説明

ハンガーフック

【課題】 フックの使用時において、制動手段の歯車が露出することがないハンガーフックを提供する。
【解決手段】 回転ダンパ35のダンパ回転軸にギア36を形成し、ギア36に噛み合うラック32をフックケーシング4に形成する。ギア36とラック32との噛み合いによってフック3の旋回移動を回転ダンパ35に伝達可能とし、フック3の旋回移動を抑制している。フック3の基端部5であって、壁面39の間に回転ダンパ35を形成し、この回転ダンパ35のダンパ回転軸に沿ってギア36を形成している。壁面39の外面12からケーシング本体15の内部に向かう起立寸法tは、少なくともギア36が取り付けられる位置においては、ギア36の直径よりも大きくなるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建造物の壁等に埋め込まれ、使用時にフックを壁等から突出させるハンガーフックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンガーフックとして、例えば特開2005−245554号公報(特許文献1)が公知である。この文献によれば、フックとフックを収納するケーシングとを備え、フックがケーシングから旋回して開くように出てくることによって、フックに衣服等をかけることができるようにしている。フックには、ケーシングへの戻り方向、すなわちケーシングに収納される方向に付勢するスプリングを取り付けている。フックの回転軸には、セクタ歯車が形成され、ケーシングにはセクタ歯車にかみ合う制動歯車を取り付けている。したがって、ケーシングに戻ろうとするフックを緩動作に制御することができる。このようにケーシングに戻ろうとするフックを緩動作に制御することによって、衣服をかけようとしたときに、すばやくフックが戻ってしまい、衣服がかけられないという不都合を解消することができる。
【特許文献1】特開2005−245554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フックの回転軸にはセクタ歯車が形成されているので、フックがケーシングから大きく旋回した場合には、セクタ歯車がケーシングから露出される可能性があった。歯車がケーシングから露出されることによって、フックにかけた衣服が食い込まれたりするのではないかという危惧を利用者に与える可能性がある。
【0004】
この発明では、フックの使用時において、制動手段の歯車が露出することがないハンガーフックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、フックケーシングと、前記フックケーシングに収納されるとともに前記フックケーシングから旋回可能に形成されたフックと、前記フックを収納方向に付勢する付勢手段と、前記フックの旋回動作を抑制する制動手段とを含むハンガーフックの改良に関わる。
【0006】
この発明は前記ハンガーフックにおいて、前記フックは、フック回転軸が形成される基端部と、前記基端部から延びるアーム部と、前記アーム部の先端に位置する先端部とを含み、前記制動手段は、前記フック回転軸に形成された回転ダンパを含み、前記回転ダンパのダンパ回転軸にギアが形成され、前記フックケーシングには前記ギアに噛み合うラックが形成され、前記ギアと前記ラックとの噛み合いによって前記フックの旋回移動を前記回転ダンパに伝達可能としたことを特徴とする。
【0007】
好ましい実施態様のひとつとして、前記フックは、前記フックケーシングの開口を覆う外面と、前記外面から前記フックケーシング内部に向かって起立する一対の壁面とを含み、前記回転ダンパは、前記壁面の起立寸法よりも小さい。
【0008】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記回転ダンパは、ダンパケーシングと、前記ダンパケーシングの開口を覆うキャップと、前記ダンパケーシング内を回転可能な回転体と、前記ダンパケーシング内に充填された粘性流体とを含み、前記ダンパ回転軸は、前記回転体と一体回転可能であってその一端を前記ダンパケーシング外に位置させ、前記ギアは、前記ダンパ回転軸の一端に形成され前記回転体と一体回転可能である。
【0009】
好ましい他の実施態様のひとつとして、前記フックケーシングは、ケーシング本体と、ケーシング本体の底面に接触するカバーとを含み、前記カバーは前記ケーシング本体内に向かって略直角に突出する一対の突出部を含み、前記ラックは、前記突出部の間に形成され、前記ケーシング本体内に向かって突出する。
【発明の効果】
【0010】
回転ダンパのダンパ回転軸にギアを形成し、ギアに噛み合うラックをフックケーシングに形成することとした。ギアはフック回転軸と同軸上に形成されるので、フックが大きく旋回したとしても、ギアがフックケーシング外に露出されることがない。したがって、ギアに衣服等が食い込まれるという懸念を、使用者に抱かせることがない。
【0011】
回転ダンパは、フックの壁面の起立寸法よりも小さくすることとした。すなわち、回転ダンパは壁面で覆われて、その外部に露出されることがない。したがって、より一層ギアに衣類が食い込まれるという懸念を排除することができる。
【0012】
回転ダンパは、ダンパケーシングと、ダンパケーシングの開口を覆うキャップと、ダンパケーシング内を回転可能な回転体と、ダンパケーシング内に充填された粘性流体とを含むこととした。ダンパ回転軸は、回転体と一体回転可能であってその一端をダンパケーシング外に位置させ、ダンパ回転軸の一端に回転体と一体回転可能なギアを形成することとした。したがって、回転体、ダンパ回転軸およびギアが、ダンパケーシングに相対的に回転可能となり、回転体がダンパケーシングに対して回転することによって、制動力を得ることができる。
【0013】
フックケーシングは、ケーシング本体と、ケーシング本体の底面に接触するカバーとを含み、カバーにラックを形成することとした。したがって、ケーシング本体に直接ラックを形成する場合に比べて、その形成が容易となり製造コストの低減を図ることができる。また、突出部をケーシング本体に形成した挿入ノッチに組み付けることによって、これらの組立が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ハンガーフックの一実施形態を図1〜7を用いて説明する。ハンガーフック1は縦方向Yとこれに直交する横方向Xとを有している。
図1はハンガーフック1が壁2に取り付けられたときの斜視図であり、フック3がフックケーシング4に収納された状態を実線で示し、仮想線でフック3が縦方向Yの上方から下方に向かって旋回した状態を示している。図2はハンガーフック2の組立分解図、図3はハンガーフック1の正面図、図4はハンガーフックの背面図、図5は図4のV−V線断面図、図6はフック3が旋回したときの説明図、図7は回転ダンパ35の断面図である。
【0015】
図1〜6に示したように、ハンガーフック1は、衣服等をかけることが可能であり縦方向Yに延びるフック3と、フック3が収納されるフックケーシング4とを含み、フックケーシング4からフック3を突出させて使用する。フック3は、その縦方向Yの一端をフックケーシング4に旋回可能に取り付けられた基端部5と、基端部5から縦方向Yに延びるアーム部6と、アーム部6の先端に位置しフックケーシング4側に向かって凸部7aを形成する先端部7とを含む。
【0016】
フックケーシング4は、ケーシング本体15とカバー16とを含む。ケーシング本体15は、底面18と、底面18から起立する外周壁19と、外周壁19を介して底面18と対向する開口20とを含み、開口20には外周壁19から略垂直に外側へと延びるフランジ21が形成されている。フックケーシング4は、建造物の壁等に取り付けられるが、カバー16,底面18および外周壁19を建造物に埋め込み、開口20が建造物の壁に位置するように、フランジ21を建造物の壁等に当接させる。
【0017】
ケーシング本体15の外周壁19には、フック回転軸8を支持する一対の軸受け9が形成され、軸受け9にフック3を挿入可能にするために、その周囲には挿入ノッチ22が底面18および外周壁19の一部に形成されている。これら挿入ノッチ22を塞ぐように、ケーシング本体15の底面18には、カバー16が取り付けられる。カバー16には、底面18に接合可能とするためのねじ孔24を形成し、ねじ孔24を介してねじ26をケーシング本体15にねじ込み、ケーシング本体15とカバー16とを結合する。さらに、カバー16には、図示しない取り付けブラケットを固定するための取り付け孔27が形成され、このブラケットを介してケーシング本体15およびカバー16を含むフックケーシング4が建造物に取り付けられる。
【0018】
カバー16は、ケーシング本体15の底面18に接触する接触面30と、接触面30からケーシング本体15内に向かって略直角に突出し挿入孔22を塞ぐ一対の突出部31と、これら突出部31の横方向Xの間に位置するラック32とを含む。ラック32は、接触面30からケーシング本体15内に向かって略直角に突出して形成されている。
【0019】
ラック32は、回転ダンパ35に形成されたギア36に噛み合う。
図7に示したように、回転ダンパ35は、ダンパケーシング46と、ダンパケーシング46の開口を覆うキャップ47と、ダンパケーシング46の内部を回転する回転体48と、回転体48に一体的なダンパ回転軸49とを含む。ダンパ回転軸49は、回転体48と一体的に回転可能であって、その一端をダンパケーシング46の外部に延出させている。ギア36はこのダンパ回転軸49の延出した一端に固定され、ダンパ回転軸49、ギア36および回転体48が、一体となってダンパケーシング46に対して相対的に回転可能である。ダンパケーシング46には粘性流体50が充填され、回転体48がダンパケーシング46と相対的に回転すると、粘性流体50によって回転体48の回転に対して粘性抵抗を示す。
ダンパケーシング46には、ねじ孔41を形成し、ねじ42によって回転ダンパ35がフック3に対して固定される。
【0020】
フック3は、基端部5に位置するフック回転軸8をフックケーシング4に形成した軸受け9に挿入することにより、フックケーシング4に対して旋回可能に取り付けられる。フック3はフックケーシング4側に位置する内面11と、その反対の外面12とを含み、フック3の基端部5であってその外面12には、外面12から突出する押圧部13を形成している。この押圧部13を内面11側に押し付けることによって、フック3を縦方向Yの上方から下方に向かって旋回させ、フックケーシング4の外側へ突出させることができる。フック3がフックケーシング4から旋回すると、先端部7の凸部7aが露出し、アーム部6に衣服等をかけたときに、凸部7aによって衣服等がアーム部6から滑り落ちるのを防止することができる。
【0021】
フック3は、外面12から略垂直にケーシング本体15の内部に起立する一対の壁面39を含む。壁面39は、フック3の収納時にはケーシング本体15の外周壁19に対して縦方向Yに沿って延びる。これら壁面39の間であってその一方に、ねじ42によって回転ダンパ35が取り付けられる。このときフック回転軸8と回転ダンパ35のダンパ回転軸49とを、同一軸線上に位置させている。
【0022】
上記のようなフック3をフックケーシング4に取り付けたとき、フックケーシング4のラック32の歯先33がギア36の歯溝37に位置し、ラック32の歯溝34がギア36の歯先38に位置して、それらが噛み合う位置関係にしている。したがってフック3が旋回したときには、フック3に固定されたダンパケーシング46がこれに付随して一体的に回転するが、ギア36がラック32と噛み合っているのでギア36の回転は規制され、ギア36とダンパケーシング46とが相対的に回転する。回転体48は、ダンパ回転軸49を介してギア36と一体的に回転するので、ダンパ回転軸49がダンパケーシング46と相対的に回転し、粘性抵抗を示す。
【0023】
フック回転軸8には、フック3をケーシング本体15の内部側に付勢する付勢手段としてスプリング43が取り付けられている。スプリング43はシャフト40によって支持されている。スプリング43はその一方をフックケーシング4に当接させ、他方をフック3の内側に当接させている。また、ケーシング本体15の底面18であってその内側には、フック3の衝突を干渉するクッションゴム44を取り付けている。
【0024】
上記のようなハンガーフック1を使用したときの作用を説明する。
図6に示したように、上記のようなハンガーフック1において、これを使用するときには、フック3の押圧部13を指で押し付ける。フック3はフック回転軸8を中心に縦方向Yの上方から下方へと旋回し、アーム部6および先端部7がケーシング本体15の内部からその外部へと突出する。押圧部13を指で押し付けることによって、押圧部13がケーシング本体15の内部に向かって移動するので、押圧部13に当接されたスプリング43がたわむ。フック3はスプリング43によってケーシング本体15の内側方向に旋回するように付勢されている。
【0025】
押圧部13を押し付けるのをやめたり、フック3に引っかけた衣類を外したりすれば、スプリング43の付勢によって、アーム部6および先端部7がケーシング本体15の内部へと旋回する。すなわち、フック3は再びフックケーシング4に収納されるように移動して、図5に示した状態に戻る。
【0026】
フック3がスプリング43の付勢によって、フックケーシング4に収納されるように移動すると、フック3に固定された回転ダンパ35のダンパケーシング46がフック3と一体的に回転する。したがってダンパケーシング46と回転体48とが相対的に回転して、回転動作が抑制される。すなわち、ダンパケーシング46が固定されたフック3の旋回動作が抑制され、フック3はスプリング43の付勢に抗して、旋回動作を緩めながらフックケーシング4内に戻る。
このように、フック3がケーシング本体15の内部に戻るときには、そのスピードがゆっくりとなるので、衣類をかける前にフック3がケーシング本体15の内部に戻ってしまうという煩わしさを回避することができる。また、フック3にかけた衣類を外したときに、フック3がケーシング本体15の内部に勢いよく戻ってしまい、衣類等がフック3とケーシング本体15との間に引っかかってしまったりするのを防止することができる。
【0027】
フック3の基端部5であって、壁面39の間に回転ダンパ35を形成し、この回転ダンパ35のダンパ回転軸に沿ってギア36を形成している。図6に示したように、壁面39の外面12からケーシング本体15の内部に向かう起立寸法tは、少なくともギア36が取り付けられる位置においては、ギア36の直径よりも大きくなるようにしている。したがって、フック3の内部からギア36がはみ出すことがない。すなわち、ギア36がフック3の壁面39に覆われるので、フック3が旋回したときでも、ギア36がフック3の外部に露出されることはない。ギア36が露出されないので、フック3が旋回したときに、衣類がギアに巻き込まれるのではないかという懸念を、使用者に抱かせることがない。したがって、使用者は安心してフックを利用することができる。
【0028】
この実施形態では、ギア36が完全に壁面39で覆われるようにしているが、その一部が壁面39からはみ出してもよく、使用者に不安を抱かせない程度のものであればよい。この実施形態では、フック3が旋回してもギア36は回転することがないので、ギア36が壁面39からはみ出していたとしても、ギア36に衣服が巻き込まれるという事態は生じないからである。
【0029】
ラック32は、カバー16に形成された突出部分に形成し、その後、ケーシング本体15にカバー16を取り付けるようにしているので、ケーシング本体15内に直接ラック32を形成する場合に比べて、その形成が容易であり、製造コストの低減を図ることができる。
カバー16には突出部31を形成し、この突出部31をケーシング本体15の挿入ノッチ22に挿入するだけで、フックケーシング4を形成することができるだけでなく、カバー16とケーシング本体15との位置合わせを容易に行うことができる。
【0030】
この実施形態において、付勢手段としてスプリング43を用いているが、このタイプのスプリングに限ったものではなく、また、必ずしもスプリングに限定されるものではなく、他の付勢手段を用いてもよい。すなわち、付勢手段としてはフック3がケーシング内に戻る方向に付勢できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ハンガーフックの使用状態の説明図
【図2】ハンガーフックの組立分解図
【図3】ハンガーフックの正面図
【図4】ハンガーフックの背面図
【図5】図4のV−V線断面図
【図6】図5の使用状態の説明図
【図7】回転ダンパの断面図
【符号の説明】
【0032】
1 ハンガーフック
4 フックケーシング
5 基端部
6 アーム部
7 先端部
8 フック回転軸
12 外面
15 ケーシング本体
16 カバー
32 ラック
35 回転ダンパ(制動手段)
36 ギア
39 壁面
40 シャフト
43 スプリング(付勢手段)
46 ダンパケーシング
47 キャップ
48 回転体
49 ダンパ回転軸
50 粘性流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フックケーシングと、前記フックケーシングに収納されるとともに前記フックケーシングから旋回可能に形成されたフックと、前記フックを収納方向に付勢する付勢手段と、前記フックの旋回動作を抑制する制動手段とを含むハンガーフックにおいて、
前記フックは、フック回転軸が形成される基端部と、前記基端部から延びるアーム部と、前記アーム部の先端に位置する先端部とを含み、
前記制動手段は、前記フック回転軸に形成された回転ダンパを含み、
前記回転ダンパのダンパ回転軸にギアが形成され、前記フックケーシングには前記ギアに噛み合うラックが形成され、前記ギアと前記ラックとの噛み合いによって前記フックの旋回移動を前記回転ダンパに伝達可能としたことを特徴とする前記ハンガーフック。
【請求項2】
前記フックは、前記フックケーシングの開口を覆う外面と、前記外面から前記フックケーシング内部に向かって起立する一対の壁面とを含み、
前記回転ダンパは、前記壁面の起立寸法よりも小さい請求項1記載のハンガーフック。
【請求項3】
前記回転ダンパは、ダンパケーシングと、前記ダンパケーシングの開口を覆うキャップと、前記ダンパケーシング内を回転可能な回転体と、前記ダンパケーシング内に充填された粘性流体とを含み、
前記ダンパ回転軸は、前記回転体と一体回転可能であってその一端を前記ダンパケーシング外に位置させ、前記ギアは、前記ダンパ回転軸の一端に形成され前記回転体と一体回転可能である請求項1または2に記載のハンガーフック。
【請求項4】
前記フックケーシングは、ケーシング本体と、ケーシング本体の底面に接触するカバーとを含み、前記カバーは前記ケーシング本体内に向かって略直角に突出する一対の突出部を含み、
前記ラックは、前記突出部の間に形成され、前記ケーシング本体内に向かって突出する請求項1〜3のいずれかに記載のハンガーフック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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