バラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法
【課題】膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、短時間に膜カートリッジを交換できるバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法の提供。
【解決手段】膜処理設備において、膜カートリッジは、マニホールド構造によって3〜20本並設されて膜ユニットを複数構成すると共に、各々の膜ユニットを脱着可能に集合してなる膜ユニット集合体を構成し、1又は2以上の膜ユニット毎に、膜カートリッジの不具合を検出する検出手段を設け、検出手段が、1又は2以上の膜ユニットを構成する何れかの膜カートリッジに不具合が発生したことを検出した後、不具合が発生した膜カートリッジを含む1又は2以上の膜ユニットを、膜ユニット集合体から引き抜いて、1又は2以上の膜ユニットごと交換する。
【解決手段】膜処理設備において、膜カートリッジは、マニホールド構造によって3〜20本並設されて膜ユニットを複数構成すると共に、各々の膜ユニットを脱着可能に集合してなる膜ユニット集合体を構成し、1又は2以上の膜ユニット毎に、膜カートリッジの不具合を検出する検出手段を設け、検出手段が、1又は2以上の膜ユニットを構成する何れかの膜カートリッジに不具合が発生したことを検出した後、不具合が発生した膜カートリッジを含む1又は2以上の膜ユニットを、膜ユニット集合体から引き抜いて、1又は2以上の膜ユニットごと交換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油等を輸送する貨物用船舶には、航行時の船体の安定性を保つためにバラストタンクが設けられている。通常、原油等が積載されていないときには、バラストタンク内をバラスト水で満たし、原油等を積み込む際にバラスト水を排出することにより、船体の浮力を調整し、船体を安定化させている。
【0003】
このようにバラスト水は、船舶の安全な航行のために必要な水であり、通常、荷役を行う港湾のバラスト原水が利用される。その量は、世界的にみると年間100億トンを超えるといわれている。
【0004】
ところで、バラスト水中には、それを取水した港湾に生息する微生物や小型・大型生物の卵が混入しており、船舶の移動に伴い、これら微生物や小型・大型生物の卵が同時に異国に運ばれることになる。
【0005】
従って、もともとその海域には生息していなかった生物種が、既存生物種に取って代わるといった生態系の破壊が深刻化している。
【0006】
このような背景の中、国際海事機関(IMO)の外交会議において、バラスト水処理装置等に係る定期的検査の受検義務が採択され、2009年以降の建造船から適用されている。
【0007】
また、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための条約(以下、条約という)により、バラスト水の排出基準は、バラスト水の排出時に外洋に存在する微生物数の100分の1程度まで殺菌あるいは除菌されていることが要求されている。
【0008】
バラスト水中の微生物を殺菌する技術としては、オゾン殺菌技術(特許文献1)が知られている。またオゾン使用量を削減する観点から、本出願人は、膜処理技術も提案している(特許文献2)。膜処理に用いられる膜は、一般に、分離対象となる微生物の大きさを考慮して、精密ろ過膜や限外ろ過膜が用いられている。膜のタイプとしては、平膜(特許文献3)やスパイラル膜(特許文献4)などが知られている。
【0009】
しかし、膨大な量のバラスト水を短時間で処理するためには、膨大な量の膜を備える必要がある。
【0010】
特許文献5には、カートリッジ内にスパイラル膜を直列に並設した構成が開示されているが、直列に並設したのでは、大量の膜カートリッジを備えても膜処理の高速化は見込めない。
【0011】
処理を高速化するためには、大量の膜カートリッジを並列に設置する必要がある。
【0012】
複数の膜カートリッジを並列に設置した例としては、ヘッダー管に対して、モノリス状フィルタを備えてなる複数の膜カートリッジを、それぞれ配管によって連結し、並列に設置する構成が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US2003/0015481
【特許文献2】特開2007−268379号公報
【特許文献3】特許第3160609号公報
【特許文献4】特開2000−271454号公報
【特許文献5】特開2002−28453号公報
【特許文献6】特開2005−270810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上述した配管で並列させて各々の膜カートリッジを独立させて運転する構成においては、原水流入配管、濃縮液配管、処理液配管などが膜カートリッジ毎に接続されているので、配管の数が膜カートリッジの数に応じて必要となる。
【0015】
バラスト処理では、膜カートリッジの数が数百本必要になるので、それに応じて配管の数も必要になり、設置スペースの増大や設備コスト増を招く欠点がある。
【0016】
この様な膨大な数の膜カートリッジを稼働させる際、何れかの膜カートリッジに不具合が発生した場合に、特許文献6のように、各々の膜カートリッジを独立させて運転する構成では、不具合を検出する検出器は、各々の膜カートリッジ毎に必要になり、膨大なコスト増を招く問題がある。
【0017】
また、不具合を検出できても、その不具合の膜カートリッジを交換するには、交換するための作業スペースが必要になり、数百本の膜カートリッジ毎に作業スペースを確保しようとすると膨大なスペースが必要になる。船舶内という限られたスペース内で、上記の作業スペースを確保することは困難である。
【0018】
さらに、バラストタンクに大量のバラスト水を充填するのに、1日程度の時間で行わなければならないというバラスト特有の課題もある。船舶が積み荷を降ろして再出港するまでの時間が限られているからである。
【0019】
従って、バラスト水の漲水前に、膜の不具合検出ないし交換のために割くことができる時間は極めて限られており、短時間で行えるものでなければならない。
【0020】
そこで、本発明者は、膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、しかも、短時間に膜カートリッジを交換するという課題をすべて解決するには、上記の従来の膜カートリッジ毎の運転という思想では限界があることを見出し、本発明に至った。
【0021】
本発明の課題は、膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、しかも、短時間に膜カートリッジを交換できるバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を提供することにある。
【0022】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、膜カートリッジを集合させて膜ユニットを構成し、膜ユニット毎の運転を行う思想を導入し、その膜ユニット中の1本に不具合があったとしても、膜ユニット毎交換することにより、不具合の生じた膜カートリッジを迅速に交換でき、設備が低コスト且つ省スペースなバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を提供するという課題を解決できることを見出した。つまり、不具合のない膜カートリッジも、不具合のある膜カートリッジと共に交換されることにより、無駄のように見えるが、この従来にない発想により、実用的なバラスト水処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を考案するに至った。
【0024】
そこで、請求項1に係る発明は、膜モジュールを内部に装填してなる膜カートリッジを、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数備え、該膜カートリッジにバラスト原水を供給して処理水を得るバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法であって、前記膜処理設備において、前記膜カートリッジは、マニホールド構造によって3〜20本並設されて膜ユニットを複数構成すると共に、各々の前記膜ユニットを脱着可能に集合してなる膜ユニット集合体を構成し、1又は2以上の前記膜ユニット毎に、前記膜カートリッジの不具合を検出する検出手段を設け、前記検出手段が、前記1又は2以上の膜ユニットを構成する何れかの前記膜カートリッジに不具合が発生したことを検出した後、不具合が発生した前記膜カートリッジを含む前記1又は2以上の膜ユニットを、前記膜ユニット集合体から引き抜いて、該1又は2以上の膜ユニットごと交換することを特徴とするバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、しかも、短時間に膜カートリッジを交換できるバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】バラスト水処理用の膜処理設備の説明図
【図2】図1に用いられる膜カートリッジの要部断面図
【図3】検出手段の態様を示す概略図
【図4】マニホールド構造の第1態様を示す斜視図
【図5】マニホールド構造の第1態様を示す要部断面図
【図6】マニホールド構造の第2態様を示す要部断面図
【図7】マニホールド構造の第3態様を示す要部断面図
【図8】バラスト水処理用の膜処理設備の態様を示す説明図
【図9】膜ユニット集合体の第1態様を示す斜視図
【図10】膜ユニット集合体の第2態様を示す斜視図
【図11】膜ユニット集合体の第3態様を示す斜視図
【図12】ヘッダー管毎に検出器を設けた一例を示す概略図
【図13】ヘッダー管毎に検出器を設けた他の例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1はバラスト水処理用の膜処理設備の説明図、図2は図1に用いられる膜カートリッジの要部断面図である。
【0029】
図1において、1は膜カートリッジであり、該膜カートリッジ1は、図2に示すように、バラスト処理水集水管100と該集水管100の外周に巻回された複数の封筒状膜(スパイラル膜)101からなるスパイラル膜モジュールを内部に装填している。
【0030】
封筒状膜101は、該集水管100の外周に高密度に巻回されている。このため、他の平膜等の膜と比べて単位体積あたりの処理量が大きく、比較的省スペースである。また、カートリッジ化されているために、槽内に浸漬して使用するタイプの膜と比べて、設置場所を選ばず、ユニット化にも好適である。
【0031】
該集水管100の外周に巻回された2以上の封筒状膜101の各々の封筒体の内部には、膜を封筒状に張設すると共に、処理水(透過水)を該集水管100に移送するための支持体102が設けられている。
【0032】
隣接する封筒状膜101の間には、封筒状膜同士が密着して膜面積が狭くなることを防止するため、及びバラスト原水流路103を形成するためにスペーサ104が挿設されていてもよい。なお、原水流路103は、スパイラル膜の外部で、該集水管100と膜カートリッジ1の内面に形成される。
【0033】
本発明において、膜カートリッジ1は、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数を備え、好ましくは、1日でバラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数を並列に設置して備えることである。
【0034】
処理時間T(Day)の間に、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な膜カートリッジの本数nは、バラストタンク容量をQ(m3)、1本の膜カートリッジあたりの膜面積をS(m2)、初期フラックス(透過流束)をF0(m/Day)、処理時間をT(Day)とした場合、以下の式で表せる。
n=α・Q/(S・F0・T)
従って、1日で処理水を満水にする場合は、以下の式で表せる。
n=α・Q/(S・F0)
αは、ろ過時及び膜洗浄時における処理量の低下を補正する係数で、通常1.05〜1.30の範囲である。
【0035】
例えば、1本の膜カートリッジの膜面積が、38m2のものを使用し、初期フラックスが、1.5m/Dのものを使用する。バラストタンクの容量が20000m3の場合、1日で処理水を供給する場合には膜カートリッジは約370〜460本必要である。
【0036】
これは一例であり、バラスト水処理設備では、大量のバラスト水を高速で処理する必要があるため、1つのバラスト水処理設備あたり、数百〜数万の膜カートリッジを備える場合もある。
【0037】
図1において、4は膜ユニットであり、前記膜カートリッジ1を3〜20本並設させて構成される。
【0038】
前記並設の方法は、膜カートリッジ1が並列に設置されていれば、何れでもよく、従来の配管等によって構成されたマニホールド構造による並設であってもよいが、後に詳述する特有の構成を有するマニホールド構造によって並設することが好ましい。
【0039】
バラスト原水10は、バラストポンプ11によって汲み上げられ、バラスト原水吸込み管12を介して膜ユニット4へ供給される。13はバラスト原水吸込み管12に設けられる開閉弁である。14はバラスト原水吐出管(洗浄排液放流管)、15はバラスト原水吐出管14に設けられる開閉弁である。洗浄排液放流管14は、洗浄排液をたとえば海へ放流する。
【0040】
本発明において、バラスト原水は、船舶バラスト水として従来使用されてきた水であればよく、海水がおもに使用される。
【0041】
膜ユニット4に供給されたバラスト原水は、マニホールド構造により、ユニット化された膜ユニット4が備える複数の膜カートリッジ1の原水流路103に導入され、膜処理され、生じた処理水はバラストタンク16に供給される。
【0042】
17は処理水管、18は処理水管17に設けられる開閉弁である。
【0043】
S1及びS2は膜カートリッジに発生した不具合を検出する1つの検出手段を構成する要素である。例えば圧力差を検出する場合、圧力計S1と圧力計S2の計測値の差を取って圧力差を検出することが可能である。
【0044】
図1の態様では、1つの膜ユニット4毎に1つの検出手段が設けられている。
【0045】
本態様において、何れかの検出手段が、膜カートリッジの不具合の発生を検出した場合は、該検出手段によって監視されている膜ユニットを交換する。
【0046】
また、本発明においては、2以上の膜ユニット4毎に1つの検出手段を設けてもよい。
【0047】
図3は、検出手段の態様を示す概略図である。
【0048】
図3において、要素S1及びS2からなる1つの検出手段は、2つの膜ユニット4毎に1つずつ設けられている。
【0049】
本態様において、何れかの検出手段が、膜カートリッジの不具合の発生を検出した場合は、該検出手段によって監視されている膜ユニットをすべて交換する。
【0050】
膜カートリッジに発生する不具合としては、フラックスの低下、液漏れ等様々な不具合が考えられるが、特に迅速な対応が要求されるのが、ピンホールの発生である。
【0051】
ピンホールを有するスパイラル膜を備えた膜カートリッジを用いてバラスト水の膜処理を行った場合、バラストタンクに漲水されたバラスト水に、基準値以上の微生物が混入する恐れがある。
【0052】
この様な事態が生じた場合、出港前であっても、船体のバランスを失う恐れがあるため、バラスト水の汲み直しは困難であり、出港後であれば、バラスト水を排出できないことになり、積み荷の搬入が不可能となる。
【0053】
例えば膜に発生したピンホールを検出するために、処理水中の粒径等を検出可能なセンサーを設ける場合、一本一本の膜カートリッジにセンサーを取り付けたのでは高コストとなり、逆に、設備全体に1つ取り付けたのではピンホールが発生した膜カートリッジを特定することができず、全ての膜処理を停止して対応しなければならない。
【0054】
これに対して、本発明においては、各々の膜ユニット毎にセンサーを設けることにより、一本一本の膜カートリッジにセンサーを取り付けた場合より低コスト化が図られる。また、不具合を発生した膜カートリッジ以外の膜カートリッジも除去され、交換されることとなるが、上述したように、不具合を生じた膜カートリッジの交換には迅速性が最優先され、更に、引き抜かれる膜カートリッジは膜処理設備を構成する全膜カートリッジのごく一部に過ぎないため、膜処理能力を維持したまま、膜カートリッジの交換等の対処が可能である。つまり、バラスト水処理用の膜処理設備においては、極めて合理的な交換方法である。
【0055】
なお、上記の態様では、検出手段が要素S1及びS2からなる場合を示したが、要素は1又は2以上を組み合わせて1つの検出手段を構成してもよい。例えば、1つのS1のみを設けて、圧力差ではなく、圧力の絶対値から膜カートリッジの不具合を検出してもよい。
【0056】
また、例えば、あらかじめピンホールが発生していない基準となる膜ユニットから得られる圧力と比較して、ピンホールの発生を検知してもよい。
【0057】
また、検出手段による膜カートリッジに発生する不具合の監視は、膜処理中に常時又は定期的に行うことができる。
【0058】
また、膜処理を始める前に空気導入手段によって空気導入したバラスト原水を膜ユニットに送液し、圧力を高めた状態を形成し、ピンホールの検出感度を向上させて検出を行うことも好ましいことである。
【0059】
さらに、本発明においては、膜カートリッジ1を並設して膜ユニット4を構成する際に、特有のマニホールド構造を用いることで、更なる効果を得ることができる。
【0060】
図4はマニホールド構造の第1態様を示す斜視図、図5はマニホールド構造の第1態様を示す要部断面図である。
【0061】
図示の態様では、並設された6本の膜カートリッジの一端(図面上左側)に第1マニホールド2を備え、他端に第2マニホールド3を備えている。
【0062】
第1マニホールド2は、直方体状のマニホールド本体200内にバラスト原水室201を有し、該バラスト原水室201は、取水されたバラスト原水を導入する開口であるバラスト原水導入口202を備える。
【0063】
また第1マニホールド2は、前記膜カートリッジ1のバラスト原水流路103にバラスト原水を送液可能なバラスト原水入口203を備える。
【0064】
第1マニホールド2と膜カートリッジ1の接続手法は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0065】
バラスト原水入口203とバラスト原水流路103の接続は格別限定されないが、直接接続すると圧力損失を減少できて好ましい。例えば図示のようなバラスト原水入口203がバラスト原水室201の側壁に設けられた開口である場合には、その開口に向けてバラスト原水流路103を連通させる態様が好ましい。
【0066】
前記第2マニホールド3は、直方体状のマニホールド本体300内に洗浄排液室301と処理水室302を備える。洗浄排液室301と処理水室302は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接して洗浄排液室301を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に処理水室302を配置する態様が挙げられる。
【0067】
洗浄排液室301は、膜カートリッジ1のバラスト原水流路103から送られる洗浄排液を導入可能な洗浄排液導入口303を備える。
【0068】
第2マニホールド3と膜カートリッジ1の接続は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0069】
また、洗浄排液室301は、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出するための洗浄排液出口304を側壁に備える。
【0070】
処理水室302は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口305と、処理水室302内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口306を備える。
【0071】
処理水室302は、洗浄排液を外部に排出するための排出口307を設けることができる。この場合、前記洗浄排液出口304に洗浄排液排出管308を設け、その洗浄排液排出管308を排出口307に連結することにより、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出できる。
【0072】
なお、図示の例では、洗浄排液出口304を洗浄排液室301の側壁に備えているが、洗浄排液室301の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、排出口307を設ける必要はない。
【0073】
マニホールドによる膜カートリッジの並設の態様は、格別限定されないが、好ましくは、水平に並設される態様が挙げられるが、複数の膜カートリッジを立体的に並設してもよい。
【0074】
以上のマニホールド構造を備えた膜ユニットを複数並設させて、バラスト水の処理を行うことができる。
【0075】
また、本発明のマニホールド構造は、図4及び図5の態様に限定されず、図6及び図7に示す態様であってもよい。
【0076】
図6は、マニホールド構造の第2態様を示す要部断面図である。
【0077】
第2態様において、第1マニホールド2は、直方体状のマニホールド本体200内にバラスト原水室201と処理水室204を備える。バラスト原水室201と処理水室204は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接してバラスト原水室201を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に処理水室204を配置する態様が挙げられる。
【0078】
バラスト原水室201は、取水されたバラスト原水を導入する開口であるバラスト原水導入口202を備える。
【0079】
また、バラスト原水室201は、前記膜カートリッジ1のバラスト原水流路103にバラスト原水を送液可能なバラスト原水入口203を備える。
【0080】
第1マニホールド2と膜カートリッジ1の接続手法は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0081】
バラスト原水入口203とバラスト原水流路103の接続は格別限定されないが、直接接続すると圧力損失を減少できて好ましい。例えば図示のようなバラスト原水入口203がバラスト原水室201の側壁に設けられた開口である場合には、その開口に向けてバラスト原水流路103を連通させる態様が好ましい。
【0082】
処理水室204は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口205と、処理水室204内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口206を備える。
【0083】
処理水室204は、バラスト原水をバラスト原水室201に導入するための導入口207を設けることができる。この場合、前記バラスト原水導入口202にバラスト原水導入管208を設け、そのバラスト原水導入管208を導入口207に連結することにより、バラスト原水をバラスト原水室201に導入できる。
【0084】
なお、図示の例では、バラスト原水導入口202をバラスト原水室201の側壁に備えているが、バラスト原水室201の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、導入口207を設ける必要はない。
【0085】
前記第2マニホールド3は、直方体状のマニホールド本体300内に洗浄排液室301を備える。
【0086】
洗浄排液室301は、膜カートリッジ1のバラスト原水流路103から送られる洗浄排液を導入可能な洗浄排液導入口303を備える。
【0087】
第2マニホールド3と膜カートリッジ1の接続は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0088】
また、洗浄排液室301は、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出するための洗浄排液出口304を側壁に備える。
【0089】
図7は、マニホールド構造の第3態様を示す要部断面図である。
【0090】
第3態様において、第1マニホールド2は、直方体状のマニホールド本体200内にバラスト原水室201と第1の処理水室204を備える。バラスト原水室201と第1の処理水室204は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接してバラスト原水室201を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に第1の処理水室204を配置する態様が挙げられる。
【0091】
バラスト原水室201は、取水されたバラスト原水を導入する開口であるバラスト原水導入口202を備える。
【0092】
また、バラスト原水室201は、前記膜カートリッジ1のバラスト原水流路103にバラスト原水を送液可能なバラスト原水入口203を備える。
【0093】
第1マニホールド2と膜カートリッジ1の接続手法は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0094】
バラスト原水入口203とバラスト原水流路103の接続は格別限定されないが、直接接続すると圧力損失を減少できて好ましい。例えば図示のようなバラスト原水入口203がバラスト原水室201の側壁に設けられた開口である場合には、その開口に向けてバラスト原水流路103を連通させる態様が好ましい。
【0095】
第1の処理水室204は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口205と、第1の処理水室204内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口206を備える。
【0096】
第1の処理水室204は、バラスト原水をバラスト原水室201に導入するための導入口207を設けることができる。この場合、前記バラスト原水導入口202にバラスト原水導入管208を設け、そのバラスト原水導入管208を導入口207に連結することにより、バラスト原水をバラスト原水室201に導入できる。
【0097】
なお、図示の例では、バラスト原水導入口202をバラスト原水室201の側壁に備えているが、バラスト原水室201の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、導入口207を設ける必要はない。
【0098】
前記第2マニホールド3は、直方体状のマニホールド本体300内に洗浄排液室301と第2の処理水室302を備える。洗浄排液室301と第2の処理水室302は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接して洗浄排液室301を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に第2の処理水室302を配置する態様が挙げられる。
【0099】
洗浄排液室301は、膜カートリッジ1のバラスト原水流路103から送られる洗浄排液を導入可能な洗浄排液導入口303を備える。
【0100】
第2マニホールド3と膜カートリッジ1の接続は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0101】
また、洗浄排液室301は、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出するための洗浄排液出口304を側壁に備える。
【0102】
第2の処理水室302は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口305と、第2の処理水室302内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口306を備える。
【0103】
第2の処理水室302は、洗浄排液を外部に排出するための排出口307を設けることができる。この場合、前記洗浄排液出口304に洗浄排液排出管308を設け、その洗浄排液排出管308を排出口307に連結することにより、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出できる。
【0104】
なお、図示の例では、洗浄排液出口304を洗浄排液室301の側壁に備えているが、洗浄排液室301の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、排出口307を設ける必要はない。
【0105】
上記第3態様によれば、第1マニホールド2及び第2マニホールド3を同一の部品とすることが可能であり、装置の成形が容易である。
【0106】
上記のマニホールド構造を有することにより、特許文献6に開示されているような、ヘッダー管に対して複数の膜カートリッジを、それぞれ配管によって独立に連結した場合と比較して、配管の数が大幅に削減される。例えば、6本の膜カートリッジを本発明のマニホールド構造によって連結した場合は、配管の数が1/6に削減される。
【0107】
従って、膜カートリッジを交換する際、該膜カートリッジを摘出するために接続を解除すべき配管の数が大幅に削減されるため、迅速な交換が可能となる。また、配管の設置に要するコストも大幅に低減される。
【0108】
上述した第1態様〜第3態様に係るマニホールド構造を有する膜ユニットを脱着可能に並設して膜ユニット集合体を形成することによって、不具合を生じた膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを更に抑制でき、しかも、更なる短時間で膜カートリッジの交換が可能となる。これについて図8を参照して説明する。
【0109】
図8は、バラスト水処理用の膜処理設備の態様を示す説明図である。
【0110】
図8において、4は上記のマニホールド構造を備えた膜ユニットであり、5は膜ユニット4を着脱可能に並設してなる膜ユニット集合体である。
【0111】
各々の膜ユニット4は、直方体状に形成された第1マニホールド2及び第2マニホールド3の下壁を膜ユニット載置部位に当接させて棚段状に載置されている。また、各々の膜ユニット4において、膜カートリッジ1は、両端をマニホールドに支持された状態で存在している。
【0112】
また、各々の膜ユニット4が有するバラスト原水導入口202、処理水排出口306、及び、(洗浄排液)排出口307は、それぞれ、バラスト原水ヘッダー管12a、処理水ヘッダー管17a、及び洗浄排液ヘッダー管14aと、連結部によって脱着可能に連結されている。脱着可能とする一例として、伸縮可能な連結パイプによって連結する等の構成が挙げられる。
【0113】
膜ユニット4を脱着可能に膜ユニット集合体5に収納することにより、膜ユニット4が膜ユニット集合体5から引き抜き可能となる。
【0114】
直方体状に形成された各々のマニホールド部分の下側面には、コロやキャスター等の滑走手段を設けることができ、これによって水平方向への引き抜きが容易になる。膜ユニット4を載置する面にレールを設けて、前記滑走手段を該レールに係合させてもよい。レールの形成方向は、引き抜きの方向に合わせて適宜設定することができる。
【0115】
前記膜ユニット載置部位は、L字型等のアングルによって形成した骨格であってもよいし、他の膜ユニットが有するマニホールドの上壁であってもよい。
【0116】
処理水管17はマニホールド構造の処理水排出口306に接続され、洗浄排液放流管14は、マニホールド構造の排出口307に接続されている。
【0117】
上記の構成を有する膜ユニット集合体であれば、多数の膜ユニットを備える場合であっても、奥部に埋もれた状態にある膜カートリッジを摘出する際の摘出作業が、非常に効率化する。
【0118】
また、目的の膜カートリッジを含む膜ユニットを交換する際、周辺の膜ユニットを容易に引き抜いて作業スペースを確保できるため、作業スペースをあらかじめ確保する必要がなく、膜カートリッジを密な状態で並設できるため、省スペースである。
【0119】
次に、図9〜図11に、膜ユニット集合体の態様を例示する。
【0120】
図9において、膜ユニット集合体5は、並設された膜カートリッジ1が形成する面が水平となるように膜ユニット4を配向させて、これを集合させてなる。
【0121】
本態様において、膜ユニットの引き抜き方向は、膜カートリッジの並設方向(a1)又は並設された膜カートリッジ1が形成する面に対して垂直方向(a2)であることが好ましい。
【0122】
図10において、膜ユニット集合体5は、膜カートリッジ1の並設方向が垂直となるように膜ユニット4を配向させて、これを集合させてなる。
【0123】
本態様において、膜ユニットの引き抜き方向は、膜カートリッジの並設方向(b1)又は並設された膜カートリッジ1が形成する面に対して垂直方向(b2)であることが好ましい。
【0124】
図11において、膜ユニット集合体5は、膜カートリッジ1の長手方向が鉛直方向となるように膜ユニット4を配向させて、これを集合させてなる。
【0125】
本態様において、膜ユニットの引き抜き方向は、膜カートリッジの並設方向(c1)又は並設された膜カートリッジ1が形成する面に対して垂直方向(c2)であることが好ましい。
【0126】
上記した何れの態様においても、膜ユニットが、その両端に直方体状のマニホールドを有することにより、該マニホールドが各々の膜ユニットの配置を正確なものとし、密集した状態で整列させることが容易となる。
【0127】
以上の構成により、複数の膜カートリッジ1をユニット化して膜ユニット4を形成し、更に、前記膜ユニット4を多段に構成させて膜ユニット集合体5を形成することにより、更なる省スペース化が図られる。また、これら複数の膜カートリッジ1は、マニホールドによって並列に配設されているため、同時に大量のバラスト水を処理することが可能となり、処理速度が高速化する。
【0128】
また、各々の膜ユニットが有するバラスト原水導入口202、処理水排出口306、及び、(洗浄排液)排出口307を、それぞれ、バラスト原水ヘッダー管12、処理水ヘッダー管17a、及び洗浄排液ヘッダー管14aと、開閉弁を有する連結部で接続することにより、引き抜きを行う膜ユニットの開閉弁のみを閉じて、他の膜ユニットは運転を続行することも可能である。
【0129】
以上の構成を有する膜ユニット集合体における、上述の検出手段の設置例について、図12及び図13を参照して説明する。
【0130】
図12は、膜ユニットを複数連結するヘッダー管毎に検出器を設けた一例を示す概略図である。
【0131】
図12において、12aはバラスト原水ヘッダー管、17aは処理水ヘッダー管であり、それぞれ3つの水平方向に並設された膜ユニット4を連結している。
【0132】
図13は、膜ユニットを複数連結するヘッダー管毎に検出器を設けた他の例を示す概略図である。
【0133】
図13において、12aはバラスト原水ヘッダー管、17aは処理水ヘッダー管であり、それぞれ3つの垂直方向に並設された膜ユニット4を連結している。
【0134】
また両図において、S1及びS2は、ピンホール検出器として用いられる圧力計であり、それぞれヘッダー管12a及び17aに対して1つずつ設けられ、並設された膜カートリッジが備えるスパイラル膜の前後における圧力差からピンホールの発生を検出可能に構成されている。
【0135】
S1のみを設けて、圧力差ではなく、圧力の絶対値からピンホールの発生を検出してもよい。
【0136】
また、あらかじめピンホールが発生していない基準となる膜ユニットから得られる圧力と比較して、ピンホールの発生を検知してもよい。
【0137】
上記の構成によって、膜カートリッジに発生する不具合の監視を、膜処理中に常時又は定期的に行うことができる。
【0138】
また、膜処理を始める前に空気導入手段によって空気導入したバラスト原水を膜ユニットに送液し、圧力を高めた状態を形成し、ピンホールの検出感度を向上させて検出を行うことも好ましいことである。
【0139】
図12の態様において、何れかのヘッダー管においてピンホールの発生が確認された場合は、図9において示した引き抜き方向a1に、該ヘッダー管に連結されたすべての膜ユニットを引き抜くことが好ましい。
【0140】
また、図13の態様において、何れかのヘッダー管においてピンホールの発生が確認された場合は、図9において示した引き抜き方向a2に、該ヘッダー管に連結されたすべての膜ユニットを引き抜くことが好ましい。
【0141】
これにより、不具合を発生した膜カートリッジ以外の膜カートリッジも除去され、交換されることとなるが、上述したように、不具合を生じた膜カートリッジの交換には迅速性が最優先され、更に、引き抜かれる膜カートリッジは膜処理設備を構成する全膜カートリッジのごく一部に過ぎないため、バラスト水処理用の膜処理設備においては、極めて適切な対応である。
【符号の説明】
【0142】
1:膜カートリッジ
100:バラスト処理水集水管
101:封筒状膜(スパイラル膜)
102:支持体
103:バラスト原水流路
2:第1マニホールド
201:バラスト原水室
202:バラスト原水導入口
203:バラスト原水入口
204:処理水室
205:処理水導入口
206:処理水排出口
207:導入口
208:バラスト原水導入管
3:第2マニホールド
301:洗浄排液室
302:処理水室
303:洗浄排液導入口
304:洗浄排液出口
305:処理水導入口
306:処理水排出口
307:排出口
4:膜ユニット
5:膜ユニット集合体
10:バラスト原水
11:バラストポンプ
12:バラスト原水吸込み管
13:開閉弁
14:バラスト原水吐出管(洗浄排液放流管)
15:開閉弁
16:バラストタンク
17:処理水管
18:開閉弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原油等を輸送する貨物用船舶には、航行時の船体の安定性を保つためにバラストタンクが設けられている。通常、原油等が積載されていないときには、バラストタンク内をバラスト水で満たし、原油等を積み込む際にバラスト水を排出することにより、船体の浮力を調整し、船体を安定化させている。
【0003】
このようにバラスト水は、船舶の安全な航行のために必要な水であり、通常、荷役を行う港湾のバラスト原水が利用される。その量は、世界的にみると年間100億トンを超えるといわれている。
【0004】
ところで、バラスト水中には、それを取水した港湾に生息する微生物や小型・大型生物の卵が混入しており、船舶の移動に伴い、これら微生物や小型・大型生物の卵が同時に異国に運ばれることになる。
【0005】
従って、もともとその海域には生息していなかった生物種が、既存生物種に取って代わるといった生態系の破壊が深刻化している。
【0006】
このような背景の中、国際海事機関(IMO)の外交会議において、バラスト水処理装置等に係る定期的検査の受検義務が採択され、2009年以降の建造船から適用されている。
【0007】
また、船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための条約(以下、条約という)により、バラスト水の排出基準は、バラスト水の排出時に外洋に存在する微生物数の100分の1程度まで殺菌あるいは除菌されていることが要求されている。
【0008】
バラスト水中の微生物を殺菌する技術としては、オゾン殺菌技術(特許文献1)が知られている。またオゾン使用量を削減する観点から、本出願人は、膜処理技術も提案している(特許文献2)。膜処理に用いられる膜は、一般に、分離対象となる微生物の大きさを考慮して、精密ろ過膜や限外ろ過膜が用いられている。膜のタイプとしては、平膜(特許文献3)やスパイラル膜(特許文献4)などが知られている。
【0009】
しかし、膨大な量のバラスト水を短時間で処理するためには、膨大な量の膜を備える必要がある。
【0010】
特許文献5には、カートリッジ内にスパイラル膜を直列に並設した構成が開示されているが、直列に並設したのでは、大量の膜カートリッジを備えても膜処理の高速化は見込めない。
【0011】
処理を高速化するためには、大量の膜カートリッジを並列に設置する必要がある。
【0012】
複数の膜カートリッジを並列に設置した例としては、ヘッダー管に対して、モノリス状フィルタを備えてなる複数の膜カートリッジを、それぞれ配管によって連結し、並列に設置する構成が知られている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US2003/0015481
【特許文献2】特開2007−268379号公報
【特許文献3】特許第3160609号公報
【特許文献4】特開2000−271454号公報
【特許文献5】特開2002−28453号公報
【特許文献6】特開2005−270810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上述した配管で並列させて各々の膜カートリッジを独立させて運転する構成においては、原水流入配管、濃縮液配管、処理液配管などが膜カートリッジ毎に接続されているので、配管の数が膜カートリッジの数に応じて必要となる。
【0015】
バラスト処理では、膜カートリッジの数が数百本必要になるので、それに応じて配管の数も必要になり、設置スペースの増大や設備コスト増を招く欠点がある。
【0016】
この様な膨大な数の膜カートリッジを稼働させる際、何れかの膜カートリッジに不具合が発生した場合に、特許文献6のように、各々の膜カートリッジを独立させて運転する構成では、不具合を検出する検出器は、各々の膜カートリッジ毎に必要になり、膨大なコスト増を招く問題がある。
【0017】
また、不具合を検出できても、その不具合の膜カートリッジを交換するには、交換するための作業スペースが必要になり、数百本の膜カートリッジ毎に作業スペースを確保しようとすると膨大なスペースが必要になる。船舶内という限られたスペース内で、上記の作業スペースを確保することは困難である。
【0018】
さらに、バラストタンクに大量のバラスト水を充填するのに、1日程度の時間で行わなければならないというバラスト特有の課題もある。船舶が積み荷を降ろして再出港するまでの時間が限られているからである。
【0019】
従って、バラスト水の漲水前に、膜の不具合検出ないし交換のために割くことができる時間は極めて限られており、短時間で行えるものでなければならない。
【0020】
そこで、本発明者は、膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、しかも、短時間に膜カートリッジを交換するという課題をすべて解決するには、上記の従来の膜カートリッジ毎の運転という思想では限界があることを見出し、本発明に至った。
【0021】
本発明の課題は、膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、しかも、短時間に膜カートリッジを交換できるバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を提供することにある。
【0022】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、膜カートリッジを集合させて膜ユニットを構成し、膜ユニット毎の運転を行う思想を導入し、その膜ユニット中の1本に不具合があったとしても、膜ユニット毎交換することにより、不具合の生じた膜カートリッジを迅速に交換でき、設備が低コスト且つ省スペースなバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を提供するという課題を解決できることを見出した。つまり、不具合のない膜カートリッジも、不具合のある膜カートリッジと共に交換されることにより、無駄のように見えるが、この従来にない発想により、実用的なバラスト水処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を考案するに至った。
【0024】
そこで、請求項1に係る発明は、膜モジュールを内部に装填してなる膜カートリッジを、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数備え、該膜カートリッジにバラスト原水を供給して処理水を得るバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法であって、前記膜処理設備において、前記膜カートリッジは、マニホールド構造によって3〜20本並設されて膜ユニットを複数構成すると共に、各々の前記膜ユニットを脱着可能に集合してなる膜ユニット集合体を構成し、1又は2以上の前記膜ユニット毎に、前記膜カートリッジの不具合を検出する検出手段を設け、前記検出手段が、前記1又は2以上の膜ユニットを構成する何れかの前記膜カートリッジに不具合が発生したことを検出した後、不具合が発生した前記膜カートリッジを含む前記1又は2以上の膜ユニットを、前記膜ユニット集合体から引き抜いて、該1又は2以上の膜ユニットごと交換することを特徴とするバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、膜カートリッジの不具合を検出する際の検出器の数に伴うコスト増を抑制し、不具合のある膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを抑制でき、しかも、短時間に膜カートリッジを交換できるバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】バラスト水処理用の膜処理設備の説明図
【図2】図1に用いられる膜カートリッジの要部断面図
【図3】検出手段の態様を示す概略図
【図4】マニホールド構造の第1態様を示す斜視図
【図5】マニホールド構造の第1態様を示す要部断面図
【図6】マニホールド構造の第2態様を示す要部断面図
【図7】マニホールド構造の第3態様を示す要部断面図
【図8】バラスト水処理用の膜処理設備の態様を示す説明図
【図9】膜ユニット集合体の第1態様を示す斜視図
【図10】膜ユニット集合体の第2態様を示す斜視図
【図11】膜ユニット集合体の第3態様を示す斜視図
【図12】ヘッダー管毎に検出器を設けた一例を示す概略図
【図13】ヘッダー管毎に検出器を設けた他の例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
図1はバラスト水処理用の膜処理設備の説明図、図2は図1に用いられる膜カートリッジの要部断面図である。
【0029】
図1において、1は膜カートリッジであり、該膜カートリッジ1は、図2に示すように、バラスト処理水集水管100と該集水管100の外周に巻回された複数の封筒状膜(スパイラル膜)101からなるスパイラル膜モジュールを内部に装填している。
【0030】
封筒状膜101は、該集水管100の外周に高密度に巻回されている。このため、他の平膜等の膜と比べて単位体積あたりの処理量が大きく、比較的省スペースである。また、カートリッジ化されているために、槽内に浸漬して使用するタイプの膜と比べて、設置場所を選ばず、ユニット化にも好適である。
【0031】
該集水管100の外周に巻回された2以上の封筒状膜101の各々の封筒体の内部には、膜を封筒状に張設すると共に、処理水(透過水)を該集水管100に移送するための支持体102が設けられている。
【0032】
隣接する封筒状膜101の間には、封筒状膜同士が密着して膜面積が狭くなることを防止するため、及びバラスト原水流路103を形成するためにスペーサ104が挿設されていてもよい。なお、原水流路103は、スパイラル膜の外部で、該集水管100と膜カートリッジ1の内面に形成される。
【0033】
本発明において、膜カートリッジ1は、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数を備え、好ましくは、1日でバラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数を並列に設置して備えることである。
【0034】
処理時間T(Day)の間に、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な膜カートリッジの本数nは、バラストタンク容量をQ(m3)、1本の膜カートリッジあたりの膜面積をS(m2)、初期フラックス(透過流束)をF0(m/Day)、処理時間をT(Day)とした場合、以下の式で表せる。
n=α・Q/(S・F0・T)
従って、1日で処理水を満水にする場合は、以下の式で表せる。
n=α・Q/(S・F0)
αは、ろ過時及び膜洗浄時における処理量の低下を補正する係数で、通常1.05〜1.30の範囲である。
【0035】
例えば、1本の膜カートリッジの膜面積が、38m2のものを使用し、初期フラックスが、1.5m/Dのものを使用する。バラストタンクの容量が20000m3の場合、1日で処理水を供給する場合には膜カートリッジは約370〜460本必要である。
【0036】
これは一例であり、バラスト水処理設備では、大量のバラスト水を高速で処理する必要があるため、1つのバラスト水処理設備あたり、数百〜数万の膜カートリッジを備える場合もある。
【0037】
図1において、4は膜ユニットであり、前記膜カートリッジ1を3〜20本並設させて構成される。
【0038】
前記並設の方法は、膜カートリッジ1が並列に設置されていれば、何れでもよく、従来の配管等によって構成されたマニホールド構造による並設であってもよいが、後に詳述する特有の構成を有するマニホールド構造によって並設することが好ましい。
【0039】
バラスト原水10は、バラストポンプ11によって汲み上げられ、バラスト原水吸込み管12を介して膜ユニット4へ供給される。13はバラスト原水吸込み管12に設けられる開閉弁である。14はバラスト原水吐出管(洗浄排液放流管)、15はバラスト原水吐出管14に設けられる開閉弁である。洗浄排液放流管14は、洗浄排液をたとえば海へ放流する。
【0040】
本発明において、バラスト原水は、船舶バラスト水として従来使用されてきた水であればよく、海水がおもに使用される。
【0041】
膜ユニット4に供給されたバラスト原水は、マニホールド構造により、ユニット化された膜ユニット4が備える複数の膜カートリッジ1の原水流路103に導入され、膜処理され、生じた処理水はバラストタンク16に供給される。
【0042】
17は処理水管、18は処理水管17に設けられる開閉弁である。
【0043】
S1及びS2は膜カートリッジに発生した不具合を検出する1つの検出手段を構成する要素である。例えば圧力差を検出する場合、圧力計S1と圧力計S2の計測値の差を取って圧力差を検出することが可能である。
【0044】
図1の態様では、1つの膜ユニット4毎に1つの検出手段が設けられている。
【0045】
本態様において、何れかの検出手段が、膜カートリッジの不具合の発生を検出した場合は、該検出手段によって監視されている膜ユニットを交換する。
【0046】
また、本発明においては、2以上の膜ユニット4毎に1つの検出手段を設けてもよい。
【0047】
図3は、検出手段の態様を示す概略図である。
【0048】
図3において、要素S1及びS2からなる1つの検出手段は、2つの膜ユニット4毎に1つずつ設けられている。
【0049】
本態様において、何れかの検出手段が、膜カートリッジの不具合の発生を検出した場合は、該検出手段によって監視されている膜ユニットをすべて交換する。
【0050】
膜カートリッジに発生する不具合としては、フラックスの低下、液漏れ等様々な不具合が考えられるが、特に迅速な対応が要求されるのが、ピンホールの発生である。
【0051】
ピンホールを有するスパイラル膜を備えた膜カートリッジを用いてバラスト水の膜処理を行った場合、バラストタンクに漲水されたバラスト水に、基準値以上の微生物が混入する恐れがある。
【0052】
この様な事態が生じた場合、出港前であっても、船体のバランスを失う恐れがあるため、バラスト水の汲み直しは困難であり、出港後であれば、バラスト水を排出できないことになり、積み荷の搬入が不可能となる。
【0053】
例えば膜に発生したピンホールを検出するために、処理水中の粒径等を検出可能なセンサーを設ける場合、一本一本の膜カートリッジにセンサーを取り付けたのでは高コストとなり、逆に、設備全体に1つ取り付けたのではピンホールが発生した膜カートリッジを特定することができず、全ての膜処理を停止して対応しなければならない。
【0054】
これに対して、本発明においては、各々の膜ユニット毎にセンサーを設けることにより、一本一本の膜カートリッジにセンサーを取り付けた場合より低コスト化が図られる。また、不具合を発生した膜カートリッジ以外の膜カートリッジも除去され、交換されることとなるが、上述したように、不具合を生じた膜カートリッジの交換には迅速性が最優先され、更に、引き抜かれる膜カートリッジは膜処理設備を構成する全膜カートリッジのごく一部に過ぎないため、膜処理能力を維持したまま、膜カートリッジの交換等の対処が可能である。つまり、バラスト水処理用の膜処理設備においては、極めて合理的な交換方法である。
【0055】
なお、上記の態様では、検出手段が要素S1及びS2からなる場合を示したが、要素は1又は2以上を組み合わせて1つの検出手段を構成してもよい。例えば、1つのS1のみを設けて、圧力差ではなく、圧力の絶対値から膜カートリッジの不具合を検出してもよい。
【0056】
また、例えば、あらかじめピンホールが発生していない基準となる膜ユニットから得られる圧力と比較して、ピンホールの発生を検知してもよい。
【0057】
また、検出手段による膜カートリッジに発生する不具合の監視は、膜処理中に常時又は定期的に行うことができる。
【0058】
また、膜処理を始める前に空気導入手段によって空気導入したバラスト原水を膜ユニットに送液し、圧力を高めた状態を形成し、ピンホールの検出感度を向上させて検出を行うことも好ましいことである。
【0059】
さらに、本発明においては、膜カートリッジ1を並設して膜ユニット4を構成する際に、特有のマニホールド構造を用いることで、更なる効果を得ることができる。
【0060】
図4はマニホールド構造の第1態様を示す斜視図、図5はマニホールド構造の第1態様を示す要部断面図である。
【0061】
図示の態様では、並設された6本の膜カートリッジの一端(図面上左側)に第1マニホールド2を備え、他端に第2マニホールド3を備えている。
【0062】
第1マニホールド2は、直方体状のマニホールド本体200内にバラスト原水室201を有し、該バラスト原水室201は、取水されたバラスト原水を導入する開口であるバラスト原水導入口202を備える。
【0063】
また第1マニホールド2は、前記膜カートリッジ1のバラスト原水流路103にバラスト原水を送液可能なバラスト原水入口203を備える。
【0064】
第1マニホールド2と膜カートリッジ1の接続手法は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0065】
バラスト原水入口203とバラスト原水流路103の接続は格別限定されないが、直接接続すると圧力損失を減少できて好ましい。例えば図示のようなバラスト原水入口203がバラスト原水室201の側壁に設けられた開口である場合には、その開口に向けてバラスト原水流路103を連通させる態様が好ましい。
【0066】
前記第2マニホールド3は、直方体状のマニホールド本体300内に洗浄排液室301と処理水室302を備える。洗浄排液室301と処理水室302は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接して洗浄排液室301を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に処理水室302を配置する態様が挙げられる。
【0067】
洗浄排液室301は、膜カートリッジ1のバラスト原水流路103から送られる洗浄排液を導入可能な洗浄排液導入口303を備える。
【0068】
第2マニホールド3と膜カートリッジ1の接続は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0069】
また、洗浄排液室301は、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出するための洗浄排液出口304を側壁に備える。
【0070】
処理水室302は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口305と、処理水室302内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口306を備える。
【0071】
処理水室302は、洗浄排液を外部に排出するための排出口307を設けることができる。この場合、前記洗浄排液出口304に洗浄排液排出管308を設け、その洗浄排液排出管308を排出口307に連結することにより、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出できる。
【0072】
なお、図示の例では、洗浄排液出口304を洗浄排液室301の側壁に備えているが、洗浄排液室301の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、排出口307を設ける必要はない。
【0073】
マニホールドによる膜カートリッジの並設の態様は、格別限定されないが、好ましくは、水平に並設される態様が挙げられるが、複数の膜カートリッジを立体的に並設してもよい。
【0074】
以上のマニホールド構造を備えた膜ユニットを複数並設させて、バラスト水の処理を行うことができる。
【0075】
また、本発明のマニホールド構造は、図4及び図5の態様に限定されず、図6及び図7に示す態様であってもよい。
【0076】
図6は、マニホールド構造の第2態様を示す要部断面図である。
【0077】
第2態様において、第1マニホールド2は、直方体状のマニホールド本体200内にバラスト原水室201と処理水室204を備える。バラスト原水室201と処理水室204は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接してバラスト原水室201を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に処理水室204を配置する態様が挙げられる。
【0078】
バラスト原水室201は、取水されたバラスト原水を導入する開口であるバラスト原水導入口202を備える。
【0079】
また、バラスト原水室201は、前記膜カートリッジ1のバラスト原水流路103にバラスト原水を送液可能なバラスト原水入口203を備える。
【0080】
第1マニホールド2と膜カートリッジ1の接続手法は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0081】
バラスト原水入口203とバラスト原水流路103の接続は格別限定されないが、直接接続すると圧力損失を減少できて好ましい。例えば図示のようなバラスト原水入口203がバラスト原水室201の側壁に設けられた開口である場合には、その開口に向けてバラスト原水流路103を連通させる態様が好ましい。
【0082】
処理水室204は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口205と、処理水室204内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口206を備える。
【0083】
処理水室204は、バラスト原水をバラスト原水室201に導入するための導入口207を設けることができる。この場合、前記バラスト原水導入口202にバラスト原水導入管208を設け、そのバラスト原水導入管208を導入口207に連結することにより、バラスト原水をバラスト原水室201に導入できる。
【0084】
なお、図示の例では、バラスト原水導入口202をバラスト原水室201の側壁に備えているが、バラスト原水室201の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、導入口207を設ける必要はない。
【0085】
前記第2マニホールド3は、直方体状のマニホールド本体300内に洗浄排液室301を備える。
【0086】
洗浄排液室301は、膜カートリッジ1のバラスト原水流路103から送られる洗浄排液を導入可能な洗浄排液導入口303を備える。
【0087】
第2マニホールド3と膜カートリッジ1の接続は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0088】
また、洗浄排液室301は、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出するための洗浄排液出口304を側壁に備える。
【0089】
図7は、マニホールド構造の第3態様を示す要部断面図である。
【0090】
第3態様において、第1マニホールド2は、直方体状のマニホールド本体200内にバラスト原水室201と第1の処理水室204を備える。バラスト原水室201と第1の処理水室204は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接してバラスト原水室201を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に第1の処理水室204を配置する態様が挙げられる。
【0091】
バラスト原水室201は、取水されたバラスト原水を導入する開口であるバラスト原水導入口202を備える。
【0092】
また、バラスト原水室201は、前記膜カートリッジ1のバラスト原水流路103にバラスト原水を送液可能なバラスト原水入口203を備える。
【0093】
第1マニホールド2と膜カートリッジ1の接続手法は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0094】
バラスト原水入口203とバラスト原水流路103の接続は格別限定されないが、直接接続すると圧力損失を減少できて好ましい。例えば図示のようなバラスト原水入口203がバラスト原水室201の側壁に設けられた開口である場合には、その開口に向けてバラスト原水流路103を連通させる態様が好ましい。
【0095】
第1の処理水室204は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口205と、第1の処理水室204内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口206を備える。
【0096】
第1の処理水室204は、バラスト原水をバラスト原水室201に導入するための導入口207を設けることができる。この場合、前記バラスト原水導入口202にバラスト原水導入管208を設け、そのバラスト原水導入管208を導入口207に連結することにより、バラスト原水をバラスト原水室201に導入できる。
【0097】
なお、図示の例では、バラスト原水導入口202をバラスト原水室201の側壁に備えているが、バラスト原水室201の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、導入口207を設ける必要はない。
【0098】
前記第2マニホールド3は、直方体状のマニホールド本体300内に洗浄排液室301と第2の処理水室302を備える。洗浄排液室301と第2の処理水室302は図示のように併設されることが好ましく、より好ましくは膜カートリッジ1に接して洗浄排液室301を配置し、膜カートリッジ1から遠い側に第2の処理水室302を配置する態様が挙げられる。
【0099】
洗浄排液室301は、膜カートリッジ1のバラスト原水流路103から送られる洗浄排液を導入可能な洗浄排液導入口303を備える。
【0100】
第2マニホールド3と膜カートリッジ1の接続は着脱可能であれば、特に限定されず、たとえば螺合手法などが採用され、図示の例では、螺合とOリングによる密封を採用している。螺合は直接螺合する態様でも、補助部材を用いて螺合する態様でもよい。
【0101】
また、洗浄排液室301は、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出するための洗浄排液出口304を側壁に備える。
【0102】
第2の処理水室302は、バラスト処理水集水管100から処理水を導入可能な処理水導入口305と、第2の処理水室302内の処理水をバラストタンク(図示せず)へ移送するための処理水排出口306を備える。
【0103】
第2の処理水室302は、洗浄排液を外部に排出するための排出口307を設けることができる。この場合、前記洗浄排液出口304に洗浄排液排出管308を設け、その洗浄排液排出管308を排出口307に連結することにより、洗浄排液室301内の洗浄排液を外部に排出できる。
【0104】
なお、図示の例では、洗浄排液出口304を洗浄排液室301の側壁に備えているが、洗浄排液室301の上壁又は下壁に設けることもでき、その場合には、排出口307を設ける必要はない。
【0105】
上記第3態様によれば、第1マニホールド2及び第2マニホールド3を同一の部品とすることが可能であり、装置の成形が容易である。
【0106】
上記のマニホールド構造を有することにより、特許文献6に開示されているような、ヘッダー管に対して複数の膜カートリッジを、それぞれ配管によって独立に連結した場合と比較して、配管の数が大幅に削減される。例えば、6本の膜カートリッジを本発明のマニホールド構造によって連結した場合は、配管の数が1/6に削減される。
【0107】
従って、膜カートリッジを交換する際、該膜カートリッジを摘出するために接続を解除すべき配管の数が大幅に削減されるため、迅速な交換が可能となる。また、配管の設置に要するコストも大幅に低減される。
【0108】
上述した第1態様〜第3態様に係るマニホールド構造を有する膜ユニットを脱着可能に並設して膜ユニット集合体を形成することによって、不具合を生じた膜カートリッジを交換する際の作業スペースを確保しつつ、全体の設備コストを更に抑制でき、しかも、更なる短時間で膜カートリッジの交換が可能となる。これについて図8を参照して説明する。
【0109】
図8は、バラスト水処理用の膜処理設備の態様を示す説明図である。
【0110】
図8において、4は上記のマニホールド構造を備えた膜ユニットであり、5は膜ユニット4を着脱可能に並設してなる膜ユニット集合体である。
【0111】
各々の膜ユニット4は、直方体状に形成された第1マニホールド2及び第2マニホールド3の下壁を膜ユニット載置部位に当接させて棚段状に載置されている。また、各々の膜ユニット4において、膜カートリッジ1は、両端をマニホールドに支持された状態で存在している。
【0112】
また、各々の膜ユニット4が有するバラスト原水導入口202、処理水排出口306、及び、(洗浄排液)排出口307は、それぞれ、バラスト原水ヘッダー管12a、処理水ヘッダー管17a、及び洗浄排液ヘッダー管14aと、連結部によって脱着可能に連結されている。脱着可能とする一例として、伸縮可能な連結パイプによって連結する等の構成が挙げられる。
【0113】
膜ユニット4を脱着可能に膜ユニット集合体5に収納することにより、膜ユニット4が膜ユニット集合体5から引き抜き可能となる。
【0114】
直方体状に形成された各々のマニホールド部分の下側面には、コロやキャスター等の滑走手段を設けることができ、これによって水平方向への引き抜きが容易になる。膜ユニット4を載置する面にレールを設けて、前記滑走手段を該レールに係合させてもよい。レールの形成方向は、引き抜きの方向に合わせて適宜設定することができる。
【0115】
前記膜ユニット載置部位は、L字型等のアングルによって形成した骨格であってもよいし、他の膜ユニットが有するマニホールドの上壁であってもよい。
【0116】
処理水管17はマニホールド構造の処理水排出口306に接続され、洗浄排液放流管14は、マニホールド構造の排出口307に接続されている。
【0117】
上記の構成を有する膜ユニット集合体であれば、多数の膜ユニットを備える場合であっても、奥部に埋もれた状態にある膜カートリッジを摘出する際の摘出作業が、非常に効率化する。
【0118】
また、目的の膜カートリッジを含む膜ユニットを交換する際、周辺の膜ユニットを容易に引き抜いて作業スペースを確保できるため、作業スペースをあらかじめ確保する必要がなく、膜カートリッジを密な状態で並設できるため、省スペースである。
【0119】
次に、図9〜図11に、膜ユニット集合体の態様を例示する。
【0120】
図9において、膜ユニット集合体5は、並設された膜カートリッジ1が形成する面が水平となるように膜ユニット4を配向させて、これを集合させてなる。
【0121】
本態様において、膜ユニットの引き抜き方向は、膜カートリッジの並設方向(a1)又は並設された膜カートリッジ1が形成する面に対して垂直方向(a2)であることが好ましい。
【0122】
図10において、膜ユニット集合体5は、膜カートリッジ1の並設方向が垂直となるように膜ユニット4を配向させて、これを集合させてなる。
【0123】
本態様において、膜ユニットの引き抜き方向は、膜カートリッジの並設方向(b1)又は並設された膜カートリッジ1が形成する面に対して垂直方向(b2)であることが好ましい。
【0124】
図11において、膜ユニット集合体5は、膜カートリッジ1の長手方向が鉛直方向となるように膜ユニット4を配向させて、これを集合させてなる。
【0125】
本態様において、膜ユニットの引き抜き方向は、膜カートリッジの並設方向(c1)又は並設された膜カートリッジ1が形成する面に対して垂直方向(c2)であることが好ましい。
【0126】
上記した何れの態様においても、膜ユニットが、その両端に直方体状のマニホールドを有することにより、該マニホールドが各々の膜ユニットの配置を正確なものとし、密集した状態で整列させることが容易となる。
【0127】
以上の構成により、複数の膜カートリッジ1をユニット化して膜ユニット4を形成し、更に、前記膜ユニット4を多段に構成させて膜ユニット集合体5を形成することにより、更なる省スペース化が図られる。また、これら複数の膜カートリッジ1は、マニホールドによって並列に配設されているため、同時に大量のバラスト水を処理することが可能となり、処理速度が高速化する。
【0128】
また、各々の膜ユニットが有するバラスト原水導入口202、処理水排出口306、及び、(洗浄排液)排出口307を、それぞれ、バラスト原水ヘッダー管12、処理水ヘッダー管17a、及び洗浄排液ヘッダー管14aと、開閉弁を有する連結部で接続することにより、引き抜きを行う膜ユニットの開閉弁のみを閉じて、他の膜ユニットは運転を続行することも可能である。
【0129】
以上の構成を有する膜ユニット集合体における、上述の検出手段の設置例について、図12及び図13を参照して説明する。
【0130】
図12は、膜ユニットを複数連結するヘッダー管毎に検出器を設けた一例を示す概略図である。
【0131】
図12において、12aはバラスト原水ヘッダー管、17aは処理水ヘッダー管であり、それぞれ3つの水平方向に並設された膜ユニット4を連結している。
【0132】
図13は、膜ユニットを複数連結するヘッダー管毎に検出器を設けた他の例を示す概略図である。
【0133】
図13において、12aはバラスト原水ヘッダー管、17aは処理水ヘッダー管であり、それぞれ3つの垂直方向に並設された膜ユニット4を連結している。
【0134】
また両図において、S1及びS2は、ピンホール検出器として用いられる圧力計であり、それぞれヘッダー管12a及び17aに対して1つずつ設けられ、並設された膜カートリッジが備えるスパイラル膜の前後における圧力差からピンホールの発生を検出可能に構成されている。
【0135】
S1のみを設けて、圧力差ではなく、圧力の絶対値からピンホールの発生を検出してもよい。
【0136】
また、あらかじめピンホールが発生していない基準となる膜ユニットから得られる圧力と比較して、ピンホールの発生を検知してもよい。
【0137】
上記の構成によって、膜カートリッジに発生する不具合の監視を、膜処理中に常時又は定期的に行うことができる。
【0138】
また、膜処理を始める前に空気導入手段によって空気導入したバラスト原水を膜ユニットに送液し、圧力を高めた状態を形成し、ピンホールの検出感度を向上させて検出を行うことも好ましいことである。
【0139】
図12の態様において、何れかのヘッダー管においてピンホールの発生が確認された場合は、図9において示した引き抜き方向a1に、該ヘッダー管に連結されたすべての膜ユニットを引き抜くことが好ましい。
【0140】
また、図13の態様において、何れかのヘッダー管においてピンホールの発生が確認された場合は、図9において示した引き抜き方向a2に、該ヘッダー管に連結されたすべての膜ユニットを引き抜くことが好ましい。
【0141】
これにより、不具合を発生した膜カートリッジ以外の膜カートリッジも除去され、交換されることとなるが、上述したように、不具合を生じた膜カートリッジの交換には迅速性が最優先され、更に、引き抜かれる膜カートリッジは膜処理設備を構成する全膜カートリッジのごく一部に過ぎないため、バラスト水処理用の膜処理設備においては、極めて適切な対応である。
【符号の説明】
【0142】
1:膜カートリッジ
100:バラスト処理水集水管
101:封筒状膜(スパイラル膜)
102:支持体
103:バラスト原水流路
2:第1マニホールド
201:バラスト原水室
202:バラスト原水導入口
203:バラスト原水入口
204:処理水室
205:処理水導入口
206:処理水排出口
207:導入口
208:バラスト原水導入管
3:第2マニホールド
301:洗浄排液室
302:処理水室
303:洗浄排液導入口
304:洗浄排液出口
305:処理水導入口
306:処理水排出口
307:排出口
4:膜ユニット
5:膜ユニット集合体
10:バラスト原水
11:バラストポンプ
12:バラスト原水吸込み管
13:開閉弁
14:バラスト原水吐出管(洗浄排液放流管)
15:開閉弁
16:バラストタンク
17:処理水管
18:開閉弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜モジュールを内部に装填してなる膜カートリッジを、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数備え、該膜カートリッジにバラスト原水を供給して処理水を得るバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法であって、
前記膜処理設備において、前記膜カートリッジは、マニホールド構造によって3〜20本並設されて膜ユニットを複数構成すると共に、各々の前記膜ユニットを脱着可能に集合してなる膜ユニット集合体を構成し、1又は2以上の前記膜ユニット毎に、前記膜カートリッジの不具合を検出する検出手段を設け、
前記検出手段が、前記1又は2以上の膜ユニットを構成する何れかの前記膜カートリッジに不具合が発生したことを検出した後、不具合が発生した前記膜カートリッジを含む前記1又は2以上の膜ユニットを、前記膜ユニット集合体から引き抜いて、該1又は2以上の膜ユニットごと交換することを特徴とするバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法。
【請求項1】
膜モジュールを内部に装填してなる膜カートリッジを、バラストタンクへ処理水を満水にするために必要な本数備え、該膜カートリッジにバラスト原水を供給して処理水を得るバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法であって、
前記膜処理設備において、前記膜カートリッジは、マニホールド構造によって3〜20本並設されて膜ユニットを複数構成すると共に、各々の前記膜ユニットを脱着可能に集合してなる膜ユニット集合体を構成し、1又は2以上の前記膜ユニット毎に、前記膜カートリッジの不具合を検出する検出手段を設け、
前記検出手段が、前記1又は2以上の膜ユニットを構成する何れかの前記膜カートリッジに不具合が発生したことを検出した後、不具合が発生した前記膜カートリッジを含む前記1又は2以上の膜ユニットを、前記膜ユニット集合体から引き抜いて、該1又は2以上の膜ユニットごと交換することを特徴とするバラスト水処理用の膜処理設備に用いられる膜カートリッジの交換方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−39569(P2013−39569A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223092(P2012−223092)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2009−277975(P2009−277975)の分割
【原出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(503442592)株式会社ユアサメンブレンシステム (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2009−277975(P2009−277975)の分割
【原出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(503442592)株式会社ユアサメンブレンシステム (28)
【Fターム(参考)】
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