説明

バイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置

【課題】 バイオマスの燃焼ガスを熱交換することなく清浄な熱風ないしは温風として農産物の乾燥や温室の暖房等に直接利用することができるバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置を提供する。
【解決手段】 バイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置は、籾殻、細断した稲藁等の細片状のバイオマスを燃焼させるバイオマス燃焼炉1で構成される。バイオマス燃焼炉1から燃焼ガスを外部に排出する燃焼ガス排気路3に、バイオマスの燃焼にともなって発生する煙、異臭の原因である酢酸等の有機酸、エチレン等を酸化分解する触媒7を直接挿入し、バイオマス燃焼炉1で発生する燃焼ガスを消煙・消臭・浄化した熱・温風として農産物の乾燥や温室等の施設暖房等に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾殻、細断した稲藁等の細片状のバイオマスを燃焼したときの燃焼ガスを触媒により浄化し、農産物の乾燥や温室等の施設暖房等のためのクリーンな熱風や温風を得るバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低炭素社会を目指している昨今、農業分野においても石油その他の化石燃料消費量の削減は、経済的、環境的な配慮からも進めていく必要がある。農業分野における石油利用の主な用途は、温室暖房と穀物乾燥であり、熱エネルギとしての利用がほとんどであるが、その消費量の削減の最も簡単な方法は、籾殻等のバイオマスを燃焼することにより熱エネルギを獲得することである。この方法は1970年代の石油ショックの時に多くの開発が行われたが、その後の原油価格下落により沈静化した経緯がある。
昨今では世界的に地球温暖化ガスの削減に向けて動いており、国内でも省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)や温対法(地球温暖化対策の推進に関する法律)のような法整備も行われており、低炭素社会への取り組みは一過性ではなくなってきている。最近では各メーカーで籾殻等のバイオマス燃焼炉の再開発が始まっている。
しかしながら、再開発されているバイオマス燃焼炉は、燃焼ガス中の酸や煤等による臭いや異物の付着を避けるための熱交換器を取り付けた間接熱風式が多い。そのため機器が大型になり、製造コストも高くなるため、大型施設用途として限定されており、小型のバイオマス燃焼炉の開発が望まれている。
【0003】
実開昭58−85142号公報には、籾殻燃焼炉による暖房装置として、籾殻を燃焼炉で燃焼し、その燃焼ガスを燃焼炉に併設された熱交換機により熱交換して暖房のための温風を得るものが開示されている。
特開2011−80457号公報には、排ガス浄化装置として、自動車の排気ガスを触媒で浄化するとともに、触媒で分解されない物質を吸着剤で吸収する技術が開示されている。
特開2009−68817号公報には、木質系バイオマスの燃焼熱風発生装置で、木質燃焼ガスの浄化のために触媒を使用しているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−85142号公報
【特許文献2】特開2011−80457号公報
【特許文献3】特開2009−68817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されている籾殻燃焼炉による暖房装置のように、この種の温風暖房装置は、熱交換器を用いているため装置全体が大型になり、大型施設に用途が限られてしまう。また、熱交換器の熱交換効率も50%程度であるので熱効率も悪い。そのうえ、熱交換器の排気煙突は排気をそのまま大気中に出している場合が多いため、周囲の環境配慮にも欠けるという問題もあった。
一方、特許文献2に示すように、触媒を用いる環境対策技術として自動車の排気ガス浄化の技術は多数知られており、特許文献3にはその応用と考えられる木質バイオマス燃焼炉の排ガス対策のため触媒を利用した技術を示しているが、燃焼炉の燃焼ガスを浄化ガスとして直接暖房などの熱利用に応用した例はない。
【0006】
そこで本発明は、籾殻等のバイオマス燃焼炉の燃焼ガス排気路に触媒を設置し、熱交換をすることなく燃焼ガスを清浄な熱風ないしは温風として農産物の乾燥や温室の暖房等のために直接利用することができるバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置は、細片状のバイオマスを燃焼させるバイオマス燃焼炉において、前記バイオマス燃焼炉から燃焼ガスを外部に排出する燃焼ガス排気路に触媒を配置し、煙、異臭成分を酸化分解することを特徴とするものである。
前記触媒としては、白金またはパラジウムを坦持した酸化触媒であることが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置によれば、熱交換器を不要として籾殻等の細片状のバイオマス燃焼炉の小型化を図れると同時に、燃焼ガスを清浄な熱・温風として直接利用して高い熱効率が期待できる。また、燃焼ガスは浄化されているため環境にも優しい農産物の乾燥や温室等の施設暖房等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係るバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置の概要図である。
【図2】同上一部の拡大概要図である。
【図3】同上触媒の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面には本発明に係るバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置として籾殻を燃焼させるものを例示している。
1はバイオマス燃焼炉である。このバイオマス燃焼炉1は、垂直方向に延びた円筒状の燃焼室2を形成しており、燃焼室2の上端には燃焼ガス排気路3が形成されている。燃焼筒2の下部には燃焼用空気供給口4が設けられ、上部には籾殻供給口5が設けられている。燃焼室2内は前記燃焼用空気供給口4から炉内壁面に沿って遠心状に噴き込まれる空気流により旋回気流が生成され、燃焼室2内では籾殻供給口5から供給される籾殻を流動させながら燃焼させるので、燃焼にともなって発生する細かい灰や燻炭化した籾殻は燃焼室2の下方に向けて分離され、下部の燃殻回収室6に回収される。このため、燃焼室2の上端から燃焼ガス排気路3に排気される燃焼ガスは細かい灰や燻炭状の滓が含まれないか極く僅かとなる。
垂直方向に延びた円筒状の燃焼室2に対して燃焼用空気供給口4および籾殻供給口5はそれぞれ接線方向に接続された筒状体であるが、それらの接線方向の角度は10°〜40°程度が好適である。これにより燃焼用空気供給口4から燃焼室2に噴き込まれる空気流は燃焼室2内の壁面に沿った旋回流となり、籾殻供給口5から燃焼室2に供給される籾殻は旋回流にのって滞りなく旋回しながら燃焼する。
バイオマス燃焼炉1の燃焼ガス排気路3は燃焼室2の上端から上方に延びてさらに水平状に延びて外気に開口している。燃焼ガス排気路3の水平部分には触媒挿入部7が介在している。触媒挿入部7には排気方向を遮る複数段の触媒8が挿入されている。この触媒8は交換可能である。
触媒8は、バイオマスの燃焼にともなって発生する煙、異臭の原因である酢酸等の有機酸、エチレン等を酸化分解するものであって、白金またはパラジウムを坦持した酸化触媒である。この触媒8により、バイオマス燃焼炉1で発生する燃焼ガスが消煙・消臭・浄化され、燃焼ガス排気路3からは清浄な熱風または温風として送出され、農産物の乾燥や温室等の施設暖房等に利用されるものである。
9は温度調節のための温調ダンパ、10はファンである。
【0011】
バイオマス燃焼炉1における籾殻の燃焼は、シリカを含むバイオマスである。このため、産業衛生上の観点から、シリカを含む籾殻を高温燃焼させるとシリカの結晶化を招き、これが発がん性を有するため高温燃焼をさせない傾向がある。
しかし、500℃程度の低温燃焼時においてはシリカの結晶化は抑制されるものの、煙の発生、異臭の原因である酢酸等の有機酸の生成、エチレンの生成が起こるため、燃焼ガスの直接利用ができなかった。本発明において500℃程度の低温燃焼した場合でも、燃焼ガスを触媒により浄化することができ、浄化された燃焼ガスを直接農産物の乾燥や温室等の施設暖房等に利用することが可能になったのである。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明を利用した装置は小型化できるため、施設の規模にあわせた装置開発ができ、大小様々な施設への設置が可能となる。同時に個人穀物乾燥機にも適用可能であるため、農業分野におけるバイオマスの熱利用が促進され、脱石油依存型農業の推進に貢献できる。
【符号の説明】
【0013】
1 バイオマス燃焼炉
2 燃焼室
3 燃焼ガス排気路
4 燃焼用空気供給口
5 籾殻等バイオマス供給口
6 燃殻回収室
7 触媒挿入部
8 触媒
9 温調ダンパ
10 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細片状のバイオマスを燃焼させるバイオマス燃焼炉において、前記バイオマス燃焼炉から燃焼ガスを外部に排出する燃焼ガス排気路に触媒を配置し、煙、異臭成分を酸化分解することを特徴とするバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置。
【請求項2】
前記触媒は、白金またはパラジウムを坦持した酸化触媒であることを特徴とする請求項1記載のバイオマス燃焼による清浄熱・温風発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−88067(P2013−88067A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230224(P2011−230224)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(308020892)金子農機株式会社 (21)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】