説明

バネの取付構造

【課題】部品点数を有効に削減し得るフレーム状のバネの取付構造を提供する。
【解決手段】下フレーム部13に対して上フレーム部14に対してフレーム状のバネである反力フレーム要素151bを、可動範囲において常に与圧が掛かり且つ通常姿勢(P)をなす所定位置で最も与圧が弱くなるように取り付ける構造である。具体的には上取付部143a、143bに、反力フレーム要素151a、151bを外力によって通常姿勢(P)よりも弾性反発力を蓄積した取付準備姿勢(Q)とした際に下端部152a、152bの挿入を許容する後述する挿入部143a1、143b1と、外力を解除した際に弾性反発力により下端部152a、152bに係合する係合部143a2、143b2とを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能な二つの部材に取り付けるバネの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、椅子の背など、回動可能に支持された2つの部材を所定方向に弾性付勢する構造が種々提案されている。その様な構成の中には、例えば椅子の座と、当該座に対して回動可能に支持された背凭れとの間に弾性部材を設けている椅子の場合、背を後傾させるロッキング動作の際、背支桿の後方からガススプリング等のバネによって弾性付勢を行う態様が知られている。
【特許文献1】特開2002−119373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方、回動可能に例えば軸着された二つの部材に対してフレーム状のバネを取り付けることにより、当該バネの弾性反発力によって弾性付勢するといった態様が考えられる。
【0004】
しかしながら、2つの部材に対して樹脂バネを取り付けるためには、バネの両端部、並びに当該両端部に取り付けるための2つの部材に設けた取付部に対して、樹脂バネを所定位置に正確且つ確実に取り付けるための格別の機構部品が必須となってしまう。そして当該機構部品を前記格別の部材によって取り付けた場合、取り付け部、並びにバネの両端部に多くの機構部品が費やされることとなり、全体の部品点数が多いものなってしまう。
【0005】
本発明は、このような不具合に着目したものであり、部品点数を有効に削減し得るバネの取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち、本発明に係るバネの取付構造は、第一の部材に対して第二の部材を所要の可動範囲で回動し得るように設け、前記第一の部材と前記第二の部材に対し、前記可動範囲において常に与圧が掛かり且つ所定位置で最も与圧が弱くなるように、フレーム状のバネの両端部をそれぞれ取付部を介して取り付けるものであって、少なくとも一方の取付部に、前記フレーム状のバネを外力によって前記所定位置における通常姿勢よりも弾性反発力を蓄積した取付準備姿勢とした際に前記フレーム状のバネの端部の挿入を許容する挿入部と、前記外力を解除した際に弾性反発力により前記端部に係合する係合部とを具備することを特徴とする。
【0007】
ここで、「フレーム状の」とは、取付対象であるフレームに沿うか或いは当該フレームに沿って延伸する態様のものを指すものとする。そして「フレーム状のバネ」は、樹脂バネをフレーム状に成形したものであっても、バネ鋼板をフレーム状に切り出したものであってもよい。また勿論、バネ鋼板に対して樹脂製のコーティングを施したものも含まれる。
【0008】
このようなものであれば、弾性付勢力によって取付部にバネの端部が脱落不能に支持された状態となるため、端部の位置を維持するための格別の部材を要することなく樹脂バネの取付位置を維持することができる。そうすることにより、バネを取り付けるための部品点数を有効に削減することができる。
【0009】
係るバネの取り付け構造を適用することにより、機構部品等が目立ちやすい椅子の背凭れ上部における部品点数を有効に削減することにより全体をコンパクトに構成した椅子を構成するためには、脚体に支持された基体に対してロッキング可能に支持される背凭れの下フレーム部と、当該下フレーム部に対してロッキング可能に支持される背凭れの上フレーム部とを有する椅子に対し、第一の部材である下フレーム部と第二の部材である上フレーム部との間にバネを設けた構成とすることが望ましい。
【0010】
しかも、フレーム部が下フレーム部に対してそれぞれ独立してロッキング可能に支持される左右に配置された一対の上フレーム要素備えた椅子に対し当該バネの取付構造を、下フレーム部と一対の上フレーム要素との間にそれぞれバネを設けたものとすることにより、一対の上フレーム要素に対し、それぞれ左右独立して弾性付勢することができる。
【0011】
一方、上述した構成の椅子に対して、第一の部材である基体と第二の部材である上フレーム部との間にバネを設けているものとすれば、下フレーム部が後傾するに伴って上フレーム部に対する弾性付勢力が強まる構成とすることができ、下フレーム部によって後傾した使用者の上半身を上フレーム部に安定して支持されることができる。
【0012】
また勿論、斯かるバネの取付構造は、上述のような上フレーム部並びに下フレーム部を有さない背フレームに対して適用しても良い。すなわち、脚体に支持された基体と、当該基体に対してロッキング可能に支持される背凭れの背フレームを有する椅子に対し、第一の部材である基体と第二の部材である背フレームとの間にバネを設けたものとすれば、背凭れのロッキングを、フレーム状の樹脂バネを適用することによって好適に行わせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フレーム状のバネの取付位置を格別の部材を要することなく維持することができる。そうすることにより、フレーム状のバネを取り付けるための部品点数を有効に削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る椅子Cは、図1ないし図5に示すように、脚体4と、脚体4に支持させた基体2と、基体2上に配設した座3と、水平支軸16を介して基体2に枢着した背凭れ1とを具備し、座3及び背凭れ1が連動して傾動するシンクロロッキング動作が可能なものである。
【0016】
ここで、当該椅子Cは、背凭れ1を、後述する第一の部材たる下フレーム部13と、後述する上フレーム部14と、この上フレーム部14を後方より支持する反力フレーム部15を構成するフレーム状のバネたる反力フレーム要素151a、151bとを備えているものである。そしてこの反力フレーム要素151a、151bの取付構造Zは、第一の部材である下フレーム部13に対して第二の部材である上フレーム部14を所要の可動範囲で回動し得るように設け、フレーム状の反力フレーム要素151a、151bの下端部152a、152b及び上端部153a、153bを、可動範囲において常に与圧が掛かり且つ通常姿勢(P)をなす所定位置で最も与圧が弱くなるように、それぞれ下取付部133a、133b及び上取付部143a、143bを介して取り付けるものである。加えて、上取付部143a、143bに、反力フレーム要素151a、151bを外力によって通常姿勢(P)よりも弾性反発力を蓄積した取付準備姿勢(Q)とした際に反力フレーム要素151a、151bの後述する下端部152a、152bの挿入を許容する後述する挿入部143a1、143b1と、外力を解除した際に弾性反発力により下端部152a、152bに係合する後述する係合部143a2、143b2とを具備することを特徴とするものであるが、このような取付構造Zについては後に詳細に説明する。
【0017】
以下、椅子Cを構成している各構成要素について、具体的に説明する。
【0018】
脚体4は、複数個のキャスターを装着している脚羽根41と、脚羽根41の中央より略垂直に立ち上がる脚支柱42とを備えており、脚羽根41と脚支柱42との間に介設したガススプリング(図示せず)の伸縮により脚支柱42を上下に突没させ得る。基体2は脚支柱42の上端に固定してあって、脚支柱42の突没操作を通じて座3及び背凭れ1の高さ位置を調節することができる。
【0019】
座3は、座受31に座面を構成するクッション体32を装着してなる。クッション体32は、例えば合成繊維のダブルラッセルメッシュの上にウレタンクッション材を重ね合わせた二層構造をなし、下層のメッシュが衝撃を吸収しつつ適度な弾力性を担保し、上層のウレタンクッション材が姿形の安定性を保つ。座3の前端部は、基体2に対し前後方向にスライド移動可能に支持させており、座3の後端部は、下記背フレーム11における下フレーム部13にヒンジ(図示せず)を介して取着している。
【0020】
背凭れ1は、背フレーム11の前面に背凭れ面Sを構成する張り部材12を張り設けたものである。背フレーム11は、基体2に対し水平支軸16回りに回動可能に連結している第一の部材たる下フレーム部13と、下フレーム部13の上端にヒンジ17を介して連結している第二の部材たる上フレーム部14と、上フレーム部14を後方より支持する反力フレーム部15とを備えている。
【0021】
下フレーム部13は、幅方向に離間させて配置した左右の下フレーム要素131a、131b同士を、剛性横架材132を以て相互に連結してなる。下フレーム要素131a、131b、剛性横架材132はともに、例えば金属製の剛体である。下フレーム要素131a、131bは、側面視水平支軸16の位置する前端から後方に延伸し、後端で上方に屈曲した略L字型をなす。また、下フレーム要素131a、131bには、反力フレーム部15を取り付けるための下取付部133a、133bを設けている。当該下取付部133a、133bについては後に説明する。
【0022】
上フレーム部14は、幅方向に離間させて配置した左右の上フレーム要素141a、141b同士を、弾性横架材142を以て相互に連結してなる。上フレーム要素141a、141bは例えば金属製の剛体であるが、弾性横架材142は例えば樹脂製の弾性体である。上フレーム要素141a、141bは、側面視ヒンジ17の位置する下端から、幾分後方に凹むように緩やかに湾曲しつつ上方に延伸し、その上端近傍で再度前方に膨出する弓形をなす。また、上フレーム要素141a、141bには、反力フレーム部15を取り付けるための上取付部143a、143bを設けている。当該上取付部143a、143bについては後に説明する。
【0023】
反力フレーム部15は、上フレーム要素141a、141bの各々を支持する同数のフレーム状のバネたる反力フレーム要素151a、151bよりなる。反力フレーム要素151a、151bの一端部たる上端部153a、153bは上フレーム要素141a、141bの上取付部143a、143bに連接し、他端部たる下端部152a、152bは下フレーム要素131a、131bの下向面に設けた下取付部133a、133bに連接する。但し、後述のように、反力フレーム要素151a、151bの下端部152a、152bを、座3や背凭れ1を支持する基体2に固定することを妨げない。反力フレーム要素151a、151bは、例えば弾性横架材142と同質の樹脂製の弾性体とする。本実施形態にあって、反力フレーム要素151a、151bは、側面視下フレーム要素131a、131b及び上フレーム要素141a、141bに沿うように延伸して略L字型をなすフレーム形状の樹脂バネであり、幅寸法はフレーム要素131a、131b、141a、141bと同程度かそれよりもやや狭小、前後または上下の厚みはフレーム要素131a、131b、141a、141bよりも薄く(付け加えれば、フレーム要素131a、131b、141a、141bと接合する端部から遠ざかるにつれて徐々に薄く)なるように成形している。これにより、反力フレーム要素151a、151bがフレーム要素131a、131b、141a、141bから枝分かれした、背フレーム11の一部であるかのような外観が形作られる。なお、上フレーム部14を後方へ動かしていない図3に示す状態において、反力フレーム部15は、通常姿勢(P)をなしている。そしてこの通常姿勢(P)において反力フレーム要素151a、151bが上フレーム部14に与える与圧、すなわち弾性付勢力を最も弱く構成している。
【0024】
また本実施形態では、当該反力フレーム要素151a、151bの両端である下端部152a、152b並びに上端部153a、153bを下取付部133a、133b並びに上取付部143a、143bを介して下フレーム部14並びに上フレーム部15に、本発明に係る取付構造Zによって取り付けているが、当該取付構造Zに関する具体的な説明は後述する。また、図12及び図13に示す通り、上端部153b及び下端部152bにはそれぞれ後述する1本の抜け止めビス154を挿通させるナット孔155を設けている(下端部152bにおけるビス挿通孔155は図示せず)が、抜け止めビス154並びにナット孔155についても後述する。
【0025】
下フレーム要素131a、131bと上フレーム要素141a、141bとを互いに枢着するヒンジ17の周辺、具体的には下フレーム要素131a、131bの後端から上端近傍にかけて及び上フレーム要素141a、141bの下端近傍の範囲で、側面視フレームの前面が前方に膨出するような湾曲形状をなしている。既に述べたように、上フレーム要素141a、141bの上端近傍においても、側面視フレームの前面が前方に膨出するような湾曲形状をなしている。しかして、上記の下フレーム要素131a、131b及び上フレーム要素141a、141bの湾曲形状をなす部位に架け渡すように、張り部材12を張り設けている。
【0026】
張り部材12は、伸縮性に富む張り地を主体とする。張り地は、例えば合成樹脂のダブルラッセルメッシュにさらにエラストマ糸等の弾性糸を編み込んだもので、強度とクッション性とを両備している。張り地は、表裏で見え方(色彩、模様、光沢等)が異なる。張り地の上辺及び左右の側辺は、正面視三方枠状または四方枠状をなすバックアップ材(図示せず)で保形している。バックアップ材は、例えば樹脂製の薄板体で、特に張り地の左右の側辺が内側方に撓もうとすることを防ぎ、張り地を張った状態に保つ。張り部材12の上端部は左右の上フレーム要素141a、141bに装着して支持させ、下端部は左右の下フレーム要素131a、131bに装着して支持させる。このとき、バックアップ材は板ばねの作用を営み、張り地を前方に押圧して張り出させる。
【0027】
因みに、張り部材12の背後、着座者の腰部に対応する高さ位置に、ランバーサポートベルト18を架け渡しておくこともできる。着座者が身体を背凭れ面Sに凭せかけた場合にも、ランバーサポートベルト18を架け渡している部位はランバーサポートベルト18の長さに応じた深度以上には後方に沈み込まない。
【0028】
本実施形態の椅子Cは、座3及び背凭れ1が連動して傾動するシンクロロッキング動作が可能である。図6に示すように、シンクロロッキング動作では、背フレーム11全体が水平支軸16回りに回動することで背凭れ1が前後に傾動する。同時に、座3の後端部が背フレーム11に連動して上下に揺動し、かつ座3の前端部が前後にスライドする。
【0029】
その上で、本実施形態の椅子Cは、着座者が着座したまま後ろを振り向いたり、手を伸ばしたり、身体をねじったりする動きに追随して、背凭れ面Sの上部の左半部のみ、または右半部のみを後方に変位させる動作が可能である。背凭れ面Sの上部を支持している上フレーム部14は、左右に対をなす上フレーム要素141a、141bが互いに独立して前後動する。即ち、左側の上フレーム要素141aは左側の下フレーム要素131aにヒンジ17を介して連結し、右側の上フレーム要素141bは右側の下フレーム要素131bにヒンジ17を介して連結しており、これら上フレーム要素141a、141bが個別に回動し得る。
【0030】
図7に示すように、上フレーム要素141a、141bをヒンジ17回りに後傾させたとき、下フレーム要素131a、131b及び上フレーム要素141a、141bの湾曲形状をなす部位に張り部材12が接触する面積が徐々に増大するとともに、張り地が張力を増しつつ上下に伸長する。並びに、反力フレーム要素151a、151bがアングルを拡げるように変形して反力を蓄積し、上フレーム要素141a、141bを原位置に、すなわち反力フレーム要素151a、151b自体を通常位置(P)に復帰させる方向、つまり前方に弾性付勢する。
【0031】
そして、何れか一方の上フレーム要素141a(141b)を他方の上フレーム要素141b(141a)に対し相対的に前後方向に変位させれば、図8、図9に示すように、背凭れ面Sの形状を三次元的に変化させることができる。この動作において、下フレーム部13は必ずしも駆動されない。また、左右に対をなす下フレーム要素131a、131bは剛性横架材132を介して剛体連結されているため、それら下フレーム要素131a、131bは常に一体的に運動する。故に、背凭れ面Sの下部、着座者の腰部より下方にあたる部分は、恒常的に一定の形状を維持する。
【0032】
着座者の動きに伴い、上フレーム要素141a、141bの一方が他方に対し相対的に前後動すると、左右の上フレーム要素141a、141b間の距離が増大する。その際、両上フレーム要素141a、141bの離間距離の増大に対応するべく、弾性横架材142が弾性変形する。本実施形態の弾性横架材142は、上フレーム要素141a、141bの上端部同士を相互に連結しており、平面視後方に凹む湾曲形状をなす状態で組み付けてある。弾性横架材142の前後の厚みは、上フレーム要素141a、141bに連結している両端部から幅方向の中央に向かうにつれて徐々に薄くなっており、両端部よりも中間部の方が比較的変形し易くなっている。これは、上フレーム要素141a、141bと弾性横架材142との連結箇所に負荷が集中することを避けるためである。上フレーム要素141a、141bの一方が他方に対し相対的に前後動するとき、弾性横架材142は曲率を減少させるように変形して両端間の距離を伸張する。
【0033】
加えて、背凭れ面Sが受けた着座者の荷重は、張り部材12を介して上フレーム要素141a、141bに作用し、上フレーム要素141a、141bを内側方に倒れ込ませようとしてヒンジ17に負荷をかける。このような負荷を打ち消し低減する目的で、弾性横架材142を、上フレーム要素141a、141bを幅方向に離反させるような初期弾性力を発揮する状態で組み付けている。
【0034】
尤も、左右両側の上フレーム要素141a、141bをともに傾動させることもできる。その場合、例えば着座者の背を大きく反らせるようなストレッチが可能になる。
【0035】
ここで、本実施形態に係るフレーム状のバネの取付構造Zは、反力フレーム部15の両端部すなわち反力フレーム要素151a、151bの上端部153a、153b及び下端部152a、152bをそれぞれ上取付部143a、143b及び下取付部133a、133bを介して取り付けている。加えて、本実施形態では上取付部143a、143bに、反力フレーム部15を外力によって通常姿勢(P)よりも弾性反発力を蓄積した取付準備姿勢(Q)とした際に、上端部153a、153bの挿入を許容する挿入部143a1、143b1と、外力を解除した際に弾性反発力により上端部153a、153bに係合する係合部143a2、143b2とを具備することを特徴とするものである。
【0036】
以下、取付構造Zについて、図10〜図15を参照して具体的に説明する。なお、反力フレーム部15は、左右対称形状をなしている反力フレーム要素151a、151bによってなるものであるため、以下、反力フレーム要素151bのみを図示して説明するものとする。
【0037】
反力フレーム要素151bは、図10に示すように、上フレーム要素14並びに下フレーム要素13から取り外した状態では、図3に示した通常姿勢(P)よりも上端部153bと下端部152bとの間隔が若干開いた形状となっているため、取り付けた状態において、常に上フレーム要素に対して与圧を付与した状態となる。また、反力フレーム要素151bの上端部153b及び下端部152bは、後述する挿入部143b1、133b1にそれぞれ嵌り得る収容部153b1、152b1を主体としている。そして、上端部153bの収容部153b1における上側面を後述する係合部143b2に係り合う係合面153b2としている。加えて、上端部153b及び下端部152bにはそれぞれ後述する1本の抜け止めビス154(図12、図13)を螺着させるナット孔155を設けている(下端部152bにおけるナット孔155は図示せず)。このナット孔155は、例えば反力フレーム要素151bの所定箇所に板ナットを内蔵させることによって構成したものである。
【0038】
一方、下フレーム要素の下側には、図10、11に示すように、下取付部133bを設けている。当該下取付部133bは、挿入部133b1を主に有している他、抜け止めビス154を螺着させる図示しないナット要素を有している。
【0039】
他方、上フレーム要素141bの背面側には、図10〜図13等に示すように、上143b取付部を設けている。取付部143bは、反力フレーム要素151bの上端部153b1を挿入させる挿入部143b1、係合面153b2に当接し得る係合部143b2、そして抜け止めビス154を上フレーム要素141bの前側から挿通させるビス穴144とを有している(図12、図13)。
【0040】
そして、反力フレーム要素151bを、上フレーム要素141b並びに下フレーム要素131bに取り付ける際には、図11に示すように、まずは下フレーム要素141bの取付部143bにおける挿入部143b1に反力フレーム要素151bの下端部152bすなわち収容部152b1を差し込み、図示しない抜け止めビス154を用いて固定することにより反力フレーム要素151bを下フレーム要素131bにのみ取り付けた状態とする。そして、その状態から更に反力フレーム要素151bを撓ませることによって、図11に示すような取付準備姿勢(Q)を構成させる。次に、上端部153bの収容部153b1を上取付部143に設けた挿入部143b1に差し込むことによって反力フレーム要素151bの上端部153bを上取付部153に取り付ける。
【0041】
このとき、図13に模式的に示すように、通常姿勢(P)において、反力フレーム要素151bの弾性反発力が矢印に示す方向に働いているとともに、上取付部143側には当該矢印方向に対して当接させる係合部143b2を配しているため、反力フレーム要素151bは上フレーム要素141bに対して抜脱不能に保持されていることとなる。そして最後に、不意に引き抜き方向の外力が反力フレーム要素151bに働いても誤って抜脱してしまうといった偶発的な不具合を回避するために、抜け止めビス154をビス穴144を通してナット孔155に螺着することによって取り付けを完了する。
【0042】
なお、上取付部143bに対して抜け止めビス154を用いない場合としても、引き抜き方向への移動を禁止し得る引掛部等の抜け止め構造を別途採用することにより、いわゆるノンビスによる取り付けを実現することも可能である。
【0043】
また、図14に示すように、本実施形態の第一の変形例として、反力フレーム要素151bの取り付けを抜け止めビス154無しで、すなわちノンビスによって行うことも可能である。つまり、同図に本実施形態の変形例として示すように、上フレーム要素141b並びに下フレーム要素131bに、挿入部141b1、131b1並びに係合部141b2、131b2を有している取付部141b、131bをそれぞれ設けることにより、同図中央に示す取付準備姿勢(Q)から上端部153b並びに下端部152bを取付部141b、131bにそれぞれ挿入して、反力フレーム要素151bを取り付けることが可能である。なお同変形例において、上記実施形態と同様の作用を示す構成要素に対して同様の符号を付して示している。
【0044】
以上のように、本実施形態に係るフレーム状のバネたる反力フレーム要素151a、151bの取付構造Zは、挿入部153a1、153b1と、係合部153a2、153b2とを具備する構成としているので、図13に示すように弾性付勢力によって取付部143a、143bに上端部153a、153bが脱落不能に支持された状態となるため、上端部153a、153bの取付位置を維持するための格別の部材を要することなく反力フレーム要素を取り付けることが可能である。そうすることにより、反力フレーム要素151a、151bを取り付けるための部品点数を有効に削減することができる。
【0045】
特に本実施形態では斯かる取付構造Zを、第一の部材である椅子Cの下フレーム部13と第二の部材である上フレーム部14との間に適用しているので、上フレーム部14に好適に弾性付勢することができるのみならず、反力フレーム部15すなわち反力フレーム要素151a、151bを上フレーム部14及び下フレーム部13に沿うように構成している。しかも取り付けるための部品を偶発的な抜け止め防止のための抜け止めビス154を1本、左右で計4本のみとして、外方に露出して目立ち易い背凭れ1における部品点数を有効に削減することにより、椅子C全体をコンパクトに構成したものとしている。
【0046】
さらに、上フレーム部13が下フレーム部14に対してそれぞれ独立してロッキング可能に支持される一対の上フレーム要素141a、141bに対してそれぞれ反力フレーム要素151a、151bを設けた構成としているので、反力フレーム要素151a、151bがそれぞれ左右独立して好適に弾性付勢し得るものとなっている。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0048】
例えば、本発明に斯かるフレーム状のバネの取付構造Zは、上述のような背凭れ1の下フレーム部13と上フレーム部14との間に取り付ける態様に限定されるものではなく、以下に記す第二の変形例並びに第三の変形例のように取付構造Zを適用することも可能である。なお以下の変形例において、上記実施形態並びに上記第一変形例と同様の作用を示すものについては同様の符号を付して詳細な説明を省略するものとする。そして上記実施形態に係る反力フレーム部15に対して同変形例において対応する反力フレーム部A15に係る各構成要素については反力フレーム部15の各構成要素の頭文字に「A」を付したものとして、その詳細な説明を省略するものとする。
【0049】
すなわち、図16に示すように、第一の部材である基体2に設けた基体取付部203bと第二の部材である上フレーム要素141bに設けた上取付部143bとの間に反力フレーム要素A151bを設けたものであってもよい。このように本変形例に係る取付構造Zでは、反力フレーム要素A151bをフレーム状のバネとすることによって、完全に離間している基体2と上フレーム要素141bとに跨って連結し、弾性付勢し得る構成を実現している。このようなものであれば、下フレーム部13が後傾動作するに伴って反力フレーム要素A151bの撓みが大きくなる構成、すなわち上フレーム要素141bに対する弾性付勢力が強まる構成を好適に構成して、下フレーム部14とともに後傾させた使用者の背を、反力フレーム部A15によって強く弾性付勢された上フレーム部14が動き難く好適に支持し得る構成とすることができる。
【0050】
また勿論、図17に示すように、本発明に斯かる取付構造Zを、脚体4に支持された基体2と、当該基体2に対してロッキング可能に支持される背凭れ1の背フレーム110を有する椅子Cに対して反力フレーム部A15を適用してもよい。
【0051】
すなわち同図に示すように、第一の部材である基体2と第二の部材である背フレーム110との間に反力フレーム部A15すなわち反力フレーム要素A151bを設けている椅子Cに対しても好適に適用することができる。つまり、本発明は、同図に図示の椅子Cに限られず、背凭れ1を回動すなわち後傾可能に支持している全ての椅子に対して適用することができる。
【0052】
また、図示しないが、上フレーム部と下フレーム部とによって背フレームを構成している椅子に対して、反力フレーム部を基体と、下フレーム部との間に設けたものであってもよい。そのようなものであれば、下フレーム部のロッキング動作において反力フレーム部が下フレーム部に対して好適に弾性付勢し得るものとなる。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態の椅子を正面側から見た斜視図。
【図2】同椅子を背面側から見た斜視図。
【図3】同椅子の側面図。
【図4】同椅子の背面図
【図5】同椅子の平面図。
【図6】同椅子のシンクロロッキング動作を示す側面図。
【図7】同椅子の上フレーム要素を後方に変位させた状態を示す側面図。
【図8】図椅子の背凭れ面変形動作を示す斜視図。
【図9】同椅子の背凭れ面変形動作を示す平面図。
【図10】同椅子のシンクロロッキング動作を示す側面図。
【図11】同実施形態に係る取り付け構造を示す模式的な側面図。
【図12】同取り付け構造を示す要部説明図。
【図13】同上。
【図14】同実施形態の第一の変形例に係る取り付け構造を示す模式的な側面図。
【図15】同上。
【図16】同実施形態の第二の変形例に係る模式的な側面図。
【図17】同実施形態の第三の変形例に係る模式的な側面図。
【符号の説明】
【0055】
1…背凭れ
13…第一の部材(下フレーム部)
133a、133b…取付部(下取付部)
14…第二の部材(上フレーム部)
143a、143b…取付部(上取付部)
133a1、133b1、143a1、143b1…挿入部
133a2、133b2、143a2、143b2…係合部
151a、151b、A151a、A151b…フレーム状のバネ(反力フレーム要素)
152a、152b、A152a、A152b…フレーム状のバネの端部(下端部)
153a、153b、A153a、A153b…フレーム状のバネの端部(上端部)
2…第一の部材(基体)
203a、203b…取付部(基体取付部)
110…第二の部材(背フレーム)
113a1、113b1…挿入部
113a2、113b2…係合部
4…脚体
C…椅子
P…通常姿勢
Q…取付準備姿勢
Z…バネの取付構造(取付構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の部材に対して第二の部材を所要の可動範囲で回動し得るように設け、前記第一の部材と前記第二の部材に対し、前記可動範囲において常に与圧が掛かり且つ所定位置で最も与圧が弱くなるように、フレーム状のバネの両端部をそれぞれ取付部を介して取り付けるものであって、
少なくとも一方の取付部に、前記フレーム状のバネを外力によって前記所定位置における通常姿勢よりも弾性反発力を蓄積した取付準備姿勢とした際に前記フレーム状のバネの端部の挿入を許容する挿入部と、前記外力を解除した際に弾性反発力により前記端部に係合する係合部とを具備することを特徴とするバネの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のバネの取付構造を、脚体に支持された基体に対してロッキング可能に支持される背凭れの下フレーム部と、当該下フレーム部に対してロッキング可能に支持される背凭れの上フレーム部とを有する椅子に対して適用したものであって、
前記第一の部材である前記下フレーム部と前記第二の部材である前記上フレーム部との間に前記バネを設けていることを特徴とするバネの取付構造。
【請求項3】
前記上フレーム部が前記下フレーム部に対してそれぞれ独立してロッキング可能に支持される左右に配置された一対の上フレーム要素を備えたものであって、前記下フレーム部と前記一対の上フレーム要素との間にそれぞれ樹脂バネを設けている請求項2記載のバネの取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載のバネの取付構造を、脚体に支持された基体と、当該基体に対してロッキング可能に支持される背凭れの下フレーム部と当該下フレーム部に対してロッキング可能に支持される背凭れの上フレーム部とを有する椅子に対して適用したものであって、
前記第一の部材である前記基体と前記第二の部材である前記上フレーム部との間に前記バネを設けていることを特徴とするバネの取付構造。
【請求項5】
請求項1に記載のバネの取付構造を、脚体に支持された基体と、当該基体に対してロッキング可能に支持される背凭れの背フレームを有する椅子に対して適用したものであって、
前記第一の部材である前記基体と前記第二の部材である前記背フレームとの間に前記バネを設けていることを特徴とするバネの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−130345(P2007−130345A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328169(P2005−328169)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(304046982)コクヨファニチャー株式会社 (112)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】