説明

バッチ回数計測機能付き定量装置

【課題】 正常状態では、電池駆動式の定量装置の電池の寿命が尽きることを予測できるだけでなく、予測よりも早く寿命が尽きたときには、その原因を特定するに役立たせる。
【解決手段】 本発明は、定量設定手段により定量値を設定し、スタートボタンを押圧すると、流路に設けられた定量弁を解放して流体の流れを開始し、流量計が設定した定量値の流量を計測すると、定量弁を閉止し、流体の流れを停止するよう作動する。この定量装置は、定量弁を開放してから閉止するまでのサイクルを1バッチとするバッチ回数を積算して計数するバッチカウンタと、積算したバッチ計数を表示する表示部、或いは積算したバッチ計数が所定値以内になったときに表示するアラームとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッチ回数計測機能付き定量装置に関し、特に、計量開始信号及び計量終了信号により制御される弁機構を制御する定量機能を付加した定量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流量計に定量機能を付加した定量装置は周知である。定量装置は、定量設定手段により定量値を設定し、スタートボタンを押圧すると、流路に設けられた定量弁を解放して流体の流れを開始し、流量計が設定した定量値の流量を計測すると、前記定量弁を閉止し、流体の流れを停止するよう作動するものである。
【0003】
図2は、従来の定量装置を説明する全体構成図である(特許文献1参照)。図中、Aは計数部、Bは定量弁制御部、Cは流量計(センサ)である。計数部Aは、CPUと、このCPUに接続される増幅器と、液晶表示部(LCD)と、スタートボタン(START)、ストップボタン(STOP)、及びリセットボタン(RESET)と、ワンショット回路とを備えている。この計数部Aは、さらに、CPU等への電源供給用電池と、スイッチング制御回路により電磁弁を制御する電圧源である電磁弁用電池とを備えている。
【0004】
増幅器は、入力する流量計(センサ)Cからの測定信号を増幅する。液晶表示部(LCD)は、測定値などを表示する。これによって、CPU及び液晶表示部(LCD)は、入力される測定信号に基づき、その瞬時値を表示するだけでなく、トータル積算値もまた表示可能となっている。CPUは、定量装置全体を制御するとともに、スタートボタン(START),ストップボタン(STOP)からの計量開始、緊急計量停止などの操作により開閉信号SV及びMVを生成し、この生成された開閉信号をワンショットパルス信号SV1,SV2,MV3,MV4に変換するワンショット回路及びスイッチング制御回路を介して、定量弁制御部Bの電磁弁を制御する。スイッチング制御回路は、ワンショットパルス信号SV1,SV2,MV3,MV4で電磁弁用電池からの電流をオンオフする。ワンショットパルス信号は、定量弁開閉時間に対応するパルス信号SV1,MV4と任意の時間遅れを有するパルス信号MV3,SV2とからなる。
【0005】
図3は、定量弁制御部Bのブロック構成図で、図中、b1及びb2はそれぞれソレノイドS4,S3及びS2,S1を有する電磁弁である。該電磁弁は、図示しない空気源から供給される空気をワンショットパルス信号で制御する電磁弁であり、それぞれ空気出力OUT1,OUT2を有する。該空気出力OUT1,OUT2は、定量装置の図示しない定量弁に接続されて、それを制御する。
【0006】
いま、スタートボタン(START)が押下され、CPUより開閉信号SVが立ち上がると、電磁弁b2のソレノイドS1にワンショットパルス信号SV1が印加され、電磁弁b2の空気出力OUT2に半開出力を生じ前記定量弁を半開し、計測を開始する。所定の量を計測すると、開閉信号MVが立ち上がり、電磁弁b1のソレノイドS3にワンショットパルス信号MV3が印加されると、電磁弁b1の空気出力OUT1に全開出力を生じ、前記定量弁を全開する。
【0007】
流量計Cが設定値より所定の量手前の流量を計測すると、開閉信号MVが立ち下がり、ソレノイドS4にワンショットパルス信号MV4が印加され、電磁弁b1の空気出力OUT1の全開出力を閉じ、定量弁は半開状態に復帰する。設定値の流量を計測すると、開閉信号SVが立ち下がり、ソレノイドS2にワンショットパルス信号SV2が印加され、電磁弁b2の空気出力OUT2の半開信号を閉じ、定量弁を全閉する。
【0008】
このような定量装置においては、電磁弁を駆動する電池の寿命、或いは定量弁や補器の使用回数に応じた寿命が、過度な使用により予測よりも短くなって、流体漏洩等が発生し、正確な定量測定ができなくなるという問題があった。電池の寿命は、その電圧低下から容易に判断できる。しかし、電圧低下を監視して電池の寿命が尽きたことは判断できるとしても、電池の寿命が尽きたことしか検出できず、正常に寿命が尽きた結果によるものか、或いは電池自体に異常が生じたのか、若しくは計量部Aとか、定量弁制御部Bに異常が生じた結果によるものなのかを判断することができなかった。
【特許文献1】特開2000−28413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、係る問題点を解決して、正常状態では、電池駆動式の定量装置の電池の寿命が尽きることを予測できるだけでなく、予測よりも早く寿命が尽きたときには、その原因を特定するに役立たせることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の定量機能を付加した定量装置は、定量設定手段により定量値を設定し、スタートボタンを押圧すると、流路に設けられた定量弁を解放して流体の流れを開始し、流量計が設定した定量値の流量を計測すると、前記定量弁を閉止し、流体の流れを停止するよう作動する。この定量装置は、前記定量弁を開放してから閉止するまでのサイクルを1バッチとするバッチ回数を積算して計数するバッチカウンタと、前記積算したバッチ計数を表示する表示部、或いは前記積算したバッチ計数が所定値以内になったときに表示するアラームとを備える。
【0011】
定量弁は、空気回路に設けた切替弁をアクチュエータで制御する機械式弁機構、或いは電気的に駆動される弁機構により構成される。積算したバッチ計数は、設定可能の所定のカウント値からの減算計数とすることができる。
【0012】
バッチカウンタはリセット可能にして、電磁弁用電池を交換したときにリセットして、電池交換時からのバッチ回数を積算することができるし、また、定量弁設置時にリセットして、定量弁設置時からのバッチ回数を積算することができる。或いは、バッチカウンタはリセット可能にして少なくとも2個備え、その第1のバッチカウンタは、電磁弁用電池を交換したときにリセットして、電池交換時からのバッチ回数を積算すると共に、第2のバッチカウンタは、定量弁設置時にリセットして、定量弁設置時からのバッチ回数を積算することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、流量計内に内蔵されている電磁弁を駆動するための電池の寿命(消耗)や、バッチ(定量)システムに適用される定量弁・補器等の過度な使用回数に応じた寿命を、バッチ回数から予測することが可能となり、かつ、前もってアラーム等で知らせることで流体漏洩等を防止し、安全に定量測定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、例示に基づき、本発明を説明する。図1は、本発明に基づき構成した定量装置を説明する全体構成図である。例示の構成は、バッチカウンタを備えて、バッチ回数を積算可能にした点、及びバッチ回数と関連した情報を、液晶表示部(LCD)に表示する機能を有する点でのみ、図2を参照して前述した従来技術の定量装置とは相違する。以下、これら相違点を中心として説明し、その他の従来技術と共通する点の詳細な説明は省略する。但し、上述の定量装置は、定量弁の制御を、空気回路に設けた切替弁をアクチュエータで制御する機械式弁機構を例として説明したが、本発明は、このような機械式弁機構に限らず、電気的に駆動される弁機構にも適用することができる。
【0015】
図3を参照して上述したように、電磁弁は、空気源から供給される空気をワンショットパルス信号で制御する電磁弁であり、その空気出力が、定量装置の定量弁に接続されて、それを制御する。即ち、スタートボタンが押下されると、CPUよりの開閉信号SVを介して、電磁弁b2のソレノイドS1にワンショットパルス信号SV1が印加され、電磁弁b2の空気出力OUT2に半開出力を生じ前記定量弁を半開し、計測を開始する。所定の量を計測すると、開閉信号MVを介して、電磁弁b1のソレノイドS3にワンショットパルス信号MV3が印加されて、電磁弁b1の空気出力OUT1に全開出力を生じ、前記定量弁を全開する。
【0016】
流量計Cが設定値より所定の量手前の流量を計測すると、CPUよりの開閉信号MVを介して、ソレノイドS4にワンショットパルス信号MV4が印加され、電磁弁b1の空気出力OUT1の全開出力を閉じ、定量弁は半開状態に復帰する。設定値の流量を計測すると、開閉信号SVが立ち下がり、ソレノイドS2にワンショットパルス信号SV2が印加され、電磁弁b2の空気出力OUT2の半開信号を閉じ、定量弁を全閉する。
【0017】
ここでは、定量弁の開閉をそれぞれ2段階で行う比較的大流量の定量装置を例として説明したが、小流量定量装置の場合であれば、1つの開信号で弁を全開し、1つの閉信号で弁を全閉するよう構成することができる。
【0018】
いずれの場合も、CPUよりの開閉信号に応じて開信号或いは閉信号が出ている間の所定時間だけ、電磁弁及び定量弁を間歇的に作動させることになる。この作動が、電磁弁及び定量弁の寿命に影響する。同時に、この作動時に、電流が流れて電磁弁用電池は消耗する。
【0019】
図1に示したバッチカウンタは、定量弁の全開から全閉までの1サイクルを、1バッチとして計数するカウンタである。この計数のために、例えば、CPUよりの開閉信号SV、MVを利用することができる。電磁弁及び定量弁の寿命、及び電磁弁を駆動するための電磁弁用電池の寿命は、電磁弁及び定量弁の作動回数に依存する。
【0020】
1バッチは、一組の開と閉信号に基づき計数することができる。しかし、例えば、開信号の後に必ず閉信号が出るような構成であれば、開信号と閉信号のどちらか一方のみの計数により求めることができるし、或いは、開信号の後に続けて開信号が出された場合でも、電流が流れる構成の場合であれば、少なくとも、電池寿命の推測のためには、その都度、1バッチとして計数することが望ましい。
【0021】
このバッチカウンタは、リセット可能にして複数備えることができる。第1のバッチカウンタは、電磁弁用電池を交換したときにリセットして、電池交換時からのバッチ回数を積算しておき、その積算回数を、液晶表示部(LCD)に表示する。この表示された積算回数から電池の寿命を予測することができる。また、残り寿命(バッチ回数)が、所定値以内になったときにアラームを表示することもでき、さらには、電池の残り寿命(バッチ回数)を表示することもできる。
【0022】
また、リセット可能の第2のバッチカウンタを備えて、定量弁設置時にリセットして、設置時からのバッチ回数を積算しておき、その積算回数を、液晶表示部(LCD)に表示する。この表示された積算回数から電磁弁、定量弁、及びその他の補器等の各機器の寿命を予測することができる。また、残り寿命(バッチ回数)が、所定値以内になったときにアラームを表示することもでき、さらには、各機器の残り寿命を表示することもできる。
【0023】
電池或いは各機器の残り寿命の表示のために、カウント値を設定(変更)可能にして、この設定カウント値から計数バッチ回数を減算して、表示する。
【0024】
上述した複数のバッチカウンタは、例えば、ソフトウエアによりCPUの割り込み機能を利用して構成できる。そして、各バッチカウンタにより計数された積算バッチ回数とか、その値に基づき演算された残り寿命などは、流量計Cから入力される測定信号に基づく瞬時値及びトータル積算値と共に、切替可能にして液晶表示部(LCD)に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に基づき構成した定量装置を説明する全体構成図である。
【図2】従来の定量装置を説明する全体構成図である。
【図3】図2に示す定量弁制御部Bのブロック構成図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量設定手段により定量値を設定し、スタートボタンの押圧により流路に設けられた定量弁を解放して流体の流れを開始し、流量計が設定した定量値の流量を計測すると、前記定量弁を閉止し、流体の流れを停止するよう作動する定量機能を付加した定量装置において、
前記定量弁を開放してから閉止するまでのサイクルを1バッチとするバッチ回数を積算して計数するバッチカウンタと、
前記積算したバッチ計数を表示する表示部、或いは前記積算したバッチ計数が所定値以内になったときに表示するアラームとを備える、
ことから成る定量機能を付加した定量装置。
【請求項2】
前記定量弁は、空気回路に設けた切替弁をアクチュエータで制御する機械式弁機構、或いは電気的に駆動される弁機構により構成される請求項1に記載の定量機能を付加した定量装置。
【請求項3】
前記積算したバッチ計数は、設定可能の所定のカウント値からの減算計数である請求項1に記載の定量機能を付加した定量装置。
【請求項4】
前記バッチカウンタはリセット可能にして、電池を交換したときにリセットして、電池交換時からのバッチ回数を積算する請求項1に記載の定量機能を付加した定量装置。
【請求項5】
前記バッチカウンタはリセット可能にして、定量弁設置時にリセットして、定量弁設置時からのバッチ回数を積算する請求項1に記載の定量機能を付加した定量装置。
【請求項6】
前記バッチカウンタはリセット可能にして少なくとも2個備え、その第1のバッチカウンタは、電池を交換したときにリセットして、電池交換時からのバッチ回数を積算すると共に、第2のバッチカウンタは、定量弁設置時にリセットして、定量弁設置時からのバッチ回数を積算する請求項1に記載の定量機能を付加した定量装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−214959(P2006−214959A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−30214(P2005−30214)
【出願日】平成17年2月7日(2005.2.7)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)