験例2〜10)
図2、6に示すように、試験例1と同様に製造した16個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束すなわち集合体Sを形成した。集合体Sの所定箇所に充填層35を設け、集合体Sを所定形状に切削加工して、垂直断面が円形のハニカム構造体21を得た。試験例2〜10ハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0085】
(試験例11〜13)
試験例1と同様に製造した32個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束すなわち集合体Sを形成した。集合体Sの所定箇所に充填層35を設け、集合体Sを所定形状に切削加工して、垂直断面が円形のハニカム構造体21を得た(図9参照)。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0086】
(試験例14、15)
試験例1と同様に製造した16個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束をすなわち集合体Sを形成した。集合体Sの所定箇所に充填層35を設け、集合体Sを所定形状に切削加工して、垂直断面が楕円形のハニカム構造体21を得た(図7参照)。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0087】
(試験例16)
試験例1と同様に4個×4個のハニカム部材22を接合材24で結束し、ハニカム部材22の束をすなわち集合体Sを形成した。次に、集合体Sをダイヤモンドカッターで切削し、平坦部32を有する直径142mmのハニカムブロックを作製した。試験例16では、充填層を形成する前に切削を行ってハニカムブロックを作製したため、このハニカムブロックの外側面は、図2(d)のフィルタ外周部21Bのものと同じである。
【0088】
次に、ハニカムブロックを直径143mm、長さ150mmの円柱状の冶具に収容し、この冶具を、接合材ペースト供給装置に取り付けられたペースト供給室に設置した。冶具は、ステンレス合金製の2つの半円柱状の部品からなり、分割可能である。冶具とハニカムブロックの曲面状の外側面との間に1mmの隙間が区画されるように、冶具は構成されている。接合材ペースト供給装置は、冶具とハニカムブロックとの間の隙間に対応した位置に複数のノズルを有する。ノズルから冶具とハニカムブロックとの間の隙間に試験例1の塗布層形成ペーストと同じ組成のペーストを注入した。
【0089】
冶具に収容された状態のハニカムブロックをペースト供給室から取り出し、120℃1時間乾燥して、ペーストを硬化させ、充填層35と塗布層34とを同時に形成した。こうして、直径143mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体21を得た。試験例16のハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0090】
(試験例17)
試験例1では、ダイヤモンドカッターを用いて集合体を切削したが、試験例17では、四角柱状の複数のハニカム部材(第1のハニカム部材22A)と、複数種類の異形断面のハニカム部材(第2のハニカム部材22B)を、押出成形によって作製した。各ハニカム部材の組成は試験例1のものと同じである。第1のハニカム部材22Aの生成形体を押出成形する際に使用するダイ(金型)を所望の形状のダイに変更することにより、複数種類の異形断面の第2のハニカム部材22Bの生成形体を押出成形することができる。生成形体の乾燥、焼結等の処理については、試験例1を参照のこと。
【0091】
試験例1と同じ方法でハニカム部材22A、22Bを接合材24で結束して、平坦部32を有する直径142mmのハニカムブロックを作製した。試験例16と同じ方法でハニカムブロックに充填層35と塗布層34とを同時に形成した。試験例17のハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
比較例1においては、図6に示すように20個のハニカム部材22からハニカム構造体を製造した。従って、比較例1のハニカム構造体は試験例1〜10の充填層35を備えていない。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
比較例2においては、図9に示すように、36個のハニカム部材22からハニカム構造体を製造した。従って、比較例2のハニカム構造体は試験例11〜13の充填層35を備えていない。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0094】
(比較例3)
図10に示すように、45個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束を形成した。ハニカム部材22の束を切削加工して、垂直断面が円形のハニカム構造体を得た。本比較例3のハニカム構造体21においては、充填層35に代用しなければならないハニカム部材22B、すなわち垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Bがフィルタ外周部21Bに存在している。ハニカム構造体に関する詳細については表1に示す。
【0095】
(比較例4)
試験例1と同様に、接合材24を用いて4個×4個のハニカム部材22を結束して集合体を作製した。充填層を形成せずに、ダイヤモンドカッターで集合体を切削して、図2(d)のように4つの平坦部32を有する直径142mmのハニカムブロックを作製した。ハニカムブロックの外側面に実施例1の塗布層形成ペーストを塗布した。ゴム製の平板スキージで塗布層の厚みを0.5mmに調節し、4つの平坦部を有するハニカム構造体を作製した。すなわち、比較例4のハニカム構造体の外側面は、図2(d)のフィルタ外周部21Bのものとほぼ同じである。
【0096】
【表1】
「集合体の寸法」:直径(φ)×長さ(L)を示す。
【0097】
「充填層位置」:試験例1〜13、16、17、及び比較例1〜4の角度の値は、図2(a)及び図9を参照のこと。試験例14及び15の角度の値は、図7を参照のこと。
「第2ハニカム部材の垂直断面積」:フィルタ外周部21Bを構成する各第2ハニカム部材22Bの垂直断面積のうち、最も小さい値を記す。表1中における、各垂直断面積の単位は、cm2である。
<充填層の物性評価>
上記各例のハニカム構造体21に設けられた充填層35(特に、充填層35に含有された無機繊維)に関する、下記の物性評価を行った。その結果を表2に示す。
(1)「無機繊維の平均繊維径」:走査型電子顕微鏡を用いて充填層35の断面を撮影し、そのときの写真からランダムに選択した100本の無機繊維の繊維径の平均値を算出した。
(2)「無機繊維の平均繊維長」:走査型電子顕微鏡を用いて充填層35の断面を撮影し、そのときの写真からランダムに選択した100本の無機繊維の繊維長の平均値を算出した。
(3)「無機繊維のタップ密度」:JIS R 1628−1997「ファインセラミックス粉末の嵩密度測定方法」の定容積測定法に従って測定して得た値をいう。
<ハニカム構造体の評価試験>
(評価1:目詰まりのしやすさ)
各例のハニカム構造体21を排気ガス浄化装置10に設置し、図11に示すように、回転数及びトルクを適宜変化させながら600秒間エンジンを運転させて、ハニカム構造体21による排気ガスの浄化試験を行った。その後、フィルタ外周部21Bを構成する第2ハニカム部材22Bのセル28がPMによって目詰まりするまで同様の試験を繰り返し行い、第2ハニカム部材22Bが目詰まりしたときの試験回数を求めた。そして、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:浄化試験を150回以上行っても、第2ハニカム部材に目詰まりが確認されない
×:浄化試験を50回行ったとき、第2ハニカム部材に目詰まりが確認された
「目詰まりのしやすさ」に関しては、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対する、第2ハニカム部材22Bの垂直断面積S2の割合(S2/S0)の値と関連付けて考察を行った。
(評価2:充填層の耐久性)
評価1の浄化試験を150回行った後の、充填層の状態について、以下の基準に従い目視にて評価した。その結果を表2に示す。
○:変化なし、△:僅かな亀裂が認められる、×:剥離する 「充填層の耐久性」に関しては、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対する、充填層35の垂直断面積S1の割合(S1/S0)の値や、無機繊維の性質と関連付けて考察を行った。ちなみに、表2中の「*」印は、評価1において、第2ハニカム部材22Bが目詰まりするまでの試験回数が少ないため、充填層の耐久性に関して正当な評価ができないといった理由から、評価を省略したことを意味する。
【0098】
比較例4のハニカム構造体について、評価1、2の測定中に排気ガスの漏れが発生したため、評価1、2は行えなかった。ガス漏れの原因はハニカム構造体をケーシング18に設置する際に、ハニカム構造体の外側面にある4つの平坦部と断熱材19との間に隙間が生じたためと考えられる。平坦部は、断熱材19によるハニカム構造体の保持力を低下させる。そのため、ハニカム構造体を断熱材19でタイトに締め付けても、使用時にハニカム構造体が移動したり、がたついたり、ガスが漏れたりするのを完全に防止することは困難である。この点、試験例1〜17のハニカム構造体には平坦部がないため、ハニカム構造体の移動、がたつき、ガス漏れは生じなかった。
【0099】
【表2】
表2に示すように、試験例1〜17においては、「S2/S0」の値が4%以上であり、フィルタ外周部21Bを構成する第2ハニカム部材22Bにおける目詰まりが確認されなかった。これは、フィルタ外周部21Bを構成する各第2ハニカム部材22Bが、PMを十分に除去し得る熱量を保持することが可能な容量(垂直断面積に対応)に設定されていることに起因するものと考えられる。一方、比較例1〜4においては、S2/S0の値が4%未満となり、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材がフィルタ外周部21Bに存在している。このため、そうした特定のハニカム部材の内部においては、PMを十分に除去することができず、PMによるセル28の目詰まりが確認された。
【0100】
試験例1〜5、及び試験例11〜17においては、サイクル試験後の充填層35の状態に何ら変化はなかった。これは、無機繊維の平均繊維径が1〜40μm、平均繊維長が10〜200μm、タップ密度が55〜65g/cm3に設定されていることから、充填層35の耐熱性及び強度が十分に確保され、その結果、充填層35の耐久性が向上したものと考えられる。
【0101】
一方、試験例7〜10に関しては、充填層35に僅かな亀裂が認められた。これは、無機繊維が含有されていない、又は無機繊維の平均繊維径、平均繊維長及びタップ密度のいずれかが上記所定の範囲を満たしていないことから、充填層35の耐熱性及び強度が不十分であったことが要因と考えられる。また、試験例6及び試験例15においては、充填層35の剥離が認められた。これは、試験例6及び試験例15では「S1/S0」の値が4%以上であり、他の試験例と比較して、充填層35の垂直断面積が極度に大きいため、排気ガスによる加熱に際して温度ムラが生じやすくなるとともに、内部の熱応力が過剰なものとなり、最終的には剥離したものと考えられる。ちなみに、試験例14の結果から、上記「S1/S0」の値が9%未満であれば、充填層35の十分な耐久性を維持することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0102】
21…ハニカム構造体、21A…フィルタコア部、21B…フィルタ外周部、22…ハニカム部材、27…隔壁、28…セル、35…充填層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内燃機関、ボイラー等の排気ガス中に含まれる粒子状物質等を捕集及び除去するために用いられるハニカム構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、環境への影響を考慮し、内燃機関やボイラー等の燃焼装置の排気ガスに含まれる粒子状物質を排気ガス中から除去する必要性が高まっている。特にディーゼルエンジンから排出される黒鉛微粒子等の粒子状物質(以下PMという)の除去に関する規制は欧米、日本国内ともに強化されつつある。PM等を除去するための捕集フィルタとして、DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれるハニカム構造体が使用されている。ハニカム構造体は、燃焼装置の排気通路に設けられたケーシング内に収容されている。ハニカム構造体は、その長手方向に延びるとともに隔壁により区画された多数のセルを有している。隣接する一対のセルにおいて、一方のセルの開口端と、その開口端と反対側にある他方のセルの開口端が封止体で封止される。複数の封止体はハニカム構造体の各端面(流入口側端面及び流出口側端面)に市松模様状に配置される。排気ガスは、ハニカム構造体の流入口側端面において、開放されているセルに流入し、多孔質の隔壁を通って、流出口側端面において開放されている隣のセルから排出される。例えばディーゼルエンジンから排出されるPMは濾過フィルタとして機能する隔壁に捕集され隔壁上に堆積する。隔壁に堆積したPMは、バーナやヒータ等の加熱手段、又は排気ガスの熱により、燃焼されて除去される。本明細書では、PMを燃焼して除去することを、単に「PMの除去」または「ハニカム構造体の再生」ともいう。
【0003】
種々のハニカム構造体が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1に示すハニカム構造体は、断面円形状をなし、その外壁の所定箇所に補強部を有している。この補強部は、ハニカム構造体の外壁において強度の低い所定箇所に設けられる。その結果、機械的強度に優れるとともに圧力損失の少ないハニカム構造体が得られる。
【0004】
特許文献2に示すハニカム構造体は、その軸線に平行な面で分割された複数個のハニカム部材より構成されている。このハニカム構造体は、8本の角柱状のハニカム部材と4本の直角二等辺三角形断面を有するハニカム部材とより形成され、その断面は八角形である。ハニカム部材間には弾性質素材からなるシール材が介在されており、ハニカム部材が一体に接着されている。
【0005】
特許文献3は円形断面のハニカム構造体を開示している。このハニカム構造体は、角柱状をなす複数のハニカム部材をシール材を用いて結束してハニカム部材の束を形成し、ハニカム部材の束の一部を切削加工してその外形を整えて得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−260322号公報
【特許文献2】特許第3121497号
【特許文献3】特開2005−154202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3に示す円形断面のハニカム構造体では、ハニカム構造体の外周部を構成するハニカム部材の断面は、切削加工により直角二等辺三角形に形成される。そのため、ハニカム構造体の直径や、結束させるハニカム部材の数に応じて、ハニカム構造体の外周部を構成するいくつかのハニカム部材の断面積が極度に小さくなることがある。
【0008】
従来のハニカム構造体においては、その外周部からケーシング側に熱が逃げやすい。そのため、中心部に比べて外周部の温度が低くなる傾向がある。特にハニカム部材間にシール材が介在するハニカム構造体では、シール材により熱の伝導が弱められ、外周部の温度
が低くなりやすい。ハニカム構造体の外周部においては、PMを燃焼及び除去するのに十分な高温を得にくく、ハニカム構造体の外周部を構成するハニカム部材の隔壁には、PMが燃焼されずに残りやすい。PMの燃え残りを生じさせる温度低下は、外周部に位置する
ハニカム部材のなかでも断面積が極度に小さいハニカム部材において顕著なものとなる。その結果、断面積が極度に小さいハニカム部材では、セルがPMによって目詰まりしやすい。セルを目詰まらせたPMは、時に自己着火し、局部的な熱衝撃を生じ、ハニカム構造体(特に、ハニカム構造体の外周部)に亀裂を生じさせる要因となる。
【0009】
この発明の目的は、フィルタ外周部におけるセルの目詰まりを抑制することができるハニカム構造体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する複数のハニカム部材を、接合材により結束させて集合体を形成する集合体形成工程と、前記集合体の外側面における所定箇所に充填層を設ける充填層形成工程と、前記集合体の外側面に塗布層を塗布する塗布層形成工程とを経て製造される。
【0011】
一例では、前記集合体の外側面を切削加工する切削工程が行われる。
一例では、前記集合体形成工程、前記充填層形成工程、前記切削工程、及び前記塗布層形成工程の順で行われる。
【0012】
別の例では、前記集合体形成工程と前記切削工程とを行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とが行われる。
更に別の例では、前記複数のハニカム部材の各々が予め所定形状に形成されている。この場合、前記集合体形成工程を行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とが行われる。
【0013】
前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを同時に行うことができる。
前記集合体は、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記
複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部とからなり、前記製造方法は、前記集合体形成工程に先だって、前記複数のハニカム部材のいくつかを切削加工して、前記複数の第2のハニカム部材を形成する工程を更に備え、前記集合体形成工程は、前記フィルタコア部を形成する工程と、前記フィルタコア部の周囲に前記フィルタ外周部を形成する工程とを含む。
【0014】
ハニカム構造体は、接合材により結束された複数のハニカム部材であって、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する前記複数のハニカム部材と、塗布層からなる外側面とを備えるハニカム構造体であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部と、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面と、前記塗布層との間に設けられた充填層とを備え、前記ハニカム構造体は、前記軸線に平行に延びる外面と、前記外面において、前記ハニカム構造体の中心に隣接する第1のハニカム部材の一外面に沿った延長線上にある0度位置と、前記0度位置から45度、135度、225度、及び315度だけそれぞれ離間した45度位置、135度位置、225度位置、及び315度位置とを有し、前記複数の充填層は、前記45度位置、前記135度位置、前記225度位置、及び前記315度位置に配置されているハニカム構造体を提供する。
【0015】
前記充填層は、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面に塗布され、乾燥、硬化を経て、切削により形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フィルタ外周部におけるセルの目詰まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好ましい実施形態に従うハニカム構造体を備えた排気ガス浄化装置の概略図。
【図2】(a)は本発明の好ましい実施形態に従うハニカム構造体の垂直断面図、(b)は図2(a)のハニカム構造体の部分拡大図、(c)は図2(a)のハニカム構造体のフィルタコア部の断面図、(d)は図2(a)のハニカム構造体のフィルタ外周部の断面図。
【図3】ハニカム部材の斜視図。
【図4】図1のケーシングの内部の断面図。
【図5】ハニカム部材の集合体の垂直断面図。
【図6】図5のハニカム部材の集合体の切削加工を説明する図。
【図7】第1の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図8】第2の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図9】第3の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図10】第4の変更例のハニカム構造体の概略図。
【図11】排気ガスの浄化試験における試験条件を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態に従うハニカム構造体を説明する。好ましい実施形態では、ハニカム構造体は排気ガスの熱のみにより捕集されたPMが除去される自然着火方式の車両排気ガス浄化装置に使用される。
【0019】
図1に示すように、排気ガス浄化装置10は、例えば、ディーゼルエンジン11から排出される排気ガスを浄化するための装置である。ディーゼルエンジン11は、図示しない複数の気筒を備えている。複数の気筒には、金属材料からなる排気マニホールド12の複数の分岐管13がそれぞれ連結されている。
【0020】
排気マニホールド12の下流側には、金属材料からなる第1排気管15及び第2排気管16が配設されている。第1排気管15の上流端は、マニホールド12に連結されている。第1排気管15と第2排気管16との間には、金属材料からなる筒状のケーシング18が配設されている。ケーシング18の上流端は第1排気管15の下流端に連結され、ケーシング18の下流端は第2排気管16の上流端に連結されている。第1排気管15、ケーシング18及び第2排気管16の内部は互いに連通し、その中を排気ガスが流れる。
【0021】
ケーシング18の中央部は排気管15,16よりも大径であり、ケーシング18の内部領域は、排気管15,16の内部領域に比べて広い。ケーシング18にハニカム構造体21が収容されている。ハニカム構造体21の外周面とケーシング18の内周面との間には、ハニカム構造体21とは別体の断熱材19が配設されている。ケーシング18の内部においてハニカム構造体21より上流側には、プレフィルタ41が収容されている。プレフィルタ41の内部には従来公知の酸化触媒が担持されており、プレフィルタ41の内部において排気ガスが酸化処理される。このときの酸化熱がハニカム構造体21の内部に伝導され、ハニカム構造体21の内部におけるPMの除去に寄与する。
【0022】
次に、本実施形態のハニカム構造体21について説明する。本明細書中の文言「垂直断面」は、ハニカム構造体21の軸線Qに直交する断面を意味する。そして、その断面の形状を「垂直断面形状」といい、その断面の面積を「垂直断面積」という。
【0023】
図2(a)に示すように、ハニカム構造体21は、四角柱状をなす複数個(本実施形態では16個)のハニカム部材22を接合材24により結束してハニカム部材の束または集合体を形成しその集合体の外側面を所定形状に切削加工することで得られる。接合材24は、無機バインダ、有機バインダ、無機繊維等を含有することができる。
【0024】
ハニカム構造体21は、断面四角形状をなすフィルタコア部21Aと、フィルタコア部21Aの外側に配置されるフィルタ外周部21Bとを有し、断面円形状(直径:凡そ143mm、垂直断面積:凡そ160.6cm2)に形成されている。以下、フィルタコア部21A、フィルタ外周部21B、及びそれらを構成するハニカム部材22について説明する。
【0025】
フィルタコア部21Aは、ハニカム構造体21の中心部に配置されている。図2(c)に示すように、フィルタコア部21Aは、4個のハニカム部材22(第1ハニカム部材22A)より構成されている。図3に示すように、各第1ハニカム部材22Aは、外壁26と、外壁26の内側に配置された隔壁27と、正方形の垂直断面を有する。本実施形態では、各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積は、11.8cm2である。
【0026】
各第1ハニカム部材22Aの外壁26及び隔壁27は、主として多孔質セラミックから形成されている。このセラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミックや、炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミックや、アルミナ、ジルコニア、コージュライト、ムライト、シリカ、チタン酸アルミニウム等の酸化物セラミック、及び金属珪素−炭化珪素複合材等が挙げられる。
【0027】
隔壁27の厚みは0.33mm以下であることが好ましい。隔壁27の厚みが0.33mm以下である場合には、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMを除去する際に隔壁27温度が上昇しやすい。隔壁27の厚みを0.1mm以上とすることで、ハニカム構造体21の機械的強度を充分に確保することができる。
【0028】
本実施形態の隔壁27には、白金族元素(例えばPt等)や、その他の金属元素及びその酸化物等からなる酸化触媒が担持されていてもよい。この場合、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMの除去が、そうした酸化触媒の触媒作用により促進される。
【0029】
ハニカム部材22(22A)は、隔壁27により区画されてなる複数のセル28を有している。図4に示すように、各セル28は、一方の端面(上流側端面)29Aから他方の端面(下流側端面)29Bにかけて軸線Qに沿って延び、流体としての排気ガスの流路として機能する。各セル28は端面29Aと端面29Bに開口を有する。各セル28の1つの開口は、例えば多孔質炭化珪素焼結体よりなる封止体30により封止されている。複数の封止体30は各端面29A、29Bに市松模様状に配置される。すなわち、約半数のセル28は上流側端面29Aにおいて開口し、残りの約半数のセル28は下流側端面29Bにおいて開口している。
【0030】
ハニカム部材22のセル密度は、200〜300セル/平方インチであり、好ましくは200〜250セル/平方インチである。本明細書において文言「セル密度」は、単位断面積当りのセルの数を意味する。ハニカム部材22のセル密度が200セル/平方インチ以上の場合には、排気ガス中のPMを十分に捕集し得る、隔壁27の表面積を確保することができる。一方、セル密度が300セル/平方インチ以下の場合には、排気ガス中のPMを十分に捕集し得る、隔壁27の表面積と、ハニカム部材22の耐熱衝撃性とを確保することができ、加えて、セルの内部におけるPMの目詰まり(ブリッジ)を招きにくい。さらに、セルが過剰に細かくなることがないため、圧力損失の増大、内燃機関の出力低下、及び燃費の悪化を引き起こさない。
【0031】
図2(d)に示すように、フィルタ外周部21Bは、12個のハニカム部材22(第2ハニカム部材22B)より構成されている。このフィルタ外周部21Bの外側面には、平坦部32が90度間隔で設けられている。各平坦部32は、フィルタ外周部21Bの外側面において軸線Qに沿って延びている。平坦部32は、16個の第2ハニカム部材22Bを結束させて直径が凡そ143mmであるハニカム構造体21を製造する際に形成される。
【0032】
各第2ハニカム部材22Bの垂直断面は異形状である。本明細書中の文言「異形状」は、例えば、四角柱状のハニカム部材に対して所定の切削加工等が施された後のハニカム部材の断面形状を示す。特に、「異形状」は、円形、楕円形、三角形、多角形等のように外形が直線及び曲線のいずれか一方のみからなる形状を意味せず、直線及び曲線の両方からなる形状を意味する。異形状断面の例には、2つの直線と1つの円弧によって区画された断面、3つの直線と1つの円弧によって区画された断面、4つの直線と1つの円弧によって区画された断面が含まれる。「直線」又は「曲線」について説明する。ハニカム部材の集合体を切削加工するときに、その集合体に含まれる一部の隔壁と一部の封止体が除去される。この除去の結果、集合体の外面が凹凸形状となる。集合体の外面に露出した凸部を結ぶ仮想線のことを、本明細書では「直線」又は「曲線」と呼ぶ。また、押出成形で作製した複数のハニカム部材22Bを結束した集合体には、集合体の側面(周面)に隔壁が存在する。この場合、周面の隔壁部分を本明細書では「直線」又は「曲線」と呼ぶ。各第2ハニカム部材22Bの垂直断面形状以外の構成(例えば、材質、隔壁27の厚み、セル密度等)は第1ハニカム部材22Aのものと同一である。フィルタ外周部21Bを構成する複数の第2ハニカム部材22Bの垂直断面は互いに同じでもよく、互いに異なっていてもよい。フィルタ外周部21Bを構成する複数の第2ハニカム部材22Bのうち少なくとも1つは、フィルタコア部21Aを構成する第1ハニカム部材22Aと同じ構成のハニカム部材すなわち四角形の垂直断面を有するハニカム部材であってもよい。従って、フィルタ外周部21Bは、異形状の垂直断面を有するハニカム部材と、四角形の垂直断面を有するハニカム部材とから構成されてもよい。フィルタ外周部21Bを構成する複数のハニカム部材の大部分が異形状であることが好ましい。 各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積をS0で表し、フィルタ外周部21Bを構成する任意の第2ハニカム部材22Bの垂直断面積をS2で表したとき、断面積S0に対する断面積S2の割合は4%以上である。この割合が4%以上の場合、すなわち垂直断面積が極度に小さい第2ハニカム部材22Bがフィルタ外周部21Bに存在しない場合、全てのハニカム部材22においてPMを十分に除去することができ、燃え残ったPMによるセル28の目詰まりを防止することができる。一方、この割合が4%未満の場合、すなわち垂直断面積が極度に小さい第2ハニカム部材22Bがフィルタ外周部21Bに存在する場合、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Bに捕集されたPMは十分に除去することが困難であり、燃え残ったPMにより、セル28が目詰まりしやすい。
【0033】
フィルタ外周部21Bの外側面には、複数の充填層35が配置されている。より詳しくは、各充填層35は、フィルタ外周部21Bの平坦部32と塗布層34との間の隙間に充填されている。図2(a)の例では、充填層35は、ハニカム構造体21の外側面であって、その中心Xの回りの等角度間隔位置(例えば、0度、90度、180度、270度の位置)に設けられている。0度位置は、中心Xに隣接する第1ハニカム部材22Aの外壁26のうち、方向P(図2(c)参照)と平行な一外壁26に沿った延長線上にある、ハニカム構造体21の外側面である。90度位置、180度位置及び270度位置は、ハニカム構造体21の外側面において、0度位置からそれぞれ90度、180度、及び270度だけ離間した位置である。ここで、塗布層34は、フィルタ外周部21Bの外側面に塗布された略同じ厚みを有する層状の部分を指す。充填層35はフィルタ外周部21Bの外側面と、塗布層34との間に充填された部分を指す。
【0034】
図2(b)に示すフィルタ外周部21Bは切削加工されたものである。この場合、フィルタ外周部21Bの外側面の一部に凹凸が生じ、塗布層34はその凹凸を覆うように塗布される。従って、フィルタ外周部21Bの外側面の凹部は塗布層34の材料によって埋められる。押出形成により形成された異形状の第2のハニカム部材22Bを使用したフィルタ外周部21Bの場合、凹凸の無い側壁がフィルタ外周部21Bの全外側面を提供する。この場合、塗布層34はその側壁を覆うように塗布される。
【0035】
充填層35の垂直断面積をS1で表し、フィルタコア部21Aを構成する各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積をS0で表したとき、面積S0に対する面積S1の割合は4%未満である。この割合が4%以上である場合には、排気ガスによる加熱に際して温度ムラが生じやすくなるとともに、内部の熱応力が過剰なものとなり、充填層35に亀裂が生じたり、充填層35が剥離したりするおそれがある。このため、この割合が4%以上の充填層35がある場合には、その充填層35は第2ハニカム部材22Bに置き換えられるのが好ましい。上述したように、第2ハニカム部材22Bの垂直断面積S2が、フィルタコア部21Aを構成する第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上であれば、PMを除去するのに十分な熱量を確保することができるからである。充填層35は、ハニカム構造体21の外側面の一部において、端面29A,29B間に亘り、軸線Qに沿って配置されている(図4参照)。
【0036】
充填層35は、無機粒子、及び無機繊維を含有する。無機粒子は、充填層35に良好な熱伝導性を付与する機能を有する。無機粒子としては、炭化珪素、窒化珪素、コージェライト、アルミナ(例えば、溶融アルミナ、焼結アルミナ)、ムライト、ジルコニア、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、チタニア、シリカ(例えば、溶融シリカ)及びこれらの組み合わせよりなる群から選ばれるセラミックス、鉄−クロム−アルミニウム系金属、ニッケル系金属、金属珪素−炭化珪素複合材等が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0037】
無機繊維は、充填層35の耐熱性及び強度を向上させる機能を有する。この種の無機繊維としては、シリカ−アルミナセラミックファイバー、ムライトファイバー、シリカファイバー、アルミナファイバー、ジルコニアファイバー等が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。本実施形態では、この無機繊維の性質を特定することで、充填層35の耐熱性及び強度の向上を図っている。以下、本実施形態の無機繊維の性質について説明する。
【0038】
本実施形態の無機繊維の平均繊維径は、1〜40μmが好ましく、6〜40μmがより好ましい。無機繊維の平均繊維長は、10〜200μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。本明細書中の文言「平均繊維径」及び「平均繊維長」は、走査型電子顕微鏡で撮影した充填層35の断面写真からランダムに選択した複数本の無機繊維の繊維径の平均値及び繊維長の平均値である。
【0039】
無機繊維の平均繊維径が1μm未満、及び平均繊維長が10μm未満の場合には、充填層35の十分な耐熱性及び強度を確保することが困難となる。従って、排気ガスによる加熱に起因して、充填層35に亀裂が生じたり、充填層35が容易に剥離したりする可能性がある。一方、無機繊維の平均繊維径が40μmを超える場合、及び平均繊維長が200μmを超える場合には、充填層35の耐熱性及び強度についてそれ以上の効果はみられず、経済的でない。
【0040】
無機繊維のタップ密度は、55〜65g/cm3が好ましく、55〜60g/cm3がより好ましい。本明細書中の文言「タップ密度」は、一定条件で容器をタッピングして得られる、無機繊維の嵩密度を示す。このタップ密度が大きい程、無機繊維が緻密に充填されていることを意味する。無機繊維のタップ密度が55g/cm3未満の場合には、充填層35の耐熱性や強度を十分に確保することが困難となる。一方、無機繊維のタップ密度が65g/cm3を超える場合には、繊維の配向性が高くなり過ぎ、ハニカム部材22に対する充填層35の接着性が低下する可能性がある。
【0041】
上記無機繊維に代えて、或いは無機繊維とともに、無機中空体(無機バルーン)を、充填層35に含有させてもよい。この種の無機中空体としては、ガラスマイクロバルーン、アルミナバルーン、セラミックバルーン等が挙げられる。無機中空体の平均粒径は特に限定されるものではない。
【0042】
充填層35には、他の成分として無機バインダ、有機バインダ等が含有されてもよい。この種の無機バインダとしては、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル等が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。有機バインダとしては、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース等の親水性有機高分子が挙げられる。これらは、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0043】
塗布層34は、ケーシング18内におけるハニカム構造体21の位置ずれを抑制する機能を有する。塗布層34の組成は充填層35の組成と同一であってもよい。塗布層34は、フィルタ外周部21Bの全外側面に亘って設けられている。
【0044】
充填層35を形成した後に塗布層34を形成してもよい。充填層35と塗布層34を同時に形成してもよい。
ハニカム構造体の製造方法を説明する。
【0045】
まず、複数のハニカム部材22を用意する。各ハニカム部材22は、外壁26と、流体の流路として機能する複数のセル28を区画する隔壁27とを有する。複数のハニカム部材22を接合材24により結束して集合体Sを形成する(集合体形成工程)。必要に応じて、集合体Sの外側面を切削加工して、集合体Sの形状を整えてもよい(切削工程)。押出加工で製造されたハニカム部材22のように、所望の異形状を有するハニカム部材22を使用する場合、集合体Sの切削加工を省略してもよい。集合体Sの外側面の所定箇所に充填層35を設ける(充填層形成工程)。集合体Sの外側面に塗布層34を塗布する(塗布層形成工程)。こうして、本発明のハニカム構造体が製造される。
【0046】
集合体形成工程、充填層形成工程、切削工程、及び塗布層形成工程の順で行われる第1の製造例を以下に説明する。例えばプランジャ型の押出機や二軸スクリュー型の連続押出機等による押出成形により中間成形体を成形し、その中間成形体を焼成してハニカム部材22を得る。16個のハニカム部材22を接合材24により結束して集合体Sを形成する(図5参照)。集合体Sの外側面における所定箇所(集合体Sの各側面の中央部)に充填層35を設ける。次に、集合体Sの外側面をダイヤモンドツール等により切削加工し、集合体Sの断面を円形状に整える。集合体Sの全外側面に塗布層34を塗布する。これにより、図2(a)のハニカム構造体21が得られる。
【0047】
切削工程により、垂直断面が円形のハニカム構造体21を製造する場合には、フィルタ外周部21Bを構成するハニカム部材22Bが異形状に形成される。その際、結束させるハニカム部材22の個数や、ハニカム構造体21の直径の大きさ等に起因して、フィルタ外周部21Bを構成する所定のハニカム部材(22C)の垂直断面積が、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して極度に小さくなることがある(図6参照)。例えば、図6に示すように、集合体Sの各側面の中央部にハニカム部材22を1個ずつ結束させた集合体から、本実施形態と同様の直径(143mm)を有するハニカム構造体21を製造する場合等である。この場合、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%未満となる垂直断面積を有するハニカム部材22Cが得られる。このように垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Cの内部においては、隔壁27に捕集されたPMが燃焼されにくくなる。そして、このようなハニカム構造体21をそのまま放置した場合には、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Cの内部にPMが経時的に堆積し、ハニカム部材22Cのセル28がPMによって目詰まりする。その結果、排気ガスの浄化効率の低下を招くだけでなく、PMの自己着火による熱衝撃に伴ってハニカム構造体21(特に、ハニカム構造体21の外周部)に亀裂が生じる可能性がある。
【0048】
そこで、セル28の目詰まりを起こしやすい、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Cを省略し、そうしたハニカム部材22Cの代わりに充填層35を充填している(図2(b)参照)。これにより、セル28の目詰まりが著しい部材(垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22C)が排除される。従って、本実施形態のハニカム構造体21の外周部においては、垂直断面積がある程度確保された第2ハニカム部材22Bのみで構成される。具体的には、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上の垂直断面積を有する第2ハニカム部材22Bのみで構成される。これにより、フィルタ外周部21Bを構成する各ハニカム部材22Bにおいては、排気ガスによる加熱に際し、PMを十分に除去することができる程度の熱量が保持されるようになる。従って、本実施形態のハニカム構造体21においては、フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりが抑制される。ひいては、ハニカム構造体21の外周部における亀裂の発生が抑制される。
【0049】
そして、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材の形成箇所に、軸線Qに沿って充填層35を充填することで、フィルタ外周部21Bと塗布層34との間に隙間が生じることがなく、排気ガスの侵入が防止される。また、この充填層35は無機粒子を含有することから、良好な熱伝導性が付与されている。このため、充填層35は、フィルタ外周部21Bにおける熱伝導の向上にも寄与している。
【0050】
ここで、充填層35においては、その垂直断面積S1が極度に大きい場合には、排気ガスによる加熱に際して温度ムラが生じやすくなるとともに、内部の熱応力が過剰なものとなり、亀裂が生じたり剥離したりする可能性がある。その結果、フィルタ外周部21Bと塗布層34との間に、排気ガスが侵入する可能性が生じる。これに対し、本実施形態の充填層35は、その垂直断面積S1が、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%未満であるため、加熱に際しての温度ムラは小さくなり、また、内部の熱応力が過度に増加することもない。従って、充填層35に亀裂が生じたり、充填層35が剥離したりして、フィルタ外周部21Bと塗布層34との間に隙間が生じるおそれはない。よって、浄化されていない排気ガスが排出されるといった不具合は生じ得ない。
【0051】
集合体形成工程と切削工程とを行い、その後、充填層形成工程と塗布層形成工程とを行う第2の製造例を以下に説明する。
集合体形成工程と切削工程については、第1の製造例と同じである。充填層35をフィルタ外周部21Bに塗布する。その後、充填層35とフィルタ外周部21Bを覆うように塗布層34を形成する。充填層35の塗布では、フィルタ外周部21Bの仮想輪郭線(例えば円)よりも凹んだ箇所に選択的に充填層35を塗布する。この時点では、充填層35は前記仮想外周円よりも突出することが望ましい。それは、塗布層34の塗布後に、ハニカム構造体21の外側面の凹凸が少なくなるからである。ハニカム構造体21の外側面の凹凸は、排気漏れの要因となるばかりか、ハニカム構造体21をシール材(断熱材19)で保持しにくくなる。
【0052】
集合体形成工程と切削工程の後に、充填層形成工程と塗布層形成工程とを同時に行う第3及び第4の製造例を以下に説明する。
集合体形成工程と切削工程については、第1の製造例と同じである。第3の製造例では、充填層35と塗布層34を形成するペースト材料を、へらでフィルタ外周部21Bに塗布する。これにより、充填層35と塗布層34とを同時に形成することができる。第4の製造例では、フィルタ外周部21Bを筒状の冶具に収容する。充填層35と塗布層34を形成するペースト材料を冶具とフィルタ外周部21Bとの間の隙間に注入する。ペースト材料の乾燥後、冶具を外すことにより、ハニカム構造体21が得られる。冶具は互いに分離可能な複数の部品を組み合わせたものであることが望ましい。ハニカム構造体21を取り出しやすいからである。第4の製造例は工程数及び作業の簡単さの点で第3の製造例よりも好ましい。
【0053】
集合体形成工程の後に、充填層形成工程と塗布層形成工程とを行う製造方法の第5及び第6の製造例を以下に説明する。
第5の製造例では、押出加工により、所望の異形断面を有する第2のハニカム部材22Bを用意する。第6の製造例では、四角柱状のハニカム部材22を切削加工して、所望の異形断面を有する第2のハニカム部材22Bを用意する。複数の第1のハニカム部材22Aと、複数の第2のハニカム部材22Bとを接合材24により結束して集合体Sを形成する。充填層形成工程と塗布層形成工程については、第3及び第4の製造例を参照。第5の製造例は工程数及び作業の簡単さの点で第6の製造例よりも好ましい。第2乃至第6の製造例によっても、第1の製造例と同等の利点が得られる。
【0054】
充填層を形成することなく、複数のハニカム部材を結束するだけで、円形の垂直断面を有するハニカム構造体が得られるように、複数のハニカム部材を形成する方法も考えられる。この場合、いくつかのハニカム部材に、比較的もろい鋭角部分が生じることがある。鋭角部分は欠けやすいため、押出成形時に、その鋭角部分が欠けて丸みを帯びた外形を有するハニカム部材が製造されやすく、所望の形状を有するハニカム部材が正しく製造されないことがある。よって、充填層を形成しない前記方法は、ハニカム構造体21の歩留まりの点で好ましくない。これに対し、第1乃至第6の製造例によれば、ハニカム部材22に鋭角部分が生じない。よって、所望の形状を有するハニカム部材を正しく製造することができる。また、充填層を形成しない前記方法では、図6乃至8及び10のハニカム構造体21を製造することができるが、図9のハニカム構造体21を製造することはできない。よって、充填層を形成しない前記方法は、製造可能なハニカム構造体21の範囲の広さの点で好ましくない。
【0055】
フィルタコア部21Aを形成してから、フィルタ外周部21Bをフィルタコア部21Aの外側に形成してもよく、フィルタコア部21Aと、フィルタ外周部21Bとを別々に形成してから、フィルタコア部21Aとフィルタ外周部21Bとを一体化してもよく、フィルタコア部21Aとフィルタ外周部21Bとを同時に形成してもよい。
【0056】
好ましい実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1) 内部に保持される熱量が少ないとされるハニカム部材、すなわち垂直断面積が極度に小さいハニカム部材については、敢えてPMの除去に寄与させることを断念し、そうしたハニカム部材を存在させる代わりに、その箇所に充填層35を充填する構成を採用している。これにより、セル28の目詰まりが著しいとされるハニカム部材が排除される。その結果、フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりを抑制することができる。ひいては、ハニカム構造体21の外周部における亀裂の発生を好適に抑制することができる。
【0057】
(2)各充填層35の垂直断面積をS1で表し、フィルタコア部21Aを構成する各第1ハニカム部材22Aの垂直断面積をS0で表したとき、面積S0に対する面積S1の割合は4%未満である。従って、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して垂直断面積が4%未満となるハニカム部材の代わりに、充填層35を設ける結果、フィルタ外周部21Bにおけるセル28の目詰まりを抑制することができる。また、充填層35の垂直断面積S1を4%未満とすることで、排気ガスによる加熱に際しての充填層35の温度ムラが小さくなり、内部の熱応力が過度に増加することもなく、充填層35における亀裂の発生や剥離を抑制することができる。
【0058】
(3) フィルタ外周部21Bは、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上となる垂直断面積を有するハニカム部材22Bのみから形成されている。これにより、フィルタ外周部21Bを構成する各ハニカム部材22Bにおいては、隔壁27に捕集されたPMを十分に除去することができる程度の熱を保持することが可能となる。従って、本実施形態のハニカム構造体21の外周部においては、PMによるセル28の目詰まりを好適に抑制することができる。
【0059】
(4) 充填層35は、ハニカム構造体21の端面29A,29B間に亘り軸線Qに沿って充填されている。このため、フィルタ外周部21Bと、塗布層34との間に隙間が生じることはなく、フィルタ外周部21Bにおける熱伝導を良好なものとすることができる。
【0060】
(5) 充填層35には無機粒子が含有されており、十分な熱伝導性を有している。従って、フィルタ外周部21Bにおける熱伝導を良好なものとすることができる。
(6) 充填層35には、平均繊維径が1〜40μm、平均繊維長が10〜200μmである無機繊維が含有されており、耐熱性及び強度が高められている。このため、充填層35における、亀裂の発生や剥離を好適に抑制することができる。
【0061】
(7) 無機繊維のタップ密度は、55〜65g/cm3であるため、充填層35の強度及び接着性がより一層高められている。このため、充填層35における、亀裂の発生や剥離を抑制することが容易となる。
【0062】
(8) 充填層35の組成は、塗布層34の組成と同一であることから、充填層35と塗布層34との間における熱の伝導が極めて容易なものとなり、ハニカム構造体21の外周部における熱の伝導を好適に高めることができる。
【0063】
(9) ハニカム部材22のセル密度は、200〜300セル/平方インチであるため、排気ガス中のPMを十分に捕集し得る、隔壁27の表面積を確保することができる。また、圧力損失の低減を図ることができ、セルの内部におけるPMの目詰まり(ブリッジ)も極力抑制することができる。
【0064】
(10) 隔壁27の厚みは0.33mm以下であるため、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMを除去する際の隔壁温度の上昇速度が高まり、ひいてはPMの除去を容易に行うことができる。また、隔壁の厚みを0.1mm以上とすることで、ハニカム構造体21の十分な機械的強度を確保することができる。
【0065】
(11) ハニカム部材22の隔壁27には酸化触媒が担持されていることが好ましい。この場合、隔壁27の表面及び内部に捕集されたPMの除去を促進することができる。すなわち、PMを容易に燃焼及び浄化することができる。
【0066】
好ましい実施形態は、次のように変更することも可能である。
図7に示す第1の変形例のように、断面が楕円形のハニカム構造体21を採用してもよい。この場合、充填層35は、ハニカム構造体21の外側面であって、中心Xの回りの等角度間隔位置(45度、135度、225度、315度の位置)に設けられている。この例において0度位置は、中心Xから短軸Lに沿った延長線上にある、ハニカム構造体21の外側面である。
【0067】
図8に示す第2の変形例のように、垂直断面が略三角形のハニカム構造体21を採用してもよい。
充填層35及び塗布層34の組成を同一のものとしたが、これらは異なっていてもよい。例えば、塗布層34には無機中空体を含有せず、充填層35にのみ無機中空体が含有されていてもよい。
【0068】
ハニカム構造体21の端面29A,29B間に亘って充填層35を設けたが、充填層35は、少なくともハニカム構造体21の上流側端面29Aの近傍に設けられればよい。
フィルタ外周部21Bの外側面において0度、90度、180度、270度の位置に充填層35を設けたが、充填層35の形成位置はこれに限定されるものではなく、充填層35の形成位置は、ハニカム構造体21の直径や、ハニカム部材22の結束数により適宜変更される。例えば、図9に示す第3の変形例のように、ハニカム部材22を32個結束させて、直径が凡そ203mmのハニカム構造体21を製造する場合、充填層35は、ハニカム構造体21の外側面において、中心Xに対して45度、135度、225度、315度の位置に配置してもよい。この例において0度位置は、中心Xに隣接する第1ハニカム部材22Aの外壁26のうち、方向Pと平行な一外壁26に沿った延長線上にある、ハニカム構造体21の外側面である。
【0069】
ハニカム構造体21の直径の大きさや、結束させるハニカム部材22の個数によっては、充填層35を必要としない場合がある。例えば、図10に示す第4の変形例のように、本実施形態のハニカム部材22を45個結束させて、直径が凡そ228mmのハニカム構造体21を製造する場合である。この場合、フィルタ外周部21Bを構成する各ハニカム部材22Bの垂直断面積S2は、フィルタコア部21Aを構成するハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対して4%以上となる。
【0070】
第1ハニカム部材22Aを形成する多孔質セラミックよりも熱伝導率の低い材料により、第2ハニカム部材22Bを形成してもよい。この場合、フィルタ外周部21Bにおける断熱効果が高くなり、ケーシング18側に熱が逃げにくくなる。これにより、フィルタ外周部21Bの温度の低下が抑制され、PMの除去の効率も良くなる。
【0071】
本実施形態のハニカム構造体は自然着火方式以外の方式の排気ガス浄化装置に使用することができる。例えば、ヒータやバーナ等の加熱手段によってPMを除去する排気ガス浄化装置に使用することができる。また、ボイラーのような内燃機関以外の燃焼装置の排気ガス浄化装置に使用することができる。
【0072】
本発明には以下の構成を有するハニカム構造体が含まれる。
(1) 接合材により結束された複数のハニカム部材であって、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する前記複数のハニカム部材と、塗布層からなる外側面とを備えるハニカム構造体であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する断面を有し、各断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する断面を有し、各断面が四角形とは異なる形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部とを備え、各第1のハニカム部材の前記断面の断面積をS0で表し、前記充填層の前記軸線に直交する断面をS1で表したとき、前記断面積S0に対する前記断面積S1の割合が4%未満であることを特徴とするハニカム構造体。この構成によれば、フィルタ外周部を構成する各ハニカム部材においては、隔壁に捕集されたPMを十分に除去することができる程度の熱を保持することが可能となり、PMによるセルの目詰まりを好適に抑制することができる。
【0073】
(2) 前記断面積S0に対する前記断面積S1の割合が9%未満であるハニカム構造体。
(3) 前記軸線に直交する断面が楕円形状であり、前記ハニカム構造体は、前記ハニカム構造体の外側面において、前記ハニカム構造体の中心から短軸に沿った延長線上にある0度位置と、前記0度位置から45度、135度、225度、及び315度だけそれぞれ離間した45度位置、135度位置、225度位置、及び315度位置とを有し、複数の充填層が、前記45度位置、前記135度位置、前記225度位置、及び前記315度位置に配置されているハニカム構造体。この構成によれば、楕円形の断面を有するハニカム構造体において、フィルタ外周部における、PMの除去を確実に行うことができる。
【0074】
次に、本発明の試験例と比較例を説明する。
<ハニカム構造体の製造>
(試験例1)
試験例1では、図2、6に示すハニカム構造体21を作製した。まず、平均粒径10μmのα型炭化珪素粉末7000重量部と、平均粒径0.5μmのα型炭化珪素粉末3000重量部とを湿式混合し、得られた混合物10000重量部に対して有機バインダ(メチルセルロース)570重量部と、水1770重量部とを加え、混錬して混合組成物を得た。その混合組成物に可塑剤(日本油脂社製、ユニルーブ(登録商標))330重量部と、潤滑剤(グリセリン)150重量部とを加え、更に混錬した後、押出成形し、図3に示す角柱状の生成形体を作製した。
【0075】
次に、マイクロ波乾燥機等を用いて、生成形体を乾燥して、セラミック乾燥体を得た。生成形体の組成と同様の組成を有する封止材ペーストを所定のセルの開口に充填した。乾燥機で乾燥させた後、セラミック乾燥体を400℃で脱脂し、常圧、2200℃、アルゴン雰囲気下で、3時間焼成し、炭化珪素焼結体からなるハニカム部材22(図3)を製造した。このハニカム部材22の寸法は34.3mm×34.3mm×150mm(H×W×L)、気孔率は42%、平均気孔径は11μm、セル密度は240セル/平方インチ(cpsi)、セル隔壁の厚さは0.3mmである。
【0076】
別途、耐熱性の接合材ペーストを調整した。この接合材ペーストの組成は、平均繊維長20μmで平均繊維径2μmのアルミナファイバー30重量%、平均粒径0.6μmの炭化珪素粒子21重量%、シリカゾル15重量%、カルボキシメチルセルロース5.6重量%、及び水28.4重量%である。接合材ペーストの粘度は30Pa・s(室温)である。
【0077】
別途、スペーサー(空隙保持部材)を用意した。各スペーサーは、両面に粘着材が塗布されたボール紙製で、直径5mm×厚さ1mmの円盤である。
各ハニカム部材22の各側面の各隅に1つのスペーサーを取り付けた。各スペーサーは、ハニカム部材22の隅を区画する2つの辺からそれぞれ6.5mmだけ離れた位置に取り付けた。スペーサー付きのハニカム部材22を4個×4個に結束し、集合体Sを組み立てた。
【0078】
次に、接合材ペースト供給装置に取り付けられたペースト供給室に集合体Sを設置した。ペースト供給室の内寸は、145mm×145mm×150mm(H×W×L)である。接合材ペースト供給装置は、集合体S中のハニカム部材22間の空隙に対応する位置に形成された、幅5mmの3つの供給溝を備える。各供給溝は、ペースト供給室の内面と接合材ペースト供給装置の内部とを連通する。ペースト供給室は、接合材ペースト供給装置に取り付けられた端部とは反対の端部に、開閉可能な底板を有する。この底板を閉じて、底板を集合体Sの端面(29Aまたは29B)に当接させることで、ハニカム部材22間の空隙を封止した。
【0079】
この状態で、接合材ペースト供給装置のペースト供給室に接合材ペーストを投入した。接合材ペーストを、ペースト供給室の内面から集合体Sの側面に0.2MPaの圧力で注入し、底板に当接した端面とは反対側の集合体Sの端面に0.05MPaの圧力で注入した。これにより、ハニカム部材22間の間隙に接合材ペーストを充填した。次に、集合体Sを100℃で1時間乾燥し、接合材ペーストを硬化させた。硬化後に、厚さ1mmの接合材24により一体化された集合体Sが得られた。
【0080】
次に、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバ(ショット含有率3%、平均繊維長20μm、平均繊維径6μm)22,3重量%、無機粒子しとして平均粒径0.3μmの炭化珪素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2含有率30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%、及び水39重量%を混合し、混錬することにより、充填層形成ペーストを調整した。
【0081】
集合体Sの外側面の4箇所に充填層形成ペーストを塗布して、120℃1時間乾燥して、充填層形成ペーストを硬化させ、充填層35を形成した(図5参照)。
次に、集合体Sをダイヤモンドカッターで切削し、直径142mmの円柱状のハニカムブロックを作製した。
【0082】
次に、無機繊維としてアルミナシリケートからなるセラミックファイバ(ショット含有率3%、平均繊維長20μm、平均繊維径6μm)22,3重量%、無機粒子しとして平均粒径0.3μmの炭化珪素粉末30.2重量%、無機バインダとしてシリカゾル(ゾル中のSiO2含有率30重量%)7重量%、有機バインダとしてカルボキシメチルセルロース0.5重量%、及び水39重量%を混合し、混錬することにより、塗布層形成ペーストを調整した。試験例1では、塗布層形成ペーストは充填層形成ペーストと同じ組成である。
【0083】
次に、塗布層形成ペーストをハニカムブロックの外側面に塗布して、120℃1時間乾燥して、塗布層形成ペーストを硬化させ、塗布層34を形成した。こうして、直径143mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体21を得た。試験例1のハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0084】
(試験例2〜10)
図2、6に示すように、試験例1と同様に製造した16個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束すなわち集合体Sを形成した。集合体Sの所定箇所に充填層35を設け、集合体Sを所定形状に切削加工して、垂直断面が円形のハニカム構造体21を得た。試験例2〜10ハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0085】
(試験例11〜13)
試験例1と同様に製造した32個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束すなわち集合体Sを形成した。集合体Sの所定箇所に充填層35を設け、集合体Sを所定形状に切削加工して、垂直断面が円形のハニカム構造体21を得た(図9参照)。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0086】
(試験例14、15)
試験例1と同様に製造した16個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束をすなわち集合体Sを形成した。集合体Sの所定箇所に充填層35を設け、集合体Sを所定形状に切削加工して、垂直断面が楕円形のハニカム構造体21を得た(図7参照)。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0087】
(試験例16)
試験例1と同様に4個×4個のハニカム部材22を接合材24で結束し、ハニカム部材22の束をすなわち集合体Sを形成した。次に、集合体Sをダイヤモンドカッターで切削し、平坦部32を有する直径142mmのハニカムブロックを作製した。試験例16では、充填層を形成する前に切削を行ってハニカムブロックを作製したため、このハニカムブロックの外側面は、図2(d)のフィルタ外周部21Bのものと同じである。
【0088】
次に、ハニカムブロックを直径143mm、長さ150mmの円柱状の冶具に収容し、この冶具を、接合材ペースト供給装置に取り付けられたペースト供給室に設置した。冶具は、ステンレス合金製の2つの半円柱状の部品からなり、分割可能である。冶具とハニカムブロックの曲面状の外側面との間に1mmの隙間が区画されるように、冶具は構成されている。接合材ペースト供給装置は、冶具とハニカムブロックとの間の隙間に対応した位置に複数のノズルを有する。ノズルから冶具とハニカムブロックとの間の隙間に試験例1の塗布層形成ペーストと同じ組成のペーストを注入した。
【0089】
冶具に収容された状態のハニカムブロックをペースト供給室から取り出し、120℃1時間乾燥して、ペーストを硬化させ、充填層35と塗布層34とを同時に形成した。こうして、直径143mm×長さ150mmの円柱状のハニカム構造体21を得た。試験例16のハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0090】
(試験例17)
試験例1では、ダイヤモンドカッターを用いて集合体を切削したが、試験例17では、四角柱状の複数のハニカム部材(第1のハニカム部材22A)と、複数種類の異形断面のハニカム部材(第2のハニカム部材22B)を、押出成形によって作製した。各ハニカム部材の組成は試験例1のものと同じである。第1のハニカム部材22Aの生成形体を押出成形する際に使用するダイ(金型)を所望の形状のダイに変更することにより、複数種類の異形断面の第2のハニカム部材22Bの生成形体を押出成形することができる。生成形体の乾燥、焼結等の処理については、試験例1を参照のこと。
【0091】
試験例1と同じ方法でハニカム部材22A、22Bを接合材24で結束して、平坦部32を有する直径142mmのハニカムブロックを作製した。試験例16と同じ方法でハニカムブロックに充填層35と塗布層34とを同時に形成した。試験例17のハニカム構造体21の構成の詳細を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
比較例1においては、図6に示すように20個のハニカム部材22からハニカム構造体を製造した。従って、比較例1のハニカム構造体は試験例1〜10の充填層35を備えていない。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
比較例2においては、図9に示すように、36個のハニカム部材22からハニカム構造体を製造した。従って、比較例2のハニカム構造体は試験例11〜13の充填層35を備えていない。このハニカム構造体の構成の詳細を表1に示す。
【0094】
(比較例3)
図10に示すように、45個のハニカム部材22を結束し、ハニカム部材22の束を形成した。ハニカム部材22の束を切削加工して、垂直断面が円形のハニカム構造体を得た。本比較例3のハニカム構造体21においては、充填層35に代用しなければならないハニカム部材22B、すなわち垂直断面積が極度に小さいハニカム部材22Bがフィルタ外周部21Bに存在している。ハニカム構造体に関する詳細については表1に示す。
【0095】
(比較例4)
試験例1と同様に、接合材24を用いて4個×4個のハニカム部材22を結束して集合体を作製した。充填層を形成せずに、ダイヤモンドカッターで集合体を切削して、図2(d)のように4つの平坦部32を有する直径142mmのハニカムブロックを作製した。ハニカムブロックの外側面に実施例1の塗布層形成ペーストを塗布した。ゴム製の平板スキージで塗布層の厚みを0.5mmに調節し、4つの平坦部を有するハニカム構造体を作製した。すなわち、比較例4のハニカム構造体の外側面は、図2(d)のフィルタ外周部21Bのものとほぼ同じである。
【0096】
【表1】
「集合体の寸法」:直径(φ)×長さ(L)を示す。
【0097】
「充填層位置」:試験例1〜13、16、17、及び比較例1〜4の角度の値は、図2(a)及び図9を参照のこと。試験例14及び15の角度の値は、図7を参照のこと。
「第2ハニカム部材の垂直断面積」:フィルタ外周部21Bを構成する各第2ハニカム部材22Bの垂直断面積のうち、最も小さい値を記す。表1中における、各垂直断面積の単位は、cm2である。
<充填層の物性評価>
上記各例のハニカム構造体21に設けられた充填層35(特に、充填層35に含有された無機繊維)に関する、下記の物性評価を行った。その結果を表2に示す。
(1)「無機繊維の平均繊維径」:走査型電子顕微鏡を用いて充填層35の断面を撮影し、そのときの写真からランダムに選択した100本の無機繊維の繊維径の平均値を算出した。
(2)「無機繊維の平均繊維長」:走査型電子顕微鏡を用いて充填層35の断面を撮影し、そのときの写真からランダムに選択した100本の無機繊維の繊維長の平均値を算出した。
(3)「無機繊維のタップ密度」:JIS R 1628−1997「ファインセラミックス粉末の嵩密度測定方法」の定容積測定法に従って測定して得た値をいう。
<ハニカム構造体の評価試験>
(評価1:目詰まりのしやすさ)
各例のハニカム構造体21を排気ガス浄化装置10に設置し、図11に示すように、回転数及びトルクを適宜変化させながら600秒間エンジンを運転させて、ハニカム構造体21による排気ガスの浄化試験を行った。その後、フィルタ外周部21Bを構成する第2ハニカム部材22Bのセル28がPMによって目詰まりするまで同様の試験を繰り返し行い、第2ハニカム部材22Bが目詰まりしたときの試験回数を求めた。そして、以下の基準に従い評価した。その結果を表2に示す。
○:浄化試験を150回以上行っても、第2ハニカム部材に目詰まりが確認されない
×:浄化試験を50回行ったとき、第2ハニカム部材に目詰まりが確認された
「目詰まりのしやすさ」に関しては、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対する、第2ハニカム部材22Bの垂直断面積S2の割合(S2/S0)の値と関連付けて考察を行った。
(評価2:充填層の耐久性)
評価1の浄化試験を150回行った後の、充填層の状態について、以下の基準に従い目視にて評価した。その結果を表2に示す。
○:変化なし、△:僅かな亀裂が認められる、×:剥離する 「充填層の耐久性」に関しては、第1ハニカム部材22Aの垂直断面積S0に対する、充填層35の垂直断面積S1の割合(S1/S0)の値や、無機繊維の性質と関連付けて考察を行った。ちなみに、表2中の「*」印は、評価1において、第2ハニカム部材22Bが目詰まりするまでの試験回数が少ないため、充填層の耐久性に関して正当な評価ができないといった理由から、評価を省略したことを意味する。
【0098】
比較例4のハニカム構造体について、評価1、2の測定中に排気ガスの漏れが発生したため、評価1、2は行えなかった。ガス漏れの原因はハニカム構造体をケーシング18に設置する際に、ハニカム構造体の外側面にある4つの平坦部と断熱材19との間に隙間が生じたためと考えられる。平坦部は、断熱材19によるハニカム構造体の保持力を低下させる。そのため、ハニカム構造体を断熱材19でタイトに締め付けても、使用時にハニカム構造体が移動したり、がたついたり、ガスが漏れたりするのを完全に防止することは困難である。この点、試験例1〜17のハニカム構造体には平坦部がないため、ハニカム構造体の移動、がたつき、ガス漏れは生じなかった。
【0099】
【表2】
表2に示すように、試験例1〜17においては、「S2/S0」の値が4%以上であり、フィルタ外周部21Bを構成する第2ハニカム部材22Bにおける目詰まりが確認されなかった。これは、フィルタ外周部21Bを構成する各第2ハニカム部材22Bが、PMを十分に除去し得る熱量を保持することが可能な容量(垂直断面積に対応)に設定されていることに起因するものと考えられる。一方、比較例1〜4においては、S2/S0の値が4%未満となり、垂直断面積が極度に小さいハニカム部材がフィルタ外周部21Bに存在している。このため、そうした特定のハニカム部材の内部においては、PMを十分に除去することができず、PMによるセル28の目詰まりが確認された。
【0100】
試験例1〜5、及び試験例11〜17においては、サイクル試験後の充填層35の状態に何ら変化はなかった。これは、無機繊維の平均繊維径が1〜40μm、平均繊維長が10〜200μm、タップ密度が55〜65g/cm3に設定されていることから、充填層35の耐熱性及び強度が十分に確保され、その結果、充填層35の耐久性が向上したものと考えられる。
【0101】
一方、試験例7〜10に関しては、充填層35に僅かな亀裂が認められた。これは、無機繊維が含有されていない、又は無機繊維の平均繊維径、平均繊維長及びタップ密度のいずれかが上記所定の範囲を満たしていないことから、充填層35の耐熱性及び強度が不十分であったことが要因と考えられる。また、試験例6及び試験例15においては、充填層35の剥離が認められた。これは、試験例6及び試験例15では「S1/S0」の値が4%以上であり、他の試験例と比較して、充填層35の垂直断面積が極度に大きいため、排気ガスによる加熱に際して温度ムラが生じやすくなるとともに、内部の熱応力が過剰なものとなり、最終的には剥離したものと考えられる。ちなみに、試験例14の結果から、上記「S1/S0」の値が9%未満であれば、充填層35の十分な耐久性を維持することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0102】
21…ハニカム構造体、21A…フィルタコア部、21B…フィルタ外周部、22…ハニカム部材、27…隔壁、28…セル、35…充填層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する複数のハニカム部材を接合材により結束して集合体を形成する集合体形成工程と、
前記集合体の外側面の所定箇所に充填層を設ける充填層形成工程と、
前記集合体の外側面に塗布層を塗布する塗布層形成工程とを備えることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記集合体の外側面を切削加工する切削工程を更に備える請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記集合体形成工程、前記充填層形成工程、前記切削工程、及び前記塗布層形成工程の順で行うことを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記集合体形成工程と前記切削工程とを行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを行うことを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを同時に行うことを特徴とする請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記複数のハニカム部材の各々が予め所定形状に形成されている場合、前記集合体形成工程を行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを行うことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを同時に行うことを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記集合体は、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部とからなり、前記製造方法は、前記集合体形成工程に先だって、前記複数のハニカム部材のいくつかを切削加工して、前記複数の第2のハニカム部材を形成する工程を更に備え、前記集合体形成工程は、前記フィルタコア部を形成する工程と、前記フィルタコア部の周囲に前記フィルタ外周部を形成する工程とを含む請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
接合材により結束された複数のハニカム部材であって、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する前記複数のハニカム部材と、塗布層からなる外側面とを備えるハニカム構造体であって、
前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部と、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面と、前記塗布層との間に設けられた充填層とを備え、
前記ハニカム構造体は、前記軸線に平行に延びる外面と、前記外面において、前記ハニカム構造体の中心に隣接する第1のハニカム部材の一外面に沿った延長線上にある0度位置と、前記0度位置から45度、135度、225度、及び315度だけそれぞれ離間した45度位置、135度位置、225度位置、及び315度位置とを有し、前記複数の充填層は、前記45度位置、前記135度位置、前記225度位置、及び前記315度位置に配置されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項10】
前記充填層は、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面に塗布され、乾燥、硬化を経て、切削により形成されていることを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項1】
各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する複数のハニカム部材を接合材により結束して集合体を形成する集合体形成工程と、
前記集合体の外側面の所定箇所に充填層を設ける充填層形成工程と、
前記集合体の外側面に塗布層を塗布する塗布層形成工程とを備えることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記集合体の外側面を切削加工する切削工程を更に備える請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記集合体形成工程、前記充填層形成工程、前記切削工程、及び前記塗布層形成工程の順で行うことを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記集合体形成工程と前記切削工程とを行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを行うことを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを同時に行うことを特徴とする請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記複数のハニカム部材の各々が予め所定形状に形成されている場合、前記集合体形成工程を行い、その後、前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを行うことを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記充填層形成工程と前記塗布層形成工程とを同時に行うことを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記集合体は、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部とからなり、前記製造方法は、前記集合体形成工程に先だって、前記複数のハニカム部材のいくつかを切削加工して、前記複数の第2のハニカム部材を形成する工程を更に備え、前記集合体形成工程は、前記フィルタコア部を形成する工程と、前記フィルタコア部の周囲に前記フィルタ外周部を形成する工程とを含む請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
接合材により結束された複数のハニカム部材であって、各々が外壁と、前記外壁の内側に設けられた隔壁と、前記隔壁により区画されて流体の流路として機能する複数のセルとを有する前記複数のハニカム部材と、塗布層からなる外側面とを備えるハニカム構造体であって、
前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記ハニカム構造体の軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が四角形である複数の第1のハニカム部材からなるフィルタコア部と、前記フィルタコア部の外側に配置されたフィルタ外周部であって、前記複数のハニカム部材のうち、各々が前記軸線に直交する垂直断面を有し、各垂直断面が異形状である複数の第2のハニカム部材を備えた前記フィルタ外周部と、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面と、前記塗布層との間に設けられた充填層とを備え、
前記ハニカム構造体は、前記軸線に平行に延びる外面と、前記外面において、前記ハニカム構造体の中心に隣接する第1のハニカム部材の一外面に沿った延長線上にある0度位置と、前記0度位置から45度、135度、225度、及び315度だけそれぞれ離間した45度位置、135度位置、225度位置、及び315度位置とを有し、前記複数の充填層は、前記45度位置、前記135度位置、前記225度位置、及び前記315度位置に配置されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項10】
前記充填層は、前記フィルタコア部及び前記フィルタ外周部のいずれか一方の外側面に塗布され、乾燥、硬化を経て、切削により形成されていることを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−27870(P2013−27870A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204448(P2012−204448)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2007−511736(P2007−511736)の分割
【原出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2007−511736(P2007−511736)の分割
【原出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】
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