説明

ハロゲン化銀感光材料を用いたホログラフィ−撮影システム

【課題】従来の2次元の画像に変わる、顧客の満足度の高い安価な3次元の画像を提供する。
【解決手段】500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−、の2種類のみのパルスレ−ザ−光を同期させて用いて、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の透過型ホログラムを記録する人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン化銀感光材料を用いたホログラフィ−撮影システムに関するものである。特に従来の2次元の人物画像を顧客に提供する写真館等に変わって、満足できる3次元の立体人物画像を顧客に提供するホログラフィ−撮影システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
写真等に代表される2次元の人物画像は一般に広く受け入れられ定着している。通常の写真はカメラを使用して容易に撮影でき、現像、プリントサ−ビスも安価に受けることができる。記念となる写真は写真館等で撮影することができ、極めて高画質なものを手に入れることができ、顧客に対して満足できる水準に達しているといえる。
一方、3次元に見える立体人物画像は現時点では広く受け入れられているとは言い難い。立体画像の普及のためには同じ画像の画一的なコピ−ではなく、顧客の要求に応じた立体人物画像を安価に提供できることが必要である。例えば、顧客のポ−トレイトが迅速、安価で高品質に提供可能となれば、3次元に見える立体人物画像は2次元の画像以上に広く受け入れられ定着することが予測される。
人物撮影等における高画質な立体画像はホログラフィックステレオグラム、もしくはホログラムによって得られる。しかしながら、ホログラフィックステレオグラムは多点の干渉露光が必要なために,1枚の画像を得るのに時間がかかりすぎる。そのために、安価に高画質な画像を得ることは困難である。
一方、人物撮影ホログラムはパルスレ−ザ−を用いて行われている(例えば、非特許文献1参照)。
これらのパルスレ−ザ−を用いた人物撮影ホログラムは反射型とすることにより白色光で再生でき、3次元の人物画像を鑑賞することができる。しかしながら、汎用化に対する大きな問題は上述した価格に加えて、基本的に白黒の単色の画像であることである。実際の色見は処理により色々と変化させることが可能であるが、単色であるために人物が不気味に見えることが多々ある。青光、緑光、赤光の3色に対応したパルスレ−ザ−を用いれば、原理的にはフルカラ−のホログラムを得ることができるが、装置を含めた撮影システムが大規模になってしまう。
さらには、これらのパルスレ−ザ−を用いた人物撮影ホログラムは像倍率を変化させずに透過型から反射型にコピ−するために上述した不気味さを助長させている。高価であることに加えて、これらの問題点が3次元に見える立体人物画像の汎用化に大きな障害となっている。
【非特許文献1】LEONARDO,1992年、5卷,No.5,443−448頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、従来の2次元の画像に変わる、顧客の満足度の高い安価な3次元の画像を提供することにある。特に、顧客が楽しめる3次元のポ−トレイト画像を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は緑色光と赤色光の2色のみで撮影した3次元画像でも人間の目にはほぼフルカラ−の自然な3次元画像に見えるという発見、ならびに緑色光と赤色光の2色に感光することができる高感度な銀塩感光材料を調製できることを見出したことに基づいている。また適当な縮小を行なうことにより不気味さがなくなり、かつ迫力がある立体感を感じることができる画像になることを見出したことに基づいている。さらには、透過型ホログラムの作成と、それを用いた反射型ホログラムの作成を同一の光学系を用いて作成することにより高品質で安価なホログラフィ−撮影システムを構築することができることを見出したことに基づいている。これらの発見により、不気味さのない安心感と立体感があり顧客が満足できる3次元ポ−トレイト画像を提供することができる人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システムを考案した。
本発明の前記目的は、以下の方法によって達成される。
【0005】
(1) 500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の2種類のみのパルスレ−ザ−光を同期させて用いて、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の透過型ホログラムを記録することを特徴とする人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(2) 前記、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の参照光の入射角度が50°から80°の範囲にあり、600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の参照光の入射角度が20°から45°の範囲にあることを特徴とする(1)に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(3) 前記、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の物体光は基本的に同軸であることを特徴とする(1)または(2)に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(4) (1)に記載の該透過型ホログラムから、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の2種類のみのパルスレ−ザ−光を用いて、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の反射型ホログラムを記録することを特徴とする人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(5) 該透過型ホログラムの500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−による再生照明光が、該透過型ホログラム作成時の参照光と同一の光学系であることを特徴とする(4)に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(6) 該反射型ホログラムの再生波長を記録波長に対して10nm以上50nm以下の範囲で短波長にシフトさせることを特徴とする(4)または(5)に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(7) 該透過型ホログラムから該反射型ホログラムを、縮小光学系を通して記録することを特徴とする(4)〜(6)のいずれかに記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(8) 前記縮小の横倍率が0.8から0.4の範囲にあることを特徴とする(7)に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
(9) 透過型ホログラムの記録を顧客に対して多くの箇所で行い、該透過型ホログラムからの反射型ホログラムの記録を少ない箇所で集中して行なうことを特徴とする(4)に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、従来の2次元の画像に変わる、顧客の満足度の高い安価な3次元の画像を得ることができる。特に、3次元のポ−トレイト画像を楽しむことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明のハロゲン化銀感光材料を用いたホログラフィ−撮影システムについて説明する。
本発明は500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−と600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の2種類のみのパルスレ−ザ−光を用いる。
【0008】
500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−は好ましくはコ−ヒ−レント長が10cm以上、より好ましくは50cm以上のものを用いる。発光時間は好ましくは10−6秒以下、より好ましくは10−7秒以下のものを用いる。これらの発光時間内であれば、これらの時間中に連続発光させても発光/消光を繰り返しても良い。出力は10mJ以上2000mJ以下が好ましい。ビ−ム径、ビ−ム広がり角、偏光の程度などは任意である。これらの条件により、人物撮影のための干渉縞が安全に好ましく記録できる。具体的にはパルスYAGレ−ザ−の第二高調波、532nmが好ましく用いられる。より具体的にはランプ励起高出力パルスNd:YAGレ−ザ−の第2高調波、532nmが好ましく用いられる。パルス幅は1nsecから100nsecの範囲が好ましく、可干渉距離はインジェクションシ−ダ−により2m以上にできる。光出力分布はガウス型のモ−ドであることが好ましい。
【0009】
600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−は好ましくはコ−ヒ−レント長が50cm以上、より好ましくは1m以上のものを用いる。発光時間は好ましくは10-6秒以下、より好ましくは10-7秒以下のものを用いる。これらの発光時間内であれば、これらの時間中に連続発光させても発光/消光を繰り返しても良い。出力は10mJ以上2000mJ以下が好ましい。ビ−ム径、ビ−ム広がり角、偏光の程度などは光学系により決定できる。これらの条件により、人物撮影のための干渉縞が安全に好ましく記録できる。具体的にはパルスRubyレ−ザ−、694nmが好ましく用いられる。パルス幅は1nsecから100nsecの範囲が好ましく、光出力分布はガウス型のモ−ドであることが好ましい。
【0010】
これらの2種類のみのパルスレ−ザ−を同期させて用いて透過型ホログラムを撮影する。緑色光と赤色光の2色のみで撮影した3次元画像でも人間の目には順応により、ほぼフルカラ−の3次元画像に見える。青色を加えた3色の露光では撮影システムが複雑かつ高額となり現実的ではない。人物撮影においては肌色再現が最も重要であり、この色を中心として赤、橙、黄、緑の再現が十分に可能である。青、紫、水色の再現は肌色再現を考慮すると無視することが好ましい。2種類のレ−ザ−を同期させて用いるとは、2種類のレ−ザ−の発光が、好ましくは10-6秒以下、より好ましくは10-7秒以下の時間内に起こることを意味する。10-3秒以上になると人物が動くために緑色像と赤色像のずれが目立ち始める。同期させて撮影することにより精細な画像の撮影が可能となる。
【0011】
本発明は、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の透過型ホログラフィ−を記録する。一方で、それぞれの波長に対応した感光材料を貼り合わせて用いることが従来行われている。しかしながら、この方法は貼り合わせが複雑で本発明が目的とする安価な3次元画像の提供が困難である。目的を達成するには、緑色光と赤色光の2色に感光することができる高感度な銀塩感光材料を用いる必要がある。ここで高感度な銀塩感光材料とは、好ましくは500μJ/cm以下、より好ましくは100μJ/cm以下の光量で記録できる材料を意味する。
高感度に2色に感光する材料がないと本発明の撮像システムは完成できない。感度が低いとパルスレ−ザ−の出力を高める必要があり、実際のレ−ザ−の作成の観点からも人物に対する安全性の観点からも非現実的である。本発明者は緑色光と赤色光の2色に感光することができる高感度な銀塩感光材料を調製できることを見出した。
本発明は人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システムである。ここで人物とは動物、植物等を含んでいても良いし、動物、植物単独での撮影も可能である。さらには通常の物体等の撮影も可能である。
【0012】
以下に、本発明を図面を用いて説明する。
図1は本発明の透過型ホログラムを記録するホログラフィ−撮影システムを示す側面図の例であり,図2はその上面図である。
【0013】
Nd:YAGパルスレ−ザ−からの532nm光とRubyパルスレ−ザ−からの694nm光は、おのおの物体光と参照光に分離される。参照光は凹レンズにより広げられ、軸外しの放物面鏡により平行光に変換される。532nmの参照光のハロゲン化銀感光材料上への入射角度は好ましくは50°から80°の範囲にある。ここで入射角度とはハロゲン化銀感光材料の面に垂直な軸から測定した光線の入射する角度であると定義する。一方で、694nmの参照光のハロゲン化銀感光材料への入射角度は好ましくは20°から45°の範囲にある。より好ましくは、532nmの参照光の入射角度は70°近傍であり、694nmの参照光の入射角度は35°近傍である。この参照光の角度に保つことにより、この透過型ホログラムの再生時のクロスト−ク像が分離でき,後述する反射型ホログラムの作成時に都合が良い。この角度に保つことにより、簡便で安価なホログラフィ−撮影システムを作ることが可能となる。これら参照光は感光材料に対してP偏光であることが不要な反射を防止することができるために好ましい。
【0014】
物体光は基本的に二つのパルスレ−ザ−光が同軸であることが好ましい。光学的に同軸とすることにより不要な影の色付きが防止できる。光学的に同軸な532nmと694nmの物体光は凹レンズにより広げられ、拡散板に入射する。拡散板からの光が人物にあたり、ハロゲン化銀感光材料上への人物の物体光となる。図−2の例では物体光が人物に対して拡散板を通して2方向からあたる例を示したが、3方向以上の物体光が可能であり、撮影の目的、効果におうじて通常の写真館での照明のように適宜工夫することが可能である。
【0015】
用いる光学材料である凹レンズは反射防止膜が施されていることが好ましく、焦点距離等は撮影システムにより決定できる。軸外しの放物面鏡のサイズ、焦点距離、軸外しの程度についても感光材料のサイズと撮影システムにより決定できる。拡散板のサイズ、材質についても撮影システムにより決定できる。いずれにしても、人物にレ−ザ−光が直接的にあたらないようにすることが安全上重要なことになる。ハロゲン化銀感光材料は好ましくは三酢酸セルロ−ス(TAC)またはPET等を支持体とするフィルム状ハロゲン化銀感光材料である。ガラス乾板を感光材料として用いると高価で取り扱いに不便である。4ツ切りサイズ以上のフィルムを反射防止膜付のガラスに挟んで固定してレ−ザ−露光することが最も好ましい。ハロゲン化銀感光材料のサイズが大きいほど、後述する反射型ホログラムの視野角が大きくなるために好ましい。挟んだガラスのバック側は光反射を防止するために黒色の処理を施していることが好ましい。また干渉効率を上げるために、参照光と物体光の光路長は厳密に合わせることが好ましい。参照光強度と物体光強度の比は、感光材料上に安定に干渉縞が記録できるような値に決定し、基本的に固定して使用する。本撮影光学系は基本的に固定されており、2色の同期したレ−ザ−パルス光で人物撮影が容易におこなえる。1日に何十回という撮影が可能であるために、安価となり3次元画像の汎用化が可能となる。人物は白灯下で感光材料に向かい、撮影空間がハロゲン化銀感光材料に対して安全灯に変化した瞬間に感光材料のシャッタ−が開き、その瞬間に同期した532nmと694nmのパルス光が発光し、感光材料のシャッタ−が閉まり、安全灯から白灯に切り替わるという撮影システムは容易に組み立てることが可能であり、上述した3次元人物撮影の容易さが、通常の現在の写真館並にできる。
【0016】
本発明は、好ましくは前述した透過型ホログラムから、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−と600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の2種類のみのパルスレ−ザ−光を用いて、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の反射型ホログラムを記録することを特徴とする人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システムである。通常の2次元での写真撮影においては、ネガの撮影が透過型ホログラムの撮影に対応し、ネガからプリントへの焼き付けが反射型ホログラムの作成に対応する。透過型ホログラムをマスタ−、反射型ホログラムをトランスファ−ともいう。この反射型ホログラムにより、通常の照明灯下で3次元画像を楽しむことが可能となる。
【0017】
500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−は好ましくはコ−ヒ−レント長が10cm以上、より好ましくは50cm以上のものを用いる。発光時間は好ましくは10-6秒以下、より好ましくは10-7秒以下のものを用いる。これらの発光時間内であれば、これらの時間中に連続発光させても発光/消光を繰り返しても良い。出力は10mJ以上2000mJ以下が好ましい。ビ−ム径、ビ−ム広がり角、偏光の程度などは任意である。具体的にはパルスYAGレ−ザ−の第二高調波、532nmが好ましく用いられる。より具体的にはランプ励起高出力パルスNd:YAGレ−ザ−の第2高調波、532nmが好ましく用いられる。パルス幅は1nsecから100nsecの範囲が好ましく、可干渉距離はインジェクションシ−ダ−により2m以上にできる。光出力分布はガウス型のモ−ドであることが好ましい。
【0018】
600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−は好ましくはコ−ヒ−レント長が50cm以上、より好ましくは1m以上のものを用いる。発光時間は好ましくは10-6秒以下、より好ましくは10-7秒以下のものを用いる。これらの発光時間内であれば、これらの時間中に連続発光させても発光/消光を繰り返しても良い。出力は10mJ以上2000mJ以下が好ましい。ビ−ム径、ビ−ム広がり角、偏光の程度などは光学系により決定できる。具体的にはパルスRubyレ−ザ−、694nmが好ましく用いられる。パルス幅は1nsecから100nsecの範囲が好ましく、光出力分布はガウス型のモ−ドであることが好ましい。
これらの2種類のみのパルスレ−ザ−は同期させて用いることが好ましいが、透過型ホログラムの再生像からの反射型ホログラムの作成であるために、振動等により光学系がずれなければ必ずしも同期させる必要はない。また、1つのパルス光のみで露光する必要はなく、パルス光を連続発光させて、ハロゲン化銀感光材料に対する露光量を調整することが可能である。
【0019】
図3は本発明の透過型ホログラムからの実像再生を示す側面図の例であり,図4はその上面図である。
Nd:YAGパルスレ−ザ−からの532nm光とRubyパルスレ−ザ−からの694nm光は、おのおの再生照明光と参照光に分離される。再生照明光は、図1、2に示した透過型ホログラム作成時の参照光と同一の光学系であることが好ましい。撮影された透過型ホログラムは処理が終了した後、上下、表裏を反転させてセットされる。実像再生時の再生照明光の光学系が撮影時の参照光の光学系と全く同じであるために、532nmの再生実像と694nmの再生実像が完全に重なったカラ−実像を再生できる。透過型ホログラムの撮影時の参照光の入射角度を前述したように規定することによりクロスト−ク像が空間的に分離した完全な2色カラ−像を得ることができる。1枚のハロゲン化銀感光材料に2色を同時に記録することにより、感光材料の位置合わせ等が一切不要となり簡便、容易にカラ−実像の再生が可能となる。
【0020】
本発明においてはこの再生した実像の位置にハロゲン化銀感光材料を置き、参照光を反対側から加えて露光することにより、等倍率の反射型カラ−ホログラムを得ることができる。本発明においてはこの反射型ホログラムの再生波長を記録波長に対して10nm以上50nm以下の範囲で短波長にシフトさせることが好ましい。図3と図4に示したように透過型ホログラムから再生される実像は532nmと694nmの波長から成る。この再生実像に参照光を加えて反射型ホログラムを作成すると、処理により干渉縞の間隔に変化がなければ、基本的にこの反射型ホログラムからは532nmと694nmの波長が再生される。本発明においてはこの再生波長を好ましくは482nmから522nmと644nmから684nmに変化させる。この再生波長の短波化は、好ましくは記録時に対して処理後に感光材料の膜厚を薄くすることにより達成される。処理によりハロゲン化銀および/またはゼラチンを僅かに除くことはこの短波化の方法として好ましく用いられる。回折効率を高くして再生波長を再現性良く短波化するには後述するハロゲン化銀感光材料の工夫ならびに処理方法の工夫が必要である。露光時にトリエタノ−ルアミン等で膜厚を増加させて処理後にそれを抜いて短波化する方法も採用できるが、本発明の目的とする簡便で安価な撮影システムの提供のためには、予め処理により薄膜化できる方法をハロゲン化銀感光材料に組み込んでいることが好ましい。
【0021】
短波化の程度は本発明にとって極めて重要である。短波化させずに再生すると回折効率が高くても人間の眼には鑑賞時に暗く見える。短波化させすぎると最も重要な肌色から赤味が失われてしまう。本発明においては赤光と緑光の2色の再現でも人間の眼にはフルカラ−に見えることを利用しているので、2色の再生波長は基本的に肌色の記憶色がホログラムから再生されることが重要であり、色相、彩度、明度を含めた真実の色を再生することは決して重要ではない。赤光と緑光の再生光の強度は反射型ホログラムの回折効率や再生照明光の赤光と緑光の比率等に影響されるが、基本的にいずれの光の回折効率も高くなるように、露光、処理の各種条件を設定することが好ましい。
【0022】
本発明においては、透過型ホログラムから反射型ホログラムを、縮小光学系を通して記録することが好ましい。従来のホログラムは通常単色であることに加えて倍率が等倍である。人物の場合、この等倍のホログラムはあまりにもリアルすぎて不気味さをもたらすことが多い。本発明者は縮小の横倍率を0.8から0.4に設定することにより、不気味さが消失し、かつ迫力のある立体感が感じられる3次元画像となることを見出した。通常、縦倍率は横倍率の自乗倍となるが、本発明の横倍率の縮小は大きな問題とはならない。横倍率をさらに縮小すると縦倍率が小さくなりすぎるために立体感が消失し、不自然なホログラムとなってしまう。前述した1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長を記録すること、ならびに透過型ホログラムの作成時の参照光と同一の光学系を用いて実像再生することにより、2色の像は完全に重なり、鮮明な横倍率が縮小されたフルカラ−ホログラムを得ることが可能となる。
【0023】
図5は本発明の透過型ホログラムから再生された実像を縮小光学系を通して反射型ホログラムを記録する側面図の例であり,図6はその上面図である。
Nd:YAGパルスレ−ザ−からの532nm光とRubyパルスレ−ザ−からの694nm光は、おのおの再生照明光と参照光に分離される。再生照明光により実像が再生される。この実像は凸レンズにより縮小されて感光材料上に像を結ぶ。感光材料の反対側から参照光が露光される。これによりイメ−ジ型のホログラムが記録され、白色光で3次元画像を再生することができるようになる。参照光は532nm光と694nm光が同軸とされ、凹レンズで広げられた後、軸外しの放物面鏡で平行光となり、参照光として用いられる。作成した反射型ホログラムの視野角を大きくするために、実像を再生する透過型ホログラムのサイズは大きいことが好ましい。同様の理由で再生実像の縮小に用いる凸レンズの口径は大きく、焦点距離が短いことが好ましい。完成した反射型ホログラムのサイズは八つ切りサイズ等が簡便に鑑賞する上で好ましい。口径が大きく焦点距離の短い凸レンズは通常高価であるために撮影システムの普及の妨げとなる場合がありえる。この観点から、凸レンズの代わりに軸外しの放物面鏡を実像の縮小のために用いることが可能である。
【0024】
図7に放物面鏡を用いた場合の反射型ホログラムを記録する側面図の例を、図8にその上面図を示す。
軸外しの放物面鏡は凸レンズに比較して安価に大口径のものが得られるので本発明のホログラフィ−撮影システムには好ましく用いられる。
なお、添付の図面は約1/10のスケールであるが、寸法等は厳密ではなく簡略的に表示されている。
【0025】
本発明の基本は透過型ホログラムの撮影と、それをマスタ−として用いた反射型トランスファ−の作成を同じ光学系を用いて作成する2段階撮影システムにある。一段階の撮影で反射型ホログラムを作成する方法もあるが、マスタ−を介した方が露光量の調整、参照光と物体光の光量比率の調整、反射型ホログラムの短波長シフトの設定、撮影システムとしての簡便性等で好ましい。
【0026】
本発明のホログラフィ−撮影システムにより記録した反射型ホログラムは、通常のハロゲンランプ、LED等による照明を反射型ホログラムに照射することにより、顧客はフルカラ−のポ−トレイトを自在に楽しむことが可能となる。
本発明においては好ましくは、透過型ホログラムの記録を顧客に対して多くの箇所で行い、該透過型ホログラムからの反射型ホログラムの記録を少ない箇所で集中して行うホログラフィ−撮影システムである。3次元のポ−トレイトを撮影したい顧客は透過型ホログラフムの記録を行う。この記録場所は従来の写真館のように地域に点在しており、都合の良い場所、時間で撮影を行うことが可能である。この撮影した透過型ホログラムを1ヶ所、または数箇所に集める。ここで集めた透過型ホログラムを集中して処理し、透過型ホログラムから反射型ホログラムの撮影を行う。このシステムの形態は従来のカラ−ネガフィルムの撮影とラボにおける集中プリントシステムに相当する。この透過型ホログラムの記録を顧客に対して多くの箇所で行い、該透過型ホログラムからの反射型ホログラムの記録を少ない箇所で集中して行うホログラフィ−撮影システムにより、安価で品質の安定した3次元画像を顧客に提供することが可能となる。透過型ホログラムの記録と、該透過型ホログラムからの反射型ホログラムの記録を1つの写真館のような店で行おうとすると、パルスレ−ザ−を含めた金額的な投資が大きくなり、かつ品質の保持も大変である。写真館のような店は透過型ホログラムの記録のみを行うことで金額的な投資も減り、かつ品質の維持も容易となる。これらの写真館のような店で撮影した透過型ホログラムをラボのような所に集中して集めて、一括処理、それらからの反射型ホログラムの記録を行えば、同様に金額的な投資が減り、かつ品質の維持が容易となる。反射型ホログラムはラボから直接、顧客に渡しても良いし、一旦、写真館のような店に戻し、そこから顧客に渡しても良い。
前述したフルカラ−で縮小された安心感のある3次元のポ−トレイトを上述したシステムで提供することにより、3次元の画像は汎用性があり、一般に受け入れられるものとなる。
【0027】
以下に本発明のホログラフィ−用ハロゲン化銀感光材料について説明する。
本発明でホログラフィ−用ハロゲン化銀感光材料とは物体光と参照光の干渉波を記録することができるハロゲン化銀感光材料である。この波面記録により物体光の振幅と位相の両方を記録することができ、参照光により物体を三次元的に忠実に、再生、再現することができる。
本発明のホログラフィ−用ハロゲン化銀感光材料は支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有する。該ハロゲン化銀乳剤層中のハロゲン化銀粒子は3種類以上の分光増感色素により分光増感されていることが好ましい。特に好ましくは、これらの3種類の分光増感色素により、少なくとも500nm以上550nm以下の間と600nm以上700nm未満の間に2つの分光吸収の極大値を有する。より好ましくは、少なくとも510nm以上540nm以下の間と620nm以上680nm以下の間に2つの分光吸収の極大値を有する。分光吸収の極大値は感光材料の透過分光吸収を通常の分光光度計にて空気を参照にして測定する。分光吸収の極大値は3つ以上あっても良いし、上記の波長領域外にも分光吸収の極大値があっても良い。
【0028】
500nm以上550nm以下の間の分光吸収の極大値は好ましくは透過吸光度で0.1から0.5の範囲内にある。より好ましくは0.2から0.4の範囲内にある。これらの透過吸光度は感光材料の透過分光吸収を通常の分光光度計にて空気を参照にして測定する。600nm以上700nm未満の間の分光吸収の極大値は好ましくは透過吸光度で0.1から0.5の範囲内にある。より好ましくは0.2から0.4の範囲内にある。これらの透過吸光度は同様に感光材料の透過分光吸収を通常の分光光度計にて空気を参照にして測定する。分光吸収の極大値の透過吸光度をこれらの範囲に設定することは重要である。透過吸光度が低すぎると感度が低くなってしまい、透過吸光度が高すぎると感光材料の膜厚方向に均一な干渉縞の記録が困難になる。
特に好ましくは500nm以上550nm以下の間の分光吸収の極大が1種類以上の分光増感色素により調製され、600nm以上700nm未満の間の分光吸収の極大が2種類以上の分光増感色素により調製されていることである。
【0029】
本発明においてはハロゲン化銀粒子の銀1モル当たり増感色素が総量で1×10-4モル以上1×10-2モル以下含有されていることが好ましい。増感色素が該添加量含有されることにより、高感度でありながら、ハロゲン化銀溶剤の使用等によるハロゲン化銀超微粒子に対する不安定化効果を顕著に抑制することができる。
【0030】
一般に本発明において用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。
これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0031】
通常メロシアニン色素等の酸性核は、炭素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる複素環(好ましくは5員又は6員の含窒素複素環)を形成するとき好ましく、さらに好ましくは炭素、窒素、及び/又はカルコゲン(典型的には酸素、硫黄、セレン、及びテルル)原子からなる5員又は6員の含窒素複素環を形成するときである。具体的には、例えば次の核が挙げられる。
【0032】
2ーピラゾリンー5ーオン、ピラゾリジンー3、5ージオン、イミダゾリンー5ーオン、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーイミノオキサゾリジンー4ーオン、2ーオキサゾリンー5ーオン、2ーチオオキサゾリジンー2、5ージオン、2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、イソオキサゾリンー5ーオン、2ーチアゾリンー4ーオン、チアゾリジンー4ーオン、チアゾリジンー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4ージチオン、イソローダニン、インダンー1、3ージオン、チオフェンー3ーオン、チオフェンー3ーオンー1、1ージオキシド、インドリンー2ーオン、インドリンー3ーオン、2ーオキソインダゾリニウム、3ーオキソインダゾリニウム、5、7ージオキソー6、7ージヒドロチアゾロ[3,2-a]ピリミジン、シクロヘキサンー1、3ージオン、3、4ージヒドロイソキノリンー4ーオン、1、3ージオキサンー4、6ージオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸、クロマンー2、4ージオン、インダゾリンー2ーオン、ピリド[1,2−a]ピリミジンー1、3ージオン、ピラゾロ[1,5−b]キナゾロン、ピラゾロ[1,5−a]ベンゾイミダゾール、ピラゾロピリドン、1、2、3、4ーテトラヒドロキノリンー2、4ージオン、3ーオキソー2、3ージヒドロベンゾ[d]チオフェンー1、1ージオキサイド、3ージシアノメチンー2、3ージヒドロベンゾ[d]チオフェンー1、1ージオキサイドの核。
これらの酸性核には、環が縮環していても、通常用いられる置換基が置換していても良い。
酸性核として好ましくは、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、2ーチオオキサゾリンー2、4ージオン、チアゾリジンー2、4ージオン、ローダニン、チアゾリジンー2、4ージチオン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸であり、より好ましくは、ヒダントイン、2または4ーチオヒダントイン、2ーオキサゾリンー5ーオン、ローダニン、バルビツール酸、2ーチオバルビツール酸であり、さらに好ましくは、2ーチオヒダントイン、またはローダニンである。
【0033】
これらの増感色素は強色増感の目的で他の色素との組み合わせでしばしば用いられる。強色増感の組合せの代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。
【0034】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を同時または別個に添加してもよい。本発明においては、スチルベン系の強色増感剤を用いることは、特に好ましい。
【0035】
本発明において増感色素の添加時期はハロゲン化銀乳剤粒子の調製のいかなる段階であっても良いが、好ましくは化学増感工程以前、より好ましくはハロゲン化銀粒子形成工程終了後脱塩工程以前である。添加方法としては従来公知の方法を用いることが可能である。好ましくは水溶液もしくは水系分散液として添加する。
【0036】
本発明のハロゲン化銀粒子は数平均円相当径が10nm以上80nm以下であることが好ましい。より好ましくは20nm以上60nm以下である。特に好ましくは30nm以上50nm以下である。一般的に粒子サイズが大きすぎると波面再生の画質が劣ることになり,粒子サイズが小さすぎると粒子サイズの変動等の不安定化を完全に抑制することが出来なくなる。本発明においてはこの粒子サイズの設定により汎用性のあるホログラフィ−用感光材料が得られる。本発明のハロゲン化銀粒子は単分散性であることが好ましい。全ハロゲン化銀粒子の投影面積換算した円相当径の変動係数は25%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20%以下であり、特に好ましくは15%以下である。ここで円相当径の変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子における円相当径の分布の標準偏差を平均円相当径で割った値である。
【0037】
円相当径は、例えば直接法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を求めることができる。本発明においてはハロゲン化銀粒子が超微粒子であるため、低温にて高電圧の電子顕微鏡を用いて撮影することにより明確な粒子像を求めることが可能である。
【0038】
本発明のハロゲン化銀乳剤層に含まれるハロゲン化銀粒子は、正常晶であることが好ましく、8面体、立方体,十四面体、ならびにそれらが丸みを帯びた形状を持つことが出来る。好ましくは丸みを帯びた立方体もしくは角が明確な立方体である。双晶は混入していないことが好ましい。特に好ましくは、双晶粒子の混入比率は個数で3%以下であり、さらに好ましくは、1%以下である。ここで双晶とは1重双晶、2重双晶、多重双晶、ならびに平行双晶、非平行双晶を含む。
【0039】
本発明においてハロゲン化銀粒子は好ましくは、臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩臭化銀である。沃化銀含有率は特に好ましくは1モル%以上5モル%以下である。塩化銀含有率は特に好ましくは5モル%以下である。また各々の粒子の塩化銀ならびに沃化銀含有率は分布がないことが好ましい。塩化銀ならびに沃化銀含有率の粒子間分布の変動係数は20%以下が好ましく、10%以下がとくに好ましい。個々の粒子の塩化銀および沃化銀含有率の測定には通常、EPMA法(Electron Probe Micro Analyzer法)が有効である。乳剤粒子を互いに接触しないように分散させた試料を作成し、電子線を照射することにより放射されるX線を分析することにより、電子線を照射した極微小領域の元素分析を行うことができる。この時、測定は電子線による試料損傷を防ぐため低温に冷却して行うことが好ましい。
本発明のハロゲン化銀粒子は超微粒子であるため、ハロゲン組成の構造付与は容易ではないが、内部高沃化銀含量の構造、外部高沃化銀含量の構造等が可能である。塩化銀についての構造についても同様である。さらには3重構造以上の多層構造も可能である。
【0040】
本発明のハロゲン化銀粒子は、従来公知の方法にて調製できる。好ましくはゼラチン水溶液中に硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液をダブルジェット法にて添加することである。この時、流量を加速して添加することは好ましい。また添加時の系のpHとpAgは制御することが好ましい。pHは5〜8の範囲が好ましく用いられる。pAgは5〜9の範囲が好ましく用いられる。超微粒子の調製のためには温度は低温が好ましく、特にこのましくは20℃〜40℃の範囲が用いられる。後述する種々の添加剤を粒子サイズ調整、粒子サイズ分布調整、感度/かぶり調整、階調/現像進行調整等のために添加することが可能である。
【0041】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は化学増感が施されている。特に好ましくは化学増感時に金−カルコゲン増感と還元増感が施されている。ここで化学増感とはハロゲン化銀乳剤の製造工程を時間に従って粒子形成過程、水洗過程、化学増感過程の3段階に分けた場合の化学増感過程に相当する工程を意味する。化学増感とは各種化学増感剤を添加して温度を上昇させ熟成する工程である。化学増感時の金−カルコゲン増感と還元増感の併用により極めて高い感度が達成でき、またその保存性も実用上何ら問題ないレベルにすることが可能である。カルコゲン増感と貴金属増感については、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67〜76頁に詳細が記述されている。またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,772,031号、同第3,857,711、同第3,901,714号、同第4,266,018号、および同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルルのカルコゲン増感剤と金増感剤、それに加えて白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、RPdXまたはRPdXで表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0042】
具体的には、KPdCl、(NHPdCl、NaPdCl、(NHPdCl、LiPdCl、NaPdClまたはKPdBrが好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0043】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同第4,266,018号および同第4,054,457号に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号、特開昭58−126526号および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0044】
金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10-6〜1×10-2モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-3モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10-3から5×10-7モルである。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10-4から1×10-2モルである。
【0045】
本発明において用いるハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当り1×10-6〜1×10-2モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-3モルである。
【0046】
本発明の乳剤に対して好ましいカルコゲン増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感と組み合せてカルコゲン増感として用いた方が好ましい場合がある。
【0047】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208184号、同6−208186号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などに記載されている不安定テルル化合物を用いることができる。
【0048】
具体的には、ホスフィンテルリド類(例えば、ノルマルブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、トリイソブチルホスフィンテルリド、トリノルマルブトキシホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N’−ジメチルエチレンテルロ尿素)、テルロアミド類、テルロエステル類などを用いればよい。好ましくはホスフィンテルリド類、ジアシル(ジ)テルリド類である。
【0049】
本発明のハロゲン化銀乳剤は化学増感時に金−カルコゲン増感に加えて還元増感することが好ましい。ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0050】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。還元増感剤としては、例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。本発明において用いる還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-3モルの範囲が適当である。
【0051】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし化学増感中に添加される。添加する時期は金増感剤、カルコゲン増感剤の添加前でも添加後でもいずれでも良い。好ましくは還元増感剤を添加して熟成した後カルコゲン増感剤、金増感剤を添加しさらに熟成して化学増感を終了するのが良い。また還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0052】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりテトラザインデン化合 物が3×10-3モル以上3×10-2モル以下含有されていることが好ましい。本発明で用いられるテトラザインデン化合物は、写真乳剤の安定剤、かぶり防止剤として知られており、リサーチ・ディスクロージャー誌307巻866頁に記載されている。本発明に用いるテトラザインデン化合物としては置換基としてヒドロキシ基を有するテトラザインデン化合物、とくにヒドロキシテトラザインデン化合物が好ましい。複素環にはヒドロキシ基以外の置換基を有していてもいい。置換基としては、例えば、アルキル基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アシルアミノ基、シアノ基などを有していてもよい。ただし、硫黄を含む置換基(例えば、メルカプト基)を有するものは好ましくない。
【0053】
以下に本発明に好ましいテトラザインデン化合物の具体例を列記するが、これらのみに限定されるものではない。
1. 4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
2. 4−ヒドロキシ−6−t−ブチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
3. 4−ヒドロキシ−6−フェニル−1,3,3a,7−テトラザインデン
4. 4−ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラザインデン
5. 4−メチル−6−ヒドロキシ−1,3,3a,7−テトラザインデン
6. 2−メチルチオ−4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
7. 4−ヒドロキシ−5−ブロム−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン
8. 4−ヒドロキシ−6−メチル−1,2,3a,7−テトラザインデン
9. 4−ヒドロキシ−6−エチル−1,2,3a,7−テトラザインデン
10.2,4−ジヒドロキシ−6−フェニル−1,3,3a,7−トリアザインデン
11. 4−ヒドロキシ−6−フェニル−1,2,3,3a,7−ペンタザインデン
【0054】
これらテトラザインデン化合物の添加量は、好ましくはハロゲン化銀1モル当り3×10−3モル〜3×10−2モル、好ましくは10-4モル〜3×10-2モル、より好ましくは6×10-3モル〜2×10-2モルであり、化学増感開始前、化学増感中、化学増感後、塗布時のいずれかの時期に添加することが好ましい。
【0055】
本発明においては、ハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりチオシアン酸塩が1×10−4以上1×10-2モル以下含有されることが好ましい。より好ましくは、ハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりチオシアン酸塩が5×10-4以上5×10-3モル以下含有される。少なすぎると高感度化の効果が小さく、多すぎるとチオシアン酸塩のハロゲン化銀溶剤としての粒子サイズ変動等の不安定化による悪化作用が大きくなりすぎる。本発明においてはチオシアン酸塩以外のハロゲン化銀溶剤も好ましく用いられる。ハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第3,531,286号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号等に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)アンモニア等があげられる。
【0056】
本発明において好ましく用いられるチオシアン酸塩の添加時期はハロゲン化銀乳剤粒子の調製のいかなる段階であっても良いが、好ましくはハロゲン化銀粒子形成工程終了後、より好ましくは脱塩工程終了後塗布工程前である。特に好ましくは化学増感工程時である。添加方法としては水溶液として添加することが好ましい。チオシアン酸塩としては、好ましくはKSCN、NaSCN、NHSCNである。
【0057】
本発明においてはハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりイリジウム塩が1×10-4モル以上1×10-2モル以下含有されていることが好ましい。イリジウム塩が該添加量含有されることにより、ハロゲン化銀溶剤の使用によるハロゲン化銀超微粒子に対する不安定化効果を顕著に抑制することができる。特に好ましくはハロゲン化銀粒子の銀1モル当たりイリジウム塩が2×10-4モル以上1×10-3モル以下含有されている。
【0058】
本発明においてイリジウム塩の添加時期はハロゲン化銀乳剤粒子の調製のいかなる段階であっても良いが、好ましくはハロゲン化銀粒子形成工程中である。添加方法としては好ましくは水溶液として添加する。
【0059】
イリジウム塩としては3価もしくは4価のイリジウム錯体が好ましく用いられる。代表的なイリジウム塩としては、KIrCl、KIrCl、KIrCl(HO)、KIrCl(HO)等を挙げることができる。K塩以外にナトリウム塩、アンモニウム塩も好ましく用いられる。Irの配位子としてはCl、HO以外に従来公知であるものが用いられる。好ましくは特開平7−072569号に記載の有機配位子を含むイリジウム錯体が用いられる。さらに好ましくは特開平2−761027号に記載のシアノ基を含むイリジウム錯体が用いられる。
【0060】
本発明においてはイリジウム塩以外にハロゲン化銀粒子中に6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-6乃至10-2モルの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり10-5乃至10-3モルの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0061】
金属錯体としては、下記式(I)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。
【0062】
(I)[M(CN)n-
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)。
【0063】
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(I-1) [Fe(CN)4-
(I-2) [Fe(CN)3-
(I-3) [Ru(CN)4-
(I-4) [Os(CN)4-
(I-5) [Co(CN)3-
(I-6) [Rh(CN)3-
(I-7) [Ir(CN)3-
(I-8) [Cr(CN)4-
【0064】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0065】
本発明のホログラフイ−用ハロゲン化銀感光材料には低分子量ゼラチンが含有されることが好ましい。より好ましくはハロゲン化銀乳剤中に低分子量ゼラチンが含まれる。本発明における低分子量ゼラチンとは数平均分子量が3000から50000のものを意味する。より好ましくは数平均分子量が10000以上30000以下である。本発明で使用するゼラチンは、下記の各種修飾処理を施されていても良い。例えば、アミノ基を修飾したフタル化ゼラチン、コハク化ゼラチン、トリメリットゼラチン、ピロメリットゼラチン、カルボキシル基を修飾したエステル化ゼラチン、アミド化ゼラチン、イミダゾール基を修飾したホルミル化ゼラチン、メチオニン基を減少させた酸化処理ゼラチンや増加させた還元処理ゼラチンなどが挙げられる。
【0066】
一方、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0067】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は通常、水洗を行う。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0068】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号、特公昭52−28660号に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0069】
本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部のみにドープする方法も選べる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えば、CdBr、CdCl、Cd(NO、Pb(NO、Pb(CHCOO)、K[Fe(CN)]、(NH[Fe(CN)]、KIrCl、(NHRhCl、KRu(CN)があげられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アコ、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合せて用いてよい。
【0070】
金属化合物は水またはメタノール、アセトンのような適当な有機溶媒に溶かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例えば、HCl、HBr)あるいはハロゲン化アルカリ(例えば、KCl、NaCl、KBr、NaBr)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えば、AgNO)あるいはハロゲン化アルカリ水溶液(例えば、NaCl、KBr、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合せるのも好ましい。
【0071】
本発明の乳剤においては銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO・H・3HO、2NaCO・3H、Na・2H、2NaSO・H・2HO)、ペルオキシ酸塩(例えば、K、K、K)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K[Ti(O)C]・3HO、4KSO・Ti(O)OH・SO・2HO、Na[VO(O)(C]・6HO)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO)、クロム酸塩(例えば、KCr)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0072】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0073】
本発明において用いる好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0074】
本発明のホログラフィ−用ハロゲン化銀感光材料は、550nmから600nmの間に分光吸収の極大値を有する染料を含有していることが好ましい。より好ましくは、560nmから590nmの間に分光吸収の極大値を有する染料を含有している。この染料により、代表的なレ−ザ−光に対して高い感度を有する反面、全暗黒ではなくオレンジ灯下にて感光材料を取り扱えるようになる。オレンジ灯下にて感光材料を取り扱えるので、ホログラフィ−撮影時、現像等の処理時の負担が軽減され、汎用性が向上する。オレンジ灯は550nmから600nmの光を透過するフィルタ−等を光源に装着することにより,容易に得ることが可能である。好ましくは染料の分光吸収の極大値は透過吸光度で0.3から2.0の範囲にある。透過吸光度は高いことがセ−フライトに対する安全性が向上し、長時間オレンジ灯下にて取り扱うことができ好ましいが、染料の吸収端による吸収により代表的なレ−ザ−光に対する感度が低下するので適当な範囲が存在する。この観点で染料の吸収の半値巾は80nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下である。これらの分光吸収の波長、透過吸光度は感光材料の透過分光吸収を通常の分光光度計にて空気を参照にして測定することにより求めることが可能である。
【0075】
染料としては上述の要求を満たすものであれば良い。好ましくは、処理で流出したり消色することが可能な水溶性染料、または固体分散染料である。特に好ましくは、ハロゲン化銀乳剤の感度等の諸特性に影響しない水溶性染料である。水溶性染料はハロゲン化銀乳剤層に直接添加することも可能であるし、保護層、バック層に添加することも可能である。また併用することも可能である。
【0076】
本発明のホログラフィ−用ハロゲン化銀感光材料には特開平07−134351号に記載のハロゲン化銀への吸着基を有するヒドラジン化合物、特開平08−114884号、同08−314051号記載のヒドロキサム酸系化合物、特開平10−090819号記載のヒドロキシセミカルバジド系化合物、特開2002−323729号記載のハロゲン化銀への吸着基を有するヒドロキシルアミン系化合物、を含有することが特に好ましい。これら化合物の添加は乳剤粒子形成から塗布するまでの間から選ぶことができるが、好ましくは化学増感時またはそれ以降の塗布するまでの間から選択することができる。添加量についても任意であるが、超微粒子乳剤の特徴として、これらの特許に記載された量よりも10倍以上の大過剰量用いたほうが好ましい場合がある。具体的な添加量は実験的に容易に決定することができる。
【0077】
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物は本発明の感光材料に好ましく用いられる。これらの化合物は以下のタイプ1、2から選ばれる化合物である。
(タイプ1)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
(タイプ2)
1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を経た後に、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物。
【0078】
まずタイプ1の化合物について説明する。
タイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子を放出し得る化合物としては、特開平9−211769号(具体例:28〜32頁の表Eおよび表Fに記載の化合物PMT−1〜S−37)、特開平9−211774号、特開平11−95355号(具体例:化合物INV1〜36)、特表2001−500996号(具体例:化合物1〜74、80〜87、92〜122)、米国特許5,747,235号、米国特許5,747,236号、欧州特許786692A1号(具体例:化合物INV1〜35)、欧州特許893732A1号、米国特許6,054,260号、米国特許5,994,051号などの特許に記載の「1光子2電子増感剤」または「脱プロトン化電子供与増感剤」と称される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0079】
またタイプ1の化合物で、1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合開裂反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、特開2003-114487号に記載の一般式(1)、特開2003-114487号に記載の一般式(2)、特開2003-114488号に記載の一般式(1)、特開2003-114488号に記載の一般式(2)、特開2003-114488号に記載の一般式(3)、特開2003-75950号に記載の一般式(1)、特開2003-75950号に記載の一般式(2)、特開2004−239943(特願2003-25886)号に記載の一般式(1)、または特開2004−245929(特願2003-33446)号に記載の化学反応式(1)で表される反応を起こしうる化合物のうち特開2004−245929(特願2003-33446)号に記載の一般式(3)で表される化合物が挙げられる。またこれらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0080】
次にタイプ2の化合物について説明する。
タイプ2の化合物で1電子酸化されて生成する1電子酸化体が、引き続く結合形成反応を伴って、さらに1電子もしくはそれ以上の電子を放出し得る化合物としては、特開2003-140287号に記載の一般式(1)、特開2004−245929(特願2003-33446)号に記載の化学反応式(1)で表される反応を起こしうる化合物であって特開2004−245929(特願2003-33446)号に記載の一般式(2)で表される化合物が挙げられる。これらの化合物の好ましい範囲は、引用されている特許明細書に記載の好ましい範囲と同じである。
【0081】
タイプ1、2の化合物のうち好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を有する化合物」であるか、または「分子内に、分光増感色素の部分構造を有する化合物」である。ハロゲン化銀への吸着性基とは特開2003-156823号明細書の16頁右1行目〜17頁右12行目に記載の基が代表的なものである。分光増感色素の部分構造とは同明細書の17頁右34行目〜18頁左6行目に記載の構造である。
【0082】
タイプ1、2の化合物として、より好ましくは「分子内にハロゲン化銀への吸着性基を少なくとも1つ有する化合物」である。さらに好ましくは「同じ分子内にハロゲン化銀への吸着性基を2つ以上有する化合物」である。吸着性基が単一分子内に2個以上存在する場合には、それらの吸着性基は同一であっても異なっても良い。
【0083】
吸着性基として好ましくは、メルカプト置換含窒素ヘテロ環基(例えば2−メルカプトチアジアゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、5−メルカプトテトラゾール基、2−メルカプト−1,3,4−オキサジアゾール基、2−メルカプトベンズオキサゾール基、2−メルカプトベンズチアゾール基、1,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾリウム−3−チオレート基など)、またはイミノ銀(>NAg)を形成しうる−NH−基をヘテロ環の部分構造として有する含窒素ヘテロ環基(例えば、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、インダゾール基など)である。特に好ましくは、5−メルカプトテトラゾール基、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、およびベンゾトリアゾール基であり、最も好ましいのは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール基、および5−メルカプトテトラゾール基である。
【0084】
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は乳剤調製時、感材製造工程中のいかなる場合にも使用しても良い。例えば粒子形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前などである。またこれらの工程中の複数回に分けて添加することも出来る。添加位置として好ましくは、粒子形成終了時から脱塩工程の前、化学増感時(化学増感開始直前から終了直後)、塗布前であり、より好ましくは化学増感時、塗布前である。
【0085】
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は水、メタノール、エタノールなどの水可溶性溶媒またはこれらの混合溶媒に溶解して添加することが好ましい。水に溶解する場合、pHを高くまたは低くした方が溶解度が上がる化合物については、pHを高くまたは低くして溶解し、これを添加しても良い。
【0086】
本発明のタイプ1、タイプ2の化合物は乳剤層中に使用するのが好ましいが、乳剤層と共に保護層や中間層に添加しておき、塗布時に拡散させてもよい。本発明の化合物の添加時期は増感色素の前後を問わず、それぞれ好ましくはハロゲン化銀1モル当り、1×10−9〜5×10−2モル、更に好ましくは1×10−8〜2×10−3モルの割合でハロゲン化銀乳剤層に含有する。
【0087】
本発明に関する感光材料には、前記の種々の添加剤が用いられるが、それ以外にも目的に応じて種々の添加剤を用いることができる。
【0088】
これらの添加剤は、より詳しくはリサーチ・ディスクロージャー Item17643(1978年12月)、同 Item 18716(1979年11月)および同 Item 308119(1989年12月)に記載されており、その該当個所を後掲の表にまとめて示した。
【0089】
添加剤種類 RD17643 RD18716 RD308119
1 化学増感剤 23頁 648 頁右欄 996 頁
2 感度上昇剤 同 上
3 分光増感剤、 23〜24頁 648 頁右欄〜 996 右〜998右
強色増感剤 649 頁右欄
4 増 白 剤 24頁 647 頁右欄 998 右
5 かぶり防止剤、 24〜25頁 649 頁右欄 998 右〜1000右
および安定剤
6 光吸収剤、 25〜26頁 649 頁右欄〜 1003左〜1003右
フィルター染料、 650 頁左欄
紫外線吸収剤
7 ステイン防止剤 25頁右欄 650 左〜右欄 1002右
8 色素画像安定剤 25頁 1002右
9 硬 膜 剤 26頁 651 頁左欄 1004右〜1005左
10 バインダー 26頁 同 上 1003右〜1004右
11 可塑剤、潤滑剤 27頁 650 頁右欄 1006左〜1006右
12 塗布助剤、 26〜27頁 同 上 1005左〜1006左
表面活性剤
13 スタチック 27頁 同 上 1006右〜1007左
防 止 剤
14 マット剤 1008左〜1009左。
【0090】
また、ホルムアルデヒドガスによる写真性能の劣化を防止するために、米国特許4,411,987号や同第4,435,503号に記載されたホルムアルデヒドと反応して、固定化できる化合物を感光材料に添加することが好ましい。
【0091】
本発明の感光材料中には、フェネチルアルコールや特開昭63−257747号、同62−272248号、および特開平1−80941号に記載の、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、n−ブチル−p−ヒドロキシベンゾエート、フェノール、4−クロル−3,5−ジメチルフェノール、2−フェノキシエタノール、2−(4−チアゾリル)ベンゾイミダゾールのような各種の防腐剤もしくは防黴剤を添加することが好ましい。
【0092】
支持体はハロゲン化銀感光材料に通常用いられる支持体を用いることができ、ガラス、TAC、PET,PEN等を代表例として挙げる事ができる。好ましくは、光学的異方性を持たないガラス、TACが用いられる。支持体の厚みの選択は、その用途、使用法に応じて適宜選択することができる。これら支持体に上述した乳剤層を塗布する。さらに乳剤層に追加して、保護層、YF層、中間層、ハレ−ション防止層、下塗り層、バック層等、目的に応じて適宜選択して塗布することができる。TAC等のフレキシブルな支持体に対しては、そのカ−ル特性を良好に保つためにバック層の塗布は極めて有効である。さらに保護層がない場合には、このバック層にマット剤等を導入し、試料間の接着性を改良することができる。また、静電気起因の各種障害、たとえばほこりの付着などを帯電性の調整により積極的に排除することが可能である。
ハロゲン化銀乳剤層ならびに各種層の塗布銀量、塗布ゼラチン量は特に制限はない。塗布銀量は1g/mから10g/mの範囲が好ましい。塗布ゼラチン量は1g/mから10g/mの範囲が好ましい。銀/ゼラチン塗布量比率についても任意の範囲で選択することができる。好ましくは0.3〜2.0の範囲である。塗布膜厚は通常3μm〜12μmの範囲が好ましく用いられる。薄いと干渉波の記録が十分に行えないし、厚すぎても光散乱等の増加により解像力が低下してしまう。処理工程での膨潤膜厚については、硬膜剤の使用量の調整により任意に選ぶことができる。好ましくは硬膜の程度は処理後の膜厚変化、すなわちハロゲン化銀、ゼラチン等の抜けがない様に、強くしておくことが好ましい。層別の硬膜をする場合には上層に対して下層の硬膜の程度を緩くしておくことが好ましい。
【0093】
本発明におけるホログラフィ−用ハロゲン化銀感光材料の干渉波記録の方法、処理の方法、ならびに再生の方法、さらには利用の方法についてはホログラフィ−の技術、科学分野における現在の最新の知見等を参考にすることができる。代表的な参考書として、久保田敏弘著、ホログラフィ−入門、原理と実際、朝倉書店、1995年等が挙げられる。本発明の感光材料はこれら参考書に記載の応用が当然可能であり、高感度、高画質、安定性を利用して、その応用が簡便となる。
【0094】
[実施例]
以下に本発明の原理を実施例により説明する。
【実施例1】
【0095】
(ハロゲン化銀感光材料の調製)
KBr0.28g、数平均分子量100000のフタル化脱イオン骨ゼラチン33.3gを含む水溶液1659mLを34℃に保ち撹拌した。二酸化チオ尿素0.04gを含む水溶液を添加した後、pHを6.0に合わせた。AgNO(96.0g)水溶液800mlとKIを1モル%含むKBr水溶液をダブルジェット法で15分間に渡り添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して+20mVに保った。強色増感剤Iをハロゲン化銀1モルに対して6.7×10-4モル添加した後、増感色素IIIをハロゲン化銀1モルに対して4.3×10-4モル添加した。その後、増感色素Iをハロゲン化銀1モルに対して6.1×10−4モル添加した。その後、増感色素IIをハロゲン化銀1モルに対して5.2×10-4モル添加した。本実験において増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
【0096】
温度を32℃に降温した後、通常の水洗を行なった。数平均分子量20000の酸化処理を施した脱イオン骨ゼラチン21gを添加した後、45℃でPHを8.0に調整した。60℃に昇温し、ハロゲン化銀1モルに対して、二酸化チオ尿素(8.0×10-5モル)、かぶり防止剤I(4.5×10-3モル)、塩化金酸(4.1×10-4モル)、チオ硫酸ナトリウム(1.2×10-3モル)を順次添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤II(2.5×10-4モル)を添加して化学増感を終了した。
本乳剤は数平均円相当径38nm、円相当径の変動係数7%の立方体粒子であった。本粒子は1モル%の沃化銀を含有する臭化銀粒子である。
【0097】
【化1】

【0098】
下塗り層を設けてある厚み200μmの三酢酸セルロースフィルム支持体の片側にバック層を塗布し、もう一方の側に下記表−1に示すような塗布条件で上記の化学増感を施した乳剤を塗布し、塗布試料を作成した。
【0099】
【表1】

【0100】
バック層は以下の内容にて塗布した。
【0101】
<導電層塗布液の調製とその塗布>
ゼラチン水溶液に下記化合物を添加し、ゼラチン塗布量が0.06g/mとなるように塗布した。
SnO/Sb(9/1質量比、平均粒径0.25μ) 186mg/m
ゼラチン(Ca++含有量3000ppm) 60mg/m
p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 13mg/m
ジヘキシル−α−スルホサクシナートナトリウム 12mg/m
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム 10mg/m
化合物−A 1mg/m
<バック層塗布液の調製とその塗布>
【0102】
ゼラチン水溶液に下記化合物を添加し、ゼラチン塗布量が1.94g/mとなるように塗布した。
ゼラチン(Ca++含有量30ppm) 1.94mg/m
ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径3.4μ) 15mg/m
p−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 7mg/m
ジヘキシル−α−スルホサクシナートナトリウム 29mg/m
N−パーフルオロオクタンスルホニル−N−プロピル
グリシンポタジウム 5mg/m
硫酸ナトリウム 150mg/m
酢酸ナトリウム 40mg/m
化合物−E(硬膜剤) 105mg/m
化合物−C 15mg/m
【0103】
【化2】

【0104】
(記録)
デニシュ−ク型ホログラフィ−撮影条件で上記で調製したホログラフィ−用感光材料を用いた。光源として赤色はヘリウム−ネオンレ−ザ−、緑色はYAGレ−ザ−を用い、久保田敏弘著、ホログラフイ−入門−原理と実際−、1995年朝倉書店出版、p.82の図5.4に記載された撮影系を参考にして、デニシュ−ク型のホログラフィ−撮影を行った。同著,p.159に記載されたCW−C2現像液+PBQ−2漂白液の処方にて処理を行った。再生像の目視評価では、明るく鮮明なカラ−像が得られることがわかった。本実験において青色露光は行わなかったが赤色と緑色の2色でも良好なカラ−再生像が得られることが明らかとなった。また、ここで用いた露光量はヘリウム−ネオンレ−ザ−に対しては50μJ/cm、YAGレ−ザ−に対しても50μJ/cmであった。
【0105】
再生波波長に対応した赤色と緑色のLEDを用いた簡易再生装置を製作した。上述の10×12cmのホログラムをテ−ブルの上で簡便に1.5Vの乾電池で再生できるようにしたもので、参照光と同じ角度である45度、そして距離15cmの上方からホログラムを照明できるようにしたものである。簡易再生装置で、室内明室にて良好な再生像を鑑賞することができた。
以上により、緑色光と赤色光の2色のみで撮影した画像でも人間の目にはほぼフルカラ−の3次元画像に見えるということ、ならびに緑色光と赤色光の2色に感光することができる高感度な銀塩感光材料を調製できることが示せた。すなわち本発明の原理を示すことができた。
【実施例2】
【0106】
実施例1で調製した感光材料を用いて、従来公知のRubyパルスレ−ザ−による694nm光を用いての人物撮影を行なった。透過型マスタ−撮影を経て反射型トランスファ−を作成する2段階作成法である。得られた人物ホログラムは白色光再生波長が黄緑色の単色等倍の従来公知のものである。種々の観点ならびに多人数による観察評価を繰り返し行い、単色等倍の要因が人物ホログラムの不気味さの原因になっており汎用化の妨げになっていると結論した。考察とシミュレ−ションを繰り返した結果、実施例1で説明した赤光と緑光による擬似カラ−化ならびに本文で説明した縮小の光学系システムによる横倍率の縮小によりこの不気味さは消失し汎用化できるという結論に達した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の透過型ホログラムを記録するホログラフィ−撮影システムを示す例の側面図。
【図2】本発明の透過型ホログラムを記録するホログラフィ−撮影システムを示す例の上面図。
【図3】本発明のホログラフィ−撮影システムにより記録した透過型ホログラムからの実像再生を示す例の側面図。
【図4】本発明のホログラフィ−撮影システムにより記録した透過型ホログラムからの実像再生を示す例の上面図。
【図5】本発明の反射型ホログラムを縮小光学系を通して記録するホログラフィ−撮影システムを示す例の側面図。
【図6】本発明の反射型ホログラムを縮小光学系を通して記録するホログラフィ−撮影システムを示す例の上面図。
【図7】本発明の反射型ホログラムを縮小光学系を通して記録するホログラフィ−撮影システムを示す例の側面図。
【図8】本発明の反射型ホログラムを縮小光学系を通して記録するホログラフィ−撮影システムを示す例の上面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−、の2種類のみのパルスレ−ザ−光を同期させて用いて、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の透過型ホログラムを記録することを特徴とする人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項2】
前記、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の参照光の入射角度が50°から80°の範囲にあり、600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の参照光の入射角度が20°から45°の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項3】
前記、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−、の物体光は基本的に同軸であることを特徴とする請求項1または2に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項4】
請求項1に記載の該透過型ホログラムから、500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−の2種類のみのパルスレ−ザ−光を用いて、1枚のハロゲン化銀感光材料に2種類の波長の反射型ホログラムを記録することを特徴とする人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項5】
該透過型ホログラムの500nm以上600nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−及び600nm以上700nm未満の範囲に発光波長を有するパルスレ−ザ−による再生照明光が、該透過型ホログラム作成時の参照光と同一の光学系であることを特徴とする請求項4に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項6】
該反射型ホログラムの再生波長を記録波長に対して10nm以上50nm以下の範囲で短波長にシフトさせることを特徴とする請求項4または5に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項7】
該透過型ホログラムから該反射型ホログラムを、縮小光学系を通して記録することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項8】
前記縮小の横倍率が0.8から0.4の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。
【請求項9】
透過型ホログラムの記録を顧客に対して多くの箇所で行い、該透過型ホログラムからの反射型ホログラムの記録を少ない箇所で集中して行なうことを特徴とする請求項4に記載の人物撮影を対象とするホログラフィ−撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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