説明

バイオマスバーナ及びボイラ装置

【課題】簡易な構造で木質系バイオマスを火炉に大量に供給可能なバイオマスバーナ及びボイラ装置を提供する。
【解決手段】火炉1の炉壁28に設けられ、バイオマスを噴出するノズル部31と、該ノズル部を支持するバーナ支持部29とを具備し、バイオマスは1次空気に排ガスが混合されたバイオマス用搬送媒体により前記ノズル部に搬送される。また、バイオマスは、前記ノズル部31に接線方向から流入させ、さらに、前記ノズル部の先端部にスワラーを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ火炉の壁面に設けられ、木質ペレットや木質チップ等の木質系バイオマス燃料を燃焼させるバイオマスバーナ及びボイラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ボイラの固形燃料として使用されているのは、主に石炭であるが、CO2 の削減対策として、再生可能で環境負荷の少ない木質系バイオマスを燃料とする等の燃料の多様化が検討されている。
【0003】
従来は、木質系バイオマスを燃料とする場合、ミルにて石炭と木質系バイオマスとを混合粉砕し、石炭と木質系バイオマスを混合させた粉砕物をバーナに送給し燃料としている。近年では木質系バイオマス燃料の混合比率を増大させることが要請されている。
【0004】
然し乍ら、混合粉砕の場合、混合比率を増大させるには限界があり、木質系バイオマスを大量に粉砕することができないことから、木質系バイオマスをバーナの燃料として充分に供給できない。更に、石炭と木質系バイオマスとでは燃焼特性が異なる為、木質系バイオマスの比率を増大させると燃焼が不安定となる虞れがあった。
【0005】
尚、特許文献1には、ローラミルによりバイオマスを単独で粉砕し、粉砕したバイオマスを別途ローラミルを用いて粉砕した微粉炭と混合させ、或は微粉炭とは別個のバーナにバイオマスを単独で供給し、燃焼させるバーナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−242999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は斯かる実情に鑑み、簡易な構造で木質系バイオマスを火炉に大量に供給可能なバイオマスバーナ及びボイラ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、火炉の炉壁に設けられ、バイオマスを噴出するノズル部と、該ノズル部を支持するバーナ支持部とを具備し、バイオマスは1次空気に排ガスが混合されたバイオマス用搬送媒体により前記ノズル部に搬送されるバイオマスバーナに係るものである。
【0009】
又本発明は、バイオマスは、前記ノズル部に接線方向から流入するバイオマスバーナに係り、又前記ノズル部の先端部にスワラーを設け、該スワラーによりバイオマスが拡散されるバイオマスバーナに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記バイオマスバーナと、微粉炭を燃焼させる微粉炭バーナとが少なくとも上下2段に設けられ、1次空気の一部を前記微粉炭バーナに微粉炭を送給する微粉炭用搬送媒体とすると共に、1次空気の他部を前記バイオマスバーナに供給する1次空気供給系と、前記火炉より排出される排ガスの一部を抽出し、前記1次空気の他部に混合させ、前記バイオマスバーナにバイオマスを送給するバイオマス用搬送媒体とする排ガス循環系とを具備するボイラ装置に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記微粉炭バーナが上段に設けられ、前記バイオマスバーナが下段に設けられるボイラ装置に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記バイオマスバーナ及び前記微粉炭バーナの燃焼比率を制御する制御装置を更に具備し、該制御装置は前記火炉の燃焼比率を維持しつつ、前記バイオマスバーナの燃焼比率の増加に応じて前記微粉炭バーナの燃焼比率を減少させるボイラ装置に係り、更に又前記炉壁に設けられ、前記火炉内に2次空気を供給可能なオーバーエアポートを更に具備するボイラ装置に係るものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、火炉の炉壁に設けられ、バイオマスを噴出するノズル部と、該ノズル部を支持するバーナ支持部とを具備し、バイオマスは1次空気に排ガスが混合されたバイオマス用搬送媒体により前記ノズル部に搬送されるので、バイオマスを燃焼させる為の燃焼用空気を供給する機構を必要とせず、構造の簡易化及び製作コストの低減を図ることができる。
【0014】
又本発明によれば、前記バイオマスバーナと、微粉炭を燃焼させる微粉炭バーナとが少なくとも上下2段に設けられ、1次空気の一部を前記微粉炭バーナに微粉炭を送給する微粉炭用搬送媒体とすると共に、1次空気の他部を前記バイオマスバーナに供給する1次空気供給系と、前記火炉より排出される排ガスの一部を抽出し、前記1次空気の他部に混合させ、前記バイオマスバーナにバイオマスを送給するバイオマス用搬送媒体とする排ガス循環系とを具備するので、前記バイオマス用搬送媒体の酸素濃度をバイオマスの発火を防止する為の酸素濃度とすることで、安全にバイオマスを搬送することができると共に、還元雰囲気で、バイオマス燃焼を行うことができ、火炉より排出される排ガスの低NOx化を図ることができるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るボイラ装置を示す概略構成図である。
【図2】該ボイラ装置に用いられるバイオマスバーナの一例を示す概略断面図である。
【図3】該バイオマスバーナの斜視図であり、(A)は後方から見たバイオマスバーナの斜視図を示し、(B)は前方から見たバイオマスバーナの斜視図を示している。
【図4】(A)は所定条件下に於ける木質系バイオマスと微粉炭の揮発過程を示すグラフであり、(B)は所定条件下に於ける木質系バイオマスと微粉炭の燃焼過程を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0017】
先ず、図1に於いて、本発明の実施例に係るボイラ装置10について説明する。
【0018】
図1中、1は火炉を示している。該火炉1の炉壁には、上下方向に複数段、例えば4段にバーナが配設されると共に、該バーナは水平方向(図1中の紙面に対して垂直な方向)に所定ピッチで配設されており、上2段がバイオマスバーナ2、下2段が微粉炭バーナ3となっている。又、前記火炉1の炉壁には、所定箇所に所定数、例えば上段の微粉炭バーナ3と下段のバイオマスバーナ2の間と、上段のバイオマスバーナ2の上方の2箇所に前記火炉1内に直接2次空気を供給するオーバーエアポート4が配設されている。
【0019】
本発明の実施例に係る前記ボイラ装置10に於いては、例えば1つの前記微粉炭バーナ3につき25cal.%の燃焼比率が確保できると共に、1つの前記バイオマスバーナ2につき12.5cal.%の燃焼比率を確保でき、上下2段の前記微粉炭バーナ3のみにより100cal.%の燃焼比率が確保できる様になっている。又、上下2段の前記バイオマスバーナ2により、50cal.%の燃焼比率が得られる様になっている。
【0020】
尚、前記バイオマスバーナ2及び前記微粉炭バーナ3は、上下3段以上配設されていてもよい。
【0021】
又、図1中、5は排ガスの余熱を熱源とした熱交換器、6はバイオマスミル、7は微粉炭ミル、8は1次空気20を送出する1次空気送風機、9は2次空気を送出する2次空気送風機、11は排ガスを排出する排ガス送風機、12は制御装置を示している。
【0022】
1次空気送風ダクト13は前記熱交換器5を介して前記バイオマスミル6及び前記微粉炭ミル7に接続され、前記熱交換器5で所定温度、例えば200°に加熱された1次空気20を前記バイオマスミル6及び前記微粉炭ミル7に導くものである。
【0023】
前記1次空気送風ダクト13の上流端には前記1次空気送風機8が設けられ、又途中でバイオマスミル側ダクト13aと微粉炭ミル側ダクト13bに分岐する。前記バイオマスミル側ダクト13aの下流端は前記バイオマスミル6に接続されると共に、前記バイオマスミル側ダクト13aの、該バイオマスミル側ダクト13aと前記微粉炭ミル側ダクト13bとの分岐点より下流に第1流量調整弁14が設けられる。前記微粉炭ミル側ダクト13bの下流端は前記微粉炭ミル7に接続されている。尚、前記1次空気送風機8、前記1次空気送風ダクト13とで1次空気供給系が構成される。
【0024】
前記バイオマスミル6は、木質チップ、木質ペレット等の木質系バイオマスを細粉体に粉砕し、1次空気20と排ガスとの混合流をバイオマス用搬送媒体とし、粉砕したバイオマスをバイオマス供給管15を介して前記バイオマスバーナ2に個別に送給する。又、前記バイオマス供給管15には第1カットダンパ17が設けられ、該第1カットダンパ17により前記バイオマス供給管15を個別に遮断、開放が可能となっており、前記バイオマスバーナ2に対して独立して木質系バイオマスの送給停止が行える様になっている。
【0025】
尚、図1中では、1つの前記バイオマスミル6により粉砕された木質系バイオマスが、2段の前記バイオマスバーナ2,2の両方に供給される様になっているが、該バイオマスバーナ2に対応してそれぞれ前記バイオマスミル6が設けられ、前記バイオマスバーナ2にはそれぞれ前記バイオマス供給管15、前記バイオマスミル6が個別に接続されているものとする。
【0026】
前記微粉炭ミル7は、塊状の石炭を微粉炭に粉砕し、1次空気20を微粉炭用搬送媒体として微粉炭供給管18を介して微粉炭混合流を前記微粉炭バーナ3に個別に送給する。又、前記微粉炭供給管18には第2カットダンパ19が設けられ、該第2カットダンパ19により前記微粉炭供給管18を個別に遮断、開放が可能となっており、前記微粉炭バーナ3に対して独立して微粉炭の送給停止が行える様になっている。
【0027】
尚、図1中では、1つの前記微粉炭ミル7により粉砕された微粉炭が、2段の前記微粉炭バーナ3,3の両方に供給される様になっているが、該微粉炭バーナ3に対応してそれぞれ前記微粉炭ミル7が設けられ、前記微粉炭バーナ3にはそれぞれ前記微粉炭供給管18、前記微粉炭ミル7が個別に接続されているものとする。
【0028】
2次空気の供給路である2次空気送風ダクト21は、上流端が前記熱交換器5を介して前記2次空気送風機9に接続され、下流端が各微粉炭バーナ3に接続されている。前記2次空気送風機9から送出された2次空気は、燃焼用空気として前記2次空気送風ダクト21を経て前記微粉炭バーナ3に供給される。
【0029】
尚、図示はしないが、前記2次空気送風機9と各オーバーエアポート4が配管を介して接続され、前記オーバーエアポート4より前記火炉1内に2次空気を供給できる様になっている。
【0030】
前記2次空気送風ダクト21の前記熱交換器5の下流側には、第2流量調整弁22が設けられており、該第2流量調整弁22は複数の前記微粉炭バーナ3に供給される2次空気の供給停止、更に流量調整を一括して行う。
【0031】
又、前記火炉1の煙道23には排ガス導管24の上流端が接続され、該排ガス導管24の下流端は前記バイオマスミル側ダクト13aの前記第1流量調整弁14よりも下流側に接続されている。前記排ガス導管24には第3流量調整弁25が設けられており、前記排ガス導管24と前記第3流量調整弁25とで排ガス循環系が構成される。前記排ガス導管24は前記熱交換器5により熱交換される前の高温且つ低酸素濃度の排ガスを前記煙道23から抽出し、前記バイオマスミル側ダクト13aを流通する1次空気20に混合できる様になっている。
【0032】
ここで、排ガスが混合される前の1次空気20の温度、即ち前記熱交換器5により加熱された1次空気20の温度は200℃程度であり、酸素濃度は21%程度である。又、抽出された排ガスの温度は150℃〜300℃程度であり、酸素濃度は3.5%程度である。
【0033】
前記制御装置12には、ボイラ装置10本体の総合的な制御を行う主制御装置(図示せず)からボイラ負荷状態に応じた燃焼状態を要求する燃焼制御指令が入力され、前記制御装置12は燃焼制御指令に基づき前記バイオマスミル6、前記微粉炭ミル7、前記第1流量調整弁14、前記第1カットダンパ17、前記第2カットダンパ19、前記第2流量調整弁22、前記第3流量調整弁25を所定のタイミングで駆動、開閉を制御し、前記バイオマスバーナ2及び前記微粉炭バーナ3の燃焼状態を制御する。
【0034】
尚、前記バイオマスミル側ダクト13aの前記排ガス導管24との合流地点の下流側には、温度検知器26及び酸素濃度検知器27が設けられている。前記温度検知器26は前記バイオマスミル側ダクト13aを流通するバイオマス用搬送媒体の温度を検出し、前記酸素濃度検知器27は前記バイオマス用搬送媒体の酸素濃度を検出し、各検出結果が前記制御装置12に送出される。該制御装置12は、前記温度検知器26及び前記酸素濃度検知器27からの信号に基づき、所定の温度、例えば200℃〜300℃程度となる様、又所定の酸素濃度、例えば酸素濃度が14%未満となる様、前記第1流量調整弁14及び前記第3流量調整弁25の開度を制御する様になっている。
【0035】
図2、図3(A)(B)は、本実施例に用いられる前記バイオマスバーナ2の一例を示している。以下、図2、図3(A)(B)を参照して前記バイオマスバーナ2の概略を説明する。
【0036】
前記火炉1の炉壁28の反火炉側には円筒又は略円筒形状のバーナ支持部29が取付けられ、該バーナ支持部29の内部を貫通する様に前記バイオマスバーナ2が前記バーナ支持部29と同心に設けられている。前記バイオマスバーナ2は先端に向って漸次縮径する円筒状のノズル部31を有し、該ノズル部31は中途部が前記バーナ支持部29に支持され、先端は前記火炉1内に開口している。又、前記ノズル部31の内部には前記火炉1側側端が開放されたバイオマス導通空間32が形成される。
【0037】
又、前記バイオマスバーナ2の基部(反火炉側の端部)には、前記バイオマス供給管15が連通し、先端部にはスワラー33が設けられている。前記バイオマス導通空間32には、前記バイオマス供給管15を介してバイオマス用搬送媒体とバイオマス細粉体との混合流であるバイオマス流16が接線方向から流入する様になっている。該バイオマス流16は前記バイオマス導通空間32内を旋回しながら先端側へと流動し、更に前記スワラー33により拡散され、前記火炉1内に噴出される。
【0038】
次に、本発明に係る実施例の作用について説明する。
【0039】
先ず、前記制御装置12により前記第2流量調整弁22が開放されると共に、前記微粉炭バーナ3が有する図示しない補助燃焼用バーナ、例えばオイルバーナ、或はガスバーナを用い、油燃焼、或はガス燃焼による予熱が行われ、前記火炉1内の温度を上昇させる。
【0040】
該火炉1内の温度が十分に上昇された後、前記制御装置12により補助燃焼用バーナによる燃焼を停止し、前記微粉炭ミル7を駆動させると共に、前記第2カットダンパ19を開放し、微粉炭用搬送媒体により前記微粉炭バーナ3へ微粉炭を供給する。その後、微粉炭と2次空気による微粉炭燃焼へと前記微粉炭バーナ3の燃焼状態が切替えられる。
【0041】
この時、前記火炉1内では全ての微粉炭バーナ3にて微粉炭燃焼が行われており、4つの微粉炭バーナ3により100cal.%の燃焼比率が確保されている。
【0042】
この状態に於いて、前記排ガス導管24を介して1次空気20と混合された排ガスとの混合流であるバイオマス用搬送媒体は、温度が150℃〜300℃、酸素濃度が14%未満となる様、前記制御装置12により前記第1流量調整弁14及び前記第3流量調整弁25の開度が調整され、前記バイオマスミル6へと供給される。
【0043】
又、前記制御装置12により前記バイオマスミル6が駆動されると共に前記第1カットダンパ17が開放され、該バイオマスミル6にてバイオマス細粉体へと粉砕された木質系バイオマスは、前記バイオマス用搬送媒体にて搬送され、前記バイオマス流16として前記バイオマスバーナ2に供給される。
【0044】
該バイオマスバーナ2に供給された前記バイオマス流16は、接線方向から前記バイオマス導通空間32に流入し、旋回しながら該バイオマス導通空間32内を先端に向って流動し、該バイオマス導通空間32の先端より前記スワラー33にて拡散され、前記火炉1内へと噴出される。
【0045】
この時、前記火炉1の下段では前記微粉炭バーナ3による微粉炭燃焼が行われており、高温となっている領域にバイオマス細粉体が噴出されることで、バイオマス細粉体は瞬時にガス化し、バイオマス用搬送媒体及び微粉炭燃焼で残った空気と反応して燃焼(バイオマス燃焼)する。
【0046】
又この時、前記バイオマス用搬送媒体は150℃〜300℃と高温である為、木質系バイオマスが水分を含んでいた場合であっても、前記バイオマスミル6での粉砕過程、或は前記バイオマス供給管15を流通し、前記バイオマスバーナ2に供給される途中の搬送過程に於いてバイオマス細粉体を十分に乾燥させることができ、安全に搬送することができる。
【0047】
尚、前記バイオマス用搬送媒体の温度は、前記バイオマスミル6にて粉砕される木質系バイオマスの水分含有量に応じて調整される様にしてもよい。
【0048】
又、前記バイオマス用搬送媒体は酸素濃度を14%未満の低酸素濃度としているので、前記バイオマスミル6内、或は前記バイオマス供給管15内にてバイオマス細粉体が自然発火するのが防止される。
【0049】
前記バイオマスバーナ2によるバイオマス燃焼が開始された後は、前記火炉1全体で100cal.%の燃焼比率を維持できる様、前記バイオマスバーナ2の燃焼比率に応じて前記微粉炭バーナ3の燃焼比率を漸次減少させ、最終的には前記微粉炭バーナ3の一部を消火する。
【0050】
尚、該微粉炭バーナ3を消火することで、微粉炭燃焼の為の2次空気の供給が停止されると、前記火炉1内にバイオマス燃焼を行う為の酸素が不足する場合がある。この場合には、前記オーバーエアポート4より別途2次空気を供給することで、バイオマス燃焼に必要な酸素量が確保される。又、前記微粉炭バーナ3からの2次空気供給を部分的に継続することで、バイオマス燃焼に必要な酸素を供給する様にしてもよい。
【0051】
図4(A)は、1400℃、0%酸素雰囲気下に於ける木質系バイオマス34と微粉炭35の揮発過程を示したグラフであり、木質系バイオマス34は300msec程度で略全てが気化(ガス化)しているのが分る。
【0052】
又、図4(B)は、1200℃、7.4%酸素雰囲気下に於ける木質系バイオマス34と微粉炭35の燃焼過程を示したグラフであり、微粉炭35が完全に燃尽きる迄に1300msec以上の時間を要しているのに対し、木質系バイオマス34が350msec程度で完全に燃尽きているのが分る。
【0053】
従って、十分に加熱された前記火炉1内に噴出されたバイオマス細粉体は、前記火炉1内で僅かな時間でガス化し、ガス化したバイオマス細粉体は低酸素雰囲気化、例えば7.4%酸素雰囲気下に於いても僅かな時間で完全に燃焼させることができる。
【0054】
即ち、前記微粉炭バーナ3で微粉炭燃焼が行われた後の、2次空気に残った酸素により還元雰囲気でバイオマス細粉体の燃焼を行うことができる為、前記バイオマスバーナ2にバイオマス流16と共に燃焼用の2次空気を供給する機構を設ける必要がなくなり、前記バイオマスバーナ2の簡易化及び製作コストの低減を図ることができる。
【0055】
又、該バイオマスバーナ2は、前記バイオマス流16のみを前記火炉1内に供給する構造となっているので、微粉炭35と木質系バイオマス34の燃焼特性の差異を考慮する必要がなく、木質系バイオマス34を前記火炉1内に大量に噴出させることができる。
【0056】
又、前記バイオマスバーナ2を前記火炉1の上段側に設け、前記微粉炭バーナ3を前記火炉1の下段側に設けたことで、微粉炭燃焼に必要な酸素量及び微粉炭35が完全に燃尽きる迄に必要な滞留時間を確保しつつ、バイオマス燃焼を行うことができる。
【0057】
更に、本実施例の前記ボイラ装置10では、100cal.%の燃焼比率を確保しつつ、漸次微粉炭燃焼からNOx排出量の少ないバイオマス燃焼へと切替える様にしているので、前記火炉1より排出される排ガスの低NOx化を図ることができる。
【0058】
尚、本実施例では、微粉炭燃焼により100cal.%の燃焼比率を確保した後に、微粉炭燃焼を漸次バイオマス燃焼に移行させる構成としているが、油燃焼、或はガス燃焼による予熱が完了した後に、微粉炭燃焼とバイオマス燃焼を並行して開始してもよいことは言う迄もない。
【0059】
又、本実施例では、十分な酸素量及び滞留時間を確保する為、前記バイオマスバーナ2を上段に配置し、前記微粉炭バーナ3を下段に配置しているが、木質系バイオマスの燃焼比率が大きく、微粉炭の燃焼比率が小さい等、木質系バイオマスの燃焼により多くの酸素量及び滞留時間を必要とする場合には、前記微粉炭バーナ3を上段に配置し、前記バイオマスバーナ2を下段に配置してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 火炉
2 バイオマスバーナ
3 微粉炭バーナ
4 オーバーエアポート
6 バイオマスミル
7 微粉炭ミル
10 ボイラ装置
12 制御装置
13 1次空気送風ダクト
14 第1流量調整弁
15 バイオマス供給管
20 1次空気
23 煙道
24 排ガス導管
25 第3流量調整弁
29 バーナ支持部
31 ノズル部
33 スワラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炉の炉壁に設けられ、バイオマスを噴出するノズル部と、該ノズル部を支持するバーナ支持部とを具備し、バイオマスは1次空気に排ガスが混合されたバイオマス用搬送媒体により前記ノズル部に搬送されることを特徴とするバイオマスバーナ。
【請求項2】
バイオマスは、前記ノズル部に接線方向から流入する請求項1のバイオマスバーナ。
【請求項3】
前記ノズル部の先端部にスワラーを設け、該スワラーによりバイオマスが拡散される請求項1又は請求項2のバイオマスバーナ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバイオマスバーナと、微粉炭を燃焼させる微粉炭バーナとが少なくとも上下2段に設けられ、1次空気の一部を前記微粉炭バーナに微粉炭を送給する微粉炭用搬送媒体とすると共に、1次空気の他部を前記バイオマスバーナに供給する1次空気供給系と、前記火炉より排出される排ガスの一部を抽出し、前記1次空気の他部に混合させ、前記バイオマスバーナにバイオマスを送給するバイオマス用搬送媒体とする排ガス循環系とを具備することを特徴とするボイラ装置。
【請求項5】
前記微粉炭バーナが上段に設けられ、前記バイオマスバーナが下段に設けられる請求項4のボイラ装置。
【請求項6】
前記バイオマスバーナ及び前記微粉炭バーナの燃焼比率を制御する制御装置を更に具備し、該制御装置は前記火炉の燃焼比率を維持しつつ、前記バイオマスバーナの燃焼比率の増加に応じて前記微粉炭バーナの燃焼比率を減少させる請求項4又は請求項5のボイラ装置。
【請求項7】
前記炉壁に設けられ、前記火炉内に2次空気を供給可能なオーバーエアポートを更に具備する請求項4〜請求項6のうちいずれかのボイラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−108717(P2013−108717A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256072(P2011−256072)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】