説明

バックライトユニットおよびこれを備えた液晶表示装置

【課題】バックライトの光源から出射される熱量分布が光出射側の面内で均一になるようにし、表示画面内における表示性能を均一に保つことができるバックライト装置およびこれを備えた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】光源11と、光源11からの光を導光して面状光を出射させる導光部材15と、を有するバックライトユニット10であって、導光部材15の面状光を出射する出射面15bの光路前方に、透光性を有する熱拡散シート21を出射面15bの全体を覆って配置した。また、このバックライトユニット10と、バックライトユニット10の光出射側に配置され、偏光板が表裏面に配置された液晶セル20を有する液晶パネル20と、を有して液晶表示装置100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックライトユニットおよびこれを備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示装置の大画面化に伴い、表示品質の要求が益々厳しくなってきている。液晶表示装置では、各種光学シートの光学特性が温度によって変化するため、表示画面は環境温度による変化、あるいは経時的な変化を生じることがあり、その挙動が重要視されはじめている。液晶表示装置は、液晶セルを有する液晶パネルの背面に冷陰極線管や発光ダイオード(LED)等を光源とするバックライトユニットを配置して構成される。この液晶表示装置では、バックライトユニットの光源から発生した熱(部材間を伝う伝熱、および光源光に含まれる熱線(赤外線)成分を含む)が液晶パネルに伝わり、液晶パネルに局所的な温度分布を発生させる。すると液晶パネルの表示面には、帯状あるいは対角線状に、白色の表示斑や色むらが表示されるようになり、液晶表示装置の表示品質を低下させていた。この現象は、特に表示面の側方に光源を配置して光を表示面全体に導光するサイドエッジ型のバックライトユニットの場合に顕著に現れる。そこで、この温度変化を軽減させるために種々の改良が加えられてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、液晶セルの表裏面に設けられる偏光板に高熱伝導性シート(ポリマーフィルム)を設けた構成、および液晶セルと偏光板との間に配置される光学補償シートを高熱伝導性シートとした構成が記載されている。しかし、液晶セルに接して高熱伝導性のシートを配置しても、バックライトユニットの光源からの熱が十分に拡散されず、依然として液晶パネルが局所的に加熱されて光学特性に影響が発生することがあった。
【0004】
液晶パネルの一部が局所的に加熱される場合、加熱された偏光板、および光学補償シート等のレターデーション値等の光学特性が変化して、黒表示時の光漏れや色むら等が発生する。また、液晶セルについても、加熱された部分の熱膨張が加熱されない部分の熱膨張より大きくなり、液晶パネル全体として、局所的な内部応力がかかり、これによっても各種光学シートの光学特性に変化を生じさせることになった。
【0005】
また、液晶パネル側でなく、バックライトユニット側で熱の分散を図る技術として、例えば特許文献2には、バックライトユニットの光源の熱を熱拡散板により分散させる構成が記載されている。しかし、この熱拡散板はアルミニウム板や銅板からなり、バックライトユニットの底面側に敷設されたものである。そのため、液晶パネル側に対しては光源からの熱を分散させることができず、液晶パネルの各光学シートの光学特性変化を防止することができない。
【特許文献1】特開2002−40241号公報
【特許文献2】特開2005−37814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、バックライトの光源から出射される熱量分布が光出射側の面内で均一になるようにし、表示画面内における表示性能を均一に保つことができるバックライト装置およびこれを備えた液晶表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記構成からなる。
(1) 光源と、該光源からの光を導光して面状光を出射させる導光部材と、を有するバックライトユニットであって、
前記導光部材の面状光を出射する出射面の光路前方に、透光性を有する熱拡散シートを前記出射面の全体を覆って配置したバックライトユニット。
【0008】
このバックライトユニットによれば、熱拡散シートを導光部材の面状光の出射面全体に配置することで、光源からの熱を出射面全体に分散させることができ、局所的な温度変化が生じにくい構成にできる。つまり、バックライトの光源からの熱を熱拡散シートにより分散させることができ、面状光の照射対象に光源からの熱を局所的に与えることなく、出射面全面を均一な温度分布にすることができる。
【0009】
(2) (1)記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートが、樹脂シート中に高熱伝導性粒子を含むバックライトユニット。
【0010】
このバックライトユニットによれば、樹脂シート中に高熱伝導性粒子を分散させることで、簡単に均質な熱伝導率の熱拡散シートを得ることができる。
【0011】
(3) (1)記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートが、高熱伝導性粒子を含む熱伝導層を樹脂シートの少なくとも片面に有するバックライトユニット。
【0012】
このバックライトユニットによれば、樹脂シートの少なくとも片面に高熱伝導性粒子を含む熱伝導層を形成することで、予め用意した樹脂シートに後工程で熱伝導層を設けることができ、製造工程を分断して高効率化が図られる。また、熱伝導層の厚みを変更する等して熱拡散シートの熱伝導率を適宜調整することができる。
【0013】
(4) (2)または(3)記載のバックライトユニットであって、
前記高熱伝導性粒子が、窒化アルミニウム、インジウム化合物のいずれかを含むバックライトユニット。
【0014】
このバックライトユニットによれば、高熱伝導性粒子に窒化アルミニウム、インジウム化合物が使用されることで、高い熱伝導率を少量で得ることができる。
【0015】
(5) (1)記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートが、高熱伝導性薄膜を樹脂シートの少なくとも片面に有するバックライトユニット。
【0016】
このバックライトユニットによれば、高熱伝導性薄膜を形成することにより、膜厚の制御が容易となり、熱伝導率を高精度に設定することができる。
【0017】
(6) (2)〜(5)のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記樹脂シートが、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリエチレンテレフタレートのいずれかを主成分として含むバックライトユニット。
【0018】
このバックライトユニットによれば、工業的に安価に供給される高機能材料を用いて樹脂シートを構成できる。
【0019】
(7) (1)〜(6)のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートの熱伝導率が1乃至10W/(m・K)の範囲であるバックライトユニット。
【0020】
このバックライトユニットによれば、上記範囲の熱伝導率にすることで、光源からの熱の分散が良好となる。
【0021】
(8) (1)〜(7)のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記光源が、前記導光部材の少なくとも一つの側端部に配置されているバックライトユニット。
【0022】
このバックライトユニットによれば、光源が導光部材の側端部に配置されるサイドエッジ型の場合に、特に光源からの熱が局所的に強くなる傾向があるが、熱拡散シートを出射面全体に分散させることで、局所的な温度変化が生じにくくなる。
【0023】
(9) (8)記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートの外縁部が、バックライトユニットのリアケーシングに接触しているバックライトユニット。
【0024】
このバックライトユニットによれば、熱拡散シートの外縁部をリアケーシングに接触させることで、熱拡散シートに伝熱された熱をいち早く取り除くことができ、もって、均一な温度分布にすることができる。
【0025】
(10) (1)〜(9)のいずれか1項記載のバックライトユニットと、
前記バックライトユニットの光出射側に配置され、偏光板が表裏面に配置された液晶セルを有する液晶パネルと、
を備えた液晶表示装置。
【0026】
この液晶表示装置によれば、光源からの発熱が液晶パネルへ局所的に伝わることを阻止することで、液晶パネルの偏光板等の光学特性(例えばレターデーション値)が温度変化することを未然に防止できる。これにより、光源の点灯開始からの経過時間によって表示画面に表示むらが発生することなく、表示品質の向上が図られる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のバックライトユニットおよびこれを備えた液晶表示装置によれば、バックライトの光源から出射される熱量分布が光出射側の面内で均一になるようにし、表示画面内における表示性能を均一に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を説明するための液晶表示装置の要部断面構成図である。
同図に示すように、液晶表示装置100は、バックライトユニット10と、液晶パネル20とを有する。バックライトユニット10は、冷陰極線管やLED素子等の光源11と、光源11を覆うリフレクタ13と、光源11からの光が直接またはリフレクタ13により反射して側方の光入射面15aへ投入される導光部材15とを有するサイドエッジ型であり、さらに、導光部材15の光出射面15b側には、一方の表面に三角プリズムアレイを形成したプリズムシート17、光拡散シート19、熱拡散シート21がこの順で積層配置されている。また、導光部材15の光出射側15bとは反対側には、金属製のリアケーシング23が配置され、このリアケーシング23の内面は、鏡面加工または白色塗装されて高反射率のリフレクタとして機能する。なお、上記のプリズムシート17や光拡散シート21は、図示例の枚数に限らず、それぞれ任意の枚数を設置する等、適宜な変更が可能である。
【0029】
導光部材15は、透光性樹脂材料からなり、光出射面15bとは反対側の裏面15cにプリズムシート17の三角プリズムアレイの配列方向とは直交する方向に配列された三角プリズムアレイが形成されている。図示例では導光部材15の一側面に光源11が配置されているが、導光部材15の両側面に光源11を配置した構成であってもよい。
【0030】
導光部材15やプリズムシート17の三角プリズムアレイは、これに限らず、四角錐や断面台形等の適宜なプリズム形状が適用可能である。
【0031】
熱拡散シート21は、図2(a)に示すように、樹脂シート中に高熱伝導性粒子を含む熱拡散シート21A、図2(b)に示すように、高熱伝導性粒子を含む熱伝導層25を、透光性を有する樹脂シート27の片面(又は両面)に有する熱拡散シート21B、あるいは、図2(c)に示すように、高熱伝導性薄膜29を、透光性を有する樹脂シートの片面(又は両面)に有する熱拡散シート21Cが利用できる。また、各熱拡散シート21A,21B,21Cの熱伝導率は、1乃至10W/(m・K)の範囲になるように、高熱伝導性粒子の密度や高熱伝導性薄膜の厚みなどが調整されている。熱拡散シート21の熱伝導率は、偏光板の保護膜より高い熱伝導率であることが求められ、一般的に使用されている保護膜の熱伝導率が0.17〜0.33W/(m ・K)程度であることから、上記の熱伝導率の範囲とすることが望ましい。なお、熱伝導率は、UNITHERM2021(ANTER社製、円板熱流計法 ASTM E1530準拠)などの熱伝導率測定装置で計測できる。また、熱膨張率は、SL−2000M(品川白煉瓦社製)などの線熱膨張率測定装置で計測できる。
【0032】
この熱拡散シート21(21A,21B,21C)をバックライトユニット10の光出射側全面に配置することで、光源11からの発熱を分散させ、液晶パネル20の光源11に近い側が局所的に昇温することを防止できる。そして、図3に示すように、熱拡散シート21の外縁部21aが、バックライトユニット10のリアケーシング23に接触した状態で保持されることで、リアケーシング23に熱を伝達させている。つまり、リアケーシング23がヒートシンクとして機能して、熱の分散と放散がより迅速かつ確実となる。
【0033】
ここで、図2(a)、(b)に示す熱拡散シート21A,21Bについて説明する。
高熱伝導性粒子としては、樹脂シートの熱伝導性を向上させるために様々な高熱伝導性粒子が使用でき、例えば、窒化アルミニウム、インジウム化合物が好適に用いられる。その他にも、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化マグネシウム、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭素、ダイヤモンド、金属等が利用可能である。また、樹脂シートの透明性を損なわないためには、透明な粒子を使用することが望ましい。樹脂シートとしてセルロースアセテートフィルムを用いる場合、高熱伝導性粒子の配合量は、セルロースアセテート100質量部に対して5〜100質量部の範囲で充填するのがよい。配合量が5質量部未満であると熱伝導の向上が乏しく、また50質量部を超える充填は、生産性の面で困難かつセルロースアセテートフィルムが脆いものになってしまう。高熱伝導性粒子の平均粒径は0.05〜80μm、好ましくは0.1〜10μmが好ましい。球状の粒子を用いても良いし、針状の粒子を用いても良い。
【0034】
上記樹脂シートとしては、光透過率が80%以上であるポリマーフィルムを用いることが好ましい。ポリマーフィルムの例としては、セルロース系ポリマー、商品名アートン(JSR(株)製)および商品名ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)などのノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどが挙げられる。セルロース系ポリマーとしては、セルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースエステルとしてはセルロースアセテートが好ましく、その例としては、ジアセチルセルロースおよびトリアセチルセルロースなどが挙げられる。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いても良い。
【0035】
また、樹脂シートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、樹脂シートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0乃至1.7であることが好ましく、1.3乃至1.65であることがさらに好ましく、1.4乃至1.6であることが最も好ましい。ここで用いる樹脂シートとしては、酢化度が59.0乃至61.5%であるセルロースアセテートフィルムを用いることが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
【0036】
[熱拡散シートの製造]
以下、熱拡散シートのベースシートとしてセルロースアセテートフイルムを用いる場合について具体的に説明する。ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアセテートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0037】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0038】
一般的な方法でセルロースアセテート溶液を調製できる。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。セルロースアセテートの量は、得られる溶液中に10乃至40質量%含まれるように調整する。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースアセテートと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースアセテートと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0039】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0040】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にもセルロースアセテートを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースアセテートを溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースアセテートを撹拌しながら徐々に添加する。セルロースアセテートの量は、この混合物中に10乃至40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアセテートの量は、10乃至30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0041】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースアセテートと有機溶媒の混合物は固化する。冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0042】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースアセテートが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0043】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0044】
調製したセルロースアセテート溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースアセテートフイルムを製造する。その際、セルロースアセテートフィルムの熱伝導率を制御するために、ドープに高熱伝導性粒子を添加する。またドープには、レターデーション上昇剤を添加することが好ましい。
【0045】
前述したように、熱伝導率を制御するために、図2(b)に示すように、樹脂シート(セルロースアセテートフィルム)27の少なくとも一方の面に、高熱伝導性粒子を含む熱伝導層25を別に設けても良い。熱伝導層25は高熱伝導性粒子を含むポリマーを、セルロースアセテートと共流延することにより設けても良いし、セルロースアセテートフィルムに塗布することにより設けても良い。
【0046】
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてシートを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたシートをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0047】
セルロースアセテートフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
【0048】
セルロースアセテートフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01質量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1質量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
【0049】
次に、図2(c)に示す熱拡散シート21Cについて説明する。
熱拡散シート21Cは、樹脂シート27として上記のセルロースアセテートフィルムを用い、高熱伝導性薄膜29を樹脂シート27の少なくとも片面に形成している。高熱伝導性薄膜29の材料としては、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムが使用できる。高熱伝導性薄膜29は、真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法等の公知かつ広義の真空薄膜製造技術により製膜された薄膜である。この熱拡散シート21Cによれば、高熱伝導性薄膜29の厚みを高い精度で均一に形成でき、所望の熱伝導率を確実に得ることができる。
【0050】
なお、熱拡散シート21を光拡散シート19等の透明保護膜として使用する場合、熱拡散シート21を表面処理することが好ましい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理を実施する。酸処理またはアルカリ処理、すなわち、熱拡散シート21にケン化処理を実施することが特に好ましい。
【0051】
以上説明したように、このバックライトユニット10によれば、光源装置内に放熱機構を設ける従来の構成と比較しても、バックライトユニット10内の熱分布を均一にすることができ、光出射時の熱分布をより均一化できる。これにより、液晶パネル20へ光を照射したときに、液晶パネル20に対して局所的な熱分布を与えることが防止される。また、バックライトユニット10の最上部に熱拡散シート21を設けるだけで済み、熱拡散シート21の設置は簡単に行える。なお、熱拡散シート21の配置位置は、図1に示す構成によらず、導光部材15の光出射面15bの光路前方であればいずれの位置であってもよい。なお、サイドエッジ型のバックライトユニットに限らず、液晶パネルの背面に複数本の冷陰極線管やLEDが配置された直下型のバックライトユニットに対しても、上記同様に熱分布を均一化する効果が発揮される。
【0052】
<効果の検証>
図4は熱拡散シートを含まないサイドエッジ型のバックライトユニットの光源点灯後の温度変化を示す説明図で、(a)はバックライトユニットの温度測定位置を、(b)は経過時間に伴う温度変化のグラフを示した。実験に用いたバックライトユニットは、17インチの液晶表示装置用のバックライトユニットで、画面両側方に光源を配置したサイドエッジ型である。
このバックライトユニットでは、光源点灯後、約25℃の室温から昇温が始まり、光出射面である画面の左上P1、右下P2の位置では、光源に近い位置であるために、画面の中心P3の位置より昇温速度が速くなっている。そして、点灯から30分経過したときには、画面端部P1,P2の位置と画面中心P3の位置との温度差ΔTが約10℃となっている。これに対して、図1に示すバックライトユニット10の構成によれば、この温度差ΔTを約5℃にまで抑えられ、液晶表示装置に組み付けた場合でも、表示画面に黒表示時の光漏れ、白色の表示斑、色むら等の画像欠陥は視認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための液晶表示装置の要部断面構成図である。
【図2】熱拡散シートの断面図であって、(a)は樹脂シート中に高熱伝導性粒子を含む熱拡散シート、(b)は高熱伝導性粒子を含む熱伝導層を、透光性を有する樹脂シートの片面(又は両面)に有する熱拡散シート、(c)は高熱伝導性薄膜を、透光性を有する樹脂シートの片面(又は両面)に有する熱拡散シートの断面図である。
【図3】熱拡散シートの外縁部が、バックライトユニットのリアケーシングに接触した状態で保持される様子を示す一部断面図である。
【図4】熱拡散シートを含まないサイドエッジ型のバックライトユニットの光源点灯後の温度変化を示す説明図で、(a)はバックライトユニットの温度測定位置を、(b)は経過時間に伴う温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
10 バックライトユニット
11 光源
15 導光部材
15a 光入射面
15b 光出射面
17 プリズムシート
19 光拡散シート
20 液晶パネル
21 熱拡散シート
21A 熱拡散シート
21B 熱拡散シート
21C 熱拡散シート
23 リアケーシング
25 熱伝導層
27 樹脂シート
29 高熱伝導性薄膜
100 液晶表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源からの光を導光して面状光を出射させる導光部材と、を有するバックライトユニットであって、
前記導光部材の面状光を出射する出射面の光路前方に、透光性を有する熱拡散シートを前記出射面の全体を覆って配置したバックライトユニット。
【請求項2】
請求項1記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートが、樹脂シート中に高熱伝導性粒子を含むバックライトユニット。
【請求項3】
請求項1記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートが、高熱伝導性粒子を含む熱伝導層を樹脂シートの少なくとも片面に有するバックライトユニット。
【請求項4】
請求項2または請求項3のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記高熱伝導性粒子が、窒化アルミニウム、インジウム化合物のいずれかを含むバックライトユニット。
【請求項5】
請求項1記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートが、高熱伝導性薄膜を樹脂シートの少なくとも片面に有するバックライトユニット。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記樹脂シートが、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリエチレンテレフタレートのいずれかを主成分として含むバックライトユニット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートの熱伝導率が1乃至10W/(m・K)の範囲であるバックライトユニット。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のバックライトユニットであって、
前記光源が、前記導光部材の少なくとも一つの側端部に配置されているバックライトユニット。
【請求項9】
請求項8記載のバックライトユニットであって、
前記熱拡散シートの外縁部が、バックライトユニットのリアケーシングに接触しているバックライトユニット。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載のバックライトユニットと、
前記バックライトユニットの光出射側に配置され、偏光板が表裏面に配置された液晶セルを有する液晶パネルと、
を備えた液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−73476(P2010−73476A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239412(P2008−239412)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】