説明

ハリコンドリンBアナログを使用した癌治療でのチューブリンアイソタイプのスクリーニング

細胞中の微小管の会合または解離を阻害する化学療法薬は、細胞複製の強力な阻害剤である。このような薬剤の例には、ハリコンドリンBアナログが含まれる。特定の癌の、ハリコンドリンBのアナログに対する感受性が、特定のチューブリンアイソタイプの発現、またはMAP−4およびスタトミンのような他の微小管関連タンパク質の発現と相関することが示された。このような相関は、特定の化学療法薬を使用した治療に適した患者を特定するのに使用することができる。このようなシステムにより、癌に対して最小限の効果しかないまたは効果のない細胞毒性の化合物で患者が治療されることが回避される。本発明は、異なる化合物および癌のタイプに対する相関を構築するシステムも提供する。このシステムは、抗微小管剤と、癌、例えば肺癌、乳癌および卵巣癌との相関を構築する上で特に有用となる。本発明はまた、本発明を実施するのに有用なキットおよび試薬も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハリコンドリンBアナログを使用した癌治療でのチューブリンアイソタイプのスクリーニングに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、合衆国法典第35巻(米国特許法)119条(e)に基づき、2004年12月9日出願の米国特許仮出願第60/634734号の優先権を主張するものであり、この文献は参照により本願に組み込まれる。
【0003】
背景技術
癌治療においては、多くの場合、患者に対し細胞毒性化合物を全身投与する。癌細胞は、患者の体内で正常細胞よりも急速に分裂するので、この細胞毒性化合物は癌細胞に対し、患者の正常細胞に対してよりも大きな作用を及ぼす。しかし、この現象によって、この化合物がもたらす重篤な害のある副作用は回避されない。この副作用は、体重減少、下痢、吐き気および脱毛から、貧血症、二次癌、臓器毒性といった重篤なものおよび死亡までも含む。残念なことに、効き目が現れないもしくは治療から実質的な利益が得られないにも関わらず副作用を発症してしまう患者が非常に多い。したがって、最初の投与を行う前に、どの患者に治療の効き目があるのかを予測することができれば極めて好都合である。しかし、多くの場合、患者に実際に薬剤を投与することなしに所定の癌に治療の効き目があるかどうかを判定するのは難しい。さらに、多くの場合、数週間治療を続けて初めて、癌がその治療に対して耐性である、つまり感受性でないことがはっきりする。腫瘍を分類する(例えば、病理学的分類、腫瘍マーカー)ために様々なシステムが設計され、これにより、薬剤の有効性が予測されるようになった。しかし、所定の癌に特定の化学療法薬が利くかどうかをより良好に予測する必要性が依然として残されている。
【0004】
ゲノミクスおよびプロテオミクスの登場により、癌細胞の遺伝子の発現を特徴付けることによって、癌に最大の効果をもたらす最適な治療を提供しかつ最小の副作用しかもたらさないような癌治療を臨床医が患者に対してテーラーメイドできるようになるということが一般的に期待されている。遺伝子の発現は、特定の薬剤または薬剤類が癌に効かないことを示す場合もあるし、効果があることを示す場合もある。ある患者の癌に治療の効果があるかどうかを予測できれば、医者は、効果のある癌治療の可能性を最大限に広げ、その一方で有害な副作用の危険を最小限にするようなテーラーメイド治療を行うことができるだろう。
【0005】
微小管重合を阻害する化合物が特定の癌を治療する上で効果的でないことが明らかになっている。例えば、パクリタキセル(Taxol)は、II型β−チューブリンを発現する細胞を治療する場合に効果的でないことが知られている(Haber et al., J. Biol. Chem. 270 (52): 31269-31275, 1995、参照により本願に組み込まれる)。よって、微小管の会合(重合)を阻害することが知られている薬剤に対して感受性である癌を持つ患者を選択するシステムが必要である。このような診断システムがあれば、微小管の会合を阻害することが知られている薬剤に対して感受性である癌を持つ患者のみを、上述の細胞毒性薬で治療することができるようになる。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、特定の化学化合物による治療が所定の癌患者に対し効き目があるかどうかを予測するためのシステムを提供し、そのシステムには、例えば方法、装置、材料、ポリヌクレオチド、試薬、ソフトウェア、キット等が含まれる。患者の癌細胞中のチューブリンアイソタイプまたは別の微小管関連の生体分子の発現を判定することによって、その癌に対して特定の化学化合物の効き目があるかどうかを評価することができる。このようにして、本発明を、癌(例えば、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌等)を持つ患者を選択および/または治療するために利用することができる。本発明による方法は、微小管の会合(重合)もしくは解離を阻害する、微小管を結合させるまたはチューブリンを結合させる有機化合物がその患者に効くかどうかを予測する上で特に有用である。
【0007】
本発明の特定の態様で効能が試験された化合物は、抗癌作用および/または抗有糸分裂作用のあるハリコンドリンBアナログである。一般に、このアナログは、以下に示す式(I)を有している。
【0008】
【化32】

【0009】
上式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、または1〜13個の置換基、好ましくは1〜10個の置換基、例えば、シアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソから選択される少なくとも1つの置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、置換基の数は、例えば1〜6、1〜8、2〜5または1〜4であり、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール(例えば、p−フルオロフェニルまたはp−クロロフェニル)、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール(例えば、p−メトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、p−エトキシフェニルまたは3,5−ジエトキシフェニル)、C6〜10アリール−C1〜6アルキル(例えば、ベンジルまたはフェネチル)、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリール、およびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または好ましくは0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであり、例えば、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−、例えば、環外メチリデン、イソプロピリデン、メチレンまたはエチレンであり、
Qは、C1〜3アルキルであり、好ましくはメチルであり、
Tは、メチレン、エチレン、またはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、RはHまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−である。
【0010】
ハリコンドリンBアナログ、ならびにその合成、治療方法および医薬組成物は、米国特許第6214865号、第6365759号、第6469182号および第6653341号明細書に記載されており、また、2004年6月3日付け出願の米国特許出願第60/576642号明細書、2004年11月10日付け出願の米国特許出願第60/626769号明細書および2003年10月16日付け出願の米国特許第10/687526号明細書に記載されており、これらの各特許文献は、参照により本願に組み込まれる。特に有用なハリコンドリンBのアナログの1つは、E7389であり、以下の式(VI)で示される。
【0011】
【化33】

【0012】
一態様では、本発明によるシステムは、癌細胞におけるチューブリンアイソタイプおよび/または微小管関連タンパク質の発現レベル(発現量)またはタンパク質レベルに基づき、その患者の癌が、特定の化学化合物を用いる治療に対し感受性があるかどうかを予測することによって、治療する患者を特定する方法を含む。特定の態様では、患者の癌は、特に関連のあるチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子を、対照の細胞または細胞集団に対して2倍、3倍、4倍または5倍の量で発現する。この方法によって、特定の化合物を用いた治療に関して患者が良い(適した)対象者なのか悪い(適さない)対象者なのかの分類が可能となる。患者が、治療に関して「良い」対象者である場合には、その患者には、必要に応じて、治療に効果的な量の化合物を投与してもよい。
【0013】
この方法では、癌から試料を得て、1つ以上のチューブリンアイソタイプまたはチューブリン関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。検出された発現レベルまたはタンパク質レベルを基にして、ハリコンドリンBアナログのような化学化合物が、癌を持つ患者を治療するのに有効かどうかを、本明細書に記載の相関に基づき予測することができる。この方法は、抗微小管剤または微小管結合剤に対して感受性のある癌、例えば乳癌、卵巣癌および肺癌を治療する際の有効性を予測する上で特に有用である。遺伝子の発現を検出するまたはタンパク質レベルを検出するために、任意の利用可能な技術を使用することができる。例えば、チューブリンアイソタイプまたはチューブリン関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルは、PCR、遺伝子チップ、イムノアッセイまたは質量分析によって検出することができる。
【0014】
特定の態様では、ハリコンドリンBアナログ(式I−VIに示す)を用いた治療を行うための癌患者を特定する診断方法は、以下のステップ、すなわち
(a)患者の癌から試料を得て、
(b)前記試料を、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに関して分析し、この場合、化学化合物に対する感度とそのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルとの間に相関が存在し、
(c)前記少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて患者を特定することを含む。
【0015】
別の態様では、ハリコンドリンBアナログ(式I−VIに示す)を用いた治療を行う癌患者を特定する診断方法は、以下のステップ、すなわち
(a)患者の癌から得られた試料を、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに関して分析し、この場合、化学化合物に対する感度と前記マーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルとの間に相関が存在し、
(b)前記少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて患者を特定することを含む。
【0016】
本発明は、乳癌細胞中のβ−チューブリンのIII型アイソタイプの発現が、ハリコンドリンBの特定のアナログ(例えばE7389)およびヘミアステリンの特定のアナログ(例えばE7974)(例1を参照)を含む特定のチューブリン結合剤に対する感度と相関することを実証している。本発明の発明者らはさらに、β−チューブリンのIII型アイソタイプの発現が、特定のヘミアステリンアナログ(例1、ならびに2004年12月9日付け出願の「Tubulin Isotype Screening in Cancer Therapy using Hemiasterlin Analogs」と題する米国特許出願第60/634756号明細書を参照されたい、この特許文献は参照により本願に組み込まれる)を含む特定のチューブリン結合剤に対する感度と相関することを実証している。また、IVb型、V型およびVI型β−チューブリンアイソタイプ、特にIII型、IVb型およびV型β−チューブリンアイソタイプを含む別のβ−チューブリンアイソタイプも、E7389に対する感度と相関することを見出した。1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBAl/k−α1)が、E7389に対する感度と相関があることも見出した。
【0017】
別の態様で、本発明は、ハリコンドリンBアナログによる治療に対して「良い」対象者と特定された患者を治療するための方法を提供する。特定の態様では、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択された少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて、癌患者を治療するための化合物を選択する方法が、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択された少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて、上述の式(I)の化合物を患者に投与することを含む。
【0018】
別の態様で、本発明は、癌の治療のための医薬品の製造における本明細書に記載の式I〜VIの化合物の使用を提供し、この使用においては、患者の前記癌が、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択された少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを有すると特定され、化学化合物の感度と前記マーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルとの間での相関が存在する。
【0019】
本発明は、別の態様では、癌の治療のための医薬品の製造における式I〜VIの化合物の使用であって、その癌を持つ患者が、本明細書に記載の本発明による診断方法によって特定された場合の使用を提供する。
【0020】
本発明のシステムは、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルの、他の細胞毒性剤に対する癌の感度との相関を測定するシステムも提供する。この方法では、様々な癌細胞群を試験化合物に曝露する。細胞の成長阻害を試験し、特定のチューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルも評価する。その後、試験薬剤に対する細胞群の感度と対象の遺伝子の発現レベルとの間の相関を計算する。慣例の相関係数(ピアソンr)のしきい値は、0.05以下のp値で有意と認められる。0.20以下、0.15以下または0.10以下のp値も使用することができる。このような相関を、本発明のシステムにおいて、試験化合物を使用して患者を選択し、治療するために利用することができる。
【0021】
特定の態様では、化学化合物に対する感受性とマーカー遺伝子(例えば、チューブリンアイソタイプ、微小管関連生体分子(例えば、MAP4、スタトミン(stathmin)、Tau)の発現との相関を測定する方法は、
(a)細胞、典型的には癌細胞を準備し、
(b)前記細胞を上記の式(I)の化合物に接触させ、
(c)前記細胞を、成長阻害についてアッセイし、
(d)前記細胞中のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連遺伝子の発現を測定し、
(e)前記1つ以上のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルと、試験される化合物に対する感受性との相関を決定することを含む。特定の態様では、相関を決定する方法は、インビトロの方法である。特定の態様では、相関は、直線回帰分析を利用して決定する。別の態様では、相関は、段階的重回帰分析(multiple stepwise regression analysis)を利用することにより決定する。
【0022】
別の態様で、本発明は、特定のチューブリンアイソタイプまたはチューブリン関連タンパク質を発現する癌細胞を治療するのに有効な化合物を特定するスクリーニング方法を提供する。試験化合物を、特定の時間にわたり細胞(例えば、癌細胞群)と接触させる。細胞の成長阻害を測定し、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルを判定する。次に、そのデータを利用して、特定のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子を発現する細胞の感度と試験化合物との相関を構築することができる。慣例の相関係数(ピアソンr)のしきい値は、0.05以下のp値で有意と認められる。0.20以下、0.15以下または0.10以下のp値も使用することができる。この方法は、臨床対象者を特定するかまたは臨床対象者を探す際に先導化合物(lead compound)を特定するのに使用することができる。化合物をスクリーニングするこのようなシステムは、公知の他の化学療法薬に対して耐性のある癌を治療するための化学化合物を探す上で特に有用である。例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))が、II型β−チューブリンを発現する細胞の治療には効果的でないことが知られている(Haber et al., J. Biol. Chem. 270 (52): 31269-31275, 1995、参照により本願に組み込まれる)。本発明によるスクリーニング方法は、II型β−チューブリンまたは他の任意のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子を発現する癌に効果的である化合物を探す上で有用となろう。
【0023】
本発明は、上述のスクリーニング方法、分類方法または特定方法の実施で有用なキットも含む。このキットは、上記方法を実施するための、試薬、例えば、酵素、緩衝剤、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、例えばプライマーおよびプローブ、試験化合物(例えば抗腫瘍薬)、細胞群等を含んでいてよい。方法がPCRを利用する場合には、PCRのための試薬、例えば、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連タンパク質に特異的なプライマー、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、対照テンプレート、緩衝剤等を、キットに含めることができる。上記方法がイムノアッセイを利用して遺伝子発現を検出する場合には、1つ以上のチューブリンアイソタイプ、またはチューブリン関連タンパク質もしくは微小管関連タンパク質または他の生体分子に対する抗体のような試薬を、キットに含めることができる。チューブリンアイソタイプまたは微小管関連遺伝子の領域に対して相補的なヌクレオチド配列を有する遺伝子チップも、遺伝子発現を評価するためのキットに設けられていてよい。このキットは、癌の試料を得るための道具および試薬、例えば、シリンジ、ニードル、保存容器、緩衝剤等を含んでいてもよい。このキットは、ポリTTTTT樹脂のような、癌細胞からRNAを抽出するための材料を含んでいてよい。
【0024】
本発明は、例えば、1つ以上のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルを検出するために、プローブまたはプライマーとして有用なポリヌクレオチドも提供する。実際には、有用なプローブまたはプライマーは、チューブリンのアイソタイプのmRNAまたはcDNAに、他のアイソタイプと特に相互反応することなく結合する(例えば、プローブまたはプライマーは、アイソタイプ間でのチューブリンのC末端において観察される配列の差異を利用することができる)。プライマーおよびプローブは、別の微小管関連生体分子のmRNAまたはcDNAに関するものであってもよい。特定の態様では、PCRプライマーおよびプローブは、チューブリンアイソタイプ、特にα−チューブリンアイソタイプおよびβ−チューブリンアイソタイプの発現レベルを測定する上で有用である。別の態様では、PCRプライマーおよびプローブは、微小管関連生体分子、例えば、Tau、スタトミンおよびMAP4の発現レベルを測定する上で有用である。
【0025】
定義:
以下に、本願明細書および本願特許請求の範囲で使用される化学用語を説明する。
【0026】
「アシル」という用語は、ここで使用する限り、一般式−C(=O)Rを有する基を指し、この場合、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環式、ヘテロ環式または芳香族ヘテロ環式である。アシル基の一例は、アセチルである。
【0027】
「アルキル」という用語は、ここで使用する限り、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素部分から水素原子を1つ除去することによって誘導される、飽和の直鎖または分枝炭化水素ラジカルを指す。いくつかの態様では、本発明で使用されるアルキル基は、1〜10個の炭素原子を含む。別の態様では、使用されるアルキル基は、1〜8個の炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜6個の炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜4個の炭素を含む。アルキルラジカルの例には、限定されることなく、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、s−ペンチル、イソペンチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、s−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−デシル、n−ウンデシル、ドデシルおよびこれらに類するものが含まれ、これらの基は1つ以上の置換基を有していてもよい。
【0028】
「アルコキシ」という用語は、ここで使用する限り、酸素原子を介して親分子部分に結合する飽和基(つまり、アルキル−O−)または不飽和基(つまり、アルケニル−O−およびアルキニル−O−)を指す。特定の態様では、前記アルキル基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。別の特定の態様では、本発明で使用されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。例としては、限定されることなく、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、t−ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、ネオペントキシ、n−ヘキソキシおよびこれらに類するものが含まれる。
【0029】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する炭化水素部分から水素原子を1つ除去することによって誘導された一価の基を指す。特定の態様では、本発明で使用されるアルケニル基は1〜20個の炭素原子を含む。いくつかの態様では、本発明で使用されるアルケニル基は1〜10個の炭素原子を含む。別の態様では、使用されるアルケニル基は1〜8個の炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルケニル基は1〜6個の炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルケニル基は1〜4個の炭素を含む。アルケニル基には、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル2−ブテン−1−イルおよびこれらに類するものが含まれる。
【0030】
「アルキニル」という用語は、ここで使用する限り、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する炭化水素から水素原子を1つ除去することによって誘導された一価の基を指す。特定の態様では、本発明で使用されるアルキニル基は1〜20個の炭素原子を含む。いくつかの態様では、本発明で使用されるアルキニル基は1〜10個の炭素原子を含む。態様では、使用されるアルキニル基は1〜8個の炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキニル基は1〜6個の炭素原子を含む。代表的なアルケニル基には、限定されることなく、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルおよびこれらに類するものが含まれる。
【0031】
「アルキルアミノ」、「ジアルキルアミノ」および「トリアルキルアミノ」という用語は、ここで使用する限り、窒素原子を介して親分子部分に結合する、それぞれ1、2または3つの上で定義したアルキル基を指す。「アルキルアミノ」という用語は、−NHR’という構造を有する基を指し、ここで、R’は、上に定義したようなアルキル基である。「ジアルキルアミノ」という用語は、−NHR’R’’という構造を有する基を指し、ここでR’およびR’’は、それぞれ独立して、アルキル基からなる群から選択される。「トリアルキルアミノ」という用語は、−NHR’R’’R’’’という構造を有する基を指し、ここでR’、R’’およびR’’’は、それぞれ独立して、アルキル基からなる群から選択される。特定の態様では、このアルキル基は1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。特定の別の態様では、このアルキル基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。さらに、任意に、R’、R’’および/またはR’’’は合わせて−(CH−であってよく、ここで、kは2〜6の整数である。例としては、限定されることなく、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノ、イソプロピルアミノ、ピペリジノ、トリメチルアミノおよびプロピルアミノが挙げられる。
【0032】
「アルキルチオエーテル」および「チオアルコキシ」という用語は、硫黄原子を介して親分子部分に結合する飽和基(つまり、アルキル−S−)または不飽和基(つまり、アルケニル−S−およびアルキニル−S−)を指す。特定の態様では、このアルキル基は1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。特定の別の態様では、このアルキル基は1〜10個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、1〜8個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。さらに別の態様では、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。チオアルコキシ部分の例には、限定されることなく、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n−ブチルチオおよびこれらに類するものが含まれる。
【0033】
「アリール」という用語は、ここでは、少なくとも1つの芳香環を有する不飽和環式部分を指す。アリール基は、5〜15個、好ましくは5〜12個の炭素原子を含んでいてよく、5〜7員環を含んでいてよい。特定の態様では、アリール基は、1つまたは2つの芳香環を有する単環式または二環式の炭素環系を指し、限定されることなく、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルおよびこれらに類するものが含まれる。アリール基は、分枝および非分枝のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、ヒドロキシ、ハロ、メルカプト、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニルおよびカルボキシアミドからなる群から選択される置換基で置換されていてもいなくてもよい。さらに、置換されたアリール基には、テトラフルオロフェニルおよびペンタフルオロフェニルが含まれる。
【0034】
「カルボン酸」という用語は、ここで使用する限り、式−COHの基を指す。
【0035】
「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、ここで使用する限り、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を指す。
【0036】
「ヘテロ環式」という用語は、ここで使用する限り、芳香族または非芳香族の、部分的に不飽和のまたは完全に飽和された3〜10員環系を指し、大きさとしては3〜8個の原子の単環ならびに二環系および三環系が含まれ、非芳香族環に結合している芳香族5員または6員アリールもしくは芳香族へテロ環式基が含まれていてよい。これらのヘテロ環には、酸素、硫黄および窒素から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有するものが含まれ、この場合、窒素および硫黄ヘテロ原子が任意に酸化されていてよく、窒素ヘテロ原子が任意に第四級化されていてよい。特定の態様では、ヘテロ環式という用語は、非芳香族の5、6または7員環または多環式基を指し、少なくとも1つの環原子が、O、SおよびNから選択されるヘテロ原子であり(窒素および硫黄のヘテロ原子は、必要に応じて酸化されていてよい)、限定されることなく、酸素、硫黄および窒素から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する結合された6員環を有する二環式または三環式基が含まれ、(i)各5員環は0〜2個の二重結合を有しており、各6員環は0〜2個の二重結合を有しており、各7員環は0〜3個の二重結合を有しており、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化されていてよく、(iii)窒素へテロ原子は、任意に第四級化されていてよく、(iv)上記任意のヘテロ環は、アリールまたはヘテロ環に結合されていてよい。
【0037】
「芳香族ヘテロ環式」という用語は、ここで使用する限り、5〜10個の環原子を有する環式芳香族ラジカルを指し、1個の環原子が、硫黄、酸素および窒素から選択され、0、1または2個の環原子が、硫黄、酸素および窒素から独立して選択される追加的なヘテロ原子であり、残りの環原子が炭素であり、このラジカルは、任意の環原子を介して分子の残基に結合されており、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルおよびこれらに類するものである。芳香族ヘテロ環式基は、分枝および非分枝のアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロアルキル、アルコキシ、チオアルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリアルキルアミノ、アシルアミノ、シアノ、ヒドロキシ、ハロ、メルカプト、ニトロ、カルボキシアルデヒド、カルボキシ、アルコキシカルボニルおよびカルボキシアミドからなる群から選択される置換基で置換されていてもいなくてもよい。
【0038】
本発明の化合物に包含されうる具体的なヘテロ環式および芳香族ヘテロ環式基には、3−メチル−4−(3−メチルフェニル)ピペラジン、3−メチルピペリジン、4−(ビス−(4−フルオロフェニル)メチル)ピペラジン、4−(ジフェニルメチル)ピペラジン、4−(エトキシカルボニル)ピペラジン、4−(エトキシカルボニルメチル)ピペラジン、4−(フェニルメチル)ピペラジン、4−(l−フェニルエチル)ピペラジン、4−(1,1−ジメチルエトキシカルボニル)ピペラジン、4−(2−(ビス−(2−プロペニル)アミノ)エチル)ピペラジン、4−(2−(ジエチルアミノ)エチル)ピペラジン、4−(2−クロロフェニル)ピペラジン、4−(2−シアノフェニル)ピペラジン、4−(2−エトキシフェニル)ピペラジン、4−(2−エチルフェニル)ピペラジン、4−(2−フルオロフェニル)ピペラジン、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、4−(2−メトキシエチル)ピペラジン、4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン、4−(2−メチルフェニル)ピペラジン、4−(2−メチルチオフェニル)ピペラジン、4−(2−ニトロフェニル)ピペラジン、4−(2−ニトロフェニル)ピペラジン、4−(2−フェニルエチル)ピペラジン、4−(2−ピリジル)ピペラジン、4−(2−ピリミジニル)ピペラジン、4−(2,3−ジメチルフェニル)ピペラジン、4−(2,4−ジフルオロフェニル)ピペラジン、4−(2,4−ジメトキシフェニル)ピペラジン、4−(2,4−ジメチルフェニル)ピペラジン、4−(2,5−ジメチルフェニル)ピペラジン、4−(2,6−ジメチルフェニル)ピペラジン、4−(3−クロロフェニル)ピペラジン、4−(3−メチルフェニル)ピペラジン、4−(3−トリフルオロメチルフェニル)ピペラジン、4−(3,4−ジクロロフェニル)ピペラジン、4−3,4−ジメトキシフェニル)ピペラジン、4−(3,4−ジメチルフェニル)ピペラジン、4−(3,4−メチレンジオキシフェニル)ピペラジン、4−(3,4,5−トリメトキシフェニル)ピペラジン、4−(3,5−ジクロロフェニル)ピペラジン、4−(3,5−ジメトキシフェニル)ピペラジン、4−(4−(フェニルメトキシ)フェニル)ピペラジン、4−(4−(3,1−ジメチルエチル)フェニルメチル)ピペラジン、4−(4−クロロ−3−トリフルオロメチルフェニル)ピペラジン、4−(4−クロロフェニル)−3−メチルピペラジン、4−(4−クロロフェニル)ピペラジン、4−(4−クロロフェニル)ピペラジン、4−(4−クロロフェニルメチル)ピペラジン、4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン、4−(4−メトキシフェニル)ピペラジン、4−(4−メチルフェニル)ピペラジン、4−(4−ニトロフェニル)ピペラジン、4−(4−トリフルオロメチルフェニル)ピペラジン、4−シクロヘキシルピペラジン、4−エチルピペラジン、4−ヒドロキシ−4−(4−クロロフェニル)メチルピペリジン、4−ヒドロキシ−4−フェニルピペリジン、4−ヒドロキシピロリジン、4−メチルピペラジン、4−フェニルピペラジン、4−ピペリジニルピペラジン、4−(2−フラニル)カルボニル)ピペラジン、4−((l,3−ジオキソラン−5−イル)メチル)ピペラジン、6−フルオロ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−メチルキノリン、1,4−ジアザシクロヘプタン、2,3−ジヒドロインドリル、3,3−ジメチルピペリジン、4,4−エチレンジオキシピペリジン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、アザシクロオクタン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、チオモルホリンおよびトリアゾールが含まれる。
【0039】
「カルバモイル」という用語は、ここで使用する限り、式−CONHのアミド基を指す。
【0040】
「カルボニルジオキシ」という用語は、ここで使用する限り、式−O−CO−ORのカルボネート基を指す。
【0041】
「炭化水素」という語は、ここで使用する限り、水素および炭素を有する任意の化学基を指す。炭化水素は、置換されていても置換されていなくてもよい。炭化水素は、不飽和、飽和、分枝、非分枝、環式、多環式またはヘテロ環式であってよい。典型的な炭化水素には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、アリル、ビニル、n−ブチル、t−ブチル、エチニル、シクロヘキシル、メトキシ、ジエチルアミノおよびこれらに類するものが含まれる。当業者に知られているように、いかなる置換を行う場合でも、全ての原子価が満たされていなくてはならない。
【0042】
「任意に」といった語が前にあるないに関わらず、「置換された」という語や「置換基」という語は、ここで使用する限り、当該分野の当業者によって理解されるように、全ての原子の原子価が維持されるという条件を満たしながら或る官能基を別の官能基に代える能力を指す。所与の構造において、1つより多い位置が、特定の基から選択される1つより多い置換基で置換される場合には、それぞれの位置の置換基は、同じであっても異なっていてもよい。置換基は、さらに置換されていてもよい(例えば、アリール置換基が、それ以外の別の置換基、例えば、1つ以上の位置でさらにフッ素で置換されている別のアリール基を有していてよい)。
【0043】
「チオヒドロキシ」または「チオール」という語は、ここで使用する限り、式−SHの基を指す。
【0044】
「ウレイド」という語は、ここで使用する限り、式−NH−CO−NHの尿素基を指す。
【0045】
以下に説明するのは、本出願を通して使用されるより一般的な用語である。
【0046】
「抗体」:抗体という語は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンのフラグメントを指し、天然由来であっても完全にもしくは部分的に合成によって製造されていてもよい。特異的な結合能を保持するその全ての誘導体も、この語に含まれる。このようなタンパク質は、天然由来であってもよいし、部分的もしくは完全に合成により製造されていてもよい。抗体は、単クローン性であっても多クローン性であってもよい。抗体は、IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを含むあらゆる免疫グロブリンのクラスの1つであってよい。しかし、本発明では、IgGのクラスの誘導体が好ましい。特定の態様では、本発明において有用な抗体は、特定のマーカーに対して特異的である。抗体は、チューブリンの特定のアイソタイプに対して特異的であって、別のチューブリンアイソタイプと相互反応しないものが好ましい。特定の態様では、抗体は、標識されているか(例えば、放射線同位体、蛍光染料)、タグ付けされているか(例えば、アルカリフォスファターゼ)、または検出可能となるよう誘導されている。
【0047】
「抗体フラグメント」:抗体フラグメントという語は、抗体のフルサイズよりも長さの短い誘導体を指す。好ましくは、抗体フラグメントは、フルサイズの長さを有する抗体の特異的結合能の少なくとも重要な部分を保持している。抗体フラグメントの例としては、限定されることなく、Fab、Fab’、F(ab’)、scFv、Fv、dsFv抗体、ならびにFdフラグメントが含まれる。抗体フラグメントは、任意の手段で製造することができる。例えば、抗体フラグメントは、無傷の抗体のフラグメント化によって酵素によりまたは化学的に製造してもよいし、部分的な抗体の配列をコードする遺伝子から組換えによって製造してもよい。別態様では、抗体フラグメントは、完全にまたは部分的に合成によって製造されていてよい。抗体フラグメントは、必要に応じて、単鎖の抗体フラグメントであってよい。別態様では、フラグメントは、例えばジスルフィド結合によって結合している複数の鎖を有していてよい。フラグメントは、任意に、多分子錯体であってもよい。有効な抗体フラグメントは、通常、少なくとも約50のアミノ酸を、典型的には、少なくとも約200のアミノ酸を有している。
【0048】
「動物」:動物という語は、ここで使用する限り、ヒト、ならびにヒトでない動物、例えば、ほ乳類、鳥類、は虫類、両生類および魚類を含む動物を指す。好ましくは、ヒトでない動物は、ほ乳類(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長類またはブタ)である。動物は、家畜化された動物であってよい。動物は、遺伝子組み換え動物であってよい。特定の好ましい態様では、この動物はヒトである。
【0049】
「〜に関連(結合)する(associated with)」:2つの対象物が互いに「関連(結合)する」場合、本明細書の記載では、これらの対象物は、直接または間接の共有結合性または非共有結合性の相互作用によって結合している。好ましくは、この関連は、共有結合性である(例えば、アミド、ジスルフィドまたはエステル結合)。好ましい非共有結合性の相互作用には、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁気的相互作用、静電気的相互作用等が含まれる。
【0050】
「化学化合物」:一般に、「化学化合物」という語は、ここで使用する限り、化学療法薬として、細胞の成長を阻害するもしくは細胞を死亡させるために使用することのできる、または細胞の成長を阻害するもしくは細胞を死亡させる性能について試験された薬剤を指す。特に、癌細胞を死亡させるまたは癌細胞の成長を阻害する薬剤が含まれる。化学化合物は、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。好ましい化学化合物は、有機化合物であり、特に低分子の化合物である。特定の態様では、化学化合物は、本明細書に記載するようにハリコンドリンBアナログである。化学化合物は、生体分子、例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂肪、脂質等も指す。
【0051】
「有効量」:一般に、「有効量」の化学化合物とは、所望の生体学的応答を引き起こすに必要なまたは十分な量を指す。当業者に理解されるように、化学化合物の有効量は、所望の生体学的評価項目、供給すべき化合物、治療される疾病、ターゲット組織等の因子に依って異なっている。特定の態様では、化合物の有効量は、回復または治癒を達成するのに必要な量である。
【0052】
「ホモログの(homologous)」または「ホモログ(homologue)」:「ホモログの」という語は、ここで使用する限り、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列のレベルにおいて極めて関連性の高い核酸またはポリペプチドを指す、類を表す用語である。互いにホモログの核酸またはポリペプチドは「ホモログ」と呼ぶ。
【0053】
「ホモログの」という語は必ず、2つの配列間での比較を指している。本発明によれば、2つのヌクレオチド配列がそれぞれコードするポリペプチドが、少なくとも1列の少なくとも20のアミノ酸に対して、少なくとも約50〜60%が同一、好ましくは約70%が同一である場合、これらのヌクレオチド配列はホモログであると認められる。好ましくは、ホモログのヌクレオチド配列は、少なくとも4〜5のアミノ酸が一意的に特定される列をコードできるということによっても特徴付けられる。ホモログであると認めるべきヌクレオチド配列に対しては、前記アミノ酸の互いの同一性およびその互いの間隔の接近を考慮しなくてはならない。60より少ないヌクレオチドからなる長さのヌクレオチド配列については、ホモログは、少なくとも4〜5のアミノ酸が一意的に特定される列をコードできるかどうかによって判断される。
【0054】
「分離された(isolated)」:「分離された」もしくは「分離」という語は、ここで使用する限り、1)天然に存在しない、2)人の手を必要とするプロセスによって製造されたかまたは純化された、3)自然状態で関連している(結合している)成分の少なくともいくつかから分けられ、かつ/または4)当初製造時で関連している(結合している)成分の少なくともいくつかから分けられる化学的または生物学的対象物を指すのに用いられる。
【0055】
「ペプチド」または「タンパク質」:本発明によれば、「ペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合する少なくとも3つのアミノ酸の一続きを含む。「タンパク質」および「ペプチド」という語は、互いに置き換えて使用することができる。ペプチドという語は、個々のペプチドを指してもペプチドの集合体を指してもよい。本発明によるペプチドは、好ましくは、天然のアミノ酸のみを含むが、非天然のアミノ酸(つまり、天然には生じないがポリペプチド鎖に組み込むことができる化合物)および/または当分野で公知のアミノ酸アナログも代替的に使用することができる。また、本発明によるペプチド中の1つ以上のアミノ酸は、例えば、炭水化物群、ファルネシル群、イソファルネシル群、脂肪酸群や、抱合、官能化または修飾のためのリンカー等の化学物質の添加によって修飾することもできる。好ましい態様では、ペプチドの修飾によって、より安定なペプチド(例えば、インビボでより長い半減期を有する)が誘導される。このような修飾には、ペプチドの環化反応、D−アミノ酸の組込み等が含まれていてよい。いかなる修飾も、ペプチドの所望の生物活性を実質的に妨げてはならない。
【0056】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」:ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドのポリマーを指す。通常、ポリヌクレオチドは、少なくとも3つのヌクレオチドを有する。このポリマーには、天然ヌクレオチド(つまり、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジン)、ヌクレオチドアナログ(例えば、2−アミノアデノシン、2−チオチミジン、イノシン、ピロロ−ピリミジン、3−メチルアデノシン、C5−プロピニルシチジン、C5−プロピニルウリジン、C5−ブロモウリジン、C5−フルオロウリジン、C5−ヨードウリジン、C5−メチルシチジン、7−デアザアデノシン、8−オキソアデノシン、8−オキソグアノシン、O(6)−メチルグアニンおよび2−チオシチジン)、化学的に修飾された塩基、生物学的に修飾された塩基(例えばメチル化塩基)、介在塩基、修飾された糖(例えば、2’−フルオロリボース、リボース、2’−デオキシリボース、アラビノースおよびヘキソース)および/または修飾されたリン酸塩群(例えば、ホスホロチオエートおよび5’−N−ホスホアミダイトの結合)が含まれていてよい。
【0057】
「小分子」:ここで使用する限り、「小分子」という語は、天然由来であるかまたは人工的に製造されたか(例えば、化学合成により)に関わらず、タンパク質、ポリペプチドまたは核酸でない比較的低分子量の有機化合物を指す。通常、小分子の分子量は、約1500g/mol未満である。また、小分子は、通常、複数の炭素−炭素結合を有している。
【0058】
「微小管関連生体分子」:ここで使用する限り、微小管関連タンパク質という語は、細胞中の微小管の会合(付加)または解離に直接的にまたは間接的に関わることが知られているあらゆるタンパク質、ポリヌクレオチドまたは他の生体分子を包含することが意図されている。その例には、チューブリンの様々なアイソタイプ(重合化されているものおよびされていないもの)、チューブリンモノマーに関連する生体分子、微小管に関連する生体分子(例えば、MAP4、MAP2c、TauおよびXMAP215、CLIP−170、EB1、p150のような微小管関連タンパク質(I型およびII型))、チューブリンを分解する酵素、転写、翻訳またはチューブリンのレベル(量)を増加させるもしくは減少させる生体分子、中心小体、中心体、細菌タンパク質FtsZ、微小管形成中心(MTOC)、タンパク質ホスファターゼ、例えばMAPを脱リン酸化するホスファターゼ、成長因子シグナルカスケードにおける生体分子、タンパク質キナーゼ、例えばMAP、XMAP215のリン酸化を触媒するキナーゼ、ならびにスタトミンおよびXKCM1のような崩壊促進タンパク質(カタストロフィン)が含まれる。
【0059】
「多剤耐性」:「多剤耐性」という語は、癌細胞または癌細胞群に対して用いられる場合、化学的に同族でない様々な化学療法薬に対する耐性を有する性質を指す。多剤耐性は、癌治療の失敗の主な原因となる。多剤耐性の表現型は、通常、P−グリコタンパク質(Pgp)または多剤耐性タンパク質(MRP)、癌細胞から毒物をポンプ排出できる2膜貫通トランスポータータンパク質(two transmembrane transporter protein)の発現と関連する。多剤耐性は、初期から癌細胞内に存在している場合もあれば、時間経過により生じる場合もある。細胞中のPgpまたはMRPの発現によって、化学療法薬の濃度は50〜1000分の1に低下せしめられ、癌を治療する上で有用な薬剤が排出されてしまうことがある。
【0060】
「パクリタキセル耐性」:「パクリタキセル耐性」という語は、癌細胞または癌細胞群に対して用いられる場合、パクリタキセルまたは他のタキサン系化学療法薬に対する耐性を指す。特定の態様では、患者がパクリタキセルまたは他のタキサン系化学療法薬を用いた化学療法による治療を受け、それが癌に効かなかった場合(例えば、腫瘍組織量の低下や、成長阻害が見られない等)、その患者の癌をパクリタキセル耐性として分類することができる。別の態様では、パクリタキセルが0.001μM、0.1μM、1μM、2μMまたは5μMの濃度で癌に効かなかった場合、その癌はパクリタキセル耐性であるといえる。別の態様では、パクリタキセル耐性を有する癌または癌細胞群は、パクリタキセルに対する感度が100分の1、1000分の1または1500分の1小さい。特定の態様では、パクリタキセル耐性の癌または癌細胞群は、P−グリコタンパク質(Pgp)または多剤耐性タンパク質(MRP)を発現する。
【0061】
「チューブリンアイソタイプ」:微小管の構成要素であるチューブリンには、3つの形態、つまり、α−チューブリン、β−チューブリンおよびγ−チューブリンがある。ヒトの場合、α−チューブリンの6つのアイソタイプおよびβ−チューブリンの7つのアイソタイプが存在する。α−チューブリンのアイソタイプは、TUBA1(NCBIタンパク質データベース登録番号I77403)、TUBA2(NCBIタンパク質データベース登録番号CAA25855)、TUBA3(NCBIタンパク質データベース登録番号Q13748)、TUBA4(NCBIタンパク質データベース登録番号A25873)、TUBA6(NCBIタンパク質データベース登録番号Q9BQE3)、およびTUBA8(NCBIタンパク質データベース登録番号Q9NY65)である。β−チューブリンの7つのアイソタイプは、I型アイソタイプの、遺伝子HM40/TUBB(NCBIタンパク質データベース登録番号AAD33873);II型アイソタイプの、遺伝子Hb9/TUBB2(NCBIタンパク質データベース登録番号AAH01352);III型アイソタイプの、遺伝子Hb4/TUBB4(NCBIタンパク質データベース登録番号AAH00748);IVa型アイソタイプの、遺伝子Hb5/TUBB5(NCBIタンパク質データベース登録番号P04350、NP_006078);IVb型アイソタイプの、遺伝子Hb2(NCBIタンパク質データベース登録番号P05217);V型アイソタイプの、遺伝子5−beta/BetaV(NCBIタンパク質データベース登録番号NP_115914);ならびにVI型アイソタイプの、遺伝子Hbl/TUBBl(NCBIタンパク質データベース登録番号NP_110400)である。NCBIタンパク質データベース登録番号からの上記チューブリンアイソタイプの配列を含む項目は、参照により本願に組み込まれる。当業者には明らかであるように、別の種は、チューブリンの異なるアイソタイプを有していてよい。
【0062】
発明の特定の好ましい態様の詳細な説明
本発明は、特定の化学療法薬による治療のための対象者となる癌患者、またはその反対に、特定の化学療法薬による治療のための対象者とでない癌患者を特定する方法および材料を提供する。具体的には、患者の持つ癌が所定の化学療法薬に対して感受性である場合には、その患者が治療のために選択され、薬剤が癌に影響を与えないのであれば、その患者は選択されない。本発明はさらに、患者が治療のために選択された場合、その患者を治療するための方法および材料を提供する。最後に、本発明は、チューブリンアイソタイプおよびチューブリン関連タンパク質を発現する癌細胞中の微小管の会合(結合)/解離に影響を与える化学化合物を特定するための方法および材料を提供する。特定の遺伝子の発現と試験化合物との相関は、当分野で公知の統計学的方法を用いて決められる。
【0063】
治療される癌患者の選択
化学療法の投薬計画を実施するために患者を選択する場合には、その患者の癌は、供給すべき化学療法薬に対して感受性である。例えば、薬剤は、その患者を治癒し、腫瘍組織量を減少させ、転移を防止し、または癌のさらなる成長を防止し得る。治療のためにその患者を選ぶかどうかを判断する場合、薬剤の副作用、患者の病状、予後診断、癌の病期、他の治療手段を使用して上手くいったかもしくはいかなかったか等も考慮してよい。上記のような考慮のための追加的な因子は、治療を行う医師には明らかである。
【0064】
患者を選ぶための本発明によるシステムは、治療のためのあらゆる動物を選ぶ場合に使用することもできる。特定の態様では、動物はほ乳類である。しかし、鳥類、は虫類、魚類または他の動物も、本発明によるシステムを用いて選ぶことができる。特定の態様では、患者はヒトである。別の態様では、患者は家畜化された動物(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ等)である。さらに別の態様では、患者は実験動物(例えば、マウス、ラット、他の齧歯類、イヌ、ブタ、サル、他の霊長類等)である。要するに、いかなる動物種も、本発明のシステムを使用する治療のために選ばれることがあるし、選ばれないことがある。
【0065】
典型的には、患者は癌を持っている。しかし、患者が有しているのは、癌性か良性かに関わらず、本発明のシステムを使用してスクリーニングされる、いかなる細胞の異常成長であってよい。癌には、あらゆる発生由来(例えば、皮膚、肺、乳、上皮細胞、間葉細胞、中胚葉由来の細胞等)、重症度(例えば、予後不良か良好か、転移性か否か)、病状(例えば、異形成、退形成、脱分化の程度)、または部位(例えば、致命的な臓器、原発性腫瘍または転移性)のものが含まれる。特定の態様では、癌は、皮膚癌(例えば黒色腫)、脳癌(例えばグリア芽腫)、肺癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、大腸癌、乳癌、卵巣癌、睾丸癌、前立腺癌、膀胱癌、腎臓癌、内分泌腺癌、骨癌、白血病、肉腫、リンパ腫または筋肉腫である。特定の態様では、患者は、乳癌、卵巣癌、肺癌、膵臓癌(例えば、膵臓腺癌)または前立腺癌に罹患している。特定の態様では、患者は、乳癌、卵巣癌または肺癌と診断されている。さらに別の態様では、患者は乳癌を持っている。
【0066】
典型的には、患者の癌は、検討される対象の化学化合物に対して感受性を示す。また、癌は、インビトロまたはインビボでの試験で化合物に対して感受性を示す場合もある。例えば、癌は、別の患者においてまたはその癌の動物モデルにおいて、上記化合物に対して応答する。対象の化合物を投与することによって癌細胞群の成長が阻害されるのであってもよいし、その化合物が、細胞群に対して細胞毒性を有していてもよい。
【0067】
以下に記述するように、本発明の一態様では、微小管を安定化する薬剤または不安定化する薬剤(つまり、抗微小管剤)、例えば、ハリコンドリンBアナログ、ヘミアステリンアナログ、パクリタキセル(Taxol)、タキソテール、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン)、コルヒチン等に対して感受性を有する癌を特定する。これらの癌には、乳癌、卵巣癌および肺癌が含まれる。特定の態様では、前立腺癌が含まれていてよい。特定の態様では、癌は、ハリコンドリンBアナログ、特にE7389に対して感受性を示す。
【0068】
化学化合物を用いた治療を行うための患者を特定する方法は、患者の癌から試料を得て、その癌細胞中に、特定のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子が特定のレベルで(またはレベルの範囲内に)存在するかどうかを判定することを含む。特定の態様では、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の特定のレベルでの存在が、特定の化合物に対する感受性または感受性の欠如と相関する。特定の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるよりも少なくとも約50%高いレベルで、マーカーを発現する。特定の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルの少なくとも2倍のレベルで、マーカーを発現する。特定の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルの少なくとも3倍のレベルで、マーカーを発現する。特定の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルの少なくとも4倍のレベルで、マーカーを発現する。特定の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルの少なくとも5倍のレベルで、マーカーを発現する。別の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルよりも約75%低いレベルで、マーカーを発現する。さらに別の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルよりも約50%低いレベルで、マーカーを発現する。特定の態様では、癌細胞は、対照の細胞または細胞群中で観察されるレベルより少なくとも約25%低いレベルで、マーカーを発現する。さらに別の態様では、癌細胞はマーカーを発現しない。
【0069】
試料から得られた情報に基づいて、その患者が、化合物を用いた治療に対して「良い」対象者であるか、またはその患者が、その化合物を用いた治療に対して「悪い」対象者であるかを特定することができる。特定の治療に対してどの患者が応答しやすい(特定の治療がどの患者に効きやすい)のかだけでなく、特定の治療に対してどの患者が応答しにくい(特定の治療がどの患者に効きにくい)のかを判定することも有用であるので、どちらの患者の分類も本発明の一部とみなされる。後者の判定では、患者は、その患者に対し有効でないと考えられる医薬品による治療の対象者から外される。
【0070】
癌から得た試料は、患者の癌の生体検査によって得ることができる。特定の態様では、患者の腫瘍からの1つより多い試料を得て、さらなる検査のための細胞の代表試料とする。例えば、乳癌を持つ患者では、針生検を行って癌細胞の試料を得る。癌細胞の試料を得るために、腫瘍のいくつかの生体検査を利用することもできる。別の態様では、腫瘍の外科的切除によって試料を得ることができる。その場合、さらなる検査のために、切除された腫瘍から1つ以上の試料を採取してもよい。癌が白血病である場合には、血液試料または骨髄生検により癌細胞の試料を得ることができる。
【0071】
試料は、採取後、さらに処理される。癌細胞は、培養され、洗浄されるかまたは正常な組織が除去されるよう選択される。細胞はトリプシン処理されて、腫瘍もしくは試料から分けられる。細胞は、蛍光活性化細胞選別(FACS)または別の細胞選別技術によって選別することができる。細胞は培養されてよく、これにより、検査のために、より多数の細胞を得ることができる。特定の例では、細胞を不死化することができる。さらに、細胞を冷凍することもできる。細胞は、パラフィンに埋められてもよい。
【0072】
患者の癌からの試料を得た後、特定のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子が細胞内に存在するか否かを判定するステップは、遺伝子産物の発現、発現レベル、存在、または遺伝子産物の活性(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、タンパク質、タンパク質複合体、翻訳後修飾タンパク質等)を測定する、当分野で公知の任意の技術を利用してよい。特定の態様では、対象となる遺伝子の発現を測定するために、mRNAを癌細胞試料から分離する。特定の態様では、複数の遺伝子(multiple genes)の発現レベルを同時に測定することができる。例えば、複数のチューブリンアイソタイプ、複数の微小管関連生体分子またはそれらの組合せの発現を測定することができる。特定の態様では、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30の遺伝子の発現を測定することができる。特定の遺伝子からのmRNA転写レベルも、当分野で公知の任意の方法を用いて定性的もしくは定量的に測定することができる。mRNAのレベルは、逆転写されたmRNAの定量PCRによって定量することができる。mRNAのレベルは、ノーザンブロット分析によっても定量することができる。mRNA転写物の存在も、遺伝子チップ分析によって判定することができる。遺伝子チップの使用は、複数の遺伝子の発現レベルを測定する上で特に有用である。例えば、10〜20またはより少ない遺伝子の発現レベルを測定する場合、定量PCRを利用することができる。より多くの遺伝子の発現レベルを測定する場合には、遺伝子チップがより有用であるが、定量PCRも使用することができる。
【0073】
遺伝子チップを使用する特定の態様では、遺伝子チップは、様々なESTによる配列を含んでいてよく、または、その配列は、微小管の会合に関わるものに限定されていてよい。特定の態様では、遺伝子チップマイクロアレイは、少なくとも100、500、1000、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、45000、50000または100000個の配列を含むことができる。 患者から得られた試料からのmRNAは、マイクロアレイ上の配列とハイブリダイゼーションさせることができ、これにより、マイクロアレイ上に設けられた遺伝子の発現パターンが決定される。このマイクロアレイは、例えば、Agilent Technologies、Affymetrix, Inc.といった会社より購入することができる。いくつかの態様では、マイクロアレイは、遺伝子のサブセットのみを分析するような場合に、研究者によって準備される(例えば、微小管の会合に関わる遺伝子)。
【0074】
別の態様では、対象となる遺伝子のmRNA転写物の存在を判定するのではなく、実際のタンパク質の存在もしくはレベルが判定される。タンパク質の分析は、当分野で公知の任意の方法を使用して実施することができる。特定の態様では、タンパク質に関する抗体を使用する。この抗体は、対象となるタンパク質に対して特異的なものであるのが好ましい。特定の態様では、抗体は、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連タンパク質とのみ反応する。抗体を癌細胞に直接接触させるか、またはこの抗体を、細胞のタンパク質のポリアクリルアミドゲル電気泳動実施後に、ウエスタン分析で使用することができる。この抗体は、対象のタンパク質への結合が可視化されるように修飾されていてよい。例えば、抗体は、蛍光マーカーにより誘導体化されていてよいし、放射性標識されていてよいし、アルカリフォスファターゼのような酵素と抱合(結合)していてもよい。
【0075】
対象となるタンパク質も、質量分析によって測定することができる。従来、試料中の特定のタンパク質の存在を測定するのに、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析が使用されてきた。MALDI−TOF質量分析は、乳癌細胞中のチューブリンアイソタイプの存在を測定するために使用されてきた(Verdier-Pinard et al., Biochemistry 42:5349-5357, 2003、参照により本願に組み込まれる)。液体クロマトグラフィ−質量分析も、細胞試料中の対象となる特定のタンパク質の存在を測定するために使用されてきた(Verdier-Pinard et al., Biochemistry 42:12019-12027, 2003、参照により本願に組み込まれる)。細胞中の対象となるタンパク質の質量分析による分析は、分析されるタンパク質のm/z比の相違に基づいている。例えば、チューブリンの異なるアイソタイプの分析においては、チューブリンの各アイソタイプのm/z比は、互いに個々のアイソタイプが識別されるように、それぞれ固有のものでなくてはならない。特定の態様では、対象となるタンパク質を消化して、質量分析によってタンパク質の部分のみが分析されてもよい。特定の態様では、タンパク質は部分的に純化されている。例えば、チューブリンは、別の細胞タンパク質から分離され純化されていてよく、これにより、細胞中に存在するチューブリンアイソタイプがより良好に測定される。従来のカラムクロマトグラフィおよびHPLCも、質量分析によって分析するタンパク質の純化に使用することができる。
【0076】
チューブリンアイソタイプ
本発明の特定の態様では、患者から得られた癌細胞中で発現されるチューブリンの1つ以上のアイソタイプを測定する。特定の態様では、特定の癌細胞は、α−チューブリンおよびβ−チューブリンそれぞれから1つのタイプのみを発現する。より一般的には、細胞は、多数のアイソタイプを、典型的には異なるレベルで発現する。別の態様では、癌細胞群内の異なる細胞は、同じアイソタイプを発現するかまたは異なるアイソタイプを発現する。ヒトにおいては、微小管は、α−チューブリンおよびβ−チューブリンの二量体の連続体からなっている。微小管は、運動、形態形成、細胞間輸送、細胞形状、有糸分裂および減数分裂を含む、細胞の多くの機能に関係する(Desai et al., Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 13:83-117, 1997、Oakley、Trends Cell Biol. 10:537-542, 2000、Sharp et al., Nature 407:41-47, 2000、これらの各文献は、参照により本願に組み込まれる)。
【0077】
α−チューブリンおよびβ−チューブリンはいずれも、複数のアイソタイプを持つものとして存在する。様々なアイソタイプはそれぞれ、約450の長さのアミノ酸である。このアイソタイプは高度に保存されているが、C末端において多数の配列バリエーションを示す。C末端は、微小管を形成するための微小管関連タンパク質(MAP)との結合に関与することが知られている(Verdier-Pinard et al., Biochemistry 42:12019-12027, 2003、Luduena Int. Rev. Cytol. 178:207-275, 1998、これらの各文献は、参照により本願に組み込まれる)。これらのアイソタイプは、組織特異性の発現を示すことが多い(参考として、Sulivan、Annu. Rev. Cell Biol. 4:687-716, 1988、Luduenaら、Curr. Opin. Cell Biol. 4:53-75, 1992、Leduena Mol. Biol. Cell 4:445-457, 1993、Luduena Int. Rev. Cytol. 178:207-275 (1998)、Sullivan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:4327-4331, 1986を参照されたく、これらの各文献は、参照により本願に組み込まれる)。ほ乳類、例えばヒトでは、6つのα−チューブリンが確認されている。ヒトにおいて確認されている6つのα−チューブリンアイソタイプは、次のものである。すなわち、α/bα1(NCBI登録番号CAA25855)、α/Kα1(I77403、AAC31959、AAD33871)、α3(Q13748)、α4(A25873)、α6(Q9BQE3)およびα8(Q9NY65)である。ヒトにおいて確認されている7つのβ−チューブリンは、次のものである。すなわち、βI(NCBIタンパク質データベース登録番号AD33873、P07437)、βII(AAH01352、NP_001060)、βIII(AAH00748、NP_006077)、βIVa(P04350、NP_006078)、βIVb(P05217)、βV(NP_115914)およびβVI(NP_110400)である。NCBIタンパク質データベースにおけるこれらのタンパク質およびそのタンパク質配列に関する項目は、参照により本願に組み込まれる。
【0078】
【表A】

【0079】
α−チューブリンに関してアイソタイプI(Kα1)と異なるアミノ酸、ならびにβ−チューブリンに関してアイソタイプI(HM40/TUBB)と異なるアミノ酸を黒で強調した。
等電点は、NCBIタンパク質データベース(登録番号は1列目に記載)によるチューブリン一次配列に基づき、ExPaSy Compute pl/MWツールにより計算した。
独特のC末端を有する2つのβIVa−チューブリン配列が、NCBIタンパク質データベースで見出されている。上のC末端配列は、ヒトの脳で見出され、下の配列は、ヒトの希突起グリオーマおよびマウスの脳で見出されるものである。
【0080】
特定の態様では、様々なチューブリンアイソタイプのC末端において様々な配列が見出される場合、癌細胞中でアイソタイプが発現されるかどうかの測定は、PCRプライマー、ポリヌクレオチドプローブ、またはチューブリンのC末端からのペプチドに基づいて行われる。様々なアイソタイプを特定する際に使用される抗体は、チューブリンアイソタイプのC末端に関係するものであってよい。アイソタイプのC末端に焦点を当てることによって、プライマー、プローブ、ペプチドまたは抗体は、特定のアイソタイプに対してより特異的な傾向を示し、他のアイソタイプと相互反応することはない。特定の態様では、癌細胞中で特定のチューブリンアイソタイプが発現されるかを測定する際に、少なくとも100、75、50、40、30、25、20、15または10個のアミノ酸を使用する。特定の態様では、少なくとも15〜25個または15〜20個のC末端アミノ酸を使用する。
【0081】
さらに、チューブリンには、多くの翻訳後修飾が施される。この修飾は、チロシン化−脱チロシン化、アセチル化、リン酸化、ポリグルタミン酸化およびポリグリシル化を含む。チューブリンタンパク質の翻訳後修飾は、そのアイソタイプによって異なる。例えば、α−チューブリンはアセチル化されており、チロシン化−脱チロシン化が施される。βIII−チューブリンは、リン酸化されていることが知られている。1つ以上のこのような翻訳後修飾を、患者の癌細胞中で発現するチューブリンのアイソタイプを測定するのに使用することができる。
【0082】
特定の態様では、患者を選ぶ方法は、α−チューブリンアイソタイプの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定することに基づく。別の態様では、上記方法は、β−チューブリンアイソタイプの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定することに基づく。特定の態様では、上記方法は、α−および/またはβ−チューブリンの1,2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13個の特定のアイソタイプに重点が置かれていてよい。特定の態様では、上記方法は、アイソタイプ1Kα1−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の特定の態様では、上記方法は、アイソタイプ1(bα1)α−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、α3−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。さらに別の態様では、上記方法は、α4−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。特定の態様では、上記方法は、α6−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。特定の態様では、上記方法は、α8−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。特定の態様では、上記方法は、アイソタイプI(bα1)α−チューブリン(TUBA3)およびα6−チューブリン(TUBA6)の発現レベルに基づいていてよい。
【0083】
特定の態様では、上記方法は、β−チューブリンアイソタイプの発現レベル(発現がないことも含む)を測定することに基づいていてよい。例えば、患者を選ぶ方法は、特定の態様のβIII−チューブリンの発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、βI−チューブリン(TUBB)の発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、βII−チューブリン(TUBB2)の発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、βIVa−チューブリン(TUBB5)の発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、βIVb−チューブリン(Hβ2)の発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、βV−チューブリン(Beta V)の発現レベル(発現がないことも含む)に基づいていてよい。別の態様では、上記方法は、βVI−チューブリンの発現レベルに基づいていてよい。当業者に理解されるように、βI−チューブリン(TUBB)、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVa−チューブリン(TUBB5)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)およびβVI−チューブリン(TUBBl)の様々な組合せを、患者が特定の癌治療の対象者となるかの判定のために使用することができる。特定の態様では、βI−チューブリン(TUBB)、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVa−チューブリン(TUBB5)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)およびβVI−チューブリン(TUBBl)のうち2つ、3つまたは4つの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。特定の態様では、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVa−チューブリン(TUBB5)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)およびβVI−チューブリン(TUBBl)のうち2つ、3つまたは4つの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。特定の態様では、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)およびβVI−チューブリン(TUBBl)のうち2つ、3つまたは4つの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。
【0084】
当業者に理解されるように、特定の態様では、アイソタイプI(bα1)α−チューブリン(TUBA3)、α6−チューブリン(TUBA6)、βI−チューブリン(TUBB)、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVa−チューブリン(TUBB5)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)、βVI−チューブリン(TUBBl)およびスタトミンの様々な組合せを、患者が特定の癌治療の対象者となるかの判定のために使用することができる。特定の態様では、アイソタイプI(bα1)α−チューブリン(TUBA3)、α6−チューブリン(TUBA6)、βI−チューブリン(TUBB)、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVa−チューブリン(TUBB5)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)、βVI−チューブリン(TUBBl)およびスタトミンのうち2つ、3つまたは4つの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。特定の態様では、アイソタイプI(bα1)α−チューブリン(TUBA3)、α6−チューブリン(TUBA6)、βIII−チューブリン(TUBB4)、βIVa−チューブリン(TUBB5)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)、βVI−チューブリン(TUBBl)およびスタトミンのうち2つ、3つまたは4つの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。特定の態様では、アイソタイプI(bα1)α−チューブリン(TUBA3)、α6−チューブリン(TUBA6)、αIII−チューブリン(TUBB4)、βIVb−チューブリン(Hβ2)、βV−チューブリン(Beta V)、βVI−チューブリン(TUBBl)およびスタトミンのうち2つ、3つまたは4つの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。
【0085】
特定の態様では、MAP4またはTauの発現レベルまたはタンパク質レベルを、上記の群と組み合わせて測定してよい。特定の態様では、MAP4の発現レベルまたはタンパク質レベルを、上記の群と組み合わせて測定してよい。特定の態様では、Tauの発現レベルまたはタンパク質レベルを、上記の群と組み合わせて測定してよい。
【0086】
特定の態様では、患者が治療に適するかを特定する際に、1つ以上のチューブリン遺伝子の変異、多型、対立遺伝子または別の形態を測定する。本発明は、チューブリンのアイソタイプのみを測定することに限定されることはない。
【0087】
別の微小管関連生体分子
ある患者が、特定の化学化合物による治療に適した対象者であるかどうかを判定する場合、その判定でチューブリンアイソタイプだけでなく、別の微小管関連生体分子を、チューブリンアイソタイプと組み合わせてまたはそれ単独で評価してもよい。微小管の会合または解離に直接的または間接的に関わることが知られている任意の生体分子が、本発明のシステムにおいて有用となり得る。この生体分子には、ポリヌクレオチド(例えば、mRNA、遺伝子)、タンパク質、ペプチド、細胞小器官、代謝産物(例えば、GTP、GDP)等が含まれていてよい。微小管の会合または解離に関連することが知られている生体分子の特定の例には、中心小体、中心体(微小管形成中心(MTOC)としても知られる)、γ−チューブリン、微小管関連タンパク質(MAP)、キナーゼ、ホスホリラーゼおよび崩壊促進タンパク質が含まれる。本発明は、現時点では特定されていない別の微小管関連生体分子の使用も含む。
【0088】
特定の態様では、患者の癌細胞中で見出される中心小体の特徴を、特定の化学化合物に対する感受性を測定するために使用する。中心小体は、通常、互いに直交して配向する対として見出される円筒形構造を有している。その各円筒は、風車のように配置された9つの互いに結合する三連の微小管からなっている。微小管中に見出されるα−およびβ−チューブリンのヘテロ二量体は、ポリグルタミン酸化によって翻訳後修飾されている。ヒトのように中心体を有する生物は、追加的にチューブリンを有している。この追加的なチューブリンは、d、e、zおよびhで示され、中心体構造またはアッセンブリにおいて役割を有すると考えられている。特定の態様では、これらのチューブリンにおけるアイソタイプまたは変異を、所定の化学化合物に対する患者の感受性を測定するために使用する。
【0089】
中心小体は、中心体(微小管形成中心としても知られる)と呼ばれるタンパク質の塊によって取り囲まれている。中心体中に見出される任意のタンパク質を、本発明において治療に適した患者を選ぶために使用することができる。中心体で見出されたかまたは中心小体に関連することが分かっているタンパク質の例には、セントリン、ペリセントリン、ニネイン(ninein)およびγ−チューブリンが含まれる。アイソタイプ、多型、変異または中心体に関連することが知られる任意の別の形態が、本発明で有用である。細胞分割中、中心体は、紡錘体の形成を助成する。中心体は、通常、中間期には核の近くに位置し、微小管が中心体から外へ伸びる。微小管は、その端部(プラス端)から、チューブリンヘテロ二量体の付加および消失によって伸縮する。細胞分裂中、微小管紡錘体の動きによって、複製された染色体は各娘細胞へと分けられる。微小管アッセンブリをターゲットにした薬剤は、微小管紡錘体により媒介される染色体の分離を妨害する。通常、この種の薬剤は、2つのカテゴリーに分類することができる。つまり、タキソールのような微小管安定剤、および、ビンカアルカロイドおよびコルヒチンのような微小管不安定剤である。よって、上記染色体の分離プロセスに関与するタンパク質または他の生体分子は、所定の患者がこのような薬剤を用いた治療に対して感受性があるかを判定するのに有用となり得る。特定のアイソタイプ、多型、変異、対立遺伝子または上記タンパク質の別の形態が、上記薬剤に対して感受性であっても耐性であってもよい。
【0090】
特定の態様では、γ−チューブリンの発現レベルまたはタンパク質レベルが、本発明によるシステムで測定される。γ−チューブリンは、α−およびβ−チューブリンに対するホモログであり、中心体内で微小管アッセンブリの核となる。いくつかのγ−チューブリン分子は、グリップ(グルタミン酸受容体固定タンパク質)(γ環状タンパク質)と呼ばれるタンパク質と関連(結合)して、γ−チューブリン環錯体を形成する。γ−チューブリン環状錯体を核として形成された微小管では、その一方の端部(マイナス端)がキャップで覆われていると考えられている。キャップのグリップタンパク質は、中心体への結合の媒介に関係があると考えられている。γ−チューブリンの保存されたチロシン残基リン酸化は、微小管の形成(microtuble nucleation)を調整することが知られている。本発明のシステムを使用する治療に適した患者を選ぶ際に、γ−チューブリンおよびγ−チューブリン環状タンパク質の様々な形態が評価され得る。特定の態様では、γ−チューブリンの保存されたチロシンのリン酸化を、患者を選ぶのに使用する。
【0091】
別の態様では、微小管関連タンパク質(MAP)の発現は、本発明のシステムで測定される。MAPの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定することができる。MAPは、多様な類の微小管に結合するタンパク質である。いくつかのMAPは微小管を安定化させ、別のMAPは微小管を不安定化させる。他のMAPは、隣接する微小管と架橋する。いくつかのMAPは、微小管を膜に結合させたり、中間フィラメントに結合させたりする。I型MAPは、通常、神経細胞の軸索および樹枝状突起中に見出されるが、I型MAPは、非神経細胞中にも見出される。I型MAPは、負に帯電したチューブリンドメインに結合する配列KKEX(Lys-Lys-Glu-X)の繰返しを有している。特定の態様では、I型MAPのタンパク質レベルまたは発現レベルを、本発明のシステムで測定する。MAP−4およびTauのようなII型MAPは、軸索、樹枝状突起および非神経細胞中で見出される。II型MAPは、チューブリンを結合する18のアミノ酸配列の3〜4の繰返しを有している。特定の態様では、II型MAPのタンパク質レベルまたは発現レベルを、本発明のシステムで測定する。特定の態様では、治療に適した患者を選ぶために、MAP4の発現レベルまたはタンパク質レベルを評価する。MAP−4は、本発明システムで、癌細胞中のチューブリンアイソタイプを測定することに関連して使用することができる。別の態様では、Tauの発現レベルまたはタンパク質レベルを、必要に応じてチューブリンアイソタイプと併せて測定することができる。別の態様では、XMAP215の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。XMAP215は、215kDaの高度に保存されたMAPであり、細胞周期に関連した微小管のダイナミクス(動的挙動)を制御する上で重要な役割を果たしている。XMAP215は微小管のプラス端を安定化させ、これにより、このプラス端での成長を促進し、崩壊による収縮を防止する。
【0092】
別の態様では、崩壊を促進するタンパク質(カタストロフィン)を評価する。崩壊(catastrophe)は、微小管の急速な解離である。スタトミンは、いくつかの癌細胞を大量に増加させるカタストロフィンである。よって、特定の癌治療のための患者を選ぶ際にスタトミンのレベルを測定することもできる。必要に応じて、患者の癌細胞中で発現するチューブリンアイソタイプを測定することに関連して、スタトミンレベルを測定することができる。別のカタストロフィンは、XKCMlであり、これは、キネシンモータータンパク質のMCAKサブファミリーの1つである。XMAP215は、XKCMlの作用を中和する。本発明の選択システムにおいては、患者の癌細胞中のXKCMlのレベルも測定することができる。
【0093】
本発明は、微生物タンパク質FtsZのホモログの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定することも含む。FtsZは、チューブリンの原型と考えられており、微生物の細胞質分裂において重要な役割を果たすことが知られている。FtsZは、集合してプロトフィラメントとなることができ、このFtsZプロトフィラメントはさらに集合してシートまたは管を形成する。高等生物におけるFtsZホモログを、本発明では、患者が特定の癌治療に適するかを判定するのに使用することができる。別の態様では、FtsZを発現する微生物細胞を使用して、微小管の形成を阻害するような抗腫瘍薬として使用可能な化合物を特定することができる。FtsZは、微生物細胞において、化学化合物と、微小管の会合または解離に作用する化学化合物を用いた治療に対する感受性との相関を構築するのに使用することができる。
【0094】
ここに記載の微小管関連生体分子の任意のものを、特定の化学化合物を使用する治療に適する患者を選ぶのに使用することができる。微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルの測定は患者を選ぶことにおいて単独で実施することもできるし、別の微小管関連生体分子またはチューブリンアイソタイプとの関連において実施することもできる。特定の態様では、MAP−4の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。別の態様では、Tauの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。さらに別の態様では、スタトミンの発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。別の態様では、CLIP−170の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。特定の態様では、EB1の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。別の態様では、p150の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。特定の態様では、癌細胞中にあるβ−チューブリンアイソタイプを、MAP−4、Tau、CLIP−170、EB1および/またはp150と併せて測定する。別の特定の態様では、癌細胞中にあるβ−チューブリンアイソタイプレベルを、MAP−4の発現レベルまたはタンパク質レベルと併せて測定する。さらに別の特定の態様では、癌細胞中にあるβ−チューブリンアイソタイプレベルを、スタトミンの発現レベルまたはタンパク質レベルと併せて測定する。さらに別の特定の態様では、癌細胞中にあるβ−チューブリンアイソタイプレベルを、CLIP−170の発現レベルまたはタンパク質レベルと併せて測定する。さらに別の特定の態様では、癌細胞中にあるβ−チューブリンアイソタイプレベルを、EB1の発現レベルまたはタンパク質レベルと併せて測定する。特定の態様では、癌細胞中にあるβ−チューブリンアイソタイプレベルを、p150の発現レベルまたはタンパク質レベルと併せて測定する。
【0095】
特定の態様では、多剤輸送体(multidrug transporter)であるP−グリコタンパク質(P−gp)の発現レベルまたはタンパク質レベルを測定する。P−gpは、微小管の会合には関与しないが、微小管の会合に作用するものを含む細胞毒性化合物に対する耐性に関して重要な役割を果たすことが知られている。例えば、いくつかの癌の、パクリタキセル(タキソール(登録商標))に対する耐性は、多剤輸送体P−グリコタンパク質の存在によって現れることが知られている(Horwitz et al., J, Natl. Cancer Inst. Monogr. 15:55-61, 1993、参照により本願に組み込まれる)。P−gpの発現レベルまたはタンパク質レベルは、患者から得た試料中のチューブリンアイソタイプまたは別の微小管関連生体分子の測定と併せて試験されてよい。
【0096】
患者の特定
特定のチューブリンアイソタイプもしくは微小管関連生体分子、またはこれらの組合せの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づき、特定の化学化合物を使用する治療のために患者を選ぶ。特定の態様では、患者を治療するために使用する化学化合物は、微小管の会合/解離を阻害することが知られている化合物である。特定の態様では、この化合物はα−チューブリンに結合する。別の態様では、この化合物はβ−チューブリンに結合する。特定の態様では、化学化合物は有機化合物である。特定の態様では、化学化合物は小分子である。特定の態様では、化合物は、抗腫瘍作用を有する。化合物は、ヒトへの使用に関してFDAによって認可されているものであっても、ヒトへの使用に関してFDAによって審査中のものであってもよい。
【0097】
特定の態様では、上記化合物は、ハリコンドリンBアナログである。特定の態様では、化合物は、抗癌作用および/または抗有糸分裂作用を有するハリコンドリンBアナログである。好ましくは、ハリコンドリンBアナログは、微小管の会合または解離を阻害する抗微小管剤である。特定の態様では、アナログは、以下に示す式(I)を有している。
【0098】
【化34】

【0099】
式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、または1〜13個の置換基、好ましくは1〜10個の置換基、例えば、シアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソから選択される少なくとも1つの置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、置換基の数は、例えば1〜6、1〜8、2〜5または1〜4であり、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール(例えば、p−フルオロフェニルまたはp−クロロフェニル)、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール(例えば、p−メトキシフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニル、p−エトキシフェニルまたは3,5−ジエトキシフェニル)、C6〜10アリール−C1〜6アルキル(例えば、ベンジルまたはフェネチル)、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリール、およびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または好ましくは0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであり、例えば、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−、例えば、環外メチリデン、イソプロピリデン、メチレンまたはエチレンであり、
Qは、C1〜3アルキル、好ましくはメチルであり、
Tは、メチレン、エチレン、またはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、RはHまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−である。
【0100】
特定の態様では、ハリコンドリンBアナログは、以下の式(II)で示されるような立体化学構造を有している。
【0101】
【化35】

【0102】
特定の態様では、Qはメチルである。特定の態様では、JおよびJ’は、合わせて=CHである。特定の態様では、ZおよびZ’は、合わせて=Oである。特定の態様では、Yは水素である。特定の態様では、Y’は水素である。特定の態様では、Tはエチレンである。特定の態様では、Gは酸素である。特定の態様では、nはゼロであり、Eは存在しない。特定の態様では、Dはメトキシであり、D’は水素である。特定の態様では、Dは水素であり、D’はメトキシである。
【0103】
特定の態様では、ハリコンドリンBアナログは、以下の式(III)を有する。
【0104】
【化36】

【0105】
式中、AおよびDは、上述の通りである。
【0106】
特定の態様では、ハリコンドリンBアナログは、以下の式(IV)を有する。
【0107】
【化37】

【0108】
上式中、Aは、上述の定義通りである。
【0109】
特定の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、シアノ、ハロ、アジド、オキソ、アミノおよびヒドロキシルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を有するものである。特定の別の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、アミノ、アジドおよびヒドロキシルを含む群から選択される少なくとも1つの置換基を有するものである。別の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、アミノおよびヒドロキシルを含む群から選択される少なくとも2つの置換基を有するものである。別の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基および少なくとも1つのアミノ置換基を有するものである。別の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、少なくとも1つのヒドロキシル置換基および少なくとも1つのシアノ置換基を有するものである。別の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、少なくとも2つのヒドロキシル置換基を有するものである。別の態様では、Aは、C2〜4の炭化水素骨格を有する。さらに別の態様では、Aは、Cの炭化水素骨格を有する。特定の態様では、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、この骨格は、置換されていないか、またはアジド、ヒドロキシ、OR、NH、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NRおよびNR(CO)ORを含む群から選択される1〜4個の置換基を有しており、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリール、およびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択される。
【0110】
特定の態様では、アナログは、以下の式(V)を有している。
【0111】
【化38】

【0112】
特定の態様では、アナログはE7389であり、式(VI)を有している。
【0113】
【化39】

【0114】
ハリコンドリンBアナログ、ならびにその合成、治療方法および医薬組成物は、米国特許第6214865号、第6365759号、第6469182号および第6653341号明細書に記載されており、また、2004年6月3日付け出願の米国特許出願第60/576642号明細書、2004年11月10日付け出願の米国特許出願第60/626769号明細書および2003年10月16日付け出願の米国特許第10/687526号明細書に記載されており、これらの各特許文献は、参照により本願に組み込まれる。
【0115】
特定の態様では、癌細胞がIII型アイソタイプβ−チューブリンを高いレベル(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)で発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンアナログまたはその医薬組成物を使用する。別の態様では、癌細胞がIVb型アイソタイプβ−チューブリンを高いレベル(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)で発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンBアナログまたはその医薬組成物を使用する。別の態様では、癌細胞がV型アイソタイプβ−チューブリンを高いレベル(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)で発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンBアナログまたはその医薬組成物を使用する。別の態様では、癌細胞がVI型アイソタイプβ−チューブリンを高いレベル(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)で発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンBアナログまたはその医薬組成物を使用する。別の態様では、癌細胞が1型アイソタイプα−チューブリン(TUBA3/b−α1)を高いレベルで(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンBアナログまたはその医薬組成物を使用する。別の態様では、癌細胞が6型アイソタイプα−チューブリン(TUBA6)を高いレベルで(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンBアナログまたはその医薬組成物を使用する。別の態様では、癌細胞がスタトミンを高いレベルで(例えば、対照の細胞で観察されるレベルの少なくとも2、3、4または5倍)発現することが見出された場合、癌患者を治療するためにハリコンドリンBアナログまたはその医薬組成物を使用する。特定の態様では、治療において使用される化合物は、本明細書に記載するハリコンドリンアナログの多数の属種または亜属種である。特定の態様では、選択された患者を治療するのに使用されるハリコンドリンBアナログは、E7389である。
【0116】
特定の化学化合物を使用する治療のために患者を選んだ後、治療における有効量でその化合物またはその医薬組成物を投与することによって、その患者を治療することができる。その治療には、数週間または数ヶ月にわたる化合物またはその医薬組成物の反復投与が含まれる。特定の態様では、化合物は、本明細書に記載するように、E7389のようなハリコンドリンBアナログである。この化合物の投与量は、0.001mg/m〜100mg/m、または0.001mg/m〜10mg/m、または0.01mg/m〜10mg/m、または0.1mg/m〜75mg/m、または1mg/m〜50mg/mであってよい。
【0117】
化学化合物と遺伝子発現との相関の決定
本発明の発明者によって構築された、ハリコンドリンBアナログE7389およびヘミアステリンアナログE7974と、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現との相関に鑑みて、他の化合物と他のマーカーとの相関が決定可能あることが当業者によって理解されるであろう。このような相関は、上述の患者を特定する方法および患者を治療する方法で使用されるであろう。また、このような相関によって、より良い、より効果的な治療が癌患者に提供されるであろう。特定の態様では、上記相関を構築するのに使用される化学化合物は、抗微小管剤(つまり、微小管の会合または解離を阻害する薬剤)である。特定の態様では、この化合物は、微小管、またはα−チューブリン、またはβ−チューブリンを結合する。別の特定の態様では、この化合物は、本明細書に記載のハリコンドリンBアナログである。
【0118】
本発明のシステムでは、細胞を、規定された時間にわたり試験化合物に曝露する。これにより、試験化合物に接触させた細胞に対し、成長または別の表現型の阻害を測定する。また、試験化合物に接触させた細胞に対し、チューブリンアイソタイプの発現または他の微小管関連タンパク質の発現を測定する。そして、このデータを利用して、試験化合物とチューブリンアイソタイプまたは微小管関連タンパク質の発現との相関を算出する。通常は、0.05以下のp値が統計学的に有意であると認められる。しかし、特定の態様では、0.07以下、0.10以下、0.15以下、または0.20以下が有意であると認められる。本発明において試験される細胞群が少ないほど、より大きなp値となり得る。
【0119】
本発明のシステムで使用される細胞は、任意の供給源から得ることができる。細胞は、細胞培養によって高い信頼性でかつ再現性よく成長できるのが好ましい。細胞は、細菌類、菌類、ほ乳類、ヒト、酵母菌、ラット、マウス、大腸菌(E. coli)、酵母(S. cerevisiae)等を含む任意の種からのものであってよい。細胞は、より高度な生物から得る場合、任意の組織、例えば、神経、脳、皮膚、筋肉、内分泌腺、肺、心臓、胃、大腸、肝臓、腎臓、膵臓、膀胱、乳房、卵巣、睾丸、前立腺、血液、骨髄、骨、結合組織、甲状腺、副腎、下垂体、脾臓等から得ることができる。特定の態様では、細胞は、内胚葉性、中胚葉性または外胚葉性の由来のものであってよい。特定の態様では、細胞は癌細胞であってよい。別の例では、細胞は不死化されている。細胞は、癌を持つ患者の生体検査から得てもよい。細胞は、外科標本から得ることもできる。細胞は、患者の血液から得ることもできる。
【0120】
特定の態様では、細胞は、市販の供給源または細胞株バンク(depository of cell lines)(例えば、ATCCまたはこれと同等の外国のバンク)から得られる。細胞は、米国国立癌研究所の抗癌薬物探索パネル(NCI-Anticancer Drug Screen Panel)から得ることもできる。特定の態様では、細胞は、乳癌細胞株である。乳癌細胞株は、例えば、AU565、BT−20、MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−435、MDA−MB−468、HCC38、HCC70、HCCl143、HCC1419、HCC1428、HCC1500、HCC1599、HCC1806、HCC1954、HCC2218、UACC−812、UACC−893、ZR−75−1、HS578TおよびZR−75−30である。別の態様では、細胞は肺癌細胞株である。肺癌細胞株の例には、NCI−H460、A549、A549−T12、NCI−H460およびA549−T24が含まれる。さらに別のの態様では、細胞は卵巣癌細胞株である。卵巣癌細胞株には、OVCAR−3およびIGROVlが含まれる。薬剤耐性細胞株または亜株も、本発明で使用することができる。例えば、細胞株は、タキソール、ビンカアルカロイド、タキソテール等のような他の抗微小管剤に対して耐性であってよい。特定の態様では、少なくとも5、10、15、20、25、30または50の細胞株を使用する。当業者に理解されるように、細胞株の数が増えると、構築される相関はより有意となる。好ましくは、本発明では20の細胞株を使用する。
【0121】
細胞は、試験化合物と接触させる。試験化合物は、抗微小管剤であってよい。試験化合物は、本明細書に記載するハリコンドリンBアナログであってよい。0.001μM〜100mM、または0.01μM〜10mM、または0.01μM〜1mM、0.1μM〜1mMの範囲の様々な濃度の試験化合物を使用することができる。試験化合物は、数時間、数日または数週間にわたり細胞に接触させる。特定の態様では、試験化合物を1〜14日間、細胞と接触させる。別の態様では、試験化合物を2〜10日間、細胞と接触させる。別の態様では、試験化合物を約7日間、細胞と接触させる。別の態様では、試験化合物を約4日間、細胞と接触させる。
【0122】
試験期間の終わりには、従来公知の方法を用いて細胞の表現型を評価する。例えば、細胞成長阻害アッセイを利用することができる。細胞の成長は、修飾メチレンブルーをベースとしたミクロ培養を使用して評価することができる(Amin et al., Cancer Res. 47:6040-45, 1987、Finlay et al., Anal Biochem. 139:272-277, 1984、各文献は、参照により本願に組み込まれる)。試験化合物に曝される細胞の別の態様または特徴、例えば、細胞の大きさ、細胞死、有糸分裂する細胞の数、紡錘体、細胞周期のS期の細胞等も、評価することができる。
【0123】
これにより、患者を選ぶシステムの項目で述べたように、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルを、試験される細胞について測定する。ノーザンブロット、PCR技術、ウェスタンブロット、質量分析、イムノアッセイ、細胞の染色等を含む、任意の方法を、発現レベルまたはタンパク質レベルの測定のために使用することができる。対象となる発現レベルまたはタンパク質レベルを測定した後には、そのデータを、統計学的方法を用いて、表現型のデータ(例えば、細胞成長阻害アッセイから得られるIC50(半数阻害濃度))と相関させることができる。
【0124】
特定の態様では、遺伝子発現の相対的な量に対して、標準的な比較C法を用いる。遺伝子発現レベルは、GAPDHのようなハウスキーピング遺伝子の発現レベルに標準化される。対照細胞株において、対象の遺伝子の発現のベースライン(基礎値)を構築することもできる。特定の態様では、慣例の相関係数(ピアソンr)のしきい値は、0.05以下のp値で有意であるとみなされる。しかし、0.20以下、0.15以下または0.10以下のp値も使用することができる。細胞株数が20未満である場合、より大きいp値が特に有用である。特定の態様では、特定の試験化合物を使用する実験を、より多数の細胞株で繰り返し、統計学的に有意な相関を構築する。
【0125】
統計学的に有意な相関が構築されると、この相関を、試験化合物または試験化合物に関連する化合物を用いる治療のための患者を選択するために使用することができる。患者を特定および/または治療する本発明のシステムは、上述の通りである。特定の態様では、相関は、チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の特定のレベルまたは範囲を基にしていてよい。例えば、癌細胞中のタンパク質の特定の範囲、または癌細胞中のmRNAレベルの特定の範囲を、相関を構築するのに使用することができる。別の態様では、統計学的に有意な相関を構築するために、1つより多いマーカーを測定することができる。特定の態様では、統計学的な有意性を構築するために、2、3、4、5またはそれより多いマーカーの分析を必要とする場合もある。ここでも、マーカーの存在または非存在を利用したり、マーカーのレベルまたは範囲を利用したり、これらの組合せを利用することもできる。
【0126】
特定の態様では、複数の試験化合物を試験する。特定の態様では、複数の試験化合物間の相関もあってよい。例えば、E7974、E7389およびビンブラスチンが、実施例1に記載の細胞株のパネルにおいて相関することが見出された。これらの化合物はパクリタキセルとは相関しなかった。この結果は、E7974、E7389およびビンブラスチンが、同じ癌を治療する上で有用であること、また、これらの化合物が、パクリタキセルを用いた治療に対して感受性がない癌細胞の治療に有用となり得ること、を示すともいえる。
【0127】
同様の方法を、特定のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子を発現する癌を治療するのに効果的な化学化合物を特定するために使用することができる。この方法は、他の既に知られた治療では難治性の癌、例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))による治療に対して感受性のない乳癌の治療において有用な化合物を特定するのに特に有用である。この方法では、化学化合物のライブラリーまたはコレクションをスクリーニングし、これにより、細胞の成長を阻害し、その阻害が、特定のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルと相関するような化合物を特定する。特定された化合物は、主たる化合物としてまたは薬剤の候補としての役割を果たし得る。
【0128】
キット
臨床医師または研究者が本発明の方法を実施するためのキットは、使用のために都合良く包装された、材料、試薬、装置および指示書を含んでいてよい。このキットは、ポリヌクレオチド(例えば、プライマー、PCRプライマー、プローブ、DNA、RNA、DNAアナログ等)、バッファ、酵素(例えば、リガーゼ、エンドヌクレアーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、プロテアーゼ、ポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ等)、エッペンドルフ管、取扱解説書、ヌクレオチド、クロマトグラフィ材料もしくは装置(例えば、ゲルろ過、イオン交換、サイズ排除)、スピンカラム、試験化合物(例えば、ハリコンドリンBアナログ、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、タキソテール、コルヒチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、他の抗微小管剤)、細胞株(癌細胞株、乳癌細胞株、肺癌細胞株、卵巣癌細胞株)、成長媒体、溶剤(例えば、DMSO、DMF)を含んでいてよい。
【0129】
患者を選ぶ方法を実施するのに有用なキットは、患者の癌の試料を得るのに有用な装置および材料を含んでいてよい。このような装置および材料は、シリンジ、ニードル、外科用メス、カップ、管、ラベル等を含んでいてよい。チューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現を遺伝子チップ、ノーザンブロットまたはPCRによって測定する場合には、キットは、試料から得たmRNAを精製する材料を含んでいてもよい。本発明による方法でイムノアッセイを使用する場合には、発現を測定したいタンパク質に関連する抗体が、キットに含まれている。好ましくは、その抗体は、マーカーに特異的である。
【0130】
マーカーと試験化合物との相関を構築するのに有用なキットは、細胞株、対照化合物、統計学ソフトウェア、成長媒体、バッファ、試験化合物および対照化合物を溶解させるための溶剤、組織培養プレート(例えば、96ウェルプレート)、成長阻害アッセイを実施するための材料もしくは装置、およびチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルを検出するために必要な材料もしくは装置を含んでいてよい。好ましくは、キットは、試験化合物を除く上述の相関を構築するために必要な全ての研究者を含む場合もある。試験化合物は、通常、研究者によって提供される。特定の細胞株も研究者によって提供される。
【0131】
本発明は、特許請求の範囲に記載の方法を実施する際に使用される試薬も含む。このような試薬は、プライマー、プローブまたはチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子に特異的な抗体を含む。本発明の実施において有用なプライマーおよびプローブの例は、実施例の表1および2に列記する。
【0132】
さらに、本発明の上述のおよび他の態様は、以下の実施例を考慮することによって理解されるであろう。以下の実施例は、本発明の特定の態様を例示することを意図しているのであって、特許請求の範囲によって規定される範囲を限定することを意図していない。
【実施例】
【0133】
実施例1−チューブリンアイソタイプと、E7389およびE7974との相関の構築
材料および方法
細胞株
以下のヒトの乳癌細胞株は、ATCCより得た。この細胞は、ATCC推奨の培養条件に従って保存した。AU565(ATCCカタログ番号CRL−2351)、BT−20(ATCCカタログ番号HTB−19)、MCF7(ATCCカタログ番号HTB22)、MDA−MB−231(ATCCカタログ番号HTB−26)、MDA−MB−435(ATCCカタログ番号HTB−129)、MDA−MB−468(ATCCカタログ番号HTB−132)、HCC38(ATCCカタログ番号CRL−2314)、HCC70(ATCCカタログ番号CRL−2315)、HCCl143(ATCCカタログ番号CRL−2321)、HCC1428(ATCCカタログ番号CRL−2327)、HCC1500(ATCCカタログ番号CRL−2329)、HCC1806(ATCCカタログ番号CRL−2335)、HCC1954(ATCCカタログ番号CRL−2338)、HCC2218(ATCCカタログ番号CRL−2343)、UACC−812(ATCCカタログ番号CRL−1897)、UACC−893(ATCCカタログ番号CRL−1902)、ZR−75−1(ATCCカタログ番号CRL−1500)、ZR−75−30(ATCCカタログ番号CRL−1504)。
【0134】
細胞成長阻害アッセイ
培養したヒト乳癌細胞を、96ウェルプレートに入れ、試験化合物を連続的に存在させながら4〜7日間、成長させた。細胞を試験化合物に7日間曝すためには、4日間の曝露後、媒体を、化合物を含む新鮮な媒体と入れ替え、細胞をさらに3日間インキュベートする。細胞の成長は、メチレンブルーをベースとしたマイクロ培養アッセイの変形(Amin et al., Cancer Res., 47:6040-6045, 1987、参照により本願に組み込まれる)を利用して評価した(Finlay et al, Anal. Biochem., 139:272-277, 1984、参照により本願に組み込まれる)。
【0135】
この研究において使用される細胞株によるPgPの起こり得る発現を調べるために、パクリタキセルの抗増殖性の効果を、PgPのよく知られた阻害剤であるベラパミルの存在下および非存在下で測定した。
【0136】
RNAの分離およびcDNAの合成
トータル細胞RNA分離のために、細胞をトリプシン処理によって採取した。細胞は、リン酸塩緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄した。RNAlater RNA安定化試薬(Quiagen)を細胞ペレットに添加し、RNAが分離するまで試料を80℃で保存した。RNeasy Protect Mini Kit(Qiagen、カタログ番号74124)を使用して、細胞からトータルRNA分離を実施した。このプロセスでは、製造者の標準的なプロトコルを使用した。QIAshredderスピンカラム(Qiagen、カタログ番号79654)を使用して試料を均一化し、いかなるDNA汚染をも除去するために、オンカラムのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)消化ステップ(RNase-Free DNaseセット、Qiagen、カタログ番号79254)も使用した。
【0137】
次に、トータル細胞RNAの約1から2μgを、RETROscript(登録商標)キット(Ambion、カタログ番号1710)を使用したcDNA合成のためのRT−PCR反応において使用した。 この反応は、提供された製造者のプロトコルに従って行った。この反応では、Oligo(dT)およびランダム十量体プライマーの等量混合物を使用した。
【0138】
プライマーおよびプローブ、定量リアルタイムPCR
β−チューブリン遺伝子
7つのβ−チューブリン遺伝子(I型アイソタイプ、遺伝子HM40/TUBB;II型アイソタイプ、遺伝子Hb9/TUBB2;III型アイソタイプ、遺伝子Hb4/TUBB4;IVa型アイソタイプ、遺伝子Hb5/TUBB5;IVb型アイソタイプ、遺伝子Hb2;V型アイソタイプ、5−beta/Beta V;およびVI型アイソタイプ、遺伝子Hbl/TUBBl)は、5’末端領域において互いに高度にホモログである(高度の同相性を示す)。そのため、ホモロジーが低い遺伝子の各3’末端からアンプリコン(amplicion)を選択した。遺伝子特異的なプライマーおよびプローブの配列を表1に示す。プローブは、FAMレポーターおよびTAMRAクエンチャーによって標識した。合成されたcDNAの1μLの全量を、対象とする各遺伝子のPCR増幅のための基材(substrate)として用いた。96ウェルプレートにおいて、遺伝子特異的なプライマーおよびプローブを使用して、ABI PRISM 7700配列検出システム(Applied Biosystems, Foster City, CA)により定量リアルタイムPCRを実施した。各試料を、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems、カタログ番号4304437)を使用してトリプリケート(triplicate)で評価した。製造者が提案する熱サイクル条件を、59℃のアニール温度で使用した。
【0139】
スタトミン、MAP4、Tauおよびα−チューブリン遺伝子
遺伝子の3’末端から設計されたスタトミンおよびMAP4のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを、表1に示す。Tauおよび6つのα−チューブリン遺伝子の特異的なプローブおよびプライマーは、Applied Biosystems より得た(表2)。スタトミンおよびMAP4mRNAの定量分析は、Taqman One-Step RT-PCR Master Mix Reagentsキットを使用して実施した(Applied Biosystems、カタログ番号4309169)。標準的な熱サイクルパラメータを使用して、48℃での30分インキュベーションおよび95℃での10分インキュベーション後に、95℃で15秒インキュベーションおよび60℃での1分インキュベーションのサイクルを40回行った。α−チューブリンアイソタイプの発現を、上述のβ−チューブリンアイソタイプの時と同じように分析した。
【0140】
遺伝子の相対的な発現レベルの相関および統計学的分析
遺伝子発現の相対的な量に対する標準的な比較C法を使用した(ABI tutorial)。遺伝子発現レベルは、対照とするGAPDHの発現レベルで標準化した。比較のために、AU565細胞群中の対象の遺伝子の発現レベルを参照(ベースライン)対照として選択した。
【0141】
試験薬剤に対する細胞群の感度(細胞成長阻害アッセイで得られるIC50)と対象の遺伝子の発現レベルとの間の相関を計算した。慣例の相関係数(ピアソンr)のしきい値は、0.05以下のp値で有意であるとみなされる。
【0142】
標準的な段階的重回帰分析を、得られたデータに対して実施した。この分析では、4つの成分に対するIC50の値を標準化し、14個の遺伝子発現には、分析の全てにおいて標準化およびlog10変換の両方を行う。
【0143】
結果
4つのチューブリン結合抗癌剤の抗増殖効果を、メチレンブルーを用いた細胞成長阻害アッセイによって、ヒト乳癌細胞の19株のパネルで評価した。この研究では、次の薬剤、ハリコンドリンアナログE7389、ヘミアステリンアナログE7974、ビンブラスチンおよびパクリタキセルを使用した。それぞれのIC50の測定は、少なくとも3つの別々の実験で行った。多剤耐性排出ポンプ(P−グリコタンパク質、つまりPgP)の存在は、試験薬剤に対する細胞株の感受性に著しく影響を及ぼし得るので、β−チューブリンの発現と試験薬剤に対する細胞株の感受性との相関が明らかにならない可能性もある。したがって、PgPの発現を検証するために、細胞株を、PgPブロッカーのベラパミルの影響を監視することにより試験した。試験された細胞群のいずれにも、PgP発現の証拠は見られなかった。細胞成長阻害に対するIC50の平均値を表3に示す。E7389は、4つの化合物のうちで最も活性が大きく、乳癌細胞株の成長を、0.29〜1.8nMのIC50値で阻害した。最も感度の大きい細胞株と最も感度の低い細胞株とでのIC50の値の比(fold-difference)は、4つの全化合物に関してほぼ同じであった(E7389、E7974、パクリタキセルおよびビンブラスチンについて、それぞれ6.2、6.8、5.8および5.6)。薬剤間での相関は、3つの微小管重合阻害剤、E7974、E7389およびビンブラスチンの間ではそれらに対する感度で観察されが、微小管重合安定剤であるパクリタキセルとの間では観察されなかった。
【0144】
7つのβ−チューブリンアイソタイプ遺伝子、4つのα−チューブリンアイソタイプ遺伝子、ならびにスタトミン、TauおよびMAP4遺伝子の発現分析を、定量リアルタイムPCRによって、ヒト乳癌細胞19株で行った。各遺伝子発現のGAPDHmRNAに対する正規化を、各実験において行った。Cデータに基づいて、β−チューブリン中で最も高く発現した遺伝子はI型およびIVb型アイソタイプであった。この研究で試験された細胞株のパネルにおいて、最も低いレベルで発現したβ−チューブリン遺伝子は、II型、IVa型およびVI型アイソタイプであった。細胞株間での遺伝子発現を比較するために、細胞株AU565中の転写産物のレベルを、ベースラインとして任意に選択した(表5)。細胞株のうちで最も変動のある遺伝子発現レベルは、II型、III型およびIVa型β−チューブリンアイソタイプ(図1)であった。
【0145】
始めに、細胞群の、9つの試験された遺伝子の発現レベルによるチューブリン結合剤に対する感度の比較を、相関分析を利用して行った(表6)。β−チューブリン遺伝子と、4つ全ての化合物の影響との相関のうち最も高かったものは、III型アイソタイプとの相関である。この相関は、E7389およびE7974の場合の極めて大きなレベルに達する。興味深いことに、観察されたこれらの相関は負である、つまり、III型アイソタイプのより高い発現レベルが、E7389およびE7974に対するより高い感度に関連する。E7974は、I型アイソタイプの発現との相関もいくらか示し、有意なレベル(r=−0.42、p=0.07)に近づく。
【0146】
スタトミンおよびMAP4遺伝子の発現レベルは、この種の分析においては、細胞成長に対する化合物の効果と有意に相関しなかったが、E7974との相関は最も高く、この相関は、分析においてより多くの細胞株を含めた場合より重要となり得る。
【0147】
さらに、選択された遺伝子発現レベルとチューブリン結合剤への感度との関連を、標準的な段階的重回帰分析を使用して評価した(表7)。E7389のIC50は、III型、IVb型およびV型β−チューブリンアイソタイプ、ならびにI型α−チューブリンアイソタイプの発現と有意に相関した。この分析では、E7974への感度もやはり、III型およびIVb型β−チューブリンアイソタイプと関連し、Tauおよびスタトミン遺伝子の発現とも関連した。
【0148】
【表1】

【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
【表4】

【0152】
【表5−1】

【0153】
【表5−2】

【0154】
【表6】

【0155】
【表7】

【0156】
実施例2−治療に適した患者を特定する際の遺伝子チップの使用
この実施例では、特定の抗微小管剤を使用する治療のための患者を選ぶ際の、遺伝子チップマイクロアレイの使用を記載する。
【0157】
患者の癌から試料を得る。癌細胞群の細胞からmRNAを分離する。分離されたmRNAを逆転写してcDNAを得て、これを蛍光マーカーで標識する。次に、標識されたcDNAを、チューブリンアイソタイプに対して特異的なヌクレオチドを、Tau、MAP4およびスタトミンと共に含むマイクロアレイによりインキュベートする。ハイブリダイゼーションが行われていないcDNAを除去すべく条件を次第に厳しくして洗浄が行われるように、アレイを繰り返し洗浄する。アレイを脱水する。ハイブリダイゼーションした標識されたcDNAを含むアレイを、走査型レーザ顕微鏡を用いて分析する。各スポットに対するネット信号を、平均のスポット強さから局所的なバックグラウンドを差し引くことによって測定した。各スポットに対する信号の強さを正規化する。
【0158】
癌細胞中に観察された発現レベルに基づいて、ある患者を、治療のために選択するかまたは選択しない。例えば、β−チューブリンのIII型アイソタイプの発現レベルが、E7389およびE7974に対する高い感度と相関していることが示された。したがって、β−チューブリンのIII型アイソタイプを高いレベルで発現する癌細胞を持つ患者は、E7389、E7974またはこれらの化合物の別のアナログによる治療に適した対象者となろう。特定の態様では、特定のβ−チューブリンアイソタイプの発現レベルにより、特定の化合物を用いる治療のために患者を除外することもある。例えば、患者の癌細胞中でβ−チューブリンのII型アイソタイプが発現される場合、タキソールを用いる治療のためにその患者を除外し得る。
【0159】
その他の態様
以上、特定の非限定的な本発明の好ましい態様を説明した。しかし、特許請求の範囲に記載の本発明の思想または範囲から逸脱しなければ、上記説明に対して変形および変更が可能であることは、当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】乳癌細胞群中のβ−チューブリンアイソタイプの発現を示す。チューブリン遺伝子発現は、GAPDHmRNAに対して正規化し、ΔCとしてプロットした。
【図2】E7389の感度と、β−チューブリンアイソタイプ遺伝子の発現レベルとの直線的な相関を示す。
【図3】E7974の感度と、β−チューブリンアイソタイプ遺伝子の発現レベルとの直線的な相関を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学化合物による治療のために、癌を持つ患者を特定する方法であって、
(a)前記患者の癌から試料を得て、
(b)前記試料を、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子を含む群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに関して分析し、この場合、前記化学化合物に対する感度と前記マーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルとの間に相関が存在し、
前記化学化合物が、式(I)
【化1】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレンまたはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、Rは、HまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−である]を有するか、あるいは薬学的に許容されるその塩であり、
(c)前記少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて患者を特定する、ステップを含む方法。
【請求項2】
前記化学化合物が、式(II)
【化2】


を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学化合物が、式(III)
【化3】


を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化学化合物が、式(IV)
【化4】


を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化学化合物が、式(IV)
【化5】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、この骨格は、置換されていないか、またはアジド、ヒドロキシ、OR、NH、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NRおよびNR(CO)ORを含む群から選択される1〜4個の置換基を有し、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択される]を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化学化合物が、式(V)
【化6】


を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化学化合物が、式(VI)
【化7】


を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マーカーが、α−チューブリンアイソタイプを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記マーカーが、β−チューブリンアイソタイプを含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)およびVI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)およびVI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記マーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hb4/TUBB4)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカーが、スタトミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記マーカーが、MAP4である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも2つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも2つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析し、該少なくとも2つのマーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)、VI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)、スタトミンおよびMAP4を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも3つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも3つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析し、該少なくとも3つのマーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)、VI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)、スタトミンおよびMAP4を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記癌が、乳癌、卵巣癌および肺癌を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記癌が、乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記癌が、多剤耐性の癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記癌の細胞が、P−グリコタンパク質(PgP)を発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記癌が、パクリタキセル耐性の癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記癌から試料を得るステップが、前記癌の生体検査の試料を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記癌から試料を得るステップが、前記癌からRNAの試料を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
RNAの試料を得た後に、該RNAをcDNAに逆転写することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マーカーに対して特異的なプライマーを使用してcDNAにおいてPCRを実施し、
前記マーカーの発現を測定するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
cDNAを、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連タンパク質を含む群から選択される前記マーカーに対して特異的なプローブのアレイに接触させ、
前記マーカーの発現レベルを定量するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記癌から試料を得るステップが、前記癌からタンパク質の試料を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記試料に、前記マーカーに対して特異的な抗体に接触させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料を、前記マーカーに関して、質量分析を用いて分析するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記癌から試料を得るステップが、前記癌から細胞の試料を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて患者を特定するステップが、前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルに基づいて患者を特定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルが、対照細胞中のレベルの少なくとも2倍である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルが、対照細胞中のレベルの少なくとも3倍である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルが、対照細胞中のレベルの少なくとも5倍である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて、癌を持つ患者を治療するための化合物を選択する方法であって、
α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子からなる群から選択された少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて、式(I)
【化8】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレンまたはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、Rは、HまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−である、あるいは薬学的に許容されるその塩である]の化合物を患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項38】
前記化学化合物が、式(II)
【化9】


を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記化学化合物が、式(III)
【化10】


を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記化学化合物が、式(IV)
【化11】


を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記化学化合物が、式(IV)
【化12】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、この骨格は、置換されていないか、またはアジド、ヒドロキシ、OR、NH、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NRおよびNR(CO)ORを含む群から選択される1〜4個の置換基を有し、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択される]を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記化学化合物が、式(V)
【化13】


を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記化学化合物が、式(VI)
【化14】


を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記マーカーが、α−チューブリンアイソタイプを含む群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
前記マーカーが、β−チューブリンアイソタイプを含む群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記マーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)およびVI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)を含む群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記マーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)およびVI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)を含む群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項48】
前記マーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hb4/TUBB4)である、請求項37に記載の方法。
【請求項49】
前記マーカーが、スタトミンである、請求項37に記載の方法。
【請求項50】
前記マーカーが、MAP4である、請求項37に記載の方法。
【請求項51】
ACCTCAGGCTTCTCAGTTCCC(配列番号15(SEQ ID NO: 15))、
TAGCCGTCTTACTCAACTGCCCCTTTCC(配列番号16)、
CAGCAAACACAAATTCTGAGGG(配列番号17)、
GTGGAAGGAAAGAAGCATGGTC(配列番号18)、
ACTTTAGGTGTGCGCTGGGTCTCTGG(配列番号19)、
GTGACAGGCAACAGTGAAGAGC(配列番号20)、
CCTCGTCCTCCCCACCTAG(配列番号21)、
CCACGTGTGAGCTGCTCCTGTCTCTG(配列番号22)、
AGGCCTGGAGCTGCAATAAG(配列番号23)、
TCTGACCTTTGATCCGCTAGG(配列番号24)、
CCCCCATCTCTGAACCCTAGAGCCC(配列番号25)、
TCAGCCTTGGAGGGAAAGC(配列番号26)、
GGAAGCAGTGTGAACTCTTTATTCAC(配列番号27)、
CCCAGCCTGTCCTGTGGCCTG(配列番号28)、
CAGCAAGTGCACACAGTGGG(配列番号29)、
CCCTGGTGCCTCCTACCCT(配列番号30)、
TGGCCCTGAATGGTGCACTGGTTT(配列番号31)、
GGGCCGACACCAACACAA(配列番号32)、
TGCACTCACCATTAGCTTCGA(配列番号33)、
ACAGGGACTGAGGGAGACAGGTGGG(配列番号34)、および
CCCTAATGCCTGTCAGCTGC(配列番号35)の配列を含む群から選択されるポリヌクレオチド。
【請求項52】
マーカー遺伝子の発現と、化学化合物に対する感受性との相関を構築する方法であって、
細胞を準備し、
前記細胞を、式(I)
【化15】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレン、またはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、RはHまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であるか、あるいは薬学的に許容されるその塩である]の化合物と接触させ、
成長の阻害について前記細胞をアッセイし、
前記細胞中のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連遺伝子の発現を測定し、
1つ以上のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルと、試験される化合物に対する感受性との相関を測定するステップを含む、方法。
【請求項53】
前記細胞が癌細胞株である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞が、乳癌細胞株、卵巣癌細胞株または肺癌細胞株である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
β−チューブリンアイソタイプの発現を測定する、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
全てのα−およびβ−チューブリンアイソタイプの発現を測定する、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
全てのα−およびβ−チューブリンアイソタイプの発現、ならびにスタトミン、MAP4、Tau、CLIP−170、EBlおよびp150を含む群から選択される他の微小管関連生体分子の発現を測定する、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
p値が0.05以下の場合に前記相関が存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
p値が0.06以下の場合に前記相関が存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
p値が0.10以下の場合に前記相関が存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項61】
化合物による治療のための、癌を持つ患者を特定する方法であって、
(a)患者の癌から得た試料を、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子を含む群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルについて分析し、この場合、化学化合物に対する感度と前記マーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルとの間に相関が存在し、
前記化学化合物が、式(I)
【化16】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレン、またはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、RはHまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HもしくはC1〜6アルコキシであり、またはYおよびY’は、合わせて=O、=CHもしくは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−である、あるいは薬学的に許容されるその塩である]を有しており、
(b)前記少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて患者を特定するステップを含む、方法。
【請求項62】
前記化学化合物が、式(II)
【化17】


を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記化学化合物が、式(III)
【化18】


を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記化学化合物が、式(IV)
【化19】


を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記化学化合物が、式(IV)
【化20】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、この骨格は、置換されていないか、またはアジド、ヒドロキシ、OR、NH、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NRおよびNR(CO)ORを含む群から選択される1〜4個の置換基を有し、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択される]を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
前記化学化合物が、式(V)
【化21】


を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記化学化合物が、式(VI)
【化22】


を有する、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記マーカーが、α−チューブリンアイソタイプを含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
前記マーカーが、β−チューブリンアイソタイプを含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項70】
前記マーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)およびVI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)を含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項71】
前記マーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)およびVI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)を含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項72】
前記マーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hb4/TUBB4)である、請求項61に記載の方法。
【請求項73】
前記マーカーが、スタトミンである、請求項61に記載の方法。
【請求項74】
前記マーカーが、MAP4である、請求項61に記載の方法。
【請求項75】
少なくとも2つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析する、請求項61に記載の方法。
【請求項76】
少なくとも2つの前記マーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析し、該少なくとも2つのマーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)、VI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)、スタトミンおよびMAP4を含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項77】
少なくとも3つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析する、請求項61に記載の方法。
【請求項78】
少なくとも3つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを分析し、該少なくとも3つのマーカーが、1型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA3/b−α1)、6型α−チューブリンアイソタイプ(TUBA6)、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ4/TUBB4)、IVa型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ5/TUBB5)、IVb型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ2)、V型β−チューブリンアイソタイプ(5−beta/Beta V)、VI型β−チューブリンアイソタイプ(Hβ1/TUBBl)、スタトミンおよびMAP4を含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項79】
前記癌が、乳癌、卵巣癌および肺癌を含む群から選択される、請求項61に記載の方法。
【請求項80】
前記癌が乳癌である、請求項61に記載の方法。
【請求項81】
前記癌が多剤耐性の癌である、請求項61に記載の方法。
【請求項82】
前記癌の細胞が、P−グリコタンパク質(PgP)を発現する、請求項61に記載の方法。
【請求項83】
前記癌が、パクリタキセル耐性の癌である、請求項61に記載の方法。
【請求項84】
前記少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルに基づいて患者を特定するステップが、前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルに基づいて患者を特定することを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項85】
前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルが、対照細胞中のレベルの少なくとも2倍である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルが、対照細胞中のレベルの少なくとも3倍である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも1つのマーカーの増加したレベルが、対照細胞中のレベルの少なくとも5倍である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
式(I)
【化23】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレンまたはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、Rは、HまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であるか、あるいは薬学的に許容されるその塩である]の化合物の、癌の治療のための薬剤の製造における使用であって、患者の癌が、α−チューブリンアイソタイプ、β−チューブリンアイソタイプおよび微小管関連生体分子を含む群から選択された少なくとも1つのマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルを有すると特定されており、化学化合物に対する感度とマーカーの発現レベルまたはタンパク質レベルとの間で相関が存在する、使用。
【請求項89】
式(I)
【化24】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレン、またはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、RはHまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HもしくはC1〜6アルコキシであり、またはYおよびY’は、合わせて=O、=CHもしくは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であるか、あるいは薬学的に許容されるその塩である]の化合物の癌を治療するための薬品の製造においての使用であって、癌を持つ患者が、請求項1〜33のいずれか1項に記載の方法により特定されている、使用。
【請求項90】
前記化学化合物が、式(II)
【化25】


を有する、請求項88または89に記載の使用。
【請求項91】
前記化学化合物が、式(III)
【化26】


を有する、請求項88または89に記載の使用。
【請求項92】
前記化学化合物が、式(IV)
【化27】


を有する、請求項88または89に記載の使用。
【請求項93】
前記化学化合物が、式(IV)
【化28】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であって、この骨格は、置換されていないか、またはアジド、ヒドロキシ、OR、NH、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NRおよびNR(CO)ORを含む群から選択される1〜4個の置換基を有し、
、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択される]を有する、請求項88または89に記載の使用。
【請求項94】
前記化学化合物が、式(V)
【化29】


を有する、請求項88または89に記載の使用。
【請求項95】
前記化学化合物が、式(VI)
【化30】


を有する、請求項88または89に記載の使用。
【請求項96】
前記少なくとも1つのマーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hb4/TUBB4)である、請求項88または89に記載の使用。
【請求項97】
前記少なくとも1つのマーカーが、スタトミンである、請求項88または89に記載の使用。
【請求項98】
前記少なくとも1つのマーカーが、III型β−チューブリンアイソタイプ(Hb4/TUBB4)である、請求項88または89に記載の使用。
【請求項99】
マーカー遺伝子の発現と、化学化合物に対する感受性との相関を構築するインビトロでの方法であって、
細胞を準備し、
前記細胞を、式(I)
【化31】


[式中、Aは、C1〜6の飽和またはC2〜6の不飽和の炭化水素骨格であり、この骨格は、置換されていないか、またはシアノ、ハロ、アジド、Qおよびオキソを含む群から選択される1〜13個の置換基を有しており、ここで、各Qは独立して、OR、SR、SO、OSO、NR、NR(CO)R、NR(CO)(CO)R、NR(CO)NR、NR(CO)OR、(CO)OR、O(CO)R、(CO)NRおよびO(CO)NRから選択され、
、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、C1〜6アルキル、C1〜6ハロアルキル、C1〜6ヒドロキシアルキル、C1〜6アミノアルキル、C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール、C6〜10ヒドロキシアリール、C1〜4アルコキシ−Cアリール、C6〜10アリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10アリール、C6〜10ハロアリール−C1〜6アルキル、C1〜6アルキル−C6〜10ハロアリール、(C1〜3アルコキシ−Cアリール)−C1〜3アルキル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル、C2〜9ヘテロ環式ラジカル−C1〜6アルキル、C2〜9ヘテロアリールおよびC2〜9ヘテロアリール−C1〜6アルキルから選択され、
DおよびD’のそれぞれは、独立して、RおよびORから選択され、RはH、C1〜3アルキルまたはC1〜3ハロアルキルであり、
nに対応する値は、1または0であり、これにより、6員環または5員環が形成され、この場合、環は置換されていなくても置換されていてもよく、Eは、−Rまたは−ORであり、かつヘテロ環式ラジカルまたはシクロアルキルであってよく、Gは、S、SH、NRまたは好ましくはOであり、
JおよびJ’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはJおよびJ’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、
Qは、C1〜3アルキルであり、
Tは、メチレン、エチレンまたはエテニレンであって、任意に(CO)ORで置換されており、Rは、HまたはC1〜6アルキルであり、
UおよびU’は独立して、H、C1〜6アルコキシまたはC1〜6アルキルであり、あるいはUおよびU’は、合わせて=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であり、Xは、HまたはC1〜6アルコキシであり、
YおよびY’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはYおよびY’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖もしくは分枝C1〜5アルキレンもしくはアルキリデン)−O−であり、
ZおよびZ’は独立して、HまたはC1〜6アルコキシであり、あるいはZおよびZ’は、合わせて=O、=CHまたは−O−(直鎖または分枝C1〜5アルキレンまたはアルキリデン)−O−であるか、あるいは薬学的に許容されるその塩である]の化合物と接触させ、
成長の阻害について前記細胞をアッセイし、
前記細胞中のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連遺伝子の発現を測定し、
1つ以上のチューブリンアイソタイプまたは微小管関連生体分子の発現レベルまたはタンパク質レベルと、試験される化合物に対する感受性との相関を測定するステップを含む、方法。
【請求項100】
前記細胞が癌細胞株である、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞が、乳癌細胞株、卵巣癌細胞株または肺癌細胞株である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
β−チューブリンアイソタイプの発現を測定する、請求項99に記載の方法。
【請求項103】
全てのα−およびβ−チューブリンアイソタイプの発現を測定する、請求項99に記載の方法。
【請求項104】
全てのα−およびβ−チューブリンアイソタイプの発現、ならびにスタトミン、MAP4、Tau、CLIP−170、EBlおよびp150を含む群から選択される他の微小管関連生体分子の発現を測定する、請求項99に記載の方法。
【請求項105】
p値が0.05以下の場合に前記相関が存在する、請求項99に記載の方法。
【請求項106】
p値が0.06以下の場合に前記相関が存在する、請求項99に記載の方法。
【請求項107】
p値が0.10以下の場合に前記相関が存在する、請求項99に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−522623(P2008−522623A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545622(P2007−545622)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/044421
【国際公開番号】WO2006/076100
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】