説明

バッテリ温度調節ユニット及びバッテリ温度調節装置

【課題】バッテリの効率的な温度調整を可能とする、新しいバッテリ温度調節ユニット及びバッテリ温度調節装置を提供する。
【解決手段】隣り合うバッテリセルの間に介挿可能なバッテリ温度調節ユニットであって、ヒートパイプと、ヒータとを備え、前記温度調節ユニットが前記バッテリセルの間に介挿された際に、前記ヒートパイプと、前記ヒータとが、前記バッテリセルと熱的に接続可能な状態で配置されるように構成され、前記ヒートパイプは、バッテリ冷却時には前記ヒートパイプにより前記バッテリセルの熱が冷却ジャケットに輸送され、前記バッテリセルの冷却を効率的に行い、バッテリ加温時に前記ヒータからの熱で前記ヒートパイプ内がドライアウトし、ヒータの熱がヒートパイプを通して冷却ジャケットから漏れることを防ぐことを特徴とする、バッテリ温度調節ユニットおよびこれを備えたバッテリ温度調節装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ温度調節ユニット及びバッテリ温度調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発が進んでいるハイブリッド自動車や電気自動車では、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの蓄電池(バッテリ)が搭載されている。
【0003】
これらの蓄電池には、最適使用温度範囲がある。例えば0℃以下の低温状態においては、放電電圧が低下することなどからバッテリの出力が低下する。また、例えば50℃以上の高温状態が続く場合は、電池材料が劣化し易くなることなどからバッテリの寿命が短命となる。
【0004】
この様な問題に対処するために、特許文献1には、エアボックス101と、送風機としてのブロアファン102と、ブロアファン102によって送風されるエアを冷却自在のクーリングユニット103と、クーリングユニット103を通過したエアを加温可能なサブコンデンサ104と、サブコンデンサ104を通過したエアを車室内に導く室内用ダクト105とを備え、バッテリフレーム150にエアを導くべく室内用ダクト105から、バッテリダクト106を分岐させると共に、室内用ダクト105とバッテリダクト106との分岐位置に、サブコンデンサ104を通過したエアを室内用ダクト105側へ又はバッテリダクト106側へ切り換え自在かつ切り換え開度調節自在のバッテリドア107を設けたことにより、車室内の空調を行うためのエアを利用してバッテリフレーム150内のバッテリ151を冷却又は加温を可能にした電気自動車の空調装置100が開示されている(図15参照)。
【0005】
また、特許文献2には、キャビンの空調に使用されたエアを、導入用流路を経て電池収納ケース内部に導入し、電池収納ケース内部に収納されている車両推進用の電池の冷却又は暖気を行う様に構成した電動車両搭載電池温度調整装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、寒冷時や寒冷地におけるバッテリの温度低下を防止するために、バッテリを断熱材で覆い、これに加えて電気ヒータ等の加熱手段を併用することが記載されている。
【0007】
特許文献4には、バッテリモジュールにヒートパイプを接触させ、他端をヒートシンクに接続し、バッテリで発生した熱をヒートシンクへ輸送するよう構成されたことを特徴とする電気自動車のバッテリ冷却装置が記載されている。特許文献4に記載のバッテリ冷却装置において、前記ヒートシンクは、内部にパラフィンなどの蓄熱材を包含しているとともに、該蓄熱材内部を貫通する冷却水通路と、該冷却水通路と接続した冷却水配管と電動ポンプとラジエータとを備えており、前記ヒートシンクに伝えられた熱が前記蓄熱材の潜熱に費やされるとともに、冷却水を通して前記ラジエータにより外気へも放出できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3050051号公報
【特許文献2】特許第3733682号公報
【特許文献3】特開平10−32021号公報
【特許文献4】特開平11−204151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や特許文献2の様に、バッテリに空気を流して温度調節する場合、熱伝導媒体となる空気は、バッテリの収容部材等の周辺部材も加熱又は冷却してしまうため、熱の一部をロスし、バッテリの加温効率等が低下してしまうという問題があった。また、バッテリに空気を流した場合、風上と風下で空気温度に差が生じることから、バッテリ内部での温度差が発生し、例えばバッテリを構成する一部のセルに負荷が集中し、当該セルで障害が発生するという可能性がある。さらに、ヒートパイプで熱源の熱を輸送させて加温する場合には、加温に要する熱量を運ぶために多数のヒートパイプが必要となり、装置重量が増加するという問題もあった。
【0010】
一方、特許文献3に記載されたバッテリ保温装置を用いて、バッテリを加熱する場合にも、ヒータとの接触部に近い箇所と離れた箇所で温度差が生じるという問題がある。さらに、特許文献4に記載された装置では、ヒートパイプのみで加温・冷却を行っており、加温や冷却の効率に問題があった。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、効率的かつ経済的なバッテリの温度調整を可能とする、新しいバッテリ温度調節ユニット及びバッテリ温度調節装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その第1の態様は、隣り合うバッテリセルの間に介挿可能なバッテリ温度調節ユニットであって、前記バッテリセルの冷却用のヒートパイプと、ヒータとを備え、前記温度調節ユニットが前記バッテリセルの間に介挿された際に、前記ヒートパイプと、前記ヒータとが、前記バッテリセルと熱的に接続可能な状態で配置されるように構成され、好ましくは、前記ヒートパイプの限界熱輸送量が、前記ヒートパイプと熱的に接続するバッテリセルの総発熱量以上であり、かつ、前記ヒータの発熱量よりも小さいことにより、バッテリ加温時に前記ヒータからの熱で前記ヒートパイプがドライアウトすることを特徴とする、バッテリ温度調節ユニットである。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記ヒートパイプの冷却媒体を供給するためのジャケット又は前記ヒートパイプに接続されたフィンを備えるバッテリ温度調節ユニットである。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記ヒートパイプと、前記ヒータとを固定し、これらと熱的に接続された固定手段をさらに備え、かつ、前記温度調節ユニットが前記隣り合うバッテリセルに介挿された際に、前記固定手段が前記隣り合うバッテリセルと熱的に接続可能に構成したことを特徴とするバッテリ温度調節ユニットである。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記バッテリセルが角柱形バッテリセルであり、前記固定手段が、少なくとも2枚の金属製プレートを備え、前記ヒートパイプ及び前記ヒータが前記金属製プレートの間に固定されていることを特徴とするバッテリ温度調節ユニットである。
【0016】
本発明の第5の態様は、前記バッテリセルが円柱形バッテリセルであり、前記固定手段の両側面に、凹部と係止対が形成され、前記ヒートパイプ及び前記ヒータが前記固定手段に収容され、かつ、前記バッテリセルが前記係止対により、前記凹部に嵌合した状態で固定されるように構成したことを特徴とする、バッテリ温度調節ユニットである。
【0017】
本発明の第6の態様は、前記ヒータがPTCヒータであるバッテリ温度調節ユニットである。
【0018】
本発明の第7の態様は、複数のバッテリセルを備えたバッテリの温度を調節するバッテリ温度調節装置であって、隣り合うバッテリセルの間に介挿された温度調節ユニットを備え、前記温度調節ユニットは、前記バッテリセルと熱的に接続された、前記バッテリセルの冷却用のヒートパイプ及びヒータを備え、前記ヒートパイプの限界熱輸送量が、バッテリ加温時に前記ヒータからの熱でドライアウトするように設定されていることを特徴とする、バッテリ温度調節装置である。
【0019】
本発明の第8の態様は、前記ヒートパイプに、前記バッテリセルを冷却する冷却手段が熱的に接続されている温度調節装置である。
【0020】
本発明の第9の態様は、冷却手段に熱的に接続されたヒートパイプを備え、かつヒータを備えないバッテリ冷却ユニットをさらに備え、前記バッテリ冷却ユニットのヒートパイプが、バッテリセルの前記温度調節ユニットとの熱的な接続面とは反対側の面に、熱的に接続されていることを特徴とするバッテリ温度調節装置である。
【0021】
本発明の第10の態様は、前記冷却手段が、水冷手段又はフィンを介して熱的に接続された空冷手段であることを特徴とするバッテリ温度調節装置である。
【0022】
本発明の第11の態様は、前記ヒータがPTCヒータであるバッテリ温度調節装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のバッテリ温度調節ユニットおよびバッテリ温度調節装置によれば、ヒータがバッテリセルの間に介挿されるように構成したので、バッテリの均一な加温を迅速に実現することができる。また、好適な態様においては、バッテリ加温時には、ヒートパイプがドライアウトするように、ヒートパイプの限界熱輸送量が設定されているので、ヒータからの熱を不要にバッテリ外部に輸送することがない。そのため、ヒートパイプに接続される冷却手段を常に作動させていてもバッテリの加温が可能となる。そのため、冷却手段を不要な機構によって制御する必要が無い。
【0024】
さらに、バッテリ駆動時には、冷却用のヒートパイプを介してバッテリセルの熱が効率的に放散される。
【0025】
従って、このようなバッテリ冷却温度調節ユニットおよびバッテリ温度調節装置によれば、バッテリの多様な温度調節に対応することができ、効率的かつ経済的なバッテリの温度調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明のバッテリ温度調節ユニットをバッテリ要素の間に介挿した状態の斜視図である。
【図2】図2は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの断面図である。
【図4】図4は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの分解斜視図である。
【図5】図5は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの断面図である。
【図6】図6は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの分解斜視図である。
【図7】図7は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの断面図である。
【図8】図8は、本発明のバッテリ温度調節ユニットをバッテリ要素の間に介挿した状態の斜視図である。
【図9】図9は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの分解斜視図である。
【図10】図10は、本発明のバッテリ温度調節装置の斜視図である。
【図11】図11は、本発明のバッテリ温度調節装置の上面図である。
【図12】図12は、本発明のバッテリ温度調節装置が備えるバッテリ冷却ユニットの分解斜視図である。
【図13】図13は、本発明のバッテリ温度調節装置が備えるバッテリ冷却ユニットの断面図である。
【図14】図14は、実施例のシミュレーション結果を説明する図である。
【図15】図15は、従来技術のバッテリ温度調節システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を、実施形態に即して詳細に説明する。なお、図面及びその説明は、本発明の実施形態を示すものであり、本発明を限定するものではない。
【0028】
[バッテリ温度調節ユニット]
図1は、本発明のバッテリ温度調節ユニットを、バッテリセルの間に介挿した状態の斜視図である。図2は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの分解図である。図3は、本発明のバッテリ温度調節ユニットの断面図である。
【0029】
バッテリ温度調節ユニット10は、ヒートパイプ11と、ヒータ12と、水冷ジャケット14を備えている。ヒートパイプ11およびヒータ12は、バッテリ温度調節ユニット10がバッテリ要素Aの間に介挿された際に、隣り合うバッテリ要素Aを構成する計10個のバッテリセルaと熱的に接続可能な状態で、バッテリ要素Aの間に配置される(図1)。なお、本明細書において、バッテリ要素とは、一のバッテリセルからなるか、複数のバッテリセルを並べてなる単位(列)を意味する。
【0030】
ヒートパイプ11は、例えば、銅、アルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属製または上記金属からなる合金製である密閉されたコンテナの内部に、作動液が減圧状態で封入されてなる。コンテナの形状には、本実施形態の断面略長方形状の他、断面扁平状型、丸形、板状型等がある。ヒートパイプには、コンテナ内面に、金属ワイヤのメッシュやコイル、多孔性金属などによりウィックを形成したものや、コンテナ内面にグルーブ加工(溝加工)をしたものがある。本発明におけるヒートパイプ11には、コンテナ内面にサーモスタットを導入し、熱輸送したいときに作動液を循環できるような内部構造を設けたものを用いても良い。
【0031】
また、ヒートパイプ11の内部には、作動液の流路となる空間が設けられている。この空間に収容された作動液が蒸発(受熱部)・凝縮(放熱部)の相変化と内部移動をすることによって、熱輸送が行われる。作動液としては、特に制限されるものではないが、コンテナ容器の材料に応じて、水、HCFC−22などのハイドロクロロフルオロカーボン、HFCR134a、HFCR407C、HFCR410A、HFC32などのハイドロフルオロカーボン、HFO1234yfなどのハイドロフルオロオレフィン、炭酸ガス、アンモニア、およびプロパンなどがあげられる。これらの中でも、性能及び地球環境への影響を考慮すると、水や炭酸ガス及びハイドロフルオロオレフィンなどが好ましい。
【0032】
ヒータ12としては、特に制限されるものではないが、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータが好適である。PTCヒータはヒータ素子をプラスチックフィルム等で密閉した極薄ヒータであるため、バッテリ要素Aの間に介挿するのに適している。また、バッテリ温度調節ユニット及びバッテリ温度調節装置の小型化や軽量化にも有用である。さらに、PTCヒータは、ヒータ素材の材料特性から自己温度制御機能を有するため、経済的であり、かつ信頼性が高い。加えて、PTCヒータは、設定温度まで迅速に到達することから、効率的な加温を達成することができる。
【0033】
本例において、ヒートパイプ11と、ヒータ12は、固定手段13により固定されている。固定手段13は、バッテリ要素Aの間に介挿可能な形状(略長方形状)の金属板13a、13bを備える。金属板13a、13bは、ヒートパイプ11及びヒータ12を挟んで固定すると共に、ヒートパイプ11、ヒータ12と熱的に接続している。金属板としては、銅、アルミニウムおよびこれらの合金などの熱伝導率の高い金属が好ましい。固定手段13は、隣り合うバッテリ要素Aを構成する計10個のバッテリセルaと熱的に接続している。なお、固定手段13に接続されるバッテリセルの個数は、本明細書記載の個数に限定されるものではなく、車載されるバッテリの個数や、そのレイアウトにより適宜決定されるものである。
【0034】
ヒートパイプ11及びヒータ12を、金属板13aおよび13bへ固定する方法としては、特に制限されないが、半田付、粘着テープによる接着、リベット等による接合、かしめ接合など通常公知の手段を採用することができる。また、金属板13a及び13bの間に複数の支柱を設け、当該支柱の間にヒートパイプを挿通させることにより、ヒートパイプが固定される様に構成しても良い。さらに、必要に応じて、ヒートパイプ11の外表面と金属板13aおよび13bとの接触部分に、隙間を埋めるように熱伝導グリス等の熱伝導部材を塗布しても良い。
【0035】
金属板13a、13bの端部には、ジャケット14a、14bが接続されている。ジャケット14a、14bには、冷却水等の温度調整媒体が供給される。無論、冷媒が水に限定される必要はない。ヒートパイプ11は、ジャケット14a、14bと直接接続されても良いし、金属板13a、13bを介して接続されても良い。また、本発明における水冷ジャケット14には、常に冷却水を循環させていても良い。
【0036】
次に、バッテリ温度調節ユニット10を用いたバッテリの温度調整方法について説明する。
【0037】
まず、バッテリが低温状態の際には、バッテリ要素Aの間に介挿されたヒータ12によりバッテリセルaの均一な加温が迅速に行われる。この際に、ヒータ12から供給される熱量が、ヒートパイプ11で輸送できる熱量である最大熱輸送量を超えるように、ヒートパイプ11を設計もしくは選択する。そうすると、ヒータ12の熱によってヒートパイプ11がドライアウトするために、ヒータ12の熱はヒートパイプ11によって熱輸送されにくくなる。従って、ヒータ12の熱が、ヒートパイプ11の端部を介してジャケット14a、14bから拡散されていくのを防止することができ、効率的にバッテリの加温を行うことができる。ヒータ12の発熱量は、ヒートパイプ11の最大熱輸送量を超えることが好ましく、特に110%以上の高い値とすることが好ましい。
【0038】
ここで、ヒートパイプの「ドライアウト」について説明する。前述の通り、ヒートパイプの内部には、作動液の流路となる空間が設けられている。そして、この空間に収容された作動液が受熱部(蒸発部)で蒸発し、放熱部(凝縮部)で凝縮することにより、熱輸送が行われる。そのため、ヒートパイプには限界となる熱輸送量が存在し、その限界熱輸送量を超えた熱入力が受熱部からされると、ヒートパイプは蒸発部での作動液の液枯れ現象、いわゆるドライアウトが発生する。この状態になると、ヒートパイプ内で適正な作動液の循環が行われなくなるため、熱輸送が行われなくなる。なお、ヒートパイプの限界熱輸送量の調整は、例えばヒートパイプ内の作動液量の調整などの通常公知の手段により容易に行うことができる。
【0039】
本発明においては、ヒータ12からのヒートパイプの限界熱輸送量を超える熱を与えることによって、ヒートパイプ11がドライアウトする。従って、ヒータ12の熱が、ヒートパイプ11を通して水冷ジャケット14側へと流出するのを防ぐことができる。これによって、ヒータ12の熱を主としてバッテリセルaの加温に充てることができる。
【0040】
一方、バッテリの過熱時には、ヒートパイプ11を介してバッテリセルaを効率的に冷却することができる。すなわち、ヒートパイプ11と熱的に接続している計10個のバッテリセルaからの総発熱量(好ましくは最大出力時の総発熱量)が、ヒートパイプの限界熱輸送量以下となるように、ヒートパイプ11が選択されている。ヒートパイプの限界熱輸送量は、ヒートパイプが熱的に接続するバッテリセルの総発熱量を超えることが好ましい。なお、言うまでもなく、冷却時には、ヒータ12からの熱供給は停止しているか、遮断されている。したがって、ヒートパイプ11はドライアウトを起こさず、バッテリセルaの熱を水冷ジャケットへと熱輸することができる。そして、ジャケット14a、14bには、冷却水等の冷却媒体が供給されるため、ヒートパイプ11を介して輸送されるバッテリセルaの熱を効率的に冷却することができる。なお、前述した通り、冷却水などの媒体は冷却ジャケット中を常に循環していても良い。
【0041】
本発明におけるバッテリ温度調節ユニットでは、バッテリ加温時にヒータ12からの熱によってヒートパイプ11はドライアウトする。しかしながら、ヒータ12の不具合などでバッテリセルaを十分に加熱できない場合は、冷却ジャケット14中に温水を流すことによって、ヒートパイプ11を介してバッテリを補助的に加温することもできる。
【0042】
次に、本発明のバッテリ温度調節ユニットの別の実施形態を説明する。図4は、本発明のバッテリ温度調節ユニット20の分解斜視図である。また、図5は、バッテリ温度調節ユニット20の断面図である。なお、バッテリ温度調節ユニット10と重複する部材については、共通する符号を付した。
【0043】
バッテリ温度調節ユニット20では、ヒートパイプ11は、フィン15と熱的に接続している。すなわち、ヒートパイプ11は、フィン15を介して、外部雰囲気や空調装置等(空冷手段)と熱交換が可能となっている。
【0044】
この実施形態では、バッテリが低温状態の際に、バッテリ要素Aの間に介挿されたヒータ12によりバッテリセルaの均一な加温が迅速に行われる。この際に、ヒータ12から供給される熱量は、ヒートパイプの最大熱輸送量を超えるように、ヒートパイプが設計もしくは選択されている。そうすると、ヒートパイプ11を通してフィン15から、ヒータ12の熱の一部が放熱されることがないため、効率的にバッテリの加温を行うことができる。一方、バッテリの過熱時には、ヒータ12からの熱供給を停止若しくは遮断し、フィン15に冷却風を流すことにより、ヒートパイプ11及びフィン15を介してバッテリセルaの熱が放散される。
【0045】
また、さらに、フィンからの熱拡散を抑制する熱拡散抑制手段を設けてもよい。熱拡散抑制手段としては、例えば、フィンの周囲の空間、特に上部空間を塞ぐことにより、自然対流を抑止する閉塞手段があげられる。
【0046】
さらに、本発明の本発明のバッテリ温度調節ユニットは、水冷ジャケット14とフィン15を同時に用いても良い。この場合、例えば、バッテリ要素Aの一方の端部に水冷ジャケットを、他方の端部にフィンを配置する。若しくは、一方の端部に水冷ジャケットとフィンを同時に配置しても良いし、両方の端部に水冷ジャケットとフィンを配置しても良い。これらはすべて、設計変更によって自由に行うことができる。
【0047】
次に、上記のような角柱状のバッテリセルに代えて、他の形状のバッテリセルを用いる例を図6及び図7を用いて説明する。図6は、本発明のバッテリ温度調節ユニット50を、円柱状のバッテリセルaの間に介挿した状態の斜視図である。また、図7は、バッテリ温度調節ユニット50の分解斜視図である。なお、図6及び図7において、バッテリ温度調節ユニット10と重複する部材については、共通する符号を付した。
【0048】
バッテリ温度調節ユニット50の固定手段53には、ヒートパイプ収容孔57及びヒータ収容孔58が設けられており、これらにそれぞれ、ヒートパイプ11及びヒータ58が収容される。固定手段53の両側面には、バッテリセルaの外周形状に合わせて形成された凹部55と、係止対56a及び56bが形成されている。バッテリセルaは、係止対56a及び56bによって、凹部55に嵌合した状態で保持される。
【0049】
固定手段53の端部には、バッテリ温度調節ユニット10と同様に、ジャケット14a、14bが接続されている。なお、バッテリ温度調節ユニット20と同様に、ジャケット14a、14bに代えて、ヒートパイプ11にフィンを接続する構成としても良いことは言うまでもない。
【0050】
なお、以上の実施形態では、並列した2本のヒートパイプをバッテリ要素Aの間に介挿するように構成したが、ヒートパイプの本数は2本に限られず、1本でも良く、3本以上でも良い。配置方法も並列配置に限られるものではない。例えば、図8に示すように、直列に接続した複数のヒートパイプ(ヒートパイプ11a1〜11a4)が、バッテリ要素Aの間に介挿されるように構成しても良い。また、複数のヒートパイプを用いる場合には、これらは必ずしも同一のヒートパイプでなくても良く、異なる種類のヒートパイプの種々の組合せを選択することができる。具体例を、バッテリ温度調節ユニット10の変形例であるバッテリ温度調節ユニット10’(図8及び図9)を前提として説明する。ただし、バッテリ温度調節ユニット10’と同様のヒートパイプの組合せが、他のバッテリ温度調節ユニット(バッテリ温度調節ユニット20、50等)にも適用できることは言うまでもない。
【0051】
すなわち、少なくとも、ジャケット14a、14bに最も近いヒートパイプ11a1の作動液を、蒸発潜熱の低いものとし、ヒートパイプ11a2〜11a4よりもヒートパイプ11a1をドライアウトし易くする。これにより、例えば、ヒータ12による加温時に、ヒートパイプをドライアウトさせて、ヒートパイプ11a1の作動を停止すれば、ヒートパイプ11a1端部からの熱の散逸を防止することができる。
【0052】
[バッテリ温度調節装置]
次に、本発明に係るバッテリ温度調節装置について説明する。本発明に係るバッテリ温度調節装置は、上記のバッテリ温度調節ユニットを備えることを特徴とする。図10は、本発明のバッテリ温度調節装置100の実施形態に係る斜視図であり、図11は、その上面図である。
【0053】
バッテリ温度調節装置100は、本発明のバッテリ温度調節ユニット10と、バッテリ冷却ユニット30とを備える。なお、バッテリ温度調節ユニット10は、水冷ジャケット14を備え、ヒートパイプ11が冷却手段(水冷手段)と熱的に接続される。バッテリ冷却ユニット30の構成は、ヒータを備えない以外はバッテリ温度調節ユニット10の構成と同様となっている(図12及び図13参照)。
【0054】
バッテリ温度調節装置100において、バッテリ温度調節ユニット10と、バッテリ冷却ユニット30は、バッテリ要素Aのすき間に交互に配置されている。すなわち、バッテリ冷却ユニット30のヒートパイプ31が、バッテリセルaの温度調節ユニット10との熱的な接続面とは反対側の面に、熱的に接続されている。
【0055】
本発明者等の解析により、冷却についてはバッテリセルの両面から行うことが有効であり、加温についてはバッテリセルの片面からでも十分であることが判明しているので、バッテリ温度調節装置100を用いることにより、バッテリの加温及び冷却を効率的に行うことを可能にすると共に、装置の軽量化が達成される。
【0056】
なお、上記バッテリ温度調節装置100では、バッテリ温度調節ユニット10とバッテリ冷却ユニット30が水冷ジャケットを備えているが、水冷ジャケットに替えて、フィンを接続することにより、ヒートパイプ11及びヒートパイプ31を冷却手段(外部雰囲気又は空調装置等)に接続する構成としても良い。また、水冷ジャケット又はフィンは、ユニット10、30にそれぞれ1つずつ設置することも可能であるが、複数のユニットが1つの水冷ジャケット又はフィンを共有する構成としても良い。
【実施例】
【0057】
本発明のバッテリ温度調節ユニット10の実施例を示す。図1に示すバッテリの温度調節ユニット10は、計10個(片側5個)のバッテリセルaに、2本のヒートパイプ11とヒータ12が固定手段と共に介挿されている。本実施例では、ヒータ12は300Wの発熱量を有している。このとき、ヒートパイプ11は、その限界熱輸送量が、バッテリセルの総発熱量よりも若干大きい60Wとなるように設計もしくは選択し、ヒータ12の近傍に配置すると、加温時にヒータ12の熱でドライアウトする。
【0058】
本発明のバッテリ温度調節装置100による温度調整能力をシミュレーションにより確認した。冷却機能の検証として、バッテリセルの発熱量を5W/個とし、ヒートパイプの限界熱輸送量を60Wとし、水冷ジャケットに2.5リットル/分の冷却水を流す設計を行った。この場合、バッテリの温度上昇は約12℃であり、各セル間の温度部分布は0.6℃に抑えることができることが確認された。
【0059】
また、加温機能の検証として、同様の設計をされたバッテリ温度調整ユニットにおいて、PTCヒータからバッテリセル1個あたり30Wの加熱をする設計を行った。この場合、初期状態として平均温度−20℃だったバッテリセルは、加熱開始120秒後に5.6℃上昇し、600秒後には平均温度約0℃に到達することが確認された(図14)。これらのことから、本発明のバッテリ温度調節ユニットを用いることにより、バッテリの均一な加温および冷却を迅速に実現することができる事が分かる。
【符号の説明】
【0060】
10、20、50 バッテリ温度調節ユニット
11 ヒートパイプ
12 ヒータ
13、53 固定手段
14 水冷ジャケット
15 フィン
30 バッテリ冷却ユニット
A バッテリ要素
a バッテリセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合うバッテリセルの間に介挿可能なバッテリ温度調節ユニットであって、
前記バッテリセルの冷却用のヒートパイプと、
ヒータとを備え、
前記温度調節ユニットが前記バッテリセルの間に介挿された際に、前記ヒートパイプと、前記ヒータとが、前記バッテリセルと熱的に接続可能な状態で配置されるように構成され、
前記ヒートパイプの限界熱輸送量が、前記ヒートパイプと熱的に接続するバッテリセルの総発熱量以上であり、かつ、前記ヒータの発熱量よりも小さいことにより、バッテリ加温時に前記ヒータからの熱で前記ヒートパイプがドライアウトすることを特徴とする、バッテリ温度調節ユニット。
【請求項2】
前記ヒートパイプの冷却媒体を供給するためのジャケット及び/又は前記ヒートパイプに接続されたフィンを備える、請求項1記載のバッテリ温度調節ユニット。
【請求項3】
前記ヒートパイプと、前記ヒータとを固定し、これらと熱的に接続された固定手段をさらに備え、
かつ、前記温度調節ユニットが前記隣り合うバッテリセルに介挿された際に、前記固定手段が前記隣り合うバッテリセルと熱的に接続可能に構成したことを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリ温度調節ユニット。
【請求項4】
前記バッテリセルが角柱形バッテリセルであり、前記固定手段が、少なくとも2枚の金属製プレートを備え、前記ヒートパイプ及び前記ヒータが前記金属製プレートの間に固定されていることを特徴とする、請求項3に記載のバッテリ温度調節ユニット。
【請求項5】
前記バッテリセルが円柱形バッテリセルであり、前記固定手段の両側面に、凹部と係止対が形成され、
前記ヒートパイプ及び前記ヒータが前記固定手段に収容され、かつ、前記バッテリセルが前記係止対により、前記凹部に嵌合した状態で固定されるように構成したことを特徴とする、請求項3に記載のバッテリ温度調節ユニット。
【請求項6】
前記ヒータがPTCヒータである、請求項1〜5のいずれかに記載のバッテリ温度調節ユニット。
【請求項7】
複数のバッテリセルを備えたバッテリの温度を調節するバッテリ温度調節装置であって、
隣り合うバッテリセルの間に介挿された温度調節ユニットを備え、
前記温度調節ユニットは、前記バッテリセルと熱的に接続された、前記バッテリセルの冷却用のヒートパイプ及びヒータを備え、前記ヒートパイプの限界熱輸送量が、前記ヒートパイプと熱的に接続するバッテリセルの総発熱量以上であり、かつ、前記ヒータの発熱量よりも小さいことにより、バッテリ加温時に前記ヒータからの熱で前記ヒートパイプがドライアウトすることを特徴とする、バッテリ温度調節装置。
【請求項8】
前記ヒートパイプに、前記バッテリセルを冷却する冷却手段が熱的に接続されている、請求項7に記載の温度調節装置。
【請求項9】
冷却手段に熱的に接続されたヒートパイプを備え、かつヒータを備えないバッテリ冷却ユニットをさらに備え、
前記バッテリ冷却ユニットのヒートパイプが、バッテリセルの前記温度調節ユニットとの熱的な接続面とは反対側の面に、熱的に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載のバッテリ温度調節装置。
【請求項10】
前記冷却手段が、水冷手段又はフィンを介して熱的に接続された空冷手段であることを特徴とする、請求項8又は9に記載のバッテリ温度調節装置。
【請求項11】
前記ヒータがPTCヒータである、請求項7〜10のいずれかに記載のバッテリ温度調節装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−73722(P2013−73722A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210561(P2011−210561)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】