説明

ハロゲン化銀カラー感光材料

【課題】本発明の目的は、鮮鋭性とカブリ抑制を両立した優れた網点品質、白地を得られ、かつ支持体上への塗布性、特に塗布液微小はじきが改良されたハロゲン化銀カラー感光材料を提供することにある。
【解決手段】反射支持体上に少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層、及び少なくとも一層の非感光性層を有するハロゲン化銀カラー感光材料において、非感光性層が感光性ハロゲン化銀乳剤層に隣接して塗設されかつ該非感光性層が黒色コロイド銀、および、下記一般式(A)で表される化合物、を含有することを特徴とする、ハロゲン化銀カラー感光材料。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀カラー感光材料に関し、印刷物の仕上がりを事前に確認するプルーフに関するものであり、更に詳しくは鮮鋭性とカブリ抑制を両立した優れた網点品質、白地を得られ、かつ支持体上への塗布性、特に塗布液微小はじきが改良されたハロゲン化銀カラー写真感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀カラー感光材料は、高感度であること、色再現性に優れていること、連続処理に適していることから今日盛んに用いられている。こうした特徴からハロゲン化銀カラー感光材料は、写真の分野のみではなく、印刷の分野でも、印刷の途中の段階で仕上がりの印刷物の状態をチェックするためのいわゆるプルーフの分野で広く用いられるようになってきている。
【0003】
プルーフの分野では、コンピュータ上で編集された画像を印刷用フィルムに出力し、現像済みのフィルムを適宜交換しつつ分解露光する事によってイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各画像を形成させ、最終印刷物の画像をカラー印画紙上に形成させることにより、最終印刷物のレイアウトや色の適否を判断することが行われていた。
【0004】
最近では、コンピュータ上で編集された画像を直接印刷版に出力する方式が徐々に普及してきており、このような場合にはコンピュータ上のデータからフィルムを介することなく直接カラー画像を得ることが望まれていた。
【0005】
このような目的には、昇華型・溶融熱転写方式や電子写真方式、インクジェット方式等種々の方式の応用が試みられてきたが、高画質な画像が得られる方式では費用がかかり生産性が劣るという欠点があり、費用が少なくてすみ生産性に優れた方式では画質が劣るという欠点があった。ハロゲン化銀カラー感光材料を用いたシステムでは、優れた鮮鋭性等から、正確な網点画像が形成出来るなど高画質な画像形成が可能であり、一方で上述したように連続した処理が可能であることや、複数の色画像形成ユニットに同時に画像を書き込む事が出来ることから高い生産性を実現することが可能であった。
【0006】
近年、印刷の分野でいわゆるデジタル化が進みコンピュータ内のデータから直接画像を得る要求が強まっているが前記したような理由によって、ハロゲン化銀カラー感光材料がこの分野で有利に使われ始めている。特に、走査露光用ハロゲン化銀カラー感光材料が有用である。
【0007】
デジタルデータに基づき面積階調画像を形成するシステムでは、網点を更に小さな単位(ここではこれを画素と表現した)に分割し、この画素を適切な露光量で走査露光する事によってその集合体として網点を再現することが可能である。例えとして簡単な例を挙げれば、1つの網点が100個の画素で構成されるのであれば、50個の画素を現像可能なように露光する事により網%が50%の網点を形成する事が出来る。
【0008】
上記のような状況を踏まえハロゲン化銀カラー感光材料の鮮鋭性を向上させる方法のひとつとして入射光の支持体界面での反射に伴う鮮鋭性の劣化を防止する目的で支持体に隣接した位置にハレーション防止層を設ける方法が広く採用されている。このハレーション防止層には主にはコロイド状の金属銀粒子が使用されている。
【0009】
しかしながら、従来より用いられていた黒色コロイド銀分散物では現像処理過程で完全に感材から溶出させることができず、特にカラー印画紙のような白色支持体に用いた場合に白地汚染の原因となるためその使用方法が限定されているのが現状である。
【0010】
特に、特開2000−221638号に示すような印刷物のプルーフ目的で用いる場合、2400dpi(dpiとは、2.54当たりのドット数を表す。)程度の解像度の網点を再現する高い鮮鋭性が要求されている。
【0011】
また、従来のプルーフシステムは、ベタ濃度を変えることが困難であり。CMS等によりベタ部を網点で再現したり、中間調についても印刷物の網点の大きさからずらすことで色調を合わせている。
【0012】
そのためには、特開2004−264800号に示すような、ベタの濃度を印刷に合わせて設定できることが望まれる。ハロゲン化銀感光材料では、特性曲線の途中を利用することで、ベタ濃度を変えることは可能であるが、特性曲線の途中を使うために、光量変動による変動を受けやすい。
【0013】
特に無彩色系の色調は、目視の検出力が高く、例えば墨網等では、濃度の安定化だけでなく、網点の微妙な色調の高い安定性が望まれており、変動の影響の受けやすいフリンジをできるだけ少なくするために鮮鋭性の高い感光材料が望まれていた。また一方で印刷用紙と同様の汚れのない白地を再現する必要があるが、従来のコロイド銀分散物では、前記のような高いレベルの鮮鋭性と白地性能の両立ができなかった。
【0014】
上記課題の解決方法のひとつとして例えば平板上のコロイド銀を使用する方法(特許文献1参照)や、特定の構成からなる漂白定着液を用いる方法(特許文献2参照)が提案されているが十分に鮮鋭性を改良するには至っていないのが現状である。
【0015】
また、コロイド銀調製時に添加剤を添加する方法としては、イミダゾール誘導体を用いる方法(特許文献3参照)が知られているが、可視光全域にわたってニュートラルな比較的フラットな吸収をもつコロイド銀が得られてはいるが、黒色コロイド銀分散物安定性としては十分でなく、また得られる網点品質、網点色調安定性および白地特性に関しても満足できる品質とは言い難かった。また、支持体上に黒色コロイド銀を塗布する際には塗布性、特に塗布面のはじき現象の原因になり得ることがわかってきており、これについても改善が望まれていた。
【特許文献1】特開平5−134358号公報
【特許文献2】特開平6−347966号公報
【特許文献3】特開昭52−92508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、鮮鋭性とカブリ抑制を両立した優れた網点品質、白地を得られ、かつ支持体上への塗布性、特に塗布液微小はじきが改良されたハロゲン化銀カラー感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
1.反射支持体上に少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層、及び少なくとも一層の非感光性層を有するハロゲン化銀カラー感光材料において、非感光性層が感光性ハロゲン化銀乳剤層に隣接して塗設されかつ該非感光性層が黒色コロイド銀、および、下記一般式(A)で表される化合物、を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー感光材料。
【0018】
【化1】

【0019】
〔式中、R1およびR2は、各々独立に、n−アルキル基を表す。〕
2.前記黒色コロイド銀が、下記一般式(S)で表される化合物の存在下で銀塩を還元することにより調製される黒色コロイド銀であることを特徴とする1に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
【0020】
【化2】

【0021】
〔式中、Tは5員ヘテロ環を形成するに必要な原子団を表し、Jは水素原子、ヒドロキシ基、−SO31、−COOM1(ここでM1は水素原子、アルカリ金属原子、または置換もしくは無置換のアンモニウムイオンを表す)、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアンモニオ基、これらの1つ以上によって置換された炭素数1〜19のアルキルチオ基、炭素数2〜18のアルキルアミド基、炭素数2〜18のアルキルカルバモイル基、炭素数1〜19のアルキル基、または炭素数6〜31の芳香族基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、または置換もしくは無置換のアンモニウムイオンを表す。〕
3.前記非感光性層に、白色顔料を含有することを特徴とする1または2に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
4.前記非感光性層に、蛍光増白剤を含有することを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
5.前記黒色コロイド銀を含有する前記非感光性層が、反射支持体に接して塗設されることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、鮮鋭性とカブリ抑制を両立した優れた網点品質、白地を得られ、かつ支持体上への塗布性、特に塗布液微小はじきが改良されたハロゲン化銀カラー感光材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、乳剤層に隣接し、黒色コロイド銀を含有する非感光性層を含有するハロゲン化銀カラー感光材料において、該非感光性層に含有される黒色コロイド銀が、下記一般式(S)で表される化合物の存在下で銀塩を還元することにより調製される黒色コロイド銀であり、かつ同層に一般式(A)で表される化合物を含有することで達成できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0025】
以下本発明の詳細について説明する。
【0026】
本発明に係る前記一般式(A)で表される化合物について説明する。
【0027】
前記一般式(A)において、R1およびR2は、各々独立に、n−アルキル基を表す。n−アルキル基のうちでも、炭素数1〜10のn−アルキル基が好ましく、炭素数1〜8のn−アルキル基がより好ましい。炭素数が上記の範囲であることで、塗布はじきの抑制効果が特に好適に奏されて好ましい。
【0028】
以下に、本発明に係る一般式(A)で表される化合物の具体的例示化合物を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
【化3】

【0030】
次に、本発明に係る黒色コロイド銀の分散物について、その詳細を説明する。
【0031】
黒色コロイド銀の製造方法としては、例えば米国特許第2,688,601号、同第2,921,914号、ドイツ国特許第1,096,193号、特開平5−134358号等に記載の如く、一般には、ゼラチンに代表される保護コロイドの存在下で、硝酸銀水溶液のような可溶性銀塩を、フェノール、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン化合物やその塩、デキストリン等の還元糖化合物、オキシテトロン酸系の化合物などの還元剤を用いて還元することにより微細な金属状(コロイド状)の銀粒子として調製される。
【0032】
本発明に係る黒色コロイド銀の製造方法では、前記一般式(S)で表される化合物の存在下で可溶性銀塩を還元して、黒色コロイド銀を製造することを特徴とする。
【0033】
本発明に係る前記一般式(S)で表される化合物の存在下で可溶性銀塩を還元することにより、安定した黒色コロイド銀の製造が可能となり、所望の分光吸収特性を有する黒色コロイド銀を得ることができ、また黒色コロイド銀の形成時に前記一般式(S)で表される化合物を共存させることにより、前記一般式(S)で表される化合物が黒色コロイド銀粒子表面に適度に吸着し、その電気的な反発力により、黒色コロイド銀粒子の凝集を効果的に防止することができたものである。
【0034】
次いで、前記一般式(S)で表されるメルカプト化合物について説明する。
【0035】
前記一般式(S)において、Tは5員ヘテロ環を形成するに必要な原子団を表し、Jは水素原子、ヒドロキシ基、−SO31、−COOM1、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアンモニオ基、これらの1つ以上によって置換された炭素数1〜19のアルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n−ブチルチオ基等)、炭素数2〜18のアルキルアミド基、炭素数2〜18のアルキルカルバモイル基、炭素数1〜19のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等)、または炭素数6〜31の芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)を表すが、特に好ましくは水素原子である。
【0036】
1は水素原子、アルカリ金属原子、または置換もしくは無置換のアンモニウムイオンを表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、または置換もしくは無置換のアンモニウムイオンを表す。
【0037】
以下、一般式(S)で表されるメルカプト化合物の具体的化合物を列挙するが、本発明では、これら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0038】
【化4】

【0039】
本発明に係る黒色コロイド銀の分散物において、本発明に係る一般式(S)で表されるメルカプト化合物の好ましい添加量としては、コロイド銀1mol当たり1×10-4〜1×10-1molが好ましく、さらに好ましくは1×10-3〜1×10-2である。
【0040】
本発明に係る黒色コロイド銀の分散物の製造方法において、本発明に係る一般式(S)で表されるメルカプト化合物の添加位置は、コロイド銀が還元される工程であれば、任意の位置で添加することができるが、本発明において好ましく用いられる方法である核粒子として黄色コロイド銀を形成した段階で一旦これを単離し、これを核として還元成長させる方法においては、この黄色コロイド銀核を可溶性銀塩で還元成長させる前に添加することが、製造安定性の観点から好ましい。
【0041】
次いで、本発明に係る黒色コロイド銀の分散物の分光吸収特性について説明する。
【0042】
従来、黒色コロイド銀として望ましい分光吸収特性は、幅広い波長域にわたりフラットな吸収を持つことが望まれている。また、特開2000−155387号公報に記載されているように、赤外線センサーに適度な感度を待たせるためには、赤外領域に吸収をもつ分光特性が望まれていた。しかし、従来より提案されているフラットあるいは長波に吸収を有する黒色コロイド銀粒子を観察すると、小粒子の凝集体が多数存在していることが判明した。
【0043】
これに対し、本発明の黒色コロイド銀の製造方法では、本発明に係る一般式(S)で表される化合物を存在させることによりコロイド銀の凝集状態が制御されて、凝集体が少なくなっており、その結果、赤外領域の吸収が少なく、かつ好ましい分光吸収特性が得られたものと推定している。
【0044】
本発明に係る黒色コロイド銀の分散物においては、鮮鋭性及び脱銀性の観点から、650nmでの分光吸収濃度D650に対する950nmでの分光吸収濃度D950の値の比、即ちD950/D650の値が0.70未満であることが好ましく、更に好ましくは0.50未満、特に好ましくは、0を含み、0.20未満である。
【0045】
また、コロイド銀の分散物の400nm〜1000nmにおける分光吸収の最大波長が500nm以上、700nm以下の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは550nm以上、650nm以下の範囲である。
【0046】
更に、白色支持体上に塗布した際の400nm〜700nmにおける反射系での最大吸収波長が550nm以上、700nm以下の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、580nm以上、680nm以下の範囲である。
【0047】
なお、本発明で規定する分光吸収濃度の測定は、黒色コロイド銀の分散物を銀濃度として1.5×10-4mol/Lになるように水で希釈し、紫外可視近赤外分光光度計で300〜1200nmの範囲で測定を行って求めることができる。また、反射系での分光吸収濃度については、RC原紙に黒色コロイド銀を銀換算で0.1g/m2になるように塗布した試料を作製し、積分球をつけた紫外可視近赤外分光光度計で300〜1200nmの範囲で測定を行って求めることができる。
【0048】
本発明に係る黒色コロイド銀は、ハロゲン化銀カラー感光材料の保護層、中間層、ハレーション防止層、バック層等の非感光性コロイド層に添加されるが、支持体と支持体に最も近いハロゲン化銀含有感光性層の間に設けられたハレーション防止層に添加することが、本発明の目的効果を十分に発揮できる観点から最も好ましい。
【0049】
黒色コロイド銀の塗布量としては、前記D950/D650の値にもよるが、本発明の黒色コロイド銀の場合、銀量として0.01g/m2以上、0.35g/m2以下が好ましく、更に好ましくは0.03g/m2以上、0.20g/m2以下、特に好ましくは0.05g/m2以上、0.15g/m2以下である。
【0050】
また、コロイド銀の反射濃度としては、コロイド銀の最大吸収波長において0.3以上、2.0以下であることが好ましく、更に好ましくは、0.5以上、1.2以下である。
【0051】
次いで、本発明に係る黒色コロイド銀の分散物の製造方法の詳細について更に説明する。
【0052】
従来から知られている一般的な黒色コロイド銀の製法は、例えば、米国特許第2,688,601号、同第2,921,914号、ドイツ国特許第1,096,193号、特開平5−134358号等があり、一般には、ゼラチンに代表される保護コロイドの存在下で、可溶性銀塩あるいは難溶性銀塩を還元するという化学的な方法の記載はされている。
【0053】
本発明に適用可能なゼラチンとしては、全体として製造時に過酸化処理を施したものであるだけでなく、脱イオン工程により塩素イオン、カルシウムイオンを減量したものであることが望ましい。塩素イオン濃度としては500ppm以下が好ましく、更に好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下であり、カルシウムイオンは50ppm以下であることが好ましい。
【0054】
また、本発明に係る黒色コロイド銀を製造するのに使用するゼラチンとしては、重量平均分子量(以下、単に平均分子量と記載する)の極大値が12万以下であることが好ましい。これ以上の平均分子量では、D950/D650の値が小さくなる傾向にあり、所望の吸収特性を得にくい。より好ましくは10万以下であり、さらに好ましくは1万以上、8万以下である。ゼラチンの平均分子量を測定するには、例えば、The Macromolecular Chemistry of Geratin(ACADEMIC PRESS−NEWYORK AND LONDON)に記載の方法で求めることができる。
【0055】
また、平均分子量の極大値の±20%の範囲内に、ゼラチンの60%以上が含有されていることが好ましい。さらに好ましくは75%以上である。60%未満になると分子量分布が広がりすぎるため、黒色コロイド銀の吸収特性の調整が困難になって好ましい吸収形状を得にくい。
【0056】
また、本発明においては、製造工程中石灰処理工程において、解離性基を持たない一級または二級アミンを添加した後、抽出したゼラチンを20質量%以上使用することが好ましい。該当するアミン化合物として、比較的分子量の小さい化合物が多く用いられ、特に炭素数が5以下のものが好ましく用いられる。
【0057】
化合物の例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、エチルメチルアミン、n−ブチルアミン、グアニジン、エチレンジアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、またはピペリジン、ピペラジンなどの環状の化合物が挙げられる。
【0058】
これらの化合物は0.01質量%〜0.1質量%の濃度になるように、石灰懸濁液に添加される。好ましい化合物の例としては、ピペラジンがある。このピペラジンを添加して処理されたゼラチンは、黒色コロイド銀の経時における分散安定性を向上させることができ好ましい。ピペラジン処理されたゼラチンの使用比率として、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0059】
本発明に使用するゼラチンのひとつの特性として金値がある。ゼラチンの金値を測定するには、Journal of Photographic Science,Vol.28,1980(111〜118)や特開平2−111940号に記載された方法で測定できる。金値の低いゼラチンの存在下に製造した黒色コロイド銀は、経時安定性に優れており、本発明におけるゼラチンの金値は、20(μモル/gゼラチン)以下であるが、好ましくは15(μモル/gゼラチン)以下、更に好ましくは10(μモル/gゼラチン)以下である。また、使用される比率として、好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0060】
本発明に使用するゼラチンのひとつとして、ゼラチン分子のアミノ基の50%以上を置換した変性ゼラチンが挙げられる。ゼラチンのアミノ基に対する置換基例は、米国特許第2,691,582号、同2,614,928号、同2,525,753号に記載がある。アミノ基を置換して変性ゼラチンを得るための有用な置換基としては、(1)アルキルアシル、アリールアシル、アセチル及び置換、無置換のベンゾイル等のアシル基、(2)アルキルカルバモイル、アリールカルバモイル等のカルバモイル基、(3)アルキルスルホニル、アリールスルホニル等のスルホニル基、(4)アルキルチオカルバモイル、アリールチオカルバモイル等のチオカルバモイル基、(5)炭素数1〜18個の直鎖、分岐のアルキル基、(6)置換、無置換のフェニル、ナフチル及びピリジル、フリル等の芳香族、複素環等のアリール基が挙げられる。中でも、好ましい変性ゼラチンは、アシル基(−COR11)又はカルバモイル基(−CONR1112)によるものである。ここで、R11は置換、無置換の脂肪族基(例えば、炭素数1〜18個のアルキル基、アリル基)、アリール基またはアラルキル基(例えば、フェネチル基)であり、R12は水素原子、脂肪族基、アリール基またはアラルキル基である。特に好ましいものは、R11がアリール基、R12が水素原子の場合である。
【0061】
以下、本発明においてアミノ基を置換して変性ゼラチンを得るための、有用なアミノ基置換基を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
【化5】

【0063】
溶存物除去(脱塩)に際して変性ゼラチンを使用する場合、その添加量は特に制限はないが、除去時に保護コロイドとして含まれている物質(好ましくは、ゼラチン)の0.1〜5倍量(質量)が一般に適当であり、特に好ましくは0.3〜2倍量(質量)である。特に好ましいゼラチンとして、アミノ基をフェニルカルバモイル化したゼラチンがある。
【0064】
このゼラチン特性としては、硬膜反応に寄与するアミノ基の一部または全部が置換されているため、このゼラチンを含んだ黒色コロイド銀が支持体上に塗布された時には、例えば代表的な硬膜剤であるビニルスルホン系、トリアジン系硬膜剤を使用すると硬膜性が阻害されてしまう。従って、使用量には自ずと制限があるが、好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0065】
黒色コロイド銀は、一般的にはゼラチン水溶液中で銀イオンを還元して調製されるが、本発明においては、反応時のゼラチン水溶液温度としては20〜45℃であることが好ましく、更に好ましくは25〜45℃、特に好ましくは30〜40℃である。この範囲以外の温度では、黒色コロイド銀の吸収特性を望ましい特性に調整するのが困難である。また、反応時のゼラチン水溶液のpHとして、8〜10の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは8.5〜10である。pHについても同様に、この範囲以外では低すぎると硝酸銀水溶液の還元反応を十分に促進できないこと、逆に高すぎると還元反応が急激に進み黒色コロイド銀の吸収特性を望ましい特性に調整するのが困難になる。硝酸銀水溶液の還元反応時のゼラチン水溶液の温度とpHについては、少なくともどちらか一方が上記範囲にあることが必要だが、両方の値が上記範囲にあることが好ましい。
【0066】
黒色コロイド銀の製造方法である硝酸銀水溶液を還元し、微細なコロイド銀を調製する工程において、一段階の反応で最終生成物である黒色コロイド銀を得る方法が一般的であるが、本発明においては、黒色コロイド銀の吸収特性の再現性の向上(安定化)あるいは所望の吸収特性に調整する目的で、黒色コロイド銀の形成として二段階に分けて調製することが好ましい。具体的には、イエローコロイド銀核を形成する核形成工程と、これを成長させて黒色コロイド銀とする成長工程から成る。
【0067】
この二段階の黒色コロイド銀分散物の製造方法によれば、黒色コロイド銀核形成工程及びその成長工程で温度、pH等の条件を制御することや、ゼラチンの種類を選択することで、前記コロイド銀モル吸光係数を高めることができ、また黒色コロイド銀分散物としての好ましい分光吸収特性を得ることができ、さらに保存安定性の高い黒色コロイド銀を得ることが出来る。
【0068】
黒色コロイド銀核形成工程は、少量の銀イオンと少量の還元剤で黒色コロイド銀核(イエローコロイド銀)を形成する工程であり、黒色コロイド銀成長工程は、残りの多量の銀イオンと多量の還元剤を、前記黒色コロイド銀核にダブルジェット法などにより制御添加して、新たな核発生を最小限に抑えて黒色コロイド銀核を成長せしめる工程である。
【0069】
調製された黒色コロイド銀を処理する工程において、一般的には過剰な水溶性の塩を除くため脱塩工程を設ける。脱塩方法には、硫酸マグネシウム等の塩類、ゼラチン中のアミノ基の一部あるいは全部を化学修飾したゼラチン等の凝集剤を添加して、1回〜複数回の凝集沈降を経て上澄み液を排除するいわゆるデカンテーションによる方法、微細な網目構造をもつ半透膜を用いて溶解した塩類を系外に排除するいわゆる限外濾過による方法等があるが、いずれの方法でも本発明の黒色コロイド銀の脱塩方法として適用できる。
【0070】
本発明においては、脱塩工程のあとに黒色コロイド銀分散物を30℃以下に冷却してゲル化させる。冷却ゲル化の温度としては、好ましくは0〜25℃、特に好ましくは4〜15℃である。冷却ゲル化工程によって黒色コロイド銀分散物の安定性が高まることを見出した。即ち、水性ゼラチンゾル中において形成された黒色コロイド銀分散物を、脱塩工程のあとに、一旦冷却ゲル化させたのちに実用に供することが重要であり、該冷却ゲル化工程を経ないでそのまま塗布液を調製して塗布した場合は、ハロゲン化銀カラー感光材料としての保存安定性がやや低下することが有り好ましくない。
【0071】
脱塩された黒色コロイド銀ゼラチンゾル中には、かなりの割合の凝集状態の黒色コロイド銀が存在する。凝集物はその後の製造工程におけるフィルター目詰まり、塗布工程における塗膜上の尾引き故障等の原因になり好ましくないため、これを機械的に分散することで減少させることができる。しかしながら、一般には凝集物が少なくなり単分散化が進めば、吸収特性はシャープになり、特定の波長域に対してより明確な吸収を示すようになる。一般的にその目的から黒色コロイド銀に求められる吸収特性は、紫外〜近赤外領域の広範な波長域にわたってブロードな吸収特性を持つことであり、上記の特性とは相反するものになる。そこで、機械的に分散を行う工程で分散強度を適切に設定し、凝集状態を含めた黒色コロイド銀の粒度分布を調整する事が必要となる。分散方法としては、高い衝突圧力が得られるものが好ましく、本発明では、圧力剪断型分散方式であるマントン−ゴーリン分散機を用いた分散法が好ましい。分散時の圧力としては0.10〜5.0MPaであり、1段目の圧力を0.02〜0.80MPa、2段目の圧力を2.0〜4.5MPaに設定するのが好ましい。また、分散性をさらに向上させるために、上記のサイクルを複数回実施してもよい。
【0072】
本発明の黒色コロイド銀を含有する非感光性コロイド層のゼラチンとしては、コロイド銀分散物でのゼラチンと同一のものが好ましく用いられる。
【0073】
本発明に係る非感光性層である非感光性親水性コロイド層には、多孔質微粒子微粉末を含有することが好ましい。
【0074】
本発明に用いられる多孔質微粒子微粉末は、添加する非感光性親水性コロイド層を形成する塗布液に粉末のまま直接添加しても良いが、水やゼラチン水溶液に分散後に非感光性親水性コロイド層を形成する塗布液に添加する方法や、高沸点有機溶媒や常温で液体である液状紫外線吸収剤に分散後、非感光性親水性コロイド層を形成する塗布液に添加する方法が好ましい。最も好ましい方法は塗設ゼラチン量が140mg/m2となる量のゼラチンと同時に分散後、非感光性親水性コロイド層を形成する塗布液に添加する方法である。
【0075】
多孔質微粒子微粉末を水、ゼラチン水溶液、高沸点有機溶媒、常温で液体である液状紫外線吸収剤に分散する手段としては、攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機を用いることが出来るが、圧力式ホモジナイザーを用い150kg/cm2以下で行なうのが最も好ましい。
【0076】
また本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には周知の界面活性剤を用いることも好ましい。
【0077】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には紫外線吸収剤を用いることも好ましい。
紫外線吸収剤は単一化合物であっても混合物であってもよく、混合物としては構造異性体群から構成されるものを好ましく用いることが出来る(構造異性体については米国特許4,587,346号等に記載されている。)。
【0078】
(ハロゲン化銀乳剤)
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤としては、95モル%以上が塩化銀からなるハロゲン化銀乳剤が好ましく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等任意のハロゲン組成を有するものが用いられる。中でも、塩化銀を95モル%以上含有する塩臭化銀、中でも臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられ、また、表面近傍に沃化銀を0.05〜0.5モル%含有する塩沃化銀も好ましく用いられる。臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤の、高濃度に臭化銀を含有する部分は、いわゆるコア・シェル乳剤であってもよいし、完全な層を形成せず単に部分的に組成の異なる領域が存在するだけのいわゆるエピタキシー接合した領域を形成していてもよい。臭化銀が高濃度に存在する部分は、ハロゲン化銀粒子の表面の結晶粒子の頂点に形成される事が特に好ましい。また、組成は連続的に変化してもよいし不連続に変化してもよい。
【0079】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤には重金属イオンを含有させるのが有利である。これによっていわゆる相反則不軌が改良され、高照度露光での減感が防止されたりシャドー側での軟調化が防止されることが期待される。このような目的に用いることの出来る重金属イオンとしては、鉄、イリジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト等の第8〜10族金属や、カドミウム、亜鉛、水銀などの第12族遷移金属や、鉛、レニウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、クロムの各イオンを挙げることが出来る。中でも鉄、イリジウム、白金、ルテニウム、ガリウム、オスミウムの金属イオンが好ましい。これらの金属イオンは、塩や、錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することが出来る。前記重金属イオンが錯体を形成する場合には、その配位子としてシアン化物イオン、チオシアン酸イオン、シアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、カルボニル、ニトロシル、アンモニア、水、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、1,2,4−トリアゾール、2,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビピリジンまたは2,2′:6′,2″−ターピリジン化合物が好ましく用いられる。中でも、シアン化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、水、ニトロシル、5−メチルチアゾール、1,2,4−トリアゾール等が好ましい。ハロゲン化銀乳剤に重金属イオンを含有させるためには、該重金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の場所で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、重金属化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加する事が出来る。また、予めこれらの重金属化合物を含有するハロゲン化銀微粒子を形成しておいて、これを添加することによって調製する事も出来る。前記重金属イオンをハロゲン化銀乳剤中に添加するときの量はハロゲン化銀1モル当たり1×10-9モル以上、1×10-2モル以下がより好ましく、特に1×10-8モル以上5×10-5モル以下が好ましい。
【0080】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の形状は任意のものを用いることが出来る。好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許4,183,756号、同4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21、39(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有する粒子をつくり、これを用いることも出来る。更に、双晶面を有する粒子を用いてもよい。
【0081】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられるが、単分散のハロゲン化銀乳剤を二種以上同一層に添加する事が特に好ましい。
【0082】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径は特に制限はないが、迅速処理性及び、感度など、他の写真性能などを考慮すると好ましくは、0.1〜1.2μm、更に好ましくは、0.2〜1.0μmの範囲である。
【0083】
この粒径は、粒子の投影面積か直径近似値を使ってこれを測定することが出来る。粒子が実質的に均一形状である場合は、粒径分布は直径か投影面積としてかなり正確にこれを表すことが出来る。
【0084】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径の分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子であり、特に好ましくは変動係数0.15以下の単分散乳剤を2種以上同一層に添加する事である。ここで変動係数は、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0085】
変動係数=S/R
(ここに、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。)
ハロゲン化銀乳剤の調製装置、方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることが出来る。
【0086】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。該ハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子は一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を作った後で成長させてもよい。種粒子を作る方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0087】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組み合わせなど、何れでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に同時混合法の一形式として特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることも出来る。
【0088】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許2,921,164号等に記載された水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化して添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行う装置などを用いてもよい。
【0089】
更に必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物または増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、または、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0090】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法を組み合わせて用いることが出来る。カルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることが出来るが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としてはチオ硫酸塩、トリエチルチオ尿素、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。
【0091】
イオウ増感剤の添加量としては、適用されるハロゲン化銀乳剤の種類や期待する効果の大きさなどにより変える事が好ましいが、ハロゲン化銀1モル当たり5×10-10〜5×10-5モルの範囲、好ましくは5×10-8〜3×10-5モルの範囲が好ましい。
【0092】
金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することが出来る。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることが出来る。金化合物の使用量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などによって一様ではないが、通常はハロゲン化銀1モル当たり1×10-4モル〜1×10-8モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10-5モル〜1×10-8モルである。
【0093】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いてもよい。
【0094】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、ハロゲン化銀感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることが出来る。こうした目的に用いることの出来る好ましい化合物の例として、特開平2−146036号7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される化合物を挙げることが出来、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、特開2000−267235号8ページ右欄32〜36行目に記載の化合物、特開平9−152674号の一般式(I)で表されるメルカプトピリミジン化合物、一般式(II)で表されるハロゲン化銀への吸着促進基と置換、未置換のヒドロキシル基またはアミノ基を有する化合物、具体的には、(I−1)、(I−2)、(I−7)、(I−9)、(II−1)、(II−3)で表される化合物を挙げることが出来る。また、特開平10−31279号の(A)〜(D)で示されたスルフィド、ポリスルフィド基を有する化合物を挙げることが出来、具体的には、(C−1)、(C−9)、(C−14)、(C−15)、(C−16)、(D−1)、(D−6)、α−イオウ、特開2000−122204号の(I−4)、(I−6)を挙げることが出来る。
【0095】
これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。これらの化合物の存在下に化学増感を行う場合には、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-5モル〜5×10-4モル程度の量で好ましく用いられる。化学増感終了時に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-6モル〜1×10-2モル程度の量が好ましく、1×10-5モル〜5×10-3モルがより好ましい。塗布液調製工程において、ハロゲン化銀乳剤層に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-6モル〜1×10-1モル程度の量が好ましく、1×10-5モル〜1×10-2モルがより好ましい。またハロゲン化銀乳剤層以外の層に添加する場合には、塗布被膜中の量が、1m2当たり1×10-9モル〜1×10-3モル程度の量が好ましい。
【0096】
本発明に用いられる写真感光材料には、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で種々の波長域に吸収を有する染料を用いることが出来る。この目的で、公知の化合物を何れも用いることが出来るが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号308ページに記載のAI−1〜11の染料及び特開平6−3770号記載の染料が好ましく用いられる。
【0097】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料は、ハロゲン化銀乳剤層の内最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の耐拡散性化合物で着色された親水性コロイド層を有することが好ましい。着色物質としては染料またはそれ以外の有機、無機の着色物質を用いることが出来る。
【0098】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料は、ハロゲン化銀乳剤層の内最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の着色された親水性コロイド層を有することが好ましく、該層に白色顔料を含有していてもよい。例えばルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、硫酸バリウム、ステアリン酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン等を用いることが出来るが、種々の理由から、中でも二酸化チタンが好ましい。白色顔料は処理液が浸透出来るような例えばゼラチン等の親水性コロイドの水溶液バインダー中に分散される。白色顔料の塗布付量は好ましくは0.1g/m2〜50g/m2の範囲であり、更に好ましくは0.2g/m2〜5g/m2の範囲である。
【0099】
支持体と、支持体から最も近いハロゲン化銀乳剤層との間には、白色顔料含有層の他に必要に応じて下塗層、或いは任意の位置に中間層等の非感光性親水性コロイド層を設けることが出来る。
【0100】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料中に、蛍光増白剤を添加する事で白地性をより改良でき好ましい。蛍光増白剤は、紫外線を吸収して可視光の蛍光を発する事の出来る化合物であれば特に制限はないが、分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を有するジアミノスチルベン系化合物であり、これらの化合物には増感色素の感材外への溶出を促進する効果もあり好ましい。他の好ましい一つの形態は、蛍光増白効果を有する固体微粒子化合物である。
【0101】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料には、400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含む層を有する。該ハロゲン化銀乳剤は一種または、二種以上の増感色素を組み合わせて含有する。
【0102】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、公知の化合物を何れも用いることが出来るが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号28ページに記載のBS−1〜8を単独でまたは組み合わせて好ましく用いることが出来る。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。
【0103】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。また、これらの色素の添加方法としては、水またはメタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水と混和性の有機溶媒に溶解して溶液として添加してもよいし、増感色素を密度が1.0g/mlより大きい、水混和性溶媒の溶液または、乳化物、懸濁液として添加してもよい。
【0104】
増感色素の分散方法としては、高速撹拌型分散機を用いて水系中に機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法以外に、特開昭58−105141号に記載のようにpH6〜8、60〜80℃の条件下で水系中において機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法、特公昭60−6496号に記載の表面張力を3.8×10-2N/m以下に抑える界面活性剤の存在下に分散する方法、特開昭50−80826号に記載の実質的に水を含まず、pKaが5を上回らない酸に溶解し、該溶解液を水性液に添加分散し、この分散物をハロゲン化銀乳剤に添加する方法等を用いることが出来る。
【0105】
分散に用いる分散媒としては水が好ましいが、少量の有機溶媒を含ませて溶解性を調整したり、ゼラチン等の親水性コロイドを添加して分散液の安定性を高めることも出来る。
【0106】
分散液を調製するのに用いることの出来る分散装置としては、例えば、特開平4−125631号公報第1図に記載の高速撹拌型分散機の他、ボールミル、サンドミル、超音波分散機等を挙げることが出来る。
【0107】
また、これらの分散装置を用いるに当たって、特開平4−125632号に記載のように、予め乾式粉砕などの前処理を施した後、湿式分散を行う等の方法をとってもよい。
【0108】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は一種または、二種以上の増感色素を組み合わせて含有してもよい。
【0109】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得る如何なる化合物をも用いることが出来るが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0110】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるマゼンタカプラーとしては特開平6−95283号7ページ右欄記載の一般式[M−1]で示される化合物が発色色素の分光吸収特性がよく好ましい。好ましい化合物の具体例としては、同号8ページ〜11ページに記載の化合物M−1〜M−19を挙げる事が出来る。更に他の具体例としては欧州公開特許273,712号6〜21頁に記載されている化合物M−1〜M−61及び同235,913号36〜92頁に記載されている化合物1〜223の中の上述の代表的具体例以外のものがある。
【0111】
該マゼンタカプラーは他の種類のマゼンタカプラーと併用することも出来、通常ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3〜1モル、好ましくは1×10-2〜8×10-1モルの範囲で用いることが出来る。
【0112】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料において形成されるマゼンタ画像の分光吸収のλmaxは530〜560nmであることが好ましく、またλL0.2は、580〜635nmであることが好ましい。λL0.2とは、マゼンタ画像の分光吸光度曲線上において、最大吸光度が1.0を示す波長よりも長波で、吸光度が0.2を示す波長をいう。
【0113】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料のマゼンタ画像形成層には、マゼンタカプラーに加えてイエローカプラーが含有される事が好ましい。これらのカプラーのpKaの差は2以内であることが好ましく、更に好ましくは1.5以内である。本発明のマゼンタ画像形成性層に含有させる好ましいイエローカプラーは特開平6−95283号12ページ右欄に記載の一般記載一般式[Y−Ia]で表されるカプラーである。同公報の一般式[Y−1]で表されるカプラーの内特に好ましいものは、一般式[M−1]で表されるマゼンタカプラーと組み合わせる場合、組み合わせる[M−1]で表されるカプラーのpKaより3以上低くないpKa値より3以上低くないpKa値を有するカプラーである。
【0114】
該イエローカプラーとして具体的な化合物例は、特開平6−95283号12〜13ページ記載の化合物Y−1及びY−2の他、特開平2−139542号の13ページから17ページ記載の化合物(Y−1)〜(Y−58)を好ましく使用することが出来るがもちろんこれらに限定されることはない。
【0115】
本発明に係る感光材料においてシアン画像形成層中に含有されるシアンカプラーとしては、公知のフェノール系、ナフトール系またはイミダゾール系、アゾール系カプラーを用いることが出来る。例えば、アルキル基、アシルアミノ基、或いはウレイド基などを置換したフェノール系カプラー、5−アミノナフトール骨格から形成されるナフトール系カプラー、離脱基として酸素原子を導入した2当量型ナフトール系カプラーなどが代表される。この内好ましい化合物としては特開平6−95283号13ページ記載の一般式[C−I]、[C−II]が挙げられる。
【0116】
該シアンカプラーは通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3〜1モル、好ましくは1×10-2〜8×10-1モルの範囲で用いることが出来る。
【0117】
本発明に係る感光材料においてイエロー画像形成層中に含有されるイエローカプラーとしては、公知のアシルアセトアニリド系カプラー等を好ましく用いることが出来る。
【0118】
該イエローカプラーの具体例としては、例えば特開平3−241345号の5頁〜9頁に記載の化合物、Y−I−1〜Y−I−55で示される化合物、もしくは特開平3−209466号の11〜14頁に記載の化合物、Y−1〜Y−30で示される化合物も好ましく使用することが出来る。更に特開平6−95283号21ページ記載の一般式〔Y−I〕で表されるカプラー、特開2002−351023号に記載の一般式(I)、(II)の化合物等も挙げることが出来る。
【0119】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料により形成されるイエロー画像の分光吸収のλmaxは425nm以上であることが好ましく、λL0.2は515nm以下であることが好ましい。
【0120】
該イエロー色画像の分光吸収のλL0.2とは、特開平6−95283号21ページ右欄1行〜24行に記載の内容で定義される値であり、イエロー色素画像の分光吸収特性で長波側の不要吸収の大きさを表す。
【0121】
該イエローカプラーは通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3〜1モル、好ましくは1×10-2〜8×10-1モルの範囲で用いることが出来る。
【0122】
該マゼンタ色画像、シアン色画像、及びイエロー色画像の分光吸収特性を調整するために、色調調整作用を有する化合物を添加する事が好ましい。このための化合物としては、特開平6−95283号22ページ記載の一般式[HBS−I]に記載されるリン酸エステル系化合物、[HBS−II]で示されるホスフィンオキサイド系化合物が好ましく、より好ましくは同号22ページ記載の一般式[HBS−II]で示される化合物である。また、特開平4−265,975号5ページ記載の(a−i)〜(a−x)を代表とする高級アルコール系化合物を挙げることが出来る。
【0123】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料においてハロゲン化銀乳剤層は支持体上に積層塗布されるが支持体からの順番はどのような順番でもよい。この他に必要に応じ中間層、フィルター層、保護層等を配置することが出来る。
【0124】
前記マゼンタ、シアン、イエローの各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することが出来る。好ましい化合物としては、特開平2−66541号3ページ記載の一般式I及びIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物、特開平64−90445号記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が特にマゼンタ色素用として好ましい。また特開平1−196049号記載の一般式I′で示される化合物及び特開平5−11417号記載の一般式IIで示される化合物が特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0125】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるステイン防止剤やその他の有機化合物を添加するのに水中油滴型乳化分散法を用いる場合には、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることが出来る。分散後、または、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。ステイン防止剤等を溶解して分散するために用いることの出来る高沸点有機溶媒としては、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリオクチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類が好ましく用いられる。また高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0である事が好ましい。また二種以上の高沸点有機溶媒を併用することも出来る。
【0126】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料に用いられる写真用添加剤の分散や塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤として好ましい化合物としては、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基またはその塩を含有するものが挙げられる。具体的には特開昭64−26854号記載のA−1〜A−11が挙げられる。またアルキル基に弗素原子を置換した界面活性剤も好ましく用いられる。これらの分散液は通常ハロゲン化銀乳剤を含有する塗布液に添加されるが、分散後塗布液に添加されるまでの時間、及び塗布液に添加後塗布までの時間は短い方がよく各々10時間以内が好ましく、3時間以内、20分以内がより好ましい。
【0127】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物を感光層と感光層の間の層に添加して色濁りを防止したりまたハロゲン化銀乳剤層に添加してカブリ等を改良する事が好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は特開平4−133056号記載の一般式IIで示される化合物であり、同号13〜14ページ記載の化合物II−1〜II−14及び17ページ記載の化合物1が挙げられる。
【0128】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料中には紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては特開平1−250944号記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0129】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料には、油溶性染料や顔料を含有すると白地性が改良され好ましい。油溶性染料の代表的具体例は、特開平2−842号8ページ〜9ページに記載の化合物1〜27が挙げられる。
【0130】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料には、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じて他のゼラチン、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一或いは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることが出来る。
【0131】
これらバインダーの硬膜剤としてはビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用する事が好ましい。特開昭61−249054号、同61−245153号記載の化合物を使用する事が好ましい。また写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐためコロイド層中に特開平3−157646号記載のような防腐剤及び抗カビ剤を添加する事が好ましい。また感光材料または処理後の試料の表面の物性を改良するため保護層に特開平6−118543号や特開平2−73250号記載の滑り剤やマット剤を添加する事が好ましい。
【0132】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料に用いる支持体としては、どのような材質を用いてもよく、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることが出来る。中でも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としてはポリエチレンやポリエチレンテレフタレートまたはそれらのコポリマーが好ましい。
【0133】
紙の表面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体は、通常、50〜300g/m2の質量を有する表面の平滑なものが用いられるが、プルーフ画像を得る目的に対しては、取り扱いの感覚を印刷用紙に近づけるため、130g/m2以下の原紙が好ましく用いられ、更に70〜120g/m2の原紙が好ましく用いられる。
【0134】
本発明に用いられる支持体としては、ランダムな凹凸を有するものであっても平滑なものであっても好ましく用いることが出来る。
【0135】
支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/または有機の白色顔料を用いることが出来、好ましくは無機の白色顔料が用いられる。例えば硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。白色顔料は好ましくは硫酸バリウム、酸化チタンである。
【0136】
支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良する上で13質量%以上が好ましく、更に15質量%が好ましい。
【0137】
本発明に係る反射指示体の紙支持体の耐水性樹脂層中の白色顔料の分散度は、特開平2−28640号に記載の方法で測定することが出来る。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が前記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0138】
本発明に用いられる両面に耐水性樹脂層を有する紙支持体の樹脂層は、1層であってもよいし、複数層からなってもよい。複数層とし、乳剤層と接する方に白色顔料を高濃度で含有させると鮮鋭性の向上が大きく、プルーフ用画像を形成するのに好ましい。
【0139】
また支持体の中心面平均粗さ(SRa)の値が0.15μm以下、更に0.12μm以下である方が光沢性がよいという効果が得られより好ましい。
【0140】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料は、必要に応じて支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/またはその他の特性を向上するための1または2以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0141】
ハロゲン化銀乳剤を用いた写真感光材料の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。塗布法としては2種以上の層を同時に塗布することの出来るエクストルージョンコーティング及びカーテンコーティングが特に有用である。
【0142】
感光材料の幅としては用途に応じて任意の幅の物を用いることが出来るが、プルーフの用途では400mm以上の幅が好ましく用いられる。800mm或いはそれ以上の幅の感光材料も好ましく用いられる。
【0143】
本発明に用いられる露光装置の露光光源は、公知のものを何れも好ましく用いることが出来るが、レーザーまたは発光ダイオード(以下LEDと表す)がより好ましく用いられる。
【0144】
レーザーとしては半導体レーザー(以下、LDと表す)がコンパクトであること、光源の寿命が長いことから好ましく用いられる。また、LDはDVD、音楽用CDの光ピックアップ、POSシステム用バーコードスキャナ等の用途や光通信等の用途に用いられており、安価であり、かつ比較的高出力のものが得られるという長所を有している。LDの具体的な例としては、アルミニウム・ガリウム・インジウム・ヒ素(650nm)、インジウム・ガリウム・リン(〜700nm)、ガリウム・ヒ素・リン(610〜900nm)、ガリウム・アルミニウム・ヒ素(760〜850nm)等を挙げることが出来る。最近では、青光を発振するレーザーも開発されているが、現状では、610nmよりも長波の光源としてLDを用いるのが有利である。
【0145】
SHG素子を有するレーザー光源としては、LD、YAGレーザーから発振される光をSHG素子により半分の波長の光に変換して放出させるものであり、可視光が得られることから適当な光源がない緑〜青の領域の光源として用いられる。この種の光源の例としては、YAGレーザーにSHG素子を組み合わせたもの(532nm)等がある。
【0146】
ガスレーザーとしては、ヘリウム・カドミウムレーザー(約442nm)、アルゴンイオンレーザー(約514nm)、ヘリウムネオンレーザー(約544nm、633nm)等が挙げられる。
【0147】
LEDとしては、LDと同様の組成をもつものが知られているが、青〜赤外まで種々のものが実用化されている。特開2002−72367号に記載のような微小面積発光ダイオードの1種である端面発光型ダイオードを、好ましく用いることが出来る。
【0148】
本発明に用いられる露光光源としては、各レーザーを単独で用いてもよいし、これらを組み合わせ、マルチビームとして用いてもよい。LDの場合には、例えば10個のLDを並べることにより10本の光束からなるビームが得られる。一方、ヘリウムネオンレーザーのような場合、レーザーから発した光をビームセパレーターで例えば10本の光束に分割する。
【0149】
露光用光源の強度変化は、LD、LEDのような場合には、個々の素子に流れる電流値を変化させる直接変調を行うことが出来る。直接変調の場合には、電流値の調整により発光光量を変化させてもよいし、パルス状に発光させ、パルスの幅(発光時間)を変化させるパルス幅変調方式を用いてもよいし、パルス数を変化させるパルス数変調方式をとってもよい。LDの場合には、AOM(音響光学変調子)のような素子を用いて強度を変化させてもよい。ガスレーザーの場合には、AOM、EOM(電気光学変調子)等のデバイスを用いるのが一般である。
【0150】
光源にLEDを用いる場合には、光量が弱ければ、複数の素子で同一の画素を重複して露光する方法を用いてもよい。
【0151】
光源の発光波長は、感光材料が十分な感度を有している波長領域であれば好ましく用いることが出来るが、色濁りを防止する意味で他の感光層と十分な感度差を有する波長領域を用いることが好ましい。感光材料のコントラストにも依存するが露光量の常用対数として0.6以上、好ましくは1.0以上の感度差があることが好ましい。この他に、光源の置かれた環境条件、動作条件などにより発光波長が変動するような場合には、分光感度のピーク波長に合わせることが理論上好ましく、これに関わってくる着色物質の分光吸収との関係も考慮して波長を選択することが好ましい。そのような例としては、特開平6−75342号、特開2001−83663号などが挙げられる。また、発光波長だけでなく発光強度が変動する場合にも、分光感度との関係で発光波長を選択することが好ましく、その例としては、特開2002−72367号、及び日経ニューマテリアル1987年9月14日号54ページ等に記載されている。
【0152】
画像形成に用いる装置としては、複数の感光材料を予めセットしておき、適宜感光材料を選択して使用する方式を好ましく用いることが出来る。この場合、2種類の感光材料は、例えば幅の違う感光材料であったり、面質(支持体の凹凸)が異なる感光材料であったりすることが出来る。感光材料の選択は、画像形成装置のスイッチなどで設定する方式でっても、画像データとともに設定情報を送信し、それに基づいて選択されるのでもよい。また画像データのサイズに応じて最適な感光材料のサイズを自動的に選択する事も有利に用いることが出来る。特別な場合には、同じ種類の感光材料を装填しておき、一方の感光材料が使い終わったとき、自動的に他方の感光材料を使うようにすることも出来、連続無人運転が可能となり有利に用いることが出来る。
【0153】
本発明において面積階調画像という言葉を用いているが、これは画像上の濃淡を個々の画素の色の濃淡で表現するのではなく、特定の濃度に発色した部分の面積の大小で表現するものであり、網点と同義と考えてよい。
【0154】
通常面積階調露光であればY、M、C、墨の発色をさせることで目的を達することも出来る。より好ましくは、墨に加えてM、C等の単色が発色したことを識別するには、3値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。印刷においては、特別な色の版を用いることがあるが、これを再現するためには、4値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。
【0155】
レーザー光源の場合には、ビーム径は25μm以下であることが好ましく、6〜22μmがより好ましい。6μmより小さいと画質的には好ましいが、調整が困難であったり、処理速度が低下したりする。一方、25μmより大きいとムラが大きくなり、画像の鮮鋭性も劣化する。ビーム径を最適化する事によってムラのない高精細の画像の書き込みを高速で行うことが出来る。
【0156】
このような光で画像を描くには、ハロゲン化銀感光材料上を光束が走査する必要があるが、感光材料を円筒状のドラムに巻き付けこれを高速に回転しながら回転方向に直角な方向に光束を動かす円筒外面走査方式をとってもよく、円筒状の窪みにハロゲン化銀感光材料を密着させて露光する円筒内面走査方式も好ましく用いることが出来る。多面体ミラーを高速で回転させこれによって搬送されるハロゲン化銀感光材料を搬送方向に対して直角に光束を移動して露光する平面走査方式をとってもよい。高画質であり、かつ大きな画像を得るには円筒外面走査方式がより好ましく用いられる。
【0157】
円筒外面走査方式での露光を行うには、ハロゲン化銀感光材料は正確に円筒状のドラムに密着されなければならない。これが的確に行われるためには、正確に位置合わせされて搬送される必要がある。本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は露光する側の面が外側に巻かれたものがより的確に位置合わせ出来、好ましく用いることが出来る。同様な観点から、本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料に用いられる支持体は適正な剛度があり、テーバー剛度で0.8〜4.0が好ましい。
【0158】
ドラム径は、露光するハロゲン化銀感光材料の大きさに適合させて任意に設定することが出来る。ドラムの回転数も任意に設定出来るがレーザー光のビーム径、エネルギー強度、書き込みパターンや感光材料の感度などにより適当な回転数を選択することが出来る。生産性の観点からは、より高速な回転で走査露光出来る方が好ましいが、具体的には1分間に200〜3000回転が好ましく用いられる。
【0159】
ドラムへのハロゲン化銀感光材料の固定方法は、機械的な手段によって固定させてもよいし、ドラム表面に吸引出来る微小な穴を感光材料の大きさに応じて多数設けておき、感光材料を吸引して密着させることも出来る。感光材料をドラムに出来るだけ密着させることが画像ムラ等のトラブルを防ぐには重要である。
【0160】
本発明において用いられる芳香族一級アミン現像主薬としては、公知の化合物を用いることが出来る。これらの化合物の例として下記の化合物を挙げることが出来る。
【0161】
CD−1) N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2) 2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3) 2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4) 4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5) 2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン
CD−7) N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8) N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明においては、上記は色現像液中で任意のpH域で使用出来るが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0162】
本発明において、発色現像の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上60℃以下で処理することが好ましい。
【0163】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが更に好ましい。
【0164】
発色現像液には、前記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することが出来る。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。
【0165】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料は、発色現像後、漂白処理及び定着処理を施される。漂白処理は定着処理と同時に行ってもよい。定着処理の後は、通常は水洗処理が行われる。
【0166】
また、水洗処理の代替として、安定化処理を行ってもよい。本発明のハロゲン化銀感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料をはさんで搬送するローラートランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともに感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることが出来る。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが、通常だがこの際、補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技報94−16935号に記載の方法が最も好ましい。
【0167】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料の走査露光用ハロゲン化銀カラー感光材料としての場合の最大濃度は特に規定されないが、Yellow,Magenta,Cyanの各色を最大発色させた時、何れか一色の反射濃度が2.0以上となる走査露光用ハロゲン化銀カラー感光材料に本発明を用いると大きな効果が発揮される。この場合の反射濃度はStatusT反射濃度が測定可能な濃度計により測定された数値を指す。StatusT反射濃度が測定可能な濃度計の具体例としてはX−Rite528(X−Rite製)等が挙げられる。
【0168】
本発明における光沢度はJIS−Z8741「鏡面光沢度の測定方法」に記載されている入射角/反射角=60°/60°の測定方法に準じた方法により測定されたものを指す。比較的光沢度の高い印刷用紙であるアート紙やコート紙でもその光沢度はその光沢度は1〜15の範囲にほとんど収まっており、ハロゲン化銀カラー感光材料を色校正の対象となることの多い、これらアート紙・コート紙印刷物のプルーフ画像として用いる場合には、その光沢度は1〜15の範囲内が好ましく、1〜6の範囲内であることが更に好ましい。
【実施例】
【0169】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0170】
実施例1
《黒色コロイド銀分散物》
〈黒色コロイド銀分散物1の調製:比較例〉
(黒色核コロイド銀の核形成工程)
撹拌機付で温度制御可能な2リットルの釜に、室温にて純水820mlを入れ、約1500rpmにて撹拌した。水温を33℃まで上昇させたところで、デキストリンの30.0g添加して溶解した。約5分後に、デキストリンが溶解したことを確認した後、水酸化ナトリウム5.2gを純水30mlに溶解した溶液を加えてpHを9.9とし、釜内温度を37℃に調整した。温度が37℃になった時点で、撹拌強度を約2,000rpmに変更し、硝酸銀15.0gを純水150mlに溶解した硝酸銀溶液を添加した。次いで、pH9.9で10分間撹拌を続けた後、冷却して釜内温度を23℃としたところで純水を加えて、総量を1030mlに仕上げて黄色コロイド銀核分散物を調製した。
【0171】
以上のようにして調製した黄色コロイド銀核分散物の吸収特性を測定したところ、395nmに比較的シャープな吸収極大をもっていた。
【0172】
(黒色コロイド銀の成長工程)
[添加液処方]
〈1〉液:純水125ml
〈2〉液:ゼラチン6.0gを純水40mlに溶解したゼラチン溶液(40℃)
〈3〉液:核コロイド銀分散物44ml
〈4〉液:硫酸ヒドラジン3.2gを純水125mlに溶解した溶液(28℃)
〈5〉液:硝酸銀14.4gを純水70mlに溶解した硝酸銀溶液
〈6〉液:15質量%のアンモニア水19.5ml
〈7〉液:2−メルカプト−ベンズチアゾール28.2mgと水酸化ナトリウム0.30mgを純水35mlに溶解した溶液
〈8〉液:純水430ml(40℃)
〈9〉液:5質量%デモール(花王アトラス社製)溶液40.5ml
〈10〉液:20質量%の硫酸マグネシウム溶液48.6ml
〈11〉液:純水900ml(40℃)
〈12〉液:20質量%の硫酸マグネシウム溶液21.8ml
〈13〉液:ゼラチン20.4gを純水150mlに溶解したゼラチン溶液(55℃)
撹拌機付で温度制御可能な2.5リットルの釜に、室温にて〈1〉液を入れ、約1000rpmにて撹拌した。この液を23℃に合わせて〈2〉液を添加し、1分後に〈3〉液を添加し、さらに1分後に〈4〉液を添加、さらに1分後に〈5〉液を添加した。
【0173】
20分後に〈6〉液を5分かけてゆっくりと添加した。このときの釜内のpHは9.2、温度は32℃であった。さらに20分後に〈7〉液を添加した。
【0174】
この後、撹拌強度を約1100rpmに変更し、温度を40℃に合わせたところで〈8〉液を加え、2分後に〈9〉液を加え、更に2分後に〈10〉液を加えて、10分間撹拌した。40分静置した後、上澄み液を排水した。撹拌強度を1000rpmに戻し、〈11〉液を加え、5分後に〈12〉液を加え、更に5分間撹拌を継続した後、20分静置した後排水した。最後に、〈13〉液を添加して50℃にて20分間撹拌した。その後、マントン−ゴーリン分散機を用いて、衝突圧力を1段目1.0MPa、2段目1.5MPaにして分散を行った後、全体を純水で285gになるように仕上げて、黒色コロイド銀分散物1を調製した。この黒色コロイド銀分散物1のpHは6.10であった。また、伝導度は2.09mS/cm、比重は1.056であった。
【0175】
〈黒色コロイド銀分散物2〜4の調製:本発明〉
上記黒色コロイド銀分散物1の調製において黒色コロイド銀の成長過程で用いた添加液〈2〉に表1に記載のように一般式(S)で表される化合物を添加した以外は同様にして黒色コロイド銀分散物2〜4を調製した。
【0176】
《黒色コロイド銀分散物の評価》
以上のようにして調製した各黒色コロイド銀分散物について、下記の各測定及び評価を行った。
【0177】
〔分光吸収測定〕
銀濃度として1.5×10-4mol/Lになるように各黒色コロイド銀分散物19.0gを純水1Lに希釈し、この希釈液25mlをさらに1Lに希釈した黒色コロイド銀分散液を、紫外可視近赤外分光光度計を用いて300〜1200nmの範囲で測定を行い、650nmにおける吸光度D650と950nmにおける吸光度D950の比(D950/D650)及び400nm〜1000nmにおける分光吸収の最大波長λmax1を求めた。
【0178】
〔反射濃度の測定〕
片面に高密度ポリエチレンを、もう一方の面にアナターゼ型酸化チタンを15質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートした平米当たりの質量が115gのポリエチレンラミネート紙反射支持体(テーバー剛度=3.5、PY値=2.7μm)上に、各黒色コロイド銀分散物を銀量換算で0.1g/m2になるように、ワイヤーバーを用い塗布した試料を作製した。この試料を、積分球をつけた紫外可視近赤外分光光度計で300〜1200nmの範囲で反射濃度の測定を行い測定波長域400nm〜800nmにおける反射濃度の最大波長λmax2を求めた。
【0179】
結果を、表1に示す。
【0180】
【表1】

【0181】
表1より、本発明で好ましく用いられる黒色コロイド銀分散物2〜4は黒色コロイド銀分散物1に比べて、きわめてブロードな吸収特性を有していて、より好ましいものであることがわかる。
【0182】
実施例2
《ハロゲン化銀カラー感光材料》
〔試料101の作製〕
片面に高密度ポリエチレンを、もう一方の面にアナターゼ型酸化チタンを15質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートした、平米当たりの質量が115gのポリエチレンラミネート紙反射支持体(テーバー剛度=3.5、PY値=2.7μm)上に、下記表2に示す層構成の各層を酸化チタンを含有するポリエチレン層の側に塗設し、更に裏面側にはゼラチン6.00g/m2、シリカマット剤0.65g/m2を塗設した多層ハロゲン化銀感光材料である試料101を作製した。
【0183】
カプラーは高沸点溶媒に溶解して超音波分散し、分散物として添加したが、この時、界面活性剤として(SU−1)を用いた。又、硬膜剤として(H−1)、(H−2)を添加した。塗布助剤としては、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。また各層に(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。
【0184】
【表2】

【0185】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム塩
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)・ナトリウム塩
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ((1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)ハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノンと2,5−ジ−secテトラデシルハイドロキノンと2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノンの質量比1:1:2の混合物
HQ−4:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン
PVP:ポリビニルピロリドン
【0186】
【化6】

【0187】
【化7】

【0188】
【化8】

【0189】
上記試料101の作製に用いたハロゲン化銀乳剤は、下記の方法に従って調製した。
【0190】
(青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製)
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に下記(A液)及び(B液)をpAg=7.3、pH=3.0に制御しつつ同時添加し、更に下記(C液)及び(D液)をpAg=8.0、pH=5.5に制御しつつ同時添加した。この時、pAgの制御は特開昭59−45437号記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0191】
〈A液〉
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200ml
〈B液〉
硝酸銀 10g
水を加えて 200ml
〈C液〉
塩化ナトリウム 102.7g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム 4×10-8モル
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 2×10-5モル
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600ml
〈D液〉
硝酸銀 300g
水を加えて 600ml
添加終了後、花王アトラス社製デモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−101を得た。
【0192】
上記(EMP−101)に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、青感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−B101)を得た。
【0193】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10-4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10-4モル/モルAgX
臭化カリウム 0.2g/モルAgX
次いでEMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間および(C液)と(D液)の添加時間を変更した以外はEMP−101と同様にして平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−102を得た。Em−B101の調製においてEMP−101に代えてEMP−102を用いた以外同様にしてEm−B102を得、Em−B101と102の1:1の混合物を青感光性乳剤として使用した。
【0194】
STAB−1:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
【0195】
【化9】

【0196】
(緑感光性ハロゲン化銀乳剤の調製)
EMP−101の調製において(A液)及び(B液)、(C液)及び(D液)の添加時間を変更した以外は同様にして平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤(EMP−103)を得た。
【0197】
上記EMP−102に対し、下記化合物を用い55℃にて最適に化学増感を行い、緑感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−G101)を得た。
【0198】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 2×10-4モル/モルAgX
増感色素:GS−2 2×10-4モル/モルAgX
塩化ナトリウム 0.5g/モルAgX
次いでEMP−103の調製において、(A液)と(B液)の添加時間および(C液)と(D液)の添加時間を変更した以外はEMP−103と同様にして平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体乳剤EMP−104を得た。Em−G101の調製においてEMP−103に代えてEMP−104を用いた以外同様にしてEm−G102を得、Em−G101と102の1:1の混合物を緑感光性乳剤として使用した。
【0199】
【化10】

【0200】
(赤感光性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−R101)を得た。
【0201】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10-4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10-4モル/モルAgX
次に(Em−R101)の調製において下記化合物を用いて60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−R102)を得た。
【0202】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 2×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 2×10-4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10-4モル/モルAgX
Em−R101とEm−R102の1:1の混合物を赤感光性乳剤として使用した。
【0203】
STAB−4:p−トルエンチオスルホン酸
【0204】
【化11】

【0205】
〔試料102〜108の作製〕
上記試料101の作製において第1層について黒色コロイド銀分散物の種類と添加量を表3に記載のように変更しかつ更に一般式(A)で表される化合物等を表3に記載のように添加した他は試料101と同様にして、試料102〜109を作製した。また、試料101の作製において第1層について黒色コロイド銀分散物の種類と添加量を表3に記載のように変更しかつ更に一般式(A)で表される化合物等を表3に記載のように添加しかつ更に化合物F−1(蛍光増白剤)を表3に記載(240mg/m2)となる量で添加した他は試料101と同様にして、試料110を作製した。
【0206】
【化12】

【0207】
《露光》
光源としてブルー(B)のLEDを主走査方向に10個並べ露光のタイミングを少しづつ遅延させることによって同じ場所を10個のLEDで露光出来るように調整した。また、副走査方向にも10個のLEDを並べ隣接する10画素分の露光が1度に出来る露光ヘッドを準備した。グリーン(G)、レッド(R)も同様にLEDを組み合わせて露光ヘッドを準備した。各ビームの径は約10μmで、この間隔でビームを配列し、副走査のピッチは約100μmとした。1画素当たりの露光時間は約100ナノ秒であった。
【0208】
《現像処理》
最初に予め設定した露光量で、各光量を変化させた網点画像と、50%の墨網で通常の露光条件とレッド光の光量を3%減じた露光条件で出力した画像とを作製した。露光後、下記の現像処理を行い色素画像を得た。B、G、R濃度を測定した。
【0209】
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 40.0±0.3℃ 120秒 200ml/m2
漂白定着 40.0±0.5℃ 90秒 100ml/m2
安定化 40.0±0.5℃ 60秒 150ml/m2
乾燥 60〜80℃ 30秒
〔発色現像液タンク液及び補充液〕
タンク液 補充液
純水 800ml 800ml
トリエチレンジアミン 2g 3g
ジエチレングリコール 10g 10g
臭化カリウム 0.01g −
塩化カリウム 3.5g −
亜硫酸カリウム 0.25g 0.5g
N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)−4−アミノアニリン硫酸塩
2.9g 4.8g
N,N−ジスルホエチルヒドロキシルアミン 20.4g 18.0g
トリエタノールアミン 10.0g 10.0g
ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム塩 2.0g 2.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体)
2.0g 2.5g
炭酸カリウム 30g 30g
水を加えて全量を1リットルとし、タンク液はpH=10.0に、補充液はpH=10.6に調整する。
【0210】
〔漂白定着液タンク液及び補充液〕
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
臭化カリウム 25.0g
イミダゾール 20.0g
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpHを5.0に調整した。
【0211】
〔安定化液タンク液及び補充液〕
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
亜硫酸アンモニウム 2.0g
エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩 2.0g
水を加えて全量を1リットルとし、水酸化カリウムでpH=7.1に調整した。
【0212】
《形成画像の評価》
〔白地特性の評価〕
第1層に黒色コロイド銀を使用していない試料1021との色差ΔE1を求めた。
【0213】
色差測定は、白地部(未露光部)をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−2022を用い、照明と受光の幾何条件d−0、キセノンパルス光源を用いて測光し、2°視野、補助標準の光D50でのL*、a*、b*の値を10点測定しその平均値を求め、試料101と対象試料との現像処理後の白地部分(未露光部)の色差ΔE1を下式により求めた。
【0214】
ΔE1=〔(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2
尚、ΔL*、Δa*、Δb*は、試料1021と対象試料との現像処理後の白地部分(未露光部)の差を表す。
【0215】
ΔE1が0.5以下であることが好ましく、実用上許容できる範囲の下限が1.0未満であり、ΔE1が1.0を越えると実用に耐えない白地品質となる。
【0216】
〔塗布性(塗布はじき数)の評価〕
得られた試料について、試料表面を目視観察し、試料単位面積あたりの塗布液はじきによる塗布欠陥(塗布液がはじかれ塗布されていない部分)である「塗布はじき数」の数を確認した。
【0217】
結果を、表3に示す。
【0218】
【表3】

【0219】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム塩
表3より、本発明の構成では、比較例に対し、塗布はじきの数が少なく、かつ白地特性に優れていることがわかる。
【0220】
尚、網点画像品質、墨網色調安定性、についても、本発明の構成のものは、優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射支持体上に少なくとも一層の感光性ハロゲン化銀乳剤層、及び少なくとも一層の非感光性層を有するハロゲン化銀カラー感光材料において、非感光性層が感光性ハロゲン化銀乳剤層に隣接して塗設されかつ該非感光性層が黒色コロイド銀、および、下記一般式(A)で表される化合物、を含有することを特徴とするハロゲン化銀カラー感光材料。
【化1】

〔式中、R1およびR2は、各々独立に、n−アルキル基を表す。〕
【請求項2】
前記黒色コロイド銀が、下記一般式(S)で表される化合物の存在下で銀塩を還元することにより調製される黒色コロイド銀であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
【化2】

〔式中、Tは5員ヘテロ環を形成するに必要な原子団を表し、Jは水素原子、ヒドロキシ基、−SO31、−COOM1(ここでM1は水素原子、アルカリ金属原子、または置換もしくは無置換のアンモニウムイオンを表す)、置換もしくは無置換のアミノ基、置換もしくは無置換のアンモニオ基、これらの1つ以上によって置換された炭素数1〜19のアルキルチオ基、炭素数2〜18のアルキルアミド基、炭素数2〜18のアルキルカルバモイル基、炭素数1〜19のアルキル基、または炭素数6〜31の芳香族基を表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、または置換もしくは無置換のアンモニウムイオンを表す。〕
【請求項3】
前記非感光性層に、白色顔料を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
【請求項4】
前記非感光性層に、蛍光増白剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。
【請求項5】
前記黒色コロイド銀を含有する前記非感光性層が、反射支持体に接して塗設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀カラー感光材料。

【公開番号】特開2007−233047(P2007−233047A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54677(P2006−54677)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】