説明

ハロピリジル−アザビシクロヘプタン誘導体の製造のための中間体

【課題】毒カエルの皮膚から抽出した非オピオイド性鎮痛作用を有するエピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体またはその塩を提供する。
【解決手段】スルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体をナトリウムアマルガムで還元してN-保護アザビシクロヘプテン誘導体とし、第二パラジウム塩の存在下ハロゲン化ピリジンをカップリングさせてピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体とし、過酸化水素水等で酸化してN-オキシハロピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体とし、ハロゲン化剤と反応させてハロピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体とし、さらに保護基を脱離してハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体またはその塩を高収率で製造する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),102,830-836,1980.および同誌,114,3475-3478,1992.等に開示されている、毒カエルの皮膚から抽出した非オピオイド性鎮痛作用を有するエピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体またはその塩の製造法、およびその製造にあたり有用な中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】エピバチジン(Epibatidine)は下記化学構造式で表される。
【0003】
【化4】


【0004】エピバチジンを代表例とするハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体は天然物であり、南米エクアドル産毒カエルの皮膚から抽出して得られる。
【0005】
【本発明が解決しようとする問題点】前述のように、エピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体は非オピオイド性鎮痛作用を有することから、モルヒネのような麻薬としての欠点を有しない、臨床上の有用性の高い鎮痛剤として期待されている。しかしこれらの化合物が、天然に存在する量は極めて微量であって大量に入手することはできず、これまで薬理実験や臨床試験を進めることができなかった。一方、エピバチジンがエクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの構造を有することは、前記文献[ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),114,3475-3478,1992.]に記載されているが、2位の立体配置(RまたはS)を含めた完全な構造はまだ決定されていない。
【0006】しかしエピバチジンの2位の立体配置がRまたはSいずれであっても、dl-体(±体)を合成し、次いで光学分割すればよいので、これまでdl-エピバチジンの合成が試みられてきたが、まだ成功した報告はなかった。このため、高収率かつ簡便なルートで、エピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)またはその塩を製造できる工業的製法が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、エピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)またはその塩を得る製造法について、鋭意研究を重ねてきた。その結果、公知化合物であるスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)を、ナトリウムアマルガムで還元してN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) とし、次いで第二パラジウム塩の存在下にハロゲン化ピリジンをカップリングさせてピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)とし、次いで過酸化水素水、過酸または有機過酸化物で酸化してN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III)とし、次いでハロゲン化剤と反応させてハロピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(VIII) とし、さらに脱保護することにより、エピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)またはその塩を高収率で製造できることを見い出し、本発明を完成した。本発明における反応経路の概略は、下記化学反応式で表される。
【0008】
【化5】


【0009】従って本発明の目的は、エピバチジン(Epibatidine)等のハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)またはその塩を、工業的に高収率で製造するにあたり有用な中間体を提供するものである。
【0010】本発明におけるハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)の塩とは、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩などの無機酸の付加塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩などの有機酸の付加塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩などのスルホン酸の付加塩などを意味する。
【0011】本発明におけるN-保護アザビシクロヘプタン誘導体(I) は下式で表される。
【0012】
【化6】


【0013】式中R1 はホルミル基、低級脂肪族アシル基、芳香族アシル基、ビニル基、低級アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アラルキル基またはトリ低級アルキルシリル基を、R4 は水素原子、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基または下式で表される基を
【化7】


(式中R2 はハロゲン原子または水素原子を意味する。)、 nは0または1を、式
【化8】


で表される結合は、単結合または二重結合を意味する。ただし、R4 が水素原子でありかつR1 がメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセチル基、若しくはホルミル基である場合、R4 が2−クロロ−5−ピリジル基でありかつR1がアセチル基若しくはメトキシカルボニル基である場合を除く。
【0014】置換基R1 の定義にある低級脂肪族アシル基とは、具体的には例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基等の炭素数1?6の基を、芳香族アシル基とは例えばベンゾイル基、トルオイル基、キシロイル基、フェニルアセチル基、ニトロベンゾイル基、メトキシベンゾイル基、クロロベンゾイル基、ナフトイル基等を、低級アルコキシカルボニル基とは例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等の、炭素数1?6の前記低級アルキル基を分子内に有する基を、アラルキルオキシカルボニル基とは例えばベンジルオキシカルボニル基、メトキシベンジルオキシカルボニル基、ニトロベンジルオキシカルボニル基、クロロベンジルオキシカルボニル基、ブロモベンジルオキシカルボニル基等を、アリールオキシカルボニル基とは例えばフェノキシカルボニル基、ニトロフェノキシカルボニル基等を、アラルキル基とはベンジル基、メトキシベンジル基、ニトロベンジル基、クロロベンジル基等を、トリ低級アルキルシリル基とはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。これらの基の中でもエトキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基がより好ましい。
【0015】またR2の定義にあるハロゲン原子とは、具体的には例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等を挙げることができるが、塩素原子がより好ましい。
【0016】N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(I)の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるN-保護アザビシクロヘプタン誘導体(I) はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-メトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(3) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-ベンジルオキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-ホルミルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(5) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アセチルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(6) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-ベンジルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(7) エクソ-2-(5’-ブロモ-3’-ピリジル)-7-トリメチルシリルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(8) エクソ-2-(4’-ブロモ-3’-ピリジル)-7-トリエチルシリルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(9) エクソ-2-(2’-フルオロ-3’-ピリジル)-7-ビニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン
【0017】次にハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)は下式で表される。
【0018】
【化9】


【0019】式中R2 はハロゲン原子であり、前記と同様の具体例を挙げることができる。ハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2) エクソ-2-(6’-ブロモ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(3) エクソ-2-(6’-フルオロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4)エクソ-2-(6’-クロロ-2’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(5) エクソ-2-(6’-クロロ-4’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(6) エクソ-2-(5’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(7) エクソ-2-(4’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(8)エクソ-2-(2’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン
【0020】またN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) は下式で表される。
【0021】
【化10】


【0022】式中R1 、R2 は前記と同様の意味を有する。N-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-メトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(3) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-ベンジルオキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-フェノキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(5) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-ベンジルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(6) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-トリメチルシリルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(7) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-アセチルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(8) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-ベンゾイルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン
【0023】またピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)は下式で表される。
【0024】
【化11】


【0025】式中R1 は前記と同様の意味を有する。ピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(2) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-メトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(3) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-ニトロベンジルカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-アニスオキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(5) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-ベンジルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(6) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-トリフェニルシリルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(7) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-ホルミルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(8) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-プロピオニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン
【0026】またN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) は下式で表される。
【0027】
【化12】


【0028】式中R1 は前記と同様の意味を有する。N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V)の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) はこれらに限定されない。(1) 7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(2) 7-メトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(3) 7-ベンジルオキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(4) 7-フェノキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(5) 7-ベンジルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(6) 7-トリエチルシリルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(7) 7-アセチルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(8) 7-トルオイルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン
【0029】さらにスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)は下式で表される。
【0030】
【化13】


【0031】式中R1 は前記と同様の意味を有し、R3 はメチル基、エチル基、フェニル基またはトルイル基を意味する。なお本発明においてメシル(Ms)基とはメタンスルホニル基を、またトシル(Ts)基とはp-トルエンスルホニル基を意味する。スルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(2) エクソ-2-メシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(3) エクソ-2-エタンスルホニル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(4) エクソ-2-ベンゼンスルホニル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(5)エクソ-2-トシル-7-メトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(6) エクソ-2-トシル-7-ベンジルオキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(7) エクソ-2-トシル-7-ベンジルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(8) エクソ-2-トシル-7-トリメチルシリルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(9) エクソ-2-トシル-7-ホルミルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(10)エクソ-2-トシル-7-アセチルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン
【0032】そしてスルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) は下式で表される。
【0033】
【化14】


【0034】式中R1 、R3 は前記と同様の意味を有する。スルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるスルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(2) エクソ-2-メシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(3) エクソ-2-エタンスルホニル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(4) エクソ-2-ベンゼンスルホニル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(5) エクソ-2-トシル-7-メトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(6)エクソ-2-トシル-7-ベンジルオキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(7) エクソ-2-トシル-7-ベンジルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(8) エクソ-2-トシル-7-トリメチルシリルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(9) エクソ-2-トシル-7-ホルミルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン(10)エクソ-2-トシル-7-ブチリルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエンなお本発明における出発原料である上記化合物は、オーガノメタリックス・イン・ケミカル・シンセシス(Organometal.Chem.Syn.),1,145,1970.に記載された方法により製造したトシルアセチレン等を、アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション・イングリッシュ(Angew.Chem.Int.Ed.Engl.),21,778,1982. に記載された方法により、N-保護ピロールと反応させることにより得られる。
【0035】次に本発明にかかる製法の各工程について、以下に詳しく述べる(前記化学反応式[化5]参照)
工程1本工程は、スルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) を金属水素錯化合物で還元してスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)とする工程である。一般的にはジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.),50,4340,1985.に記載された方法により行うことができるが、本発明における金属水素錯化合物とは、具体的には例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム等を挙げることができるが、水素化ホウ素ナトリウムがより好ましい。金属水素錯化合物の使用量は限定されないが、通常はスルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) の1当量に対して約 1〜50当量を、好ましくは約 1〜20当量を、さらに好ましくは約 1〜10当量を使用する。
【0036】本反応においては溶媒を用いることが好ましい。その際に利用できる溶媒は、スルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) または金属水素錯化合物に対して不活性なものであれば限定されないが、具体的には例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、水等を挙げることができる。溶媒の使用量は限定されないが、通常はスルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) の1重量に対して約 0.2〜100 容を、好ましくは約0.5〜50容を、さらに好ましくは約 1〜20容を用いる。
【0037】本反応はスルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(VII) を溶媒に溶解し、金属水素錯化合物を加えて反応させる。その際の反応温度は限定されず-80℃〜溶媒還流温度において実施することができるが、通常は氷冷下に行うことが好ましい。反応時間は温度によって異なるが、通常は10分〜4 時間程度で終了する。得られたスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)の粗生成物は、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の定法によりさらに精製することができる。
【0038】工程2この工程は、スルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)をナトリウムアマルガムと反応させて、N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) を製造する工程である。本工程はナトリウムアマルガムによる一般的な還元法により行うことができる。ナトリウムアマルガムの濃度は限定されず任意のものでよいが、一般的に市販されている5%濃度の製品を利用することもできる。またナトリウムアマルガムの使用量は限定されず、通常はスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)に対して約 1〜50当量を、好ましくは約 1〜20当量を、さらに好ましくは約 1〜10当量を使用する。
【0039】本反応においては溶媒を用いることが好ましい。その際に利用できる溶媒は、スルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)またはナトリウムアマルガムに対して不活性なものであれば限定されないが、具体的には例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール等を挙げることができる。溶媒の使用量は限定されないが、通常はスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)の1重量に対して約 0.2〜100 容を、好ましくは約 0.5〜50容を、さらに好ましくは約 1〜20容を用いる。
【0040】本反応はスルホニル-N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(VI)とリン酸水素ナトリウム(Na2HPO4) を溶媒に懸濁し、ナトリウムアマルガムを加えて反応させる。その際の反応温度は限定されないが、通常は氷冷下に行うことが好ましい。また反応は通常は30分〜12時間程度で終了する。得られたN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) の粗生成物は、カラムクロマトグラフィー、減圧蒸留等の定法によりさらに精製することができる。
【0041】工程3本工程は、N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V)を、第二パラジウム塩の存在下にハロゲン化ピリジンとカップリングさせてピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)とする工程である。本反応は一般的にはジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティ・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Comm.),1368,1989. に記載された方法に従って行うことができる。本発明において用いるハロゲン化ピリジンとは、具体的には例えば下記化合物を挙げることができる。(1) 3-臭化ピリジン(2) 3ーヨウ化ピリジン(3) 3-塩化ピリジン(4) 2-臭化ピリジン(5) 4-臭化ピリジンハロゲン化ピリジンの使用量は限定されないが、通常はN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V)に対して約 1〜50当量を、好ましくは約 1〜20当量を、さらに好ましくは約 1〜10当量を使用する。
【0042】本発明における第二パラジウム塩とは、具体的には例えば酢酸第二パラジウム、塩化第二パラジウム、硝酸第二パラジウム、硫酸第二パラジウム等を挙げることができるが、酢酸第二パラジウムがより好ましい。酢酸第二パラジウムの使用量は限定されないが、通常はN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) に対して約1〜50当量を、好ましくは約 1〜20当量を、さらに好ましくは約 1〜10当量を使用する。さらに本反応においてはテトラブチルアンモニウムクロリド等の層間移動触媒とギ酸カリウムの存在下に行うことが好ましい。
【0043】本反応においては溶媒を用いることが好ましい。その際に利用できる溶媒は、N-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) に対して不活性なものであれば限定されないが、具体的には例えば N,N,-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)、ヘキサメチルホスホラストリアミド(HMPT)、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等を挙げることができる。溶媒の使用量は限定されないが、通常はN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) の1重量に対して約 0.2〜100 容を、好ましくは約 0.5〜50容を、さらに好ましくは約 1〜20容を用いる。
【0044】本反応はN-保護アザビシクロヘプテン誘導体(V) 、第二パラジウム塩、層間移動触媒とギ酸カリウムを溶媒に溶解して反応させる。その際の反応温度は限定されないが、通常は50〜60℃に加温して行うことが好ましい。また反応は通常は6〜48時間程度で終了する。得られたピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)の粗生成物は、カラムクロマトグラフィー等の定法によりさらに精製することができる。
【0045】工程4本工程は、ピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)を、過酸化水素水、過酸または有機過酸化物で酸化してN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) を製造する工程である。本反応は過酸化水素水、過酸または有機過酸化物によりN-オキシドを合成する際の、定法により実施することができる。本発明における過酸とは、具体的には例えばm-クロロ過安息香酸、過ギ酸、過酢酸、過フタル酸等を挙げることができるが、m-クロロ過安息香酸がより好ましい。また本発明における有機過酸化物とは、具体的には例えばt-ブチルパーオキシド、アミルパーオキシド等を挙げることができる。過酸化水素水、過酸または有機過酸化物の使用量は限定されないが、通常はピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)に対して約 1〜50当量を、好ましくは約 1〜20当量を、さらに好ましくは約1〜10当量を使用する。
【0046】本反応においては溶媒を用いることが好ましい。その際に利用できる溶媒は、ピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)、過酸または有機過酸化物に対して不活性なものであれば限定されないが、具体的には例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクレン等を挙げることができる。溶媒の使用量は限定されないが、通常はピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)の1重量に対して約 0.2〜100 容を、好ましくは約 0.5〜50容を、さらに好ましくは約1〜20容を用いる。
【0047】本反応はピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)を溶媒に溶解し、過酸または有機過酸化物を加えて反応させる。その際の反応温度は限定されないが、通常は氷冷下に行うことが好ましい。また反応は通常は2?48時間程度で終了する。得られたピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(IV)の粗生成物は、カラムクロマトグラフィー等の定法によりさらに精製することができる。
【0048】工程5この工程は、N-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) を、ハロゲン化剤と反応させてハロピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(VIII) とする工程である。本工程は一般的にはワイスバーガー(Weissberger)著、複素環式化合物の化学「ピリジンおよびその誘導体(Chemistry of HeterocyclicCompounds, Pyridine and its Derivatives) 」, 第14巻増刊, 第2部,112頁.に記載された方法に従って行うことができるが、本発明において用いるハロゲン化剤とは、具体的には例えばオキシ塩化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、塩化オキザリル、ホスゲン、トリホスゲン、臭化チオニル、三臭化リン等を挙げることができるが、オキシ塩化リンがより好ましい。
【0049】本反応においては溶媒を用いても無溶媒でもいずれでもよいが、使用する場合には、ハロゲン化剤に対して不活性なものであれば限定されな。具体的には例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、二硫化炭素、 N,N,-ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン等を挙げることができる。溶媒の使用量も限定されないが、通常はN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) の1重量に対して約 0.2〜100 容を、好ましくは約 0.5〜50容を、さらに好ましくは約 1〜20容を用いる。
【0050】またハロゲン化剤の使用量も限定されないが、通常はN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) の1当量に対して約 1〜50当量を、好ましくは約 1〜20当量を、さらに好ましくは約 1〜10当量を使用する。
【0051】本反応はN-オキシピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(III) を必要に応じて溶媒に溶解し、ハロゲン化剤を加えて反応させる。その際の反応温度は限定されないが、通常は室温〜溶媒またはハロゲン化剤の還流温度において実施することができる。反応時間は温度によって異なるが、通常は30分〜24時間程度で終了する。得られたハロピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(VIII) の粗生成物は、カラムクロマトグラフィー等の定法によりさらに精製することができる。
【0052】本工程は、ハロピリジル-N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(VIII) を脱保護して、ハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)を製造する工程であり、有機合成における一般的な定法に従って酸加水分解することにより実施することができる。その際に用いられる酸は限定されないが、通常は塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、リン酸などの無機酸、またはメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸などのスルホン酸を用いることができる。
【0053】上記のように下記一般式で表されるN-保護アザビシクロヘプタン誘導体(I)は、新規化合物であり、ハロピリジル-アザビシクロヘプタン誘導体(II)の製造にあたり中間体として有用である。
【0054】
【化15】


【0055】式中R1 はホルミル基、低級脂肪族アシル基、芳香族アシル基、ビニル基、低級アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アラルキル基またはトリ低級アルキルシリル基を、R4 は水素原子、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基または下式で表される基を
【0056】
【化16】


【0057】(式中R2 はハロゲン原子または水素原子を意味する。)を意味する。これらの基の具体例は前記と同様である。また nは0または1を、式
【0058】
【化17】


【0059】で表される結合は、単結合または二重結合を意味する。ただし、R4 が水素原子でありかつR1 がメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセチル基、若しくはホルミル基である場合、R4 が2−クロロ−5−ピリジル基でありかつR1がアセチル基若しくはメトキシカルボニル基である場合を除く。
【0060】N-保護アザビシクロヘプタン誘導体(I)の具体的な一例としては、下記の化合物を挙げることができるが、本発明におけるスルホニル-N-保護アザビシクロヘプタジエン誘導体(I)はこれらに限定されない。(1) エクソ-2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(2) エンド-2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(2) 7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン(3) エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4) エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(5) エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン
【0061】次に、本発明の実施にあたり必要な出発物質を製造するための製造例を、実施例に先立って掲げる。
【0062】製造例1 2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエンの合成
【0063】
【化18】


【0064】前記オーガノメタリックス・イン・ケミカル・シンセシス(Organometal.Chem.Syn.),1,145,1970. に記載された方法により合成したトシルアセチレン 41.0g(0.226mol)と、1-エトキシカルボニルピロール 1.8g(0.113mol) を、窒素気流下100℃で4時間加熱した。冷却後、反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n-ヘキサン系)で精製して無色油状の標題化合物 27gを得た。(収率;75%)
【0065】1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 1.0-1.2(3H,m)、2.4(3H,s)、3.7-4.0(1H,m)、5.2(1H,s)、5.4(1H,s)、6.9(1H,s)、7.0(1H,s)、7.4(2H,s)、7.6(1H,s)、7.8(2H,s)
【0066】続いて本発明を具体的に説明するために、以下に実施例を掲げるが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】実施例1 2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテンの合成
【0067】
【化19】


【0068】2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-1,4-ヘプタジエン 34.0g(0.106mol)をエタノール(300ml)に溶解し、氷冷下、水素化ホウ素ナトリウム4.0g(0.105mol) を加えて1時間反応させた。反応液にアセトンを加えた後、水中に注ぎ、エチルエーテルで抽出し標題化合物の粗生成物を得た(エクソ体:エンド体=約4:3の混合物)。粗生成物は精製せずとも次反応に十分な純度を有する。
【0069】1H-NMR(400MHz,CDCl3); エクソ体 δ(ppm)1.1-1.3(3H,br-t)、1.6(1H,br-S)、2.4(3H,br-s)、3.0(1H,br-s)、4.1(2H,br-q)、4.8(1H,br-s)、5.1(1H,br-s)、6.3(1H,br-s)、6.4(1H,br-s)、7.4(2H,d,J=8.2Hz)、7.8(2H,br-d) 。エンド体 δ(ppm) 1.2(3H,t,J=7.1Hz)、1.7(1H,m)、2.2(1H,m)、2.4(3H,s)、3.7(1H,m)、4.0(2H,q,J=7.1Hz)、4.8(2H,m)、6.4(1H,m)、6.5(1H,m)、7.4(2H,d,J=8.2Hz)、7.8(2H,d,J=8.2Hz)
【0070】実施例2 7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテンの合成
【0071】
【化20】


【0072】2-トシル-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン 10.0g(0.0311mol) とリン酸水素ナトリウム(Na2HPO4) 17.6g(0.124mol) をメタノール(100ml)に溶解し、0℃に冷却する。攪拌下ここに 5%-ナトリウムアマルガム200.0g(0.894mol) を加え、そのまま3時間反応させた。反応液を水中に注ぎ、エチルエーテルで抽出後、水洗、乾燥して標題化合物の粗生成物を得た。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n-ヘキサン系)で精製して標題化合物 2.0g を得た。(収率;38%)
【0073】1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 1.1(2H,d,J=8.8Hz)、1.2(3H,t,J=7.1Hz)、1.8(2H,d,J=8.8Hz)、4.0(2H,q,J=7.1Hz)、4.7(2H,s)、6.2(2H,s)
【0074】実施例3 エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成
【0075】
【化21】


【0076】7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]-4-ヘプテン 4.0g(23.8mmol) 、3-臭化ピリジン 3.76g(23.8mmol)、テトラn-ブチルアンモニウムクロリド6.62g(23.8mmol)、ギ酸カリウム 6.0g(71.4mmol) と酢酸第二パラジウム280mg(1.25mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(50ml) に溶解し、60℃で24時間反応させた。反応液を冷却後、水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。乾燥後、濃縮して標題化合物の粗生成物を得た。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル系)で精製して標題化合物 3.1g を得た。(収率; 53%)
【0077】1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 1.2(3H,m)、1.6(2H,m)、1.8(3H,m)、2.0(1H,m)、2.9(1H,m)、4.1(2H,q,J=7.3Hz)、4.3(1H,s)、4.5(1H,s)、7.2(1H,m)、7.6(1H,d,J=7.9Hz)、8.5(2H,m)
【0078】実施例4 エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成
【0079】
【化22】


【0080】エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン 5.82g(23.6mmol)を塩化メチレン(50ml) に溶解し、氷冷下、80%-m-クロロ過安息香酸7.64g(35.4mmol)を加えて、そのまま24時間反応させた。反応液を室温に戻し、そのままシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:エタノール系)で精製して標題化合物 4.8g を得た。(収率;77%)
【0081】1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 1.2(3H,t,J=7.1Hz)、1.6(2H,m)、1.8(3H,m)、2.0(1H,m)、2.8(1H,m)、4.1(2H,m)、4.3(1H,s)、4.5(1H,s)、7.2(1H,m)、7.4(1H,m)、8.2(1H,d,J=7.9Hz)、8.3(1H,s)
【0082】実施例5 エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成
【0083】
【化23】


【0084】エクソ-2-(3’-N-オキシピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン 4.8g(18.3mmol)をオキシ塩化リン 10.0ml(108mmol)に溶解し、80℃に加熱して1時間反応させた。反応液を冷却後、氷水中に注ぎ中和した。pHを弱塩基性に調整し、酢酸エチルで抽出した。乾燥後、濃縮して標題化合物の粗生成物を得た。濃縮残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:n-ヘキサン系)で精製して標題化合物 1.5g を得た。(収率;29%)
【0085】1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm) 1.2(3H,t,J=7.2Hz)、1.6(3H,m)、1.8(3H,m)、2.0(1H,m)、2.9(1H,q,J=5.2Hz)、4.1(1H,q,J=7.2Hz)、4.2(1H,s)、4.4(1H,s)、7.2(1H,s)、7.6(1H,d,J=8.4Hz)、8.2(1H,s)
【0086】実施例6 エクソ-2-(2’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンおよびエクソ-2-(4’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタンの合成
【0087】
【化24】


【0088】
【化25】


【0089】実施例5の粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する際に、副生成物として標記の2化合物を得た。
【0090】(1) エクソ-2-(2’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(収率;28%)1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm)1.2(3H,br-t)、1.6-2.2(6H,m)、3.3(1H,br-s)、4.1(2H,br-q)、4.4(1H,br-s)、7.2(1H,dd,J=7.9,4.8Hz)、7.8(1H,br-s)、8.2(1H,dd,J=4.8, 1.8Hz)MS; m/z 280(MH+)
【0091】(2) エクソ-2-(4’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン(収率;10%)1H-NMR(400MHz,CDCl3); δ(ppm)1.2(3H,t,J=7.2Hz)、1.6-2.0(5H,m)、2.1(1H,dd,J=12.2, 9.7Hz)、3.3(1H,dd,J=9.7,4.8Hz)、4.1(2H,q,J=7.2Hz)、4.4-4.5(2H,m)、7.3(1H,d,J=5.4Hz)、8.4(1H,d,J=5.4Hz)、8.6(1H,br-s)MS; m/z 280(M+H+)
【0092】実施例7 エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン・2塩酸塩の合成
【0093】
【化26】


【0094】エクソ-2-(6’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン820mg(2.91mmol)を 5N-塩酸(5ml)に加え、24時間加熱還流した。反応液を冷却後、減圧濃縮して標題化合物 780mgを得た。(収率;95%)
【0095】1H-NMR(400MHz,D2O); δ(ppm) 1.7-2.1(5H,m)、2.3(1H,dd,J=13.6, 9.6Hz)、3.3(1H,dd,J=9.6, 6.0Hz)、4.2(1H,t,J=4.4Hz)、4.4(1H,d,J=4.4Hz)、7.3(1H,d,J=8.4Hz)、7.7(1H,dd,J=8.4, 2.8Hz)、8.2(1H,d,J=2.8Hz)
【0096】実施例8 エクソ-2-(2’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン・2塩酸塩の合成
【0097】
【化27】


【0098】実施例7と同様にして、エクソ-2-(2’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン 82mg(0.29mmol) から標題化合物 78mg を得た。(収率; 95%)
【0099】1H-NMR(400MHz,D2O); δ(ppm) 1.7-2.0(5H,m)、2.4(1H,dd,J=13.6, 9.2Hz)、3.5(1H,dd,J=9.2, 6.0Hz)、4.2(1H,t,J=4.4Hz)、4.4(1H,d,J=4.4Hz)、7.3(1H,dd,J=8.0,4.8Hz)、7.8(1H,dd,J=8.0Hz, 1.6Hz)、8.1(1H,dd,J=4.8, 1.6Hz)MS;m/z 208(M+H+)
【0100】実施例9 エクソ-2-(4’-クロロ-3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン・2塩酸塩の合成
【0101】
【化28】


【0102】実施例7と同様にして、エクソ-2-(4’-クロロ-3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン 82mg(0.29mmol) から標題化合物 76mg を得た。(収率; 93%)
【0103】1H-NMR(400MHz,D2O); δ(ppm) 1.5-1.8(5H,m)、2.0(1H,dd,J=13.5, 9.0Hz)、3.0(1H,s)、3.2(1H,m)、3.8(1H,m)、3.9(1H,m)、7.3(1H,m)、8.3(1H,m)、8.8(1H,s)MS; m/z 208(M+H+)
【0104】実施例10 エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン・2塩酸塩の合成
【0105】
【化29】


【0106】実施例7と同様にして、エクソ-2-(3’-ピリジル)-7-エトキシカルボニルアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン96mg(0.39mmol) から標題化合物 78mg を得た。(収率; 81%)
【0107】1H-NMR(400MHz,D2O); δ(ppm) 1.7-2.1(5H,m)、2.4(1H,dd,J=14.0, 10.0Hz)、3.6(1H,dd,J=10.0, 6.0Hz)、4.3(1H,t,J=4.4Hz)、4.6(1H,d,J=4.4Hz)、7.9(1H,dd,J=8.4,5.6Hz)、8.4(1H,d,J=8.4Hz)、8.6(1H,d,J=5.6)、8.7(1H,s)MS; m/z174(M+H+)(57)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式で表されるN−保護アザビシクロヘプタン誘導体(I)。
【化1】


[式中R1 はホルミル基、低級脂肪族アシル基、芳香族アシル基、ビニル基、低級アルコキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、アラルキル基またはトリ低級アルキルシリル基を、R4 は水素原子、低級アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基または下式で表される基を
【化2】


(式中R2 はハロゲン原子または水素原子を意味する。)、 nは0または1を、式
【化3】


で表される結合は、単結合または二重結合を意味する。ただし、R4 が水素原子でありかつR1 がメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、アセチル基、若しくはホルミル基である場合、R4 が2−クロロ−5−ピリジル基でありかつR1がアセチル基若しくはメトキシカルボニル基である場合を除く。]

【公開番号】特開2002−326991(P2002−326991A)
【公開日】平成14年11月15日(2002.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−126874(P2002−126874)
【分割の表示】特願平5−178500の分割
【出願日】平成5年6月28日(1993.6.28)
【出願人】(000000217)エーザイ株式会社 (102)
【Fターム(参考)】